特許第6469295号(P6469295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469295手術支援装置、その制御方法、並びに手術支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6469295
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】手術支援装置、その制御方法、並びに手術支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20190204BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20190204BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   A61B34/30
   B25J13/08 Z
   A61B17/34
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-178054(P2018-178054)
(22)【出願日】2018年9月21日
【審査請求日】2018年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515276808
【氏名又は名称】株式会社A−Traction
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100177390
【弁理士】
【氏名又は名称】大出 純哉
(72)【発明者】
【氏名】安藤 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】宮本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】粟野 啓太
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 吉英
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 勇太
【審査官】 吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−110747(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0000098(US,A1)
【文献】 特開平5−337127(JP,A)
【文献】 特開2001−275931(JP,A)
【文献】 特開平10−272088(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0172907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 17/34
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹壁の第1の穴から体腔に挿入され且つ機械的に駆動される第1の術具の姿勢を、前記腹壁の第2の穴から前記体腔に挿入される第2の術具を用いて制御する手術支援装置であって、
外套管を介して前記第2の穴に挿入される前記第2の術具のシャフトの前記体腔への挿入深度を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された前記挿入深度に少なくとも基づいて、前記第1の術具の姿勢を制御するための制御情報を出力する制御手段と、を有し、
前記計測手段は、前記外套管と前記第2の術具のいずれか一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる音波を計測することにより、前記挿入深度を計測する、ことを特徴とする手術支援装置。
【請求項2】
前記計測手段は、前記送信機から送信された音波信号と前記受信機で受信された音波信号の位相差に基づいて、前記挿入深度を計測する、ことを特徴とする請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項3】
前記計測手段は、前記挿入深度を計測するために、前記送信機から送信された音波信号と前記受信機で受信された音波信号の位相差に基づいて、前記送信機と前記受信機との間の距離の変化量を計測する、ことを特徴とする請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項4】
前記計測手段は、前記位相差に基づく計測において、前記第2の術具の所定の閾値を超える速度での移動を除くことにより、前記送信機と前記受信機との間の距離の変化量を計測する、ことを特徴とする請求項3に記載の手術支援装置。
【請求項5】
前記受信機は、前記第2の術具のシャフト周りに、所定の角度ごとに配置される複数の受信機から構成され、
前記計測手段は、1つの送信機から送信された音波を前記複数の受信機で受信し、前記複数の受信機で受信した音波信号に基づく計測値の平準化を行うことにより、前記挿入深度を計測する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項6】
前記計測手段は、前記第2の術具のシャフトの先端が前記外套管を通過したことを検知する挿入検知手段を更に有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項7】
前記計測手段は、前記受信機からの音波信号の振幅が所定の閾値以上である場合に、前記第2の術具が使用されていると判別する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項8】
前記計測手段は、前記第2の術具に取り付けられるタグ検出手段であって、術者に取り付けされたタグが近接又は接触したことを検出するタグ検出手段を更に有し、
複数の前記第2の術具が存在する場合、前記タグ検出手段が前記タグを検出したことに応じて、前記タグを検出した前記タグ検出手段に対応する前記第2の術具を、使用している前記第2の術具として判別する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項9】
前記計測手段は、更に、前記第2の術具に取り付けた慣性センサを用いて、前記第2の術具のシャフトの前記体腔への挿入角度を計測し、
前記制御手段は、前記計測手段により計測された前記挿入深度と前記挿入角度とに基づいて、前記第1の術具の姿勢を制御するための前記制御情報を出力する、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項10】
前記計測手段は、前記外套管と前記第2の術具の一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる超音波を計測する、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項11】
外套管を介して前記腹壁の前記第1の穴に挿入される、前記第1の術具のシャフトの前記体腔への挿入角度と挿入深度とを計測する他の計測手段を更に有し、
前記他の計測手段は、前記第1の穴に用いる外套管と前記第1の術具のいずれか一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる音波を計測することにより、前記第1の術具のシャフトの前記体腔への挿入深度を計測する、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項12】
前記送信機は、前記外套管と前記第2の術具のいずれか一方と着脱可能な筐体に配置される、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項13】
腹壁の第1の穴から体腔に挿入され且つ機械的に駆動される第1の術具の姿勢を、前記腹壁の第2の穴から前記体腔に挿入される第2の術具を用いて制御する手術支援装置の制御方法であって、前記手術支援装置は計測手段と制御手段とを含み、
前記計測手段が、外套管を介して前記第2の穴に挿入される前記第2の術具のシャフトの前記体腔への挿入深度を計測する計測工程と、
前記制御手段が、前記計測工程において計測された前記挿入深度に少なくとも基づいて、前記第1の術具の姿勢を制御するための制御情報を出力する制御工程と、を有し、
前記計測工程では、前記外套管と前記第2の術具のいずれか一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる音波を計測することにより、前記挿入深度を計測する、ことを特徴とする手術支援装置の制御方法。
【請求項14】
手術支援装置と医療器具駆動装置とを含む手術支援システムであって、
前記手術支援装置は、腹壁の第1の穴から体腔に挿入され且つ機械的に駆動される第1の術具の姿勢を、前記腹壁の第2の穴から前記体腔に挿入される第2の術具を用いて制御する前記手術支援装置であって、
外套管を介して前記第2の穴に挿入される前記第2の術具のシャフトの前記体腔への挿入深度を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された前記挿入深度に少なくとも基づいて、前記第1の術具の姿勢を制御するための制御情報を出力する制御手段と、を有し、
前記計測手段は、前記外套管と前記第2の術具のいずれか一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる音波を計測することにより、前記挿入深度を計測し、
前記医療器具駆動装置は、
前記手術支援装置の前記制御手段によって出力された前記制御情報に基づいて、前記第1の術具の姿勢を制御する駆動手段を有する、ことを特徴とする手術支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援装置、その制御方法、並びに手術支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
腹壁に小径の複数の穴を空け、術者が手に持つ術具や内視鏡等の医療器具を小径の穴のそれぞれから体腔内に挿入することにより手術を行う腹腔鏡手術が知られている。一般に腹腔鏡手術では、超音波メスや鉗子など複数の術具を操作して手術を行う術者を、腹腔鏡を操作するスコーピストや鉗子によって臓器を牽引等する助手等が補助することによって行われるため、腹部を切開する開腹手術と比較して煩雑となる場合がある。このため、スコーピスト等による支援に代えてロボットアームによって術者を支援する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1は、トロッカに設けた傾斜角検出センサと進退量検出センサと回転量検出センサとにより、トロッカを通過させた医療処置具に対する操作を計測して、医療処置具の先端等の追従基準をエンドエフェクタが追従するように制御する技術を提案している。また、特許文献2は、トラカールに、傾斜センサ等の慣性センサと挿入量センサとを設けて術具の姿勢を計測し、術具の先端位置を追従するように腹腔鏡の姿勢を制御する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−24025号公報
【特許文献2】特開2007−301378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、医療器具の長軸方向の移動を計測する進退量検出センサとして、医療処置具の表面と接触して回転するローラを採用している。しかしながら、ローラを用いて医療処置具の進退量を計測する場合、術具の直径や表面材質、物質の付着状態等によって接触時の回転が影響を受け、計測誤差が大きくなってしまう場合がある。一方、特許文献2では、医療器具の長軸方向の移動を計測する挿入量センサとして、光学式の変位センサを採用し、術具の表面で反射する半導体レーザの強度変化に基づいて挿入量を計測している。しかしながら、この技術もレーザ光の強度変化を測定するために医療器具を介在させるため、医療器具の表面材質や物質の対象物の状態によって計測誤差が大きくなる場合がある。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、体腔に挿入される医療器具の長軸方向の移動を精度よく計測することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、例えば本発明の手術支援装置は以下の構成を備える。すなわち、腹壁の第1の穴から体腔に挿入され且つ機械的に駆動される第1の術具の姿勢を、前記腹壁の第2の穴から前記体腔に挿入される第2の術具を用いて制御する手術支援装置であって、外套管を介して前記第2の穴に挿入される前記第2の術具のシャフトの前記体腔への挿入深度を計測する計測手段と、前記計測手段により計測された前記挿入深度に少なくとも基づいて、前記第1の術具の姿勢を制御するための制御情報を出力する制御手段と、を有し、前記計測手段は、前記外套管と前記第2の術具のいずれか一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる音波を計測することにより、前記挿入深度を計測する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、体腔に挿入される医療器具の長軸方向の移動を精度よく計測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】手術支援システムの全体構成例を模式的に示す図
図2】本実施形態における、位置姿勢計測装置の構成例を模式的に示す図
図3】本実施形態における、距離計測のための制御部の構成例を模式的に示す図
図4】本実施形態における、音波送信機と音波受信機との間の距離と、位相差との間の関係を示す図
図5】本実施形態における距離計測処理(正方向)を説明するための図
図6】本実施形態における距離計測処理(反対方向)を説明するための図
図7】本実施形態における、音波受信機が手持ち医療器具のシャフト周りに回転した場合の処理を説明する図
図8】本実施形態における、音波受信機が手持ち医療器具のシャフト周りに回転した際の影響とその補正を説明するための図
図9】本実施形態における絶対距離を計測するための構成例(光を用いる例)を示す図
図10】本実施形態における絶対距離を計測するための構成例(機械式スイッチを用いる例)を示す図
図11】手持ち医療器具を判別するためのタグとタグ検出用センサの構成例を説明する図
図12】複数の手持ち医療器具を判別するための処理例(検出距離を用いる例)を説明するための図
図13】複数の手持ち医療器具を判別するための処理例(慣性センサを用いる例)を説明するための図
図14】本実施形態における、音波受信機と慣性センサとを含むセンサユニットの構成例を模式的に示す図
図15】本実施形態における、音波送信機を含むセンサユニットを外套管に取り付けた場合の構成例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(手術支援システムの全体構成例)
まず、図1を参照して、本発明に係る手術支援システムの全体構成例について説明する。図1は、本実施形態に係る手術支援システム1の機能構成例を模式的に示している。本実施形態に係る手術支援システム1は、手術支援装置2と、術具やエンドエフェクタの姿勢を制御する医療器具駆動部11とを含む。
【0012】
また、手術支援装置2は、例えば、術者が持つ術具(手持ち医療器具21)の姿勢を計測する位置姿勢計測装置22と、制御状態を切り替えるためのモード切替部3と、座標変換、制御対象の位置等の演算や医療器具駆動部11を制御する制御部4と、表示部7、及び不揮発性メモリ8とを含む。なお、医療器具駆動部11によって制御される術具を、手持ち医療器具21と区別してロボット医療器具12という。
【0013】
図1は、手術台6上に横たわる患者の体腔内に外套管を通して術具やエンドエフェクタが挿入されている様子を示している。本実施形態に係る手術支援システム1は、術者及び患者の近くに設置され、術者による術具の操作と協調するように医療器具駆動部11を制御することにより術者による手術を支援する。術者は、手持ち医療器具21を操作して、処置(例えば臓器の一部を切開したり、切除、縫合したりする)と、ロボット医療器具12やエンドエフェクタ13の制御(例えば鉗子によって臓器を牽引する)とを交互に行うことができる。このとき、手持ち医療器具21を用いた処置と、ロボット医療器具12やエンドエフェクタ13の制御とはモード切替部3を操作することにより切り替えることができる。
【0014】
このため、本実施形態に係るロボット医療器具12の制御は、術者が使用する術具の先端位置を常に計測してその先端位置付近を腹腔鏡等に追従させる制御とは異なり、切開等の処置のために手持ち医療器具21を操作する合間に行われる。従って、ロボット医療器具12やエンドエフェクタ13を制御するために行う手持ち医療器具21の姿勢の計測は、比較的短時間で終了する。
【0015】
医療器具駆動部11は、ロボット医療器具12の移動やエンドエフェクタ13の姿勢を制御する駆動部(例えばロボットアーム)を含む。例えば、ロボット医療器具12の腹壁5に対する挿入角度、ロボット医療器具12のシャフトの長軸方向への移動(挿入深度)、及びエンドエフェクタ13の駆動を制御可能に構成される。駆動部の機構は、例えばRガイドを用いた機構、平行リンクを用いた機構、又は垂直多関節アームによる機構等であってよいが、エンドエフェクタ13の姿勢を能動的に制御することが可能であればその形状は任意でよい。駆動部にはサーボモータ等の位置決め用アクチュエータが複数含まれており、アクチュエータに含まれるエンコーダから機構の関節角等の現在位置情報を取得可能である。医療器具駆動部11は、手術支援装置2と、LAN等の通信路或いはバスを介して接続され、手術支援装置2の制御部4とデータの受送信を行う。医療器具駆動部11は、エンコーダによって取得した関節角等の現在位置情報を手術支援装置2の制御部4へ出力することができる。また、制御部4から出力された制御情報に基づいて、ロボット医療器具12の移動やエンドエフェクタ13の姿勢を制御することができる。なお、以後の説明において単に「ロボット」という場合は、医療器具駆動部11、ロボット医療器具12、エンドエフェクタ13のすべてを指すものとする。
【0016】
ロボット医療器具12は、腹壁5に開けた小径の穴に挿入された外套管14を通過して、その一部が体腔内に挿入される。例えば、ロボット医療器具12とエンドエフェクタ13には、体腔内に挿入して使用される鉗子、攝子、電気メス、吸引管、超音波凝固切開装置、止血装置、ラジオ波焼灼装置、内視鏡、胸腔鏡、腹腔鏡等を含み、その形状は直線状であっても屈曲関節を有していてもよい。
【0017】
手持ち医療器具21は、術者が実際に手で動かして通常の処置を行う医療器具であり、腹壁5に開けた小径の穴に挿入された外套管23を通して体腔内に挿入されており、腹壁5と外套管23とが交わる点を中心とした回転運動が可能である。また、外套管23を通して手持ち医療器具21を挿抜することで、直動の自由度が加わる。すなわち、回転の3自由度の運動と直動の1自由度の運動とを計測することができれば、手持ち医療器具21の持つすべての自由度を計測することが可能となる。手持ち医療器具21と外套管23には、位置姿勢計測装置22が取り付けられており、後述するセンサにより手持ち医療器具21の位置姿勢を計測する。このセンサは一般的な6自由度の絶対位置姿勢を計測可能なセンサでもよいが、ある時刻、位置からの相対的な位置姿勢を測定するセンサであってよい。
【0018】
位置姿勢計測装置22は、3自由度の姿勢を計測可能な慣性センサと、直動の1自由度である体腔内への挿入深度を計測可能な音波センサとの組み合わせで構成される。慣性センサとしては、例えば加速度センサ、傾斜センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサなどの一般的なセンサおよびそれらの組み合わせを利用することができる。このような手持ち医療器具21を用いることにより、ロボット医療器具12の制御や表示部7に表示されるユーザインタフェースの操作を行う場合の入力装置として使用することが可能になる。
【0019】
モード切替部3は、手術支援システムの操作モードを適切に切り替えるための操作部材を含み、例えば手元スイッチ、フットスイッチ等により構成される。操作モードは、処置のために手持ち医療器具21を操作して実際に手術を行うモード(単に処置モードともいう)と、ロボット医療器具12やエンドエフェクタを操作するため手持ち医療器具21を用いるモード(単にロボット操作モードともいう)とを含む。術者がモード切替部3を介して操作モードを切り替えると、制御部4はモード切替部3からの信号に応じてシステムの操作モードを切り替え、現在の操作モードを不図示のRAMに記録する。なお、モード切替部3を介して所定の音声、所定のジェスチャーの情報を取得し、制御部4が入力された情報に対応する操作モードに切り替えるようにしてもよい。
【0020】
制御部4は、CPU又はMPUなどの中央演算装置、ROM及びRAMを含み、ROM或いは不揮発性メモリ8等の記録媒体に記憶されたプログラムを実行して、手術支援装置2の各ブロックの動作を制御する。また、制御部4は、後述するように、位置姿勢計測装置22との間で信号を送受信して、術者によって操作された手持ち医療器具21の挿入角度及び挿入深度を求める。また、医療器具駆動部11のエンコーダから関節角等の現在位置情報(或いはこれらに基づいて得られる関節角等の間の変位情報)を取得する。制御部4は、手持ち医療器具21の腹壁に対する挿入角度及び挿入深度に基づいて、ロボット医療器具12の移動やエンドエフェクタ13の姿勢を制御するための制御情報を医療器具駆動部11へ出力する。なお、手持ち医療器具21の挿入角度及び挿入深度に基づく、ロボット医療器具12の移動やエンドエフェクタ13の姿勢を制御する方法には、様々な方法を用いてよいが、例えば、特開第2018−110747号公報に開示された公知の方法を用いることができる。
【0021】
表示部7は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示デバイスを含み、腹壁に挿入された不図示の腹腔鏡で撮影された体腔内の画像又は映像を表示する。また、表示部7は、(ロボットや手持ち医療器具21の姿勢を示す数値等を含む)システム内部の状態表示や、本システムを操作するための操作画面等を表示する。表示部7は、術者が装着するヘッドマウントディスプレイ内に配置されてもよい。
【0022】
不揮発性メモリ8は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録媒体を含み、制御部4が実行するプログラムや動作用の定数などを記憶する。
【0023】
(位置姿勢計測装置の構成例)
次に、図2に参照して、位置姿勢計測装置22を手持ち医療器具21と外套管23に取り付けた場合を例に、位置姿勢計測装置22の構成例について説明する。図2に示す例では、外套管23には音波送信機201が、また、手持ち医療器具21には音波受信機202がそれぞれ取り付けられており、音波送信機201と音波受信機202とは互いに対向する向きに配置されている。また、手持ち医療器具21には、慣性センサ203が取り付けられている。
【0024】
本実施形態の例では、音波送信機201および音波受信機202とは、例えば超音波を送受信可能な素子によって構成されるが、超音波に限らずマイクとスピーカのような音波を送受信可能なペアであれば同様の原理で計測が可能である。また、慣性センサ203は、例えばジャイロセンサと加速度センサのいずれかまたは両方が含まれている。音波送信機201、音波受信機202、及び慣性センサのそれぞれは、制御部4と無線又は有線で接続されて、計測した信号や制御コマンド等を互いに送受信可能に構成される。制御部4は、送受信した信号に基づいて、対抗した音波送信機201と音波受信機202の間の距離(すなわち外套管23に対する手持ち医療器具21の挿入深度)を計測する。なお、本実施形態では、計測した信号を位置姿勢計測装置22から制御部4に送信し、制御部4によって挿入深度を算出する例を示すが、挿入深度の計測を位置姿勢計測装置22のみで行ってもよい。また、本実施形態の例では、位置姿勢計測装置22が手持ち医療器具21と外套管23とに取り付けられた例を説明する。しかし、位置姿勢計測装置22を、更に、ロボット医療器具12と外套管14とに取り付けて、外套管14に対するロボット医療器具12の挿入深度を計測可能にすることもできる。
【0025】
図2に示す構成では、音波送信機201が外套管23に、音波受信機202が医療器具21にそれぞれ取り付けられているが、これとは反対に、音波受信機202を外套管23に、音波送信機201を医療器具21に取り付けてもよい。また、後述するように、音波送信機201、音波受信機202の数は必ずしも1対1である必要はなく、多対多であってもよい。
【0026】
音波は空気中を約340m/sの速さで伝わるため、送信から受信までの時間を測ることで音波送信機と音波受信機との間の距離を計測することが可能である。なお、一般に、タイミングを計測する目的ではパルス状の音波を送受信可能であることが望ましいが、現実的には(音波送信機および音波受信機の機械的な共振周波数の特性等により)パルス状の音波を発受信することは困難である。このため、一般には、バースト波と呼ばれる数波長〜数十波長の音波を用いられる。バースト波を用いた場合、受信のタイミングはバースト波の包絡線の閾値によって判断する。この方法では距離を絶対値として求めることが可能であるものの、信号強度によって時間計測の誤差が生まれ易く、結果的に高精度な距離計測結果が得られない場合がある。そこで、以下に説明する実施形態では位相計測による手法を用いて相対的な距離を高精度に計測する手法を用いる。
【0027】
(距離計測のための制御部の構成)
更に、図3を参照して、距離計測のための制御部4の構成例について説明する。制御部4は、音波を用いた距離計測を行うための構成を含み、図3には、制御部4の有する機能のうちの、音波を用いた距離計測を行うための構成のみを示している。
【0028】
制御部4は、音波送信機201に音波信号を出力する音波信号出力部301と、音波受信機202で受信した信号を増幅およびノイズフィルタリングする音波信号増幅部302と、振幅計測部303と、コンパレータ部304とを含む。音波信号出力部301から送信された信号と、音波受信機202で受信された信号とのそれぞれは、振幅計測部303とコンパレータ部304とに入力される。
【0029】
振幅計測部303は、送信された音波信号と受信された音波信号の振幅を計測する。なお、計測する物理量としては必ずしも振幅である必要ではなく、RMS(Root Mean Square)やそれに準ずるような振幅に相関する信号であってもよい。コンパレータ部304は、音波信号を矩形波に変換することで送信と受信の位相差を計測するための前処理を行う。コンパレータ部304は、矩形波に変換した音波信号を演算部305に出力し、演算部305は、送信・受信間の位相差を計測する。なお、コンパレータ部304は、位相差計測を簡便に行うためのものであり、音波波形から位相差が計測できれば必須ではない。また、図3では、301〜304の構成が制御部4に含まれており、音波送信機201や音波受信機202と離れた位置に配置される例を示したが、これらの301〜304の構成は、音波送信機201又は音波受信機202の周辺に配置されてもよい。また、これらの301〜304の構成の一部又は全ては、制御部4が実行するソフトウェアによって実現されてもよい。
【0030】
なお、図1及び図3では明示していないが、制御部4は、演算部305によって演算された演算結果を他の機器に出力するためのインターフェース(演算結果出力部として機能する)を有してよい。また、制御部4は、慣性センサ203から出力された信号を入力し、演算部305によって音波信号と同時に処理してもよい。
【0031】
(距離計測処理の例)
図4は、演算部305によって計測される位相差と、音波送信機201と音波受信機202との間の距離とをそれぞれ縦軸と横軸とで表したグラフを示している。図4に示すように、位相差と距離との関係は、0〜360°の間で周期的に変化する波形で表される。1周期に相当する距離(d1)までを移動するのであれば、位相と距離が比例しているため、位相から一意に距離を算出することが可能である。しかし、d1以上の距離では、どの周期に相当する位相なのか判別ができないため、距離を決定することができない。
【0032】
そこで、演算部305は、位相の変化量を逐次計算することによって、位相をまたいだ場合でも適切な移動量(すなわち距離の変化量)に変換する。図5に示すように、距離が変化して位相が360°から0°に戻った場合を考える。この場合、計測される値としては、ある時刻tにおける位相p、及び時刻tk+1における位相pk+1である。上述したように、位相の値のみに着目する場合、pからpk+1への経路は2通り考えられる。このため、波長λを用いて表すと、位置d=λ(pk+1−p)/360+d、もしくはd=λ(pk+1−p)/360+λ+dのどちらかとなる。そこで、実際にどちらの位置にいるかを判断するために、速度に対する制約条件を設ける。
【0033】
時刻tからtk+1になる間に位相がpからpk+1になった場合、それに対応する速度は(d−d)/(tk+1−t)か、(d−d)/(tk+1−t)のどちらかとなる。この状態を定性的に表すと、非常に速い速度で距離が減少したか遅い速度で距離が増加したかのどちらかである。このとき、本実施形態では、あるサンプリング間隔の間に半波長以上移動しないという仮定を設ける。この仮定に係る閾値を、波長λを用いて表すとv=λ(tk+1−t)/2である。この場合、図5に示す例では、演算部305は、位置dに移動した場合は閾値を超える(サンプリング間隔の間に半波長以上移動する)速度であるためにこの移動を除き、(当該閾値を超えない速度で移動した)位置dに移動したと決定することができる。
【0034】
図5を参照した例では、pk+1−pが負の値になる場合を考えたがこれが正の場合にも同様の手順で考えることができる。図6は、pk+1−pが正の値となる状況を示している。図6に示す例では、位相から求められる位置は、d=λ(pk+1−p)/360+dもしくはd=λ(pk+1−p)/360−λ+dと求められる。この例においても、演算部305は、速度の閾値によって判断すれば実際にどちらに移動したかを判断可能である。
【0035】
このように、演算部305は、位相の変化の周期をまたぐ際に適切な処理をすることによって、相対的な移動量を特定することが可能となる。この手法では、音波信号の振幅の情報を必要としていないため、周辺環境の外乱の影響で受信強度が変化したとしても計測結果に全く影響を及ぼさないという利点がある。
【0036】
計測の分解能は、位相差計測の時間分解能によって決定される。一般に、この時間分解能はマイクロコントローラやFPGAのクロック周波数に相当するものである。例えば、16MHzのクロックによって位相差を計測したとすると、分解能としては約0.02mmとなる。また、FPGAのようなデバイスを使用すれば音波の周波数と同じ周期で位相差計測が可能であるため、速度の閾値vは音速の半分の速度となる。これは人が手にもって動かす速度に対して十分高速である。
【0037】
このように、本実施形態では、外套管23と手持ち医療器具21の一方に取り付けられた音波送信機201と他方に取り付けられた音波受信機202との間の空間を伝わる音波を計測することにより、手持ち医療器具21の挿入深度を計測するようにした。具体的に、外套管23に配置した音波送信機201から音波を送信して、手持ち医療器具21に配置した音波受信機202で受信することで、空気中を伝わる音波の時間に基づいて手持ち医療器具21の直動方向の挿入深度を計測するようにした。このようにすることで、挿入深度の計測に対して手持ち医療器具21の表面材質や軽微な付着物などの影響を大幅に低減できるようになる。すなわち、体腔に挿入される医療器具の長軸方向の移動を精度よく計測することが可能になる。
【0038】
また、上述の実施形態では、送信された音波信号と受信された音波信号の位相差に基づいて、外套管23に配置した音波送信機201と手持ち医療器具21に配置した音波受信機202との間の移動距離を計測するようにした。このとき、音波信号の位相差に基づく距離の計測では、手持ち医療器具21が所定の閾値を超える(サンプリング間隔の間に半波長以上移動する)速度での移動を除くことにより、手持ち医療器具21の相対的な移動量を決定するようにした。位相差によって移動量を計測するようにしたことで、音波信号の振幅の情報を必要とせず、周辺環境の外乱によって受信強度が変化するような場合にも精度良く移動量を計測することができる。
【0039】
(障害物の検知処理)
次に、上述した距離計測処理を適用して、障害物の検知処理を行う例について説明する。本計測手法では音波送信機201および音波受信機202は互いに対向した向きに配置されているため、この間に障害物が存在すると計測ができなくなる。そこで、手持ち医療器具21のシャフトの周囲にいくつかの音波送信機201と音波受信機202を配置することで、音波の経路に障害物がない音波送信機201と音波受信機202のペアを使用することが可能になる。障害物の有無は、制御部4内の振幅計測部303によって計測された値から判断することが可能である。計測される信号の振幅は距離によっても増減するが、手持ち医療器具21のシャフトの長さの範囲で変化する量と、障害物の有無によって変化する量が明確に異なるため、実験等によって適切な閾値を予め設定すれば、障害物を検出することが可能となる。このため、制御部4は、音波送信機201と音波受信機202の複数のペアから得られる複数の音波信号について、障害物検知用の閾値を上回る振幅を有するかを判定する。そして、障害物検知用の閾値を上回る振幅を有すると判定した音声信号を、障害物によって遮られていない音声信号として選択し、選択した音声信号を用いて距離計測処理を行う。
【0040】
(シャフト周りの回転による影響の低減)
一般に、複数の音源が存在する場合には音波が干渉して空間上に音圧分布ができてしまう。複数の音波送信機201を外套管23に配置する場合であっても、ある時間幅では、送信側としては1つだけを使用するような状態で距離計測処理を行うことが望ましい。これに対し、受信側は2つ以上を同時に使用することができる。本実施形態では、この特性を利用して、手持ち医療器具21のシャフト周りの回転に対して距離の計測誤差を小さくするように処理を行う。
【0041】
音波送信機201と音波受信機202は、例えば図2に示したように、手持ち医療器具21のシャフト周囲に配置することができる。この場合、手持ち医療器具21がシャフト周りで回転した場合、挿入深さが同じでも、対応する音波送信機201と音波受信機202の間の距離が変化する。
【0042】
シャフト周りの回転による影響を、図7を参照して、より具体的に説明する。図7に示す例では、2つの音波受信機202である音波受信機Aと音波受信機Bとが手持ち医療器具21のシャフトを挟むようにhrxだけ離れて対称に取り付けられている。また、それぞれの音波送信機201はシャフトからhtxだけ離れて外套管23に取り付けられている。このとき、音波送信機201と音波受信機Aの間の距離Lを、シャフト上での距離lとシャフト周りの回転角θによって表すと以下のようになる。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、音波受信機Bの位置はθ+180°に相当する。上述の式を用いて、あるlのときにθが変化した場合の様子をプロットしたグラフを図8に示す。ここで、θの速度は360°/s、lは100mmとした場合を示している。計測の性質上、絶対距離は意味を持たないので、縦軸はLとLの速度である。lが固定された状態のため、LとLの速度は0になるはずであるが、各音波受信機の計測値そのままではθの変化によって実際のlの速度から大きく外れてしまう。ここで、各受信機の音波信号から得られた距離の変化(速度)などの計測値を加算して2で割ると(すなわち複数の計測値で平準化すると)、θに対してほとんど影響を受けない結果が得られる。このように、音波受信機が複数ある場合、例えば所定の位置関係にある複数の音波受信機に基づく計測値を平均化することによって、手持ち医療器具21のシャフト周りの回転(すなわちθ)の影響をキャンセルし、より精度の高い距離計測が可能となる。
【0045】
図7を参照して説明した例では、2つの音波受信機202を、手持ち医療器具21のシャフトを軸対称として取り付けた場合について説明した。しかし、本実施形態は、3つ以上の音波受信機202がある場合、シャフトを中心として均等な角度で割り振るように配置することで、2つの場合と同様にそれらの計測結果を平均すれば上記と同様の結果が得られる。
【0046】
(絶対距離を計測する構成)
これまでに説明した距離計測処理は、計測開始からの相対距離を計測するものであるが、ここでは音波送信機と音波受信機の間の距離を絶対距離として計測する構成について説明する。
【0047】
本実施形態における絶対距離を計測する構成として、位置姿勢計測装置22は、手持ち医療器具21のシャフトの先端が外套管23を通過したことを検知するための挿入検知センサ(図9及び図10を参照して後述する)を、外套管23に備える。なお、本実施形態では、挿入検知センサの一例として、光(フォトセンサ)を用いた挿入検知センサと、機械式スイッチを用いた挿入検知センサについて説明するが、手持ち医療器具21の挿入を検知可能なセンサであれば、他の方法を用いてもよい。他の方法には、例えば、インダクタンスの変化、キャパシタンスの変化、シャフトを通過させる空間の圧力の変化等を計測する方法を用いてもよい。
【0048】
図9は、光を用いた挿入検知センサを示している。この例では、手持ち医療器具21のシャフトが通る部分に光送信機901と光受信機902が取り付けられている。光送信機901から発光される光は、シャフトが横切ると遮断されるため、光受信機902の受光状態の変化によって手持ち医療器具21が挿入されたことを検知することができる。
【0049】
相対距離を絶対距離にするために、制御部4は、挿入検知センサによって外套管23に手持ち医療器具21のシャフトが挿入されたことを検知すると同時に音波による相対距離の計測を開始する(計測値をクリアする)。ここで、医療器具の先端から音波受信機202までの距離は既知であるため、結果として挿入検知センサを原点とした絶対距離に変換が可能となる。なお、原点となる挿入検知センサの位置は、例えば、外套管23の回転中心の絶対位置を予め特定しておき、回転中心から検出位置までの距離と外套管23の角度によって定めることができる。
【0050】
図9に示す例では、外套管23の内部に光送信機901と光受信機902が存在している。しかし、外套管23の材質が光を通すものであれば、光送信機901と光受信機902を外套管23の外側に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。ここで、血液等の生体組織が付着しても反応しないようにするために、光の波長には近赤外領域を用いることができる。
【0051】
また、図10には、機械式スイッチを用いた、挿入検知センサの他の例を示している。この例では、手持ち医療器具21のシャフトが外套管23を通過する際にスイッチ1001が押されるような機構になっている。また、スイッチだけでなく反力を受けるためのガイドローラ1002をスイッチと反対側に設けることによって、誤検知を低下させることができる。ガイドローラ1002は必ずしも回転をする必要はなく、摩擦が小さければ突起物のようなものでもよい。また、スイッチ1001は、一般的な機械的スイッチの他に、物体の移動や変形を検知してオン・オフされるものであればこれに限らない。例えば、ホールセンサ、光センサ、インダクタンスセンサ、キャパシタンスセンサ等が利用可能である。
【0052】
(絶対距離を計測する他の構成)
手持ち医療器具21のシャフトに対する挿入検知センサを使用することなく、他の構成を用いて絶対位置を求めてもよい。例えば、絶対距離を計測するための構成として、間欠的に音波を送信する構成を用いてもよい。間欠的な音波を用いる場合、音波の送信が開始した又は停止した際に、受信信号の立ち上がりもしくは立ち下りを検出することにより、音波の到達時間に基づいた絶対距離の計測が可能である。なお、受信信号の立ち上がりもしくは立ち下りの検出は、図2において上述したバースト波を用いた計測方法と同様にすればよい。すなわち、受信のタイミングはバースト波の包絡線の閾値によって判断する。このように、音波の到達時間に基づいて絶対距離を求めてしまえば、上述した正確な相対位置の計測によって、音波送信機と音波受信機の間の絶対距離が常に計測可能となる。
【0053】
(交換した手持ち医療器具を自動的に判別する構成)
上述の構成では、外套管23と手持ち医療器具が1対1に対応して使用される例を説明した。しかし、実際の手術では、複数の医療器具の中から使用する医療器具を選択し、1つの外套管23に挿入する医療器具を切り替えて使用する。
【0054】
新たに外套管23に挿入する手持ち医療器具21との間で計測を実行するために、使用済みの(交換前の)手持ち医療器具21に取り付けたセンサを、逐次これから使用する(交換後の)手持ち医療器具21に取りつけ直すのでは手間がかかる。このため、複数の手持ち医療器具21のそれぞれに予め音波受信機202を装着しておき、制御部4が(手持ち医療器具21を交換した際に)どのセンサのデータを処理対象とするかを切り替える方が手術の進行を妨げず、手術支援システムの操作が容易になる。
【0055】
特に、手術の進行を妨げないようにするためには、手持ち医療器具21の切り替えをスイッチ等によって術者が手動で切り替えるのではなく、システム側で手持ち医療器具21の切り替わりを自動で判別することできるとよい。そこで、図11及び図12を参照して、使用する手持ち医療器具21のセンサを自動的に判別する構成について説明する。なお、複数の手持ち医療器具21に取り付けられた各センサ(すなわち位置姿勢計測装置22)は、いずれも有線又は無線によって制御部4と接続されているものとする。
【0056】
使用している術具を判別する方法として、図11に示すように、術者の手に着脱可能なタグ1101〜1103を装着させておき、手持ち医療器具21に備わるタグ検出用センサ1104を用いて、当該タグの近接又は接触を検出する。例えば、磁石で構成されるタグを術者の手に取り付けておき、磁力センサで構成されるタグ検出用センサによってタグを検出する。制御部4は、タグ検出用センサからタグを検出したことを示す検出信号を受信したことに応じて、当該タグを検出したタグ検出用センサが取り付けられた手持ち医療器具を、使用する手持ち医療術具として判別する。
【0057】
タグ検出用センサ1104は、検出信号を制御部4に送信する際に、タグ検出センサ114を識別するID(タグ検出センサID)を合わせて送信してもよい。制御部4は、タグ検出センサ114からタグ検出センサIDと検出信号を受信すると、当該IDに基づいて、使用している手持ち医療器具21を特定し、手持ち医療器具21の情報を取得するようにしてもよい。手持ち医療器具21の情報には、例えば、医療器具の種別やシャフトの長さなどの医療器具情報のほか、取り付けられている音波受信機の数、各音波受信機の間の角度、シャフトからの距離、などの情報を含む。例えば、タグ検出センサ1104を取り付けた手持ち医療器具の情報とタグ検出センサIDとを関連付けたテーブルを予め不揮発性メモリ8に記憶させておく。このようにすれば、制御部4は、タグ検出センサ1104がタグを検出したことに応じて、当該テーブルからタグ検出センサを取り付けた手持ち医療器具の情報を取得することができる。そして、例えば音波受信機の数に応じて距離計測処理を切り替えたり、手持ち医療器具21の特性に応じて制御情報を調整したりすることができる。制御部4は、タグ検出センサ1104がタグを検出したことに応じて、使用している手持ち医療器具21が検出されたこと、検出された手持ち医療器具の種別や特性を示す情報の少なくともいずれかを表示部7に表示させてもよい。このようにすれば、術者は、手持ち医療器具の交換がシステムによって認識されたこと、システムに認識されている手持ち医療器具の情報などを把握することができる。
【0058】
術者にタグをつける位置や取り付け態様は、図11に示すように異なってよい。また、タグの位置や取り付け態様は手持ち医療器具21の形状によって異なってもよい。例えば、1101のように指先に装着可能なもの、1102のように手のひらにタグを取り付けるもの、1103のように手首から伸びるストラップ状の形状にタグを埋め込んだものがあってよい。このようにしたタグであれば、手持ち医療器具21を使用する際にタグを手持ち医療器具21のタグ検出用センサに近接させ易く都合がよい。また、タグやタグ検出用センサは1つである必要はなく、すべての術具に対応できるように何か所かに取り付けてもよい。タグ検出用センサは、磁力に限らず、近接を判定可能であれば他の方法であってもよく、例えばRFID等の近距離無線通信を用いるものであってもよい。
【0059】
このように、術者の手に近接した手持ち医療器具を使用する手持ち医療器具として自動選択するようにすれば、術者が手持ち医療器具を誤って手から落下させた際に操作を無効にする用途にも使用可能である。この場合、術者の手から手持ち医療器具21は離れるとタグを認識できなくなるため、制御部4は、このタグの識別状態の変更に応じて、手持ち医療器具21を使用していないものとして扱う(例えば位置姿勢計測装置22からの信号を無視する)ことができる。
【0060】
(音波による手持ち医療器具の選択)
使用している手持ち医療器具21を、音波を用いて識別することもできる。図12に示すように、手持ち医療器具21である医療器具A〜Cが存在し、図12に示す例では、術者は医療器具Aを使用し、残りの医療器具は外套管23からある程度離れた場所(すなわち計測可能距離を超える場所)にある機械台に置かれている。
【0061】
ここで、それぞれの音波受信機202で計測される音波の振幅を計測する。通常、医療器具が機械台に置かれている場合、ほとんど音波が計測できない距離にあるために音波の振幅が所定の閾値より小さくなる。このため、例えば、制御部4は、計測された音波の振幅が所定の閾値以上である場合に、当該手持ち医療器具21が使用されていると判別することができる。
【0062】
上記の例では、使用していない医療器具が音波を計測できない距離に置かれていることを想定しているが、音波を計測可能な位置に置かれてしまう可能性は否定できない。このため、本実施形態では、より精度良く手持ち医療器具を選択するため、上記の振幅に加えて、バースト波による絶対距離の計測を行う。一般に、腹腔鏡手術で使用される術具の長さはほぼ一定である。このため、万が一使用していない医療器具が音波を計測可能な位置に存在しても、制御部4は、音波送信機201からの距離が一般的な医療器具の長さ(すなわち予め定めた長さの閾値)以上であった場合には、その医療器具を使用していないものと判別する。
【0063】
さらに、使用していない医療器具が、音波送信機201から一般的な医療器具の長さより近い距離に置かれた場合を考慮して、慣性センサを更に用いた判別処理を行ってもよい。この実施形態では、図13に示すように、手持ち医療器具21に取り付けた慣性センサ203である慣性センサ1301、1302と、外套管23に取り付けた外套管側慣性センサ1303とを用いる。
【0064】
使用している手持ち医療器具21である医療器具Aは、外套管23に挿入されているため、手持ち医療器具21と外套管23のそれぞれの慣性センサから得られる姿勢は一致するはずである。一方、外套管23の近くに置かれているが使用されていない医療器具Bは、その姿勢が外套管23の姿勢と平行になることはほぼ無い。すなわち、制御部4は、各手持ち医療器具の姿勢の角度差に基づいて、使用している医療器具を判別することができる。実際には外套管と医療器具のシャフトに隙間があるため完全に平行にはならず、また、重力軸回りの回転に関しては相対値しか計測できないため比較することができない。このため、制御部4は、例えば、外套管23の重力軸に対する傾きと手持ち医療器具21の重力軸に対する傾きが、ある程度一致した場合(すなわち所定の閾値より角度差が小さい場合)に挿入されている手持ち医療器具を判別することができる。
【0065】
(着脱式センサユニットの構成)
音波受信機202と慣性センサ203とは手持ち医療器具21に内蔵されていてもよいが、多様な医療器具に対応するためには着脱可能に取り付けられる方が都合のよいことが多い。図14には、音波受信機202と慣性センサ203とを含む本実施形態に係るセンサユニット1401の構成例を示している。このセンサユニット1401は、手持ち医療器具21に着脱可能な筐体として構成される。センサユニット1401は、固定具1402のねじ1403を締めこむことにより、手持ち医療器具21のシャフトに固定される。
【0066】
手持ち医療器具21の形状によってはシャフトではなく、手持ち医療器具21の持ち手部分に直接取り付けるようにしてもよい。また、図14に示すように、音波受信機202及び慣性センサ203に加えて、スイッチ操作を行うためのレバー1404を備えるようにしてもよい。この場合、術者は、手持ち医療器具21を保持しながらスイッチ操作を行うことができる。図14に示す例ではレバー1404は左右に存在するが、その配置は問わない。
【0067】
また、音波送信機201を含むセンサユニット1501についても同様に、外套管23に着脱可能に取り付けられる方が都合がよい。図15には、音波送信機201を含むセンサユニット1501を外套管23に取り付けた場合の構成例を示している。この例では、センサユニット1501は外套管23に着脱可能な筐体を構成し、3つの音波送信機201を含んでいる。また、センサユニット1501は固定具1502によって外套管23に固定されている。センサユニット1501の中心には、手持ち医療器具21のシャフトを通すための穴が設けられている。
【0068】
なお、上述の説明では、位置姿勢計測装置22を、手持ち医療器具21と外套管23に設けて、手持ち医療器具21の位置姿勢を計測する場合を例に説明した。しかし、本実施形態の位置姿勢計測装置22は、ロボット医療器具12と外套管14とに取り付けて、ロボット医療器具12の位置姿勢を計測するようにしてもよい。すなわち、位置姿勢計測装置22は、ロボット医療器具12の運動を制御するためのセンサとして用いることも可能であり、医療器具駆動部11の関節部のエンコーダの代わりとして使用することができる。
【0069】
(他の実施形態)
さらに、上述した手術支援システムの構成のそれぞれが分離され又は統合された構成として実現されてもよい。また、本発明は、上述した処理を実行するコンピュータのプログラムを、制御部が記録媒体から読み出して実行する場合のほか、当該プログラムを有線通信又は無線通信を介して取得して実行する場合を含み得る。
【符号の説明】
【0070】
4…制御部、21…手持ち医療器具、22…位置姿勢計測装置、23…外套管、201…音波送信機、202…音波受信機、
【要約】
【課題】体腔に挿入される医療器具の直動方向の移動を精度よく計測することが可能な手術支援装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る手術支援装置は、腹壁の第1の穴から体腔に挿入され且つ機械的に駆動される第1の術具の姿勢を、腹壁の第2の穴から体腔に挿入される第2の術具を用いて制御する手術支援装置であって、外套管を介して第2の穴に挿入される第2の術具のシャフトの体腔への挿入深度を計測する計測手段と、計測手段により計測された挿入深度に少なくとも基づいて、第1の術具の姿勢を制御するための制御情報を出力する制御手段と、を有し、計測手段は、外套管と第2の術具のいずれか一方に取り付けられた送信機と他方に取り付けられた受信機の間の空間を伝わる音波を計測することにより、挿入深度を計測する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15