特許第6469318号(P6469318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469318
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】木質積層材
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20190204BHJP
   B32B 21/13 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B27N3/02 C
   B32B21/13
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-518676(P2018-518676)
(86)(22)【出願日】2017年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2017033872
(87)【国際公開番号】WO2018061923
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2018年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-194762(P2016-194762)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-63447(P2017-63447)
(32)【優先日】2017年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 克仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 一紘
(72)【発明者】
【氏名】長岡 浩仁
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 康志
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−262601(JP,A)
【文献】 実開昭54−074779(JP,U)
【文献】 特開平11−240001(JP,A)
【文献】 特開2000−167813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/00−5/00
B27M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材の繊維方向に細長い薄板状の切削片である複数のストランドが配向された状態で積み重ねられた集合体からなる木質材層を複数備え、該複数の木質材層が積層された状態で一体化された木質積層材であって、
上記木質材層の積層方向の密度分布が実質的に一定であることを特徴とする木質積層材。
【請求項2】
請求項1において、
密度が750〜950kg/mであることを特徴とする木質積層材。
【請求項3】
請求項1又は2において、
複数の木質材層の厚さは、積層方向の内側から外側に向かって次第に厚さが増していることを特徴とする木質積層材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つにおいて、
各木質材層における複数のストランドの繊維が互いに同じ方向に延び、
隣接する木質材層毎のストランドの繊維は、互いに交差する方向又は平行な方向に延びていることを特徴とする木質積層材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つにおいて、
複数の木質材層のうちの表面層及び裏面層におけるストランドの繊維が互いに同じ方向に延びていることを特徴とする木質積層材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つにおいて、
木質材層の積層数は奇数であることを特徴とする木質積層材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つにおいて、
複数の木質材層は、該複数の木質材層による密度の分布が積層方向の中央位置に対し面対称になるように積層されていることを特徴とする木質積層材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材で構成された複数の木質材層が積層された状態で一体化された木質積層材に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、アピトンやクルインといった広葉樹からなる南洋材が少なくなってきており、良質な単板を安価で入手することが困難となっている。そのため、それらの南洋材を用いた合板の品質低下が大きな問題となっている。合板の代替材料としてOSB(Oriented Strand Board)等の木質繊維板が用いられつつあるが、一般的な密度のOSBでは十分な強度を得ることができない。
【0003】
従来、例えば特許文献1には、最大で700kg/mの密度を有し、長さが少なくとも7mあり、主負荷方向における曲げ弾性係数として少なくとも7000N/mmである大型のOSBプレートが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、木質材料片を配向させて積層し、加圧・加熱して成形されたストランド材を根太や土台等に用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4307992号公報
【特許文献2】特許第4227864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のOSBプレートは、ボードを成形する際のプレス圧力として、一般的な圧力よりも高い圧力を必要とするため、特殊なプレス機を用いなければ成形することができない。
【0007】
そして、本発明者によると、上記のような特殊なプレス機を用いて一般的な圧力よりも高いプレス圧力でボードを成形した場合、ボードの厚さ方向の密度分布が不均一となることが判明した。密度分布が不均一であると、密度の低い部分が強度的に弱くなる傾向がある。また、密度が低い部分は高い部分と比較して、吸水性が高くなって耐水性能が劣る。このように密度分布の不均一が生じる結果、強度及び耐水性能が低密度部分により律則され、十分な強度や耐水性能が得られないという問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、複数の木質材が積層された木質積層材において、その積層方向の密度分布を調整することにより、高強度かつ耐水性能の高い木質積層材が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、木質積層材における積層方向の密度分布を実質的に一定として、木質積層材の高強度化及び高耐水性能化を実現するようにした。
【0010】
具体的には、本発明では、材の繊維方向に細長い薄板状の切削片である複数のストランドが配向された状態で積み重ねられた集合体からなる木質材層を複数備え、該複数の木質材層が積層された状態で一体化された木質積層材として、上記木質材層の積層方向の密度分布が実質的に一定であることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、複数の木質材層が積層された状態で一体化された木質積層材はその積層方向の密度分布が実質的に一定となっている。前述のとおり、積層方向について密度分布の不均一な部分がある場合、低密度部分によりその強度及び耐水性能が律則されるが、この発明に係る木質積層材では、そのような問題は生じない。従って、高強度かつ高い耐水性能を有する木質積層材を実現することができる。上記木質材は、切削片からなる複数のストランドの集合体であるので、高強度かつ高い耐水性能を有するストランド材、又は生産性が高くかつ特性のバリエーションが変更されたストランド材を実現することができる。
【0012】
上記の構成において、上記木質積層材の密度を750〜950としてもよい。
【0013】
上記複数の木質材層の厚さは、積層方向の内側から外側に向かって次第に厚さが増していてもよい。
【0014】
こうすれば、荷重や衝撃、湿度等の影響を受け易い外側の層の厚さが内側に比べて厚くなることにより、木質積層材における外部環境に対する性能を高めることができる。
【0015】
さらに、各木質材層における複数のストランドの繊維が互いに同じ方向に延び、隣接する木質材層毎のストランドの繊維は、互いに交差する方向又は平行な方向に延びていてもよい。
【0016】
ここで、「繊維が互いに同じ方向に延びる」及び「繊維が平行な方向に延びる」とは、ストランドの繊維が互いに同一方向を向いているものに限定されず、繊維がある程度傾いているものを含む概念とする。繊維が所定の基準方向に対して例えば20°程度傾いているストランドが含まれていてもよい。同様に「繊維が互いに交差する方向に延びる」とは、ストランドの繊維が互いに直交方向を向いているものに限らず、基準方向に直交する直交方向に対して例えば20°程度傾いているストランドが含まれていてもよい。
【0017】
この構成によると、隣接する木質材層毎のストランドの繊維が互いに交差する方向に延びていれば、同繊維が木質材層の全体に亘って同じ方向に延びている場合と比較して、様々な方向からの力の作用に対し高い強度を実現することができる。特に、木質材層の積層数が増加するほど上記繊維方向の違いによる強度の差がより顕著になる。また、積層方向全体に亘ってストランドの繊維の配向方向が同じ場合には、力の加わる方向によって強度が異なることが生じるが、そのようなことも生じない。
【0018】
一方、隣接する木質材層ストランドの繊維が互いに平行な方向に延びている場合、つまり積層方向全体に亘ってストランドの繊維方向が同じ場合、特定の方向からの力の作用に対し高い強度を実現することができる。
【0019】
複数の木質材層のうちの表面層及び裏面層におけるストランドの繊維が互いに同じ方向に延びていてもよい。
【0020】
このことで、表面層側における耐荷重・耐衝撃等の性能と、裏面層側における同性能とを同じ程度に揃えることができる。すなわち、木質積層材の表裏で同様の性能を得ることができ、木質積層材の表裏を気にすることなく使用することができるメリットがある。
【0021】
木質材層の積層数は奇数としてもよい。こうすれば、木質積層材は奇数の木質材層が積層されたものとなり、上記と同様に、木質積層材の表面側及び裏面側の双方で同様の性能を得ることができる。
【0022】
複数の木質材層は、該複数の木質材層による密度の分布が積層方向の中央位置に対し面対称になるように積層されていてもよい。このことで、複数の木質材層による密度の分布がそれらの積層方向の中央位置に対し面対称であるので、木質積層材の表面側及び裏面側の双方で同様の性能を得ることができ、木質積層材の表裏を問わずに使用できる
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、木材の繊維方向に細長い薄板状の切削片である複数ストランドの集合体複数積層された木質積層材の積層方向の密度分布を調整し、その積層方向の密度分布を実質的に一定にしたことにより、高強度かつ高い耐水性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態に係るストランドボードの積層構造を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、参考形態に係るストランドボードの第1例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、参考形態に係るストランドボードの第1例におけるストランド層の積層状態を概略的に示す断面図である。
図4図4は、ストランドボードの第2例を示す図3相当図である。
図5図5は、ストランドボードの第3例を示す図3相当図である。
図6図6は、ストランドボードの第4例を示す図3相当図である。
図7図7は、ストランドボードの第5例を示す図3相当図である。
図8図8は、ストランドボードの第6例を示す図3相当図である。
図9図9は、ストランドボードの第1例〜第6例の具体的な構成を説明するための図である。
図10図10は、実施形態に係る実施例1のストランドボードを示す断面図である。
図11図11は、実施例1,2及び比較例1,2の試験結果を示す図である。
図12図12は、実施例1に係るストランドボードの密度分布を示した図である。
図13図13は、比較例1に係るストランドボードの密度分布を示した図である。
図14図14は、参考形態に係る実施例1,2及び比較例1の曲げ試験の結果を他の物性と共に示す図である。
図15図15は、実施例1,2及び比較例1の厚さ方向(積層方向)の密度分布を示す図である。
図16図16は、実施例3及び比較例2の曲げ試験及び煮沸試験の結果を他の物性と共に示す図である。
図17図17は、実施例3及び比較例2の厚さ方向(積層方向)の密度分布を示す図である。
図18図18は、実施例4及び比較例3の曲げ試験及び煮沸試験の結果を他の物性と共に示す図である。
図19図19は、実施例4及び比較例4の釘引き抜き試験の結果を他の物性と共に示す図である。
図20図20は、実施例4及び比較例3の厚さ方向(積層方向)の密度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。また、実施形態において示されている具体的数値は発明の理解を容易にするために例示するものであり、本発明の適用範囲、適用材料を限定することを意図するものではない。
【0026】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る木質積層材としてのストランドボードBを模式的に示している。
【0027】
この図1に示すように、ストランドボードBは、奇数層(図1では5層)の木質材層としてのストランド層1,1,…で構成され、それらストランド層1,1,…の厚さが全て等しい例を示している。すなわち、図1の上側を表側とし、下側を裏側とした場合、表面及び裏面のストランド層1,1の厚さw1と、3層の中間ストランド層1,1,…の厚さw2,w3,w2とが同一である例を示している。ストランドボードBにおけるストランド層1の積層数は奇数層に限らず、偶数層であってもよい。また、5層に限らず、4層以下であっても6層以上であってもよい。
【0028】
各ストランド層1は、木材等から得られた切削片としての多数のストランド5,5,…(木質材)が集合状態になった集合体からなっている。それらストランド5,5,…の集合体が複数層に積層されて一体化されることで、複数のストランド層1,1,…が形成されている。
【0029】
各ストランド5は、例えば繊維方向に沿う長さが150〜200mm、幅が15〜25mm、厚さが0.3〜2mm程度の薄板片又は削片である。
【0030】
ストランド5に用いる樹種は特に限定されず、例えば南洋樹や広葉樹を用いてもよいし、それ以外の樹種を用いてもよい。具体的には、例えばスギ、ヒノキ、ベイマツ等のファー材、アカシア、アスペン、ポプラ、パイン系(ハードパイン、ソフトパイン、ラジアータパイン等)、バーチ、ゴム(ゴムの木)等が例示されるが、これらの樹種に限定されず、さらに様々な樹種を用いることができる。様々な樹種としては、サワラ、ヒバ、カヤ、栂、槙、種々の松、桐、楓、樺(白樺)、椎、ブナ、樫、樅、櫟、楢、楠、ケヤキ等の国産材、米ヒノキ、米ヒバ、米杉、米樅、スプルース、米栂、レッドウッド等の北米材、アガチス、ターミナリア、ラワン、メランチ、センゴンラウト、ジュンコン、カメレレ、カランパヤン、アンベロイ、メリナ、チーク、アピトン、センゴンラウト等の南洋材、バルサ、セドロ、マホガニー、リグナムバイタ、アカシアマンギューム、地中海松、竹、コウリャン、カメレレのような他の外材等があり、どのような材料でも使用可能である。
【0031】
ストランド5の物性に関し、その密度は300〜800kg/m程度であることが好ましく、430〜700kg/mであることがより好ましい。密度が300kg/m未満であると、同密度・同強度のストランドボードBを形成するために必要な積層マットの厚さが大きくなるとともに、後述するプレス成形工程での熱圧プレス処理に係るプレス圧を高める必要があるからである。
【0032】
一方、ストランド5の密度は800kg/mを超えてもよいが、そのようなストランド5を容易に得ることが難しいからである。すなわち、800kg/mを超えるストランド5を容易に得ることができるのであれば、密度の上限値は800kg/mに限定されず、さらに高い値であってもよい。
【0033】
また、ストランド5の含水率は、2〜20%程度であることが好ましく、2〜8%であることがより好ましい。含水率が2%未満の場合、プレス成形工程での熱圧プレス処理において軟化に時間がかかってプレス時間が長くなり、強度が下がる虞れがある。
【0034】
また、ストランド5の含水率が20%を超えると、同熱圧プレス処理において加熱・圧縮に時間がかかり、パンクし易くなるためであり、さらには接着剤の硬化が阻害されて強度が下がる虞れある。
【0035】
各ストランド層1内において、ストランド5,5,…は、その繊維(図示せず)に沿った方向である繊維方向(ストランド5の長手方向)が所定の方向に沿うように配向されている。このとき、図1にも示すように、各ストランド層1内において、ストランド5,5,…の繊維は必ずしも正確に同一方向を向いている必要はない。換言すると、配向されたストランド5,5,…の繊維方向が互いに平行になっている必要はない。すなわち、繊維の方向が所定の基準方向に対してある程度(例えば20°程度)傾いているストランド5,5,…が含まれていてもよい。
【0036】
また、複数のストランド層1,1,…は、隣接するストランド層1との間でストランド5,5,…の繊維が互いに直交する方向に沿って延びるように積層されて一体化されている。すなわち、図1では、表面層のストランド層1(図1上端の層)と裏面層のストランド層1(図1下端の層)とにおいて、これらの層1,1を構成するストランド5,5,…の繊維方向が同じ方向に沿って延びている。
【0037】
そして、この実施形態の特徴として、ストランドボードBにおける上記ストランド層1の積層方向(ストランドボードBの厚さ方向)の密度分布が実質的に一定とされている。具体的には、複数のストランド層1,1,…は、該複数のストランド層1,1,…による密度の分布が積層方向の中央位置に対し面対称になるように積層されている。
【0038】
次に、この実施形態に係るストランドボードBの製造方法について説明する。この製造方法は、ストランド生成工程、ストランド前処理工程、接着剤塗布工程、積層工程(マット形成工程)及びプレス成形工程を有する。
【0039】
(ストランド生成工程)
ストランドボードBの製造方法では、まず、多数のストランド5,5,…(木材等の切削片)を得るためのストランド生成工程を行う。この工程では、例えば切削機により丸太や間伐材等の生木を切削することで、ストランド5,5,…を生成する。尚、ストランド5,5,…は、建築現場等で発生する端材や廃材等から生成してもよいし、廃パレット材から生成することもできる。
【0040】
(ストランド前処理工程)
上記のストランド生成工程の後、得られた多数のストランド5,5,…に対し、以下のような様々なストランド前処理工程の少なくとも1つを施すことが好ましい。この前処理は、後処理のプレス成形工程において例えば4N/mm程度の低いプレス圧による低圧プレスを可能とするためのものであり、物理的処理方法、高周波処理方法、高温高圧処理方法、高水圧処理法、脱気・脱水繰返し処理方法、化学処理方法等の少なくとも1つを用いる。
【0041】
物理的処理方法は、ストランド5を物理的に圧縮処理する方法であり、ロールプレス処理方法、ビーティング処理方法、平板プレス方法等がある。まず、ロールプレス処理方法は線圧縮方法であり、図示しないが、多数のストランド5,5,…(木質材)を均一に落下するように熱圧ロールプレス装置に投入して熱圧する。そのとき、プレス条件として例えば加熱温度を室温〜200℃とし、熱圧ロール間のクリアランスを0.1〜0.4mm程度とし、送り速度は50m/分程度とし、圧縮率を20〜60%程度とする。このことにより、ストランド5を破壊することなく圧縮し、高密度化されたストランド5を得るようにしている。
【0042】
また、ビーティング法は点圧縮方法であり、金属鍛造処理と同様に、連続的に並べられた複数のスプリングハンマー等によりストランド5を叩いて圧縮変形させる。このことにより、ロールプレス処理方法と同様に、ストランド5を破壊することなく圧縮して高密度化するようにしている。
【0043】
さらに、平板プレス方法は面圧縮方法であり、熱圧平板プレス装置にストランド5,5,…(木質材)を投入して熱圧する。プレス条件としては例えば120℃の温度、4N/mm程度のプレス圧力で5分間程度とする。この方法でも、ストランド5を破壊することなく圧縮して高密度化するようにしている。
【0044】
一方、上記高周波処理方法は、誘電体(不導体)としてのストランド5に高い周波数の電磁波(高周波)を電極間等で照射して、そのストランド5を内部から誘電加熱して軟化させる方法である。この方法により、上記物理的処理方法のようにストランド5を高密度化することなく、後処理のプレス成形工程において低いプレス圧による低圧プレスを可能としている。
【0045】
また、高温高圧処理方法は、ストランド5を圧力釜に入れて高温度及び高圧力を加えることにより、ストランド5(木質材)の細胞壁にダメージを与えて軟化させる方法である。その処理条件は例えば180℃の温度、10Bar程度の圧力で2分間程度とする。この方法でも、上記物理的処理方法のようにストランド5を高密度化することなく、後処理のプレス成形工程において低いプレス圧による低圧プレスを可能としている。
【0046】
さらに、高水圧処理法は、ストランド5を金網等のメッシュ材中に均一にフォーミングし、そのメッシュ材を通して例えば200MPa程度の高圧水によりストランド5の表面に微細な傷を形成する方法である。このことにより微細な破壊が生じて軟化したストランド5を得ることができる。
【0047】
また、脱気・脱水繰返し処理方法は、ストランド5を飽水状態にしてからバッチ式の釜に投入し、その釜の内部を減圧により真空状態にしてストランド5から水分を放出させることにより、ストランド5(木質材)の細胞壁の破壊を促進させて軟化させる方法である。この方法でも、上記物理的処理方法のようにストランド5を高密度化することなく、後処理のプレス成形工程において低いプレス圧による低圧プレスを可能としている。
【0048】
そして、化学処理方法はストランド5に例えば水酸化ナトリウム等を加えてアルカリ処理を行うことにより、ストランド5そのものの可塑化を促進させて軟化させる方法である。この方法でも、上記物理的処理方法のようにストランド5を高密度化することなく、後処理のプレス成形工程において低いプレス圧による低圧プレスを可能としている。
【0049】
上記高周波処理方法、高温高圧処理方法、高水圧処理法、脱気・脱水繰返し処理方法、化学処理方法では、ストランド5の処理後に必要に応じて乾燥させることにより、処理後の状態が維持される。
【0050】
(接着剤塗布工程)
このようにして多数のストランド5,5,…が得られると、その後、それらストランド5,5,…に接着剤を塗布する接着剤塗布工程を行う。接着剤として、例えばイソシアネート系の接着剤を用いることができ、その他、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂やメラミン樹脂などのアミン系接着剤を用いてもよい。
【0051】
(積層工程)
次に、多数のストランド5,5,…を配向して積み重ねたストランド集合体を形成し、そのストランド集合体をさらに多段に積層して積層マットを形成する積層工程(マット形成工程)を行う。
【0052】
具体的には、接着剤が塗布された多数のストランド5,5,…を、マット成形装置等により繊維が所定の基準方向に向くように配向させながら例えば厚さ7〜12mm程度になるまで積み重ねて、一定の厚さを有するストランド集合体を形成する。尚、ストランド集合体の厚さは上記の値に限定されず、7mm未満であっても12mmを超えてもよい。
【0053】
このようにして、一定の厚さを有するストランド集合体が形成されると、その後、そのストランド集合体の上に、それとは繊維方向が例えば直交するように配向されたストランド5,5,…を積み重ねて、同様に一定の厚さを有する別のストランド集合体を形成する。
【0054】
以後、上記と同様にして、ストランド集合体の積み重ねを目的の積層数(例えば5層)となるまで繰り返し、そのときに隣接するストランド集合体においてストランド5,5,…の繊維方向を互いに直交させる。このようにして積層マットを形成する。図1に示すように、5層のストランド層1,1,…からなるストランドボードBの場合、その5層の積層マットの厚さは例えば35〜60mm程度である。
【0055】
尚、積層マットにおけるストランド集合体の層数は、ストランドボードBの層数に応じて決定されるものである。従って、4層以下であっても6層以上であってもよい。
【0056】
また、ストランド層1を構成するストランド5,5,…の密度は、複数のストランド層1,1,…間において互いに同程度であってもよいし、互いに異なる程度であってもよい。
【0057】
(プレス成形工程)
このようにして複数のストランド集合体が積層された積層マットが形成された後、この積層マットを熱圧プレス装置により所定の圧力及び温度で熱圧プレス処理して一体に成形する。この熱圧プレス処理に係るプレス圧は、例えば2〜4N/mmであり、プレス時間は例えば10〜20分間である。尚、プレス時間は、ストランドボードB(完成品)の厚さによって変動するものであり、10分未満で終了する場合もあれば、20分以上要する場合もある。また、熱圧プレス装置による熱圧プレス処理の前に、加熱装置による予備加熱処理を行ってもよい。
【0058】
このような工程を経て、密度が750〜950kg/mでありかつ曲げ強度が80〜150N/mmのストランドボードBが一体成形される。
【0059】
したがって、この実施形態では、プレス成形工程における熱圧プレスのプレス圧が2〜4N/mmに低く設定される。そのため、特殊な高圧プレス機を用いることなく、高密度で高強度のストランドボードBを得ることができる。
【0060】
また、ストランドボードBは、その表面のストランド層1及び裏面のストランド層1をそれぞれ構成するストランド5,5,…の繊維方向が互い同じであるため、ストランドボードBの表面側及び裏面側のそれぞれ耐荷重・耐衝撃等の性能同士を同じ程度に揃えることができる。すなわち、ストランドボードBの表裏で同等の性能を得ることができる。このことによって、ストランドボードBはその表裏を気にすることなく使用することができるメリットが生じる。
【0061】
また、複数のストランド層1,1,…の厚さが互いに同じ程度に揃えられているため、ストランドボードBの厚さ方向の強度特性や耐水特性等のボード性能を均一化することができる。
【0062】
また、ストランド層1,1,…によるストランドボードBの厚さ方向の密度の分布が面対称であるので、ストランドボードBの表面側及び裏面側の双方で同様の性能を得ることができ、ストランドボードBの表裏を問わずに(気にすることなく)使用できる。
【0063】
さらに、ストランド層1,1,…の積層数が奇数であると、上記と同様に、ストランドボードBの表面側及び裏面側の双方で同様の性能を得ることができる。
【0064】
尚、前述のとおり、ストランド生成工程で生成されるストランド5,5,…は、密度が430〜700kg/mでかつ含水率が2〜20%であること好ましい。しかし、ストランド生成工程によって得られるストランド5,5,…が当該好ましい特性から外れている場合においても、それらストランド5,5,…を利用することができる。
【0065】
具体的には、選別機等により、切削処理後のストランドから所望の特性を有するストランド5,5,…を選別し、その選別されたストランド5,5,…を用いて、その後のストランド生成工程、ストランド前処理工程、接着剤塗布工程、積層工程(マット形成工程)及びプレス成形工程を行うようにしてもよい。
【0066】
また、例えば接着剤塗布工程において使用する接着剤の組成や塗布方法等を工夫することにより、ストランド5,5,…の実質的な含水率や密度を調整するようにしてもよい。また、例えばプレス成形工程の熱圧プレス処理において、又は熱圧プレス処理の前に、所定のプレス処理を実施するようにしてもよい。具体的には、例えばプレス処理(圧密処理を含む)を多段階に分けることによって、熱圧プレス処理に係るストランド5,5,…の実質的な含水率を調整したり、ストランド5,5,…の実質的な密度を高めたりすることが採用される。
【0067】
[参考形態]
図2図8は参考形態を示す(尚、図1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)。これら図2図8は、参考形態に係る木質積層材としてのストランドボードBの複数の例を示しており、図2及び図3はストランドボードBの第1例を示す。また、図4は第2例を、さらに図5は第3例を、また図6は第4例を、そして図7は第5例を、また図8は第6例をそれぞれ示している。
【0068】
上記第1例〜第6例のいずれでもストランドボードBは、複数(奇数)の木質材層としてのストランド層1,1,…を備えている。各ストランド層1は、切削片としての多数のストランド5,5,…(木質材)の集合体からなり、そのストランド5,5,…の集合体が複数積層されて一体化されることで、複数のストランド層1,1,…が形成されている。
【0069】
この参考形態では、図3図8の上側をストランドボードBの表側として下側を裏側とし、ストランド層1,1,…は、表側から裏側に向かって順に第1ストランド層1、第2ストランド層1、第3ストランド層1,…と番号を付す。そして、その番号を図3図8では丸で囲んだ数字にて表している。
【0070】
この参考形態の場合、各ストランド5の密度は300〜1100kg/m程度であることが好ましい。密度が300kg/m未満であると、高密度のストランド層1を生成するために必要な積層マットの厚さが大きくなるとともに、プレス成形工程での熱圧プレス処理に係るプレス圧を高める必要があるからである。
【0071】
一方、ストランド5の密度は1100kg/mを超えてもよいが、そのようなストランド5を容易に得ることが難しいからである。すなわち、1100kg/mを超えるストランド5を容易に得ることができるのであれば、密度の上限値は1100kg/mに限定されず、さらに高い値であってもよい。
【0072】
この参考形態においても、ストランド5,5,…は、各ストランド層1内において、その繊維に沿った方向である繊維方向が所定の方向になるように配向されている。尚、図2にも示すように、各ストランド層1内において、ストランド5,5,…の繊維は同一方向を向いている、すなわち、配向されたストランド5の繊維方向が平行になっている必要はない。換言すると、所定の基準方向に対して繊維方向がある程度傾いているストランド5が含まれていてもよい。例えば、基準方向に対して配向方向が20°程度傾いているストランド5が含まれていてもよい。
【0073】
この参考形態の特徴として、実施形態とは異なり、ストランドボードBにおける奇数のストランド層1,1,…のうちの少なくとも1層が、他のストランド層1bよりも密度の高い高密度ストランド層1aとされ、残りの他のストランド層1bは低密度ストランド層とされている。この参考形態における「ストランド層の密度」とは、ストランド5そのものの密度ではなく、それらの集合体であるストランド層1自体の密度を指している。
【0074】
以下、具体的にストランドボードBの各例について詳細に説明する。尚、図3図8では、高密度ストランド層1aは密な点集合で表し、低密度ストランド層1bは粗い点集合で表している。
【0075】
(第1例)
図2及び図3は参考形態に係るストランドボードBの第1例を示す。このストランドボードBは、第1〜第5の5層のストランド層1,1,…からなる。それらのストランド層1,1,…の各々は、隣接するストランド層1との間でストランド5,5の繊維が互いに直交する方向に延びるように積層されて一体化されている。そして、ストランドボードBの表側端に位置する図3上端の第1ストランド層1と、裏側端に位置する図3下端の第5ストランド層1とにおけるストランド5,5の繊維方向は互いに同じ方向である。
【0076】
また、5層のストランド層1,1,…のうちの2層は、その密度が他の3層よりも高い高密度ストランド層1aとなっており、後者は低密度ストランド層1bとなっている。2層の高密度ストランド層1a,1aは互いに密度が同じで、例えば1000kg/m(平均値)である。一方、3層の低密度ストランド層1b,1b,…も互いに密度が同じで、例えば800kg/mである。この低密度ストランド層1bの密度は、通常一般に成形されるストランドボードの密度と同程度である。
【0077】
具体的には、ストランドボードBの表側端部に位置する第1ストランド層1、裏側端部に位置する第5ストランド層1、及び厚さ方向中央部に位置する第3ストランド層1がいずれも低密度ストランド層1bである。これら表裏端部及び厚さ方向中央部を除いた部分に位置する第2及び第4ストランド層1,1が共に高密度ストランド層1aとされている。
【0078】
また、5層のストランド層1,1,…の厚さは異なっていて3つに分けられている。ストランドボードB全体の厚さに対して、第1及び第5ストランド層1,1(低密度ストランド層1b)の各厚さが例えば25%を、また第2及び第4ストランド層1,1(高密度ストランド層1a)の各厚さが例えば20%を、さらに第3ストランド層1(低密度ストランド層1b)の厚さが例えば10%をそれぞれ占めている。このことでストランドボードBの全体に対する高密度ストランド層1aの厚さは例えば40%となっている。また、5層のストランド層1,1,…は、それらのストランド層1,1,…による密度の分布がストランドボードBの積層方向、すなわち厚さ方向の中央位置に対して面対称になるように積層されている。尚、ストランドボードBの総厚さは例えば28mmである。
【0079】
ここで、参考形態に係るストランドボードBを製造する方法について説明する。尚、この製造方法は、第1例のストランドボードBだけでなく、第2例〜第6例の各ストランドボードBを製造する場合も同様である。
【0080】
この参考形態の製造方法は、基本的に実施形態と同じである。従って、実施形態と同じ部分の説明は省略し、異なる部分だけ詳細に説明する。
【0081】
すなわち、この製造方法は、ストランド生成工程、ストランド前処理工程、接着剤塗布工程、積層工程(マット形成工程)及びプレス成形工程を有する。そのうち、ストランド前処理工程、接着剤塗布工程、プレス成形工程は実施形態と同じである。
【0082】
そして、この参考形態では、マット形成工程において、ストランドの集合体上に別のストランド集合体を積み重ねて積層マットを形成するとき、高密度ストランド層1aにしようとするストランド集合体については、その各ストランド5の密度を、低密度ストランド層1bとなるストランド集合体のストランド5の密度よりも高くする。そうすることで、高密度ストランド層1a及び低密度ストランド層1bを混在させて一体的に積層することができる。
【0083】
例えば、最初のストランド生成工程において、予め、通常一般の範囲の密度を有するストランドと、それよりも高い密度を有するストランドとの2種類を用意しておく。そして、低密度層ストランド層1bとなるストランド集合体については、そのストランド5として、通常一般の範囲の密度を有するものを用いる。それに対し、高密度ストランド層1aとなるストランド集合体にあっては、そのストランド5として、圧縮等によって通常一般の範囲よりも高い密度としたものを用いるようにしてもよい。
【0084】
また、高密度ストランド層1aとなるストランド集合体のストランド5と、低密度層ストランド層1bとなるストランド集合体のストランド5との間で樹種等を異ならせ、高密度ストランド層1aとなるストランド集合体のストランド5は、低密度層ストランド層1bとなるストランド集合体のストランド5よりも密度の高い樹種を用いるようにしてもよい。
【0085】
また、積層マットが形成された後、この積層マットを熱圧プレス装置により所定の圧力及び温度で熱圧プレス処理して一体に成形するプレス成形工程において、その熱圧プレス処理に係るプレス圧は実施形態と同様に例えば2〜4N/mmであるが、プレス時間は例えば10〜30分間である。尚、この参考形態でも、プレス時間は、ストランドボードB(完成品)の厚さによって変動するものであり、10分未満で終了する場合もあれば、30分以上要する場合もある。また、熱圧プレス装置による熱圧プレス処理の前に、加熱装置による予備加熱処理を行ってもよい。
【0086】
尚、前述のとおり、ストランド生成工程で生成されるストランド5は、密度が300〜1100kg/mでかつ含水率が2〜8%であること好ましいが、この好ましい特性から外れているストランドでも利用することができる。
【0087】
(第2例)
図4はストランドボードBの第2例を示す。このストランドボードBは、第1例と同様に、第1〜第5の5層のストランド層1,1,…からなる。それらのストランド層1,1,…の各々は、隣接するストランド層1との間でストランド5の繊維が互いに直交する方向に延びるように積層されて一体化されている。ストランドボードBの表側端に位置する図4上端の第1ストランド層1と、裏側端に位置する図4下端の第5ストランド層1とにおけるストランド5,5の繊維方向は互いに同じである。
【0088】
5層のストランド層1,1,…のうちの2層は高密度ストランド層1aとなっており、他の3層は、高密度ストランド層1aよりも密度の低い低密度ストランド層1bとなっている。2層の高密度ストランド層1a,1aは互いに密度が同じで、例えば1100kg/m(平均値)であり、この密度は第1例の高密度ストランド層1aよりも高くなっている。一方、3層の低密度ストランド層1b,1b,…も互いに密度が同じであり、この密度は第1例の低密度ストランド層1bよりも低い(ストランドボードBの製品密度が第1例より低いため)。
【0089】
上記第1例とは異なり、ストランドボードBの表側端部に位置する第1ストランド層1と、裏側端部に位置する第5ストランド層1とが高密度ストランド層1aとされている。残りの厚さ方向の中間部に位置する第2〜第4ストランド層1,1,…は低密度ストランド層1bとなっている。
【0090】
また、5層のストランド層1,1,…の厚さはいずれも同じで、ストランドボードB全体の厚さに対して各ストランド層1の厚さが例えば20%ずつを占めている。このことでストランドボードBの全体に対する高密度ストランド層1aの厚さは例えば40%となっている。また、5層のストランド層1,1,…は、それらのストランド層1,1,…による密度の分布がストランドボードBの厚さ方向の中央位置に対し面対称になるように積層されている。尚、ストランドボードBの総厚さは例えば9mmである。
【0091】
(第3例)
図5はストランドボードBの第3例を示す。このストランドボードBは、第2例とは異なり、第1〜第7の7層のストランド層1,1,…からなる。それらのストランド層1,1,…は、隣接するストランド層1との間でストランド5の繊維が互いに直交する方向に延びるように積層されて一体化されている。ストランドボードBの表側端に位置する図5上端の第1ストランド層1と、裏側端に位置する図5下端の第7ストランド層1とにおけるストランド5,5の繊維方向は互いに同じである。
【0092】
7層のストランド層1,1,…のうちの2層は高密度ストランド層1aとなっている。他の5層は、高密度ストランド層1aよりも密度の低い低密度ストランド層1bとなっている。2層の高密度ストランド層1a,1aは互いに密度が同じで、例えば1000kg/m(平均値)であり、この密度は第1例の高密度ストランド層1aと同じである。一方、5層の低密度ストランド層1b,1b,…も互いに密度が同じであり、この密度は第1例の低密度ストランド層1bよりも低い(ストランドボードBの製品密度が第1例より低いため)。
【0093】
具体的には、ストランドボードBの表側端部に位置する第1ストランド層1と、裏側端部に位置する第7ストランド層1とが高密度ストランド層1aとされている。残りの厚さ方向の中間部に位置する第2〜第6ストランド層1,1,…はいずれも低密度ストランド層1bとなっている。
【0094】
また、7層のストランド層1,1,…の厚さは異なっていて2つに分けられている。ストランドボードB全体の厚さに対して、第1及び第7ストランド層1,1(高密度ストランド層1a)の各厚さが例えば15%を、また第2、第3、第5及び第6ストランド層1,1,…(低密度ストランド層1b)の各厚さが例えば15%を、さらに第4ストランド層1(低密度ストランド層1b)の厚さが例えば10%をそれぞれ占めている。このことでストランドボードBの全体に対する高密度ストランド層1aの厚さは例えば30%となっている。また、7層のストランド層1,1,…は、それらのストランド層1,1,…による密度の分布がストランドボードBの厚さ方向の中央位置に対し面対称になるように積層されている。尚、ストランドボードBの総厚さは例えば12mmである。
【0095】
(第4例)
図6はストランドボードBの第4例を示す。このストランドボードBは、第2例や第3例とは異なり、第1〜第3の3層のストランド層1,1,…からなっている。それらストランド層1,1,…は、隣接するストランド層1との間でストランド5の繊維が互いに直交する方向に延びるように積層されて一体化されている。ストランドボードBの表側端に位置する図6上端の第1ストランド層1と、裏側端に位置する図6下端の第3ストランド層1とにおけるストランド5,5の繊維方向は互いに同じである。
【0096】
3層のストランド層1,1,…のうちの1層が高密度ストランド層1aとなっている。他の2層は、高密度ストランド層1aよりも密度の低い低密度ストランド層1bとなっている。1層の高密度ストランド層1aの密度は例えば800kg/m(平均値)であり、第2例の高密度ストランド層1aよりも低くなっている。一方、低密度層である2層のストランド層1b,1bも互いに密度が同じであり、この密度は第1例の低密度ストランド層1bと同じである。
【0097】
具体的には、ストランドボードBの厚さ方向の中央部(中間部)に位置する第2ストランド層1のみが高密度ストランド層1aとされ、表裏側端部に位置する第1及び第3ストランド層1,1は低密度ストランド層1bとなっている。
【0098】
また、3層のストランド層1,1,…の厚さは異なっていて2つに分けられている。ストランドボードB全体の厚さに対して、第1及び第3ストランド層1,1(低密度ストランド層1b)の各厚さが例えば20%を、また第2ストランド層1(高密度ストランド層1a)の厚さが例えば60%をそれぞれ占めている。このことでストランドボードBの全体に対する高密度ストランド層1aの厚さは例えば60%となっている。また、3層のストランド層1,1,…は、それらのストランド層1,1,…による密度の分布がストランドボードBの厚さ方向の中央位置に対し面対称になるように積層されている。尚、ストランドボードBの総厚さは例えば18mmである。
【0099】
(第5例)
図7はストランドボードBの第5例を示す。このストランドボードBは、第4例と同様に第1〜第3の3層のストランド層1,1,…からなる。それらのストランド層1,1,…は、第1例〜第4例と異なり、隣接するストランド層1との間でストランド5の繊維が平行な方向に延びるように積層されて一体化されている。すなわち、ストランドボードBの表側端に位置する図7上端の第1ストランド層1と、裏側端に位置する図7下端の第3ストランド層1とにおけるストランド5,5の繊維方向は互いに同じ方向である。また、ストランドボードBの厚さ方向の中央部に位置する第2ストランド層1におけるストランド5の繊維方向も第1及び第3ストランド層1,1のストランド5,5の繊維方向と同じである。
【0100】
第4例とは異なり、3層のストランド層1,1,…のうちの2層は高密度ストランド層1aとなっており、他の1層は低密度ストランド層1bとなっている。2層の高密度ストランド層1a,1aは、密度が例えば800kg/m(平均値)であり、この密度は第4例の高密度ストランド層1aと同じである。一方、1層の低密度ストランド層1bの密度は、第1例の低密度ストランド層1bよりも低い(ストランドボードBの製品密度が第1例より低いため)。
【0101】
具体的には、ストランドボードBの表裏側端部に位置する第1及び第3ストランド層1,1は高密度ストランド層1aとされ、厚さ方向の中央部に位置する第2ストランド層1のみが低密度ストランド層1bとなっている。
【0102】
また、3層のストランド層1,1,…の厚さは異なっていて2つに分けられている。ストランドボードB全体の厚さに対して、第1及び第3ストランド層1,1(高密度ストランド層1a)の各厚さが例えば40%を、また第2ストランド層1(低密度ストランド層1b)の厚さが例えば20%をそれぞれ占めている。このことでストランドボードBの全体に対する高密度ストランド層1aの厚さは例えば80%となっている。また、3層のストランド層1,1,…は、それらのストランド層1,1,…による密度の分布がストランドボードBの厚さ方向の中央位置に対し面対称になるように積層されている。尚、ストランドボードBの総厚さは例えば15mmである。
【0103】
(第6例)
図8はストランドボードBの第6例を示す。このストランドボードBは、第1例と同様に、第1〜第5の5層のストランド層1,1,…からなる。それらのストランド層1,1,…の各々は、隣接するストランド層1との間でストランド5の繊維が互いに直交する方向に延びるように積層されて一体化されている。ストランドボードBの表側端に位置する図8上端の第1ストランド層1と、裏側端に位置する図8下端の第5ストランド層1とにおけるストランド5,5の繊維方向は互いに同じである。
【0104】
5層のストランド層1,1,…のうちの3層は高密度ストランド層1aとなっている。他の2層は、高密度ストランド層1aよりも密度の低い低密度ストランド層1bとなっている。3層の高密度ストランド層1a,1a,…は互いに密度が同じで、例えば1000kg/m(平均値)であり、この密度は第1例の高密度ストランド層1aと同じである。一方、2層の低密度ストランド層1b,1bも互いに密度が同じであり、この密度は第1例の低密度ストランド層1bと同じである。
【0105】
具体的には、第2例とは逆に、ストランドボードBの厚さ方向の中間部に位置する第2〜第4ストランド層1,1,…は高密度ストランド層1aとされている。残りの表側端部に位置する第1ストランド層1と、裏側端部に位置する第5ストランド層1とが低密度ストランド層1bとなっている。
【0106】
また、5層のストランド層1,1,…の厚さは異なっていて3つに分けられている。ストランドボードB全体の厚さに対して、第1及び第5ストランド層1,1(低密度ストランド層1b)の各厚さが例えば30%を、また第2及び第4ストランド層1,1(高密度ストランド層1a)の各厚さが例えば15%を、さらに第3ストランド層1(高密度ストランド層1a)の厚さが例えば10%をそれぞれ占めている。このことでストランドボードBの全体に対する高密度ストランド層1aの厚さは例えば60%となっている。また、5層のストランド層1,1,…は、それらのストランド層1,1,…による密度の分布がストランドボードBの厚さ方向の中央位置に対し面対称になるように積層されている。尚、ストランドボードBの総厚さは例えば28mmである。
【0107】
以上の第1例〜第6例についての具体的な構成を図9に示している。
【0108】
したがって、この参考形態においては、ストランドボードBが複数層のストランド層1,1,…からなり、それらのうちの一部(1層〜3層)のストランド層1が他のストランド層1よりも密度の高い高密度ストランド層1aとされている。そのため、その高密度ストランド層1aによってストランドボードBの高強度及び高耐水性能が実現できるようになり、高強度で高い耐水性能を有するストランドボードBが得られる。
【0109】
また、ストランドボードBにおけるストランド層1の密度を高くして高密度ストランド層1aとする場合、例えばその高密度ストランド層1aのストランド5のみを高密度にすればよく、全てのストランド層1,1,…のストランド5を高密度にすることは不要となる。その分、プレス機によるプレス時間が短くなり、プレス圧力も低くなり、生産性を向上させることができるとともに、成形時のパンクを防止することもできる。
【0110】
さらに、ストランドボードBの奇数のストランド層1,1,…のうちの1層ないし3層が高密度ストランド層1aであることから、上記第1例〜第6例に示すように、複数のストランド層1,1,…の中から高密度ストランド層1aとすべき層を必要に応じて選択することができる。このように、高密度ストランド層1aの位置の変更によってストランドボードBの特性として種々のバリエーションが得られ、各例特有の効果を奏することができる。
【0111】
すなわち、例えば図2及び図3に示す第1例図8に示す第6例も同様)では、ストランドボードBの表裏端部と厚さ方向中央部とを除いた部分に位置する第2及び第4ストランド層1,1が高密度ストランド層1aとされ、残りの表裏端部と厚さ方向中央部とに位置する第1、第3及び第5ストランド層1,1,…が密度の低い低密度ストランド層1bである。このようにすると、表裏部の低密度ストランド層1bによって成形時のプレス圧力を低減できるとともに、ストランドボードBに打たれる固定具としての釘に対する引き抜き抵抗(力)を高密度ストランド層1aによって増大させることができる利点がある。特に、図8に示す第6例では、生産性がより一層上がる効果を奏することができる。
【0112】
また、図4に示す第2例や図5に示す第3例では、ストランドボードBの表裏端部に位置するストランド層1,1が高密度ストランド層1aとされ、中間部に位置するストランド層1,1,…が低密度ストランド層1bである。このような構造では、表裏部の高密度ストランド層1aによって、ストランドボードBの曲げ強度を増大させることができるとともに、その表裏部の耐水性能を向上させることができる。
【0113】
さらに、図6に示す第4例では、ストランドボードBの表裏中間部に位置するストランド層1が高密度ストランド層1aとされ、他の部分に位置するストランド層1,1が低密度ストランド層1bである。このような構造では、その高密度ストランド層1aにより中間部の密度が高くなってストランドボードBの厚さ方向全体から見た密度分布を均一にすることができる。また、ストランドボードBの厚さ方向中間部に高密度ストランド層1aが配置され、表裏部は低密度ストランド層1bであるので、成形時のパンクを有効に防止して生産性を向上させることができる。
【0114】
また、図7に示す第5例では、ストランドボードBの表裏中央部に位置するストランド層1が密度ストランド層1bとされ、ストランドボードBの表裏側端に位置する第1及び第3ストランド層1,1が密度ストランド層1aとされている。さらに、第1〜第3ストランド層1,1,…の全てにおけるストランド5,5,…の繊維方向が互いに同じ方向である。このように構造にすると、その繊維方向に沿った曲げ強度を増大させ、剪断強度をも増大させることができる。
【0115】
そして、この参考形態におけるストランドボードBの第1例〜第4例では、各ストランド層1におけるストランド5,5,…の繊維が互いに同じ方向に延び、かつ隣接するストランド層1のストランド5の繊維が互いに直交する方向に延びている。こうすると、第5例のように、ストランド5の繊維が全てのストランド層1,1,…の全体に亘って同じ方向に延びている場合と比較して、様々な方向からの力の作用に対し高い強度を実現することができ、ストランド層1の積層数が増加するほど上記繊維方向の違いによる強度の差がより顕著になる。
【0116】
これに対し、第5例のように、積層方向全体に亘ってストランド5,5の配向方向が同じ場合、上述のように、特定の方向からの力の作用に対し高い強度を実現することができる。
【0117】
また、この参考形態においても、ストランド層1,1,…によるストランドボードBの厚さ方向の密度の分布が面対称であるので、ストランドボードBの表面側及び裏面側の双方で同様の性能を得ることができ、ストランドボードBの表裏を問わずに使用できる。
【0118】
しかも、ストランドボードBは奇数のストランド層1,1,…が積層されたものであるので、ストランドボードBの表面側及び裏面側の双方で同様の性能を得ることができる。
【0119】
[その他の実施形態]
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、複数のストランド層1,1,…の厚さw1〜w3が全て同一とされているが、これに限定されず、各層1の厚さw1〜w3は任意に設定することができる。
【0120】
例えば複数のストランド層1,1,…は、厚さ方向(積層方向)の内側の層から外側の層に向かって次第に厚さが増すように構成されていてもよい。つまり、図1において複数のストランド層1,1,…の厚さが、w1>w2>w3の関係となっていてもよい。このように、荷重や衝撃を受け易く、また湿度等の影響を受け易い外側(表裏側)のストランド層1の厚さを他のストランド層1よりも厚くすることで、ストランドボードBにおける外部環境からの影響に対する性能を高めることができる。
【0121】
また、複数のストランド層1,1,…の厚さが互いに異なっていてもよい。例えば表面及び裏面の2層のストランド層1,1の厚さw1と、中間の3層のストランド層1,1,…の厚さw2,w3とが異なる値であってもよい。また、図示しないが、5層全てのストランド層1,1,…の厚さが互いに異なっていてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、全てのストランド層1,1,…において、そのストランド5,5,…の繊維方向が、隣接するストランド層1のストランド5,5,…の繊維方向と直交しているが、これに限定されない。例えば複数のストランド層1,1,…のうち、一部の隣接するストランド層1,1のストランド5,5,…の繊維方向が同一であってもよい。また、例えば長さや密度等の形態が互いに異なるストランド5,5,…を含むストランド層1,1が互いに隣接配置されている場合に、この隣接するストランド層1,1のストランド5,5,…の繊維方向が同一であってもよい。
【0123】
さらに、上記実施形態において、ストランドボードBの各ストランド層1を構成するストランド5(木質材)の密度や厚さをストランド層1,1,…間で互いに異ならせるようにしてもよい。
【0124】
例えば、積層工程(マット形成工程)において、複数のストランド5,5,…の集合体を積み重ねる際に、各ストランド集合体のストランド5自体の相対的な密度が、厚さ方向の外側のストランド層1から内側のストランド層1に向かって次第に増すように積み重ねてもよい。一般的に、プレス成形工程において、積層マットのプレス処理を実施すると、プレス機の圧力が直接与えられる外側のストランド層1の方が内側のストランド層1と比較して、相対的な密度が高まる傾向にある。そのため、このように、プレス処理の前において、予め内側のストランド層1のストランド5の相対的な密度を外側のストランド層1よりも高くすることによって、プレス処理後において、ストランドボードBの積層方向の密度分布を均一化することができるようになる。この場合において、各ストランド層1を構成するストランド5の樹種は、互いに異ならせてもよいし、互いに同じであってもよい。
【0125】
すなわち、一部又は全てのストランド層1において、各ストランド層1のストランド5の樹種、厚さ、密度等を必要な特性やコスト等に応じて適宜選択することができる。
【0126】
また、実施形態の積層工程(マット形成工程)において、複数のストランド層1,1,…のうちの少なくとも1層が高密度のストランド5,5,…で構成されるようにストランド集合体を積み重ねてもよい。このストランド層1は、他のストランド層1よりも相対的に密度の高いストランド5で構成された層である。具体的には、例えばストランドボードBが奇数層のストランド層1を有する場合において、表面側又は裏面側から見て奇数番目のストランド層1が当該高密度のストランド5で構成されるように積層してもよい。また、例えばストランドボードBの用途、求められる強度特性、その他の性能等に応じて、複数のストランド層1,1,…のうちの特定のストランド層1(少なくとも1層)が高密度のストランド5,5,…で構成されるように積層してもよい。尚、高密度ストランド5,5,…で構成されるストランド層1が複数ある場合に、それらストランド層1,1,…の密度及び厚さが互いに異なっていてもよい。
【0127】
尚、上記参考形態では、ストランドボードBが奇数のストランド層1,1,…を備えているものとしているが、ストランド層1の積層数は偶数であってもよい。しかし、ストランドボードBの表面側及び裏面側の双方で同様の性能が得られるようにできる点では奇数の方が好ましい。
【0128】
また、上記参考形態では、各ストランド層1におけるストランドの繊維を互いに同じとし、隣接するストランド層1のストランド5,5の繊維方向が直交するか平行になるようにしたが、これに限定されず、各ストランド層1のストランド5の繊維方向は自由に選択することができる。
【0129】
また、上記実施形態では、ストランド5の集合体をボード状に積層したストランドボードBについて説明したが、本発明はこのようなストランドボードBに限定されない。例えば厚さ及び幅に大きな差がない断面矩形状(角材状)の複数のストランド層が積層されていてもよく、その場合、ストランド材(木質積層材)は、複数のストランド層が積層された根太や柱等にすることができる。
【0130】
さらに、上記実施形態及び参考形態は、集合状態の複数のストランド5,5,…で構成された複数のストランド層1,1,…が積層された状態で一体化されたストランドボードBの例である。尚、例えば合板やLVL(Laminated Veneer Lumber)とし、具体的には、ストランド5の集合体に代えて単板とすれば、各木質材層はそれぞれ少なくとも1枚の単板によって構成される。
【0131】
この木質積層材が合板やLVLの場合、その製造方法は一般的な合板やLVLの製造方法を採用することができる。具体的には、切削機により丸太や間伐材等の生木を切削して単板を生成する。次いで、複数枚の単板を単板間に接着剤を介在させた状態で、LVLでは隣接する単板の繊維方向が同じ方向に、また合板では隣接する単板の繊維方向が互いに直交する方向にそれぞれ積層する。その後、単板の積層体を冷圧プレス・熱圧プレスにより成形して接着剤を硬化させればよい。
【0132】
そのとき、実施形態のように、木質材層の積層方向の密度分布を実質的に一定にする場合には、例えばプレス成形工程で成形される前に、予め各単板の密度や厚さ等を設定すればよい。
【0133】
一方、参考形態のように、木質材層を高密度木質材層と低密度木質材層との組み合わせにする場合には、やはり例えばプレス成形工程で成形される前に、予め一部の木質材層において、各木質材層を構成する木質材の密度を樹種等によって他の木質材層よりも高くすればよい。
【実施例】
【0134】
次に、上記実施形態及び参考形態に係るストランドボードについて、具体的に実施した実施例について説明する。尚、実施形態及び参考形態にそれぞれ係る「実施例」や「比較例」は、その番号が同じであっても互いに異なっており、参考形態及び実施形態毎に特定されたものである。
【0135】
[実施形態について]
(実施例1)
繊維方向に沿う長さが150〜200mm、幅が15〜25mm、厚さが0.8〜2mmで、密度が500〜600kg/mのヒノキ製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる37mm厚の積層マットを形成した。その後、プレス温度140℃及びプレス圧4N/mmで10分間の熱圧プレスを行い、密度818kg/m、厚さ12.4mmのストランドボードを得た。これが実施例1である。
【0136】
その実施例1の外観写真を図10に示す。尚、図10中、Bはストランドボード、1はストランド層である。また、この実施例1について曲げ試験、寸法変化試験及び吸水試験を行った結果を図11に示す。さらに、密度分布測定装置(ELECTRONIC WOOD SYSTEMSGMBH社製の「DENSE-LAB X」)を用いて、ストランドボードの厚さ方向(積層方向)の密度分布を測定した結果を図12に示す。
【0137】
(実施例2)
繊維方向に沿う長さが150〜200mm、幅が15〜25mm、厚さが0.8〜2mmで、密度が450〜550kg/mのベイマツ製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる36mm厚の積層マットを形成した。その後、プレス温度140℃及びプレス圧4N/mmで10分間の熱圧プレスを行い、密度832kg/m、厚さ12.2mmのストランドボードを得、それを実施例2とした。この実施例2について曲げ試験、寸法変化試験及び吸水試験を行った結果を同じ図11に示す。
【0138】
(比較例1)
繊維方向に沿う長さが150〜200mm、幅が15〜25mm、厚さが0.8〜2mmで、密度が400〜500kg/mのヒノキ製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる42mm厚の積層マットを形成した。その後、プレス温度140℃及びプレス圧8N/mmで10分間の熱圧プレスを行い、密度779kg/m、厚さ12.7mmのストランドボードを得、それを比較例1とした。この比較例1について曲げ試験、寸法変化試験及び吸水試験を行った結果を同じ図11に示す。さらに、密度分布測定装置(DENSE-LAB X、ELECTRONIC WOOD SYSTEMSGMBH社製)を用いて、ストランドボードの厚さ方向(積層方向)の密度分布を測定した結果を図13に示す。
【0139】
(比較例2)
繊維方向に沿う長さが150〜200mm、幅が15〜25mm、厚さが0.8〜2mmで、密度が350〜450kg/mのベイマツ製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる35mm厚の積層マットを形成した。その後、プレス温度140℃及びプレス圧8N/mmで10分間の熱圧プレスを行い、密度812kg/m、厚さ12.4mmのストランドボードを得、それを比較例2とした。この比較例2について曲げ試験、寸法変化試験及び吸水試験を行った結果を同じ図11に示す。
【0140】
図11の結果を考察するに、実施例1は比較例1に比べて、密度が高く、曲げ強度、MOR(Modulus of Rupture)、MOE(Modulus of Elasticity)がいずれも高いことが判る。寸法変化率、吸水率は、実施例1と比較例1とで同等の値である。同様に、実施例2は比較例2に比べて、密度が高く、曲げ強度、MORがほぼ同等で、MOEが高いことが判る。寸法変化率、吸水率は、実施例2と比較例2とで同等の値である。
【0141】
また、図12及び図13の結果を考察するに、実施例1は比較例1に比べて、複数のストランド層の積層方向の密度分布が実質的に一定であることが判る。密度分布が実質的に一定であるとは、例えば図12及び図13に示すように、密度分布の測定結果に変動がある場合に、その各図で破線にて示す中間値の変化が少なくて中間値が実質的に一定であることを含むものとする。例えば、図12(実施例1)に示す破線と、図13(比較例1)に示す破線とを比較した場合、図12に示す密度分布の中間値の方が変動が少なく、中間値は略一定の値となっている。
【0142】
このように密度分布が実質的に一定であることにより、密度分布のむらがなく、ストランドボード全体としての耐水性・強度(せん断強度等)が向上する。具体的には、密度が低い部分は、密度が高い部分と比較して耐水性能、強度が劣る。そのため、密度分布のむらがあると、密度が低い部分の耐水性能及び強度によりストランドボード全体の性能が律則される。これに対し、密度分布が略一定の場合には、そのような性能のボトルネックとなるような部分をなくすことができる。
【0143】
尚、上記曲げ試験は、IICL_Floor_Performance TB001Ver.2に準じて行った。寸法変化試験及び吸水試験は、合板の日本農林規格の煮沸繰り返し試験に準じて行った。
【0144】
[参考形態について]
(実施例1)
厚さが0.8mmで、密度が300〜600kg/mのアスペン製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる厚さ53mmの積層マットを形成した。その5層のストランド層のうち、参考形態におけるストランドボードの第2例(図4参照)と同様に、積層方向の中間部に位置する第2〜第4ストランド層のストランドは、通常一般の密度(平均値393kg/m)のものを用いた。また、積層方向の両端部に位置する第1及び第5ストランド層のストランドについては、通常一般よりも密度が高い(平均値557kg/m)ものを用いた。
【0145】
その後、プレス温度160℃及びプレス圧4N/mmで8分間の熱圧プレスを行い、ストランドボードを得、それを実施例1とした。このプレス時の目標厚さ到達時間は24秒であった。
【0146】
(実施例2)
実施例1と同様に、5層のストランド層からなる厚さ52mmの積層マットを形成した。その5層のストランド層のうち、積層方向の両端部に位置する第1及び第5ストランド層のストランドについては、実施例1よりも密度が高い(平均値805kg/m)ものを用いた。その後、実施例1と同様の条件で熱圧プレスを行い、ストランドボードを得、それを実施例2とした。このプレス時の目標厚さ到達時間は12秒であった。他は実施例1と同じである。
【0147】
(比較例1)
実施例1と同様に、5層のストランド層からなる厚さ62mmの積層マットを形成した。その5層のストランド層は、全て通常一般の密度(平均値393kg/m)のものを用いた。その後、実施例1と同様の条件で熱圧プレスを行い、ストランドボードを得、それを比較例1とした。プレス時の目標厚さ到達時間は33秒であった。他は実施例1と同じである。
【0148】
(試験A)
上記実施例1,2及び比較例1の各々について常態曲げ試験(曲げ試験のスパンは225mm)を行った。その結果を他の物性と共に図14に示す。
【0149】
また、上記の密度分布測定装置(ELECTRONIC WOOD SYSTEMSGMBH社製の「DENSE-LAB X」)を用いて、ストランドボードの厚さ方向(積層方向)の密度分布を測定した。その結果を図15に示す。
【0150】
図14の結果を考察するに、実施例1及び実施例2と比較例1との比較により、5層のストランド層のうちの表裏の第1及び第5ストランド層を高密度ストランド層とすることで、プレス前の積層マットの厚さ(かさ高さ)は小さくなり、プレス時にも積層マットが潰れ易くなって目標値に達するまでのプレス時間(目標厚さ到達時間)が短くなっている。また、常態曲げ試験による曲げ特性については、MOR、MOEは実施例1及び実施例2のいずれも比較例1と同等である。
【0151】
(実施例3)
厚さが0.8mmで、密度が300〜600kg/mのアスペン製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる厚さ70mmの積層マットを形成した。その5層のストランド層のうち、参考形態におけるストランドボードの第1例(図3参照)と同様に、積層方向の中間部に位置する第2及び第4ストランド層を除く第1、第3及び第5ストランド層のストランドは、通常一般の密度(平均値393kg/m)のものを用いた。また、第2及び第4ストランド層のストランドについては、通常一般よりも密度が高い(平均値933kg/m)ものを用いた。
【0152】
その後、プレス温度140℃及びプレス圧4N/mmで10分間の熱圧プレスを行い、密度846kg/m、厚さ12.5mmのストランドボードを得、それを実施例3とした。MDI添加率は12%である。
【0153】
(比較例2)
実施例3と同様にして、5層のストランド層からなる厚さ78mmの積層マットを形成した。その5層のストランド層は、全て通常一般の密度(平均値393kg/m)のものを用いた。その後、プレス温度140℃及びプレス圧8N/mmで10分間の熱圧プレスを行い、密度848kg/m、厚さ12.6mmのストランドボードを得、それを比較例2とした。他は実施例3と同じである。
【0154】
(試験B)
上記実施例3及び比較例2について常態曲げ試験及び煮沸試験を行った。煮沸試験は、合板の日本農林規格の煮沸繰り返し試験に準じて行い、2回の煮沸試験後の吸水厚さ膨張率TS、吸水率WA及び剥離強度IBを調べた。その結果を他の物性と共に図16に示す。
【0155】
また、試験Aと同様に、密度分布測定装置を用いて、ストランドボードの厚さ方向(積層方向)の密度分布を測定した結果を図17に示す。
【0156】
図16の結果を考察するに、5層のストランド層のうちの積層方向中間部に位置する第2及び第4ストランド層を高密度ストランド層とした実施例3と、5層の全層を低密度ストランド層とした比較例2とを比較したとき、実施例3の曲げ強度や煮沸試験後の剥離強度は比較例2と同じかそれを上回っており、比較例2よりも低下していない。
【0157】
そして、5層のストランド層のうちの第2及び第4ストランド層を高密度ストランド層とすることで、比較例2のような高いプレス圧(8N/mm)でなく、それよりも低い4N/mmのプレス圧であっても、比較例2と同等の性能を有するストランドボードを成形できることが判る。
【0158】
(実施例4)
厚さが0.8mmで、密度が300〜600kg/mのアスペン製の多数のストランドの集合体を積層して5層のストランド層からなる厚さ130mmの積層マットを形成した。その5層のストランド層のうち、参考形態におけるストランドボードの第6例(図8参照)と同様に、積層方向の中間部に位置する第2〜第4ストランド層を除く第1及び第5ストランド層のストランドは、通常一般の密度(平均値413kg/m)のものを用いた。また、第2〜第4ストランド層のストランドについては、通常一般よりも密度が高い(平均値1100kg/m)ものを用いた。
【0159】
その後、プレス温度160℃及びプレス圧8N/mmで60分間の熱圧プレスを行い、所定の密度及び厚さ(図18参照)のストランドボードを得、それを実施例4とした。
【0160】
(比較例3)
実施例4と同様にして、5層のストランド層からなる積層マットを形成した。その5層のストランド層は、全て通常一般の密度(平均値413kg/m)のものを用いた。その後、プレス温度140℃及びプレス圧8N/mmで60分間の熱圧プレスを行い、所定の密度及び厚さ(図18参照)のストランドボードを得、それを比較例3とした。他の処理は実施例4と同じである。
【0161】
(比較例4)
実施例4と同様にして、5層のストランド層からなる積層マットを形成した。その5層のストランド層は、全て通常一般の密度(平均値413kg/m)のものを用いた。その後、プレス温度160℃及びプレス圧8N/mmで30分間の熱圧プレスを行い、所定の密度及び厚さのストランドボードを得、それを比較例4とした。尚、この比較例4では、冬場で接着剤の硬化不良を避けるために、プレス温度を比較例3よりも上げている。また、比較例4は小サイズのものであり、プレス時間を実施例4や比較例3よりも短くしている。他の処理は実施例4と同じである。
【0162】
(試験C)
上記実施例4及び比較例3について常態曲げ試験、煮沸試験及び接合耐久性試験(Bond Durabirity試験)を行った。その結果を他の物性と共に図18に示す。尚、図18中、「Elastic Limit Pmax」は弾性限界荷重、「Ratio of ELP」は最大荷重(Pmax)に占めるElastic Limit Pmaxの割合、「Inside Share Strength」は内部剪断破壊強度である。また、曲げ方向の「縦」とはボードの長さ方向を、また曲げ方向の「横」とはボードの幅方向をそれぞれ表し、「N=2(N=3)」とは試験片数が2体(3体)であることを表している。また、「TS」は厚さ膨潤率、「WA」は吸水率、「IB」は剥離強度である。
【0163】
また、実施例4及び比較例4について釘引き抜き試験を行った。釘引き抜き試験では、実施例4及び比較例4の各サンプルに形成される先孔は2mmの内径で深さ25mmである。また、実施例4は3つのサンプルを、また比較例4は4つのサンプルをそれぞれ試験し、それらの平均値を求めた。その結果を図19に示す。
【0164】
また、試験Aと同様に、密度分布測定装置を用いて、ストランドボードの厚さ方向(積層方向)の密度分布を測定した結果を図20に示す。
【0165】
図18の結果を考察するに、5層のストランド層のうちの積層方向中間部に位置する第2〜第4ストランド層を高密度ストランド層とした実施例4と、5層の全層を低密度ストランド層とした比較例3とを比較したとき、実施例4の曲げ強度は比較例3と同程度であり、実施例4の煮沸試験後の剥離強度は比較例3を上回っている。
【0166】
このため、5層のストランド層のうちの第2〜第4ストランド層を高密度ストランド層とすることで、比較例3と同等の性能を有するストランドボードを成形できることが判る。
【0167】
また、図19の結果を考察すると、5層のストランド層のうちの厚さ方向中間部に位置する第2〜第4ストランド層を高密度ストランド層とすれば、釘引き抜き抵抗(力)を増大させて、同性能の向上を達成できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、コンテナ、船舶、車両用等の床材として用いるのに好適である。また、住宅等建築物の床材、耐力面材として用いるのに好適な新しい建築用材としても極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0169】
B ストランドボード(木質積層材)
1 ストランド層(木質材層)
5 ストランド(切削片)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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