(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一面に開口部を有する周壁部と、前記開口部と対向する対向壁部と、前記開口部を囲む前記周壁部の端面に該端面に沿って延びる閉ループ状の半田付け可能な第1の接合パターンを備えたキャップ部材と、
前記第1の接合パターンに沿って形成された閉ループ状の半田層と、
センサ素子と、前記半田層により前記第1の接合パターンに接合される半田付け可能な第2の接合パターンを備えて前記開口部を塞ぐセンサ付き基板とを備え、
前記キャップ部材と前記センサ付き基板とによって囲まれた内部空間が真空状態に保持されているセンサデバイスであって、
前記第1の接合パターン及び前記第2の接合パターンの少なくとも一方の形状は、
複数の半田ボールの設置面と全面的に接触する形状の複数のランド部が、前記端面が延びる方向に所定の間隔をあけて配置された形状を有しており、
前記ランド部以外の非ランド部の幅寸法が、前記ランド部の最大幅寸法よりも小さく、且つ前記複数のランド部の数及び前記所定の間隔が前記複数の半田ボールが溶融して形成された前記半田層が完全な閉ループ状になるように定められていることを特徴とするセンサデバイス。
前記ランド部の内縁部の形状は、該ランド部の両側に位置する2つの前記非ランド部の内縁部分から内側に向かって凸となるように湾曲する湾曲形状を有して請求項1に記載のセンサデバイス。
前記第1の接合パターン及び前記第2の接合パターンの少なくとも一方の接合パターンの少なくとも内縁部に沿って溶融半田を受け入れる溝部が設けられている請求項1に記載のセンサデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至3には、センサ素子が収納されるデバイスの内部空間を真空状態に維持するための好ましい構造及び方法については何も開示されていない。実際に、発明者がデバイスの内部空間を真空状態にしようとしても、高い歩留まりで真空状態を作ることができない問題があった。
【0005】
本発明の目的は、センサ素子が収納されるデバイスの内部空間を確実に真空状態に維持することができるセンサデバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の赤外線センサデバイスは、キャップ部材と、センサ付き基板と、キャップ部材とセンサ付き基板とを接合する半田層とを備えている。キャップ部材は、一面に開口部を有する周壁部と、開口部と対向する対向壁部と、開口部を囲む周壁部の端面に該端面に沿って延びる閉ループ状の半田付け可能な第1の接合パターンを備えている。半田層は、第1の接合パターンに沿って形成された閉ループ状を呈している。そしてセンサ付き基板は、赤外線透過部を透過した赤外線を受光する赤外線検知センサ素子及び赤外線検知センサ素子の出力の温度補償に用いる1以上の温度補償用センサ素子等のセンサ素子と、半田層により第1の接合パターンに接合される半田付け可能な第2の接合パターンを備えて開口部を塞ぐ。そしてキャップ部材とセンサ付き基板とによって囲まれた内部空間が真空状態に保持されている。そして本発明では、第1の接合パターン及び第2の接合パターンの少なくとも一方の形状を、複数の半田ボールの設置面と全面的に接触する形状の複数のランド部が、端面が延びる方向に所定の間隔をあけて配置された形状としている。さらにランド部以外の非ランド部の幅寸法が、ランド部の最大幅寸法よりも小さく且つ複数の半田ボールが溶融して形成された半田層が完全な閉ループ状になるように定められている。
【0007】
本発明のセンサデバイスによれば、ランド部は半田ボールが溶融して得られる溶融半田を確実に受け止めることができる。その上、非ランド部の幅寸法を、ランド部の最大幅寸法よりも小さく且つ複数のランド部の数及びランド部間の間隔を複数の半田ボールが溶融して形成された半田層が完全な閉ループ状になるように定めているので、溶融半田を非ランド部に沿って確実に移動させることができる。その結果、半田層で真空漏れが発生することを阻止することができる。
【0008】
ランド部の具体的な形状としては、例えば、ランド部の内縁部の形状を、該ランド部の両側に位置する2つの非ランド部の内縁部分から内側に向かって凸となるように湾曲する湾曲形状を有するものとすることができる。このような形状を採用すると、ランド部は半田ボールが溶融して得られる溶融半田を確実に受け止めることができる。
【0009】
また第1の接合パターン及び第2の接合パターンが、それぞれ四隅を有する閉ループ形状を有している場合には、複数のランド部を、少なくとも四隅に形成することが好ましい。この場合、四隅に形成された4つのランド部の内縁部の形状は、それぞれランド部の両側に位置する2つの非ランド部の内縁部分と連続し且つ外側に向かって凸となるように湾曲する湾曲形状を有していてもよい。四隅に設ける4つのランド部の形状をこのようにすると、ランド部から溶融半田が接合パターンの内側に大きくはみ出すことを防止して、半田層で真空漏れが発生することを阻止することができる。
【0010】
なお四隅に形成された4つのランド部の外縁部の形状は、外側に凸となる形状を有しているのが好ましい。このようにすると、溶融半田が接合パターンの外側に必要以上にはみ出すことを阻止することができる。
【0011】
また第1の接合パターン及び前記第2の接合パターンの少なくとも一方の接合パターンの少なくとも内縁部に沿って溶融半田を受け入れる溝部を設けてもよい。このように溝部を設けると、溶融半田が接合パターンの内側に入って、回路短絡等を生じさせる恐れがなくなる上、センサデバイスの小型を図ることができる。
【0012】
なお隣り合う二つのランド部の間隔は一定であるのが好ましい。
【0013】
本発明によれば、キャップ部材には赤外線を透過する赤外線透過部が設けられており、センサ素子は赤外線を検知する赤外線センサ素子を提供できる。
【0014】
本発明のセンサデバイスの製造方法では、まずキャップ部材の第1の接合パターン上またはセンサ付き基板の第2の接合パターンの一方の接合パターンの上に、複数の半田ボールを一方の接合パターンに沿って配置する。そしてキャップ部材及びセンサ付き基板との間に所定のスペースを開けた状態で、真空装置内でキャップ部材及びセンサ付き基板を対向させる。次に、キャップ部材とセンサ付き基板とを加熱しながら、真空装置を作動させてスペー
ス内を所定の真空度にする。次に、複数の半田ボールが溶融状態になった後に、複数の半田ボールが溶融してできた溶融半田によって第1の接合パターンと第2の接合パターンの間に連続した溶融半田層を形成するようにキャップ部材及びセンサ付き基板を相対的に近付ける。その後加熱を停止して、連続した溶融半田層を凝固させる。本発明によれば、複数の半田ボールが溶融してできた溶融半田によって第1の接合パターンと第2の接合パターンの間に連続した溶融半田層を確実に形成することができる。
【0015】
なお第1の接合パターン及び第2の接合パターンの少なくとも一方の接合パターンの少なくとも内縁部に沿って溶融半田を受け入れる溝部が設けられている場合には、キャップ部材及びセンサ付き基板の少なくとも一方は、キャップ部材及びセンサ付き基板を相対的に近付ける前において、中心部が相手部材に向かって凸となるように反っているのが好ましい。このようにするとキャップ部材及びセンサ付き基板を相対的に近付ける際に、溶融半田が内側に選択的に侵入させることができ、外側に溝部を形成する必要がなくなり、センサデバイスの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明に係るセンサデバイスによると、ランド部は半田ボールが溶融して得られる溶融半田を確実に受け取る上、非ランド部の幅寸法は、ランド部の最大幅寸法よりも小さく且つ複数のランド部の数及びランド部間の所定の間隔が、複数の半田ボールが溶融して形成された半田層が完全な閉ループ状になるように定められているので、半田層で真空漏れが発生することを阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る赤外線センサデバイスの一つの実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係る赤外線センサデバイスの一つの実施の形態の構成を模式的に示す縦断面図であり、各層の厚さ等の寸法は説明のために適宜変更されている。また
図2は、
図1の実施の形態をII−II線に沿って切断したより詳細な端面図であり、各部の厚み寸法は誇張して描いてある。
図12示すように、本実施の形態の赤外線センサデバイスはキャップ部材10と、センサ付き基板20と、キャップ部材10とセンサ付き基板20とを接合する半田層30とを備えている。
【0019】
そして
図2に具体的に示すように、キャップ部材10は、一面に開口部11を有する周壁部12と、開口部11と対向する対向壁部13と、開口部11を囲む周壁部12の下端面に該下端面に沿って延びる閉ループ状の半田付け可能な金属薄膜(本実施の形態では金のスパッタ膜)を成膜してパターニングした第1の接合パターン14[
図3(A)]を備えている。対向壁部13には、赤外線を透過する赤外線透過部15が設けられている。
【0020】
キャップ部材10の本体は、上端面と下端面に絶縁膜16,17を被覆したシリコン単結晶層18にエッチングが施されて、一体に成形されている。
図2に示すように、赤外線透過部15は、赤外線が対向壁部13のシリコン単結晶層18を透過できるように、対向壁部13の他の部分よりも厚みが薄く形成されている。そしてこの赤外線透過部15の上の絶縁膜16は除去されている。絶縁膜16,17はSiN/SiO
2膜であり、絶縁膜16の上には、薄膜層からなる赤外線遮断膜19が形成されている。絶縁膜16,17はSiN/SiO
2膜であり、赤外線遮断膜19はスパッタリングまたはメッキにより形成されたNiCr/Au層である。第1の接合パターン14は、スパッタリングにより形成されたTi/Au(若しくはこれらの合金)薄膜により形成されている。
【0021】
半田層30は、第1の接合パターン14に沿って形成された閉ループ状を呈している。半田層30は高融点半田である金錫(AuSn)等の合金製であり、第1の接合パターン14には半田層30に対して半田濡れ性が高い材料が選択されている。
【0022】
シリコン基板にエッチングを施して形成されたセンサ付き基板20の上には、キャップ部材10の赤外線透過部15を透過した赤外線を受光する赤外線検知センサ素子21、内部空間の温度を測定する温度センサ素子22及び温度補償用センサ素子23が設けられている。温度センサ素子22及び温度補償用センサ素子23は、いずれも赤外線検知センサ素子21の出力の温度補償に用いる。これらのセンサ素子21,22及び23は、MEMS技術により形成されており、各センサ素子21,22及び23の下方には基板20からの熱的影響を抑制するために、空洞部20Aがエッチングにより形成されている。センサ素子21,22及び23は、同じ温度に対して、同様に変動する抵抗値、熱容量、熱伝導性を有しており、センサ素子21,22及び23をそれぞれ抵抗素子とするブリッジ回路(図示していない)を形成することにより、赤外線検知センサ素子21の出力に温度補償を施すことができる。
【0023】
センサ付き基板20の上面の周縁近くには、半田層30によりキャップ部材10の第1の接合パターン14に接合される半田付け可能な金属薄膜層である第2の接合パターン24が形成されている。キャップ部材10の下端面の第1の接合パターン14とセンサ付き基板20の上面の第2の接合パターン24との間を半田層30で接合することにより、キャップ部材10の開口部11を塞ぐ。これにより、キャップ部材10とセンサ付き基板20とによって囲まれた内部空間は外部に対して気密状態となり、キャップ部材10とセンサ付き基板20とが真空雰囲気で接合された場合、大気圧の下でも内部空間は真空状態に保持される。第2の接合パターン24もTi/Au薄膜により形成されている。
【0024】
キャップ部材10の対向壁部13及び周壁部に2つの仕切り壁31,32が一体に設けられている。各仕切り壁31,32は対向壁部13及び周壁部12とともに、キャップ部材10の内部空間を分けた3つのチャンバCH1〜CH3を構成している。
図1において、中心のチャンバCH1には赤外線検知センサ素子21が収容され、そして左のチャンバCH2には温度センサ素子22が、右のチャンバCH3には温度補償用センサ素子23がそれぞれ収容される。赤外線透過部15から入射する赤外線IRは各仕切り壁31,32によって遮断され、温度センサ素子22及び温度補償用センサ素子23に直接当たることがない。なお各仕切り壁31,32は、キャップ部材10の内部のシリコンを外壁を残して除去することにより内部空間を形成する際に、同時に形成すれば工数を増やさずに済む。赤外線を遮断できるように、仕切り壁31,32の厚みは10μm以上に設定されている。なお仕切り壁31,32のチャンバCH1と対向する側面を、赤外線を反射する金属薄膜層で覆うようにしてもよい。
【0025】
他の実施の形態においては、キャップ部材10の周壁部12及び対向壁部13は、例えば単結晶シリコンのようなシリコンを主成分とする材料によって一体に成形されたキャップ本体と、キャップ本体の少なくとも赤外線透過部15及び内壁面を除いてキャップ本体の外面を覆う半田付け可能なTi/Au薄膜のような金属薄膜層とから構成されたものを用いる。この場合、第1の接合パターンは、金属薄膜層によって形成することができる。このような構成を採用すると小型化をすることができる。
【0026】
キャップ部材10とセンサ付き基板20とが接合された状態では、仕切り壁31,32の自由端部の端面31A,32Aとセンサ付き基板20の上面20Bとの間には、赤外線透過部15から入射した赤外線の通過を阻止するが気体の流通は許容する隙間gが形成されている。キャップ部材10の下端面10Aと仕切り壁31,32の自由端部の端面31A,32Aは面一に形成されているので、隙間gの厚みは半田層30の厚みに依存している。このようにすることで、半田層30の厚みが、仕切り壁31,32の自由端部の端面31A,32Aとセンサ付き基板20の上面20Bとの間の隙間gの寸法を規定する。本実施の形態における隙間gの寸法=半田層の厚みは、100μm以下である。
【0027】
赤外線検知センサ素子21、温度センサ素子22及び温度補償用センサ素子は、センサ付き基板20上に積層された複数のMEMSセンサ素子として構成されることにより、さらに小型化が図られている。すなわち各センサ素子21,22及び23は、センサ付き基板20の本体である単結晶シリコン層25上に、酸化、拡散、エッチング、薄膜堆積、フォトリソグラフィ、めっき等のMEMS技術を用いることにより形成されたMEMSセンサ素子である。
【0028】
図2に詳細に示す実際の構造では、単結晶シリコン層25の両面はSiN/SiO
2膜である絶縁膜26,27が形成されている。絶縁膜26の上にTa/Pt薄膜製の電極層28、Ti/Au/Pt/Au薄膜製のリード層29、赤外線を検知するサーミスタ膜33、サーミスタ膜33を絶縁するシリコンジオキサイド(SiO
2)製の絶縁膜34、及びシリコンオキシナイトライド(SiON)製の表面保護層35から構成される赤外線検知センサ素子21は、単結晶シリコン層25の上面をエッチングにより掘り下げて設けた空洞部20Aとキャップ部材10の内部空間の間に架橋したマイクロブリッジ構造を有している。これにより赤外線検知センサ素子21は超低熱容量を実現している。なお
図2は端面図であるため、仕切り壁31は図示していない。
【0029】
図3(A)に示す第1の接合パターン14は、周壁部12の下端面に形成されている。第1の接合パターン14と第2の接合パターン24とを半田層30により接合する際には、ごく微小な部品への加工であるため、第1の接合パターン14の上に
図3(B)のような複数の半田ボール37を設けている。第1の接合パターン14と第2の接合パターン24との間に半田ボール37を挟んだ状態で、これら半田ボール37を加熱して溶融し、溶融した半田材料を第1の接合パターン14と第2の接合パターン24との間に全体的に流動させて閉ループ状の溶融半田層を形成した後、これを冷却することにより半田層30を形成する方法が採用されている。この過程については後に詳しく述べる。
【0030】
デバイスの小型化やコストダウンのためには半田層30の厚さ及び第1及び第2の接合パターンの幅はできる限り小さくすることが好ましい。しかしながら、半田ボール37の接合部の大きさは、技術上の制限があり、
図3(B)に示すように第1の接合パターン14の幅W1とほぼ等しい140μmとするのが好ましい。
【0031】
本実施の形態では、
図3(A)の第1の接合パターン14には、周壁部12の矩形状の端面10Aの4つの辺の中央部にランド部14Aを形成している。本実施の形態では、ランド部14Aの内縁部の形状を、ランド部14Aの両側に位置する2つの非ランド部の内縁部分から内側に向かって凸となるように湾曲する湾曲形状を有するものとしている。このような形状を採用すると、ランド部14Aは半田ボール37が溶融して得られる溶融半田を確実に受け止めることができる。
【0032】
本実施の形態では、ランド部14A以外の非ランド部14Bの幅寸法W3は、ランド部14Aの最大幅寸法W2よりも小さい。そして複数のランド部14Aの数及びランド部14A間の間隔は、複数の半田ボール37が溶融して形成された半田層30が完全な閉ループ状になるように定められている。本実施の形態においては、キャップ部材10の幅寸法は約1mmであり、キャップ部材10の長さ寸法は約1.58mmである。そして隣り合う二つのランド部14A間の間隔寸法は約1.29mm一定である。具体的には、
図3(B)に示すように、半田ボール37の設置面37Aの最大幅寸法W1が例えば140μmで、半田ボール37の高さ寸法が60〜70μmであり、ランド部14Aの最大幅寸法W2が155±5μmである。このようなランド部14Aを設け、且つ隣り合う二つのランド部14A間の間隔寸法を定めると、溶融した半田ボール37の溶融半田が確実に第1の接合パターン14に残る。その上第1の接合パターン14は、その他の部分(非ランド部)の幅W3を狭くしているので、少ない量の溶融半田でも非ランド部12A全体に溶融半田を流動させて、半田層30を確実に形成することができる。なおこの効果を更に確実なものとするためには、第2の半田パターン24の幅寸法W4も非ランド部12Aの幅寸法W3に近い値にするのが好ましい。これらの条件が満たされると、第1の接合パターン14の上には4個の半田ボール37しか載せられていなくても、デバイスの小型化及び半田の量の節約を達成することができる。なお理論的には、接合部分の体積をV1とし、使用する半田ボール37の数分の合計体積をV2としたときに、V1=V2となるように半田ボール37の数を決めればよい。なお具体的には、半田ボール37が第1の接合パターン14と第2の接合パターン24との間で溶融して冷却したときに、内部空間と外部との間に十分に気密性が保持できる厚さになり、且つ仕切り壁31,32の自由端部とセンサ付き基板20との間の隙間gが十分に気体を流通できる寸法になるように、半田ボール37の適正な大きさ及び実装される個数が選択されることになる。
【0033】
次に、
図1の実施の形態の製造過程について、
図4及び
図5を参照しつつ説明する。キャップ部材10とセンサ付き基板20との接合に先立って、キャップ部材10の第1の接合パターン14上(他の実施の形態ではセンサ付き基板の第2の接合パターン上)に、複数の半田ボール37を第1の接合パターン14に沿って配置する。
【0034】
まず
図4(A)に示すように、キャップ部材10及びセンサ付き基板20との間に所定のスペースを開けた状態で、真空装置内でキャップ部材10及びセンサ付き基板20を対向させる。所定のスペースは、キャップ部材10の半田ボール37の下端とセンサ付き基板20の第2の接合パターン24の上面との間に挟まれたスペー
スSにより確保される。キャップ部材10の上方には、数cmの間隔を空けて、トッププレートTPが配置されている。センサ付き基板20はボトムプレートBPの上に載置されている。
【0035】
トッププレートTPは常温から半田ボール37が溶融する温度まで温度を上げることができ、また下方に移動して荷重を加えることができる。ボトムプレートBPも昇温可能であり、且つボトムプレートBPの下方に空気を流して放熱することにより常温まで冷却可能である。
【0036】
図4(A)の状態では、トッププレートTPもボトムプレートBPも常温であり、トッププレートTPとキャップ部材10との間には間隔が空いていて荷重をかけていない。このときの状態は、
図5では(A)の期間である。
【0037】
次に、トッププレートTPとボトムプレートBPの昇温を開始し、キャップ部材10とセンサ付き基板20とを加熱しながら、真空装置を作動させてスペー
スSによって形成したスペース内を所定の真空度にする(
図4(B)、
図5の(B)の区間)。
【0038】
トッププレートTP及びボトムプレートBPの温度が半田ボール37の溶融温度近く(約250℃)に達したら約20分間予備加熱を行う(
図4(C)、
図5の(C)の区間)。続いてさらに両プレートの温度を320℃まで上昇させる(
図4(D)、
図5の(D)の区間)と半田ボール37が溶融を始める。半田ボール37の一部が溶融状態になった後、スペーサを抜き取り、トッププレートTPを下降させて、所定の荷重(2000N)になるまで加圧し、その後加圧を保持する(
図4(E)、
図5の(E)の区間)。
【0039】
これによって、キャップ部材10とセンサ付き基板20が相対的に近付き、各半田ボール37が溶融してできた溶融半田によって第1の接合パターン14と第2の接合パターン24の間に連続した溶融半田層を形成する。その後トッププレートTP及びボトムプレートBPの加熱を停止して、トッププレートTPは自然冷却、ボトムプレートBPは空冷により、連続した溶融半田層を冷却して凝固させて、半田層30が形成される(
図4(F)、
図5の(F)の区間)。さらにその後、両プレートが所定の温度(常温近く)に達したら、トッププレートTPによる加圧を解除し、真空装置内を大気開放する。
【0040】
本実施の形態の製造方法によれば、複数の半田ボール37が溶融してできた溶融半田によって第1の接合パターン14と第2の接合パターン24の間に連続した溶融半田層を確実に形成することができる。
【0041】
次に本実施の形態の作用について説明する。
【0042】
本実施の形態によれば、キャップ部材10の内部空間に仕切り壁31,32を設けたことにより、赤外線透過部15を透過した赤外線IRが温度センサ素子22及び温度補償用センサ素子23に直接当たるのを阻止することができる。その上仕切り壁31,32の下端とセンサ付き基板20の上面との間には、入射した赤外線IRの通過を阻止するが気体の流通は許容する隙間gが形成されているので、この隙間gを介して仕切り壁31,32によって仕切られた隣り合うチャンバを同じ真空度に維持することができる。
【0043】
したがって赤外線IRが当たる条件を除いて、赤外線透過部15を透過した赤外線IRを受光する赤外線検知センサ素子21、赤外線検知センサ素子の出力の温度補償に用いる温度センサ素子22、及び温度補償用センサ素子23を同じ環境下に置くことができる。その結果、温度センサ素子22及び温度補償用センサ素子23を用いた温度補償を高い精度で実現することができ、検出精度が高い赤外線センサデバイスを提供できる。
【0044】
(半田ボールの配置位置の他の例)
図6(A)は、
図3の実施の形態の他の例を示している。この例では、半田ランド部14Aをキャップ部材10の四隅に形成している。この例では
図3の実施の形態と同様に、ランド部14Aの内縁部の形状を、ランド部14Aの両側に位置する2つの非ランド部の内縁部分から内側に向かって凸となるように湾曲する湾曲形状を有している。この場合でも、
図3の実施の形態の場合と同様に、真空漏れが発生しない半田層が形成できることが確認されている。
図6(B)は、キャップ部材10の寸法が小さい場合であり、2つの半田ランド部14Aが第1の接合パターン14の長辺部の中央にそれぞれ設けられている。この場合でも、
図3の実施の形態の場合と同様に、真空漏れが発生しない半田層が形成できることが確認されている。
【0045】
図7は、本発明の他の実施の形態の他の例で用いる第1の接合パターン14を示している。この例では、
図6(A)と同様に、半田ランド部14Aをキャップ部材10の四隅に形成している。しかしながらこの例では、
図6(A)の例とは異なって、四隅に形成された4つのランド部14Aの内縁部の形状は、それぞれランド部14Aの両側に位置する2つの非ランド部14Bの内縁部分と連続し且つ外側に向かって凸となるように湾曲する湾曲形状を有している。本例のパターン14では、ランド部14Aの最大幅寸法W2は155±5μmである。四隅に設ける4つのランド部14Aの形状をこのようにすると、
図6(A)の構成と比べて、ランド部14Aから溶融半田が第1の接合パターン14の内側に大きくはみ出すことを防止して、半田層で真空漏れが発生することを阻止することができる。四隅に形成された4つのランド部14Aの外縁部の形状は、外側に凸となる形状(具体的には直角な角形状)を有している。このようにすると、溶融半田が接合パターンの外側に必要以上にはみ出すことを阻止できる。
【0046】
(変形例)
上記実施の形態では、第1の接合パターン14側にランド部14Aを設けて半田ボール37を配置している、第2の接合パターン24側にランド部を設けて半田ボールを第2の接合パターン24に配置して、上記と同様の手順でキャップ部材10とセンサ付き基板20の接合を行ってもよいのは勿論である。また上記実施の形態は赤外線センサデバイスに本発明を適用したが、赤外線センサ以外のその他のセンサデバイス(高周波検知センサ、サーミスタ等)にも本発明を適用できるのは勿論である。
【0047】
また遮断効果を高めるためには、できるだけキャップ部材の壁の厚みや、仕切り壁の厚みを厚くするのが好ましい。
【0048】
また
図8(A)に示すように、第1の接合パターン14及び第2の接合パターン24の少なくとも一方の接合パターンの少なくとも内縁部に沿って溶融半田を受け入れる溝部41を設けてもよい。このように溝部を設けると、溶融半田が接合パターン(14,24)の内側に入って、回路短絡等を生じさせる恐れがなくなる上、センサデバイスの小型を図ることができる。またこのような溝部41を設ける場合には、
図8(B)に示すように、キャップ部材10及びセンサ付き基板20の少なくとも一方は、キャップ部材10及びセンサ付き基板20を相対的に近付ける前において、中心部が相手部材に向かって凸となるように反っているのが好ましい。このようにするとキャップ部材10及びセンサ付き基板20を相対的に近付ける際に、溶融半田が溝部41を越えてさらに内側に浸入することを防止することができ、センサデバイスのさらに小型化を図ることができる。
センサ素子が収納されるデバイスの内部空間を確実に真空状態に維持することができるセンサデバイスを提供する。センサ付き基板20とキャップ部材10とは、半田層30により接合されて内部空間が真空状態に保持されている。接合パターン14には、周壁部12の矩形状の端面10Aの4つの辺の中央部にランド部14Aを形成している。ランド部14A以外の非ランド部14Bの幅寸法W3は、ランド部14Aの最大幅寸法W2よりも小さく且つ複数のランド部の数及び前記所定の間隔は、複数の半田ボール37が溶融して形成された半田層30が完全な閉ループ状になるように定められている。