特許第6469329号(P6469329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6469329
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】盗難防止装置及び盗難防止システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 13/22 20060101AFI20190204BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G08B13/22
   G08B25/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-552277(P2018-552277)
(86)(22)【出願日】2018年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2018008458
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-42117(P2017-42117)
(32)【優先日】2017年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108649
【氏名又は名称】タカヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】貝畑 慶太
【審査官】 石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−171892(JP,A)
【文献】 特開2016−24688(JP,A)
【文献】 特表2017−505968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 13/00−15/02
19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の電波を受信する受信部と前記受信部によって前記所定周波数の電波を検出できない位置にあるか否かを判断し、前記所定周波数の電波を検出できない位置にあると判断した場合に警告動作を行う制御部と
前記受信部及び前記制御部を含む本体の移動を検出する移動検出部とを備え、
前記制御部は、前記本体の移動を検出し、かつ、前記所定周波数の電波を検出できなかった場合に、加速度の角度判定を行い、設定値以上の角度差があった場合に警告動作を行う、盗難防止装置。
【請求項2】
前記移動検出部は、加速度センサー、ジャイロセンサー、振動センサー地磁気センサー及びGPSセンサーのいずれかである、請求項に記載の盗難防止装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記受信部を断続的に動作させる、請求項1及び2のいずれか一項に記載の盗難防止装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動検出部が移動を検知した際に前記受信部を動作させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の盗難防止装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の盗難防止装置と、
前記所定周波数の電波を送信する送信機と
を備える盗難防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗の商品棚等に置かれた商品の盗難を監視するための盗難防止装置及び盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の盗難防止システムとして、下記特許文献1に記載されたものがある。この盗難防止システムは、商品に対して複数のケーブル式センサーを配線することで盗難を検出できる機能を有し、無線にて状態識別信号を送信できる子機と、子機からの状態識別信号を無線で受信できる親機とで構成される。また、親機、子機ともに警報部を有している。子機が商品の盗難を検出した場合、子機が発報し、親機に対して周波数Aを用いて無線送信を行い、親機も発報する。子機の接続がはずされた場合、子機が発報し、親機に対して周波数Bを用いて無線送信を行い、親機も発報する。
【0003】
上述した特許文献1に記載された盗難防止システムには、以下の課題がある。すなわち、商品にとりつけるセンサー部がケーブル式であり、子機と接続する必要がある。また、盗難を監視したい商品が複数の場合、ケーブルの配線が煩雑になってしまう。さらに、子機に取り付けられるケーブル式サンサーの数が決められており、盗難を監視したい商品が子機に取り付けられるケーブル式サンサーの数より多い場合、子機を増やす必要があり、店舗の商品棚が乱雑で見栄えが悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/035586号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、簡素な設置方法で確実に盗難を検出できる盗難防止装置及び盗難防止システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る盗難防止装置は、所定周波数の電波を受信する受信部と、受信部によって所定周波数の電波を検出できない位置にあるか否かを判断し、所定周波数の電波を検出できない位置にあると判断した場合に警告動作を行う制御部と、受信部及び制御部を含む本体の移動を検出する移動検出部とを備え、制御部は、本体の移動を検出し、かつ、所定周波数の電波を検出できなかった場合に、加速度の角度判定を行い、設定値以上の角度差があった場合に警告動作を行う
【0007】
上記盗難防止装置によれば、制御部が、受信部によって所定周波数の電波を検出できない位置にあると判断した場合に警告動作を行うので、盗難防止装置を監視対象である商品等の管理対象に取り付けるだけで足り、商品等に取り付けられたセンサー部からケーブルを延ばす必要がない。また、制御部が、移動検出部によって本体の移動を検出した際に所定周波数の電波を検出できなかった場合に加速度の角度判定を行うので、監視対象を移送させる行為について角度判定結果も参酌して警告動作を行うことが可能になり、警告動作の信頼性を高めることができる。
【0009】
本発明の別の側面によれば、移動検出部は、加速度センサー、ジャイロセンサー、振動センサー、地磁気センサー及びGPSセンサーのいずれかである。この場合、本体の移動を簡易に高精度で検出することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、制御部は、受信部を断続的に動作させる。この場合、受信部の電力消費を抑え、盗難防止装置の電池交換といったメンテナンス回数を低減できる。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、制御部は、移動検出部が移動を検知した際に受信部を動作させる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る盗難防止システムは、上述の盗難防止装置と、所定周波数の電波を送信する送信機とを備える。
【0016】
上記盗難防止システムによれば、盗難防止装置を監視対象である商品等の管理対象に取り付けるだけで足り、商品等に取り付けられたセンサー部からケーブルを延ばす必要がないので、簡素な設置方法で確実に盗難を検出できるシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の盗難防止装置を説明するブロック図である。
図2図1の盗難防止装置を組み込んだ盗難防止システムを説明する図である。
図3】盗難防止装置等の動作を説明するフローチャートである。
図4】盗難防止装置の加速度について角度変化を算出する方法を説明する図である。
図5図5A及び5Bは、図1のタグや図2のシステムの動作を説明する概念図である。
図6】変形例の盗難防止装置等の動作を説明するフローチャートである。
図7】別の変形例の盗難防止装置等の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1及び2を参照して、本発明に係る一実施形態の盗難防止装置及び盗難防止システムについて説明する。
【0019】
図1に示す盗難防止装置10は、典型的には自鳴式盗難防止タグとして実現される。盗難防止装置10は、商品等の管理対象に着脱可能に固定されるものであり、受信部12と、スイッチ部14と、加速度センサー16と、マイコン18と、ブザー24と、LED26と、バッテリー32とを備える。
【0020】
受信部12は、増幅用のAMP回路12aと、検波回路12bとを備える。AMP回路12aは、アンテナ11によって受信した例えば8.2MHzの監視電波を増幅し、監視電波を抽出するための同調回路を内蔵する。受信部12により、監視エリア形成用の送信機50(後述する図2参照)から出力された例えば8.2MHzの監視電波を随時受信することができる。
【0021】
スイッチ部14は、スタートスイッチ14aと、検出スイッチ14bとを有する。スタートスイッチ14a及び検出スイッチ14bは、盗難防止装置10のケース10b(後述する図2参照)の表面にその可動部が露出するように設けられている。スタートスイッチ14aは、マイコン18を起動させるためのものであり、スタートスイッチ14aをケース10bから指で操作することにより、マイコン18の動作が開始する。なお、マイコン18の動作が開始すると、まず待機モードが実行され、その次に検知モードが実行され、その後監視モードを開始する。待機モードでは、所定時間内に検出スイッチ14bが押された場合、検知モードに移行し、所定時間内に検出スイッチ14bが押されなければ待機モードに戻る。検知モードは、商品等の管理対象に盗難防止装置10を取り付ける前のモードであり、所定時間後に監視モードに移行する。また、監視モードは、盗難防止装置10の持ち出しを検出する特徴的な動作であり、具体的内容は以下に詳述する。検出スイッチ14bは、商品等の管理対象に盗難防止装置10を取り付けた状態で押し込まれるとオン状態となり、管理対象から盗難防止装置10を取り外した状態で突起状態に復帰するとオフ状態となる。マイコン18が動作している状態で検出スイッチ14bがオフ状態になると、マイコン18は、盗難防止装置10が要警告状態(具体的には、例えば音声による警報を伴う要発報状態)にあると判断する。
【0022】
加速度センサー16は、受信部12やマイコン18等を含む本体10a又はケース10bの移動を検出する移動検出部である。加速度センサー16は、マイコン18からオン及びオフ制御信号を受け付けるようになっており、マイコン18からオン信号を受けて動作状態となったタイミングでのみ検出動作を行い、マイコン18からオフ信号を受けた場合、休止状態となって電力消費を抑えることができるようになっている。加速度センサー16は、マイコン18によって動作状態とされた場合、盗難防止装置10に付加される加速度、つまり盗難防止装置10の移動を検出し、この移動検出信号をマイコン18に出力する。つまり、加速度センサー16は、断続的に動作し、具体的には周期的又は間欠的に動作する。なお、加速度センサー16は、マイコン18と協働して、本体10aの移動方向の変化、つまり加速度の方位の変動に対応する角度変化を評価するとともに加速度の角度変化について判定を行う角度判定部として機能する。
【0023】
マイコン18は、制御部であり、CPU、メモリー装置等からなる集積回路で構成される。マイコン18は、ボタン電池等であるバッテリー32から電力の供給を受けてプログラムに従った動作を行う。マイコン18を含めた盗難防止装置10の動作については後述する。
【0024】
ブザー24は、マイコン(制御部)18に駆動されて動作し、マイコン18が要警告状態にあると判断した場合に所定のアラーム音で鳴動して発報を行う。LED26も、マイコン18に駆動されて動作し、マイコン18が要警告状態にあると判断した場合に点滅等してブザー24とともに警告動作を行う。
【0025】
受信部12に付随して設けられた受信スイッチ22は、受信部12を動作状態としたり休止状態としたりするためのものである。受信スイッチ22は、マイコン(制御部)18からオン信号を受けた場合、受信部12を動作させて監視電波の検出を行わせる。また、受信スイッチ22は、マイコン(制御部)18からオフ信号を受けた場合、受信部12を休止状態とさせて電力消費を抑えることができるようになっている。つまり、受信部12は、断続的に動作し、具体的には周期的又は間欠的に動作する。なお、受信部12は、監視電波を受信した場合に受信信号をマイコン18に出力する。つまり、受信スイッチ22から受信指令が出されているにも関わらず受信部12から受信信号を受け取ってない場合、マイコン18は、監視電波を検出できない状態と判断する。
【0026】
図2は、図1に示す盗難防止装置10を含む盗難防止システムとしての防犯システム100を説明する図である。防犯システム(盗難防止システム)100は、1つ以上の送信機50と、1つ以上の盗難防止装置10とを備える。図示の例では、送信機50が格子点上に配列されており、各送信機50から周囲に放射される監視電波WWが2次元的な監視エリアを成し、複数の送信機50から放射される監視電波WWによって所望の監視エリアを形成できるようになっている。送信機50は、図面中に拡大して示すように、アンテナ51と、電波送信回路52と、送信側制御部53とを有する。電波送信回路52は、監視期間中、アンテナ51を介して例えば8.2MHzの監視電波WWを連続的に出力する。監視電波WWは、搬送波的なものであっても良いが、所定の信号を乗せることもできる。監視電波WWに所定の信号を乗せる場合、盗難防止装置10が監視電波WWを誤検出する可能性を低減できる。
【0027】
なお、各盗難防止装置10は、複数組の監視電波WWによって設定された監視エリア内に存在する各管理対象MOに着脱可能に固定されている。
【0028】
図3を参照して、防犯システム(盗難防止システム)100又は盗難防止装置10の動作のうち監視モードの一動作例について説明する。
【0029】
まず、盗難防止装置10において、マイコン(制御部)18は、加速度センサー(移動検出部)16を起動し、盗難防止装置10に付加される加速度、つまり盗難防止装置10の移動を検出させる(ステップS11)。この際、マイコン(制御部)18は、受信スイッチ22を介して受信部12を停止させる。
【0030】
マイコン(制御部)18は、現在の盗難防止装置10の加速度の変動量に対応する角度を記憶部18mに記録する(ステップS12)。そして、監視電波WWの検出は行わないが盗難防止装置10の移動及び角度を検出可能な状態で監視モードの実質的な動作を開始する。
【0031】
次に、マイコン(制御部)18は、最低限の消費電力となるように必要最低限の動作のみを行う省電力動作モードに移行する(ステップS13)。
【0032】
次に、マイコン(制御部)18は、検出スイッチ14bから検出信号を受けたか否か、つまり盗難防止装置10の取り外しの有無を判断する(ステップS14)。
【0033】
ステップS14で盗難防止装置10が取り外されていないと判断した場合(ステップS14でNO)、マイコン(制御部)18は、加速度センサー(移動検出部)16から移動検出信号の入力を受けたか否か、つまり盗難防止装置10の移動を検出したか否かを判断する(ステップS15)。
【0034】
マイコン(制御部)18は、盗難防止装置10の移動を検出した場合(ステップS15でYES)、省電力動作モードを解除するとともに(ステップS16)、受信スイッチ22を介して受信部12を起動し、監視電波WWの検出を行わせる(ステップS17)。受信部12の起動による監視電波WWの検出は、受信部12の断続的動作における動作開始に相当する。一方、マイコン18が盗難防止装置10の移動を検出しなかった場合(ステップS15でNO)、マイコン18は、ステップS14に戻って盗難防止装置10の取り外しの有無を判断する。つまり、盗難防止装置10の取り外しが検出されなければ、盗難防止装置10の移動が繰り返し周期的に検出される。
【0035】
マイコン(制御部)18は、盗難防止装置10又は本体10aの移動が検出され状態で、受信部12から監視電波WWの信号を受信できなかった場合(ステップS18でYES)、ステップ12等で記録した角度と現在の角度とを比較する(ステップS19)。一方、マイコン18が受信部12から監視電波WWの信号を受信した場合(ステップS18でNO)、マイコン18は、ステップ12で記録した角度を更新し(ステップS23)、ステップS13に戻って省電力動作モードに移行した後、盗難防止装置10の取り外しの有無を判断する(ステップS14)。以上において、省電力動作モードに移行することは、受信部12の断続的動作における動作終了に相当する。
【0036】
マイコン(制御部)18は、監視電波WWの信号を受信しなかった場合(ステップS18でYES)、加速度センサー(移動検出部)16からの各軸の加速度のデータを元に加速度の方位の変動に対応する角度(角度変動)を算出する。設定値以上の角度差があった場合(ステップS19でYES)、盗難防止装置10が管理対象MOとともに監視エリア外に持ち出されたと判断する。この場合、管理対象MOが単に手にとって観察されたり精算所に持ち運ばれたりしているだけでなく、禁止領域まで搬送されていると判断され、要警告状態として処理される。
【0037】
図4は、加速度の方位の変動に対応する角度変化の計算方法を説明する図である。ステップ12,S23において前回記録されている加速度ベクトルをAとし、現在の加速度ベクトルをAとすると、各加速度ベクトルA,Aは、以下のように表される。
=(a1x,a1y,a1z
=(a2x,a2y,a2z
ここで、値a1x,a1y,a1zは、前回記録時の加速度センサー16の各軸の加速度であり、値a2x,a2y,a2zは、現在の加速度センサー16の各軸の加速度である。前回の加速度ベクトルをAと現在の加速度ベクトルAとの成す角をθとすると、以下の関係
cosθ=A・A/|A|×|A
から、加速度が変化した角度θを得ることができる。なお、加速度ベクトルA,Aの内積は、
・A=a1x×a2x+a1y×a2y+a1z×a2z
で与えられ、例えば加速度ベクトルA1の絶対値は、
|A|=√(a1x+a1y+a1z
で与えられる。
【0038】
図3に戻って、設定値以上の角度差がなかった場合(ステップS19でNO)、盗難防止装置10が管理対象MOとともに盗難を意図しない状態で移動していると判断し、ステップS13に戻って省電力動作モードに移行した後、盗難防止装置10の取り外しの有無を判断する(ステップS14)。このように加速度及び角度を判定することで、盗難起因の移動かどうかの信頼性を高めることができる。例えば、陳列してある棚に誤って人がぶつかって移動を検知した場合、或いは店のシャッターの開け閉めによる振動によって移動を検知した場合であっても、上記のような角度差判定を行うことで、窃盗に該当しない移動か否かの判断の信頼性を高め、誤作動を防ぐことができる。
【0039】
マイコン(制御部)18は、要警告状態とされた場合(ステップS19でYES)、つまり加速度センサー(移動検出部)16から移動検出信号を検知したことを前提として、受信部12から監視電波WWの信号を受信できなかった場合、かつ、設定値以上の角度差があった場合に、加速度センサー(移動検出部)16の動作を停止させる(ステップS20)。その後、マイコン(制御部)18は、発報動作又は警告動作を開始する(ステップS21)。つまり、マイコン(制御部)18は、移動検出信号の入力を前提として監視電波WWの信号を受信できなかった場合であって、急激な加速度変動が生じている場合、ブザー24等に鳴動による発報その他の警告を開始させる。マイコン(制御部)18は、盗難防止装置10の取り外しがあった場合(ステップS14でYES)も、省電力動作モードを解除するとともに(ステップS22)、加速度センサー(移動検出部)16の動作を停止させ(ステップS20)、発報動作又は警告動作を開始する(ステップS21)。
【0040】
なお、ステップS18における監視電波WWの検出に際して、監視電波WWの検出タイミングを一定期間以上確保することで、監視電波WWの信号の有無を複数回のチェックすることができ、持ち出し検出の信頼性を高めることができる。例えば、複数回のチェックによって監視電波WWの受信信号が連続して入力されなければ、盗難防止装置10が監視エリア外に持ち出されたと判断し、監視電波WWの受信信号が一度でも入力された場合、盗難防止装置10が監視エリア外に持ち出されたとは判断しないということになる。さらに、複数回のチェックによって監視電波WWの受信信号が規定回数以上入力されなければ、盗難防止装置10が監視エリア外に持ち出されたと判断するといった処理も可能である。これにより、検出が電波状況に影響されにくくなる。同様に、ステップS15における盗難防止装置10の移動検出に際して加速度センサー16の出力を一定期間中に複数回チェックして盗難防止装置10の移動の有無の判定に用いることで、持ち出し検出の信頼性を高めることができる。
【0041】
以上では、盗難防止装置10の移動を継続的に検出し、盗難防止装置10が移動等していると判定した場合に限って受信部12に監視電波WWの検出を行わせているが、受信部12と加速度センサー16とを並列的に動作させることができ、かかる並列的な動作は、連続的であっても間欠的であってもよい。このように並列的に動作させる場合、マイコンチップ(制御部)18は、監視電波WWの不検出信号の入力がなくても加速度センサー16から移動検出信号を受けない場合もあり、この場合、警告動作を行わない。つまり、受信部12から監視電波WWの信号の入力を受けない場合であっても、停電中、点検中、休業中等で送信機50の動作が停止している可能性もあり、盗難防止装置10が加速度環境に置かれていなければ、要警告状態として処理されない。
【0042】
図5A及び5Bは、防犯システム100の適用例を説明する概念図である。盗難防止装置10を付した管理対象MOは、商品棚や展示棚である台座91の上に配置され、監視エリア内にある。盗難防止装置10は、加速度センサー16から移動検出信号を検知しておらず、或いは受信部12から監視電波WWの検出結果を定期的に受信している限り、要警告状態にないと判断する(図5A参照)。盗難防止装置10は、加速度センサー16から移動検出信号を検知するとともに加速度の角度変化が所定の設定値を超え、かつ、受信部12から監視電波WWを受信できなかった場合、要警告状態の可能性があり、ブザー24等に鳴動による発報動作又は警告動作を開始する(図5B参照)。ここで、加速度センサー(移動検出部)16から移動検出信号を検知し加速度の角度変化が所定の設定値を超えただけでは、管理対象MOが禁止領域まで搬送されていると断定できないため、受信部12から監視電波WWの検出信号を受信できたか否かを判断し、加速度センサー16を利用した特定条件下で移動検出信号を検知した場合、管理対象MOが禁止領域で移動していると断定する。このように2重のチェックをかけることで、ブザー24等による警告をより適切で確実なものとすることができる。
【0043】
以上で説明した盗難防止装置10及び防犯システム(盗難防止システム)100によれば、マイコン(制御部)18が、受信部12によって所定周波数の監視電波WWを検出できない位置にあると判断した場合に警告動作を行うので、盗難防止装置10を監視対象である商品等の管理対象MOに取り付けるだけで足り、商品等に取り付けられたセンサー部からケーブルを延ばす必要がない。
【0044】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、上記実施形態では、移動検出部として加速度センサー16を用いたが、加速度センサーに代えて、電気式及び機械式を用いた様々なセンサーを用いることができる。移動検出部として、具体的には、ジャイロセンサー、振動センサー、地磁気センサー、GPSセンサー等を用いることができる。移動検出部による盗難防止装置10の移動の検出は、単に加速度等が一定の閾値を超えて変化したか否かや加速度の角度変化が所定の設定値又は閾値を超えたか否かを判断するだけでなく、加速度等が周期的に変化するパターンや回数をチェックするようなものであってもよく、この場合、盗難防止装置10を持ち出す行為の歩数チェックも可能になり、このような歩数が例えば10歩といった制限値を超えた場合に盗難防止装置10の移動を検出したと判定することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、盗難防止装置10の加速度の変動量に対応する角度を記録しているが(ステップS12,S23)、このような処理を省略して判断処理を簡素化することもできる。
【0047】
図6は、簡素化した変形例による処理のフローチャートである。図6に示す処理は、図4に示す処理を部分的に修正したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0048】
マイコン(制御部)18は、要警告状態とされた場合(ステップS18でYES)、つまり加速度センサー(移動検出部)16から所定以上の角度変動を与える移動検出信号を検知したことを前提として、受信部12から監視電波WWの信号を受信できなかった場合、加速度センサー(移動検出部)16の動作を停止させる(ステップS20)。その後、マイコン(制御部)18は、警告動作を開始する(ステップS21)。つまり、マイコン(制御部)18は、移動検出信号の入力を前提として監視電波WWの信号を受信できなかった場合、ブザー24等に鳴動による警告を開始させる。
【0049】
図7は、別の変形例を説明するフローチャートである。図7に示す処理は、図6に示す処理を部分的に修正したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0050】
マイコン(制御部)18は、加速度センサー(移動検出部)16から移動検出信号を検知した場合(ステップS15でYES)、受信部12に監視電波WWの検出を開始させる(ステップS17)。さらに、マイコン(制御部)18は、監視電波WWについて検出の可否の判断を行う(ステップS31)。マイコン(制御部)18は、監視電波WWが検出されているときは(ステップS31でNO)、監視電波WWについて「検出有り」の情報を記録部18mに記録し(ステップS32)、監視電波WWが検出されていないときは(ステップS31でYES)、ステップS15の移動検出から例えば0.5秒経過したか否かを判断する(ステップS33)。ステップS15の移動検出から例えば0.5秒経過している場合、監視電波WWの不検出が確実であると考え、マイコン(制御部)18は、記録部18mを参照して監視電波WWについて「検出有り」の状態があったか否かを判断する(ステップS34)。ステップS34において監視電波WWの「検出有り」の状態がなかったと判断した場合、マイコン(制御部)18は、ステップS14に戻って盗難防止装置10の取り外しの有無を判断する。一方、ステップS34において監視電波WWの「検出有り」の状態があったと判断した場合、マイコン(制御部)18は、再度監視電波WWの不検出を判断し(ステップS35)、ステップS15の移動検出から例えば0.7秒経過するまで監視電波WWの不検出の判断(又は検出の可否の判断)を繰り返す。この間に監視電波WWの検出があれば、ステップS14に戻って盗難防止装置10の取り外しの有無を判断するが、この間に監視電波WWの検出がなければ、マイコン(制御部)18は、監視電波WWの「検出有り」の状態から監視電波WWの「検出無し」の状態に確実に切り替わったとして、加速度センサー(移動検出部)16の動作を停止させるとともに(ステップS20)、発報動作又は警告動作を開始する(ステップS21)。この例では、盗難防止装置10の移動を検出していても、監視電波WWの「検出無し」の状態に維持されているときは、発報動作又は警告動作を行わない。これはユーザーの事情を考慮したものであり、例えば模様替え等の事情で監視電波WWを止めて多数の商品の配置を変更する場合に、個々の盗難防止装置10の動作を解除しなくても、発報動作の発生を一括して回避することができる。なお、ステップS33の判断に際しての0.5秒、ステップS36の判断に際しての0.7秒は、単なる例示であり、ステップS36で判断する秒数がステップS33で判断する秒数より長してあれば、電波検出の有無の信頼性を高め得る範囲で適宜の時間に設定できる。
【0051】
また、上記実施形態では、管理対象MOが商品である場合について説明したが、防犯システム(盗難防止システム)100は、店舗に限らず、医療機関、大学等に設置することができる。
【0052】
送信機50は、床上に設置するものに限らず、天井、壁面、ゲート等の様々な箇所に設置できる。
【0053】
盗難防止装置10は、無線送信装置を有していてもよい。このような無線送信装置は、マイコン18に駆動されて動作し、盗難防止装置10が発報動作又は警告動作をしていることを上位機に無線で警報信号として送信することができる。
【0054】
送信機50から放射する電波の周波数は8.2MHzに限らず様々な周波数とすることができ、複数の周波数の電波を放射することもできる。
【0055】
盗難防止装置10は、自鳴式盗難防止タグに限らず、ブザー24による発報を伴わないでLEDを光らせることで警告を行うものであってもよく、管理対象に取り付けられた盗難防止タグ自体に警告動作を行わせず、他の機器に警告動作を行わせるものであってもよい。
【要約】
簡素な設置方法で確実に盗難を検出できる盗難防止装置及び盗難防止システムを提供する。
盗難防止装置は、所定周波数の電波を受信する受信部12と、受信部12によって所定周波数の電波を検出できない位置にあるか否かを判断するマイコン(制御部)18とを備える。マイコン(制御部)18は、受信部12によって所定周波数の監視電波WWを検出できない位置にあると判断した場合に発報動作を行う。このため、盗難防止装置10を監視対象である商品等の管理対象MOに取り付けるだけで足り、商品等に取り付けられたセンサー部からケーブルを延ばす必要がない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7