(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、金属酸化物、シリコーン系ポリマー、有機金属化合物及び分散剤を含有する。そして、その有機金属化合物は、チタン及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の金属元素を有するとともに、この金属元素と配位結合を形成しない複数種の有機官能基を有する。さらに、この複数種の有機官能基は、親水性基としてのアルコキシ基及び疎水性基である。また、樹脂組成物は、金属酸化物、有機金属化合物及び分散剤を含有する金属酸化物分散体と、シリコーン系ポリマーと、を混合して得られるものである。
【0014】
このように、特定の有機金属化合物を用いることで、分散剤を用いた場合のシリコーン系ポリマーと金属酸化物との相溶性が改善され、凝集物の発生が抑制されるとともに、樹脂組成物の経時粘度の増加を抑制でき、分散安定性を向上できる。また、金属酸化物分散体を予め調製することで、このような特性を有する樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0015】
(金属酸化物)
本発明で用いる金属酸化物としては、特に限定はないが、着色用途に使用される金属酸化物が挙げられる。このような金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO
2、TiO、Ti
2O
3)、酸化アンチモン(Sb
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化鉛(Pb
3O
4)、酸化鉄(Fe
2O
3、Fe
3O
4)、酸化クロム(III)(Cr
2O
3)等のような1種の金属元素の酸化物、或いは、例えば、PbCrO
4、ZnCrO
4、BaCrO
4、CoO・Al
2O
3等のような2種以上の金属元素の金属酸化物の複合体等が挙げられ、用途に応じて適宜選択可能である。このように、本発明で用いる金属酸化物は、1種又は2種以上の金属元素の酸化物を含むものを用いることができる。また、金属酸化物としては、上記のような各種の金属酸化物を1種(複合体の場合は複合体で1種とする。)のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
このうち、例えば、白色系の着色用途の場合は、可視光領域の反射率が高く、屈折率が高いため、二酸化チタン(TiO
2)が好適である。
【0016】
また、本発明では、金属酸化物は表面処理されたものであってもよい。表面処理に用いる物質としては、有機系の物質でもよいし、無機系の物質でもよいし、両者を組み合わせてもよい。尚、本発明では、金属酸化物の表面処理を行う場合、表面処理の対象となる金属酸化物を「核となる金属酸化物」と称する。
【0017】
無機系の物質を用いる場合は、耐候性や色相を向上させる観点から、金属水酸化物及び/又は金属酸化物が好ましい。このような表面処理された金属酸化物としては、例えば、核となる金属酸化物の表面を、それを構成する金属の金属元素と同一又は異なる種の金属水酸化物及び/又は金属酸化物で表面処理したものが挙げられる。また、二種以上の金属酸化物(複合体を含む)を表面処理する場合、それらを構成する金属の金属元素と同一又は異なる種の金属水酸化物及び/又は金属酸化物で表面処理したものでもよい。この時、表面処理に用いる金属は1種でもよいし、2種以上でもよい。また、表面処理に用いる金属酸化物も1種でもよいし、2種以上でもよい。さらに、表面処理において金属水酸化物及び金属酸化物を用いる場合、それらを構成する金属元素は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
このように表面処理に用いる金属水酸化物及び/又は金属酸化物を構成する金属元素としては、特に限定はなく、核となる金属酸化物を構成する金属元素を考慮して適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、アンチモン、スズ、亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。尚、このような金属元素の金属酸化物は、例えば、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、Sb
2O
3、酸化スズ(SnO、SnO
2、SnO
3)、ZnO
2などが挙げられる。また、同じく金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化ケイ素、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化アンチモン、水酸化スズ、水酸化亜鉛などが挙げられる。
【0018】
有機系の物質を用いる場合は、耐熱性の観点から、シリコン含有有機系化合物等が好ましい。このような有機系化合物としては、例えば、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチル水素シロキサンなど)、シランカップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
このように有機系及び/又は無機系の物質により金属酸化物の表面処理を行う方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0020】
金属酸化物の形状は、樹脂組成物中に分散させるため、微粒子であるのが好ましい。また、微粒子の一次粒子の平均粒子径は、可視光の反射率、着色力の観点から、0.01〜0.4μmが好ましい。下限としては、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。上限としては、0.3μm以下がより好ましい。また、レイリー散乱の観点からは、0.2〜0.3μmが好ましい。尚、金属酸化物を表面処理した場合は、表面処理された金属酸化物の微粒子の一次粒子の平均粒子径がこの範囲にあるのが好ましい。
【0021】
前述のように金属酸化物を表面処理した場合、核となる金属酸化物の量比は、特に限定はないが、分散性及び耐候性の観点から、表面処理した金属酸化物全体に対して、核となる金属酸化物が89〜99.8重量%であるのが好ましい。下限としては、90重量%以上がより好ましく、91.5重量%以上がさらに好ましい。上限としては、97重量%以下がより好ましく、95重量%以下がさらに好ましく、94.5重量%以下が特に好ましい。
【0022】
金属化合物の含量は、着色性及び成膜性のバランスから、固形分基準として、シリコーン系ポリマー100重量部に対して30〜150重量部が好ましい。
【0023】
金属酸化物として、二酸化チタン(TiO
2)を用いる場合を例に、好適例を以下に説明する。
二酸化チタンとしては、結晶形がアナタース型、ルチル型のいずれのものでもよく、それらは必要に応じて混合して使用することもできる。初期の機械的特性、長期耐候性、屈折率、着色力、耐熱性の観点からは、ルチル型が好ましい。
本発明では、硫酸法、塩素法等の各種の方法で製造された二酸化チタンを使用可能であるが、不純物が少ないという点からは、塩素法で製造されたものが好ましい。
【0024】
本発明では、金属酸化物として二酸化チタンを微粒子にしてそのまま使用してもよいし、触媒活性の抑制、耐光性、耐候性、分散性の観点から、前述の有機系及び/又は無機系の物質により表面処理をしたものを使用してもよい。表面処理した場合、核となる金属酸化物としての二酸化チタンの含量は、前述のように、表面処理した金属酸化物全体に対して89〜99.95重量%が好ましい。
表面処理に用いる無機系の物質としては、前述の金属水酸化物又は金属酸化物を使用可能であるが、分散性及び耐候性の観点から、アルミニウム、ジルコニウム、シリコン、並びに、これらの水酸化物及び酸化物から選択される少なくとも一種が好ましい。このうち、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが好ましく、酸化アルミニウム及び/若しくは水酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素及び/若しくは水酸化ケイ素並びに/又は酸化ジルコニウム及び/若しくは水酸化ジルコニウムとを組み合わせたものがより好ましく、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムと二酸化ケイ素及び/又は水酸化ケイ素とを組み合わせたものが更に好ましい。このとき、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムを用いる場合(両者を用いる場合はその合計量)その含有量は、分散性の観点から、表面処理された金属酸化物全体に対して0.5〜10重量%が好ましい。下限としては、1.5重量%以上がより好ましく、2重量%以上がさらに好ましい。上限としては、7重量%以下がより好ましい。また、二酸化ケイ素及び/又は水酸化ケイ素を用いる場合(両者を用いる場合はその合計量)その含有量は、耐候性の観点から、表面処理された金属酸化物全体に対して0.5〜5重量%が好ましい。下限としては、1重量%以上がより好ましい。上限としては、3重量%以下がより好ましく、2.5重量%以下がさらに好ましい。また、酸化ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウムを用いる場合(両者を用いる場合はその合計量)その含有量は、耐候性の観点から、表面処理された金属酸化物全体に対して0.5〜3重量%が好ましい。下限としては、1重量%以上がより好ましい。上限としては、2.5重量%以下がより好ましい。
【0025】
表面処理に用いる有機系の物質としては、前述したシリコン含有有機系化合物等が好ましい。シリコン含有有機系化合物等を用いる場合は、その含量は、分散性の観点から、表面処理された金属酸化物全体に対して0.2〜5重量%が好ましい。下限としては、0.5重量%以上がより好ましく、1.5重量%以上がさらに好ましい。また、上限としては、3重量%以下がより好ましく、2.5重量%以下がさらに好ましい。
【0026】
(分散剤)
本発明で使用する分散剤としては、金属酸化物を樹脂組成物中に分散させることが可能なものであれば特に限定はなく、例えば、高分子系分散剤を挙げることができる。このような高分子系分散剤としては、塩基性高分子系分散剤、酸性高分子系分散剤、中性高分子系分散剤等が挙げられる。また、高分子系分散剤を構成する高分子化合物の主骨格として、アクリル系、ポリリン酸エステル系、ポリエステル系(但し、ポリリン酸エステル系を除く。以下同じ。)、ポリエーテル系、ウレタン系、シリコーン系等の構造を有するものを使用することができる。このうち、相溶性の観点からは、主骨格としてポリリン酸エステル系又はポリエステル系の構造を有するものが好ましい。
【0027】
分散剤のより具体的な例としては、例えば、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);
EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);
ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);
アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);
ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);
フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、
Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、本発明では、分散剤として、所定の酸価を有する分散剤(以下、酸価分散剤とも言う)や、所定のアミン価を有する分散剤(以下、アミン価分散剤とも言う)を用いることができる。また、これらを併用することもできる。
酸価分散剤の具体例としては、例えば、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);
EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);
ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
アミン価分散剤の具体例としては、例えば、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);
EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);
アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);
Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0029】
酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5〜370KOHmg/gであるのが好ましく、20〜270KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜135KOHmg/gであるのがさらに好ましい。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5〜200KOHmg/gであるのが好ましく、25〜170KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜130KOHmg/gであるのがさらに好ましい。分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0030】
分散剤の樹脂組成物中の含量は、分散性の観点から、固形分基準として、シリコーン系ポリマー100重量部に対し2〜15重量部が好ましい。
【0031】
(シリコーン系ポリマー)
本発明で使用するシリコーン系ポリマーとしては、塗膜を形成可能なものであれば特に限定はなく、例えば、樹脂を各種のシラン化合物で変性した変性シリコーンのレジン、シロキサン結合を主鎖に有し有機系の官能基を側鎖に有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。ポリオルガノシロキサンの分子構造は、直鎖状でも分岐鎖を有するものであってもよい。このようなポリオルガノシロキサンとしては、例えば、平均組成式(1)R
1SiO
3/2(但し、R
1は独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、(メタ)アクリル基、エステル基またはエーテル基を表す。)で示される単位を含む直鎖状シリコーンのレジンまたはオイル、平均組成式(1)で示される単位と平均組成式(2)R
7SiO(但し、R
7は独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、(メタ)アクリル基、エステル基またはエーテル基を表す。)で示される単位を含む直鎖状シリコーンのレジンまたはオイル等が挙げられる。
【0032】
上記平均組成式(1)及び(2)で示される単位を有する直鎖状シリコーンにおいて、式中のR
1及びR
7の具体例は、例えば、次のようなものである。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のものが挙げられ、より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等、
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のものが挙げられ、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のものが挙げられ、より具体的には、アリールアルキル基、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、(メタ)アクリロキシアルキル基およびメルカプトアルキル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、1−メチルビニル基、1−プロペニル基、アリル基(2−プロペニル基)、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−シクロペンテニル基、3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、炭素数6〜20のものが挙げられ、より具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、1−ナフチル基等が挙げられる(加熱時ベンゼンを発生しにくい観点からは、無置換のフェニル基以外のものが好ましい。)。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜20のものが挙げられ、より具体的には、ベンジル基、フェネチル基等があげられる。
(メタ)アクリル基としては、例えば、炭素数4〜20の一般式が−R
2−OCOCH=CH
2、または、炭素数5〜20の一般式が−R
2−OCOCH(CH
3)=CH
2で表されるものが挙げられる(式中、R
2はアルキル基を表す)。
エステル基としては、例えば、炭素数2〜20の一般式が−OCOR
3で表されるものが挙げられる(式中、R
3は炭素数1〜20のアルキル基を表す)。
エーテル基としては、例えば、炭素数2〜20の一般式が−(R
4O)
a(R
5O)
bR
6の構造を有するものが挙げられる(式中、R
4およびR
5は独立してアルキル基、R
6は水素原子またはアルキル基を表す。a及びbは、1≦a+b≦20を満たす整数である。)。より具体的には、−C
3H
6OC
2H
4OH等が挙げられる。
【0033】
このうち、R
1及びR
7としては、独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状の置換アルキル基または炭素数6〜9のアリール基(アリール基のなかでは加熱時ベンゼンを発生しにくい観点から無置換のフェニル基以外であることが好ましい)が好ましく、水素原子、メチル基またはトリル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0034】
また、上記の直鎖状シリコーンとしては、例えば、R
1及びR
7が互いに異なる2種以上の前記平均組成式で表されるシロキサン構造の共重合体であってもよい。この場合、R
1及びR
7がアルキル基である前記平均組成式で表されるシロキサン構造と、R
1及びR
7が水素原子、置換アルキル基またはアリール基である前記平均組成式で表されるシロキサン構造との共重合体が好ましい。
【0035】
直鎖状シリコーンの具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基とアルコキシ基を有するシラン化合物の縮合から調製されるアルキル系直鎖状シリコーン(メチル系直鎖状シリコーン等)、メチル・フェニル等のアルキル・アリール系直鎖状シリコーン、フェニル等のアリール系直鎖状シリコーン、メチル・ハイドロジェン等のハイドロジェン系直鎖状シリコーン等が挙げられる。
【0036】
変性シリコーンのレジンとしては、アクリル酸などのアクリルモノマーにシラン化合物を反応させたモノマーを重合又は他のアクリルモノマーに共重合させたアクリル樹脂変性シリコーンレジン、ポリエステルの水酸基等にシラン化合物を反応させたポリエステル樹脂変性シリコーンレジン、樹脂のアミノ基残基等にエポキシ含有シラン化合物を反応させたエポキシ樹脂変性シリコーンレジン、アルキッド樹脂に同様に反応性シラン化合物で変性したアルキッド樹脂変性シリコーンレジン、オキシム系開始剤を用いて樹脂と直接共有結合を形成させるゴム系のシリコーンレジン等が挙げられる。
【0037】
変性シリコーンのレジン及び直鎖状シリコーンのレジンなどの前記シリコーン系レジンとしては、市販のものを用いることができる。例を挙げれば以下のとおりであるが、これらに限定されるわけではない。
KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9226、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−40−2460M、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR213、KR217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR400、KR251、KR255、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706、KR165(信越化学工業株式会社)、
グラスレジン(昭和電工株式会社)、
SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(東レ・ダウコーニング株式会社)、
FZ3711、FZ3722(株式会社NUC)、
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(株式会社JNC)、
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(三菱化学株式会社)、
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(コルコート株式会社)、
GR100、GR650、GR908、GR950(昭和電工株式会社)等の部分縮合物。
【0038】
シリコーン系ポリマーの分子量としては、用途に応じて適宜決定することができるが、例えばベゼル用途の場合は、成膜性の観点から、重量平均分子量が1000〜1000000であるのが好ましく、2000〜800000であることがより好ましく、2500〜500000であることがさらに好ましい。
また、シリコーン系ポリマーの樹脂組成物中の含量は、用途に応じて適宜決定することができるが、例えばベゼル用途の場合は、成膜性と着色性の観点から、40〜60重量%が好ましい。
【0039】
(有機金属化合物)
本発明で使用する有機金属化合物としては、チタン及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の金属元素を有するとともに、この金属元素と配位結合を形成しない複数種の有機官能基を有しており、この複数種の有機官能基が、親水基としてのアルコキシ基及び疎水基であるものが好適である。
【0040】
このような有機金属化合物を用いると、これを用いない従来の場合に比べて、シリコーン系ポリマー、金属酸化物および分散剤の相溶性が改善され、凝集粒の発生が抑制されるとともに、経時粘度の増加を抑制することができる。そのため、従来に比べて樹脂組成物の分散安定性を向上させることができる。尚、本発明で用いる有機金属化合物によりこのような効果が奏される原因は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。もっとも、これらの推測はあくまでも推測であって、これらにより本発明が限定的に解釈されることを許容するものではない。
(1)有機金属化合物の親水性基としてのアルコキシ基と、金属酸化物の表面に存在する−OH基(水酸基)との反応によりアルコールが遊離して、有機金属化合物が金属酸化物の表面に結合する。そして、金属酸化物表面に結合した有機金属化合物の疎水性基及び金属原子が分散剤とシリコーン系ポリマーとに作用し、金属酸化物、分散剤、シリコーン系ポリマーの分散を安定化させる。
(2)分散剤が−OH基(水酸基)を有する場合は、金属酸化物の表面に存在する−OH基(水酸基)と、分散剤の水酸基の一部と作用するとともに、分散剤に残存する水酸基と有機金属化合物のアルコキシ基との反応によりアルコールが遊離して、有機金属化合物が分散剤に結合する。そして分散剤に結合した有機金属化合物の疎水性基及び金属原子が分散剤とシリコーン系ポリマーとに作用し、金属酸化物、分散剤、シリコーン系ポリマーの分散を安定化させる。
【0041】
本発明で使用する有機金属化合物では、金属元素として、チタン及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の金属元素を有する。本発明者が検討したところ、金属元素としてシリコンを含有するシラン系のカップリング剤では上述したようなアルコールを遊離させる反応性が低く相溶性の改善効果が得られないことを確認した。
【0042】
本発明で使用する有機金属化合物は、チタン及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の金属元素と配位結合を形成しない有機官能基を有する。本発明者が検討したところ、このような配位結合を形成する有機官能基を有する場合は、相溶性等が改善されないことを確認した。
【0043】
また、有機官能基として、親水性基と疎水性基を有し、且つ、親水性基がアルコキシ基である。
このような親水性のアルコキシ基としては、上述したようなアルコールを遊離させる反応性の観点から、炭素数が1〜8のアルキルオキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
疎水性基としては、前記の金属元素と配位結合を形成しない有機官能基であれば特に限定はないが、分散性の観点からは、好適例として例えば、アシレート基、リン酸エステル基等が挙げられる。
アシレート基としては、一般式、−OCORで示したものであり、Rは、例えば、炭素数7〜17の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、置換基を有するフェニル基等が挙げられる。炭素数7〜17のアルキル基は、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。
リン酸エステル基としては、例えば、一般式、−P(OH)(OR)
2で示されるものが挙げられる。ここで、Rとしては、例えば、炭素数8〜17のアルキル基等が挙げられる。
【0045】
このような有機金属化合物としては、例えば、一般式、X
nMY
4-nで示されるものが好ましい。Mはチタン及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の金属元素、Xは前述のMと配位結合を形成しない親水性のアルコキシ基、Yは前述のMと配位結合を形成しない疎水性基を示し、nは1〜3の整数を示す。このような一般式、X
nMY
4-nで示される有機金属化合物は、一般に金属カップリング剤として知られている。
【0046】
有機金属化合物の含有量は、用途に応じて適宜決定することができ、例えばベゼル用途の場合、金属酸化物100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。
【0047】
以上のような、有機金属化合物は、親水性のアルコキシ基を有する金属アルコキシドと、所望の疎水性基を有する化合物とを混合して反応させ、必要に応じて未反応物を還流させることで、得ることができる。あるいは、例えば、金属カップリング剤として市販されているものを使用することもできる。
【0048】
(溶剤)
本発明では、前述の各成分を混合して均質な樹脂組成物を得る観点から、樹脂組成物は更に溶剤を含有していてもよい。本発明において使用可能な溶剤としては、特に限定はなく、例えば、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコール系、脂肪族系等の各種の有機溶剤が挙げられる。このうち、シリコーン系ポリマーとの相溶性の観点からは、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系から選択される有機溶剤が好ましい。
有機溶剤は、1種のみでもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。
【0049】
芳香族系の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0050】
ケトン系の有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、イソホロン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0051】
エステル系の有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、酢酸−3−メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、乳酸ブチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸プロピル、1,3−ブチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0052】
グリコールエーテル系の有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等の水溶性のグリコールエーテル類、
エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等の非水溶性のグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0053】
アルコール系の有機溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0054】
脂肪族系の有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0055】
溶剤の含有量は、用途に応じて適宜決定することができる。例えばベゼル用の場合は、シリコーン系ポリマー100重量部に対して100〜500重量部が好ましい。また、例えばカラーフィルター用の場合は、シリコーン系ポリマー100重量部に対して100〜1000重量部が好ましい。
【0056】
(シリコーン系ポリマー以外の塗膜形成成分)
本発明に係る樹脂組成物では、塗膜を形成する樹脂としてシリコーン系ポリマーを含有するが、これ以外の他の塗膜を形成する成分をさらに含有していてもよい。
このような塗膜形成成分としては、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂成分としては、熱可塑性ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂等が挙げられる。また、重合性化合物としては、光硬化性化合物及び光重合開始剤等が挙げられる。
このうち、例えば、表示装置の画素を構成するカラーフィルターに用いる場合は、光硬化性化合物及び光重合開始剤が好ましい。このような光硬化性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として広く知られる化合物を、特に制限なく用いることができる。例えば、光重合性モノマー、光重合性プレポリマー即ち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を有する化合物が挙げられる。
前記光重合性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アリル(メタ)アクリルアミド等のアルキルアクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;
エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
ビニルアセテーテト、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;
スチレン、メチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類;
アルキルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類;
エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類;
マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド等の不飽和イミド;
N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
前記光重合開始剤としては、例えばアミン系化合物を用いることができる。具体的には、ジアミン系化合物、中でもベンゾフェノン系ジアミンが挙げられる。より具体的には4,4'ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが例示できる。
シリコーン系ポリマー以外の塗膜形成成分の含有量は、用途に応じて適宜決定することができる。例えばベゼル用やカラーフィルター用の場合は、シリコーン系ポリマー100重量部に対して0〜150重量部が好ましい。
【0057】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ、分散助剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、増感剤(増感色素)、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、充填剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等の各種の添加剤を添加しても良い。
【0058】
分散助剤は、特にシリコーン系ポリマー以外の塗膜形成成分を添加する場合に、分散性をより良好に維持したり、あるいは、前述した分散剤の使用量を減らして、その官能基の悪影響を減じつつ、分散性を良好に維持することができる。このような分散助剤としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような分散助剤としては、例えば、昭和高分子社のリポキシSPC−2000などが挙げられる。
分散助剤の含有量は、金属酸化物100重量部に対して5〜15重量部が好ましい。
【0059】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明に係る樹脂組成物は、金属酸化物、有機金属化合物及び分散剤を含有する金属酸化物分散体と、シリコーン系ポリマーと、を混合して得られる。このように、本発明では、先ず、金属酸化物、有機金属化合物及び分散剤を含有する金属酸化物分散体を調製する。その後、この金属酸化物分散体とシリコーン系ポリマーとを混合して樹脂組成物が得られる。
このように、金属酸化物分散体を予め調製した後に、シリコーン系ポリマーと混合することで、金属酸化物が良好に分散し、分散安定性の良好な樹脂組成物を容易に、短時間で得ることができ、コストの面でも有利である。したがって、本発明の金属酸化物分散体を用いることで、シリコーン系ポリマーを含有する樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0060】
<金属酸化物分散体の調製>
本発明の金属酸化物分散体は、前述した金属酸化物、有機金属化合物及び分散剤を含有する。必要に応じて、前述した溶剤及びその他の成分を含有するものであってもよい。その他の成分としては、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。
金属酸化物の含量は、金属酸化物分散体全量に対して、30〜80重量%が好ましい。
有機金属化合物の含量は、金属酸化物分散体全量に対して、0.1〜10重量%が好ましい。
分散剤の含量は、金属酸化物分散体全量に対して、1〜10重量%が好ましい。
溶剤を使用する場合は、その含量は、金属酸化物分散体全量に対して、20〜70重量%が好ましい。
このような組成になるように、各成分をビーズミル、サンドミル、ディスパー等の公知の分散機に添加し、分散することで、本発明の金属酸化物分散体が得られる。各成分を混合する順番や分散機は適宜決定することができるが、分散効率、分散性の観点からは、金属酸化物、分散剤、溶剤をビーズミルで混合し分散させた後、これと有機金属化合物とを混合し、ディスパーで撹拌してさらに分散させるのが好ましい。
【0061】
<樹脂組成物の調製>
前記のようにして得られた金属酸化物分散体とシリコーン系ポリマーとを混合する。必要に応じて、前述した溶剤、シリコーン系ポリマー以外の塗膜形成成分及びその他の成分を添加してもよい。尚、このシリコーン系ポリマー以外の塗膜形成成分を添加する場合は、前述した分散助剤を更に添加してもよい。
前述した所望の成分組成になるように、金属酸化物分散体、シリコーン系ポリマー等をビーズミル、サンドミル、ディスパー等の公知の分散機に添加し、分散することで、本発明の樹脂組成物が得られる。
【0062】
(用途)
以上のようにして得られた樹脂組成物は、相溶性が良好で、凝集粒の発生が抑制されるとともに、経時粘度増加率を抑制することができ、分散安定性を向上できるため、着色した塗膜の形成用として好適である。例えば、多機能携帯端末のタッチパネルのベゼルとして特に好適である。このほか、画像表示装置のカラーフィルター、塗料、印刷インクの着色や、塗膜ではない樹脂成型品の着色等にも使用することができる。
【実施例】
【0063】
(製造例1)
ジルコニウムテトラブトキシド45.2g(0.1モル)を反応容器に仕込み、撹拌しながらオクチル酸28.8g(0.2モル)を滴下した。その後、30分間還流を行い、有機金属化合物であるオクチル酸ジルコニウム化合物(金属元素:Zr、親水性基:−OC
4H
9、疎水性基:−OCOC
7H
15を有する)46.6gを得た。
【0064】
(実施例1)
金属酸化物として二酸化チタン(石原産業社製、タイペーク(登録商標)CR−97、表面処理済み、二酸化チタン含有率93重量%、平均粒子径0.25μm、ルチル型)70重量部、分散剤(ルーブリゾール社製、ソルスパース36000。主骨格がポリリン酸ポリエステル系の高分子分散剤。)3.5重量部、溶剤としてメチルエチルケトン24.5重量部を混合し、ビーズミルで分散した。さらに、製造例1の有機金属化合物2重量部を添加し、ディスパーにて撹拌、分散し、金属酸化物分散体を得た。
得られた金属酸化物分散体40重量部にシリコーン系ポリマー(信越化学工業株式会社製、KR−251、メチル系直鎖状シリコーンレジン、固形分20重量%)150重量部を加え、ディスパーにて撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0065】
(実施例2)
製造例1の有機金属化合物の添加量を0.5重量にした以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0066】
(実施例3)
製造例1の有機金属化合物に替えて、味の素ファインテクノ株式会社製、プレンアクトKR−41B(金属元素:Ti、親水性基:−OCH(CH
3)
2、疎水性基:−P(OH)(OC
8H
17)
2を有する)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0067】
(実施例4)
製造例1の有機金属化合物に替えて、味の素ファインテクノ株式会社製、プレンアクトTTS(金属元素:Ti、親水性基:−OCH(CH
3)
2、疎水性基:−OCOC
17H
35を有する)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0068】
(比較例1)
有機金属化合物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0069】
(比較例2)
製造例1の有機金属化合物に替えて、マツモトファインケミカル株式会社製、オルガチックスZA−65(ジルコニウムテトラノルマルブトキシド)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0070】
(比較例3)
製造例1の有機金属化合物に替えて、マツモトファインケミカル株式会社製、オルガチックスZC−580(ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)。親水性基であるエチルアセトアセテート基中の酸素原子とジルコニウムとが配位結合する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0071】
(比較例4)
製造例1の有機金属化合物に替えて、マツモトファインケミカル株式会社製、オルガチックスZC−705(ジルコニウムテトラアセチルアセトネート。親水性基であるアセチルアセトアセトネート基中の酸素原子とジルコニウムとが配位結合する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0072】
(比較例5)
製造例1の有機金属化合物に替えて、DIC株式会社製、Zn−OCTOATE 22%(オクチル酸亜鉛、Zn(OCOC
7H
15)
2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0073】
(比較例6)
製造例1の有機金属化合物に替えて、堺化学株式会社製、SZ−P(ステアリン酸亜鉛、Zn(OCOC
16H
33)
2)、を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0074】
(比較例7)
製造例1の有機金属化合物に替えて、堺化学株式会社製、SA−1000(ステアリン酸アルミニウム、Al(OCOC
16H
33)
3。但し、一部に水酸基が残存するものを含む。)、を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0075】
(比較例8)
製造例1の有機金属化合物に替えて、堺化学株式会社製、SZ−120H(ヒドロキシステアリン酸亜鉛、Zn(OCOC
17H
34OH)
2)、を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0076】
(評価)
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られた樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0077】
<相溶性>
樹脂組成物を調製後1日静置した時の相分離(透明な上層が形成される)の有無を目視により確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:相分離なし
×:相分離あり
【0078】
<凝集粒>
スピンコートを用い、実施例及び比較例の樹脂組成物の塗膜をガラス板上に形成し、樹脂組成物中の凝集粒の有無を顕微鏡(株式会社キーエンス、形状測定レーザーマイクロスコープVK−X100、倍率200倍)により判断した。評価基準は以下のとおりである。
○:1mm
2内に10μm以上の大きさの凝集粒が観察されない。
×:1mm
2内に10μm以上の大きさの凝集粒が観察される。
【0079】
<初期粘度>
樹脂組成物を調製した直後に、BM型粘度計2号ローターを使用して、25℃、60rpm、1分間の条件で粘度を測定した。
【0080】
<経時粘度>
樹脂組成物を調製した直後から、室温で7日間経過した後に、「初期粘度」の場合と同様にして粘度を測定した。
【0081】
<経時粘度増加率>
下記の計算式にて算出した。
経時粘度増加率[%] = 経時粘度/初期粘度×100
評価基準は以下のとおりである。
経時粘度増加率が140%以下:増粘抑制効果が高い。
経時粘度増加率が140%超、180%以下:増粘抑制効果がある。
経時粘度増加率が180%超:増粘抑制効果がない。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、実施例1〜4の樹脂組成物では、相溶性が良好で、凝集粒もなく、経時増粘が抑制されていることが分かる。一方、比較例1(対照)のように有機金属化合物を添加しない場合、有機金属化合物が、比較例2、3のようにジルコニウムと配位結合を形成する官能基を有する場合、比較例4のように親水性基のみを有し疎水性基を有さない場合、比較例5〜8のように金属元素がジルコニウム及びチタンではない、或いは、親水性基としてアルコキシ基を有さない場合は、相溶性、凝集粒、経時粘度増加の全てを良好にすることができないことが分かる。
【0084】
(実施例5)
実施例1で調製した金属酸化物分散体40重量部にシリコーン系ポリマー(信越化学工業株式会社製、KF−6001、両末端変性シリコーンオイル、固形分100重量%)30重量部を加え、ディスパーにて撹拌し、樹脂組成物Aを得た。
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45gとプロピレングリコールモノメチルエーテル30gからなる混合溶剤に、感光性化合物として重合開始剤である4,4’ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(和光純薬工業製)1.5gおよび光重合性モノマーであるNKエステルA−DPH(新中村化学工業社製)10g、分散助剤である樹脂としてリポキシSPC−2000(昭和高分子社製)32gを溶解し、これに樹脂組成物A60gを添加して振とうし、感光性の樹脂組成物Bを得た。
【0085】
(評価)
前述と同様にして、相溶性、凝集粒、経時粘度増加率を算出したところ、相溶性は○、凝集粒は○、初期粘度が5.6[mPa・s]、経時粘度が6.1[mPa・s]で、経時粘度増加率が109[%]であった。