特許第6469369号(P6469369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469369合わせ安全ガラスのためのUV保護及び低い黄色度を有するPVBフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469369
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】合わせ安全ガラスのためのUV保護及び低い黄色度を有するPVBフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/14 20060101AFI20190204BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20190204BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20190204BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C08L29/14
   C03C27/12 D
   C08K5/3475
   C08J5/18CEX
   B32B17/10
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-123759(P2014-123759)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2015-985(P2015-985A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】13172063.3
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ レリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ケラー
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−194796(JP,A)
【文献】 特開2012−046748(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08F6−246
C03C27−29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリビニルアセタール、少なくとも1種の可塑剤及びUV吸収剤として0.01〜1.5質量%の(2,2'−メタンジイルビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノールを含有するフィルム。
【請求項2】
前記フィルムは、1500ppm未満の、式(2)
【化1】
[式中、R=多官能性アルコールの炭化水素基、1〜10個のグリコール単位を有するオリゴグリコール、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜30個の炭素原子を有するN,P,S−置換炭化水素基又はアルコール基中に1〜30個の炭素原子を有するカルボン酸エステル基]の酸化防止剤若しくは部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型の部分構造を有する酸化防止剤を含有することを特徴とする、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムは、前記部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型の前記構造を含有しない酸化防止剤を、0.005〜0.5質量%の量で有することを特徴とする、請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
前記部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型の前記構造を含有しない酸化防止剤として、式(3)
【化2】
[式中、R=多官能性アルコールの炭化水素基、1〜10個のグリコール単位を有するオリゴグリコール又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、並びにX=1、2、3又は4]の化合物が用いられることを特徴とする、請求項3記載のフィルム。
【請求項5】
前記部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型の前記構造を含有しない酸化防止剤として、Lowinox 44B25型又はIrganox 129型の二核のフェノール系酸化防止剤、Songsorb 2908型の単核の酸化防止剤(CAS:67845−93−6)、BHT(CAS:128−37−0)、p−オクチルフェノール、多核のフェノール系酸化防止剤、例えばTopanol CA(CAS:1843−03−4)又はWingstay L(31851−03−3)が用いられることを特徴とする、請求項3記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムは、2mmの厚みの2枚の透明ガラスの間に0.76mmの厚みを有するフィルムから成る積層体について測定して、2未満の黄色度dbを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn及びAlの群からの1種以上の金属イオンを5ppm超の割合で含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のフィルム。
【請求項8】
前記フィルムは、HALS型又はNOR−HALS型の立体障害アミンを光安定剤として有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のフィルム。
【請求項9】
前記ポリビニルアセタールが、12〜24質量%のポリビニルアルコール割合を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のフィルム。
【請求項10】
合わせガラス積層体を製造するための、請求項1からまでのいずれか1項記載のフィルムの使用。
【請求項11】
博物館用ガラス、ショーウインドウ用ガラスを製造するための、自動車用ガラス、航空機用ガラスとしての、光起電力モジュールにおける、LED若しくはOLEDディスプレイにおける、テレビ受像器、コンピューター画面、大画面における、エレクトロクロミックガラス部材、フォトクロミックガラス部材又はフォトエレクトロクロミックガラス部材における、請求項1からまでのいずれか1項記載のフィルムの使用。
【請求項12】
ポリビニルアセタール、少なくとも1種の可塑剤及び前記UV吸収剤として(2,2'−メタンジイルビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノールを、固体の形で混合ユニット中で混合し、引き続き、得られた混合物を押出することによる、請求項1からまでのいずれか1項記載のPVBフィルムの製造法。
【請求項13】
前記UV吸収剤として(2,2'−メタンジイルビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノールを、キャリア液中に懸濁させて前記混合ユニットに供給することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV保護及び低い黄色度を有するポリビニルアセタールを基礎とする可塑剤含有フィルム並びに該フィルムで製造されたガラス積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせ板ガラス(Verbundverglasungen)のための市販の可塑剤含有ポリビニルブチラールフィルム(PVBフィルム)には、可視光とは対照的に紫外線が合わせガラスを完全には透過することができないように、数十年前からUV吸収剤が備わっている。この手法により、簡単に、合わせガラス背後の対象となる人や物にとって有害な紫外線に対する保護が確保されることができる。これは、切り傷に対する保護のほかに、一体ガラスと比べて本質的な特性の強みとなる。なぜなら、一体ガラスは紫外線を透過させるからである。
【0003】
UV吸収剤として特に有効であることが実証されており、かつ幅広く使用されているのは、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールの誘導体であり、これらは、異なる置換バターンにより、例えば、Tinuvin P、Tinuvin 328、Tinuvin 327、Tinuvin 326の商品名で得られる。ここに挙げたベンゾトリアゾール型のUV吸収剤は、PVBフィルムにおいて、ほぼ全てのUV領域における際立った長時間安定度、良好な溶解度及び高い吸収能で知られている。さらに、上で挙げたUV吸収剤は、特に簡単に、押出に際してフィルム材料中に組み込まれることができる。なぜなら、それらは、通常使用される可塑剤、例えば3G8に、比較的良く溶解し、かつ非常に簡単に押出前に可塑剤に添加されることができるからである。付加的に、上述のUV吸収剤は、PVBフィルムの場合に通常用いられる約200℃の押出温度を本質的に下回っている融点を有する。上で挙げた吸収剤のこれらの溶解特性及び溶融特性は、その比較的少ない分子量によって促進されている。しかしながら、これは、フィルムマトリックス中での良好な溶解度を一緒に考慮すると、その中で移動する能力(Migrationsvermoegen)が高くなることにつながる。それから、特に建築領域においては、一度取り付けられた合わせ安全ガラス(VSG)は、状況次第では、数十年後になって初めて取り替えられることから、VSGのむき出しになったエッジを通してUV吸収剤が徐々に失われていった場合に、持続的なUV保護が維持されるのかという問題が生じる。
【0004】
そのうえまた、上で挙げたベンゾトリアゾールには、健康又は環境を損なう性質があるとみなされるものがある。相応して、VSG部材(例えば、食器や飲食物が出されるガラスカウンターの部材として)が拭き取られる際、各々の拭い作業により、単に少量のUV吸収剤もエッジを通して放出され、引き続き平面的に分散されてしまうと、望ましくない。
【0005】
上で挙げたUV吸収剤の置換パターンに応じて、UV領域のほかに、多かれ少なかれ、さらにスペクトルの可視領域においても吸収が大いに生じることから、これらの吸収剤は、使用量及び置換基分布に応じて、PVBフィルムのある一定の黄変を招くことになる。ここでわかったことは、使用量が同じ場合、フィルムの黄変に及ぼす影響が、Tinuvin−326、Tinuvin−327、Tinuvin−P、Tinuvin−328のグループでは減ることである。それにも関わらず、UVA−328と同等の良好な若しくはより良好なUV遮蔽効果にて、さらに黄変への関与が減ったUV吸収剤を代わりに用いるという要求が存在する。
【0006】
UV吸収剤のほかに、ポリビニルブチラールには、頻繁にフェノール系酸化防止剤が備えられており、これの役目は、フィルム押出に際して、高い加工温度によって誘発されたラジカル開裂反応を止めることである。これによって、ポリマー鎖の長さが本質的に一定に保たれることから、押出された材料の機械的特性が、押出作業の結果として悪化させられることはない。
【0007】
しかし、多くのフェノール系酸化防止剤は、押出条件に応じて黄変も引き起こすという欠点を必然的に伴っており、これは、酸化防止剤の反応生成物に起因するものとみなされ得る。既に2枚のガラス板の間に貼り付けられた、完成したPVBフィルム中でも、フェノール系酸化防止剤が、紫外線下で−殊に持続的に温度が高められた場合に−あとで黄変を引き起こす可能性があり、これは、審美的な理由から望まれていないだけでなく、ガラス積層体の光透過率も時間が経つにつれて減少させる。
【0008】
PVBフィルムの製造のために商業的に見て最も重要なフェノール系酸化防止剤のグループは、部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含み、かつPVBフィルム中で使用される場合、ガラス積層体におけるUV影響及び/又は温度影響において黄変をもたらす。この部分構造を有する化合物は、Irganox 1010、Irganox 1076、Irganox 1035及びHostanox 03の商品名で提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の課題は、合わせガラス中で低いUV透過率並びに特に低い黄色度を有し、かつ、その中に含まれるUV吸収剤の移動する傾向が低い、合わせガラスのための接着フィルムを調達することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、
少なくとも1種のポリビニルアセタール、少なくとも1種の可塑剤及び0.01〜1.5質量%の一般式1
【化1】
[式中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8=H、ハロゲン原子、そのつど1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基、
9、R10=そのつど1〜50個の炭素原子を有する、分岐状若しくは非分岐状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基]の少なくとも1種のUV吸収剤を含有するフィルムによって解決された。
【0011】
意想外にも、式1に従ったUV吸収剤を使用した場合、高い分子量及び公知のUV吸収剤と比較してより不十分な可塑剤中での溶解度にも関わらず、貼り合わせ後に曇りのない、低いUV透過率及び同時に低い黄色度を有するフィルムが得られることを見出した。このことは、UV吸収剤の融点が、それどころかフィルムの押出温度の範囲にあってもよく、その際、曇り又は黄色度の上昇が観察されないという点でもますます意想外である。
【0012】
それゆえ、有利には、100℃を上回る、120℃を上回る、140℃を上回る、最も有利には160℃の融点を有する式1のUV吸収剤が用いられる。
【0013】
有利には、本発明によるフィルムは、式1に従ったUV吸収剤として、化合物の(2,2'−メタンジイルビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール])、CAS番号103597−45−1又は後記するように:
【化2】
を含有する。
【0014】
この化合物は、例えば、BASF SEよりTinuvin 360の商品名で市販されている。
【0015】
さらに、本発明の対象は、ポリビニルアセタール、少なくとも1種の可塑剤及び式1の少なくとも1種のUV吸収剤を、固体の形で混合ユニット中で混合し、引き続き、得られた混合物を押出することによって、上で定義されるようなフィルムを製造する方法である。混合ユニットとして、混合機、押出機又は混練機が用いられることができる。殊に適しているのは、得られた混合物をスロットダイによりフィルムへと押出する押出機である。この場合、混合は、押出機の前方部分で行ってよく、ここで、押出機のその後の部分では溶融及び形状付与が行われる。
【0016】
この場合、固体の形で存在するUV吸収剤は、例えば、直接粉末として又は粒質物として押出機のフィード領域中に供給されることができる。任意に、固体の形で存在するUV吸収剤は、粉末又は粒質物として存在するポリビニルアセタールと予混合した後に供給されることができる。
【0017】
しかし、有利には、UV吸収剤は、キャリア液、例えば可塑剤中に懸濁させて混合ユニットに供給される。
【0018】
本発明によるフィルムは、式(1)に従った少なくとも1種のUV吸収剤を、有利には0.01〜1.5質量%、特に有利には0.05〜0.80質量%の量で、最も有利には0.10〜0.50質量%の量で含有する。
【0019】
本発明の第二の変更態様においては、フィルムは、付加的に少なくとも1種の酸化防止剤を0.005〜0.5質量%の量で含有する。
【0020】
式1に従ったUV吸収剤の本発明による使用においては、フィルム材料に、紫外線A波の減少させられた割合が曝されることになる。これにより、特定の酸化防止剤から生じる黄色に着色された分解生成物がもはや照射によって漂白されなくなり得る。それゆえ、有利には、そのような分解生成物を形成しない酸化防止剤、例えば、部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート若しくはHostanox 03型の部分構造を含まない酸化防止剤が用いられる。これらの部分構造を含む酸化防止剤は、早くも押出中に部分的に黄変する傾向がある。
【0021】
本発明の第三の変更態様においては、フィルムは、1500ppm未満の、式(2)
【化3】
[式中、R=多官能性アルコールの炭化水素基、1〜10個のグリコール単位を有するオリゴグリコール、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜30個の炭素原子を有するN,P,S−置換炭化水素基又はアルコール基中に1〜30個の炭素原子を有するカルボン酸エステル基]の若しくは部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型を有する酸化防止剤を含有する。
【0022】
有利には、本発明によるフィルムは、上で挙げた酸化防止剤を、低い割合でのみ、すなわち、有利には1000ppmを上回らない、有利には500ppmを上回らない、有利には250ppmを上回らない、100ppmを上回らない、50ppmを上回らない量で含有する。特に有利には、本発明によるフィルムは、上で挙げた酸化防止剤を全く含有せず、すなわち、0ppmを含有する。
【0023】
第三の変更態様において用いられないか又は上で挙げられた割合でのみ用いられる式(2)の化合物の例は、以下のCAS番号:2082−79−3、12643−61−0、35074−77−2、23128−74−7、976−56−7、65140−91−2、1709−70−2、34137−09−2、27676−62−6、6683−19−8、41484−35−9、991−84−4、63843−89−0、4221−80−1、67845−93−6を有する化合物である。
【0024】
同様に、第三の変更態様において用いられないか又は上で挙げられた割合でのみ用いられる式(2)の化合物の例は、以下の構造式:
【化4】
に従った化合物である。
【0025】
この種の化合物は、例えば、”Plastics Additives handbook” 5th Edition,Hanser Verlagの”Primary antioxidants”の章に見つけられることができる。
【0026】
本発明の第四の変更態様においては、部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型の構造を含有しない酸化防止剤は、0.005〜0.5質量%、有利には0.02〜0.15質量%、最も有利には0.03〜0.1質量%の量でフィルム中に含有されていてよい。
【0027】
係る適した酸化防止剤は、例えば、式(3)
【化5】
[式中、R=多官能性アルコールの炭化水素基、1〜10個のグリコール単位を有するオリゴグリコール又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、並びにX=1、2、3又は4である]の化合物又はLowinox 44B25型又はIrganox 129型の二核のフェノール系酸化防止剤、Songsorb 2908型の単核の酸化防止剤(CAS:67845−93−6)、BHT(CAS:128−37−0)、p−オクチルフェノール、多核のフェノール系酸化防止剤、例えばTopanol CA(CAS:1843−03−4)又はWingstay L(31851−03−3)である。
【0028】
同様に、1個以上の硫黄原子を含有し、しかしながら、部分構造(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート又はHostanox 03型の部分構造は含まないフェノール系酸化防止剤が考慮に入れられる。
【0029】
式(3)に従った酸化防止剤は、殊にトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、CAS番号36443−68−2であってよい。これは、例えばSongwonより”Songnox 2450”として又はBASF SEより”Irganox 245”として市販されている。
【0030】
当然の事ながら、置換基を変えることによって簡単に、相応して本発明の範囲内で用いられることができる更に別の類似の構造を生み出すことができる。
【0031】
同時に、本発明によるフィルムの黄色度(db)は、2未満、有利には1.5未満、有利には1未満、有利には0.6未満、特に有利には0.4未満である。本発明によるフィルムの黄色度(db)は、2mmの厚みの2枚の透明ガラスの間に0.76mmの厚みを有するフィルムから成る積層体について測定される。ガラスの色特性(Farbbeitrag)は、参照基準としてフィルムなしの同一の一組のガラスを測定することによって突き止められる。
【0032】
フィルムの黄色度は、EN 410に準拠した430nmでのフィルムの透過率によって測定されることもできる。それゆえ、殊に本発明によるフィルムは、0.76mmの厚みにて、積層体において、そのつど2mmの厚みを有する2枚の透明ガラス(例えばPlanilux)の間で、EN 410に準拠した430nmでの光透過率75%超、特に有利には80%超、85%超、86%超、87%超又は88%超を有する。
【0033】
他の厚みのフィルムのEN 410に準拠した430nmでの黄色度(db)若しくは透過率は、注意深く変形(例えば、2×0.38mmのフィルムを互いに貼り合わせる、1.52mm厚のフィルムを厚さ0.76mmに圧縮する、厚さ0.76mmを−若しくは厚さ0.76mmまで−剥離する)させた後に、基準厚さ0.76mmで測定されることができる。
【0034】
適したUV吸収剤及び酸化防止剤の使用に加えて、本発明によるフィルムの低いアルカリ滴定値(Alkalititer)の調節により、本発明によるフィルムの改善された固有色及び光熱安定性がもたらされることができる。
【0035】
アルカリ滴定値は、実施例に記載される通り、塩酸による本発明によるフィルムの中和によって測定され、かつ有利には2〜70の間、殊に3〜50の間、最も有利には5〜30の間にある。
【0036】
アルカリ滴定値の調節は、ポリビニルアルコールのアセタール化によるポリビニルアセタールの製造の間若しくはその製造の後で、ポリビニルアセタールの相応する中和によってか、又は本発明による混合物への金属塩の添加によって行われることができる。金属塩は、本発明によるフィルムが合わせガラス積層体のために使用される場合、通例、粘着防止剤としても機能する。
【0037】
本発明によるフィルムは、粘着防止剤として、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン若しくはアルカリ金属イオンを含有してよい。これらは、混合物/フィルム中に、一価若しくは多価の無機酸の塩又は1価若しくは多価の有機酸の塩の形で存在する。対イオンの例は、例えば、有機カルボン酸の塩、例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、2−エチルヘキサン酸塩等であり、ここで、有利には、12個未満の、有利には8個未満の、有利には6個未満の、有利には4個未満の、特に有利には3個未満の炭素原子を有するカルボン酸が使用される。無機対イオンの例は、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンである。更に別の対イオンは、界面活性剤に分類されるアニオン、例えばスルホン酸イオン又はリン酸系界面活性剤であってよい。
【0038】
有利には、本発明によるフィルムは、5ppm超、有利には10ppm超、有利には15ppm超、有利には20ppm超、有利には25ppm超の、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn及びAlの群から選択されたイオンを含有する。不所望な曇りを回避するために、他方ではしかし、上で挙げた多価金属は250ppmを超えて含まれていないのが望ましい。
【0039】
同時に、ポリビニルアセタールを基礎とする可塑剤含有のフィルム中でのアルカリ金属イオン(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)の含有量は、可能な限り低く調節されるべきである。有利には、フィルムは、150ppm未満、有利には100ppm未満、有利には75ppm未満、有利には50ppm未満、有利には25ppm未満、有利には10ppm未満、特に有利には5ppm未満のアルカリ金属イオンを含有する。
【0040】
意想外にも、高められた量の、式1に従った本発明により使用されるベンゾトリアゾールUV吸収剤が、二価金属イオンを錯化するその性質にも関わらず、接着の調節に悪影響を及ぼさないことが確認された。殊に、自動車領域におけるPVB/ガラス積層体の使用において十分な耐貫通強度を得るのに必要とされているような、下げられた接着度を調節することが可能である。ここで、本発明によるフィルムは、積層体において、2枚の透明ガラス(2.1mm Planilux(R))の間で、6〜30N/mm2、特に有利には8〜20N/mm2、殊に有利には9〜16N/mm2のせん断強度を有する。
【0041】
本発明により用いられるポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール(PVA)とアルデヒド、例えばブチルアルデヒドとのアセタール化生成物として入手可能である。本発明によるフィルムは、分子量、アセタール化度、残留アルコール含有量又はアセタール基の炭素原子の数の点で異なっていてよい1種以上のポリビニルアルコールを含有してよい。
【0042】
さらに、本発明によるフィルムの上で挙げた好適な光学的特性は、ポリビニルアセタールの製造のために用いられるポリビニルアルコール(PVA)の選択によって改善されることができる。PVAの段階でポリマー鎖中に不飽和単位が欠陥箇所として存在する場合、これらは、必然的に、これらより作り出されたポリビニルアセタール中でも再び見出され、また、それによってポリビニルアセタールの紫外線吸収率が高まり、かつ光安定性が悪化する。不飽和単位は、単独の形で、又は相互に共役した二重結合の形で、又はカルボニル結合と共役した二重結合の形で存在してよい。これらの不飽和単位は、PVAにおける紫外分光法によって検出可能である。
【0043】
欠陥箇所の割合が非常に高いと、用いられるPVAを水中の4質量%溶液で測定した場合、280nmでの吸光度はほぼ1となる。それゆえ、有利には、本発明により使用されるポリビニルアセタールの製造のために、4質量%の水溶液中で、280nmにて、0.5未満、0.3未満、殊に0.2、有利には0.1の吸光度値を有するポリビニルアルコールが用いられる。
【0044】
式1に従ったUV吸収剤の使用及び黄変傾向を有さないフェノール系酸化防止剤の使用及び/又は特に欠陥箇所の少ないポリビニルアセタールの使用及び/又はアルカリ滴定値の調節に加えて、本発明によるフィルムには、1種以上の光安定剤、殊にHALS型の立体障害アミン及び/又は立体障害アミノエーテル(NOR−HALS)が備わっていてよい。
【0045】
本発明によるフィルムは、有利には0.005〜1質量%、特に有利には0.01〜0.5質量%、殊に0.03〜0.3質量%、最も有利には0.05〜0.25質量%の、HALS型又はNOR−HALS型の立体障害アミンを光安定剤として含有する。
【0046】
特に適した立体障害アミンは、一般式(5)、(6)及び/又は(7)
【化6】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、H=C1〜C20−アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルオキシアルキルであって、そのつど非置換であるか又はアルデヒド基、ケト基若しくはエポキシ基で置換されており、R12=平面的な化合物(glatte Verbindung)、C1〜C20−アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルオキシアルキルであって、そのつど非置換であるか又はアルデヒド基、ケト基若しくはエポキシ基で置換されている、nは=2〜4であり、かつm=1〜10]のアミンである。
【0047】
この種類の化合物は、例えば、BASF(Ciba Specialities)社の製品のTinuvin 123(NOR−HALS)、Tinuvin 144、Tinuvin 622、Tinubin 770並びにそのジ−N−メチル化誘導体で市販されている。特に良く適しているのは、例えば、Songwon InternationalのSonglight 2920、旭電化のADK Stab LA−57、LA−52若しくはLA−62又はBASF SEのUVINUL 4050 Hである。
【0048】
ポリビニルアセタールの製造のために、ポリビニルアルコールを水に溶かし、かつアルデヒド、例えばブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド又はプロピオンアルデヒドで、酸触媒の添加下でアセタール化する。沈殿したポリビニルアセタールを分離し、中性に洗浄し、場合によりアルカリ性に調節した水性媒体中に懸濁させ、その後、新たに中性に洗浄し、かつ乾燥した。
【0049】
アセタール化のために用いられる酸は、反応が行われた後に再び中和されなければならない。アルカリ金属イオンのわずかな含有量は、なかでも、ポリビニルアセタールの合成に際して、触媒の中和のために通常用いられる水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム若しくは炭酸塩を省くことによってか、又はアセタール化に際して得られたポリビニルアセタールの入念な洗浄によって達成されることができる。塩基のNaOH又はKOHの代わりに、アセタール化工程からの触媒酸は、例えば二酸化炭素又は酸化エチレンを送り込むことによって中和されることができる。
【0050】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有量は、アセタール化に際して用いられるアルデヒドの量によって調節されることができる。
【0051】
アセタール化は、2〜10個の炭素原子を有する他の又は複数のアルデヒド(バレルアルデヒド)により実施することも可能である。
【0052】
ポリビニルアセタールを基礎とする可塑剤含有のフィルムは、有利には、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化することによって取得される未架橋のポリビニルブチラール(PVB)を含有する。
【0053】
架橋したポリビニルアセタール、殊に架橋したポリビニルブチラール(PVB)を用いることも同様に可能である。適切な架橋したポリビニルアセタールは、例えば、EP1527107B1及びWO2004/063231A1(熱によるカルボキシル基含有ポリビニルアセタールの自己架橋)、EP1606325A1(ポリアルデヒドで架橋されたポリビニルアセタール)及びWO03/020776A1(グリオキシル酸で架橋されたポリビニルアセタール)に記載されている。これらの特許出願の開示内容は、参照により完全に取り込まれる。
【0054】
ポリビニルアルコールとして、本発明の範囲内では、加水分解された酢酸ビニル/エチレン−コポリマーより成るターポリマーも用いられることができる。これらの化合物は、通例、98Mol%より多くが加水分解されており、エチレンをベースとする単位を1〜10質量%含有する(例えばKuraray Europe GmbHの”Exceval”型)。
【0055】
ポリビニルアルコールとして、本発明の範囲内では、さらに、酢酸ビニルと少なくとも1種の更に別のエチレン性不飽和モノマーより成る加水分解されたコポリマーも用いられることができる。
【0056】
ポリビニルアルコールは、本発明の範囲内では、純粋に又は異なる重合度若しくは加水分解度を有するポリビニルアルコールの混合物として用いられることができる。
【0057】
ポリビニルアセタールは、アセタール単位のほかに、さらに酢酸ビニルとビニルアルコールとから生じる単位を含有する。本発明により使用されるポリビニルアセタールは、12〜24質量%、有利には14〜23質量%、有利には16〜22質量%、有利には17〜21質量%、殊に18〜20質量%のポリビニルアルコール割合を有する。
【0058】
本発明により用いられるポリビニルアセタールのポリビニルアセテート含有率は、有利には、5質量%を下回り、3質量%を下回り、又は1質量%を下回り、特に有利には0.75質量%を下回り、極めて有利には0.5質量%を下回り、殊に0.25質量%を下回る。
【0059】
ポリビニルアルコール割合と残留アセテート含有量から、アセタール化度が計算により突き止められることができる。
【0060】
有利には、フィルムは、5〜45質量%、12〜36質量%、14〜32質量%、16〜30質量%、殊に20〜28質量%の範囲における全可塑剤含有量、すなわち、フィルム中の全ての可塑剤の割合を有する。本発明によるフィルム若しくはそれと接着された積層体は、1種以上の可塑剤を含有してよい。
【0061】
本発明によるフィルムのための可塑剤として良く適しているのは、以下の群:ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート(3GO若しくは3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−2−エチルヘキサノエート(4GO又は4G8)、ジ−2−ブトキシエチルアジペート(DBEA)、ジ−2−ブトキシエトキシエチルアジペート(DBEEA)、ジ−2−ブトキシエチルセバケート(DBES)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノニルフタレート(DINP)、トリエチレングリコール−ビス−イソノナノエート、トリエチレングリコール−ビス−2−プロピルヘキサノエート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)、ジイソノニルアジペート(DINA)及びジプロピレングリコールベンゾエートから選択された1種以上の化合物である。
【0062】
本発明によるフィルムのための可塑剤として極めて適しているのは、その極性が、式100×O/(C+H)で表記して、9.4以下である可塑剤であり、ここで、O、C及びHは、そのつどの分子中の酸素原子、炭素原子及び水素原子の数を表す。後続のリストは、本発明により使用可能な可塑剤及び式100×O/(C+H)に従ったその極性値を示す。
【0063】
名称 略称 100×O/(C+H)
ジ−2−エチルヘキシルセバケート (DOS) 5.3
ジ−イソ−ノニルアジペート (DINA) 5.3
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル (DINCH)5.4
ジ−2−エチルヘキシルアジペート (DOA) 6.3
ジヘキシルアジペート (DHA) 7.7
ジブチルセバケート (DBS) 7.7
トリエチレングリコール−ビス−2−プロピルヘキサノエート 8.6
トリエチレングリコール−ビス−i−ノナノエート 8.6
ジ−2−ブトキシエチルセバケート (DBES) 9.4
トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート (3G8) 9.4
【0064】
さらに、本発明による混合物又はフィルムは、付加的に、更に別の添加剤、例えば帯電防止剤、充填剤、IR吸収性ナノ粒子若しくは発色団、染料、界面活性物質、漂白剤、安定剤、酸/塩基−緩衝剤、キレート形成剤、エポキシ基含有化合物、顔料又は粘着調整剤を含有してよい。
【0065】
本発明によるフィルムは、合わせガラスを製造するために、すなわち、少なくとも2枚のガラス板を接着させるために、又は更に別の透明な硬質若しくは可撓性の膜をガラス板と結び付ける層として使用されることができる。係るガラスは、良好な紫外線保護が、同時に光の可視領域における高い透明度とともに重要である所で、例えば、オフィスビル、例えば学校、博物館といった公共の建物、ショーウインドウ用ガラス(Schaufensterverglasungen)、自動車(フロントガラス、サイドガラス(Seitenverglasung)、ガラスルーフ及びリヤウインドウ)又は航空機用ガラスにおいて好ましくは用いられることができる。さらに、オフィスビル、レストラン建物、バスルーム、公共トイレ等の室内領域における合わせ安全ガラス(VSG)コンポーネントとして用いられることもできる。殊に、本発明によるフィルムは、機能性コンポーネント、例えば光起電力モジュール(特に有機太陽電池を有するもの)、ディスプレイ適用(LED若しくはOLED画面、テレビ受像器、コンピューター画面、大画面(Grossbildschirme))、切替可能なガラス部材(特にエレクトロクロミックガラス部材、フォトクロミックガラス部材若しくはフォトエレクトロクロミックガラス部材又は”サスペンデッド・パーティクル・デバイス型のガラス部材”又はサーモトロピック型のガラス部材(Thermotrop)において使用されることができる。
【0066】
上で挙げた機能性コンポーネント中では、本発明によるフィルムの少なくとも1つの膜が、その背後にある活性層を、日光若しくは紫外線による損傷から保護する。フォトクロミック層の場合、日射の紫外線割合をフィルターアウトすることによって、付加的にその応答挙動に変更を加えられることができ、その場合、これは紫外線より可視光の影響を大いに受ける。
【0067】
試験法及び測定法:
2×2.1mmのPlanilux(R)の間に貼り合わされた0.76mm厚のフィルムの被照射特性(strahlungstechnische Eigenschaften)(光の透過率TL、紫外線の透過率TUV、そのつど%表記)を、DIN EN 410(2011)に準拠して、UV/VIS分光計(Perkin−Elmer Lambda 950)を用いて測定する。
【0068】
押出されたフィルムの黄色度の測定のために、2.1mmの2枚のガラスPlanilux(R)を有する0.76mm厚のフィルムを有する合わせガラスを、ColorQuest XEを用いてHunterlab 2°/Cの設定で測定する。この方法では、ガラスの固有色を、ゼロ試料としての同一のガラスバッチの2枚一組のガラスを測定することによって差し引いて、中間層の黄変への寄与を黄色度dbとして数値的に算出する。
【0069】
UV吸収剤のPVBフィルムへの移動挙動を比較するために、以下の通りに措置を行う:
0.76mm厚のPVBフィルムを、試験されるべきUV吸収剤を含有するフィルム中のと同じ可塑剤を用いて準備する。このフィルムを、移動した基準(Migrationssenke)として利用し、これは初めUV吸収剤を含まない。次いで、このフィルムと、試験されるべきUV吸収剤を有するフィルムとを組み合わせて、以下の通りサンドウィッチにする(図1):
支持部材としての2mmガラス膜
支持部材としての100〜200μmの厚いPETフィルム
UV吸収剤を含まないフィルム
約50μmの薄さのPETフィルム(例えばSouthwall XIR 75):半分で
UV吸収剤を有するフィルム
支持部材としての100〜200μmの厚いPETフィルム
支持部材としての2mmガラス膜
ガラス及び2つの外側のPET膜は、ここでは単に、オートクレーブ工程を含む通常の複合物製造を可能にし、しかしながら同時に、外側のPETの除去によって簡単な試料作製を行えるようにするために用いられる。薄いPETフィルムを半分配置することによって、2枚のPVBフィルムは、フィルムスタックの一方の半分において互いに直接貼り合わされている一方で、それらはフィルムスタックのもう一方の面では薄いPETフィルムによって隔てられている。ここで、薄いPETフィルムは、この半分において可塑剤及びUV吸収剤に対する移動バリアとして作用する。工業的によく用いられる減圧バッグ中で予備複合体を製造した後、試験積層体に、90分の全体時間、12barの最大圧力及び30分間維持される140℃の最大温度による通常のオートクレーブ処理に供する。次いで、再び空気が気泡として発生することを回避するために、試験積層体を、まず室温で十分な時間(例えば48時間)貯蔵する。その後、試験積層体を、4週間の間、100℃にて乾燥器中で貯蔵する。ここで、UV吸収剤が、これを含有するPVB層から、これを含まないPVB層へと移動する。初めUV吸収剤を含んでいなかったPVB膜からフィルム試料を、薄いPETフィルム(5〜10mm、図2)のエッジから特定の間隔で取り出し、かつ中に入り込んだUV吸収剤の定量化によって、移動傾向を比較的に測定することができる。定量化は、ガスクロマトグラフィー分析により又は光度計により、該当するUV吸収剤の特定の吸収バンドを利用して行われる。
【0070】
PVBフィルムの接着を評価するために、圧縮せん断試験を、ガラス/ガラス積層体についてDE19756274A1に依拠して実施した。そのために、25.4×25.4mm寸法の10個の試料を、45°の角度でDE19756274A1に従った試験装置中に2.5mm/分の供給速度で固定し、かつ測定した。次いで、試料面を基準とした、フィルムをガラスからせん断するために必要とされる最大の力を、10個のサンプルについて平均して出した。
【0071】
本発明によるUV吸収剤の融点は、”Mettler FP5”型の半自動式の融点測定装置で測定することができる。ここで、材料毎にそのつど3つの融点管(外径1.55mm、内径1.15mm、長さ80mm)に、およそ1cm高さで試料を入れる。1°/分の加熱速度は、予期された融点を10°下回って始まる。融点に関するデータは、UV吸収剤の製造元の技術データシートにも見つけられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】0.76mm厚のPVBフィルムと、試験されるべきUV吸収剤を有するフィルムとを組み合わせて、サンドウィッチにした図
図2】初めUV吸収剤を含んでいなかったPVB膜からフィルム試料を、薄いPETフィルムのエッジからの特定の間隔で取り出すことを示す図
【0073】

後続の表に記載した組成の混合物を有するフィルムを製造し、かつ2.1mm厚のPlanilux(R)型の2枚のガラス板の間に積層体として加工し、かつ試験した。押出温度は、いずれのケースにおいても200℃であった。比較例2〜4においては、UV吸収剤をそのつど可塑剤に溶かすことができ、かつ押出混合物に加える。例1においては、UV吸収剤は、単に可塑剤に懸濁させた。
【0074】
例1は、比較例2〜4と比較して、低い黄色度と低い紫外線透過率とを非常に有利に併せ持つ。意想外にも、本発明によるUV吸収剤は、>190℃の融点を有し、かつ押出は単に200℃で実施していたにも関わらず、付加的に非常にわずかな曇価も得られた。意想外にも、本発明によるUV吸収剤は、そのうえまた、比較例2のUV吸収剤より移動する傾向がずっと少ない。
【0075】
【表1】
【0076】
表中の意味
PVB ポリビニルブチラール
3G8 トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート
DBEA ジ−2−ブトキシエチルアジペート(場合により3G8との質量混合比で)
TL EN 410に準拠した光透過率(380〜780nm)
db Colorquest XEにより測定した黄色度db
(a)フィルムを基準とした質量%値
図1
図2