特許第6469394号(P6469394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6469394-アポトーシス抑制剤 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469394
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】アポトーシス抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20190204BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20190204BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 33/13 20160101ALI20190204BHJP
【FI】
   A61K31/7105
   A61P25/16
   A61P35/00
   A61P43/00 105
   A61K35/20
   A23L33/00
   A23L33/13
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-183058(P2014-183058)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-56119(P2016-56119A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】和泉 裕久
(72)【発明者】
【氏名】津田 宗哉
【審査官】 中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】 実験医学,2011年,29(3),399-403
【文献】 HWANG, H-W. and MENDELL, JT.,British Journal of Cancer,2006年,Vol. 94, No. 6,pp. 776-780
【文献】 JOVANOVIE, M. and HENGARTNER, MO.,Oncogene,2006年,Vol. 25, No. 46,pp. 6176-6187
【文献】 Chan, J. A. et al.,Cancer Research,2005年,Vol. 65, No. 14,pp. 6029-6033
【文献】 日本農芸化学会大会講演要,2005年,96,29E015α
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 35/00−36/068
A61P 1/00−43/00
A01J 1/00−99/00
A23C 1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシの乳由来のエクソソーム、または、少なくともRNAを含む該エクソソームの分画物を有効成分として含有する、アポトーシス抑制剤。
【請求項2】
前記エクソソームが、膜小胞構造が一部又は完全に破壊されている破砕物である、請求項1に記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項3】
前記破砕物が、超音波処理物である、請求項2に記載のアポトーシス抑制剤。
【請求項4】
アポトーシス抑制剤の製造方法であって、
ウシの乳から脂質画分、細胞画分及びカゼイン画分を除去してホエイ画分を調製する工程、
前記ホエイ画分からエクソソーム画分を回収する工程、
前記エクソソーム画分に含まれるエクソソームの膜小胞の形態を一部又は完全に破壊する工程、及び、
前記エクソソーム画分、または、少なくともRNAを含む該エクソソームの分画物を有効成分として製剤化する工程、
を含む方法。
【請求項5】
前記膜小胞の形態を一部又は完全に破壊する工程が、前記エクソソーム画分を超音波処理する工程である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ウシの乳由来のエクソソーム、または、少なくともRNAを含む該エクソソームの分画物を有効成分として含有する、アポトーシス抑制用飲食品組成物。
【請求項7】
前記エクソソームが、膜小胞構造が一部又は完全に破壊されている破砕物である、請求項6に記載のアポトーシス抑制用飲食品組成物。
【請求項8】
前記破砕物が、超音波処理物である、請求項7に記載のアポトーシス抑制用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳由来の成分を有効成分とするアポトーシス抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソソームは、脂質二重層で構成される直径20〜100nmの膜小胞であり、血液(血清、血漿)、母乳、肺胞洗浄液、悪性胸膜滲出液、滑液、尿、羊水、精液、唾液等の体液中に存在し、内部にはRNAやタンパク質等が含まれている。エクソソームは生体内で細胞から放出され、離れた細胞への分子輸送に関与するといわれている。
【0003】
乳中の膜小胞については、牛乳(初乳又は成熟乳)から膜小胞を調製し、げっ歯類マクロファージ系であるRaw 264.7細胞に添加し、培養上清中のサイトカインを測定し、その結果から膜小胞が炎症を促進すること等が示唆されているが、細胞増殖については有意な差がなかったことが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
ところで、乳中に存在するマイクロRNA(miRNA)の存在量が高められた乳は、高い免疫増強作用を有することが知られている(特許文献1)。そして、このmiRNAはエクソソームに存在していることが報告されている(非特許文献2)。
【0005】
また。乳中に含まれる特定のメッセンジャーRNA(mRNA)の存在量を高めることによって、乳の免疫増強作用を高めることができることが知られている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、乳中に含まれるエクソソーム又はそこに含まれているRNAが、アポトーシス抑制作用を有することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第20120093874号公報
【特許文献2】米国特許公開第20130280368号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sun, Q. et al., Protein Cell, 4(3):197-210, 2013
【非特許文献2】Kosaka, N., et al., Silence 1:7, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全性の高いアポトーシス抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、乳由来のエクソソーム及びそこに含まれるRNAが、細胞のアポトーシスを抑制する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、乳由来のエクソソーム、または、少なくともRNAを含む該エクソソームの分画物を有効成分として含有する、アポトーシス抑制剤を提供する。
本発明はまた、アポトーシス抑制剤の製造方法であって、
乳から脂質画分、細胞画分及びカゼイン画分を除去してホエイ画分を調製する工程、
前記ホエイ画分からエクソソーム画分を回収する工程、及び、
前記エクソソーム画分、または、少なくともRNAを含む該エクソソームの分画物を有
効成分として製剤化する工程、
を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアポトーシス抑制剤は、アポトーシス抑制作用を有している。本発明のアポトーシス抑制剤は、飲食品として汎用されている乳を原料としており、飲食品又は医薬品等として安全性が高いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】LPS処理したマクロファージ様細胞の生存生細胞数(相対値)を示す図。BSA:牛血清アルブミン、Exo:エクソソーム画分、sonicated:超音波処理したエクソソーム画分、RNA:エクソソーム画分から精製したRNA、LF:ウシ・ラクトフェリン。「*」、「**」は、PBS群を対照としたDunnett検定において、各々p<0.05、P<0.01で有意であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0015】
本発明のアポトーシス抑制剤は、乳由来のエクソソーム、または、少なくともRNAを含む乳由来のエクソソームの分画物を有効成分として含有する。すなわち、本発明に用いるエクソソームは、乳から得られるエクソソームである。乳は、哺乳動物から得られるものであれば特に制限されないが、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット等から得られる乳が挙げられる。好ましくはヒト、ウシから得られる乳である。乳は、初乳であっても成熟乳であってもよいが、成熟乳が好ましい。
【0016】
乳からエクソソームを調製する方法は特に制限されないが、具体的な方法として、以下に一例を記載する。
乳から脂質画分、細胞画分及びカゼイン画分を除去してホエイ(乳清)画分を調製する。得られたホエイ画分からエクソソーム画分を回収する。エクソソーム画分の回収は、超遠心法、フィルター法、密度勾配遠心法、スクロースクッション法、限外ろ過、連続フロー電気泳動法、クロマトグラフィー法等の公知の方法(国際公開第2014/030590)を用いることができる。具体的には例えば、ホエイ画分を30,000〜1,000,000×g、例えば100,000×gで、60〜120分遠心分離し、上清を除去すると、エクソソーム画分が得られる。
【0017】
また、エクソソームを血清、血漿、尿、脳脊髄液などの生体液から単離するためのキットが市販されており(例えばタカラバイオ社 Exosome Isolation Kit、ライフテクノロジー社 Exosome Isolation Reagent)、それらを使用してもよい。
【0018】
エクソソーム画分とは、エクソソームの含量が原料乳よりも高ければよく、好ましくは、総固形量に対する含量(質量%)が原料乳の2倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは25倍以上に濃縮されていることが好ましい。あるいは、エクソソーム画分に含まれるエクソソーム由来のRNA濃度が、原料乳中のエクソソーム由来のRNA濃度よりも、2倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは25倍以上高いことが好ましい。また、エクソソーム画分は、実質的にエクソソーム又はその溶液もしくは懸濁物のみからなるものであってもよい。エクソソームの量又は濃度は、例えば、Lowry法、Bradford法、又はこれらの方法を改良した蛋白質濃度定量法等により測定することができる。
【0019】
得られたエクソソーム、または、少なくともRNAを含む該エクソソームの分画物(以下、単に「分画物」と記載することがある)を有効成分として製剤化することによって、アポトーシス抑制剤が得られる。実施例に示すように、乳由来のエクソソーム及びエクソソームに含まれるRNAは、LPSを添加されたヒト単球性白血病細胞株由来のマクロファージ様細胞の生存率を増加させる作用を有している。マクロファージはLPSによりアポトーシスが誘導されることが知られており(例えば、Antonios, O. et al., SCIENCE, 285(30):736-739, 1999、Xaus, J. et al., Blood, 95(12):3823-3831, 2000)、上記単球性白血病細胞株由来のマクロファージ様細胞も、LPSによりアポトーシスが誘導されると考えられる。したがって、上述の細胞の生存率増加作用は、アポトーシス抑制作用によるものと考えられる。また、前記のとおり、乳由来のエクソソーム又はその分画物を含有する組成物は、細胞の生存率を増加させる作用を有しており、細胞生存率増加剤でもあり得る。また、細胞生存率の増加は細胞死の抑制でもあるから、乳由来のエクソソーム又はその分画物を含有する組成物は、細胞死抑制剤でもあり得る。
【0020】
本発明のアポトーシス抑制剤による効果は、乳由来のエクソソーム及びエクソソームに含まれるRNAが、LPSを添加されたヒト単球性白血病細胞株由来のマクロファージ様細胞の生存率を増加させる作用に基づいて検討することが可能である。そして、これらの効果は、細胞中のミトコンドリアの呼吸過程で生成されるNADHによって、PES又はPMS等の電子輸送試薬を介してMTS(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium)が還元されるとフォルマザンが生成し、溶液は黄色から茶褐色へ変色する現象に基づいて、生存細胞数を測定することができる。
【0021】
本発明に用いるエクソソームは、インタクトなものであってもよく、膜小胞構造が一部又は完全に破壊された破砕物であってもよい。実施例に示されるように、乳由来のエクソソーム(以下、単に「エクソソーム」と記載することがある。)が持つアポトーシス抑制作用は、エクソソームから抽出したRNAによっても奏される。したがって、本発明のアポトーシス抑制剤の有効成分は、少なくともRNAを含むエクソソームの分画物であってもよい。RNAを含む分画物には、精製RNAも含まれる。
なお、前記のエクソソームの分画物に含まれるRNAや精製RNAとしては、マイクロRNA(miRNA)及びメッセンジャーRNA(mRNA)等を例示することができる。
【0022】
本発明のアポトーシス抑制剤の製剤化にあたっては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。具体的製剤として、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む。)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む。)、顆粒剤(コーティングしたものを含む。)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。
【0023】
これらの製剤に用いる担体及び賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等を、結合剤としては澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。
【0024】
また、崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を例示することができる。
【0025】
更に、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びマクロゴー
ル等を、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を、それぞれ例示することができる。
【0026】
錠剤及び顆粒剤は、必要に応じ白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレート、及びメタアクリル酸重合体等により被膜することもできる。
【0027】
本発明のアポトーシス抑制剤の適用対象としては、アポトーシスを原因とする、又はアポトーシスを伴う疾患であれば特に制限されず、例えば、パーキンソン病、癌等が挙げられる。アポトーシス抑制剤を投与することによって、これらの疾患を治療、又は予防することができる。
【0028】
本発明の一態様は、アポトーシス抑制用の医薬の製造における、乳由来のエクソソーム、またはその分画物の使用である。ここで、アポトーシス抑制は、細胞死抑制又は細胞生存率増加と置き換えることができる。
また、本発明の他の態様は、アポトーシスを原因とする、又はアポトーシスを伴う疾患の治療又は予防に用いられる乳由来のエクソソームである。また、本発明の他の態様は、乳由来のエクソソーム、又はその分画物を動物に投与する、アポトーシスを原因とする、又はアポトーシスを伴う疾患の治療又は予防法である。ここで、アポトーシスは、細胞死と置き換えることができる。
【0029】
本発明のアポトーシス抑制剤は、経口投与、非経口投与のいずれによって投与されてもよいが、経口投与が好ましい。非経口投与としては、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。経口投与の剤型としては、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤、軟膏等が挙げられる。また、公知の、もしくは将来的に見出されるアポトーシス抑制作用を有する薬剤、医薬組成物を併用することもできる。併用する医薬組成物は、本発明の薬剤中に有効成分の一つとして含有させてもよいし、本発明の薬剤中には含有させずに別個の薬剤として組み合わせて商品化してもよい。
【0030】
また、乳由来のエクソソーム又はその分画物を有効成分として食品中に含有させ、アポトーシス抑制剤の一態様として、アポトーシス抑制作用を有する食品として加工することも可能である。
このような食品としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類; 農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品; 水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果
汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類;ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
【0031】
さらに、乳由来のエクソソーム又はその分画物を有効成分として飼料中に含有させ、アポトーシス抑制剤の一態様として、アポトーシス抑制作用を有する飼料として加工することも可能である。
【0032】
飼料の形態としては特に制限されず、例えば、乳由来のエクソソームを、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等に配合することにより製造できる。飼料の形態としては、例えば、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【0033】
本発明のアポトーシス抑制剤(医薬品、飲食品、飼料、医薬部外品等の各態様)において、エクソソームの配合量は、アポトーシス抑制剤の最終組成物に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。
【0034】
本発明のアポトーシス抑制剤の投与量は、年齢、症状等により異なるが、エクソソーム由来のRNA量に換算して、通常、1mg〜10g/日、好ましくは100mg〜1g/日であり、1日1回から複数回に分けて投与してもよい。また、本発明のアポトーシス抑制剤を摂取又は服用する場合は、食前、食間、食後のいずれのタイミングであっても、本発明の効果は十分に発揮されるものである。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(1)牛乳由来エクソソームの調製
乳製品製造に使用される原料乳を1,200×g、4℃で10分間遠心分離し、原料乳に含まれる脂肪、細胞を除去する操作を2回行い、脱脂乳を得た。得られた脱脂乳に10 %酢酸を滴下し、pHを4.6まで低下させてカゼインを沈殿させた。pH4.6の脱脂乳を4,500×g、4℃で30分間遠心分離し、カゼインを除いた。続いて20,000×g、4℃で30分間遠心分離を行ない、上清を採取する操作を2回行い、カゼインを完全に除去した。得られた試料を0.45μm及び0.22μmのフィルター(Millipore社製)で濾過し、乳清(ホエイ)を得た。得られた乳清を100,000×g, 4℃で90分間超遠心を行ない、エクソソームを含むペレット状の塊をPBSに懸濁し、上記と同様の超遠心を行なうことで、エクソソームを洗浄した。同洗浄を再度行ない、エクソソーム画分を得た。
【0037】
(2)アポトーシス抑制作用の確認方法
ヒト単球性白血病細胞株であるTHP-1(ATCC TIB-202)を、10 %非働化ウシ胎仔血清(HyClone社製)(超遠心により血清中エクソソームは除去したもの)、1 %ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン溶液(Gibco社製)、1 %非必須アミノ酸混合液(Gibco社製)、0.1 %β-メルカプトエタノールを含む培地(完全培地)で培養後、50 nM PMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate)(Sigma社製)を添加し、72時間培養することでTHP-1株をマクロファージ様に分化させた。この細胞5×104個に対して80μlの完全培地を加えた細胞懸
濁液と、以下(ii)〜(vi)の被検物質を20μlのPBSに溶解した被検物質溶液((i)は20μlのPBSのみ)とを混合し、それぞれ試験溶液(100μl)とした。
【0038】
(i)PBS
(ii)10 μgのウシ血清アルブミン
(iii)タンパク質換算で10 μg(RNA換算で12 ng)のエクソソーム画分
(iv)タンパク質換算で10 μgのエクソソーム画分を超音波処理したもの *1
(v)タンパク質換算で10 μgのエクソソーム画分から精製したRNA(12 ng)
(vi)10 μgのウシ・ラクトフェリン
*1:Nissei社製超音波破砕機US-300Eを用い20秒間5回超音波処理した。
【0039】
調製した試験溶液を、37℃、5% CO2環境下で24時間培養した後に、培養上清を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。洗浄後、細胞に完全培地100μlを加え、LPS(リポ多糖)(Sigma社製)を100 ng/mLとなるように添加して16時間培養した。16時間経過後に、LPSを含む培養上清を除去し、細胞に改めて完全培地を100μl添加し、37℃で10分間保温した。その後、Cell Titer 96(登録商標)AQueous Solution試薬(Promega社)を20μl添加し、さらに1時間30分保温した後、492nmの吸光度(MTS還元量)を測定することにより、生存細胞数を決定した。
【0040】
結果を図1に示す。乳由来のエクソソームはPBSに比較して、生存する細胞数を増加させた。また、超音波処理により膜小胞の形態を破壊されたエクソソームも、インタクトなエクソソームと同等に生存細胞数を増加させた。また、エクソソームから抽出されたRNAは、エクソソームと同等又はそれ以上に生存細胞数を増加させた。これらのことから、乳由来のエクソソームの持つ生存細胞数増加作用は、膜構造を必要としないことが確認された。また、その作用は、RNAによるものであることも示唆される。
前記したように、マクロファージ様細胞はLPSによりアポトーシスが誘導されると考えられる。したがって、上記で観察された生存細胞数の増加は、アポトーシス抑制作用によるものと考えられる。
図1