(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469400
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20190204BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20190204BHJP
B01D 61/18 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/58
B01D61/18
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-193933(P2014-193933)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-64342(P2016-64342A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
(72)【発明者】
【氏名】市原 史貴
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−508033(JP,A)
【文献】
特開平06−015271(JP,A)
【文献】
特開平10−099855(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/050125(WO,A1)
【文献】
特開2014−104403(JP,A)
【文献】
特開2008−237971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/18
B01D 61/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
限外ろ過膜装置を有する超純水製造装置であって、
前記限外ろ過膜装置は、直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールを有し、
前記直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールにおける後段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量が前段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量よりも小さく設定される
ことを特徴とする超純水製造装置。
【請求項2】
前記後段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量が該後段の限外ろ過膜モジュールに供給される被処理水の1容量%以下である請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項3】
前記直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールにおける少なくとも最下段の限外ろ過膜モジュールが全ろ過運転される請求項1または請求項2に記載の超純水製造装置。
【請求項4】
被処理水を、限外ろ過膜装置を有する超純水製造装置に通水する超純水製造方法であって、
前記限外ろ過膜装置は、直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールを有し、
前記直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールにおける後段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量が前段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量よりも小さく設定される
ことを特徴とする超純水製造方法。
【請求項5】
前記後段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量が該後段の限外ろ過膜モジュールに供給される被処理水の1容量%以下である請求項4に記載の超純水製造方法。
【請求項6】
前記直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールにおける少なくとも最下段の限外ろ過膜モジュールが全ろ過運転される請求項4または請求項5に記載の超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限外ろ過膜モジュールを複数段直列に配列したことによる高い除粒子性能を有する限外ろ過膜装置を有する超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造産業においては、不純物を高度に除去した超純水を用いてシリコンウエハの洗浄等が行われている。超純水は、一般に、原水(河川水、地下水、工業用水)中に含まれる懸濁物質や有機物等の一部を前処理工程で除去した後、その処理水を一次純水システム及び二次純水システム(サブシステム)で順次処理することによって製造され、ウエハ洗浄を行うユースポイントに供給される。超純水製造装置のサブシステム末端には、一般的に、超純水から微粒子、菌、コロイド、高分子化合物等を除去するためのろ過装置が設置されている。
【0003】
特許文献1には、一次純水製造装置と二次純水製造装置をサブシステムとして有し、処理水中の溶存酸素を低下させて水質を安定化させるための脱気装置を一次純水製造装置に設け、二次純水製造装置の末端に、クロスフロータイプの中空糸膜モジュールを有する限外ろ過膜装置を配置してユースポイントへ超純水を供給し、使用した残余の超純水を一次純水製造装置に循環する構成を有する超純水製造装置が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、限外ろ過膜と精密ろ過膜を組み合わせて用いることによる超純水からの12nmサイズの微粒子の除去についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−312175号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Removal of 12 nm particles from UPW by a combination of Ultrafiltration and Microfiltration」、Donald C Grant等、ULTRAPURE WATER journal、2012、5月/6月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、精密ろ過膜の利点を利用するために精密ろ過膜を用いることを必須とし、限外ろ過膜(分画分子量10,000)を精密ろ過膜(30"、HR filter)と組み合わせてシステムを構成し、その除粒子性能を評価している。しかしながら、限外ろ過膜単独によって粒径が50nm未満の微粒子(sub-50nm微粒子)の超純水からの除去を行う点についての開示は非特許文献1には全くない。
【0008】
また、半導体デバイス製造用の超純水供給装置における超純水中の微粒子のモニタリング管理としてこれまで実績があるのは、50nm以上の微粒子についてであり、従来の限外ろ過膜を用いた超純水製造供給装置によって製造供給される超純水中のsub-50nm微粒子の挙動、数値実績は明確にされていない。すなわち、従来の限外ろ過膜を用いた場合、sub-50nm微粒子の超純水中での残存数に関する知見はほとんどなく、実質的に不明である。
限外ろ過膜、それを用いたモジュール並びにろ過装置の高性能化、高品質化、高信頼化を図るためには、一般に、限外ろ過膜自身の改良・改善、製造方法等の見直しや開発が必要となる。
sub-50nm微粒子の除去に用いる新しい限外ろ過膜の開発においては、純水や超純水中におけるsub-50nm微粒子の分布やろ過処理中における挙動を把握する必要があるが、これらの点に関する十分な情報が得られていないのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、被処理水からの微粒子除去に関する高性能化及び高信頼化を達成し得る超純水製造装置
及び超純水製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超純水製造装置は、限外ろ過膜装置を有する超純水製造装置であって、前記限外ろ過膜装置は、
直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュール
を有し、前記直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールにおける後段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量が前段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量よりも小さく設定されることを特徴とする。
本発明に係る超純水製造方法は、被処理水を、限外ろ過膜装置を有する超純水製造装置に通水する超純水製造方法であって、前記限外ろ過膜装置は、直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールを有し、前記直列に接続された複数個の限外ろ過膜モジュールにおける後段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量が前段の限外ろ過膜モジュールの濃縮水の水量よりも小さく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る超純水製造装置においては、複数個の限外ろ過膜モジュールを直列に配置したことにより、より微粒子が除去された超純水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の超純水装置の構成の一実施形態を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の超純水製造装置の一実施形態のフロー図を示す。
図1に示す装置は、一次純水システム41とその下流側に接続された二次純水システム42(サブシステム)を有する。二次純水システム42は、一次純水を貯留する純水貯槽43の下流側に、熱交換器44(図中HEで示す)、紫外線酸化装置45(図中UVで示す)、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂との混床による非再生型イオン交換装置46(図中CPで示す)、限外ろ過膜装置47(図中UFで示す)を、この順序に通水するように設置したものである。限外ろ過膜装置47には、限外ろ過膜モジュール47a、47bが直列に接続されて設置されている。
限外ろ過膜装置47からの超純水は、ユースポイント48に供給される。二次純水システム42では連続循環運転を行っており、得られた超純水の一部をユースポイント48に送るとともに、残部を純水貯槽43に循環している。なお、熱交換器44とその後段の紫外線酸化装置45との間に、紫外線酸化装置45とその後段の非再生型イオン交換装置46との間、非再生型イオン交換装置46とその後段の限外ろ過膜装置47との間には、必要に応じ、他の装置を設置してもよい。例えば、非再生型イオン交換装置46とその後段の限外ろ過膜装置47との間に、膜脱気装置(図示せず)を設けることができる。
【0014】
限外ろ過膜装置47は、限外ろ過モジュール47a、47bと、限外ろ過モジュール47a、47bを接続する配管47−2と、被処理水を限外ろ過膜モジュール47aの一次側に供給する供給口47−1と、透過水を限外ろ過膜モジュール47bの二次側から取り出す取出口47−3と、を少なくとも有し、1段目に配置される限外ろ過モジュール47aには濃縮水を排出する排出口47a−1を有している。1段目よりも後段に配置される限外ろ過モジュール47bも濃縮水の排出口47b−1を有していてもよい。
複数段直列された限外ろ過膜モジュールの1段目の限外ろ過膜で除去しきれなかった微粒子は、1段目より後の後段において更に除去される。限外ろ過膜の孔径は完全な均一ではなく、通常は分画分子量を規定するメインの孔径を含むバラツキを有している。このメインの孔径を有する孔が孔径分布において最も大きな割合を占めるが、このメインの孔径よりも大きな孔があると、除去対象のサイズの微粒子がそこを通過して除去できない場合が生じる。即ち、規定された分画分子量よりも大きい分子量の物質が捕捉されない可能性がある。このような前段の限外ろ過膜モジュールを通過した規定の分画分子量より大きい微粒子を後段の限外ろ過膜モジュールで捕捉することができる。また、同様に、限外ろ過膜にはメインの孔径よりも小さい孔が存在する場合もあるので、前段の限外ろ過膜モジュールを通過した規定の分画分子量よりも小さい分子量の物質を後段の限外ろ過膜モジュールで捕捉することができる。したがって、複数段に設けられる限外ろ過膜モジュールは、後段になるに従い、除粒子性能の高い限外ろ過膜を使用する必要はなく、同等レベルのものを使用してもよい。例えば、前段の限外ろ過膜モジュールの分画分子量を6000とし、後段の限外ろ過膜モジュールの分画分子量を5000とする必要はなく、前段、後段ともに分画分子量6000の限外ろ過膜モジュールを2段直列に接続しても、1段のみの場合に比べて限外ろ過膜装置としての除粒子性能が向上する。
【0015】
1段目の構成及び運転条件は、後段における除粒子処理における目的効果を達成できる程度の超純水の水質が得られるものであればよく、従来の運用、運転であってもかまわない。例えば、5%(流量比)程度の濃縮水を排出しながらの運転方法を用いることができる。限外ろ過膜モジュールを直列に配置すると、通水差圧が大きくなるので、通水圧の確保が必要な場合は、通水圧上昇のための圧力付加補助手段としてのブースターポンプを設置したり、各段においてモジュールを複数本用い本数(膜面積)を多くすることによって単位膜モジュールあるいは単位膜面積当たりの通水量を少なくして、差圧上昇を抑えてもよい。
【0016】
十分な設置スペースが得られない場合は、ブースターポンプを用いることが好ましい。ブースターポンプの設置位置は、限外ろ過膜装置の入口(一段目の限外ろ過膜モジュールの前)、サブシステムの限外ろ過膜装置の前のCP(非再生型イオン交換装置)の入口が好ましい。なお、限外ろ過膜装置の入口に設けることによってブースターポンプの圧力をより有効に利用することができる。しかし、ブースターポンプによっては微量金属の溶出物が排出される場合があり、微量金属溶出物の混入に対する対処が必要な場合には、CPによって微量金属溶出物を吸着除去できるので、CPの入口にブースターポンプを設置することが好ましい。CPの入口にブースターポンプを配置する場合には、CPでの通水圧が大きくなることを考慮して、CPの耐圧を高めた構造とすることが好ましい。
【0017】
直列配置された複数の限外ろ過膜モジュールの1段目の次に配置される2段目に供給される超純水は1段目の限外ろ過膜モジュールの透過水であるため、微粒子の量は低減されている。2段目の限外ろ過膜モジュールで処理された処理水(透過水)では、設置されている限外ろ過膜の除粒子性能に応じて微粒子の量が更に低減される。また、1段目の次に配置される後段が2以上の段数を有する場合は、後段を構成する各段についても微粒子量が低減される。また、クロスフローで流す濃縮水量を後段において少なくすることができる。濃縮水量は、超純水の製造、供給の効率に関係するため、できるだけ少ない方が好ましく1%以下(全ろ過運転での0%を含む)とすることが好ましい。各段に濃縮水のラインを設け濃縮水量を調節、設定することが好ましい。これらの濃縮水ラインを通じて、限外ろ過膜を透過しない微粒子や生菌などの微細固形分を定期的にあるいは非定期的に排除してもよい。1段目における濃縮水の量は、目詰まり防止や生菌などの微細固形分の排除に必要な量とすることが好ましいが、後段においては、微粒子や生菌などの微細固形分の量が低減されており、限外ろ過膜へのこれらの負荷は大きく低減されており、後段における濃縮水量を1段目よりも低くしても目詰まりなどの問題が生じることはない。しかし、メンテナンスなど非定常時に濃縮水量を増して膜洗浄などを実施できるように、後段を構成する限外ろ過膜モジュールにも濃縮水ラインを設けておくことが好ましい。
【0018】
一方、定常運転における後段において、実質的に微粒子や生菌などの微細固形分の負荷がほとんどない場合、すなわち、透過せずに膜上に残された微細固形分による目詰まり等のろ過性能低下の可能性がない場合には、濃縮水を取出さずにデッドエンドで全量ろ過として運転、運用しても良い。特に、少なくとも最下段において、濃縮水量を最も少なくし、あるいは全量ろ過(濃縮水の取り出し:0%)とすることが好ましく、最下段から順に前段向けて濃縮水量が増えていくように設定することが好ましい。また、後段を構成する複数の限外ろ過モジュールの一部を全ろ過運転とする場合は、最下段を全ろ過運転とし、最下段から順に前段向けて必要段数を全ろ過運転とすることが好ましい。また、運転条件によっては、後段の全てにおいて全ろ過運転としてもよい。このように、後段における濃縮水量を低く設定し、あるいは全量ろ過とすることによって、被処理水に対する造水率を向上させ、造水量を増やすことができる。
【0019】
限外ろ過膜は、特に限定されるものではなく、ろ過処理される超純水の種類やろ過目的に応じて選択することができる。限外ろ過膜として、例えば、旭化成ケミカルズ製(OLT-6036H)、日東電工製(NTU-3306-K6R)を、プラント用限外ろ過膜モジュールとしてあげることができる。いずれも分画分子量6000のポリスルホン製中空糸膜モジュールである。
【符号の説明】
【0020】
41 一次純水システム
42 二次純水システム
43 純水貯槽
44 熱交換器
45 紫外線酸化装置
46 非再生型イオン交換装置
47a、47b 限外ろ過モジュール
47−2 配管
47−1 供給口
47−3 取出口
47a−1、47b−1 濃縮水排出口