特許第6469402号(P6469402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6469402-ライト部材 図000002
  • 特許6469402-ライト部材 図000003
  • 特許6469402-ライト部材 図000004
  • 特許6469402-ライト部材 図000005
  • 特許6469402-ライト部材 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469402
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ライト部材
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20190204BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20190204BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190204BHJP
【FI】
   F21S2/00 375
   H01L33/00 L
   F21S2/00 340
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-199688(P2014-199688)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72060(P2016-72060A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−117342(JP,A)
【文献】 特開2014−146643(JP,A)
【文献】 特開平03−203110(JP,A)
【文献】 特開2007−012913(JP,A)
【文献】 特開2005−293973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の発光ダイオードと;
前記発光ダイオードを搭載する筒状のマウント部材と;
前記発光ダイオードと外部電源との間を介在して、前記マウント部材と接続されるソケット部材と;
前記マウント部材を少なくとも部分的に覆う第1カバーと、前記第1カバーの外面の一部若しくは全部を覆うフィルムと、前記フィルムの外面の一部若しくは全部を覆う第2カバーとを順に積層して備えるカップ形状の放熱性ライトカバーと;
を備え、
前記第1カバーは、母材としての樹脂若しくは弾性ゴム中に、当該母材より熱伝導性が高いフィラーを分散して主に構成され、かつその底部に穴を備え、
前記フィルムは、前記第1カバーと前記第2カバーとを少なくとも部分的に密着させ、かつその底部に穴を備え、
前記第2カバーは、前記第1カバーよりも熱伝導性が高い材料から主に構成され、かつその底部に穴を備え、
前記ソケット部材は、前記第1カバーの前記穴、前記フィルムの前記穴および前記第2カバーの前記穴を通して前記放熱性ライトカバーに接合されており、
前記ソケット部材は、前記外部電源から前記発光ダイオードに給電するための給電ラインと、成形体とを備え、
前記給電ラインは、その一部を絶縁性被覆部材にて被覆され、
前記成形体は、樹脂に、当該樹脂に比べて導電性と熱伝導性に優れたフィラーを分散させて成り、
前記絶縁性被覆部材を前記給電ラインと前記成形体との間に介在させているライト部材。
【請求項2】
前記フィルムは、シリコーンゴムを用いて成る請求項1に記載のライト部材
【請求項3】
前記第1カバーに含まれる前記フィラーは、グラファイトあるいは金属である請求項1または2に記載のライト部材
【請求項4】
前記第2カバーは、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のライト部材
【請求項5】
前記放熱性ライトカバーの開口面であって、前記マウント部材からの光進行方向を覆う光透過部材を備える請求項1から4のいずれか1項に記載のライト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れたライトカバーを備えるライト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)は、p型半導体とn型半導体を接合したpn接合ダイオードであり、電力を、直接、光のエネルギーに変換可能な光源として知られている。発光ダイオードの順方向(pからnの方向)に電圧をかけると、p型半導体中の伝導帯を流れる正孔(ホール)とn型半導体中の価電子帯を流れる電子とがpn接合部付近にて禁制体を越えて再結合する。このとき、禁制体の幅に相当するエネルギーが光として放出される。LEDから発光される光は、フィラメント内蔵の電球と異なり、発熱を介さずに、電力から変換されるので、低発熱、低消費電力などの特徴を有する。
【0003】
近年、例えば、自動車用のヘッドライトのような高輝度用途において、LEDをできるだけ多く搭載することが要求されている。また、5W以上の高出力LEDを用いる場合には、その搭載個数が少ない場合でも、無視できない程度の高熱が生じ、ヘッドライトの寿命が短くなる(例えば、特許文献1を参照)。LED素子の温度上昇を防止するためには、放熱機能を高める必要がある。このような必要性から、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の細長形状のマウント部材に多数のLEDを搭載し、LEDからマウント部材に速やかに放熱できるようにする技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125993号公報
【特許文献2】特開2013−020911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術にも未だ改善すべき課題がある。熱伝導性に優れたアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のマウント部材に多数のLEDを搭載した場合、当該マウント部材から大気中に放熱することで、速やかな放熱を実現できる。この場合、マウント部材の外側を、例えば、ガラス等から成る光透過部材、あるいは内面を反射材でコートした樹脂若しくは金属等で構成される反射部材で覆うと、放熱性が必ずしも高くならない。このため、光源からマウント部材の外に効果的に放熱することが求められている。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、LEDのマウント部材からその外側に効果的に放熱することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、発光ダイオードを搭載するマウント部材を少なくとも部分的に覆う第1カバーと、第1カバーの外面の一部若しくは全部を覆うフィルムと、フィルムの外面の一部若しくは全部を覆う第2カバーと、を順に積層して備え、第1カバーを、母材としての樹脂若しくは弾性ゴム中に、当該母材より熱伝導性が高いフィラーを分散して主に構成し、フィルムにより第1カバーと第2カバーとを少なくとも部分的に密着させ、第2カバーを、第1カバーの母材よりも熱伝導性が高い材料から主に構成する放熱性ライトカバーである。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、フィルムを、シリコーンゴムを用いて構成した放熱性ライトカバーである。
【0009】
本発明の別の形態は、また、第1カバーに含まれるフィラーに、グラファイトあるいは金属を用いて成る放熱性ライトカバーである。
【0010】
本発明の別の形態は、また、第2カバーに、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いて成る放熱性ライトカバーである。
【0011】
本発明の別の形態は、また、発光ダイオードと外部電源との間に介在するソケット部材を接続して備える放熱性ライトカバーである。
【0012】
本発明の一形態は、上述のいずれか1つの放熱性ライトカバーと、1以上の発光ダイオードと、発光ダイオードを搭載し、放熱性ライトカバーによって少なくとも部分的に覆われるマウント部材と、を備えるライト部材である。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、放熱性ライトカバーの開口面であって、マウント部材からの光進行方向を覆う光透過部材を備えるライト部材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、LEDのマウント部材からその外側に効果的に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るライト部材の一部透過斜視図(1A)およびライト部材の一部を積層させる組立模式図(1B)をそれぞれ示す。
図2図2は、図1のマウント部材の組立図(2A)およびライトバルブの組立図(2B)をそれぞれ示す。
図3図3は、図1のライト部材の正面図を示す。
図4図4は、図1のソケット部材の変形例の斜視図(4A)、(4A)のC面を黒矢印方向に移動させて切断したときのC面切断面(4B)、および(4B)の一部Dの拡大図をそれぞれ示す。
図5図5は、図1のライト部材の変形例の一部透過斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る放熱性ライトカバーおよびそれを備えるライト部材の各実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は、本発明に係る放熱性ライトカバーおよびライト部材の好適な形態であって、該形態に含まれる各構成は、本発明に係る放熱性ライトカバーおよびライト部材に必須の構成とは限らない。
【0017】
<1.放熱性ライトカバーおよびそれを備えるライト部材の構造>
図1は、本発明の実施の形態に係るライト部材の一部透過斜視図(1A)およびライト部材の一部を積層させる組立模式図(1B)をそれぞれを示す。図2は、図1のマウント部材の組立図(2A)およびライトバルブの組立図(2B)をそれぞれ示す。図3は、図1のライト部材の正面図を示す。
【0018】
この実施の形態に係るライト部材1は、発光ダイオード(以下、「LED」という)15を搭載するマウント部材10と、ソケット部材20と、放熱性ライトカバー40と、を備える。マウント部材10およびソケット部材20は、電気的に接続可能であって、ライトバルブを構成する。ソケット部材20は、LED15と電気的に接続される給電ライン(後述する)を備え、外部電源(交流電源であるか、直流電源であるかを問わない。以下、同様。)と接続可能な部材である。
【0019】
放熱性ライトカバー40は、この実施の形態では、略カップ形状を有し、その内部41aにマウント部材10を配置するとともに、開口面に、該開口面を覆う透明カバー(光透過部材の一例)50を備える。この実施の形態では、放熱性ライトカバー40は、マウント部材10の光進行方向(ライト部材1の前方)を開口するため、マウント部材10を完全に覆ってはいない。ただし、透明カバー50と放熱性ライトカバー40とを一体化すれば、マウント部材10は放熱性カバー40により完全に覆うこともできる。なお、透明カバー50を外し、放熱性ライトカバー40の開口部を何ら覆わなくても良い。その意味で、透明カバー50は、ライト部材1の必須の構成部材ではない。
【0020】
放熱性ライトカバー40は、LED15からの光の一部を反射して、透明カバー50から発光させる反射部材である。放熱性ライトカバー40は、反射部材であるとともに、LED15から外気に効果的に放熱可能な構成部材であって、LED15を搭載するマウント部材10を少なくとも部分的に覆う第1カバー41と、第1カバー41の外面の一部若しくは全部を覆うフィルム42と、フィルム42の外面の一部若しくは全部を覆う第2カバー43と、を順に積層して備える。第1カバー41は、その底部に穴41bを備え、当該穴41bの内側をソケット部材20の鍔部23(後述する)の外側面に接合させて、ソケット部材20に取り付けられている。フィルム42は、その底部に穴42bを備え、当該穴42bの内側をソケット部材20の鍔部23(後述する)の外側面に接合させて、ソケット部材20に取り付けられている。第2カバー43は、その底部に穴43bを備え、当該穴43bの内側をソケット部材20の管部材24(後述する)の外側面に接合させて、ソケット部材20に取り付けられている。第1カバー41とフィルム42との間、あるいはフィルム42と第2カバー43との間には、熱伝導性を阻害しない観点から、何らの介在物も存在させないのが好ましい。ただし、薄い接着層が介在していても良い。この実施の形態では、フィルム42は、第1カバー41の一部を覆っているが、外側全面を覆っていても良い。また、第2カバー43は、フィルム42の外側全面を覆っているが、一部を覆っていても良い。この実施の形態では、フィルム42は、底部に穴42bを有するカップ形状を有しているが、かかる形状に限定されず、第1カバー41と第2カバー43との隙間を部分的あるいは全面的に埋める形状であれば、如何なる形状でも良い。例えば、フィルム42を帯形状としても良い。
【0021】
(1)マウント部材
図2に示すように、マウント部材10は、好適には、筒状部材11の上面および側面に複数のLED15を備える。マウント部材10は、スリーブ11と、凸型透明部材12と、基板13と、側面被覆透明部材14と、フレキシブル基板19と、を備える。スリーブ11は、この実施の形態では、円筒形状であるが、三角以上の多角筒形状であっても良い。また、スリーブ11に代えて、中実の円柱形状若しくは多角柱形状の部材を用いても良い。スリーブ11は、一方向に延び、多くのLED15を搭載可能な面積を有する。スリーブ11は、LED15から効果的に放熱できるように、熱伝導率の高い材料から構成される。スリーブ11の構成材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金などに代表される高熱伝導性の金属材料; 窒化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボンなどに代表される高熱伝導性のセラミックス; 樹脂若しくはゴムに上記高熱伝導性の金属材料若しくはセラミックスを分散させた複合材; などを例示できる。スリーブ11は、基板13およびフレキシブル基板19上の配線と非接触状態にあるため、電気絶縁性に優れた材料で構成されていなくとも良い。かかる理由から、スリーブ11の構成材料として、アルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0022】
スリーブ11は、その長さ方向略中央部分に、その外表面を内方に少し窪ませた凹領域17を備える。凹領域17は、スリーブ11の内側から外側に向けてLED15を露出可能な形状および大きさを持つ貫通孔18を備える。貫通孔18の数は、特に制約は無いが、好ましくは、LED15の数と同一若しくはそれ以上である。
【0023】
スリーブ11の側面から露出するLED15は、スリーブ11より小径のスリーブ形状のフレキシブル基板19に搭載されている。フレキシブル基板19の構成材料は、電気絶縁性に優れ、かつ伸縮性を有する材料であれば、特に制約されない。フレキシブル基板19は、その表面に、図示されない配線(好適には、通電可能な電気伝導性に優れる金属から成る)が形成されている。フレキシブル基板19は、その筒径を小さくして、スリーブ11の内部に挿入され、LED15を貫通孔18から通過させて、スリーブ11内部に固定される。フレキシブル基板19は、その筒を完全に閉じておらず、その一部を縦方向に切り、容易に筒径を変更可能に形成されている。しかし、フレキシブル基板19を完全に周方向に閉じた筒形状に構成しても良い。さらに、筒状のフレキシブル基板19に代えて、短冊状のフレキシブル基板上にLED15を縦方向に3個搭載し、その短冊状のフレキシブル基板を複数本、スリーブ11の内壁に周方向に沿って並べて固定しても良い。また、フレキシブル基板19をスリーブ11の外側面に取り付けるようにしても良い。その場合には、貫通孔18は、必ずしも要しない。
【0024】
側面被覆透明部材14は、スリーブ11の凹領域17に取り付け可能な略円筒形状の部材であり、LED15から発する光を外に透過可能とする透明性の高い樹脂、ゴムあるいはガラスから好適に構成される。側面被覆透明部材14も、フレキシブル基板19と同様、その筒を完全に閉じておらず、その一部を縦方向に切り、容易に凹領域17を被覆可能に形成されているが、完全に周方向に閉じた筒形状に構成されていても良い。
【0025】
基板13は、スリーブ11の天面(上面ともいう)に取り付け可能であって、この実施の形態では、薄い円板形状を有する。スリーブ11の上面の形状が多角形であれば、基板13は、その多角形と同じ形状の板状部材であるのが好ましい。基板13は、その外表面に、LED15を備える。LED15の個数は、1個以上であれば、その個数を問わない。ただし、スリーブ11の天面に、必ずしもLED15を備えていなくても良い。
【0026】
凸型透明部材12は、スリーブ11の天面側に備えるLED15から発する光を外に透過可能とする透明性の高い樹脂、ゴムあるいはガラスから好適に構成される。LED15がスリーブ11の天面から突出しない場合には、凸型透明部材12に代えて平板型透明部材を用いても良い。また、スリーブ11の天面にLED15を備えない場合には、凸型透明部材12を備える必要はない。
【0027】
マウント部材10は、フレキシブル基板19および基板13から電気的に接続される通電端子16をソケット部材20側に突出して備える。通電端子16は、図2の(2B)に示すように、矢印A方向にソケット部材20側の給電ライン30に接続されることにより、外部電源から受電可能となる。
【0028】
(2)ソケット部材
図1および図2の(2B)に示すように、ソケット部材20は、ソケット形状の成形体21と、給電ライン30と、を備える。ソケット形状の成形体21は、略L字形状を有し、マウント部材10との接続部から順に、略筒形状の第1筒状部材22と、当該第1筒状部材22よりも大径の鍔部23と、略L字形状の管部材24と、当該管部材24より大径の略筒形状の第2筒状部材25と、を接続して成る。成形体21を構成する樹脂は、特に制約なく用いることができ、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂などを好適に用いることができる。特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート、ポリアミド若しくはポリフェニレンサルファイドである。
【0029】
給電ライン30は、この実施の形態では、管部材24と同様、略L字形状に曲がった形態を有する。なお、管部材24の形状は、この実施の形態では、略L字形状であるが、それ以外の形状、例えば、直管形状であっても良い。管部材24を直管形状とする場合には、好ましくは、給電ライン30も直線状の形態を備える。給電ライン30は、導電性に優れた材料であれば特に制約は無いが、銅、銀、アルミニウム、アルミニウム合金、タングステンなどを例示できる。
【0030】
第1筒状部材22は、マウント部材10との接続部位であって、その筒内26に、マウント部材10側の通電端子16と電気的に接続可能な第1接続部31を突出して備える。第1接続部31は、給電ライン30の一端に形成されている。第1接続部31の形状は、この実施の形態では、通電端子16を挿入可能な管形状であるが、通電端子16と接続可能である限り、通電端子16の形状に応じて管以外の形状とすることもできる。
【0031】
第2筒状部材25は、外部電源側と接続可能な部位であって、その筒内27に、外部電源側と電気的に接続可能な第2接続部32を突出して備える。第2接続部32は、給電ライン30における第1接続部31と反対側の一端に形成されている。第2接続部32の形状は、この実施の形態では、薄板形状であるが、外部電源と接続可能である限り、それ以外の形状とすることもできる。
【0032】
(3)放熱性ライトカバー
図3に示すように、放熱性ライトカバー40の最も内側の構成部材である第1カバー41は、母材としての樹脂45中に、当該母材より熱伝導性が高いフィラー46を分散して主に構成される(図3中のB部の拡大図を参照)。ここで、「主に」の意味は、体積比率にて50%を超える体積を占めることを意味する。第1カバー41を構成する樹脂は、特に制約なく用いることができ、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂などを好適に用いることができる。特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート、ポリアミド若しくはポリフェニレンサルファイドである。第1カバー41は、LED15からの熱によって容易に変形若しくは溶融しないように、耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。耐熱性が高いという条件を満たせば、樹脂45に代えて、シリコーンゴム等の弾性ゴムを用いても良い。第1カバー41は、その母材に樹脂45を用いているため、アルミニウム等の金属に比べて、成形しやすく、また、ソケット部材20(あるいはマウント部材10)との接続部位において密着させやすい。
【0033】
フィラー46は、第1カバー41に対して熱伝導性を付与する材料である。フィラー46としては、粒状、ファイバー状、針状、板状など種々の形状のものを用いることができる。フィラー46は、放熱性ライトカバー40の母材よりも電気伝導性の高い材料から構成されても良く、あるいは当該母材と同一あるいはそれよりも電気伝導性の低い材料から構成されても良い。フィラー46は、母材(樹脂45あるいは弾性ゴム)とフィラー46との複合部材100体積%中、5〜50体積%、好ましくは10〜30体積%、より好ましくは15〜25体積%含まれる。また、フィラー46の材料としては、グラファイト、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、c−BN、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドなどを好適に例示できる。樹脂45とフィラー46とのより好適な組み合わせは、アクリル樹脂と、アルミニウム、アルミニウム合金若しくはグラファイトとの組み合わせである。なお、第1カバー41は、樹脂45等の母材とフィラー46との複合部材のみで構成されず、その一部を別の材料で構成されていても良い。また、第1カバー41の内面には、光反射効果を高めるべく、鏡面コートを施すのが好ましい。
【0034】
フィルム42は、第1カバー41と第2カバー43とを部分的あるいは全面的に密着させる構成部材である。このため、フィルム42を伸縮性に富む材料から構成するのが好ましい。ここで、「密着」は、完全に隙間の無い付着状態のみならず、隙間を有する付着状態も含むように広義に解釈される。また、フィルム42は、好ましくは、第1カバー41から第2カバー43への熱伝達をできるだけ阻害せず、耐熱性にも優れる材料から構成される。フィルム42としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系あるいはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いることができ、特に、耐熱性に優れるシリコーンゴムをより好適に用いることができる。フィルム42の厚さは、できるだけ薄い方が好ましく、0.05〜0.7mmの範囲、さらには0.05〜0.2mmの範囲、特に0.05〜0.1mmの範囲が好ましい。
【0035】
フィルム42は、第2カバー43を金属で構成する場合には特に有効である。フィルム42を介在させずに、第1カバー41と第2カバー43とを密着させようとすると、金属製の第2カバー43の内面を、複合樹脂製の第1カバー41の外面に密着するように加工する必要があり、極めて高度かつ高コストの加工技術を要するからである。フィルム42は、その母材よりも熱伝導性の高いフィラーを分散した複合部材であっても良い。その場合には、第1カバー41に用いたフィラー46と同様のフィラーを選択できる。フィルム42は、好ましくは、例えばインサート成形などの手法により、第1カバー41と一体成形にて形成される。ただし、第1カバー41を製造後に、その外表面にフィルム42を配置し、あるいは接着しても良い。
【0036】
第2カバー43は、第1カバー41よりも熱伝導性が高い材料から主に構成される。ここで、「主に」の意味は、体積比率にて50%を超える体積を占めることを意味する。第2カバー43は、第1カバー41のみによる放熱性をさらに高める必要からである。第2カバー43の構成材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れる金属、あるいは窒化アルミニウムなどの熱伝導性に優れるセラミックスを例示できる。特に、低コスト化および高い成形性の観点から、第2カバー43を金属から構成するのが好ましい。第2カバー43は、そのすべてを熱伝導性に優れる材料から構成するのが好ましいが、一部を別の材料から構成しても良い。また、第2カバー43からの放熱性をさらに高めるために、その外表面に、複数のフィンを形成しても良い。
【0037】
<2.放熱性ライトカバーおよびそれを備えるライト部材の変形例>
図4は、図1のソケット部材の変形例の斜視図(4A)、(4A)のC面を黒矢印方向に移動させて切断したときのC面切断面(4B)、および(4B)の一部Dの拡大図をそれぞれ示す。
【0038】
変形例に係るソケット部材20aは、前述のソケット部材20と同様、成形体21と、給電ライン30とを備えるが、ソケット部材20と異なり、給電ライン30の一部を絶縁性被覆部材60にて被覆する。成形体21は、図4の(4C)に示すように、母材としての樹脂65に、当該樹脂65に比べて導電性と熱伝導性に優れたフィラー66を分散させて成る。かかる樹脂65中にフィラー66を分散させた複合部材は、フィラー66の存在に起因して、成形体21に熱伝導性を付与すると同時に、導電性をも付与する。このため、給電ライン30と成形体21との通電を防止すべく、フィラー66よりも絶縁性の高い絶縁性被覆部材60を給電ライン30と成形体21との間に介在させている。
【0039】
絶縁性被覆部材60は、予めL字形状に曲げられた給電ライン30に対して被覆されても良く、あるいはまっすぐな給電ライン30に対して被覆された後、給電ライン30をL字形状に曲げても良い。この実施の形態では、成形体21の内部は、筒内26および筒内27を除き、中実形成されている。このため、給電ライン30の第1接続部31および第2接続部32以外の部分は、全て、絶縁性被覆部材60にて覆われている。しかし、成形体21の内部に空間がある場合、あるいは成形体21の一部を複合部材以外の電気導電性が極めて低い材料で構成している場合には、当該空間に存在し、あるいは当該複合部材以外の材料と接する給電ライン30の一部を絶縁性被覆部材60にて覆わなくても良い。すなわち、給電ライン30において、最低限、成形体21の複合部材と電気的に絶縁すべき部分のみを絶縁性被覆部材60にて覆えば良い。
【0040】
成形体21を構成する樹脂65は、特に制約なく用いることができ、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂などを好適に用いることができる。特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート、ポリアミド若しくはポリフェニレンサルファイドである。また、上記樹脂65に分散するフィラー66としては、粒状、ファイバー状、針状、板状など種々の形状のものを用いることができる。フィラー66は、樹脂65とフィラー66の複合部材100体積%中、5〜50体積%、好ましくは10〜30体積%、より好ましくは15〜25体積%含まれる。また、フィラー66の材料としては、グラファイト、アルミニウム、アルミニウム合金などを好適に例示できる。樹脂65とフィラー66とのより好適な組み合わせは、ポリカーボネート、ポリアミド若しくはポリフェニレンサルファイドのいずれかと、グラファイトとの組み合わせである。
【0041】
絶縁性被覆部材60は、給電ライン30において絶縁性を付与する部位に、絶縁性の被膜を形成可能な液状組成物を給電ライン30に塗布若しくはコーティングする方法; 上記液状組成物中に給電ライン30を浸漬する方法; 絶縁性被覆部材60をチューブ形状に成形して、給電ライン30を当該チューブの中に挿入する方法; などを例示できる。絶縁性被覆部材60としては、成形体21よりも絶縁性が高ければ、特に制約なく用いることができる。絶縁性被覆部材60を樹脂にて構成する場合には、成形体21の母材として用いる樹脂65の選択肢と同様のものを用いることができる。絶縁性被覆部材60をゴムにて構成する場合には、フィルム42と同様の材料から選択可能である。第1筒状部材22を複合部材にて構成する場合には、第1接続部31と筒内26の筒底面との間には、第1筒状部材22と第1接続部31との電気的接続を確実に防止する観点から、絶縁シート61を介在させるのが好ましい。
【0042】
フィラー66は、樹脂65よりも熱伝導性が高いが、電気伝導性の低い材料で構成されていても良い。その場合には、給電ライン30を被覆する絶縁性被覆部材60を必ずしも要しない。導電性の低いフィラーとしては、例えば、ダイヤモンドや窒化アルミニウムなどのフィラーを用いることができる。
【0043】
図5は、図1の放熱性ライトカバーの変形例の一部透過斜視図を示す。
【0044】
この変形例は、図1の放熱性ライトカバー40に、ソケット部材20を接続した形態を備える。接続には、接着、嵌め込み、溶着、一体成形などの如何なる方式をも採用可能である。例えば、第1カバー41のみを、あるいは第1カバー41とフィルム42とを、ソケット部材20の成形時に、ソケット部材20と一体化することもできる。その場合、第2カバー43は、ソケット部材20およびフィルム42の上から被せるのが好ましい。図5の変形例を用いてライト部材1を構成する場合には、ソケット部材20にマウント部材10を接続し、放熱性ライトカバー40の開口面に透明カバー50を取り付ける。また、この変形例では、フィルム42は第1カバー41の外側全面を覆い、かつ第2カバー43はフィルム42の外側全面を覆っている。このように、フィルム42を、第1カバー41と第2カバー43との隙間をほぼ埋めるように配置することもできる。
【0045】
<3.実施の形態による作用・効果>
以上のように、この実施の形態に係る放熱性ライトカバー40は、LED15を搭載するマウント部材10を少なくとも部分的に覆う第1カバー41と、第1カバー41の外面の一部若しくは全部を覆うフィルム42と、フィルム42の外面の一部若しくは全部を覆う第2カバー43と、を順に積層して備え、第1カバー41を、母材としての樹脂45若しくは弾性ゴム中に、当該母材より熱伝導性が高いフィラー46を分散して主に構成し、フィルム42により、第1カバー41と第2カバー43とを少なくとも部分的に密着させ、第2カバー43を、第1カバー41よりも熱伝導性が高い材料から主に構成して、構成される。
【0046】
このような構成により、LED15からの熱を第1カバー41からフィルム42を介して第2カバー43へと効果的に伝達させることができ、第2カバー43から空気中へと容易に放熱できる。放熱性ライトカバー40を第2カバー43のみで構成すると、マウント部材10あるいはソケット部材20と第2カバー43との密着性を高めることが難しいため、LED15から第2カバー43への熱伝達が良好になりにくい。また、第2カバー43を金属で構成した場合には、放熱性ライトカバー40の重量が大きくなる。しかし、第1カバー41とフィルム42とを用いると、放熱性と軽量化の両方を満足する。
【0047】
フィルム42を、シリコーンゴムを用いて構成すると、フィルム42が熱損傷しにくくなり、かつ第1カバー41と第2カバー43との密着性も高めることができる。
【0048】
第1カバー41に含まれるフィラー46を、グラファイトあるいは金属から構成すると、安価で熱伝導性の高い第1カバー41を構成できる。
【0049】
第2カバー43を、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成すると、フィルム42を介して第1カバー41から伝達されてきた熱を効果的に空気中に放熱しやすくなる。
【0050】
また、放熱性ライトカバー40に、LED15と外部電源との間に介在するソケット部材20を接続して備えると、主に樹脂および/または弾性ゴムで構成される部分を、インサート成形法を用いて一体成形できる。
【0051】
ライト部材1は、上述のいずれかの放熱性ライトカバー40と、1以上のLED15と、LED15を搭載して放熱性ライトカバー40によって少なくとも部分的に覆われるマウント部材10と、を備える。これによって、放熱性に優れたライト部材1を得ることができる。さらに、第2カバー43を金属で構成する場合、その金属で放熱性ライトカバー40を製造する場合と比べて、軽量化も実現できる。
【0052】
また、放熱性ライトカバー40の開口面であって、マウント部材10からの光進行方向を覆う透明カバー(光透過部材の一例)50をライト部材1に備えると、開口面が外気に解放されていないため、マウント部材10からの放熱性が低くなる。しかし、放熱性ライトカバー40を第1カバー41、フィルム42および第2カバー43で形成することにより、放熱性ライトカバー40から外気への放熱性を期待できる。
【0053】
<4.その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0054】
マウント部材10に代えて、より低背のマウント部材を用いても良い。LED15は、本発明において必須の光源ではなく、他の種類の光源を用いても良い。例えば、フィラメント型の電球などを用いても良い。第1カバー41を樹脂45とフィラー46の複合部材にて、第2カバー43をアルミニウム等の高熱伝導性金属にてそれぞれ構成するのが好ましいが、第1カバー41および第2カバー43をともに金属にて、あるいは第1カバー41および第2カバー43を共に樹脂45とフィラー46の複合部材にて構成しても良い。
【0055】
また、第1カバー41、フィルム42および第2カバー43のソケット部材20への取り付け位置は、前述の位置(図1およびそれに基づく説明を参照)に限定されない。例えば、第1カバー41、フィルム42および第2カバー43のソケット部材20への取り付け位置を、全て管部材24に、全て鍔部23に、あるいは全て第1筒状部材22にすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、自動車、室内、野外などの照明用のライト部材に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ライト部材
10 マウント部材
15 LED(発光ダイオード)
20,20a ソケット部材
40 放熱性ライトカバー
41 第1カバー
42 フィルム
43 第2カバー
45 樹脂(母材の一例)
46 フィラー
50 透明カバー(光透過部材の一例)
図1
図2
図3
図4
図5