(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁座と、前記弁座に対して接近または離間する方向に弁軸に沿って直線的に往復揺動して前記弁座を開閉自在に閉止する弁体と、前記弁座および前記弁体を収容するとともに前記弁座に流入する流体の流入路および前記弁体を通過した前記流体の流出路を有する弁箱と、を有し、前記弁座に流入する前記流体の流入方向と、前記流体が前記弁体を通過する通過方向と、が交差するリフト式のアングル弁ユニットと、
前記アングル弁ユニットの前記流入路に一端が溶接された第一湾曲管と、
前記アングル弁ユニットの前記流出路に一端が溶接された第二湾曲管と、を備え、
前記第一湾曲管の他端と前記第二湾曲管の他端とは反対向きに開口して軸流方向を形成しており、
前記弁軸が前記軸流方向に対して前記流出路に向かって斜めに傾斜しているとともに前記第一湾曲管の前記一端が前記弁軸に沿って延在しており、
前記第一湾曲管の前記他端に第一フランジ部が設けられ、前記第二湾曲管の前記他端に第二フランジ部が設けられており、
前記第一フランジ部および前記第二フランジ部は、それぞれ筒状部材と鍔部材とを接合して構成され、
前記筒状部材および前記鍔部材は、前記第一フランジ部と前記第二フランジ部とでそれぞれ同一寸法に形成されていることを特徴とする逆止弁。
【背景技術】
【0002】
配管内の水流などの流体を特定の向きに一方的に通過させる逆止弁(チャッキバルブ)が知られている。
【0003】
逆止弁は、弁体の動作態様により種々に分類される。弁座に対して弁体が傾斜して開くスイング式やチルト式(バタフライ式)の逆止弁は、弁体の迅速な閉止が困難であり水撃の発生が問題となる。一方、弁座に対して弁体が接近または離間する方向に往復揺動するリフト式の逆止弁は、一般に弁体の迅速な閉止が可能である。リフト式の逆止弁としては、ボール弁体が弁座に対して着座または浮上して流体を流通または閉止するボールリフト弁や、弁軸に沿って弁体が直線的に往復揺動して弁座に接近または離間するピストン式逆止弁などが知られている。このうち、弁体がバネで付勢されるピストン式逆止弁はスモレンスキ式逆止弁とも呼ばれ、特に弁体の迅速な閉止が可能であり水撃の発生が良好に防止される。
【0004】
また逆止弁は、流体の流入方向と流出方向との関係によって2つに大別される。具体的には、流入方向と流出方向とが平行なストレート型と、これらが交差するアングル型とがある。ストレート型の逆止弁においては一般に、流体の流入路と流出路とが同軸上に配置されている。
【0005】
ストレート型またはアングル型の逆止弁は、流体を搬送する配管設備の構成や逆止弁の設置位置などの種々の設置条件に基づいて選択される。例えば、ストレート型の逆止弁は、直線的に配置された配管の間に設置され、アングル型の逆止弁は2本の配管が交差する部分に設置される。
【0006】
特許文献1には、弁箱への流入方向と流出方向とが並行かつ同軸上に配置されたストレート型のピストン式逆止弁が記載されている。流路の途中に配置された逆止弁の弁座は軸流方向に対して直交しており、弁箱の内部において流路は屈曲している。弁体の一次側と二次側との差圧が所定の最低作動圧力(クラッキング圧)を超えると弁体が弁座から離間(リフト)して流体が流通を開始する。その後、弁箱に流入する流体は、弁座の手前の空洞部分に流れ込むと、そこで約90度転向されて弁体を押し上げて二次側に流動し、そして弁箱から流出する。
【0007】
特許文献2にはアングル型のピストン式逆止弁が記載されている。この逆止弁は、弁箱への流入方向と流出方向とが直交しており、流入方向と流出方向とを結ぶ軸流方向は弁箱の内部で屈曲している。特許文献1の逆止弁と同様に、弁体の一次側と二次側との差圧がクラッキング圧を超えると弁体が弁座から離間(リフト)して流体が流通する。弁座を通過した流体は弁体に衝突するとともに流路が曲げられて弁箱より流出する。
【0008】
特許文献3には、2個のピストン式逆止弁が弁室(弁箱)の入口と出口に設けられたストレート型の縁切り弁(逆止弁)が記載されている。2個のピストン式逆止弁は、弁座が互いに略直交するように配置され、また弁軸の軸心が流路の二次側に向かってそれぞれ約45度に傾斜している。かかる縁切り弁においては、流路に対して弁座が傾斜していることで、弁座の周縁のゴミが自然に下方に落下し、弁座にゴミが溜まりにくいとされている。弁箱に流入した流体は、約45度転向されて第一の逆止弁の弁座に至り、弁体を押し上げて弁箱の中央に流れ込み、更に逆向きに約90度転向されて第二の逆止弁の弁座に至る。そして、第二の逆止弁の弁体を押し上げ、弁箱から流出する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。逆止弁100への流入側を一次側といい、逆止弁100からの流出側を二次側という。便宜上、弁座20に対する弁体30の開き方向を上方と呼称し、弁体30の閉じ方向を下方と呼称する場合があるが、これらは重力方向に対する上下を必ずしも示すものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかる逆止弁100の一例を示す正面図である。
図2は、閉状態の逆止弁100を弁軸31に沿って切った縦断面図である。
図3は、開状態の逆止弁100の縦断面図である。
図4は、逆止弁100の分解説明図である。
図2から
図4においてはヘルール継手48の図示を省略している。
【0021】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
【0022】
本実施形態の逆止弁100は、リフト式のアングル弁ユニット10、第一湾曲管60および第二湾曲管70を備えている。
アングル弁ユニット10は、弁座20、弁体30および弁箱40を有している。弁体30は、弁座20に対して接近または離間する方向に弁軸31に沿って直線的に往復揺動して弁座20を開閉自在に閉止する。弁箱40は、弁座20および弁体30を収容するとともに、弁座20に流入する流体Fの流入路22および弁体30を通過した流体Fの流出路32を有している。アングル弁ユニット10において、弁座20に流入する流体Fの流入方向D1と、流体Fが弁体30を通過する通過方向D2と、は交差している。
第一湾曲管60はアングル弁ユニット10の流入路22に一端62が溶接され、第二湾曲管70はアングル弁ユニット10の流出路32に一端72が溶接されている。第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とは反対向きに開口して軸流方向AXを形成している。そして、弁軸31は軸流方向AXに対して流出路32に向かって斜めに傾斜しているとともに、第一湾曲管60の一端62は弁軸31に沿って延在している。
【0023】
ここで、第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とが反対向きに開口しているとは、これらが180度反対向きすなわち厳密に正反対である場合のほか、概略正反対である状態を含む。すなわち、第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とにおける開口の法線方向は僅かな角度をもって交差してもよい。
【0024】
また、第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とが形成する軸流方向AXとは、
図3に示すように、第一湾曲管60に流入する流体Fの流動方向D0と第二湾曲管70を流出する流体Fの流動方向D3とを滑らかに結ぶ直線または曲線の延在方向である。
図6に示す逆止弁100のように、鍔部材68と鍔部材78とが同軸上に並んで180度反対向きに設置される場合、軸流方向AXは直線状となる。逆止弁110のように、鍔部材68と鍔部材78とが反対向きかつ所定の角度で交差する場合、軸流方向AX2は湾曲して曲線状となる。
【0025】
本実施形態の逆止弁100においては、弁体30の弁軸31が軸流方向AXに対して流出路32に向かって斜めに傾斜している。すなわち、弁体30から突出する弁軸31の突出方向は、軸流方向AXに対して垂直ではなく、流出路32の側(
図3における左方)に傾いている。具体的には、弁軸31の突出方向は、軸流方向AXに対して45度傾斜している。このため、第一湾曲管60から流入する流体Fが流入方向の速度成分を持ったまま弁体30を押し上げて流出路32に向かうことができる。このため本実施形態の逆止弁100によれば低圧損が実現される。また、第一湾曲管60および第二湾曲管70はアングル弁ユニット10と別体で作成されて溶接されているため、アングル弁ユニット10を共用しながら所望の形状の第一湾曲管60や第二湾曲管70を用いて種々の流路システムの要請に対応することができる。
【0026】
次に、本実施形態について詳細に説明する。
【0027】
逆止弁100はアングル型のリフト式逆止弁である。弁体30は弁軸31に沿って弁座20に対して接離方向に移動する。
図2に示す閉状態で弁体30はバネ体26に付勢されて弁座20に押し付けられており、逆止弁100は、いわゆるスモレンスキ式である。バネ体26による付勢力により、逆止弁100は高い止水性を得ることができる。逆止弁100は、いわゆるフート弁として揚送ポンプ(図示せず)の一次側に用いることにより、止水性と逆流防止機能を活用して、揚水管における落水を良好に防止することができる。逆止弁100により逆流が規制される流体Fとしては、水等の液体のほか、空気等の気体でもよい。
【0028】
逆止弁100は、液体または気体を流通させる流路に設けられ、弁体30の一次側と二次側との差圧が所定の最低作動圧力(クラッキング圧)を超えているときに、
図3に示すように弁体30は開状態となって流体Fを流通させる。弁体30の一次側と二次側との差圧が負または最低作動圧力以下となった場合、
図2に示すように弁体30は閉状態となって流体Fの流通は遮断される。
【0029】
アングル弁ユニット10は、弁座20および弁体30ならびにこれらを収容する弁箱40を含み、流体Fの逆止機能を有する基本構造をなす。
【0030】
アングル弁ユニット10は、互いに直交する流入路22および流出路32を備えている。
図3に示すように、弁体30に向かって流入路22から流入する流体Fの流入方向D1と弁体30を通過して流出路32に向かう流体Fの通過方向D2とは互いに交差し、アングル弁ユニット10の内部における流体Fの流路は屈曲する。
【0031】
以下、屈曲する流路の内側を弁座20および弁体30における前縁側と呼称し、屈曲する流路の外側を弁座20および弁体30における後縁側と呼称する場合がある。
【0032】
弁箱40は、筒状胴部42およびキャップ部44を備えている。筒状胴部42は、弁座20および弁体30を収容し、弁箱40の本体部を構成する。キャップ部44は、天板部45と筒状部47とヘルール継手48とを有している。天板部45は、弁体30の弁軸31が挿通される支持筒(直筒部46)を有し、この弁軸31を支持する。筒状部47は筒状をなし、天板部45により閉止される。ヘルール継手48(
図1参照)は、天板部45と筒状部47とを着脱可能に締結する。筒状部47は筒状胴部42に溶接されている。
【0033】
キャップ部44は、アングル弁ユニット10のうち弁体30の背後側を封止する部材である。直筒部46は筒状をなし、弁体30の弁軸31を摺動可能に嵌合させて支持するための凹部を有している。直筒部46と流入路22との延在方向は一致しており、流入路22に流入した流体Fは流入路22に沿って弁体30を押し上げる。
【0034】
本実施形態の弁軸31は非円形の横断面を有し、直筒部46の凹部の横断面は弁軸31に対応する非円形をなしている。これにより、弁軸31は直筒部46に対して回転することなく軸方向に進退移動する。直筒部46の周囲にはバネ体26が装着されており、弁体30を弁座20に向けて付勢する。
【0035】
弁体30の弁軸31を支持する天板部45は、ヘルール継手48を解除することにより筒状部47から取り外し可能となる。このため、弁体30やバネ体26の清掃や交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0036】
筒状胴部42の一次側の内部には流入弁筒24が固定されている。本実施形態では流入弁筒24が流入路22を構成している。流入弁筒24のうち筒状胴部42より突出する外側端面24aは、流体Fの流入方向に対して正対している。すなわち外側端面24aの法線方向は流入弁筒24(流入路22)の軸心方向と一致している。
【0037】
一方、流入弁筒24のうち筒状胴部42の内側に位置する内側端面24bは弁座20を構成している。本実施形態の流入弁筒24は円管状をなし、外側端面24aは円形に開口している。一方、内側端面24b(弁座20)は、流入弁筒24(流入路22)の軸心方向に対して斜めに傾斜して楕円形に開口している。具体的には、弁座20の前縁側(
図3における左側)は筒状胴部42の深い位置に突出し、弁座20の後縁側(
図3における右側)は筒状胴部42に対して浅い位置に後退している。弁座20は平坦な傾斜面をなしている。流入路22の軸心に直交する横断面に対して、弁座20は45度未満、好ましくは15度以上かつ22.5度以下の角度で交差している。
【0038】
図2から
図4に示すように、弁軸31は弁体30の背面側、すなわち弁座20と反対側に起立して一体形成されている。
図2に示す閉状態および
図3に示す開状態で、弁軸31の周囲に装着されたバネ体26は弁体30を弾力的に付勢している。
【0039】
図3に示すように、弁体30のうち弁座20に対向する流入側には、流体Fを流入方向D1から通過方向D2に転向させる転向面50が設けられている。転向面50と弁座20とは平行である。すなわち、転向面50の法線方向N1と流入方向D1との交差角度は45度未満であり、好ましくは15度以上かつ22.5度以下である。
【0040】
転向面50のうち流出路32に近接する前縁側は、後縁側に比べて、筒状胴部42の奥行側に位置している。このため、
図3に示す開状態の逆止弁100において流入路22から流入した流体Fは、転向面50に衝突すると全体的に流出路32に向かって流動方向が転向する。これにより、流体Fがアングル弁ユニット10を通過するに際し、弁体30に衝突して発生する圧力損失が大幅に抑制される。
【0041】
弁体30における流入側の面にはパッキン部材52が被着されている。すなわち、転向面50はパッキン部材52の表面により構成されている。転向面50およびパッキン部材52は、内側端面24bに対応する楕円形をなしている。パッキン部材52は、逆止弁100の閉状態で弁体30と弁座20とで押圧されて弁座20を止水する部材であり、独立気泡の発泡樹脂材料で作成されたシート体である。パッキン部材52は平坦で均一な厚さを有している。パッキン部材52が発泡樹脂材料で作成されていることで、変形性がよく弁座20を良好に止水する。また、パッキン部材52を構成する発泡樹脂材料が独立気泡を有し連続気泡を実質的に有していないことにより、パッキン部材52の内部を通じて逆止弁100の一次側と二次側とが互いに連通することがなく水密性に優れる。
【0042】
以下、第一湾曲管60および第二湾曲管70について説明する。
【0043】
第一湾曲管60は、アングル弁ユニット10の流入路22に接続されて逆止弁100の流入側の弁筒を構成する。第一湾曲管60の一端62はアングル弁ユニット10の流入路22に溶接され、第一湾曲管60の他端64には第一フランジ部66が設けられている。
第二湾曲管70は、アングル弁ユニット10の流出路32に接続されて逆止弁100の流出側の弁筒を構成する。第二湾曲管70の一端72はアングル弁ユニット10の流出路32に溶接され、第二湾曲管70の他端74には第二フランジ部76が設けられている。第一フランジ部66および第二フランジ部76は、配管(図示せず)に対してネジなどの緊締具(図示せず)を用いて固定される。
【0044】
第一湾曲管60および第二湾曲管70は、その管長の少なくとも一部に湾曲部分を有している。本実施形態では第一湾曲管60および第二湾曲管70が湾曲部分のみで実質的に構成されている態様を例示するが、これに限らず、第一湾曲管60および/または第二湾曲管70は管長の一部に直線部分を有していてもよい。第一湾曲管60および第二湾曲管70の管長とは、これらの軸心上の長さをいう。
【0045】
第一湾曲管60の一端62の軸心方向とアングル弁ユニット10の流入路22の軸心方向とは一致している。すなわち、第一湾曲管60の一端62は弁軸31に沿って延在している。
図3に示すように、第一フランジ部66の流入開口69から流動方向D0にて流入した流体Fは、第一湾曲管60に沿って湾曲して流動して流入方向D1に向きを変えられ、第一湾曲管60から流入路22に滑らかに流入して弁軸31に沿って弁体30を押し上げる。一方、第二湾曲管70の一端72の軸心方向とアングル弁ユニット10の流出路32の軸心方向とは一致している。このため、転向面50で通過方向D2に転向された流体Fは、流出路32から第二湾曲管70に滑らかに流入する。そして、流体Fは第二湾曲管70に沿って湾曲して流動して流動方向D3に向きを変えられて第二フランジ部76の流出開口79より流出する。
【0046】
本実施形態においては、第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74との開口方向は180度反対向きである。第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とは同軸上に配置されている。これにより、本実施形態の逆止弁100はストレート型である。言い換えると、流入路22と流出路32とが直交してアングル型の逆止弁機能を有するアングル弁ユニット10に対し、第一湾曲管60と第二湾曲管70を接続することで、ストレート型の逆止弁100が構成される。
【0047】
第一湾曲管60および第二湾曲管70の湾曲形状の軸心は、流入路22の軸心と流出路32の軸心とが交差する平面と同一平面内に配置されている。弁体30の弁軸31は、第一湾曲管60、流入路22、流出路32および第二湾曲管70の各軸心を内包する上記の平面内で往復揺動する。これにより、逆止弁100は平面的に構成されるため設置スペースが抑制されている。
【0048】
図1に示すように、第一湾曲管60の中心角θ1と第二湾曲管70の中心角θ2との合計は90度であり、かつ第一湾曲管60と第二湾曲管70の管長は互いに異なっている。第一湾曲管60または第二湾曲管70の一方にはショートエルボを用い、他方にはこのショートエルボと同じ中心角をもつロングエルボを用いることができる。第一湾曲管60と第二湾曲管70との内径は共通である。
【0049】
具体的には、第一湾曲管60は45度ショートエルボであり、第二湾曲管70は45度ロングエルボである。すなわち、第一湾曲管60と第二湾曲管70の中心角の合計(θ1+θ2)は90度である。
図3に示すように、アングル弁ユニット10への流入方向D1に対して通過方向D2が交差する向き(同図では左向き)と、第一湾曲管60および第二湾曲管70が湾曲する向き(同図では右向き)とが反対向きであって、かつ流入路22と流出路32との交差角度(90度)が第一湾曲管60および第二湾曲管70の中心角の合計(90度)と等しい。これにより、流入路22と流出路32とが90度に交差するアングル弁ユニット10に第一湾曲管60および第二湾曲管70を連結することでストレート型の逆止弁100を構成することができる。したがって、第一湾曲管60および第二湾曲管70の中心角の合計が90度であるかぎり、第一湾曲管60の中心角θ1をたとえば30度とし、第二湾曲管70の中心角θ2を60度とするなど、45度以外の中心角の湾曲管を用いてもよい。
【0050】
図1に示すように、流入弁筒24の外側端面24aの中心と、流出路32の管端面32aの中心とは、軸流方向AXから互いに異なる距離にある。具体的には、管端面32aの中心は外側端面24aの中心よりも軸流方向AXから離れた位置にある。そして、管端面32aにロングエルボである第二湾曲管70を接続し、外側端面24aにショートエルボである第一湾曲管60を接続することで、軸流方向AXからの距離の差が解消されて第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とが同軸上に配置される。
【0051】
図1に示すように、第一湾曲管60の流入側にあたる他端64には第一フランジ部66が設けられ、第二湾曲管70の流出側にあたる他端74には第二フランジ部76が設けられている。
【0052】
第一フランジ部66および第二フランジ部76は、それぞれ端筒部材(筒状部材)67、77と鍔部材68、78とを接合して構成されている。端筒部材(筒状部材)67、77および鍔部材68、78は、第一フランジ部66と第二フランジ部76とでそれぞれ同一寸法に形成されている。これにより、第一フランジ部66と第二フランジ部76とは互いに同一の形態をなし、すなわち第一フランジ部66と第二フランジ部76とを規格化することができる。
【0053】
端筒部材67、77は直筒状の部材であり、逆止弁100の流入開口69と流出開口79をそれぞれ有している。端筒部材67、77の管長は、第一湾曲管60または第二湾曲管70のいずれよりも短い。
【0054】
第一フランジ部66と第二フランジ部76とは、アングル弁ユニット10を挟んで同軸で対向して配置されている。これにより、直線的に配置された2本の配管(図示せず)の間に逆止弁100を介挿し、第一フランジ部66および第二フランジ部76をこれらの配管にそれぞれ締結することで逆止弁100を容易に固定することができる。
【0055】
本実施形態の筒状胴部42、直筒部46、流入弁筒24、第一湾曲管60、第二湾曲管70、端筒部材67および77は、いずれもステンレス鋼(SUS)で作成されており耐食性に優れる。
【0056】
端筒部材67は第一湾曲管60の他端64に対して、また端筒部材77は第二湾曲管70の他端74に対して、それぞれ接合されている。本実施形態の逆止弁100においては、端筒部材67と第一湾曲管60とは溶接され、また端筒部材77と第二湾曲管70とも溶接されて接合されている。
【0057】
端筒部材(筒状部材)67および77は、第一湾曲管60の他端64または第二湾曲管70の他端74に対して突き当てられる管端面67a、77aをそれぞれ備えている。管端面67a、77aの外周側には面取加工が施されている。管端面67a、77aに、第一湾曲管60の他端64または第二湾曲管70の他端74が突合せ溶接されている。
【0058】
管端面67a、77aの内径は、第一湾曲管60または第二湾曲管70の他端64、74の内径と等しい。また、流出路32の管端面32aにも同様に面取加工が施されている。流出路32の管端面32aの内径は第二湾曲管70の一端72の内径と等しく、管端面32aと一端72とは突合わせ溶接されている。
【0059】
また、流入路22を構成する流入弁筒24は、第一湾曲管60よりも肉厚に形成されている。流入路22の外側端面24aの内径は第一湾曲管60の一端62の内径よりも小さく、外側端面24aの外径は一端62の外径よりも大きい。そして、第一湾曲管60の一端62もまた、流入弁筒24の外側端面24aに対して突合わせ溶接されている。
【0060】
上記のように管端面32a、67a、77aの外周側に面取加工を施し、また流入弁筒24を第一湾曲管60よりも肉厚にすることで、第一湾曲管60および第二湾曲管70に面取加工を施すことなく、大きな溶接面積を確保することができる。上記のようにアングル弁ユニット10、第一フランジ部66および第二フランジ部76は規格化されているため管端面32a、67a、77aに面取加工を施しておく。そして、種々の寸法より選択可能な第一湾曲管60および第二湾曲管70には面取加工を施さず、任意に選択してアングル弁ユニット10に溶接することで、複数の仕様の逆止弁100を容易に作成することができる。
【0061】
図5は、上記実施形態の変形例にかかる逆止弁100の開状態を示す縦断面図である。本変形例の逆止弁100は、弁体30における通過方向D2と反対側(同図の右側:後縁側)の外周近傍に、弁体30の前面側と背後側とを連通する通液路33が形成されている点で上記実施形態の逆止弁100(
図3参照)と相違する。
【0062】
以下、本変形例の逆止弁100について更に説明する。上記実施形態と共通する説明は適宜省略する。
【0063】
通液路33は、弁体30の前面側(転向面50の形成側)と背後側(弁軸31の形成側)とを、流体Fが通過可能に連通する流路である。本変形例の通液路33は、弁体30およびパッキン部材52を厚み方向に貫通して形成されている。また、本変形例の通液路33は、弁体30の後縁側の外周面から半径方向の内側に向かって所定の溝深さで形成され、かつ弁体30の厚み方向に延びる縦溝である。すなわち通液路33は、流入方向D1に向かって流入弁筒24に流入してきた流体Fを、弁体30と筒状胴部42との間隙を通じて弁体30の背面側に流動させる流路である。通液路33の溝深さは特に限定されないが、バネ体26の外周面に通液路33が掛かることがない深さ、たとえば流入弁筒24の肉厚と同等またはそれ以下とすることができる。
【0064】
図2および
図3に示した上記実施形態の逆止弁100において、流入弁筒24に流入してきた流体Fは転向面50を法線方向N1に向かって付勢する。このため、弁体30および弁軸31は
図3における反時計回りにこの付勢力を受け、弁体30の後縁側の外周面が筒状胴部42に押し付けられて摩擦する。また、弁軸31と直筒部46(
図2参照)との摩擦力も増大する。これに対して、
図5に示す本変形例のように弁体30の後縁側に通液路33を形成することで、転向面50を付勢する流体Fの一部が弁体30の背後側に逃がされるため、弁体30および弁軸31に作用する上記の反時計回りの付勢力が低減される。このため、往復揺動する弁体30の摩擦力が低下して逆止弁100の圧力損失が抑制され、また弁体30および弁軸31の摩耗が低減される。
【0065】
通液路33は、本変形例のように弁体30およびパッキン部材52の後縁側の外周面に削成された縦溝のほか、弁体30およびパッキン部材52の後縁側の一部を切除して弁体30と筒状胴部42との間に三日月状に形成される空隙部として作成してもよい。また、通液路33は、弁体30およびパッキン部材52を貫通する貫通孔として作成してもよい。
【0066】
また、通液路33は弁体30に対して一箇所にのみ形成してもよく、または複数箇所に形成してもよい。通液路33を弁体30の後縁側の外周面の複数箇所に、互いに離間した浅い縦溝として形成することで、弁体30と筒状胴部42との間にがたつきが発生することを抑制しながら、流体Fを弁体30の前面側から背後側に良好に逃がすことができる。
【0067】
図6は、本実施形態の逆止弁セット200の説明図である。
【0068】
本実施形態の逆止弁セット200は、上記の逆止弁100、110を複数含む。これらの複数の逆止弁100、110は、アングル弁ユニット10が互いに同一寸法で形成され、第一湾曲管60または第二湾曲管70の少なくとも一方が互いに異なる寸法で形成されている。
【0069】
より具体的には、アングル弁ユニット10および第一湾曲管60は逆止弁100と110とで互いに同一寸法で形成されている。そして、逆止弁110の第二湾曲管71の中心角θ3は、逆止弁100の第二湾曲管70の中心角θ2よりも大きく、かつ第二湾曲管71は第二湾曲管70よりも管長が長く形成されている。これにより、逆止弁100の軸流方向AXは直線的であるのに対し、逆止弁110の軸流方向AX2は僅かに湾曲して曲線状となる。
【0070】
逆止弁110は概略ストレート型であり、かつ鍔部材68と鍔部材78とが完全に平行ではなく僅かに傾斜している。これにより、僅かに屈曲して配置された2本の配管(図示せず)の間に逆止弁110を介挿して用いることができる。そして、第一湾曲管60または第二湾曲管70の少なくとも一方(本実施形態では第二湾曲管70)の中心角または管長を相違させた他の湾曲管(本実施形態では第二湾曲管71)を用いるだけで、軸流方向が異なる逆止弁110を作成することができる。
【0071】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0072】
たとえば、上記実施形態の逆止弁100では第一湾曲管60にショートエルボを用い、第二湾曲管70にロングエルボを用いることを例示したが、本発明はこれに限られない。アングル弁ユニット10における流入路22と流出路32との長さを変更することで、第一湾曲管60および第二湾曲管70に共通のエルボ材を用いて、第一湾曲管60の他端64と第二湾曲管70の他端74とを同軸上に配置することができる。
【0073】
また、上記実施形態ではキャップ部44の直筒部46と筒状胴部42とを溶接で接合することを説明したが、本発明はこれに限られない。直筒部46と筒状胴部42とを一材で一体形成してもよく、または直筒部46と筒状胴部42にそれぞれ螺旋溝を形成して互いに螺合装着してもよい。
【0074】
同様に、上記実施形態では第一フランジ部66の端筒部材67と第一湾曲管60、および第二フランジ部76の端筒部材77と第二湾曲管70をそれぞれ溶接で接合することを説明したが、本発明はこれに限られない。端筒部材67と第一湾曲管60、および端筒部材77と第二湾曲管70にそれぞれ螺旋溝を形成して互いに螺合装着してもよい。
【0075】
本発明の逆止弁100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0076】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)弁座と、前記弁座に対して接近または離間する方向に弁軸に沿って直線的に往復揺動して前記弁座を開閉自在に閉止する弁体と、前記弁座および前記弁体を収容するとともに前記弁座に流入する流体の流入路および前記弁体を通過した前記流体の流出路を有する弁箱と、を有し、前記弁座に流入する前記流体の流入方向と、前記流体が前記弁体を通過する通過方向と、が交差するリフト式のアングル弁ユニットと、前記アングル弁ユニットの前記流入路に一端が溶接された第一湾曲管と、前記アングル弁ユニットの前記流出路に一端が溶接された第二湾曲管と、を備え、前記第一湾曲管の他端と前記第二湾曲管の他端とは反対向きに開口して軸流方向を形成しており、前記弁軸が前記軸流方向に対して前記流出路に向かって斜めに傾斜しているとともに前記第一湾曲管の前記一端が前記弁軸に沿って延在していることを特徴とする逆止弁。
(2)前記流入路と前記流出路とが直交し、かつ前記第一湾曲管の前記他端と前記第二湾曲管の前記他端とが同軸上に配置されている上記(1)に記載の逆止弁。
(3)前記第一湾曲管の前記他端に第一フランジ部が設けられ、前記第二湾曲管の前記他端に第二フランジ部が設けられており、前記第一フランジ部および前記第二フランジ部は、それぞれ筒状部材と鍔部材とを接合して構成され、前記筒状部材および前記鍔部材は、前記第一フランジ部と前記第二フランジ部とでそれぞれ同一寸法に形成されている上記(1)または(2)に記載の逆止弁。
(4)前記筒状部材は、前記第一湾曲管または前記第二湾曲管の前記他端に対して突き当てられる管端面をそれぞれ備え、かつ前記管端面の外周側に面取加工が施されており、前記管端面に前記第一湾曲管または前記第二湾曲管の前記他端が突合せ溶接されている上記(3)に記載の逆止弁。
(5)前記弁体の流入側に、前記流体を前記流入方向から前記通過方向に転向させる転向面が設けられており、前記転向面の法線方向と前記流入方向との交差角度が45度未満である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(6)前記弁体における前記通過方向と反対側の外周近傍に、前記弁体の前面側と背後側とを連通する通液路が形成されていることを特徴とする上記(5)に記載の逆止弁。
(7)前記弁箱が、前記弁座および前記弁体を収容する筒状胴部と、前記弁体の前記弁軸が挿通される支持筒を有し前記弁軸を支持する天板部、前記天板部により閉止される筒状部、および前記天板部と前記筒状部とを着脱可能に締結するヘルール継手を有するキャップ部と、を備え、前記筒状部が前記筒状胴部に溶接されている上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(8)前記第一湾曲管および前記第二湾曲管の中心角の合計が90度であり、かつ管長が互いに異なることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(9)上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の逆止弁を複数含む逆止弁セットであって、複数の前記逆止弁は、前記アングル弁ユニットが互いに同一寸法で形成され、前記第一湾曲管または前記第二湾曲管の少なくとも一方が互いに異なる寸法で形成されていることを特徴とする逆止弁セット。