(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記光源からの光を偏向するための既定の偏向パターンに基づいて前記走査光学系の制御を行い、前記光学ユニットを移動させるための既定の移動パターンに基づいて前記移動機構の制御を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る眼科装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態に係る眼科装置は、光源からの光を偏向する走査光学系を含む光学ユニットを被検眼の瞳孔を基準に移動させることにより、瞳孔を通して光を被検眼の後眼部(眼底、硝子体等)の広い範囲に照射することが可能な装置である。このような構成は、後眼部に光を照射することが可能な任意の眼科装置、たとえば、レーザー光を眼底における治療部位に照射するためのレーザー治療装置や、被検眼に固視させた状態で視標を移動させながら被検者の応答に基づき視野を測定するための視野計などに適用することができる。
【0011】
また、実施形態に係る眼科装置は、さらに、被検眼の後眼部からの戻り光を受光することにより当該後眼部における所定データの分布(画像や層厚分布や病変分布など)を形成することが可能である。このような構成は、後眼部を光で走査してデータを取得可能な任意の眼科装置、たとえば、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、OCT)を用いて眼底の断層像を得る光干渉断層計や、共焦点光学系を用いたレーザー走査により眼底の正面画像を得る走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)や、光干渉断層計の機能と走査型レーザー検眼鏡の機能とを組み合わせた複合機などに適用することができる。以下、実施形態に係る眼科装置が、走査型レーザー検眼鏡の機能を有する場合について説明する。
【0012】
〔第1実施形態〕
[構成]
図1に、この実施形態に係る眼科装置の概略構成の機能ブロック図を示す。
【0013】
眼科装置1は、被検眼Eの後眼部をレーザー光でスキャンしてデータを取得し、この取得されたデータに基づいて眼底Efの正面画像を形成する装置である。眼科装置1は、測定ユニット100と、処理ユニット200とを有する。測定ユニット100は、眼底Efの光学的な観察や眼底Efの光学的な計測を行うために用いられる。処理ユニット200は、測定ユニット100により取得されたデータの処理や、装置各部の制御などを行う。
【0014】
(測定ユニット)
測定ユニット100は、光学ユニット110と、移動機構120と、駆動部130と、光源140と、固視系150と、固視標制御部160と、アライメント系170とを有する。測定ユニット100は、被検眼Eの瞳位置P(または、後述の瞳位置Pの近傍位置)を基準に移動可能に構成された光学ユニット110により被検眼Eの瞳孔を通して光源140からの光を被検眼Eの後眼部に照射する。測定ユニット100は、被検眼Eの後眼部に照射された光の戻り光を受光することにより取得されたデータを処理ユニット200に送る。
【0015】
光学ユニット110は、走査光学系111と、投影系112と、受光系113とを有する。
【0016】
走査光学系111は、光源140からの光を所定の偏向角度範囲内で偏向する。この実施形態では、走査光学系111は、光源140からの光を所定の偏向角度範囲内で2次元的に偏向するが、光源140からの光を所定の偏向角度範囲内で1次元的に偏向するよう構成されてもよい。このような走査光学系111は、光スキャナーを含んでもよい。光スキャナーには、1軸または互いに直交する2軸の偏向部材が用いられる。偏向部材の例として、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、回転ミラー、ダボプリズム(Dove Prism)、ダブルダボプリズム(Double Dove Prism)、ローテーションプリズム(Rotation Prism)、MEMSミラースキャナーなどがある。
【0017】
投影系112は、走査光学系111により偏向された光源140からの光を被検眼Eの後眼部(たとえば、眼底Ef)に照射するための光学素子により構成された光学系である。投影系112には、たとえば、被検眼E側から順に、対物レンズ、ビームエキスパンダー、走査光学系111、ビームスプリッター、開口絞り、およびコリメートレンズが設けられている。
【0018】
受光系113は、投影系112により照射された光に対する被検眼Eの後眼部からの戻り光を受光するための光学素子により構成された光学系である。受光系113には、たとえば、被検眼E側から順に、対物レンズ、ビームエキスパンダー、走査光学系111、ビームスプリッター、集光レンズ、共焦点ピンホール、および受光素子が設けられている。受光素子には、光源140から出力される光に応じて、可視領域や赤外領域に感度を有するものが用いられる。
【0019】
なお、光学ユニット110は、さらに、光源140および固視系150のうち少なくとも1つを含んで構成されていてもよい。また、投影系112および受光系113のうち少なくとも1つは、光学ユニット110の外部に設けられていてもよい。
【0020】
移動機構120は、被検眼Eの瞳位置Pを基準に光学ユニット110を所定の移動角度範囲内で移動させる。ここで、光学ユニット110の光軸が被検眼Eの正面側から瞳位置Pを通る場合に、当該光軸に直交する平面をxy平面(x方向は水平方向、y方向は垂直方向)とし、当該光軸に平行な眼底方向をz方向とすると、瞳位置Pには、瞳に実際に相当する位置だけでなく、後眼部の走査を妨げない範囲において瞳位置Pからx,yおよび/またはz方向に変位した位置(近傍位置)も含まれる。以下、この明細書において、特に「近傍位置」を明示したときを除いて単純に「瞳位置」と表記した場合は、瞳位置またはその近傍位置を意味するものとする。
【0021】
この実施形態では、移動機構120は、被検眼Eの瞳位置Pを中心に光学ユニット110を所定の移動角度範囲内で3次元的に旋回させる。このような移動機構120は、たとえば、光学ユニット110を保持する1以上の保持部材と、上記の移動角度範囲の任意の位置に移動可能に設けられた1以上のガイドアームとを含んで構成される。ガイドアームは、スライド可能な状態で保持部材を保持する。
【0022】
なお、移動機構120は、被検眼Eの瞳位置Pを通る光学ユニット110の光軸に直交する平面内で2次元的に移動させるようにしてもよい。
【0023】
駆動部130は、後述の処理ユニット200の制御部210からの制御を受け、移動機構120を駆動する。駆動部130は、移動機構120を移動させるための駆動力を発生させるアクチュエータを含む。後述の制御部210からの制御信号を受けたアクチュエータは、この制御信号に応じた駆動力を発生させる。この駆動力は、図示しない駆動力伝達機構を介して移動機構120に伝達され、制御信号により指示された位置に配置されるように移動機構120を移動させる。これにより、光学ユニット110を所望の位置に移動させることが可能となる。
【0024】
光源140は、被検眼Eの後眼部に照射するためのレーザー光を出力する。光源140としては、空間的コヒーレンシの高いレーザー光を出力する光源が用いられる。このような光源140には、半導体レーザー光源(波長掃引レーザー、スーパルミネッセントダイオードなど)、固体レーザー、ガスレーザー、ファイバレーザーなどがある。なお、光源140として、複数の光源を光ファイバ合波器やダイクロイックミラーなどの合波器により合成して用いるものを適用することも可能である。この実施形態では、光ファイバによりレーザー光を光学ユニット110に導く。たとえば、光ファイバのジョイント部には、光学ユニット110の移動に起因した捻れや引っ張りなどのストレスを低減する手段が設けられている。
【0025】
固視系150は、内部固視および外部固視の少なくとも一方を実現するための構成を有する。内部固視を実現する場合、固視系150は、被検眼Eの眼底Efに固視標を投影するための光学系を含んで構成される。固視標は、被検眼Eを固視させるための視標である。固視系150は、少なくとも可視光を出力する固視光源を含む。固視系150により形成された光路は、たとえば、瞳位置Pと光学ユニット110(対物レンズ)との間に設けられたダイクロイックミラーにより、光学ユニット110により形成された光路に合成される。内部固視を実現する場合、固視系150は、光学ユニット110内に設けられてもよい。
【0026】
外部固視を実現する場合、固視系150は、たとえば、光学ユニット110の筐体に設けられる。固視系150は、たとえば、一端が光学ユニット110に固定され関節部を介して互いに接続された2以上のアームの他端にLED等の発光部が設けられた構成を有する。外部固視を実現する場合、固視系150は、測定ユニット100の筐体に設けられ、光学ユニット110とともに移動しないように構成されていてもよい。
【0027】
固視系150が内部固視を実現する場合、固視標制御部160により、光学ユニット110の移動に伴い固視標の投影位置を移動させることが可能である。固視系150が内部固視および外部固視の双方を実現する場合、固視標制御部160により、上記の構成を用いて内部固視と外部固視とを連係させることが可能である。内部固視と外部固視とを連係させる例として、レーザー光のスキャン領域内に黄斑部が含まれているときには内部固視により被検眼に固視させ、当該スキャン領域内に黄斑部が含まれないときには外部固視により被検眼に固視させる。
【0028】
また、固視系150が、たとえば2つ(以上)の内部固視を実現するための構成(光学系)を有していてよい。この場合、固視系150は、光学ユニット110の内部に設けられ第1内部固視を実現するための構成と、光学ユニット110の外部に設けられた第2内部固視を実現するための構成とを有することが可能である。2つの内部固視を連係させる例として、レーザー光のスキャン領域内に黄斑部が含まれているときには第1内部固視(光学ユニット110の内部)により被検眼に固視させ、当該スキャン領域内に黄斑部が含まれないときには第2内部固視(光学ユニット110の外部)により被検眼に固視させる。
【0029】
固視標制御部160は、後述の処理ユニット200の制御部210からの制御を受け、固視系150を制御する。固視標制御部160は、たとえば、制御部210からの制御を受け、固視光源(内部固視用や外部固視用)の点灯および消灯を制御したり、眼底Efにおける固視標の投影位置(固視位置)を移動させたりすることが可能である。
【0030】
アライメント系170は、たとえば、XYアライメント検出用光源と、XYアライメントセンサーと、Zアライメント検出用光源と、Zアライメントセンサーとを含んで構成される。XYアライメント光源からのXYアライメント検出用光は、被検眼Eの角膜に平行光束として導かれる。その角膜には、XYアライメント検出用光の角膜反射による輝点像(虚像)が形成される。角膜で反射されたXYアライメント検出用光は、XYアライメントセンサーにより検出される。XYアライメントセンサーにより得られた検出信号は、後述の制御部210に送られる。制御部210は、この検出信号から被検眼Eの角膜に形成された輝点像の位置を特定し、x方向およびy方向の光学ユニット110に対する位置ずれを検出する。
【0031】
Zアライメント検出用光源からのZアライメント検出用光は、被検眼Eの角膜に投影される。その角膜にはZアライメント検出用光の角膜反射による輝点像(虚像)が形成される。角膜で反射されたZアライメント検出用光は、Zアライメントセンサーにより検出される。Zアライメントセンサーにより得られた検出信号は、後述の制御部210に送られる。制御部210は、この検出信号から被検眼Eの角膜に形成された輝点像の位置を特定し、z方向の光学ユニット110に対する位置ずれを検出する。
【0032】
また、上記のXYアライメントおよびZアライメントの少なくとも一方は、測定ユニット100に設けられた1以上のカメラを用いて行われてもよい。この場合、1以上のカメラにより撮影された画像に基づいて被検眼Eの位置を求めることで、x方向、y方向、およびz方向の少なくとも1つの位置ずれが検出される。なお、2以上のカメラが設けられている場合には、異なる方向から実質的に同時に撮影された画像に基づいて被検眼Eの3次元位置を求めることで、x方向、y方向、およびz方向の少なくとも1つの位置ずれが検出される。
【0033】
制御部210は、検出されたx方向、y方向、およびz方向の位置ずれをキャンセルするように光学ユニット110を移動させることによりアライメントを行う。
【0034】
なお、測定ユニット100は、フォーカス光学系を含み、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成することが可能である。この場合、フォーカス光学系から出力された光(フォーカス光)は、眼底Efに投影され、その眼底反射光が、図示しないセンサーにより検出される。制御部210は、このセンサーにより得られた検出信号からスプリット指標の位置を解析して、たとえば、光学ユニット110に含まれる合焦レンズおよびフォーカス光学系を移動させてピント合わせを行うことが可能である(オートフォーカス機能)。
【0035】
上記の構成においては、光源140により出力されるレーザー光の波長は任意である。たとえば、光源140により出力されるレーザー光として、赤外レーザー光や可視レーザー光を用いることができる。また、波長帯が異なるレーザー光を選択的に出力可能に構成することも可能である。たとえば、赤外レーザー光と可視レーザー光とを選択的に出力可能な構成を適用できる。
【0036】
以上のような構成を有する測定ユニット100において、光源140から出力されたレーザー光は、移動機構120により移動された光学ユニット110により2次元的に偏向され、光学ユニット110の光軸方向から被検眼Eの瞳孔を通過して眼底Efに照射される。具体的には、被検眼Eに入射したレーザー光は、被検眼Eの前眼部にて散乱される。また、被検眼Eに入射したレーザー光の一部は、瞳孔を通過し、眼底Efにスポット光として結像される。
【0037】
眼底Efに照射されたレーザー光の戻り光は、スポット光の形成位置(およびその近傍位置)から光学ユニット110に戻ってくる光である。戻り光には、眼底Efによるレーザー光の散乱光(反射光や後方散乱光)、並びに、レーザー光を励起光とする蛍光およびその散乱光などが含まれる。戻り光は、瞳孔を通過し、被検眼Eから出射する。
【0038】
光学ユニット110において、被検眼Eからの戻り光は、受光系113に導かれる。受光系113に導かれた戻り光は、受光素子により検出される。受光素子は、検出された戻り光を光電変換し、電気信号(受光信号)を出力する。
【0039】
以上のプロセスは、眼底Efの一点の計測に相当し、眼底Efに対する単一のスポット光の照射領域における計測に相当する。この実施形態では、移動機構120により光学ユニット110を瞳位置Pを中心に(1次元的、2次元的または3次元的に)旋回しつつ、この光学ユニット110内の走査光学系111による(1次元的または2次元的な)偏向を行うことによって、眼底Efにおけるスポット光の照射領域が移動される。つまり、この実施形態では、移動機構120による光学ユニット110の旋回と、走査光学系111による偏向とを組み合わせることにより、眼底Efのスキャンが実行される。
【0040】
図2に、この実施形態に係るスポット光の照射領域の説明図を示す。
図2は、移動機構120により旋回された光学ユニット110の各位置における走査光学系111によるスポット光の照射領域の説明図を模式的に表したものである。
【0041】
この実施形態では、
図2に示す全スキャン領域を複数のサブスキャン領域に分割し、各サブスキャン領域内で走査光学系111によりスポット光の照射位置を移動させることにより、広範囲にわたる全スキャン領域に対してスキャンを行う。換言すると、この実施形態では、複数のサブスキャン領域をそれぞれスキャンすることにより広範囲にわたるスキャンが実現される。各サブスキャン領域は、後述の偏向パターンに従ってスキャンされる。サブスキャン領域間の移動は、光学ユニット110の移動により行われる。サブスキャン領域間の移動は、後述の移動パターンに従って行われる。
【0042】
走査光学系111は、上記のように所定の偏向角度範囲内で光源140からの光を偏向する。この偏向角度範囲が、走査光学系111の偏向中心を基準に、水平方向(たとえば、x方向)に偏向角度範囲θ
H1とし、垂直方向(たとえば、y方向)に偏向角度範囲θ
V1とすると、光学ユニット110の各位置における走査光学系111によるスポット光の照射領域は、
図2に示すように、水平方向の偏向角度範囲が±θ
H1であり、垂直方向の偏向角度範囲が±θ
V1となる。
【0043】
また、光学ユニット110は、上記のように、被検眼Eの瞳位置Pを中心に所定の移動角度範囲内で旋回される。この移動角度範囲が、水平方向(たとえば、x方向)に移動角度範囲θ
H2とし、垂直方向(たとえば、y方向)に移動角度範囲θ
V2とすると、スポット光の照射領域は、
図2に示すように、水平方向の角度範囲がθ
H=θ
H2+2・θ
H1となり、垂直方向の角度範囲がθ
V=θ
V2+2・θ
V1となる。
【0044】
従って、眼科装置1によれば、水平方向の角度範囲がθ
Hであり、垂直方向の角度範囲がθ
Vである範囲内でスキャンが可能となり、当該範囲内のデータの取得が可能となる。たとえば、θ
H1として20度〜80度が可能であるためθ
H1を60度とし、θ
H2が40度とすると、水平方向に160度の範囲でデータの取得(画像の取得)が可能である。同様に、θ
V1として20度〜80度が可能であるためθ
V1を40度とし、θ
V2が40度とすると、垂直方向に120度の範囲でデータの取得(画像の取得)が可能である。コストやワーキングディスタンスを勘案して、θ
H1、θ
H2、θ
V1、θ
V2を決定することが望ましい。
【0045】
(処理ユニット)
処理ユニット200は、演算装置、制御装置、記憶装置(RAM、ROM、ハードディスクドライブなど)、ユーザインターフェイス、通信インターフェイスなどを有する。この実施形態では、
図1に示すように、処理ユニット200は、制御部210と、データ処理部220と、ユーザインターフェイス230とを含む。
【0046】
制御部210は、装置各部の制御を行う。制御部210は、マイクロプロセッサおよび記憶装置を含んで構成される。記憶装置には、眼科装置1を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、光学ユニット制御用プログラム(走査光学系制御用プログラムを含む)、移動機構制御用プログラム、アライメント制御用プログラム、統括制御用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従ってマイクロプロセッサが動作することにより、制御部210は制御処理を実行する。
【0047】
測定ユニット100に対する制御として、光源140の制御、光学ユニット110の受光系113(受光素子)の制御、走査光学系111の偏向制御、駆動部130を介した移動機構120の制御、固視標制御部160の制御、アライメント系170の制御などがある。特に、制御部210は、走査光学系111と移動機構120とを連係して制御する。処理ユニット200に対する制御として、各部の動作制御がある。
【0048】
(連係制御)
走査光学系111と移動機構120とを連係して制御する例として、制御部210は、次のような制御を行うことが可能である。制御部210の記憶装置には、光源140からの光を偏向するための既定の偏向パターンと、光学ユニット110を移動させるための既定の移動パターンとがあらかじめ記憶されている。偏向パターンや移動パターンは、デフォルト設定されてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。また、複数の偏向パターンや複数の移動パターンを選択的に適用することが可能である。制御部210は、記憶装置に記憶された既定の偏向パターンに基づいて走査光学系111の制御を行い、記憶装置に記憶された既定の移動パターンに基づいて移動機構120の制御を行う。たとえば、制御部210は、移動パターンに基づく移動機構120の制御と偏向パターンに基づく走査光学系111の制御とを交互に実行することが可能である。また、たとえば、制御部210は、移動パターンに基づく移動機構120の制御と偏向パターンに基づく走査光学系111の制御とを並行して行うことが可能である。
【0049】
また、制御部210は、偏向パターンに基づいて走査光学系111を制御することにより、被検眼Eの後眼部の所定領域の走査態様を変更することが可能である。たとえば、制御部210は、偏向パターンに基づき走査光学系111を制御することにより、被検眼Eの後眼部の矩形領域を走査するように光源140からの光の照射位置を移動させることが可能である(短冊状走査など)。
【0050】
図3に、この実施形態に係る走査態様の一例を示す。
図3は、視神経乳頭Nと黄斑部Hとを含む被検眼Eの眼底Efの所定領域AR内を複数のサブスキャン領域に分けて走査する様子を模式的に表したものである。
【0051】
制御部210は、既定の移動パターンに従って移動機構120を制御することにより、サブスキャン領域SR1、SR2、SR3、・・・を順次に移動させる。このとき、移動パターンにより、移動前のサブスキャン領域の一部に重複するように次のサブスキャン領域に移動させる(重複エリアCR1、CR2、・・・)。サブスキャン領域毎に得られた画像から全スキャン領域の画像を形成する場合に、重複エリアは、画像同士の位置合わせに用いられる。制御部210は、偏向パターンに基づいて、各サブスキャン領域(被検眼Eの後眼部の所定領域)をラスター走査するように光源140からの光の照射位置を移動させる。
【0052】
また、制御部210は、偏向パターンに基づいて、被検眼Eの後眼部の所定領域をサークル走査するように光源140からの光の照射位置を移動させることが可能である。また、制御部210は、偏向パターンに基づき走査光学系111を制御することにより光源140からの光を1次元的に偏向させることが可能である(スリット状走査)。
【0053】
(その他の制御)
固視標制御部160の制御の例として、制御部210は、所定位置を固視するように固視標を投影させる。また、固視系150が光学ユニット110内に設けられた場合、制御部210は、移動機構120の移動による光学ユニット110の光軸の移動(眼底Efにおけるスポット光の照射位置の変位)をキャンセルするように固視位置を移動させることが可能である。また、制御部210は、走査光学系111によるスキャン領域が黄斑部を含むときには内部固視標により被検眼Eを所定方向に固視させ、走査光学系111によるスキャン領域が黄斑部を含まないときには内部固視標を消灯させることが可能である。また、内部固視標と外部固視標(外部固視灯)の双方が設けられている場合において、走査光学系111によるスキャン領域が黄斑部を含まないときには外部固視標により被検眼Eを所定方向に固視させるようにしてもよい。
【0054】
また、制御部210は、被検眼Eの眼底Efの動きを監視しつつ眼底Efの所定部位が画像(フレーム)中の一定の位置に描出されるように眼球運動を補償するトラッキング制御を行うようにしてもよい。また、制御部210は、取得されたデータを解析して画像間(フレーム間)における描出位置のずれを補正することにより事後的にトラッキングを行うようにしてもよい。また、制御部210は、被検眼Eの視線方向の検知を行い、視線の動きによる位置ずれをキャンセルするようにトラッキング制御を実行してもよい。
【0055】
眼底Efの光学的計測が行われているときに、または光学的計測が終了した後に、制御部210は、画素位置信号を生成し、データ処理部220に送る。画素位置信号は、光学ユニット制御用プログラムに基づく複数のスポット光の照射領域の配置(つまり、走査光学系111による光の偏向パターン)に対応する複数の画素の配置を示す。
【0056】
(データ処理部)
データ処理部220は、受光系113の受光素子から入力される受光信号と、制御部210から入力される画素位置信号とに基づいて、被検眼Eの後眼部における所定データの分布を形成することが可能である。所定データの例として、受光信号(レーザー光の戻り光)、受光信号から取得される画像の画素値や輝度値などがある。分布の例として、強度分布や頻度分布や画像やこれらを解析して得られる病変分布などがある。この実施形態では、データ処理部220は、被検眼Eの後眼部における所定データの分布として、受光信号のプロファイルに基づく画像(眼底Efの正面画像)を形成する。受光系113が干渉光学系を含む場合、所定データの例として、受光信号のプロファイル(レーザー光の戻り光の強度プロファイル)などがある。分布の例として、OCTを用いて取得されたスペクトル強度分布、受光信号のプロファイルに対してFFTを施すことにより得られる断層像、この断層像を解析して得られる層厚分布や病変分布などがある。
【0057】
この実施形態では、制御部210は、移動機構120の制御と走査光学系111の制御とを所定回数だけ交互に実行する。データ処理部220は、移動されている光学ユニット110によりレーザー光が照射された被検眼Eの後眼部の複数の位置からの戻り光に基づいて所定データの分布を形成する。
【0058】
また、制御部210は、移動機構120の制御と走査光学系111の制御とを並行して行うようにしてもよい。この場合、データ処理部220は、走査光学系111の制御と並行して移動されている光学ユニット110によりレーザー光が照射された被検眼Eの後眼部の複数の位置からの戻り光に基づいて所定データの分布を形成することが可能である。
【0059】
また、データ処理部220は、各サブスキャン領域のデータ取得タイミングの違いを考慮して動画像を生成することが可能である。たとえば、データ処理部220は、所定の時間だけサブスキャン領域毎に取得された画像(データ)を基準となるデータ取得タイミングとのタイミング差に関連付けて記憶する。基準となるデータ取得タイミングの例として、動画像の先頭フレームの画像を構成する複数のサブスキャン領域のうち最初に取得されたサブスキャン領域のデータ取得タイミングなどがある。データ処理部220は、動画像の生成対象のサブスキャン領域のデータ取得タイミングのタイミング差がキャンセルされるように各サブスキャン領域において取得された画像を読み出し、読み出された画像位置合わせを行うことにより、動画像を構成する各フレームの画像を生成する。
【0060】
データ処理部220は、たとえばマイクロプロセッサおよび記憶装置を含んで構成される。記憶装置には、データ処理プログラムがあらかじめ格納される。マイクロプロセッサがデータ処理用プログラムに従って動作することによってデータ処理の少なくとも一部が実行される。また、データ処理部220は、専用のハードウェアを含んで構成されてもよい。
【0061】
また、データ処理部220は、各種のデータ処理を実行することが可能である。このようなデータ処理の例として、データ処理部220または他の装置により形成された画像データに対する処理がある。この処理の例として、各種の画像処理や、画像データに基づく画像評価などの診断支援処理がある。データ処理部220は、眼科装置1の一部であってもよいし、外部装置であってもよい。
【0062】
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス230は、表示機能と、操作・入力機能とを有する。表示機能は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:以下、LCD)などの表示デバイスにより実現される。表示デバイスは、制御部210による制御の下に情報を表示する。
【0063】
操作・入力機能は、操作デバイスや入力デバイスにより実現される。これらの例として、ボタン、レバー、ノブ、マウス、キーボード、トラックボールなどがある。また、制御部210が表示デバイスにグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を表示させる構成としてもよい。この表示デバイスは、タッチスクリーンであってよい。
【0064】
データ処理部220は、この実施形態に係る「データ分布形成部」の一例である。
【0065】
<動作例>
眼科装置1の動作例について説明する。
【0066】
図4に、眼科装置1の動作例のフロー図を示す。
【0067】
(S1)
まず、ユーザインターフェイス230を用いてユーザにより撮影モードが指定されると、制御部210は、眼科装置1の撮影モードをユーザにより指定された撮影モードに設定する。この撮影モードの設定には、ユーザにより指定された撮影モードにあらかじめ関連付けられた偏向パターンおよび移動パターンの設定が含まれる。
【0068】
(S2)
次に、制御部210は、固視標制御部160を制御することにより、固視系150により固視標を提示させる。
【0069】
(S3)
次に、制御部210は、S1において設定された撮影モードに対応した移動パターンに従って駆動部130を制御することにより、移動機構120により光学ユニット110のスキャン中心位置を所定のチルト中心位置に移動させる。チルト中心位置は、移動パターンに従って移動される光学ユニット110の初期位置である。
【0070】
(S4)
次に、制御部210は、アライメント系170に含まれるXYアライメントセンサーおよびZアライメントセンサーにより得られた検出信号に基づいて、当該チルト位置(移動機構120により移動された光学ユニット110の位置)が適正か否かを判定する。当該チルト位置が適正ではないと判定されたとき(S4:N)、制御部210による制御は、S5に移行する。当該チルト位置が適正であると判定されたとき(S4:Y)、制御部210による制御は、S6に移行する。
【0071】
(S5)
S4において当該チルト位置が適正ではないと判定されたとき(S4:N)、制御部210は、チルト位置を修正する。たとえば、制御部210は、アライメント系170に含まれるXYアライメントセンサーおよびZアライメントセンサーにより得られた検出信号に基づいて、位置ずれをキャンセルするようにチルト位置を修正することが可能である。また、制御部210は、当該チルト位置に配置された光学ユニット110により取得されたデータまたは画像(観察像)からチルト位置を修正してもよい。その後、制御部210による制御は、S3に移行する。
【0072】
(S6)
S4において当該チルト位置が適正であると判定されたとき(S4:Y)、制御部210は、移動パターンに従って駆動部130を制御することにより移動機構120により光学ユニット110を移動させ、光学ユニット110により当該サブスキャン領域について得られたデータを部分エリアデータとして取得する。
【0073】
(S7)
全スキャン領域のデータが取得されていないとき(S7:N)、制御部210による制御は、S4に移行する。全スキャン領域のデータが取得されたとき(S7:Y)、制御部210による制御は、S8に移行する。
【0074】
(S8)
全スキャン領域のデータが取得されたとき(S7:Y)、制御部210は、データ処理部220により複数のサブスキャン領域の複数の部分エリアデータの位置合わせを行う。たとえば、上記のように部分エリアデータに重複エリアが含まれている場合、データ処理部220は、対応する部分エリアデータの重複エリアの画像をマッチングさせることにより部分エリアデータの位置合わせを行うことが可能である。また、データ処理部220は、各サブスキャン領域のスキャン時の光学ユニット110の位置と事前に設定された走査光学系111の偏向角度範囲とから、部分エリアデータの領域の位置(部分エリアデータの基準位置)を特定し、特定された部分エリアデータの領域の位置を用いて部分エリアデータの位置合わせを行ってもよい。
【0075】
(S9)
制御部210は、ユーザインターフェイス230を用いてユーザにより指定された表示形態で、S8において位置合わせされた部分エリアデータに基づいて所望の画像をユーザインターフェイス230に含まれる表示デバイスに表示させる。以上で、制御部210による制御は、終了する(エンド)。
【0076】
[作用・効果]
眼科装置1の作用および効果について説明する。
【0077】
眼科装置1は、光学ユニット(たとえば、光学ユニット110)と、移動機構(たとえば、移動機構120)と、制御部(たとえば、制御部210)とを含む。光学ユニットは、光源(たとえば、光源140)からの光を所定の偏向角度範囲内で偏向する走査光学系(たとえば、走査光学系111)を含み、走査光学系により偏向された光源からの光を被検眼の後眼部に照射可能に構成される。移動機構は、被検眼の瞳位置(たとえば、瞳位置P)またはその近傍位置を基準に光学ユニットを所定の移動角度範囲内で移動させる。制御部は、走査光学系と移動機構とを連係して制御する。
【0078】
このような構成によれば、走査光学系の偏向制御と移動機構の移動制御とを連係して制御することにより、広い視野で被検眼の後眼部の観察を簡便に行うことが可能となる。また、反射光学系の光学素子が有するような収差特性の影響を受けることなく、高精度に被検眼の後眼部の観察を行うことができる。
【0079】
また、移動機構は、瞳位置またはその近傍位置を中心に光学ユニットを旋回させてもよい。
【0080】
このような構成によれば、被検眼の瞳孔を通して後眼部の広い範囲を照射することができるようになる。
【0081】
また、制御部は、光源からの光を偏向するための既定の偏向パターンに基づいて走査光学系の制御を行い、光学ユニットを移動させるための既定の移動パターンに基づいて移動機構の制御を行ってもよい。
【0082】
このような構成によれば、走査光学系と移動機構とに対して自動制御が可能となるので、広い視野で高精度な被検眼の後眼部の観察を簡便に行うことができる。
【0083】
また、制御部は、偏向パターンに基づき走査光学系を制御することにより光源からの光を2次元的に偏向させてもよい。また、制御部は、後眼部の矩形領域を走査するように光源からの光の照射位置を移動させてもよい。また、制御部は、後眼部の所定領域をラスター走査するように光源からの光の照射位置を移動させてもよい。また、制御部は、後眼部の所定領域をサークル走査するように光源からの光の照射位置を移動させてもよい。また、制御部は、偏向パターンに基づき走査光学系を制御することにより光源からの光を1次元的に偏向させてもよい。
【0084】
このような構成によれば、所望の走査態様により広い視野で高精度に被検眼の後眼部についてデータを取得することが可能となる。
【0085】
また、後眼部からの戻り光に基づいて、後眼部における所定データの分布を形成するデータ分布形成部(たとえば、データ処理部220)を含み、制御部は、移動機構の制御と走査光学系の制御とを交互に実行し、データ分布形成部は、後眼部の複数の位置からの戻り光に基づいて所定データの分布を形成してもよい。
【0086】
このような構成によれば、移動機構により光学ユニットが移動された位置において走査光学系による走査により取得されたデータの分布を形成することが可能となり、被検眼の後眼部について広い視野で高精度なデータ分布を簡便に取得することができる。
【0087】
また、後眼部からの戻り光に基づいて、後眼部における所定データの分布を形成するデータ分布形成部(たとえば、データ処理部220)を含み、制御部は、移動機構による光学ユニットの移動制御と走査光学系による光源からの光の偏向制御とを並行して行い、データ分布形成部は、後眼部の複数の位置からの戻り光に基づいて所定データの分布を形成してもよい。
【0088】
このような構成によれば、移動機構による光学ユニットの移動と走査光学系による偏向とを並行して行いながら取得されたデータの分布を形成することが可能となり、被検眼の後眼部について広い視野で高精度なデータ分布を簡便に取得することができる。
【0089】
また、光学ユニットは、光源からの光が被検眼を経由した戻り光を受光する受光系(たとえば、受光系113)を含んでもよい。また、光学ユニットは、光源を含み、光源は、可視光または赤外光を出力してもよい。また、被検眼の眼底に固視標を投影するための固視系(たとえば、固視系150)を含んでもよい。また、固視系は、光学ユニットに設けられていてもよい。
【0090】
このような構成によれば、受光系や光源や固視系を含んで構成された光学ユニットを用いて、広い視野で被検眼の後眼部の観察を簡便に行うことが可能となる。
【0091】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、測定ユニット100が、1つの光学ユニット110を移動させる場合について説明したが、実施形態に係る眼科装置の構成は、これに限定されるものではなく、測定ユニット100は、複数の光学ユニットを有していてもよい。
【0092】
たとえば、測定ユニット100は、2以上の光学ユニット110を含むことが可能である。2以上の光学ユニット110は、たとえば、移動機構120により互いに干渉しないように被検眼Eの瞳位置Pを基準に所定の移動角度範囲内で移動可能に構成される。2以上の光学ユニット110のうち少なくとも1つの移動角度範囲は他の光学ユニット110の移動角度範囲と異なってもよい。制御部210は、2以上の光学ユニット110のうち少なくとも1つにおける走査光学系111と移動機構120とを連係して制御する。これにより、2以上の光学ユニット110の旋回と、走査光学系111による偏向とを組み合わせることにより、眼底Efにおける広範囲のスキャンが可能となる。
【0093】
また、2以上の光学ユニット110のうちその一部である複数の光学ユニットが、移動機構120により連係して移動可能に構成されてもよい。この場合、2以上の光学ユニット110の一部である複数の光学ユニットが、移動機構120により一体的に移動可能に構成されたり、互いに独立して移動可能に構成されてもよい。これらの場合でも、制御部210は、2以上の光学ユニット110のうち少なくとも1つにおける走査光学系111と移動機構120とを連係して制御する。これにより、2以上の光学ユニット110の旋回と、走査光学系111による偏向とを組み合わせることにより、眼底Efにおける広範囲のスキャンが可能となる。
【0094】
また、2以上の光学ユニット110には、たとえば、固定された光学ユニット(移動機構120により移動させることが不可能な光学ユニット)が含まれていてもよい。この場合でも、制御部210は、2以上の光学ユニット110のうち少なくとも1つにおける走査光学系111と移動機構120とを連係して制御する。これにより、2以上の光学ユニット110の少なくとも1つの旋回と、走査光学系111による偏向とを組み合わせることにより、眼底Efにおける広範囲のスキャンが可能となる。
【0095】
また、制御部210は、被検眼Eの後眼部の所定領域を走査するように2以上の光学ユニット110からの2以上の光の照射位置を移動させることが可能である。たとえば、2以上の光学ユニット110により互いに異なるサブスキャン領域内で光の照射位置を移動させることにより、高速化を図ることができる。
【0096】
図5に、この実施形態に係る走査態様の一例を示す。
図5は、測定ユニット100が2つの光学ユニット110を有する場合の走査態様の一例を表す。なお、
図5において、
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0097】
制御部210は、既定の移動パターンに従って移動機構120を制御することにより、2つの光学ユニット110により走査される領域として、互いに異なる行方向に並ぶサブスキャン領域に順次に移動させてもよい。たとえば、制御部210は、2つの光学ユニット110の一方についてサブスキャン領域SR1、SR2、SR3、・・・に順次に移動させ、他方についてサブスキャン領域SR11、SR12、SR13、・・・に順次に移動させる。このとき、移動パターンにより、移動前のサブスキャン領域の一部に重複するように次のサブスキャン領域に移動させる(重複エリアCR1、CR2、・・・、CR11、CR12、・・・)。また、制御部210は、移動パターンにより、隣接する列方向のサブスキャン領域の一部に重複するようにサブスキャン領域に移動させる(重複エリアCR01、CR02、・・・)。制御部210は、偏向パターンに基づいて、各サブスキャン領域(被検眼Eの後眼部の所定領域)をラスター走査するように光源140からの光の照射位置を移動させる。
【0098】
また、制御部210は、2つの光学ユニット110の一方についてサブスキャン領域SR1、SR12、SR3、・・・の順序で移動させ、他方についてサブスキャン領域SR11、SR2、SR13、・・・の順序で移動させ、2つの光学ユニット110が移動されるサブスキャン領域の行を交互に切り替えてもよい。
【0099】
[作用・効果]
この実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0100】
この実施形態に係る眼科装置は、2以上の光学ユニットを含み、移動機構は、2以上の光学ユニットのうち少なくとも1つを瞳位置またはその近傍位置を基準に移動角度範囲内で移動させ、制御部は、2以上の光学ユニットのうち少なくとも1つにおける走査光学系と移動機構とを連係して制御してもよい。
【0101】
また、制御部は、後眼部の所定領域を走査するように2以上の光学ユニットからの2以上の光の照射位置を移動させてもよい。
【0102】
このような構成によれば、2以上の光学ユニットにより後眼部の所定範囲について並行して走査することができるので、後眼部の広い範囲を高速に走査することが可能となる。
【0103】
〔第3実施形態〕
上記の実施形態では、光学ユニット110が走査型レーザー検眼鏡の機能を実現する光学系を有する場合について説明したが、この実施形態に係る眼科装置の構成はこれに限定されるものではない。光学ユニット110の受光系113が、干渉光学系を含み、OCTにより被検眼Eの眼底Efの断層像を取得することが可能である。
【0104】
この実施形態では、受光系113に含まれる干渉光学系は、光源140から出力された低コヒーレンス光を参照光と測定光とに分割し、図示しない参照物体を経由した参照光と眼底Efを経由した測定光とを重畳して干渉光を生成する。また、受光系113は、検出部を有する。検出部は、たとえば、コリメートレンズと、回折格子と、結像レンズと、CCD(Charge Coupled Device)とを含んで構成される。検出部に入射した干渉光は、コリメータレンズにより平行光束とされた後、回折格子によって分光(スペクトル分解)される。分光された干渉光は、結像レンズによってCCDの撮像面上に結像される。CCDは、この干渉光を受光して電気的な検出信号に変換し、この検出信号をデータ処理部220に出力する。データ処理部220は、干渉光に対応した信号を解析して眼底Efの画像を形成する。
【0105】
この場合、光源140は、低コヒーレンス光を出力するスーパールミネセントダイオード(SLD)や発光ダイオード(LED)等の広帯域光源により構成されている。低コヒーレンス光は、たとえば、近赤外領域の波長を有し、かつ、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する光とされる。
【0106】
なお、この実施形態では、光学ユニット110がスペクトラルドメインタイプの光学系を有するものとして説明したが、スウェプトソースタイプの光学系を有していてもよい。この場合、光源140には波長掃引光源が設けられるとともに、検出部には干渉光をスペクトル分解する光学部材ではなくフォトディテクタが設けられる。検出部は、フォトディテクタの検出結果(検出信号)をデータ処理部220に送る。データ処理部220は、たとえばAスキャンライン毎に、フォトディテクタの検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことで断層像を形成する。なお、干渉光学系の構成については、OCTのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
【0107】
この実施形態では、制御部210は、被検眼Eの後眼部の所定領域を円形ラジアル走査するように光源140からの光の照射位置を移動させることが可能である。
【0108】
図6〜
図8に、この実施形態に係る走査態様の一例を示す。
図6〜
図8において、
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0109】
制御部210は、眼底Efの所定位置を中心にC1方向に円を描くようにラジアル方向のサブスキャン領域RRを移動させながら、各サブスキャン領域RR内で光の照射位置を移動させる(
図6)。これにより、円形ラジアル走査で取得された眼底Efの断層像の取得が可能となる。
【0110】
また、制御部210は、
図7に示すように、サブスキャン領域RRが高密度となるように走査光学系111および移動機構120を連係して制御することにより、眼底Efの高精細な断層像を取得することができる。また、
図8に示すように、制御部210は、眼底Efの複数の位置を中心に円形ラジアル走査を行わせることにより、高密度で眼底Efの高精細な断層像を取得することができる。
【0111】
この実施形態において、データ処理部220は、2次元または3次元の断層像データを取得し、Aスキャン画像、Bスキャン画像、正面画像、3次元画像などを形成することが可能である。正面画像の例として、Cスキャン画像、プロジェクション画像、平坦化画像、またはシャドウグラムなどがある。また、データ処理部220は、眼底Efの動的特性抽出した、断層画像、正面画像、3次元画像などを形成することが可能である。
【0112】
〔その他〕
実施形態に係る眼科装置の構成は、上記の実施形態で説明した構成に限定されるものではない。実施形態に係る眼科装置は、上記のようにレーザー治療装置に適用することが可能である。この場合、光学ユニット110は、レーザー光を被検眼Eの眼底Efに照射する投影系と、制御部210による制御を受けて既定のレーザーパターンに従ってレーザー光を偏向する走査光学系111とを含んで構成される。
【0113】
また、実施形態に係る眼科装置は、上記のように視野計に適用することが可能である。この場合、光学ユニット110は、可視光などを被検眼Eの眼底Efに照射する投影系と、制御部210による制御を受け所望の検査位置に照射するように可視光などを偏向する走査光学系111とを含んで構成される。
【0114】
また、実施形態に係る眼科装置において、光学ユニット110は、網膜を刺激する手段を含んで構成されていてもよい。このような眼科装置によれば、網膜に刺激を与える前の画像(眼底Efの正面画像や眼底Efの断層像)と網膜に刺激を与えた後の画像(眼底Efの正面画像や眼底Efの断層像)とを比較して網膜神経機能などを検査することができるようになる。
【0115】
また、実施形態に係る眼科装置は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像、フルオレセイン蛍光画像、インドシアニングリーン蛍光画像、自発蛍光画像などの取得が可能な眼底撮影装置や、血管造影や血流測定が可能な装置に適用することも可能である。
【0116】
また、ユーザインターフェイス230を用いてユーザによりサブスキャン領域のサイズや形状の変更が可能にしてもよい。この場合、制御部210は、変更されたサブスキャン領域のサイズや形状に応じて移動パターンを変更し、変更された移動パターンに従って移動機構120により光学ユニット110を移動させてもよい。
【0117】
また、制御部210は、光学ユニット110の光軸の向き(撮影方向)に応じて、光学ユニット110の旋回中心の位置をシフトさせるようにしてもよい。
【0118】
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を適宜に施すことが可能である。