特許第6469415号(P6469415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469415モータおよび回転軸への従動部材の固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469415
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】モータおよび回転軸への従動部材の固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/21 20160101AFI20190204BHJP
【FI】
   H02K11/21
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-218509(P2014-218509)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-86557(P2016-86557A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕次
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭46−010653(JP,Y1)
【文献】 特開2012−114997(JP,A)
【文献】 特開2008−304024(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/119513(WO,A1)
【文献】 特開2012−005260(JP,A)
【文献】 実開昭54−127064(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0006982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
該回転軸が嵌る軸穴が形成された筒状胴部を備えた従動部材と、
前記筒状胴部を径方向に貫通する貫通穴に止められ、前記回転軸に前記径方向の一方側端部が当接して前記従動部材を前記回転軸に固定する固定具と、
を有し、
前記固定具の前記径方向の他方側の端面には、前記径方向の外側に向けて開口する凹部が形成され、
前記固定具の前記径方向の他方側端部は、前記凹部において前記径方向の内側に位置する底部が前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する状態で前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出しており、
前記固定具において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出している部分の体積は、前記凹部において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する部分の容積と略等しいことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記固定具は、長さ方向の全体がねじ軸からなるセットねじであることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記凹部は、六角穴であることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記固定具および前記貫通穴は、周方向において等角度間隔からずれた複数個所に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記従動部材は、ロータリエンコーダを構成する固定側部材および可動側部材のうち、可動側部材を保持していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ロータリエンコーダは、磁気式のロータリエンコーダであって、
前記可動側部材は、永久磁石であり、
前記従動部材は、前記永久磁石を保持した磁石ホルダであり、
前記固定側部材は、前記永久磁石に前記回転軸の軸線方向で対向する感磁素子であるこ
とを特徴とする請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記固定具の比重は、前記従動部材の比重と略等しいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ。
【請求項8】
回転軸と、
該回転軸が嵌る軸穴が形成された筒状胴部を備えた従動部材と、
前記筒状胴部を径方向に貫通する貫通穴に止められ、前記回転軸に前記径方向の一方側端部が当接して前記従動部材を前記回転軸に固定する固定具と、
を有し、
前記固定具の前記径方向の他方側の端面には、前記径方向の外側に向けて開口する凹部が形成され、
前記固定具の前記径方向の他方側端部は、前記凹部において前記径方向の内側に位置する底部が前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する状態で前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出しており、
前記固定具において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出している部分の体積は、前記凹部において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する部分の容積と略等しいことを特徴とする回転軸への従動部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に凹部が形成された固定具を用いて部材を回転軸に固定したモータ、および回転軸への部材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ等では、回転軸に従動部材を固定し、従動部材を回転軸と一体に回転させる構造が採用されることがある。例えば、モータに磁気式のロータリエンコーダを設ける場合、図4に示すように、永久磁石を保持する磁石ホルダ7を回転軸31に固定し、磁気センサと永久磁石とを対向させる(特許文献1参照)。その際、磁石ホルダ7の筒状胴部71に貫通穴74を形成しておき、かかる貫通穴74にセットねじ8aが完全に入り込むようにセットねじ8aを止めて回転軸31に磁石ホルダ7を固定する。この状態では、セットねじ8aの端部が筒状胴部71の外周面710から突出していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−114997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セットねじ8aの端面には、ドライバーの先端を際込む六角穴等の凹部89が形成されているため、セットねじ8aが止められている個所では、周方向の他の部分に比して、凹部89の容積に相当する分、軽くなってしまう。このため、図4に示す構成では、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れ、回転軸31が回転した際、振動が発生する等の問題が発生する。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、端部に凹部が形成された固定具を用いて従動部材を回転軸に固定した場合でも、回転軸の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することのできるモータ、および回転軸への従動部材の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、回転軸と、該回転軸が嵌る軸穴が形成された筒状胴部を備えた従動部材と、前記筒状胴部を径方向に貫通する貫通穴に止められ、前記回転軸に前記径方向の一方側端部が当接して前記従動部材を前記回転軸に固定する固定具と、を有し、前記固定具の前記径方向の他方側の端面には、前記径方向の外側に向けて開口する凹部が形成され、前記固定具の前記径方向の他方側端部は、前記凹部において前記径方向の内側に位置する底部が前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する状態で前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出しており、前記固定具において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出している部分の体積は、前記凹部において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する部分の容積と略等しいことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る回転軸への従動部材の固定構造は、回転軸と、該回転軸が嵌る軸穴が形成された筒状胴部を備えた従動部材と、前記筒状胴部を径方向に貫通する貫通穴に止められ、前記回転軸に前記径方向の一方側端部が当接して前記従動部材を前記回転軸に固定する固定具と、を有し、前記固定具の前記径方向の他方側の端面には、前記径方向の外側に向けて開口する凹部が形成され、前記固定具の前記径方向の他方側端部は、前記凹部において前記径方向の内側に位置する底部が前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する状態で前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出しており、前記固定具において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の外側に突出している部分の体積は、前記凹部において前記筒状胴部の外周面より前記径方向の内側に位置する部分の容積と略等しいことを特徴とする。
【0008】
本発明では、固定具の端面には凹部が形成されているが、固定具の他方側端部は、凹部の底部が筒状胴部の外周面より径方向内側に位置する状態で筒状胴部の外周面より径方向外側に突出している。このため、固定具が止められている個所では、固定具の凹部において筒状胴部の外周面より径方向の内側に位置する部分の容積に相当する分、軽くなっている一方、固定具の他方側端部が筒状胴部の外周面より径方向の外側に突出している分、重くなっている。従って、端部に凹部が形成された固定具を用いて従動部材を回転軸に固定した場合でも、回転軸の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。また、固定具において筒状胴部の外周面より径方向の外側に突出している部分の体積は、凹部において筒状胴部の外周面より径方向の内側に位置する部分の容積と略等しいため、回転軸の周方向で重量バランスが崩れることを確実に抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記固定具は、長さ方向の全体がねじ軸からなるセットねじであることが好ましい。かかる構成によれば、セットねじは、ねじ軸より拡径したねじ頭を有していないので、ねじ頭が回転軸の周方向で重量バランスを崩すことを抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記凹部は、例えば、六角穴である。凹部が六角穴である場合、内容積が大きいため、周方向での重量バランスが崩れやすいが、本発明によれば、凹部が六角穴であっても、回転軸の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記固定具および前記貫通穴は、周方向において等角度間隔からずれた複数個所に設けられている構成を採用することができる。かかるい構成の場合には、周方向での重量バランスが崩れやすいが、本発明によれば、固定具および貫通穴が周方向において等角度間隔からずれた複数個所に設けられている構成であっても、回転軸の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記従動部材は、ロータリエンコーダを構成する固定側部材および可動側部材のうち、可動側部材を保持している構成を採用することができる。
【0013】
また、前記ロータリエンコーダは、磁気式のロータリエンコーダであって、前記可動側部材は、永久磁石であり、前記従動部材は、前記永久磁石を保持した磁石ホルダであり、前記固定側部材は、前記永久磁石に前記回転軸の軸線方向で対向する感磁素子である構成を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記固定具の比重は、前記従動部材の比重と略等しい構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、固定具の端面には凹部が形成されているが、固定具の他方側端部は、凹部の底部が筒状胴部の外周面より径方向内側に位置する状態で筒状胴部の外周面より径方向外側に突出している。このため、固定具が止められている個所では、固定具の凹部において筒状胴部の外周面より径方向の内側に位置する部分の容積に相当する分、軽くなっている一方、固定具の他方側端部が筒状胴部の外周面より径方向の外側に突出している分、重くなっている。従って、端部に凹部が形成された固定具を用いて従動部材を回転軸に固定した場合でも、回転軸の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したモータの説明図である。
図2】本発明を適用したモータにおける回転軸への磁石ホルダの固定構造を示す説明図である。
図3】本発明を適用したモータにおいて、回転軸に磁石ホルダを固定した際の固定具の様子を示す説明図である。
図4】本発明の参考例に係るモータにおいて、回転軸に磁石ホルダを固定した際の固定具の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、モータ1に磁気式のロータリエンコーダ5を設けるにあたって、永久磁石51を保持する磁石ホルダ7を回転軸31に固定する部分に本発明を適用した場合を中心に説明する。従って、以下の説明では、本発明に係る「従動部材」は「磁石ホルダ7」に相当する。また、以下の説明では、モータ軸線方向の一方側を「反出力側(回転出力軸が突出している側とは反対側)」として説明し、モータ軸線方向の他方側を「出力側(回転出力軸が突出している側)」として説明する。また、以下に参照する図面において、モータ軸線については「L」で示し、モータ軸線L方向の一方側(反出力側)を「L1」で示し、モータ軸線L方向の他方側(出力側)を「L2」で示してある。
【0019】
[モータの構成]
図1は、本発明を適用したモータ1の説明図であり、図1(a)、(b)はモータ1全体の断面図、および磁気式のロータリエンコーダ5周辺の断面図である。
【0020】
図1において、本形態のモータ1は、永久磁石型同期電動機であり、モータ軸線L方向に延在する筒状のモータハウジング10と、モータハウジング10の内側に固定された筒状のステータ20と、ステータ20の内側に回転可能に配置された回転軸31を備えたロータ30とを有している。
【0021】
モータハウジング10は、ステータ20が内側に固定された筒状ケース11と、筒状ケース11に対して反出力側L1で隣接する位置で筒状ケース11に連結された第1軸受ホルダ12と、筒状ケース11に対して出力側L2で隣接する位置で筒状ケース11に連結された第2軸受ホルダ13とを備えており、筒状ケース11の両端の開口は、第1軸受ホルダ12および第2軸受ホルダ13で概ね塞がれた構造になっている。また、モータハウジング10には、反出力側L1の端部を覆うように有底筒状のカバー19がねじ等により第1軸受ホルダ12に取り付けられている。カバー19は樹脂製であり、カバー19の内側(出力側L2)には、シールド板190が固定されている。筒状ケース11は、鉄系金属からなり、第1軸受ホルダ12および第2軸受ホルダ13は、鉄系金属やアルミニウム系金属等からなる。
【0022】
第1軸受ホルダ12は、筒状ケース11に反出力側L1で重なってねじ(図示せず)等により止められたフランジ部121と、フランジ部121の内周縁から出力側L2に向けて突出した円筒部122と、円筒部122の先端部から径方向内側に屈曲した環状底板部123とを備えている。円筒部122およびフランジ部121の内側において、円筒部122と環状底板部123とにより形成された環状段部には、ボールベアリングからなる第1軸受41の外輪411が保持されている。第1軸受ホルダ12のフランジ部121には、板状ストッパ14がねじ140によって固定されており、外輪411は、板状ストッパ14と環状底板部123とによってモータ軸線L方向で位置決めされている。
【0023】
第2軸受ホルダ13は、筒状ケース11に出力側L2で重なってねじ(図示せず)等により止められたフランジ部131と、フランジ部131の内周縁から出力側L2に向けて
突出した円筒部132と、円筒部132の先端部から径方向内側に屈曲した環状底板部133とを備えている。円筒部132およびフランジ部131の内側において、円筒部132と環状底板部133とにより形成された環状段部にボールベアリングからなる第2軸受42の外輪421が保持されている。なお、環状底板部133には、回転軸31を出力側L2に向けて突出させる開口部134が形成されている。
【0024】
(ステータ20の構成)
ステータ20は、円環状のステータコア21を備えており、ステータコア21は、外周面が筒状ケース11の内周面に当接した状態で固定されている。ステータコア21は、半径方向内側に突出する複数の突極を周方向において等角度間隔に備えており、かかる突極には絶縁部材22を介して駆動コイル23が巻回されている。駆動コイル23は、巻線の巻始めと巻終わりの両端末が絶縁部材22の反出力側L1の端部に配置された配線基板26に接続されている。筒状ケース11の反出力側L1の端部と第1軸受ホルダ12との間には隙間が形成されており、配線基板26のうち、隙間から径方向外側に引き出された部分に給電線25が接続されている。従って、駆動コイル23に対しては、給電線25および配線基板26を介して外部から電力を供給可能である。
【0025】
(ロータ30の構成)
ロータ30は、モータ軸線L方向に延在する回転軸31と、回転軸31の外周に固着された永久磁石からなるロータマグネット32とを備えている。回転軸31は、ロータマグネット32が固着されている部分が最も大径であり、かかる大径部分310より出力側L2に、大径部分310より小径の第1部分318と、第1部分318より小径の第2部分319とを順に備えている。第2部分319には第2軸受42の内輪422が装着されている。
【0026】
回転軸31は、大径部分310より反出力側L1でも複数個所の段部によって反出力側L1に向けて段階的に小径になっている。本形態において、回転軸31は、大径部分310より小径の第1部分311、第1部分311より小径の第2部分312、第2部分312より小径の第3部分313、および第3部分313より小径の第4部分314を順に備えており、第3部分313には第1軸受41の内輪412が装着されている。回転軸31において、第4部分314のモータ軸線L方向の中央部分は、第4部分314のモータ軸線L方向の両端より小径の小径部316になっている。
【0027】
(磁気式のロータリエンコーダ5の構成)
回転軸31の反出力側L1の端部には、回転軸31の角度位置等を監視する磁気式のロータリエンコーダ5が構成されている。ロータリエンコーダ5を構成するにあたって、本形態では、回転軸31の反出力側L1の端部には、磁石ホルダ7(従動部材)を介して永久磁石51(可動側部材)が固定されており、かかる永久磁石51に対して反出力側L1で対向するように、センサ基板55が配置されている。永久磁石51の中心は、モータ軸線L上に位置し、永久磁石51には周方向にN極とS極が1極ずつ形成されている。センサ基板55において、出力側L2の面には、永久磁石51に対して反出力側L1で対向するように、感磁素子52(固定側部材)が配置されている。感磁素子52は、互いに直交する方向に磁気抵抗パターンが形成された磁気抵抗素子であり、かかる磁気抵抗素子は、モータ軸線L方向において永久磁石51の中心と対向するように配置されている。また、ロータリエンコーダ5にアブソリュート動作を行わせる場合、センサ基板55の出力側L2の面には、永久磁石51の中心からずれた位置で永久磁石51と対向する2つのホール素子が用いられる。かかるホール素子は、永久磁石51の中心からみて互いに90°ずれた位置に配置される。
【0028】
本形態では、センサ基板55を配置するにあたって樹脂製の基板ホルダ60が用いられ
ている。基板ホルダ60は、モータハウジング10の端部(第1軸受ホルダ12)にねじ93により固定された環状フランジ部61と、環状フランジ部61の内周縁から反出力側L1に突出した筒部62とを備えており、筒部62から反出力側L1側に突出した凸部67にセンサ基板55が固定されている。この状態で、センサ基板55に実装されている感磁素子52は、基板ホルダ60を介さずに直接、永久磁石51にモータ軸線L方向で対向することになる。
【0029】
センサ基板55は両面基板であり、センサ基板55の反出力側L1の面には、感磁素子52での検出結果を出力するためのコネクタ53が実装されている。コネクタ53には、出力線54が接続されており、出力線54は、カバー19に形成された開口部191を介して外部に引き出されている。なお、開口部191にはブシュ192やキャップ193が設けられている。
【0030】
(回転軸31への磁石ホルダ7の固定構造)
図2は、本発明を適用したモータ1における回転軸31への磁石ホルダ7の固定構造を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、回転軸31に磁石ホルダ7を固定した状態を示す説明図、回転軸31に磁石ホルダ7を固定する前の状態の説明図、磁石ホルダ7の固定に用いた固定具の説明図、磁石ホルダ7の固定に用いた別の固定具の説明図、および磁石ホルダ7の固定に用いたさらに別の固定具の説明図である。図3は、本発明を適用したモータ1において、回転軸31に磁石ホルダ7を固定した際の固定具8の様子を示す説明図であり、図3(a)、(b)は、磁石ホルダ7等を反出力側L1からみた様子をフランジ部72を省略して示す説明図、および磁石ホルダ7等をモータ軸線Lに直交する面で切断したときの断面図である。なお、以下の説明における「径方向」とは、回転軸31の中心を通るモータ軸線Lを基準とする。
【0031】
図1(b)、図2および図3に示すように、本形態のモータ1において、磁石ホルダ7は、回転軸31の第4部分314が嵌る軸穴70が形成された筒状胴部71と、筒状胴部71の反出力側L1の端部で拡径する円板状のフランジ部72と、フランジ部72の外周縁から反出力側L1に向けて突出した環状の凸部73とを有している。かかる磁石ホルダ7において、フランジ部72の反出力側L1には、環状の凸部73の内側に円板状の永久磁石51が接着等の方法で固定されており、永久磁石51は、一部が凸部73より反出力側L1に突出している。なお、軸穴70は、筒状胴部71の内側からフランジ部72の中央を貫通するように形成されている。本形態において、磁石ホルダ7は、鉄系の磁性材料からなり、永久磁石51に対するバックヨークとして機能する。
【0032】
磁石ホルダ7には、筒状胴部71を径方向で貫通する貫通穴74が形成されており、かかる貫通穴74の内部に固定具8が止められている。この状態で、固定具8の一方側端部81が回転軸31に当接し、磁石ホルダ7は、固定具8によって回転軸31の第4部分314に固定されている。本形態において、貫通穴74および固定具8は、周方向で離間する2個所に設けられている。また、2個所の貫通穴74および固定具8は、約120°の角度を成す方向に形成されている。このため、2個所の貫通穴74および固定具8は、周方向において等角度間隔からずれた位置に設けられている。
【0033】
本形態において、固定具8はセットねじ8aであり、貫通穴74はねじ穴である。セットねじ8aは、長さ方向の全体がねじ軸になっている。このため、セットねじ8aは、長さ方向の全体にわたって外径が等しく、長さ方向の全面にねじ溝80が形成されている。また、セットねじ8aでは、径方向の他方側の端面820に、ドライバーの先端部を差し込む凹部89が形成されている。ここで、凹部89は、図2(c)に示す六角穴89a、図2(d)に示すマイナス溝89b、図2(e)に示すプラス溝89cとして形成されている。かかるセットねじ8aは鉄系金属からなる。本形態において、凹部89は、図2
c)に示す六角穴89aとして形成されている。
【0034】
このようなセットねじ8aを用いて、磁石ホルダ7を回転軸31に固定するには、磁石ホルダ7の軸穴70に回転軸31に嵌めた状態で、磁石ホルダ7をモータ軸線L方向に移動させて、永久磁石51と感磁素子52との距離を最適化した状態で、貫通穴74にセットねじ8aを止める。この状態で、セットねじ8aの一方側端部81は、回転軸31の第4部分314のうち、小径部316に当接し、磁石ホルダ7を回転軸31に固定する。この状態で、永久磁石51と感磁素子52との距離を再調整する必要がある場合、セットねじ8aを緩めて、磁石ホルダ7をモータ軸線L方向に移動させ、その後、セットねじ8aを締める。
【0035】
本形態では、セットねじ8aとして、磁石ホルダ7の筒状胴部71の厚さ(貫通穴74の深さ)より長いセットねじ8aが用いられている。このため、セットねじ8aを貫通穴74に止めた状態で、セットねじ8aの径方向の他方側端部82が、筒状胴部71の外周面710から径方向外側に突出している。但し、他方側端部82の筒状胴部71の外周面710からの突出寸法は、凹部89の深さより小である。このため、凹部89において径方向の内側に位置する底部890は、筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する。
【0036】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、回転軸31に磁石ホルダ7(従動部材)を固定するにあたって、磁石ホルダ7の筒状胴部71を貫通する貫通穴74に止められた固定具8(セットねじ8a)を用いるとともに、固定具8の径方向の他方側端部82を筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出させる。その際、固定具8の凹部89の底部890が筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する状態とする。このため、固定具8が止められている個所では、固定具8の凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分の容積に相当する分、軽くなっている一方、固定具8の他方側端部82が筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している分、重くなっている。従って、凹部89が形成された固定具8を用いて磁石ホルダ7を回転軸31に固定した場合でも、固定具8の凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分と、固定具8の他方側端部82が筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している部分とにおいて、重量の相殺が行われる結果、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。それ故、回転軸31が回転した際の振動等の発生を抑制することができる。
【0037】
また、固定具8は、外周面にねじ溝80が形成されたセットねじ8aであるため、ねじ軸より拡径したねじ頭を有していない。従って、ねじ頭が回転軸31の周方向で重量バランスを崩すことを抑制することができる。
【0038】
また、セットねじ8aにおいて凹部89が六角穴89aである場合、内容積が大きいため、周方向での重量バランスが崩れやすいが、本形態によれば、凹部89が六角穴89aであっても、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。
【0039】
また、固定具8および貫通穴74が周方向において等角度間隔からずれた2個所に設けられているが、このような場合でも、本形態によれば、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。また、固定具8および貫通穴74が周方向の2個所に設けられているため、固定具8および貫通穴74を3個所以上に設けた場合よりも、固定具8の一方側端部81が回転軸31から離間した状態になりにくい。
【0040】
また、磁石ホルダ7および固定具8(セットねじ8a)はいずれも、鉄系金属からなる
ため、固定具8の比重は、磁石ホルダ7(従動部材)の比重と略等しい。このため、固定具8の凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分の容積と、固定具8の他方側端部82が筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している部分の寸法とを調整することにより、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを容易に抑制することができる。
【0041】
ここで、セットねじ8aにおいて筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している他方側端部82の体積と、凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分の容積とを略等しくすることが好ましく、かかる構成によれば、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを最も効果的に抑制することができる。
【0042】
なお、セットねじ8aの比重が磁石ホルダ7の比重より軽い場合、セットねじ8aにおいて筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している他方側端部82の体積を、凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分の容積より大にすれば、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。
【0043】
これに対して、セットねじ8aの比重が磁石ホルダ7の比重より重い場合、セットねじ8aにおいて筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している他方側端部82の体積を、凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分の容積より小にすれば、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを抑制することができる。この場合、セットねじ8aが筒状胴部71の外周面710より突出している寸法を短くすることができる。
【0044】
[他の実施の形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、固定具8がセットねじ8aであったが、ねじ頭を有するねじ部材の場合に、固定具8の凹部89において筒状胴部71の外周面710より径方向の内側に位置する部分の容積と、固定具8の他方側端部82(ねじ頭)が筒状胴部71の外周面710より径方向の外側に突出している部分の寸法とを調整することにより、回転軸31の周方向で重量バランスが崩れることを抑制してもよい。
【0045】
上記実施の形態では、固定具8および貫通穴74が周方向において2個所に設けられていたが、固定具8および貫通穴74が周方向において1個所、あるいは3個所以上に設けられている場合に本発明を適用してもよい。
【0046】
上記実施の形態では、回転軸31において磁石ホルダ7が固定されている個所の断面が円形で、軸穴70も円形であったが、回転軸31において磁石ホルダ7が固定されている個所および軸穴70が断面D字形状である等、回転軸31および軸穴70が断面平坦面と円弧面とによって構成されている場合に本発明を適用してもよい。
【0047】
上記実施の形態では、従動部材が磁石ホルダ7であったが、光学式ロータリエンコーダの回転板を回転軸31に固定するためのホルダを従動部材として用いた場合に本発明を適用してもよい。また、従動部材が、モータにおいてブレーキ機構を構成する摩擦板等を固定するための部材である場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1・・モータ、5・・ロータリエンコーダ、7・・磁石ホルダ(従動部材)、8・・固定
具、8a・・セットねじ、10・・モータハウジング、11・・筒状ケース、12・・第1軸受ホルダ、13・・第2軸受ホルダ、20・・ステータ、30・・ロータ、31・・回転軸、51・・永久磁石、52・・感磁素子、70・・軸穴、71・・筒状胴部、72・・フランジ部、73・・環状の凸部、74・・貫通穴、80・・ねじ溝、81・・固定具の一方側端部、82・・固定具の他方側端部、89・・凹部、89a・・六角穴、89b・・マイナス溝、89c・・プラス溝、710・・筒状胴部の外周面、820・・固定具の他方側の端面、890・・凹部の底部、L・・モータ軸線、L1・・反出力側、L2・・出力側
図1
図2
図3
図4