特許第6469417号(P6469417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469417
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】電気透過的カテーテルシース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20190204BHJP
   A61M 25/095 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   A61M25/00 500
   A61M25/095
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-224010(P2014-224010)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2015-89517(P2015-89517A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】14/071,711
(32)【優先日】2013年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヴ・リキテンスタイン
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0172712(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0092806(US,A1)
【文献】 米国特許第05871530(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0029420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/18
A61B 34/20−34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
細長い管を作製することであって、前記細長い管が、内側ルーメンを包囲する外壁を備え、前記細長い管に沿って前記外壁を貫通する複数の穴を有する、細長い管を作製することと、
前記内側ルーメンと前記外壁の外面との間の電流の伝導を可能にするように、前記複数の穴に複数の導電性要素を挿入することと、を含み、
前記細長い管を作製することと、前記複数の導電性要素を挿入することとが、前記細長い管を作製するために使用される絶縁材に金属性物体を混合することと、次いで、押出し成形によって前記細長い管を形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、カテーテルシースに関し、具体的には、シース内のカテーテルの場所追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲の医療処置は、センサ、カテーテル、移植片、及び他の医療用装置を人体に挿入することと、それらを体内の特定の位置へ誘導することとに関係する。カテーテルが体内に挿入されるとき、カテーテルの先端を医療処置が実施される標的位置へ誘導するために使用される一方法は、インピーダンスに基づく位置検知である。一部の処置では、カテーテルは、シースのルーメン内部で人体内を誘導される。
【0003】
米国特許第7,869,865号は、その開示を参照により本明細書に組み込み、被験者の体内へ少なくとも1つの電極を備えるプローブを挿入することと、少なくとも1つの電極と身体の表面上の複数の場所との間で身体に電流を通過させることと、を含む、位置検知のための方法を記載する。このプローブの位置座標を判定するために、複数の場所を通過する電流のそれぞれの特性が測定される。
【0004】
米国特許第6,582,536号は、その開示を参照により本明細書に組み込み、遠位端と、近位端と、外側ジャケットと、プルワイヤと、中央ルーメンとを有する操舵可能なカテーテルを製造するための方法を記載する。この中央ルーメンは、プルワイヤを包むために楕円形状かつ不均一の厚さを有する外側ジャケットを使用することによって、有用な内径を損なう突出のない円形形状に維持される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、細長い管を含むシースを提供し、細長い管が、内側ルーメンを包囲する外壁を有し、管に沿って外壁を貫通する複数の穴を有する。複数の導電性要素は、内側ルーメンと外壁の外面との間の電流の導電を可能にするように、それぞれの穴に挿入される。
【0006】
いくつかの実施形態において、導電性要素は、複数の穴を充填する金属性ビーズを含む。他の実施形態において、導電性要素は、複数の穴を充填する金属性リベットを含む。また他の実施形態において、導電性要素は、複数の穴に通される金属性ばねを含む。いくつかの実施形態において、細長い管は、編組を形成する金属性フィラメントを含み、シースは、編組の金属性フィラメントから要素を絶縁する絶縁材を含む。
【0007】
また、本発明の実施形態による、内側ルーメンを包囲する外壁を含み、管に沿って外壁を貫通する複数の穴を有する、細長い管を作製することを含む方法も提供される。複数の導電性要素は、内側ルーメンと外壁の外面との間で電流の導電を可能にするように、それぞれの穴に挿入される。
【0008】
他の実施形態において、管を作製することと、導電性要素を挿入することとは、管を作製するために使用される絶縁材に金属性物体を混合することと、次いで押出し成形によって管を成形することと、を含む。また他の実施形態において、管を作製することは、複数の開口部を有する鋳型に絶縁材を引き込むことを含み、導電性要素を挿入することは、開口部を通じて金属を注入することを含む。
【0009】
また、本発明の実施形態による、複数の身体表面電極と、シースと、プローブと、プロセッサとを含む装置も提供される。身体表面電極は、生体の表面上のそれぞれの場所に固定される。シースは、生体内に挿入され、細長い管を含む。細長い管は、内側ルーメンを包囲する外壁を含み、管に沿って外壁を貫通する複数の穴を有する。複数の導電性要素は、内側ルーメンと外壁の外面との間で電流の導電を可能にするように、それぞれの穴に挿入される。プローブは、少なくとも1つのプローブ電極を含み、シースの内側ルーメンを通じて誘導される。プロセッサは、少なくとも1つのプローブ電極と身体表面電極との間の要素を介して流れる電流を測定し、測定された電流に基づいて、少なくとも1つのプローブ電極の位置を推定するように構成される。
【0010】
また、本発明の実施形態による、生体の表面上のそれぞれの場所に複数の身体表面電極を固定することを含む方法も提供される。生体内に挿入されるシースは、細長い管を含む。細長い管は、内側ルーメンを包囲する外壁を含み、管に沿って外壁を貫通する複数の穴を有する。複数の導電性要素は、内側ルーメンと外壁の外面との間で電流の導電を可能にするように、それぞれの穴に挿入される。少なくとも1つのプローブ電極を含むプローブは、シースの内側ルーメンを通じて誘導される。要素を介して流れる電流は、少なくとも1つの電極と身体表面電極との間で測定される。少なくとも1つのプローブ電極の位置は、測定された電流に基づいて推定される。
【0011】
本発明は、以下の詳細な実施形態の説明を、図面と併せ読むことによって、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による、位置検知システムの概略描写図である。
図2】本発明の実施形態による、金属が充填された穴を有するシースの概略描写図である。
図3】本発明の実施形態による、金属性リベットで充填された穴を有するシースの概略描写図である。
図4】本発明の実施形態による、金属性ばねで充填された穴を有するシースの概略描写図である。
図5】本発明の実施形態による、電気透過的シース内のカテーテルの位置を検知するための方法を模式的に図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
カテーテル等の医療用プローブは、多種多様な治療及び診断処置で使用される。典型的には、カテーテルは、患者に経皮的に挿入され、手術者は、カテーテルを処置が実施される体腔内の標的領域へ誘導する。いくつかの処置において、手術者はまず、シースを患者体内へ挿入し、シースの遠位端を標的領域へ誘導する。手術者は、次いで、カテーテルをシースのルーメン内へ挿入し、カテーテルの遠位先端をシースを通じて標的領域へ誘導する。
【0014】
位置検知システムは、手術者が、患者の体腔内、例えば、心室内でカテーテルを操作する際に、カテーテルの遠位先端の位置を検出するために使用されてもよい。例えば、インピーダンス系位置検知システムでは、システムは、カテーテル遠位先端に近接して配置される少なくとも1つの電極と、患者身体の表面上のそれぞれの場所に固定される複数の身体表面電極との間に複数の電流を生成してから、次いで、測定する。システムは、次いで、測定された電流に基づいて複数のインピーダンスを算定し、算定されたインピーダンスを使用して、カテーテルの遠位先端の位置を検出する。
【0015】
しかしながら、カテーテルが、電気絶縁シースを介して誘導される場合、カテーテルの遠位先端の位置は、先端がシース内部にある間は、インピーダンスに基づく場所検知を使用して正確に測定することができない。絶縁シースがカテーテルと身体表面電極との間で電流が流れることを防止するので、システムは、カテーテルの遠位先端が標的領域に接近したシースから出現するまで、絶縁シース内のカテーテルの位置に対して本質的に「出口がない状態」である。
【0016】
本明細書に記載する本発明の実施形態は、カテーテルがシースのルーメン内にある間であっても、インピーダンス系位置検知システムがカテーテルの遠位先端の位置を検出することを可能にするシース及び関連方法を提供する。
【0017】
精度が高いインピーダンスに基づく位置測定のために好適なシースを作製するために、複数の離散的導電性要素が、シースの長さに沿って、無作為又は既定の位置のいずれかに配置される。導電性要素は、シース壁を通じてシースの内側ルーメン内まで通過し、このため、電流が、カテーテルの遠位先端にある電極から、身体表面電極へ局部的に外向きに流れることを可能にする。
【0018】
典型的には、導電性要素は小さく、相互に隔離される。このため、電流はシースに沿って流れることができず、電流は、要素を介して、シース壁を通じて局部的にシース壁を横断することだけが可能である。隣接した要素は、電流が、シース内のカテーテル先端の位置に近接して局部的に壁を横断することを可能にするように、相互に十分接近する。この結果、導電性要素を介してカテーテル電極と身体表面電極との間で測定されるインピーダンス又は電流は、カテーテル先端位置の指標であり続ける。
【0019】
いくつかの実施形態において、シースは、細長い電気絶縁管を備える。この絶縁管の長さに沿って複数の穴が形成される。この穴は、管の外面とシースの内側ルーメンとの間で、外壁を貫通する。複数の離散的導電性要素は、次いで、シース壁を通じる離散的局部導電経路を実現するために、それぞれの穴へ挿入される。この様式において、シースは、手術者がシースのルーメンを通じてカテーテルを押すと、インピーダンス系位置検知システムが、リアルタイムでシース内のカテーテルの遠位先端の位置を特定することを可能にする。
【0020】
導電性(典型的には金属性)要素は、多様な方式で実装されてもよい。いくつかの実施形態において、金属性ビーズがポリマー等の絶縁材と混合され、押出し成形によって型を通じて押出されて、電気透過的シースを成形する。他の実施形態において、ポリマー材が開口部を備える管状鋳型に引き込まれ、金属が開口部を通じてポリマー内部へ注入されて、金属性要素の配列を形成する。
【0021】
また他の実施形態において、穴が管に穿設され、シースの長さに沿って金属性インサートを形成するように、金属性リベットが穴に挿入される。他の実施形態において、シースの長さに沿って金属性インサートを形成するように、ばねが管に穿設された穴に通される。
【0022】
いくつかの実施形態において、シースは、金属性編組、例えば、織り合わされた金属性フィラメントの編組を備える内部層を備える。このような実施形態において、金属性編組まで金属性要素を横断する電流の電気的短絡を防止するように、絶縁材が導電性要素(例えば、金属性リベット又はばね)と編組との間に配置されてもよい。
【0023】
開示されるシースを使用する場合、手術者は、遠位先端の位置がシース内部でリアルタイムで追跡されるので、シースを通じて標的領域へカテーテルを誘導し、操作することができる。この結果、本明細書に教示される方法を使用して形成される電気透過的シースは、医療処置に対する手術者の制御を大幅に向上する。
【0024】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、位置検知システム20の概略描写図である。システム20は、典型的にカテーテルである、医療用プローブ22の位置を決定する際に使用される。システム20は、制御コンソール24を備える。カテーテル22は、好適なシースを通じて、担架29上に横たわる、患者の生体28内の心室26等、内体腔に経皮的に挿入される。
【0025】
医療処置の手術者30は、患者28の脈管系内のカテーテル22を手術者30の手35で操作し、カテーテル22の遠位先端40を心室26内の標的領域へ誘導して、医療処置を実施する。手術者30は、ディスプレイ46上で医療処置を監視しながら心臓の画像44を視認することができる。
【0026】
制御コンソール24は、遠位先端40に近接するカテーテル22の本体上に配置される少なくとも1つの電極へ信号を中継するためのプローブインターフェース/制御装置50を備える。通常、信号は、カテーテルの内側ルーメン内に設置される複数のワイヤ(明瞭化のために図1に図示せず)を通じて、遠位先端40にある少なくとも1つの電極とプローブインターフェース/制御装置50との間で中継される。カテーテル22はまた、カテーテルの長さに沿って、任意の好適な位置に設置される追加の電極及び/又はセンサを備えてもよい。
【0027】
加えて、複数の身体表面電極42は、図1に示されるように、患者の身体上の好適な場所に固定される。身体表面電極42は、ケーブルによって、制御コンソール24の身体表面電極インターフェース/制御装置60に接続される。
【0028】
図1に示される例示的実施形態の場合、位置検知システム20は、リアルタイムのインピーダンスに基づく場所追跡技法を使用して、患者28の体内のカテーテル20の遠位先端に近接して配置される少なくとも1つの電極の位置を特定する。システム20は、カテーテル22の遠位先端40に近接して配置される少なくとも1つの電極と、患者28の身体の表面に固定された複数の身体電極42との間に複数の電流を駆動することによって、場所追跡を実施する。
【0029】
制御装置50及び60は、複数の電流を生成し、測定された電流をプロセッサ70に中継する。プロセッサ70は、測定された電流に基づいて、カテーテル遠位先端にある少なくとも1つの電極と、複数の身体表面電極との間の複数のそれぞれのインピーダンスを算定する。プロセッサ70は、次いで、算定されたインピーダンスに基づいて、患者の体内のプローブ22の場所を算定する。プロセッサ70は、手術者30に対して、カテーテルの位置をディスプレイ46上に出力し、典型的には、心臓26の画像44内に視覚的にマッピングされる。
【0030】
プローブ22は、遠位先端に近接して配置される1つ以上のプローブ電極を有するカテーテルを備えてもよい。システム20は、次いで、複数のプローブ電極のそれぞれと、患者の身体上のそれぞれの場所の複数の身体表面電極のそれぞれとの間の複数のインピーダンスを算定する。
【0031】
以下に詳細を説明するように、カテーテル22を誘導するために使用されるシースは、電流がシース壁を局部的に通過することを可能にする、複数の導電性要素(例えば、金属性インサート)を備える。これらの要素は、シースの管が電気を絶縁している場合であっても、システム20が、インピーダンス測定値を使用して、カテーテル遠位先端の位置を測定することを可能にする。本文脈において、「金属性」という用語は、電流の導電を促進するように、金属を備えることを意味する。金属性要素は、例えば、全体を金属で作製、金属被膜若しくはめっき、又は金属で充填されていてもよい。
【0032】
図1に示される位置検知システムは、純粋に概念を明瞭にするために図示され、本発明の実施形態を制限することを目的としない。コンソール24は、カテーテル22の遠位先端40に近接して配置される少なくとも1つの電極と、複数の身体電極42との間で信号を中継するように構成される。コンソール24はまた、心臓26内のカテーテル22の遠位先端40の位置を追跡するように、システム20の他の構成要素も制御する。身体表面電極42は、本明細書に記載のように、患者の身体内部のカテーテルの遠位先端に近接する少なくとも1つの電極の検出を最適化するように、患者の身体上の任意の好適な位置に設置されてもよい。位置追跡に加えて、制御コンソール24はまた、RFアブレーション等の治療処置を実施するように構成されてもよい。
【0033】
任意の好適なパラメータは、システム20によって測定及び/又は処理され、ディスプレイ46に出力されてもよい。例えば、心臓26の画像44と、心臓空洞内の複数のポイントに接触するカテーテル22の遠位先端40に近接する複数の電極によって測定される複数の局所心電信号のマッピング。マッピングは、画面46に出力されてもよい。
【0034】
プロセッサ70は、典型的に、プローブ22からの信号を伝送並びに受信するため、かつ本明細書に記載するシステム20の他の構成要素を制御するために、好適なフロントエンド及びインターフェース回路を有する汎用コンピュータを備える。プロセッサ70は、システムによって使用される機能を実行するためにソフトウェアにプログラムされてもよく、プロセッサは、このソフトウェアのためのデータをメモリに記憶してもよい。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードするか、又は光学的、磁気的又は電子的記録媒体などの、非一過性の実体のある媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ70の機能の一部又は全ては、専用の又はプログラム可能な、デジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0035】
カテーテル位置検知システムのための電気透過的シース
多くのカテーテル系医療処置では、シースが最初に、標的領域に到達するまで、患者28の脈管系に挿入される。カテーテル自体は、次いで、シースを通じて誘導される。典型的に、シースは、電気を絶縁する、ポリプロピレン、ポリエチレン、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、及びETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)等のポリマー材から形成される。別の方法としては、しかしながら、シースは、任意の他の好適な材料から加工されてもよい。
【0036】
電気絶縁シースを使用すると、カテーテル電極と身体表面電極との間の電流は妨害される。この結果、カテーテルの遠位先端の位置は、シース内にある間、システム20によって正確に測定することができない。このような場合、システム20は、遠位先端がシースから出現するときにのみ、カテーテル遠位先端の位置を検出し、視覚化することができる。この妨害は、カテーテルの誘導を遅延し、困難にする。
【0037】
本明細書に記載する実施形態では、シースの長さに沿って、無作為又は既定の場所のいずれかに、シース内に穴が形成される。導電性要素、例えば、金属性インサートが、穴の中に挿入される。金属性インサートを設置すると、カテーテルがシース内を移動する際に、カテーテル先端電極と身体表面電極との間で電流が流れることが可能であり、このため、システム20のインピーダンスに基づく位置測定を促進する。
【0038】
この結果、システム20がシースの位置を算定し、リアルタイムで手術者に表示するので、手術者30は、カテーテルをシースのルーメンを通じて標的領域の位置内へこの時点で迅速にナビゲートすることができるようになる。この特徴は、医療処置の所要時間を大幅に削減する。
【0039】
電気透過的シースを形成するための方法
本明細書に提示される実施形態では、電気透過的シース、及び特に、導電性要素を形成するための方法がいくつか存在する。導電性要素のいくつかの例示的実装を以下に記載する。しかしながら、一般的に、これらの要素は、任意の他の好適な方式で実装することができる。
【0040】
第1の実施形態では、金属性ビーズがポリマー材と混合され、シースが押出し成形によって形成される。第2の実施形態では、ポリマーは、鋳型の長さに沿って開口部を有する鋳型に引き込まれる。金属がポリマーの開口部を通じて注入されて、シース内に金属性要素を形成する。第3の実施形態では、シースを形成する複層のポリマー系管に穴が穿設され、金属性リベットが穴に挿入されて、シース内に金属性要素を形成する。第4の実施形態では、シースを形成する複層のポリマー系管に穴が穿設され、シース内に金属性要素を形成するように、ばねコイルが管に形成された穴を通じて挿入される。
【0041】
図2は、本発明の実施形態による、金属が充填された穴110を有するシース100の概略描写図である。複数の導電性穴110は、典型的には金属が充填される。穴110は、シース100の遠位先端125に少なくとも1つの電極を備えるカテーテル120の断面図とともに、インセット130に示されるように、隣接する穴の間に間隔Sを有して、シース100の長さに沿って配置される。シース100は、金属が充填された穴が、シース100の外壁を通じて内側ルーメンまで延在するように、ポリマー等の層110を備える。
【0042】
遠位先端上に配置される電極125がシース100を通じて移動すると、カテーテル電極125を通じてシステム20によって駆動される電流は、遠位先端に典型的には最接近の複数の金属穴を通じて、そして患者28の身体を通じて、複数の身体表面電極42まで導電されるので、システム20が、電流に基づいて、シース100内のカテーテル遠位先端の位置を検出することができる。複数の金属が充填された穴のそれぞれは、相互に電気的に絶縁される。
【0043】
金属が充填された穴は典型的には、直径が1mmで、隣接する穴の間の間隔は0.5mmであるが、任意の好適な形状であってもよい。別の方法としては、しかしながら、任意の他の好適な穴の直径及び間隔を使用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、金属が充填された穴110は、シース100の長さに沿って、固定間隔Sを有する配列に配置される。他の実施形態において、金属が充填された穴110は、シースの長さに沿って、無作為間隔Sで、任意又は無作為の様式に配置される。隣接する金属が充填された穴の間の間隔Sは、カテーテルの長さに沿って、いずれかの任意の方向に配向することができる。間隔パラメータSは、本明細書では概念を明瞭にするために使用され、本発明の実施形態を限定することを目的とするものではない。
【0045】
無作為様式で配置される複数の金属装填穴110を有する実施形態は、図2に示される。シース105は、金属性ビーズ、又は任意の好適な金属性物体をポリマー材に混合することと、インセット130に示される無作為の金属充填穴110パターンの層105を有するシース100を構築するように、鋳型を通じて金属性ビーズ複合物を含むポリマーをプレスすることによって押出し成形を使用することとによって、形成することができる。
【0046】
同様に、良好に画定された配列に配置される複数の金属充填穴110を含む実施形態は、所望の良好に画定された配列パターンを有する鋳型の長さに沿って配置される、鋳型の開口部を含む管状鋳型にポリマー材を引き込むことによって、形成することができる。ポリマーが鋳型に引き込まれた後、所望の良好に画定された配列パターンに複数の金属充填穴110を形成するように、開口部を通じて金属がポリマー内に注入される。
【0047】
本明細書に記載する実施形態は、主に、カテーテル22の遠位端に、又は遠位端に近接して装着される電極を言及する。しかしながら、別の方法としては、開示される技法は、カテーテルに沿って任意の所望の位置に装着される電極の位置を測定するために使用することができる。いくつかの実施形態において、電極は、シース内部に必ず所在するカテーテルに沿った位置に装着されてもよい。開示される技法は、このような電極の位置を特定するために特に有用である。
【0048】
図3は、本発明の実施形態による、金属性リベット240が充填された穴を有するシース200の概略描写図である。複層のシース200は、外側ジャケット層210と、金属性編組フィラメント217を含む金属性編組層215と、シース200のルーメンを補強する内側ライナー層220とを備える。Teleflex Medical OEMによる複層のシースの例は、「Fluoropolymer−lined,Braid−Reinforced Catheter Shaft Design」及び「Sterilization」という表題の2つの仕様書に見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
穴は、シース200を通じて、外側ジャケットから、シースルーメン内へ、シースの長さに沿って既定の場所に穿設される。金属性リベット240は、穿設された穴に挿入される。金属性リベットは、シース200内のカテーテル230の位置を検出するために、電流を身体表面電極42へ導電するために必要な金属性要素である。穴は、穿穴等、任意の好適な方法によって形成することができ、金属性リベットが穴に固定される。
【0050】
ただし、穴が形成され、金属性リベット240が挿入された後、金属性フィラメント217は、金属性編組層215内のシースの長さにわたって、金属性リベットを金属性編組に電気的に短絡させる可能性があり、カテーテルの遠位端の位置検出精度を低下させる。位置の精度は、カテーテル230の遠位先端に近接するカテーテル電極235の位置を検出するために、離散的電流導電ポイントを使用することによって維持される。これを回避するために、任意の好適な絶縁材245が、金属性編組層の金属性フィラメントから金属性リベットを電気的に絶縁するように、金属性リベットのシャフト、又は穿設された穴の側壁に適用される。
【0051】
図4は、本発明の実施形態による、金属性ばね310が充填された穴を含むシース300の概略描写図である。複層のシース300は、外側ジャケット層302と、金属性編組フィラメント307を含む金属性編組層304と、シース300の内側ルーメン308を補強する内側ライナー層306とを備える。
【0052】
穴は、シース300の外側ジャケットから、シースルーメン内へ、シースの長さに沿って既定の場所に穿設される。金属性ばね310は、次いで、穿設された穴に通される。金属性ばねは、シース300内のカテーテル330の位置を検出するために、電流を身体表面電極42へ導電する。穴は、任意の好適な方法によって形成することができる。典型的には、金属性ばねは、ばねコイルの一部分が外側ジャケット302の周囲に巻かれ、コイルの一部分が内側ルーメン308内の内側ライナー層306周囲に巻かれたままであるように、穴に通される。
【0053】
図3を参照して上述したように、穴が形成され、金属性ばね310が挿入された後、金属性フィラメント307は、金属性編組層304内の金属性リベットを合わせて電気的に短絡させる可能性があり、カテーテル330の遠位先端にあるカテーテル電極335の位置を正確に検出するための離散的電流導電ポイントを維持するには有害である。これを回避するために、任意の好適な絶縁材317が、金属性編組層の金属性フィラメントから金属性ばねを電気的に絶縁するように、金属性ばねのシャフト、又は穿設された穴の側壁に適用される。
【0054】
図2〜4に示される実施形態において、導電性要素は、導電性材料、典型的には、金属、金属性リベット、又は金属性ばねが充填され、シース内に形成される複数の穴を備える。図2〜4に示される実施形態は、純粋に概念を明瞭にするためのものであり、本発明の実施形態を制限することを目的としない。シース外壁とシース内側ルーメンまでの間でシースの長さに沿って既定の位置に形成された穴を導電性要素で充填する任意の好適な方法が使用されてもよく、シースに挿入されている間、カテーテルの遠位先端に近接する少なくとも1つの電極から、身体表面プローブまでの電気信号(例えば、電流及び/又は電圧)の導電を可能にする。
【0055】
電気透過的シースのルーメン内のカテーテル位置を検知するための方法
図5は、本発明の実施形態による、電気透過的シース内のカテーテルの位置を検知するための方法を模式的に図示するフローチャートである。定着工程400において、複数の身体表面プローブが患者の身体上のそれぞれの場所に定着される。
【0056】
挿入工程410において、シースの長さに沿って分散する複数の導電性要素(例えば、金属性リベット又はばね)を有するシースが患者の体内に挿入される。第2の挿入工程420において、遠位先端に電極を備えるカテーテルがシースのルーメン内に挿入される。測定工程430において、カテーテル電極と複数の身体表面電極との間で導電性要素を通じて導電される電流が測定される。算定工程440において、カテーテル電極と複数の身体表面電極との間の複数のインピーダンスが算定される。使用工程450において、複数の算定されたインピーダンスが、シースのルーメン内のカテーテル遠位先端の位置を特定するために使用される。出力工程460において、シースのルーメン内のカテーテル遠位先端の位置が手術者に出力される。
【0057】
本明細書に記載する実施形態は主に、絶縁シース内のカテーテルの位置検知に対処するが、本明細書に記載する方法及びシステムは、任意の好適な体内処置において体内プローブの場所測定のために使用することもできる。
【0058】
したがって、上述の実施形態は一例として引用したものであり、また本発明は上記に具体的に図示及び記載したものに限定されないことは認識されるであろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことによって当業者には想到されるであろう、先行技術において開示されていない変形例及び改変例も含まれるものである。参照により本特許出願に組み込まれる文書は、組み込まれた文書内の用語が、本明細書で明示的又は暗黙的になされる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが検討されるべきである。
【0059】
〔実施の態様〕
(1) シースであって、
細長い管であって、内側ルーメンを包囲する外壁を備え、前記管に沿って前記外壁を貫通する複数の穴を有する、細長い管と、
複数の導電性要素であって、前記内側ルーメンと前記外壁の外面との間の電流の伝導を可能にするように、前記それぞれの穴に挿入される、複数の導電性要素と、を備える、シース。
(2) 前記導電性要素が、前記複数の穴を充填する金属性ビーズを備える、実施態様1に記載のシース。
(3) 前記導電性要素が、前記複数の穴を充填する金属性リベットを備える、実施態様1に記載のシース。
(4) 前記導電性要素が、前記複数の穴に通される金属性ばねを備える、実施態様1に記載のシース。
(5) 前記細長い管が、編組を形成する金属性フィラメントを備え、前記編組の前記金属性フィラメントから前記要素を絶縁する絶縁材を更に備える、実施態様1に記載のシース。
【0060】
(6) 方法であって、
細長い管を作製することであって、前記細長い管が、内側ルーメンを包囲する外壁を備え、前記管に沿って前記外壁を貫通する複数の穴を有する、細長い管を作製することと、
前記内側ルーメンと前記外壁の外面との間の電流の伝導を可能にするように、前記それぞれの穴に複数の導電性要素を挿入することと、を含む、方法。
(7) 前記導電性要素を挿入することが、前記それぞれの穴に金属性ビーズを挿入することを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記管を作製することと、前記導電性要素を挿入することとが、前記管を作製するために使用される絶縁材に金属性物体を混合することと、次いで、押出し成形によって前記管を形成することと、を含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記管を作製することが、複数の開口部を有する鋳型にわたって絶縁材を引き込むことを含み、前記導電性要素を挿入することが、前記開口部を通じて金属を注入することを含む、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記導電性要素を挿入することが、前記それぞれの穴に金属性リベットを挿入することを含む、実施態様6に記載の方法。
【0061】
(11) 前記導電性要素を挿入することが、前記それぞれの穴に金属性ばねを通すことを含む、実施態様6に記載の方法。
(12) 前記管を作製することが、前記管内に金属性フィラメントの編組を形成することを含み、前記編組の前記金属性フィラメントから前記要素を絶縁する絶縁材を適用することを含む、実施態様6に記載の方法。
(13) 装置であって、
生体の表面上のそれぞれの場所に固定される、複数の身体表面電極と、
前記生体内に挿入される、シースであって、
細長い管であって、内側ルーメンを包囲する外壁を備え、前記管に沿って前記外壁を貫通する複数の穴を有する、細長い管と、
前記内側ルーメンと前記外壁の外面との間の電流の伝導を可能にするように、前記それぞれの穴に挿入される、複数の導電性要素と、を備える、シースと、
少なくとも1つのプローブ電極を備え、前記シースの前記内側ルーメンを通じて導かれる、プローブと、
前記少なくとも1つのプローブ電極と前記身体表面電極との間で前記要素を介して流れる電流を測定し、前記測定された電流に基づいて、前記少なくとも1つのプローブ電極の位置を推定するように構成される、プロセッサと、を備える、装置。
(14) 前記導電性要素が、前記複数の穴を充填する金属性ビーズを備える、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記導電性要素が、前記複数の穴を充填する金属性リベットを備える、実施態様13に記載の装置。
【0062】
(16) 前記導電性要素が、前記複数の穴に通される金属性ばねを備える、実施態様13に記載の装置。
(17) 前記細長い管が、編組を形成する金属性フィラメントを備え、前記編組の前記金属性フィラメントから前記要素を絶縁する絶縁材を適用することを更に含む、実施態様13に記載の装置。
(18) 方法であって、
生体の表面上のそれぞれの場所に複数の身体表面電極を固定することと、
前記生体内にシースを挿入することであって、前記シースが、
細長い管であって、内側ルーメンを包囲する外壁を備え、前記管に沿って前記外壁を貫通する複数の穴を有する、細長い管と、
前記内側ルーメンと前記外壁の外面との間の電流の伝導を可能にするように、前記それぞれの穴に挿入される、複数の導電性要素と、を備える、シースを挿入することと、
前記シースの前記内側ルーメンを通じて、少なくとも1つのプローブ電極を備えるプローブを誘導することと、
前記少なくとも1つのプローブ電極と前記身体表面電極との間の前記要素を介して流れる前記電流を測定することと、
前記測定された電流に基づいて、前記少なくとも1つのプローブ電極の位置を推定することと、を含む、方法。
(19) 前記金属性要素が、
前記複数の穴を充填する金属性ビーズ、
前記複数の穴を充填する金属性リベット、及び
前記複数の穴に通される金属性ばね、のうちの1つを備える、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記シースの前記細長い管が、編組を形成する金属性フィラメントを備え、前記シースが、前記編組の前記金属性フィラメントから前記要素を絶縁する絶縁材を更に備える、実施態様18に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5