(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469426
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20190204BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20190204BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20190204BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20190204BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20190204BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20190204BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190204BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20190204BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/63
A61K8/39
A61K8/31
A61K8/06
A61K8/92
A61Q19/00
A61Q1/02
A61Q1/14
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-243652(P2014-243652)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-108243(P2016-108243A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 仁志
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3164452(JP,U)
【文献】
国際公開第2014/084670(WO,A1)
【文献】
特開2011−132203(JP,A)
【文献】
特開平09−124432(JP,A)
【文献】
サキナ クリアエマルジョン,Cosmetic-Info.jp[ONLINE],2009年,URL,https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=28996 [retrieved on 2018-09-05]
【文献】
Facial Butter, ID 2339365,DATABASE GNPD [ONLINE],MINTEL,2014年 3月
【文献】
一丸ファルコス株式会社,メドウフォーム油誘導体の特性,フレグランスジャーナル 2009年6月号,2009年,第37巻,第68−69頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F)
(A)セラミド2.0重量%以下
(B)メドウフォームエストリド0.5〜3.0重量%
(C)コレステロール及び/又はフィトステロール1.5〜4重量%
(D)非イオン性界面活性剤0.5〜3重量%
(E)油剤(メドウフォームエストリド、コレステロール及びフィトステロールを除く)
(F)水
を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料であり、且つ成分(A)の含有量/成分(B)の含有量が0.5〜2であり、且つ成分(E)油剤の50重量%以上が25℃で液状の炭化水素油である油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
{成分(A)の含有量+成分(B)の含有量}/成分(C)の含有量が0.5〜1.5である請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(A)がセラミド2又はセラミド3である請求項1又は2記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
前記セラミドが光学活性体である請求項1〜3のいずれか一項記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドを結晶化させることなく、化粧料中に安定に含有することが可能であり、べたつきがなく使用性に優れる乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは皮膚の角層の細胞間脂質に含有され、皮膚バリア能に寄与しているといわれており、高機能性保湿剤として注目されている。しかしながら、セラミドは一般に化粧品基材への溶解性が悪いため、化粧料に多量に含有することが困難である。また、たとえ含有することができても、経時的に結晶が析出し、それが化粧料の使用性や外観を損ない商品価値を下げてしまうという問題があった。そこで、セラミドを化粧料などの皮膚外用剤中に含有させるために、種々の化合物を組み合わせてその溶解性を向上させたり、結晶化を抑制する試みが数多く為されている。
【0003】
例えば、セラミド、α−トコフェリルリン酸エステル、バチルアルコールを組み合わせる方法(特許文献1)や、セラミドとアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマーを組み合わせる方法(特許文献2)、セラミド、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、水添ナタネ油アルコールを組み合わせる方法(特許文献3)、セラミド、直鎖飽和高級脂肪酸または高級アルコール、液状非極性油またはシリコーン油、直鎖飽和炭化水素鎖を持つ両親媒性高分子を組み合わせる方法(特許文献4)などが知られている。これらの技術は水中油型乳化物に関する技術であるが、油中水型乳化物にセラミドを高含有する技術に関する報告は少ない。セラミドを含有する油中水型乳化物に関する技術の例としては、セラミド、リン脂質誘導体、脂肪酸デキストリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせる方法(特許文献5)が挙げられるが、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤を多量に含有しセラミドを溶解させているために、べたつきなど使用性上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−016761号公報
【特許文献2】特開2000−063234号公報
【特許文献3】特開2011−213651号公報
【特許文献4】特開2007−063145号公報
【特許文献5】特開2008−156342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、経時的にセラミドの結晶が析出せず安定で且つ、べたつきがなく使用性に優れる乳化化粧料を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、セラミド、メドウフォームエストリド、ステロール類、油剤及び水を特定の比で組み合わせることによって、上記課題を解決した乳化化粧料を得られることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(F)
(A)セラミド
(B)メドウフォームエストリド
(C)コレステロール及び/又はフィトステロール
(D)非イオン性界面活性剤
(E)油剤(メドウフォームエストリド、コレステロール及びフィトステロールを除く)
(F)水
を含有することを特徴とする乳化化粧料を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、成分(A)の含有量が2質量%以下であり、且つ成分(A)の含有量が成分(B)の含有量の0.5〜2倍であり、且つ成分(A)の含有量及び成分(B)の含有量の合計が成分(C)の含有量の0.5〜1.5倍である乳化化粧料を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、成分(D)の含有量が0.5〜3質量%である乳化化粧料を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、成分(E)の50質量%以上が25℃で液状の非極性油である乳化化粧料を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、成分(A)がセラミド2又はセラミド3である乳化化粧料を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記セラミドが光学活性体である乳化化粧料を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、偏光顕微鏡によってクロスニコル下観察するとマルターゼクロス像を示す構造を持つ乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、経時的にセラミドの結晶が析出せず安定で且つ、べたつきがなく使用性に優れる乳化化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の油中水型乳化化粧料を偏光顕微鏡にてクロスニコル下で観察した時のマルターゼクロス像。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の成分(A)であるセラミドは天然型、擬似型、及びこれらの混合物であっても良い。また、セラミドには光学活性体、ラセミ体があるが、本発明では光学活性体を用いるとより良い。本発明に使用されるセラミドとは、スフィンゴシンのアミノ基に長鎖脂肪酸がアミド結合した化合物の総称で、スフィンゴシンの構造及び長鎖脂肪酸の構造の違いによりセラミド1〜6が知られている。本発明においてはセラミド構造を有していれば何れのセラミドでも使用できるが、その中でも、セラミド2(N−アシルスフィンゴシン)又はセラミド3(N−アシルジヒドロスフィンゴシン)が好ましい。セラミド2としては、高砂香料工業よりCERAMIDE TIC−001 (N)が市販されており、これを購入して使用することができる。セラミド3は、スフィンゴシンのヒドロキシ体であるフィトスフィンゴシンのN−アシル化体であり、植物セラミドとしても知られており、米糠に含有されているスフィンゴ糖脂質であるセレブロシドを加水分解しても得ることができる。セラミド3は、コスモファーム社より市販されており、これを購入して使用することができる。
【0017】
成分(A)セラミドの含有量は、2質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下である。2質量%より大きい場合では、経時的にセラミドの結晶が析出してしまい保存安定性が不十分となる。
【0018】
本発明の成分(B)であるメドウフォームエストリドはメドウフォーム油由来の脂肪酸を脱水縮合し、エステル化した極性油剤である。メドウフォームエストリドは、一丸ファルコス株式会社より「メドウエストリド」が市販されており、これを購入して使用することができる。
【0019】
成分(B)メドウフォームエストリドの含有量は、成分(A)の含有量が成分(B)の含有量の0.5〜2倍となることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5倍となることである。0.5倍より小さい場合もしくは2倍より大きい場合では、経時的にセラミドの結晶が析出してしまい、保存安定性に問題が生じる。
【0020】
本発明の成分(C)であるコレステロールはクローダジャパン株式会社から「CHOLESTEROL NF」、日本水産株式会社から「ニッスイマリンコレステロール」が市販されており、これらを購入して使用することができる。フィトステロールはおもにβ−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロールからなる混合物であり、その比率がおよそ2:1:1であるものである。フィトステロールはタマ生化学株式会社から「フィトステロールS」が市販されており、これらを購入して使用することができる。コレステロール及びフィトステロールは、それぞれ単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0021】
成分(C)コレステロール及び/又はフィトステロールの含有量は、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の合計が成分(C)の含有量の0.5〜1.5倍となることが好ましく、0.75〜1.25倍となることがより好ましい。0.5倍より小さいとき、または1.5倍より大きいときは、調製直後の段階でセラミドの結晶が析出してしまう。
【0022】
本発明の成分(D)の非イオン性界面活性剤は通常化粧料に用いられる非イオン性界面活性剤であれば、動物由来、植物由来、石油由来等の起源及び、固形状、ペースト状、液状等の性状を問わず使用できる。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これらから選ばれる1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
本発明では特に、成分(D)非イオン性界面活性剤の含有量が0.5〜3質量%であるとき、保存安定性が良好であり、べたつきのない使用性の乳化化粧料となり好ましく、1〜2質量%であるとより好ましい。0.5質量%より小さい場合は結晶析出及び分離等の保存安定性上の問題が発生する。3質量%より大きい場合はべたつき等使用性上の問題が発生する。
【0024】
本発明の成分(E)の油剤としては、通常化粧料に用いられる油剤であれば、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、ペースト油、液状油等の性状、油剤の極性を問わず使用できる。非極性油の例として挙げられるのは、オゾケライト、オレフィンオリゴマー、セレシン、ポリエチレン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、ワセリン等の炭化水素油である。極性油としては油脂、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、エーテル、エステル油等が挙げられるがこれに限定するものではない。具体的な例としては、アルガニアスピノサ核油、ククイナッツ油、クランベアビシニカ種子油、小麦胚芽油、コメヌカ油、コメ胚芽油、シアバター、月見草油、ハイオレイックヒマワリ油、ピスタチオ種子油、マカデミアナッツ油、マンゴーバター、メドウフォーム油、卵黄油、ローズヒップ油、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイズ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、パーム核油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ヤシ油、エミュー油、硬化油、馬油、ミンク油、卵黄脂肪油、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、セラック、ラノリン、ホホバ脂、ミツロウ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、オキシステアリン酸、ウンデセン酸、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール。ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、べへニルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル、ジイソノニルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、リシノール酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、リシノール酸2−オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、ネオペンタン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸2−ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、ジメチルオクタン酸2−ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2−オクチルドデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸2−オクチルドデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリ2−エチルヘキシル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリ2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリル、酢酸ポリオキシエチレン(3)モノオキシプロピレンセチルエーテル、酢酸ポリオキシエチレン(3)モノオキシプロピレンイソセチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリコーン油の例として挙げられるのは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等であるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明では特に、成分(E)の油剤のうち、50質量%以上が25℃で液状の非極性油であることが好ましく、75質量%以上が25℃で液状の非極性油であるとより好ましい。50質量%より小さいと、経時的にセラミドの結晶が析出してしまい、保存安定性に問題が生じる。
【0026】
本発明の成分(F)の水は、通常化粧料に用いられるものであれば何でも使用することができる。
【0027】
本発明の技術を利用して調製した乳化化粧料を偏光顕微鏡によってクロスニコル下で観察すると
図1のようなマルターゼクロス像が見られる。これはαゲルと呼ばれる構造体を形成しているためであると考えられる。
【0028】
さらに本発明の乳化化粧料は、発明の効果を損なわない範囲で、その使用目的に応じて各種成分、例えば、エタノール、多価アルコールなどのアルコール類、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤や両親媒性高分子などの両親媒性物質、マイカ、酸化鉄などの顔料、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒアルロン酸などの高分子類、色素、ビタミン類、紫外線吸収剤、ホルモン剤、香料、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤などの様々な成分を適宜含有することができる。
【0029】
本発明の乳化化粧料の具体的製品としては、乳液、スキンクリーム、ヘアクリーム、リキッドファンデーション、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ等の乳液状ないしクリーム状の製品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。例中の含有量はすべて質量%である。
【0031】
以下に示す実施例1〜18及び比較例1〜8に示した組成の油中水型乳化化粧料(エモリエントクリーム)を下記の製造方法にて調製し、−5℃、25℃、50℃1カ月保存品の結晶析出の有無及び使用性(べたつきのなさ)を評価した。評価結果を表中に示した。
【0032】
(製造方法)
(1)a〜cを85℃まで加熱して溶解し、溶解確認後、そこに85℃に加熱したd〜hを加えて混合する。
(2)j〜lを85℃に加熱し、a〜hに徐々に加え、撹拌する。
(3)45℃まで冷却し、iを加える。その後、35℃まで冷却する。
【0033】
(評価方法)
調製直後の状態:
各化粧料の調製直後の状態を偏光顕微鏡によってクロスニコル下で観察した。
○:マルターゼクロス像が観察され、結晶が観察されない。
△:マルターゼクロス像が観察されるが、結晶も観察される。
×:マルターゼクロス像が観察されず、結晶のみ観察される。
【0034】
保存安定性:
各化粧料を、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後、再び常温に戻し、偏光顕微鏡によってクロスニコル下で観察した。また、この観察において結晶の析出が認められた場合、外観上の問題の有無を確認した。尚、調製直後に結晶の析出が確認されたものに関しては評価しなかった。
○:結晶の析出が認められなかった。
△:わずかに結晶の析出が認められたが、外観に影響を及ぼすほどではなかった。
×:結晶の析出が認められ、外観上の問題が生じた。
‐:調製直後に結晶が確認されたので評価しなかった。
【0035】
使用性(べたつきのなさ):
化粧品専門パネラー10名が、各化粧料0.2gを手の甲に取って使用し、べたつきのなさを評価した。
○:8名以上が、べたつかず使用性が良いと評価した。
△:6、7名が、べたつかず使用性が良いと評価した。
×:5名以上が、べたついて使用性が悪いと評価した。
【0036】
【表1】
【0037】
*1:CERAMIDE TIC−001 (N):高砂香料製
*2:メドウエストリド:一丸ファルコス製
*3:フィトステロール−S:タマ生化学製
*4:HCO−5:日光ケミカルズ製
*5:CARNATION:SONNEBORN IMC製
*6:ODM:高級アルコール工業製
*7:コスモール 222:日清オイリオ製
*8:レオパールKL2:千葉製粉製
【0038】
表1の実施例1〜4に示した通り、所定量のメドウフォームエストリドを含有した場合、調製直後の状態が偏光顕微鏡観察においてマルターゼクロスが確認され結晶も確認されず、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後も結晶が析出せず保存安定性が良好で、使用性も良好であった。一方、比較例1及び2に示した通り、メドウフォームエストリドが所定量より少ない、もしくは多い場合、調製直後の状態、使用性は良好であるものの、保存安定性、特に50℃の保存安定性に問題があった。
【0039】
【表2】
【0040】
表2の実施例5〜8に示した通り、所定量のフィトステロールを含有した場合、調製直後の状態が偏光顕微鏡観察においてマルターゼクロスが確認され結晶も確認されず、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後も結晶が析出せず保存安定性が良好で、使用性も良好であった。一方、比較例3及び4に示した通り、フィトステロールが所定量より少ない、もしくは多い場合、調製直後に結晶が析出し、使用性に問題があった。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の実施例9〜12に示した通り、所定量のポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油を含有した場合、調製直後の状態が偏光顕微鏡観察においてマルターゼクロスが確認され結晶も確認されず、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後も結晶が析出せず保存安定性が良好で、使用性も良好であった。一方、比較例5及び6に示した通り、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油が所定量より少ない場合、25℃、50℃の保存安定性に問題があり、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油が所定量よりも多い場合、使用性に問題があった。
【0043】
【表4】
【0044】
表4の実施例13〜15に示した通り、油剤e〜gのうち、50質量%以上が流動パラフィンである場合、調製直後の状態が偏光顕微鏡観察においてマルターゼクロスが確認され結晶も確認されず、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後も結晶が析出せず保存安定性が良好で、使用性も良好であった。一方、比較例7に示した通り、油剤のうち、流動パラフィンが50質量%より小さい場合、調製直後に結晶が析出し、使用性に問題があった。
【0045】
【表5】
【0046】
表5の実施例16〜18に示した通り、セラミド2に対してメドウフォームエストリド、フィトステロールの含有比を固定しつつ、セラミド2の含有量を変えた場合、セラミド2の含有量が2%以下であるときは調製直後の状態が偏光顕微鏡観察においてマルターゼクロスが確認され結晶も確認されず、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後も結晶が析出せず保存安定性が良好で、使用性も良好であったが、セラミド2の含有量が2.5%である比較例8は、調製直後の状態、使用性は良好であるものの、保存安定性に問題があった。
【0047】
次に、本発明のその他の実施例を示す。いずれの場合も、実施例1〜18及び比較例1〜8に対し行った評価と同様の評価を行ったところ、調製直後の偏光顕微鏡観察においてマルターゼクロスが確認され、結晶も確認されず、−5℃、25℃、50℃の各温度で1ヶ月間保存した後も結晶が析出せず保存安定性が良好で、使用性も良好であった。
【0048】
実施例19 油中水型乳液
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド2 0.7
(b)メドウフォームエストリド 0.5
(c)コレステロール 1.5
(d)イソステアリン酸グリセリル 1.0
(e)イソステアリン酸ソルビタン 1.0
(f)イソヘキサデカン 35.0
(g)スクワラン 15.0
(h)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 10.0
(i)香料 0.04
(j)グリセリン 5.0
(k)エタノール 5.0
(l)精製水 25.26
(製造方法)
(1)a〜cを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、そこに85℃で加熱したd〜hを加えて混合する。
(2)j及びlを85℃に加熱し、a〜hに徐々に加え、撹拌する。
(3)45℃まで冷却し、i及びkを加える。その後、35℃まで冷却する。
【0049】
実施例20 乳化ファンデーション
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド3 1.0
(b)メドウフォームエストリド 1.5
(c)コレステロール 2.0
(d)フィトステロール 1.0
(e)シリル化処理無水ケイ酸 0.5
(f)ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.0
(g)イソステアリン酸ジグリセリル 0.5
(h)水添ポリイソブテン 25.0
(i)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 8.0
(j)ジメチコン 5.0
(k)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 2.0
(l)疎水化処理粉末 5.0
(m)微粒子酸化チタン 5.0
(n)グリセリン 5.0
(o)エタノール 5.0
(p)塩化ナトリウム 0.5
(q)精製水 31.0
(製造方法)
(1)a〜dを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、そこに撹拌し均一に分散させ、85℃で加熱したe〜mを加えて混合する。
(2)n〜qを85℃に加熱し、a〜mに徐々に加え、撹拌する。
その後、35℃まで冷却する。
【0050】
実施例21 乳化ファンデーション
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド2 1.5
(b)メドウフォームエストリド 1.5
(c)フィトステロール 3.5
(d)ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル 3.0
(e)流動パラフィン 19.0
(f)セチルイソオクタノエート 10.0
(g)酸化チタン 15.0
(h)カオリン 5.0
(i)タルク 3.0
(j)着色顔料 1.0
(k)香料 0.1
(l)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(m)グリセリン 4.0
(n)精製水 33.2
(製造方法)
(1)a〜cを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、撹拌し均一に分散させ、85℃で加熱したd〜jを加えて混合する。
(2)l〜nを85℃に加熱し、a〜jに徐々に加え、撹拌する。
(3)45℃まで冷却し、kを加える。その後、35℃まで冷却する。
【0051】
実施例22 クレンジングクリーム
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド2 1.7
(b)メドウフォームエストリド 1.5
(c)コレステロール 3.5
(d)ステアリン酸ポリオキシエチレン(10)ソルビタン 2.0
(e)オレフィンオリゴマー 29.5
(f)パルミチン酸デキストリン 1.0
(g)トコフェロール 0.1
(h)香料 0.2
(i)グリセリン 4.0
(j)パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.3
(k)精製水 56.2
(製造方法)
(1)a〜cを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、そこに85℃で加熱したd〜gを加えて混合する。
(2)i〜kを85℃に加熱し、a〜gに徐々に加え、撹拌する。
(3)45℃まで冷却し、hを加える。その後、35℃まで冷却する。
【0052】
実施例23 ナイトクリーム
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド2 2.0
(b)メドウフォームエストリド 3.0
(c)コレステロール 4.0
(d)ジステアリン酸スクロース 3.0
(e)スクワラン 25.0
(f)ラノリン 1.0
(g)マイクロクリスタンワックス 1.0
(h)パラヒドロキシ安息香酸ブチル 0.3
(i)香料 0.1
(j)コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.1
(k)1、3−ブチレングリコール 7.0
(l)トコフェリルリン酸ナトリウム 0.05
(m)精製水 53.45
(製造方法)
(1)a〜cを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、そこに85℃で加熱したd〜hを加えて混合する。
(2)j〜mを85℃に加熱し、a〜hに徐々に加え、撹拌する。
(3)45℃まで冷却し、iを加える。その後、35℃まで冷却する。
【0053】
実施例24 モイスチャークリーム
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド2 0.7
(b)メドウフォームエストリド 0.5
(c)コレステロール 1.5
(d)ヘキサステアリン酸テトラグリセリル 1.5
(e)ステアリン酸イヌリン 1.5
(f)スクワラン 20.0
(g)セチルイソオクタノエート 8.5
(h)香料 0.1
(i)パラオキシ安息香酸エチル 0.3
(j)プロピレングリコール 5.0
(k)精製水 60.4
(製造方法)
(1)a〜cを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、そこに85℃で加熱したd〜gを加えて混合する。
(2)i〜kを85℃に加熱し、a〜gに徐々に加え、撹拌する。
(3)45℃まで冷却し、hを加える。その後、35℃まで冷却する。
【0054】
実施例25 下地クリーム
(成分名) 質量(%)
(a)セラミド2 1.7
(b)メドウフォームエストリド 1.5
(c)コレステロール 2.5
(d)スクワラン 25.0
(e)シクロペンタシロキサン 10.0
(f)マイクロクリスタンワックス 2.0
(g)ポリオキシエチレン(10)フィトステロール 2.0
(h)セチルジメチコンコポリオール 0.8
(i)パラオキシ安息香酸ブチル 0.2
(j)酸化チタン 1.0
(k)着色顔料 0.1
(l)ジプロピレングリコール 5.0
(m)精製水 48.2
(製造方法)
(1)a〜cを85℃で加熱溶解し、溶解確認後、そこに85℃で加熱したd〜kを加えて混合する。
(2)l及びmを85℃に加熱し、a〜kに徐々に加え、撹拌する。
その後、35℃まで冷却する。