(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、グラスウール等の無機繊維は、いわゆる無機繊維断熱材として木造住宅等の建物の壁等に配されて利用されている。この無機繊維断熱材は通常合板や防湿フィルム等で挟み込まれて断熱パネルとして建物の壁等として用いられている。
【0003】
近年、省エネルギーへの関心の高まりにより、この無機繊維断熱材による断熱性能の向上が求められている。断熱性能向上のためには無機繊維断熱材の密度を高めることが効果的であることが分かっている。すなわち、無機繊維断熱材を高密度とすることで、断熱性能は向上する。具体的には、従来は10kg/m
3〜20kg/m
3程度の比較的低密度の無機繊維断熱材が一般的であったが、これよりも高密度として断熱性能を高めることが求められている。
【0004】
このように高密度とされた断熱材として、45kg/m
3以上の密度を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に代表されるような高密度の断熱材を用いれば、断熱性能が従来の比較的低密度の断熱材よりも断熱性能を高めることができる。
【0005】
しかしながら、近年このような無機繊維断熱材を用いた断熱パネルでは、パネル内に例えば筋交等の耐震補強材が配されることが多いので、パネル内の無機繊維断熱材を収容する空間が狭小化されている。このように狭小化された空間内に無機繊維断熱材を押し込んで収容するためには、無機繊維断熱材を押し潰す必要があるが、その後にパネル内で復元性によりその厚みが膨らむことが好ましい。すなわち、複雑に入り組んでいるパネル内空間に対して無機繊維断熱材を押し込んだとしても、その後弾性力により無機繊維断熱材が復元し、パネル内空間を隙間なく無機繊維断熱材により充填することが好ましい。
【0006】
高密度の無機繊維断熱材では、密度の高まりとともに硬度も高まるため、柔軟性、圧縮性が低下する。したがって、上述したような耐震補強材が内在する断熱パネルへの充填加工が困難となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、高密度及び高圧縮性、高復元性を有し、耐震補強材が内在しているような狭小化された空間内に隙間なく充填することができる無機繊維断熱材及びこれを用いた断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、無機繊維を複数絡み合わせることで20kg/m
3〜40kg/m
3の密度及び一方向に対する厚みを有する集合体からなり、該集合体は圧力が加えられていない状態での初期厚みを有し、前記集合体に0.3kPa〜0.8kPaの押圧力を加えることにより前記厚みを前記初期厚みに対して55%〜70%とし、その後前記押圧力を解除したときに前記厚みが前記初期厚みの90%以上に復元されることを特徴とする無機繊維断熱材を提供する。
【0010】
好ましくは、前記集合体は熱硬化性バインダーを含み、該熱硬化性バインダーは前記集合体の1.5質量%〜3.5質量%である。
【0011】
好ましくは、前記熱硬化性バインダーには、潤滑性を有する化合物が0.1質量%〜0.5質量%含まれている。
【0012】
好ましくは、前記潤滑性を有する化合物は、シリコン界面活性剤、ワックス類、界面活性剤のいずれかを含んでいる。
【0013】
また、本発明では、前記集合体を挟持する略板形状の板体と、該板体の対向する一辺の外縁に沿って挟持されて配設される柱体と、該柱体間に架け渡された略棒形状の耐震補強材とを備えたことを特徴とする無機繊維断熱材を用いた断熱パネルを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、初期厚みを有する集合体に対して押圧力を加えて55%〜70%としても、押圧力を解除することで集合体の厚みが初期厚みの90%以上に復元するので、無機繊維が20kg/m
3〜40kg/m
3含まれている高密度の集合体であっても、狭小化された空間内に対して押し潰して押し込んだときにその復元力により空間を隙間なく充填することができる。すなわち、高密度による断熱性能の向上を図るとともに、断熱材の充填施工性を高めることができる。
【0015】
また、集合体に1.5質量%〜3.5質量%の熱硬化性バインダーを含めることで、集合体の圧縮後の復元性を得ることができる。さらに、この熱硬化性バインダーに潤滑性を有する化合物を0.1質量%〜0.5質量%含めることでさらに高圧縮性を得ることができる。また、潤滑性を有する化合物としては、シリコン界面活性剤、ワックス類、界面活性剤のいずれかを含んでいればよいことがわかっている。
【0016】
一方で、板体により挟持されている空間に耐震補強材が配されているような場合に、このような空間に無機繊維断熱材を充填することで断熱パネルとすることができる。このように狭小化された充填空間であっても隙間なく空間を無機繊維断熱材で充填することができ、さらに断熱性能も高めることができる断熱パネルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明に係る無機繊維断熱材1は、グラスウール等の無機繊維(不図示)が複数本絡み合って形成された集合体2からなっている。
図1では、概念的に集合体2を略直方体として示している。その密度は20kg/m
3〜40kg/m
3であり、少なくとも一方向に対して厚みTを有している。集合体2は初期厚みを有し、この初期厚みは集合体2に圧力が加えられていない状態での厚みである。すなわちどのような圧力も作用されていない状態では、厚みTと初期厚みとは一致している。一方で、集合体2は無機繊維が絡み合って形成されているので各繊維間には隙間が発生している。このため集合体2は押圧力が加えられることにより押圧方向に縮小する。
【0019】
集合体2の厚みT方向に押圧力をかけて集合体2の厚みTの長さを初期厚みに対して55%〜70%にしたとする。この後に押圧力を解除すると、集合体2はその弾性力により厚みTが初期厚みの90%以上となるまで復元する。このように、初期厚みを有する集合体2に対して押圧力を加えて55%〜70%としても、押圧力を解除することで集合体2の厚みが初期厚みの90%以上に復元するので、無機繊維が20kg/m
3〜40kg/m
3含まれている高密度の集合体であっても、狭小化された空間内に対して押し潰して押し込んだときにその復元力により空間を隙間なく充填することができる。すなわち、高密度による断熱性能の向上を図るとともに、高圧縮性、高復元性を高めることができる。このような効果を得るために、集合体2の密度は特に20kg/m
3〜40kg/m
3が好ましいことが分かっている。なお、高圧縮性とは、小さな荷重で大きく圧縮する特性のことをいう。このような高圧縮性により大きく圧縮された集合体2は、高復元性により圧縮された部分が膨張する。
【0020】
以下に本発明に係る無機繊維断熱材1についてさらに詳述する。集合体2を形成する無機繊維はガラス繊維であることが好ましい。ガラス繊維には多く種類があるが、一般的にグラスウールで使用されているソーダライムガラスやAガラスが特に好ましい。これらのガラスを用いてロータリー法で形成されたガラス繊維は、断熱材として適した繊維径、繊維長を有しているからである。その繊維系は、3.0μm〜5.0μmであることが好ましく、更には3.5μm〜5.0μmであることがより好ましい。また、繊維長は、20mm〜200mmであることが好ましい。無機繊維断熱材の復元性を考慮すると、繊維長は長いほど好ましい。グラスウールのような無機繊維断熱材においての復元性は、ガラス繊維の繊維径及び繊維長が大きく影響しているため、このように繊維径と繊維長を考慮することは重要である。
【0021】
また、集合体2を圧縮させるために押圧する際の押圧力は、人力で押す力に相当していることが好ましい。具体的に圧力の数値で示すと、0.3kPa〜0.8kPaであることが好ましく、更には、0.4kPa〜0.6kPaであることがより好ましい。上述したように、狭小化された空間内に対して集合体2を押し潰して押し込むときは人力で押すことが多いため、本発明に係る無機繊維断熱材1をそのような空間に充填施工する際の実際の実施を考慮することが重要だからである。すなわちこのような人力に近い押圧力によって高い圧縮性能を発揮できることが重要であり、本発明はそのために人力による押圧力を考慮している。0.3kPa〜0.8kPa、より好ましくは0.4kPa〜0.6kPaと言う数値は人力による押圧力に相当する圧力という点で、本発明の効果を奏するために意味を持っている。
【0022】
したがって、本発明の無機繊維断熱材1は、0.3kPa〜0.8kPa、より好ましくは0.4kPa〜0.6kPaで押圧した際に、初期の厚みの55%〜70%まで圧縮するものである。無機繊維断熱材1はこのような小さな荷重で大きく圧縮する特性を有し、このような特性を高圧縮性と称している。
【0023】
上述したように、無機繊維断熱材1の密度は20kg/m
3〜40kg/m
3である。密度が、20kg/m
3未満であると、高圧縮性及び高復元性の点で本発明の目的に到達はするが、断熱性能が不充分である。一方、40kg/m
3を超えると、断熱性能では十分であるものの、所望する高圧縮性が得られない。
【0024】
一方で、上記のような高圧縮性能、高復元性能を得るための一例として、集合体2にいわゆる接着剤としての熱硬化性バインダー(不図示)を含めればよいことが分かっている。また、この熱硬化性バインダーは集合体2の1.5質量%〜3.5質量%とすればよいことも分かっている。このように、集合体2に1.5質量%〜3.5質量%の熱硬化性バインダーを含めることで、集合体2に対して高復元性という特性を与えることができる。
【0025】
また、熱硬化性バインダーに潤滑性を有する化合物を0.1質量%〜0.5質量%含めることでさらに高圧縮性を得ることができることもわかっている。この化合物としては、シリコン界面活性剤、ワックス類、界面活性剤等があるが、これらのいずれかを含んでいればよい。これらの潤滑性を有する化合物は上記熱硬化性バインダーと十分に混合されてから上記無機繊維に塗布される。化合物とバインダーが分離しないようにするためである。
【0026】
上記のバインダーは全て集合体2に高い復元力を付与するための目的で添加される。無機繊維にバインダーを含めて断熱材として利用し、さらに高い復元力を付与するために得られた数値が上記バインダーの質量%(1.5質量%〜3.5質量%)である。この数値は他の目的のために設定されるものではなく、あくまで無機繊維が20kg/m
3〜40kg/m
3含まれている高密度の集合体2について、高い復元力を与えるために創作され、検証された数値である。
【0027】
上記のようなバインダーを付与することで、無機繊維断熱材1を形成する無機繊維はその交点で熱硬化性バインダーにより結合される。これにより、無機繊維断熱材1の形状を保持するだけでなく、圧縮性や復元性等、施工時の取扱性を向上させることができる。
【0028】
無機繊維断熱材1に対する熱硬化性バインダーの付着量について詳述する。バインダー付着量が1.5質量%未満であると、押圧力解除後の復元性に欠けてしまう。バインダー付着量が3.5質量%を超えると、押圧時の圧縮性が不充分となってしまう。バインダー付着量は、2.0質量%〜3.0質量%であることがより好ましい。
【0029】
なお、熱硬化性バインダーは、ロータリー法等で繊維化された直後の無機繊維に塗布することが好ましい。熱硬化性バインダーは無機繊維に対して高温雰囲気下でスプレー等で塗布されるため、水性であることが好ましい。
【0030】
熱硬化性バインダーの種類としては、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかの反応で硬化する熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。例えば、エチレン性不飽和単量体を重合したポリカルボン酸と、アミノ基又はイミノ基を有するアルコールを含有する架橋剤とを含有する樹脂組成物を用いることができる。
【0031】
上記ポリカルボン酸としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体より選択される1種以上の単量体を単独で用いてもよいし、あるいはカルボキシル基を含有しないエチレン性不飽和単量体を併用して重合させて得られるものを用いてもよい。
【0032】
上記カルボキシル基を含有しないエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n‐ステアリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエトキシ(メタ)アクリレート、メチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、エチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、ブチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、3価以上のポリオールのモノ(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N‐アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体、ビニルアルキルエーテル、N‐アルキルビニルアミン、N,N‐ジアルキルビニルアミン、N‐ビニルピリジン、N‐ビニルイミダゾール、N‐(アルキル)アミノアルキルビニルアミン等のビニル系単量体、(メタ)アクリルアミド、N‐アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルホルムアミド、N‐ビニルアセトアミド、N‐ビニルピロリドン等のアミド系単量体、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、ビニルトルエン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン当のスチレン系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2‐メチルマレイン酸、イタコン酸、2‐メチルイタコン酸、α‐β‐メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、無水マレイン酸、無水アクリル酸、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンフタレート、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンマレエート、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンサクシネート等が挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂に含まれる架橋剤は、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコールを含有している。このようなアルコールとしては、例えば、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、脂肪族ポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,2‐ジアミノプロパン、1,3‐ジアミノプロパン、1,4‐ジアミノブタン、1,6‐ジアミノヘキサン、3,3’‐イミノビス(プロピルアミン)、3‐(メチルアミノ)プロピルアミン、3‐(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3‐(エチルアミノ)プロピルアミン、3‐(ブチルアミノ)プロピルアミン、N‐メチル‐3,3’‐イミノビス(プロピルアミン)、ポリエチレンイミン等)、芳香族ポリアミン(例えば、フェニレンジアミン、o‐トリジン、m‐トルイレンジアミン、m‐キシリレンジアミン、ジアニシジン、ジアミノジフェニルエーテル、1,4‐ジアミノアントラキノン、3,3’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐ジアミノベンズアニリド、4,4’‐ジアミノ‐3,3’‐ジエチルジフェニルメタン等)、複素環アミン(例えば、ピペラジン、2‐メチルピペラジン、1‐(2‐アミノエチル)ピペラジン、2,5‐ジメチルピペラジン、シス‐2,6‐ジメチルピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、1,3‐ジ(4‐ピペリジル)プロパン、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール、1‐アミノエチル‐2‐メチルイミダゾール等)等のアミン類に、エチレンオキサイド、あるいはプロピレンオキサイドを付加したポリアミン系ポリオールが挙げられる。
【0035】
本発明においては、架橋剤として、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミンを少なくとも1種類以上含有することが好ましい。
【0036】
ジアルカノールアミンは、上記ポリアミン系ポリオールと比較して、分子量が小さいながらも、沸点が200℃以上であるので、ポリカルボン酸との反応性が高く、また、無機繊維断熱材の硬化工程での揮散が少なく、経済性に優れている。
【0037】
また、熱硬化樹脂には、架橋剤として上記アルコール以外のポリオールがさらに含まれていてもよい。このようなポリオールとしては、水溶性のポリオールであることが好ましく、具体的には、1,2‐エタンジオール(エチレングリコール)及びその二量体又は三量体、1,2‐プロパンジオール(プロピレングリコール)及びその二量体又は三量体、1,3‐プロパンジオール、2,2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、2‐ブチル‐2‐エチル‐1,3‐プロパンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、2‐メチル‐2,4‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール、2‐メチル‐2,4‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジオール、2‐エチル‐1,3‐ヘキサンジオール、2‐ヒドロキシメチル‐2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、2‐エチル‐2‐ヒドロキシメチル‐2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、1,2,6‐ヘキサントリオール、2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)‐2,3‐プロパンジオール等の脂肪族ポリオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のトリアルカノールアミン、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、マルチトール等の糖類、及び上記ポリオールとフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等のポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂系ポリオール等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。そして、なかでも、高沸点であり、かつ、揮散しにくいという理由から、トリアルカノールアミンが好ましい。
【0038】
また、本発明に用いる熱硬化性バインダーは、アルデヒド縮合性樹脂であることが好ましい。アルデヒド縮合性樹脂は、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂、フラン樹脂が挙げられる。
【0039】
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との付加反応によって得られる樹脂であり、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン及びこれらの変性物が例示でき、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒド、フルフラール、パラホルムアルデヒドが例示できる。
【0040】
アミノ樹脂は、尿素、及びメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等の尿素から誘導されるアミノ基を有する化合物とアルデヒド類との付加反応によって得られる樹脂である。これに類似して、ポリアクリルアミド、アミノエタノール、ポリアミン類等のアミノ基を有する化合物とアルデヒド類との付加反応によって得られる樹脂も使用できる。
【0041】
アルデヒド縮合性樹脂を使用する場合は、各樹脂を単独で使用しても、あるいは上記の樹脂を混合して使用しても構わない。例えば、フェノール樹脂の一部をメラミン樹脂、尿素樹脂に置き換えてもよい。
【0042】
本発明に用いる熱硬化性バインダーには、主成分の熱硬化性樹脂以外にpH調整剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、着色剤、防塵剤、無機繊維から溶出するアルカリ成分を中和する中和剤等の添加剤を必要により加えてもよい。バインダーは上記の各成分を常法に従って混合し、水を加えて所定の濃度に調整される。
【0043】
上記潤滑性を有する化合物について詳述する。当該化合物には潤滑剤が含まれている。この潤滑剤は、無機繊維表面に塗布されて、圧縮時の繊維同士の擦れ等で無機繊維が折れないようにするためのものである。潤滑成分がない、あるいは少ないと、圧縮時に無機繊維が折れやすくなり、押圧解除後の復元性が不足するという問題が生じる場合がある。
【0044】
潤滑剤は、熱硬化性バインダーに混和した状態で無機繊維上に塗布されるが、潤滑剤は熱硬化性バインダーと反応せずに、熱硬化性バインダーの加熱時に無機繊維上を流動するものが好ましい。
【0045】
このような潤滑性を有する化合物としては、シリコーン界面活性剤、ワックス類、界面活性剤が挙げられる。以下それぞれについて説明する。
【0046】
シリコーン界面活性剤は、ポリシロキサンの側鎖、あるいは末端にポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等の親水基を付加したものである。シリコーン界面活性剤においては、ポリシロキサン鎖と親水基鎖の混合比により、生成物の親水性が変化するが、前記水性熱硬化性バインダーと十分に混和できる程度の親水性を有していれば、特に限定はない。
【0047】
ワックス類は、室温下で固体であるが、約40℃以上に加熱すると、比較的流動性の高い液体となるものをいう。具体的には、蜜ろう、ラノリンワックス及びセラックワックス等の動物系ワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス及びキャンデリラワックス等の植物系ワックス、モンタンワックス及びオゾケライト等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリカーボネートワックス、やし油脂肪酸エステル、牛脂脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド、ジペプタデシルケトン及び硬化ひまし油等の合成ワックスが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。そして、これらの中でも、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスが、経済性の点で好ましい。上記のワックス以外にも、ワックスに近い重質オイルを使用することができる。
【0048】
一般的に、ワックス類は、疎水性材料であるため、ワックスをバインダーに添加する際には、混和性向上のため、あらかじめ、水に分散又は乳化させて用いることが好ましい。
【0049】
界面活性剤には、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があるが、前記水性熱硬化性バインダーとの混和性の点で、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0050】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル系界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらのブロック共重合体、高級アルコール、アルキルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物等のエーテル系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物等のエーテル・エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0051】
一方で潤滑剤は、熱硬化性バインダーと混合され、混合物の固形分換算の総質量に対して、潤滑剤固形分換算で0.1質量%〜0.5質量%であることが好ましい。潤滑剤の含有量が、0.1質量%未満であると、繊維上での潤滑性に欠け、圧縮時に繊維が折れやすくなり、押圧解除後の復元性に欠ける場合がある。一方、潤滑剤含有量が0.5質量%を超えると、潤滑性の更なる向上が観察されず、不経済であるだけでなく、熱硬化性バインダーの接着性を損ない、復元性が得られないという問題が生じる。
【0052】
本発明の無機繊維断熱材1は、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、溶融した無機質原料を繊維化装置で繊維化し、その直後に上記のバインダーを無機繊維に付与する。次いで、バインダーが付与された無機繊維を有孔コンベア上に堆積して嵩高い無機繊維断熱吸音材用中間体を形成し、所望とする厚さになるように間隔を設けた上下一対の有孔コンベア等に送り込んで狭圧しつつ加熱し、バインダーを硬化させて無機繊維断熱材1を形成する。そして、必要に応じて表皮材等を被覆させてもよい。実際の製品は、この無機繊維断熱吸音材1を所望とする幅、長さに切断して得られる。
【0053】
以下、上述した製造工程について詳述する。
【0054】
本発明の無機繊維断熱材1に用いる無機繊維としては、通常の断熱吸音材に使用されているグラスウール、ロックウール等を用いることができる。無機繊維の繊維化方法は、火焔法、吹き飛ばし法、遠心法(ロータリー法ともいう)等の各種方法を用いることができる。特に無機繊維がグラスウールの場合は、遠心法を用いることが好ましい。無機繊維にバインダーを付与するには、スプレー装置等を用いて塗布、噴霧する。
【0055】
無機繊維にバインダーを付与するタイミングとしては、繊維化後であればいつでも良いが、バインダーを効率的に付与させるためには、繊維化直後に付与することが好ましい。
【0056】
上記工程によってバインダーが付与された無機繊維は、有孔コンベア上に堆積され、嵩高い無機繊維中間体となる。ここで有孔コンベア上に堆積する時に、無機繊維が堆積される有孔コンベアの反対側から吸引装置により吸引することがより好ましい。
【0057】
その後、有孔コンベア上を連続的に移動する前記無機繊維中間体を、所望とする厚さになるように間隔を設けた上下一対の有孔コンベア等に送り込むと同時に、加熱した熱風によりバインダーを硬化させて、無機繊維断熱材をマット状に成形した後、所望とする幅、長さに切断する。
【0058】
バインダーの加熱硬化温度は、200〜350℃が好ましい。また、加熱硬化時間は、無機繊維断熱材1の密度、厚さにより、30秒〜10分の間で適宜調整する。
【0059】
本発明の無機繊維断熱材1は、そのままの形態で用いてもよく、また、表皮材で被覆して用いてもよい。表皮材としては、紙、合成樹脂フィルム、金属箔フィルム、不織布、織布あるいはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
【0060】
以下、このような高い復元力を有する無機繊維断熱材1を利用したものの一例として、
図2〜
図4に示すような断熱パネル3がある。断熱パネル3は略板形状の板体4を有している。この板体4を2枚用いて無機繊維断熱材1を挟持している。板体4としては合板等を用いることができる。また板体4は柱体5も挟持している。この柱体5は木製で略角柱形状であり、板体4の対向する一辺の外縁に沿って配設されている。すなわち柱体は板体4間の左右両端に配されて上下方向に延びている。
【0061】
図3に示すように、柱体5間には略棒形状の耐震補強材6が架け渡されている。
図3の例で示す耐震補強材6はいわゆる筋交であり、略棒形状の鋼材が斜めに交わって配設されている。なお、耐震補強材6は交わっていなくても柱体5間に架け渡されていればよい。このような耐震補強材6が配されると、板体4により形成されている空間が入り組み、空間スペースも狭小化する。無機繊維断熱材1はこのような狭小化された空間に充填される。したがって、空間に押し込むために無機繊維断熱材1は押圧力を付与されて縮小されて入れ込まれるが、入れ込まれた後はその復元力により耐震補強材6等で複雑に入り組んでいる空間であっても隙間なく充填することができる。さらに上述したように無機繊維断熱材1は高密度であるため、断熱性能も高い。このため近年の耐震性能も考慮されて耐震補強材6を有している断熱パネルに適用するために本発明の無機繊維断熱材1は好適である。