(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る防水パッキン1の構成例を示した斜視図である。この防水パッキン1は、電線管が接続される電線管接続具に取り付けられ、当該電線管接続具内に水が浸入するのを防止する。防水パッキン1は、特定の材料により成形された弾性体からなる。
【0014】
本実施形態では、上記特定の材料として、エチレンプロピレンゴム(EP)に粉末バリウムが混合された材料が用いられている。エチレンプロピレンゴムは、エチレンとプロピレンの共重合によって得られる合成ゴムであり、耐候性及び耐水性が高いという特性がある。粉末バリウムは、沈性化された粉末状のバリウムであり、耐放射線性が高いという特性がある。
【0015】
防水パッキン1を成形する際には、まず、エチレンプロピレンゴムからなる成形前の生ゴムに粉末バリウムが練り込まれる。このとき、例えばロール機を用いて加硫剤などの他の添加剤も生ゴムに練り込まれる。その後、練られた材料が板状にされ、適切な大きさに切断された後、金型を用いて特定の形状に成形される。
【0016】
このようにして成形された防水パッキン1は、例えば
図1に示すような筒状、より具体的には円筒状に形成される。この防水パッキン1が電線管接続具に取り付けられた状態で、防水パッキン1の内側に電線管が挿入されることにより、電線管接続具内に電線管が挿入される。このとき、防水パッキン1の内周面に形成されたリップ11,12が、電線管の外周面に摺接して弾性変形することにより、防水パッキン1の内周面と電線管の外周面との隙間がなくなり、電線管接続具内が水密に保たれる。
【0017】
このように、本実施形態では、耐候性が高いエチレンプロピレンゴムと耐放射線性が高いバリウムとが混合された材料を用いて防水パッキン1が成形されるため、耐候性及び耐放射線性が高い防水パッキン1を提供することができる。特に、粉末バリウムを用いることにより、エチレンプロピレンゴムにバリウムを良好に練り込むことができるため、耐候性及び耐放射線性の両方を効果的に高めることができる。
【0018】
防水パッキン1の材料におけるエチレンプロピレンゴムと粉末バリウムとの混合比は、3:7〜5:5であることが好ましく、約4:6であればより好ましい。上記混合比は、例えば重量比である。このような比率で混合すれば、エチレンプロピレンゴムに対して粉末バリウムを良好に練り込むことができるため、耐候性及び耐放射線性の両方を効果的に高めることができるとともに、防水パッキン1の内側に電線管が挿入されたときでも、十分な弾性力で良好に弾性変形させることができる。
【0019】
上記のような態様で成形される防水パッキン1の形状は任意であるが、以下の実施形態では、電線管接続具内に取り付けられる防水パッキン1の一例について説明する。
【0020】
防水パッキン1には、例えば筒部10、第1リップ11、第2リップ12及びリップ受け部13などが一体的に形成されている。筒部10は、円環状に形成されており、その外周面に円環状の凹部14が形成されている。この凹部14を電線管接続具の内面に係止させることにより、筒部10を電線管接続具の内面に沿って取り付けることができる。
【0021】
第1リップ11は、筒部10の中央部において内面から突出しており、筒部10の周方向に沿って円環状に形成されている。一方、第2リップ12は、筒部10の一方の端部において内面から突出しており、第1リップ11と同様に筒部10の周方向に沿って円環状に形成されている。これらの第1リップ11及び第2リップ12は、それぞれが弾性変形したときに互いに接触しない程度の間隔を隔てた位置に形成されている。
【0022】
電線管は、電線管接続具内に挿入されることにより、当該電線管接続具内に収容された防水パッキン1の筒部10内へと挿入される。より具体的には、筒部10の軸線方向D1に沿って、第2リップ12側から第1リップ11側へと電線管が挿入される。このように、第2リップ12は、第1リップ11に対して電線管の挿入方向(軸線方向D1)手前側に間隔を隔てた位置に形成されている。
【0023】
リップ受け部13は、筒部10内における第1リップ11に対して第2リップ12側とは反対側に設けられている。当該リップ受け部13は、第1リップ11が弾性変形したときに接触可能な位置に設けられており、電線管の挿入に伴い弾性変形した第1リップ11を受け止めることができる。
【0024】
図2Aは、
図1の防水パッキン1が適用された電線管接続具100の第1実施例を示した斜視図である。また、
図2Bは、
図2Aの電線管接続具100の断面図である。この第1実施例に係る電線管接続具100は、2つの電線管を接続するためのカップリングであり、より具体的には、異なる種類の電線管同士を接続するためのものである。
【0025】
この電線管接続具100は、円筒状の本体101内に防水パッキン1を備えている。本体101の一方の端面には、電線管を挿入するための挿入口102が形成されており、当該挿入口102の近傍における本体101の内面に沿って防水パッキン1が取り付けられている。本体101の内面には、防水パッキン1の凹部14に対応する形状の円環状の凸部103が形成されており、当該凸部103が防水パッキン1の凹部14に嵌め込まれることにより、防水パッキン1が本体101内に係止される。
【0026】
防水パッキン1は、第2リップ12側の端部が挿入口102に近接するように配置される。挿入口102は、第2リップ12の先端縁により形成される開口部よりも大径であり、当該電線管接続具100に適用される電線管の最大径よりも大きく設定されている。一方、第1リップ11及び第2リップ12は、当該電線管接続具100に適用される電線管の挿入時に当該電線管と接触するように、筒部10の内面に対する突出量が設定されている。これにより、電線管接続具100内に挿入される電線管は、第2リップ12及び第1リップ11に対してこの順序で当接し、各リップ11,12を弾性変形させた状態で筒部10内に挿入されることとなる。
【0027】
図2Aに示すように、本体101における防水パッキン1の取付位置近傍の部分は、厚肉に形成されている。この厚肉部分における本体101の内面に、防水パッキン1の軸線方向D1の幅と同じ幅からなる円環状の凹部104が形成され(
図2B参照)、当該凹部104の底面の一部に上記凸部103が形成されている。これにより、本体101の厚肉部分に形成された凹部104内に防水パッキン1を収容し、第1リップ11及び第2リップ12が本体101の内面よりも突出した状態で防水パッキン1を取り付けることができる。
【0028】
本体101には、防水パッキン1の取付位置よりも中央側(挿入口102側とは反対側)における薄肉部分に、貫通孔105が形成されている。貫通孔105の内周面にはねじ溝が形成されており、当該貫通孔105にねじ(図示せず)をねじ込んで、そのねじの先端を本体101内に挿入される電線管の外周面に押し当てることにより、電線管を固定することができる。
【0029】
本体101の外周面における貫通孔105の周囲には、円筒状のリブ106が突出するように設けられており、貫通孔105にねじ込まれたねじの頭部の周囲を当該リブ106で取り囲むことができる。本体101の薄肉部分には、
図2Aに示すように、他のリブ107が適宜設けられていてもよい。
【0030】
この例では、本体101に貫通孔105が1つだけ形成されているが、2つ以上の貫通孔105が形成され、各貫通孔105にねじ込まれたねじにより、本体101内に挿入された電線管が固定されるような構成であってもよい。この場合、本体101の外周面には、各貫通孔105の周囲に円筒状のリブ106が設けられ、各貫通孔105にねじ込まれたねじの頭部の周囲が、各リブ106で取り囲まれるような構成であってもよい。
【0031】
本体101における挿入口102側とは反対側の端部には、ねじ管部108が形成されている。ねじ管部108の外周面にはねじ山が形成されており、当該ねじ管部108に袋ナット(図示せず)がねじ込まれることにより、2つの電線管が接続される。例えば、本体101内に挿入口102から挿入される電線管は鋼管であり、袋ナットに挿通された状態で本体101に取り付けられる電線管は樹脂製の可撓電線管である。ただし、各電線管の材料は、これらに限られるものではなく、他の各種材料で形成された電線管を使用することができる。
【0032】
図3Aは、
図1の防水パッキン1が適用された電線管接続具200の第2実施例を示した斜視図である。また、
図3Bは、
図3Aの電線管接続具200の断面図である。この第2実施例に係る電線管接続具200は、電線管を配線ボックスなどの取付位置に取り付けるためのコネクタである。
【0033】
この電線管接続具200は、円筒状の本体201内に防水パッキン1を備えている。本体201の一方の端面には、電線管を挿入するための挿入口202が形成されており、当該挿入口202の近傍における本体201の内面に沿って防水パッキン1が取り付けられている。本体201の内面には、防水パッキン1の凹部14に対応する形状の円環状の凸部203が形成されており、当該凸部203が防水パッキン1の凹部14に嵌め込まれることにより、防水パッキン1が本体201内に係止される。
【0034】
防水パッキン1は、第2リップ12側の端部が挿入口202に近接するように配置される。挿入口202は、第2リップ12の先端縁により形成される開口部よりも大径であり、当該電線管接続具200に適用される電線管の最大径よりも大きく設定されている。一方、第1リップ11及び第2リップ12は、当該電線管接続具200に適用される電線管の挿入時に当該電線管と接触するように、筒部10の内面に対する突出量が設定されている。これにより、電線管接続具200内に挿入される電線管は、第2リップ12及び第1リップ11に対してこの順序で当接し、各リップ11,12を弾性変形させた状態で筒部10内に挿入されることとなる。
【0035】
図3Aに示すように、本体201における防水パッキン1の取付位置近傍の部分は、厚肉に形成されている。この厚肉部分における本体201の内面に、防水パッキン1の軸線方向D1の幅と同じ幅からなる円環状の凹部204が形成され(
図3B参照)、当該凹部204の底面の一部に上記凸部203が形成されている。これにより、本体201の厚肉部分に形成された凹部204内に防水パッキン1を収容し、第1リップ11及び第2リップ12が本体201の内面よりも突出した状態で防水パッキン1を取り付けることができる。
【0036】
本体201には、防水パッキン1の取付位置よりも中央側(挿入口202側とは反対側)における薄肉部分に、貫通孔205が形成されている。貫通孔205の内周面にはねじ溝が形成されており、当該貫通孔205にねじ(図示せず)をねじ込んで、そのねじの先端を本体201内に挿入される電線管の外周面に押し当てることにより、電線管を固定することができる。
【0037】
本体201の外周面における貫通孔205の周囲には、円筒状のリブ206が突出するように設けられており、貫通孔205にねじ込まれたねじの頭部の周囲を当該リブ206で取り囲むことができる。本体201の薄肉部分には、
図3Aに示すように、他のリブ207が適宜設けられていてもよい。また、本体201における貫通孔205の近傍の薄肉部分には、本体201を貫通しないねじ孔209が形成されており、当該ねじ孔209にはアース用ねじ(図示せず)がねじ込まれる。
【0038】
この例では、本体201に貫通孔205が1つだけ形成されているが、2つ以上の貫通孔205が形成され、各貫通孔205にねじ込まれたねじにより、本体201内に挿入された電線管が固定されるような構成であってもよい。この場合、本体201の外周面には、各貫通孔205の周囲に円筒状のリブ206が設けられ、各貫通孔205にねじ込まれたねじの頭部の周囲が、各リブ206で取り囲まれるような構成であってもよい。
【0039】
本体201における挿入口202側とは反対側の端部には、ねじ管部208が形成されている。ねじ管部208の外周面にはねじ山が形成されており、当該ねじ管部208の根元部における外周面に沿って、円環状のシートパッキン210が設けられている。ねじ管部208には、先端側からロックナット211がねじ込まれる。この電線管接続具200を配線ボックスに取り付ける際には、ねじ管部208を配線ボックス内に挿入し、当該ねじ管部208にロックナット211をねじ込むことにより、ロックナット211とシートパッキン210との間に配線ボックスの側板が挟み込まれて固定される。
【0040】
例えば、本体201内に挿入口202から挿入される電線管は鋼管である。ただし、電線管の材料は、これに限られるものではなく、他の各種材料で形成された電線管を使用することができる。
【0041】
図4Aは、
図1の防水パッキン1が適用された電線管接続具300の第3実施例を示した斜視図である。また、
図4Bは、
図4Aの電線管接続具300の断面図である。この第3実施例に係る電線管接続具300は、2つの電線管を接続するためのカップリングであり、より具体的には、同種の電線管同士を接続するためのものである。
【0042】
この電線管接続具300は、円筒状の本体301内に防水パッキン1を備えている。本体301の両端面には、それぞれ電線管を挿入するための挿入口302が形成されており、各挿入口302の近傍における本体301の内面に沿ってそれぞれ防水パッキン1が取り付けられている。本体301の両端部の内面には、防水パッキン1の凹部14に対応する形状の円環状の凸部303がそれぞれ形成されており、各凸部303が防水パッキン1の凹部14に嵌め込まれることにより、各防水パッキン1が本体301内に係止される。
【0043】
各防水パッキン1は、第2リップ12側の端部が挿入口302に近接するように配置される。各挿入口302は、第2リップ12の先端縁により形成される開口部よりも大径であり、当該電線管接続具300に適用される電線管の最大径よりも大きく設定されている。一方、第1リップ11及び第2リップ12は、当該電線管接続具300に適用される電線管の挿入時に当該電線管と接触するように、筒部10の内面に対する突出量が設定されている。これにより、電線管接続具300内に両端から挿入される電線管は、それぞれ第2リップ12及び第1リップ11に対してこの順序で当接し、各リップ11,12を弾性変形させた状態で筒部10内に挿入されることとなる。
【0044】
図4Aに示すように、本体301における各防水パッキン1の取付位置近傍の部分は、厚肉に形成されている。これらの厚肉部分における本体301の内面に、防水パッキン1の軸線方向D1の幅と同じ幅からなる円環状の凹部304がそれぞれ形成され(
図4B参照)、各凹部304の底面の一部に上記凸部303が形成されている。これにより、本体301の厚肉部分に形成された凹部304内に防水パッキン1を収容し、第1リップ11及び第2リップ12が本体301の内面よりも突出した状態で防水パッキン1を取り付けることができる。
【0045】
本体301には、各防水パッキン1の取付位置よりも中央側(挿入口302側とは反対側)における薄肉部分に、それぞれ貫通孔305が形成されている。各貫通孔305の内周面にはねじ溝が形成されており、各貫通孔305にねじ(図示せず)をねじ込んで、それらのねじの先端を本体301内に挿入される各電線管の外周面に押し当てることにより、各電線管を固定することができる。
【0046】
本体301の外周面における各貫通孔305の周囲には、円筒状のリブ306が突出するように設けられており、各貫通孔305にねじ込まれたねじの頭部の周囲を当該リブ306で取り囲むことができる。本体301の薄肉部分には、
図4Aに示すように、他のリブ307が適宜設けられていてもよい。
【0047】
この例では、本体301に貫通孔305が2つだけ形成されているが、3つ以上の貫通孔305が形成され、各貫通孔305にねじ込まれたねじにより、本体301内に挿入された各電線管が固定されるような構成であってもよい。この場合、本体301の外周面には、各貫通孔305の周囲に円筒状のリブ306が設けられ、各貫通孔305にねじ込まれたねじの頭部の周囲が、各リブ306で取り囲まれるような構成であってもよい。
【0048】
図4Bに示すように、本体301の中央部の内面には、中間パッキン2を各防水パッキン1と同一軸線上に収容するための円環状の凹部308が形成されている。中間パッキン2は、軸線方向D1に沿って電線管が挿入される円環状の筒部21と、当該筒部21の内面から突出する中間リップ22とが一体的に形成された構成である。中間パッキン2は、防水パッキン1と同様、エチレンプロピレンゴムに粉末バリウムが混合された材料により成形されていてもよいし、他の材料により成形されていてもよい。
【0049】
本体301における中間パッキン2の取付位置近傍の部分は、厚肉に形成されており、この厚肉部分における本体301の内面に、中間パッキン2の軸線方向D1の幅と同じ幅からなる円環状の凹部308が形成されている。当該凹部308内に、中間パッキン2が嵌め込まれた状態で係止されることにより、中間リップ22が本体301の内面よりも突出した状態で中間パッキン2が取り付けられる。
【0050】
各挿入口302から挿入される2つの電線管は、互いに端面を突き合せた状態で本体301内に配置される。この状態では、2つの電線管の端面が本体301の中央部に位置し、当該中央部の内面に沿って設けられた円環状の中間パッキン2により、端面間の隙間がシールされる。
【0051】
例えば、本体301内に各挿入口302から挿入される電線管は鋼管である。ただし、電線管の材料は、これに限られるものではなく、他の各種材料で形成された電線管を使用することができる。
【0052】
図5Aは、
図1の防水パッキン1の断面図であり、電線管3が挿入されていない状態を示している。また、
図5Bは、
図1の防水パッキン1の断面図であり、電線管3が挿入された状態を示している。以下では、防水パッキン1の具体的構成について説明する。
【0053】
図5Aに示すように、本実施形態に係る防水パッキン1の第1リップ11は、先端に向かって先細りした形状となっている。より具体的には、第1リップ11は、電線管3の挿入方向手前側(第2リップ12側)の前面111と、電線管3の挿入方向後側(リップ受け部13側)の後面112とを有している。
【0054】
第1リップ11の前面111は、筒部10の軸線方向D1に対して直交する径方向D2に沿って延びている。第2リップ12側から筒部10内に挿入される電線管3は、その端面が第1リップ11の前面111に当接した後、さらに後方側に挿入されることにより、その外周面を当該前面111に摺接させながら、第1リップ11を弾性的に傾倒させる。
【0055】
第1リップ11の後面112は、前面111に対して傾斜している。前面111及び後面112は、先端部で滑らかな曲面により接続されている。前面111に対する後面112の傾斜角θ1は、10〜20°であることが好ましく、14〜18°であればより好ましく、約16°であればさらに好ましい。
【0056】
筒部10内に挿入される電線管3により第1リップ11が傾倒された場合には、
図5Bに示すように、第1リップ11の後面112がリップ受け部13に受け止められる。リップ受け部13は、例えば筒部10の内面に形成された傾斜面からなり、第1リップ11に対して電線管3の挿入方向後側に隣接して形成されている。この例では、リップ受け部13としての傾斜面が、第1リップ11に対して電線管3の挿入方向後側から挿入方向手前側(第1リップ11の後面112側)に向かって徐々に窪むように形成されている。
【0057】
軸線方向D1に対するリップ受け部13の傾斜角θ2は、10〜20°であることが好ましく、11〜15°であればより好ましく、約13°であればさらに好ましい。また、リップ受け部13と第1リップ11の後面112との傾斜角θ3は、約90°であることが好ましい。
図5Bに示すように、防水パッキン1の筒部10内に挿入される電線管3により傾倒される第1リップ11は、その後面112が筒部10の軸線方向D1に対して傾斜した角度でリップ受け部13により受け止められる。
【0058】
すなわち、第1リップ11の後面112が筒部10の軸線方向D1に対して平行になるまで倒伏されるのではなく、傾倒された状態で維持される。したがって、第1リップ11が傾倒状態のまま長時間維持された場合であっても、倒伏状態で長時間維持された場合とは異なり、第1リップ11になじみ変形が生じにくい。
【0059】
特に、本実施形態では、電線管接続具100,200,300の内面に沿って筒部10が取り付けられているため、筒部10が弾性変形しにくく、当該筒部10の内面から突出する第1リップ11のなじみ変形を筒部10で吸収することが困難である。このような構成であっても、上記のようにリップ受け部13が第1リップ11の後面112を傾倒状態で受け止めることにより、第1リップ11のなじみ変形をリップ受け部13で吸収することができるため、第1リップ11になじみ変形が生じるのを効果的に防止することができる。
【0060】
また、本実施形態では、第1リップ11が完全に倒伏されておらず、リップ受け部13で後面112が受け止められることにより傾倒した状態であっても、第1リップ11が先細りした形状であるため、
図5Bに示すように、筒部10内における電線管3が挿入される領域から第1リップ11を良好に退避させることができる。これにより、筒部10内に電線管3を挿入する際に第1リップ11が抵抗となりにくく、電線管3を円滑に挿入することができる。
【0061】
特に、本実施形態では、筒部10の軸線方向D1に対して直交する前面111に電線管3を当接させて、第1リップ11を良好に弾性変形させることができる。また、第1リップ11の後面112が前面111に対して傾斜しているため、第1リップ11が傾倒状態でリップ受け部13に受け止められた場合であっても、十分な変形量で第1リップ11を弾性変形させることができる。したがって、第1リップ11と電線管3との間の気密性が低下するのを防止することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、筒部10の内面に形成された傾斜面(リップ受け部13)により、第1リップ11の後面112を傾倒状態で受け止めることができる。このとき、傾斜面が第1リップ11の後面112側に向かって徐々に窪むように形成されているため、第1リップ11の後面112を根元部分から傾斜面で良好に受け止めることができる。これにより、第1リップ11のなじみ変形を傾斜面で良好に吸収することができるため、第1リップ11になじみ変形が生じるのをより効果的に防止することができる。
【0063】
上記のように第1リップ11が傾倒状態でリップ受け部13により受け止められるのに対して、第2リップ12は、
図5Bに示すように、筒部10内に挿入される電線管3により弾性的に倒伏され、90°折れ曲がった状態となる。第2リップ12は、その前面121及び後面122がいずれも軸線方向D1に直交する径方向D2に沿って延びている。第1リップ11及び第2リップ12は互いに異なる突出量に設定されており、第1リップ11が、第2リップ12よりも筒部10の内面から突出している。
【0064】
本実施形態では、筒部10内に挿入される電線管3に対して、第1リップ11だけでなく第2リップ12も当接させることができるため、気密性がさらに向上する。特に、第1リップ11は、第2リップ12よりも筒部10の内面から突出しているため、気密性がより高い一方で、なじみ変形が生じやすい。このような構成であっても、第1リップ11の後面112が傾倒状態でリップ受け部13に受け止められるため、なじみ変形が生じるのを効果的に防止することができ、気密性の向上となじみ変形の防止を両立させることができる。
【0065】
以上の実施形態では、第1リップ11の前面111が径方向D2に沿って延び、後面112が前面111に対して傾斜している構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば前面111及び後面112がいずれも径方向D2に対して傾斜していてもよいし、第2リップ12のように前面111及び後面112がいずれも径方向D2に沿って延びていてもよい。
【0066】
リップ受け部13は、上記実施形態のような傾斜面に限らず、第1リップ11を軸線方向D1に対して傾斜した角度で受け止めることができるような形状であれば、他の任意の形状を採用することができる。
【0067】
以上の実施形態では、電線管接続具内に取り付けられる防水パッキン1について説明したが、本発明は、電線管接続具の他の部分に取り付けられるような防水パッキンにも適用可能である。以下では、電線管接続具の端部に取り付けられる防水パッキン4について説明する。
【0068】
図6Aは、本発明の別実施形態に係る防水パッキン4が適用された電線管接続具400の構成例を示した斜視図である。
図6Bは、
図6Aの電線管接続具400の断面図である。この防水パッキン4は、電線管が接続される電線管接続具400の端部に取り付けられ、当該電線管接続具400内に水が浸入するのを防止する。電線管接続具400の構成は、防水パッキン4の取付部分を除き、
図4A及び
図4Bに示した電線管接続具300と同様であるため、同様の構成については、図に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
防水パッキン4には、例えば筒部40、第1リップ41及び第2リップ42などが一体的に形成されている。筒部40は、円環状に形成されており、その外周面に円環状の凹部43が形成されている。この凹部43を電線管接続具400の端部の内面に係止させることにより、筒部40を電線管接続具400の内面に沿って取り付けることができる。
【0070】
第1リップ41は、筒部40の中央部において内面から突出しており、筒部40の周方向に沿って円環状に形成されている。一方、第2リップ42は、筒部40の一方の端部において内面から突出しており、第1リップ41と同様に筒部40の周方向に沿って円環状に形成されている。これらの第1リップ41及び第2リップ42は、それぞれが弾性変形したときに互いに接触しない程度の間隔を隔てた位置に形成されている。
【0071】
電線管は、電線管接続具400内に挿入されることにより、当該電線管接続具400の端部に取り付けられた防水パッキン4の筒部40内へと挿入される。より具体的には、筒部40の軸線方向D1に沿って、第2リップ42側から第1リップ41側へと電線管が挿入される。このように、第2リップ42は、第1リップ41に対して電線管の挿入方向(軸線方向D1)手前側に間隔を隔てた位置に形成されている。
【0072】
第1リップ41及び第2リップ42は、当該電線管接続具400に適用される電線管の挿入時に当該電線管と接触するように、筒部40の内面に対する突出量が設定されている。第1リップ41及び第2リップ42は互いに異なる突出量に設定されており、第1リップ41が、第2リップ42よりも筒部40の内面から突出している。電線管接続具400内に両端から挿入される電線管は、それぞれ第2リップ42及び第1リップ41に対してこの順序で当接し、各リップ41,42を弾性変形させた状態で筒部40内に挿入されることとなる。
【0073】
図6A及び
図6Bに示した例では、電線管接続具400が、2つの電線管を接続するためのカップリングである場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、
図6A及び
図6Bのような防水パッキン4は、
図2A及び
図2Bに示したカップリング、
図3A及び
図3Bに示したコネクタにも適用可能である。
【0075】
また、防水パッキンに備えられたリップは、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。複数のリップを備えた防水パッキンにおいても、本発明のような材料を用いて防水パッキンを成形することにより、それらのリップを十分な弾性力で良好に弾性変形させることができる。