特許第6469440号(P6469440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469440
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ポケット取外式エプロン
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/04 20060101AFI20190204BHJP
   A41B 13/10 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   A41D13/04
   A41B13/10
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-261260(P2014-261260)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121413(P2016-121413A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003912
【氏名又は名称】コンビ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176603
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 允史
(72)【発明者】
【氏名】依 田 洋 光
(72)【発明者】
【氏名】住 本 佑 介
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121137(JP,A)
【文献】 特開2004−137617(JP,A)
【文献】 実開昭49−016138(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02450106(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/04
A41B13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦切込みが形成されたエプロン本体と、
前記エプロン本体の前記縦切込みに挿入されるボタン部、及び、前記ボタン部に接続され、当該ボタン部を介して前記エプロン本体に取り付けられるポケット部を有するポケットと、
を備え、
前記ポケットの前記ボタン部と前記ポケット部とは、一体に成形されている、ポケット取外式エプロン。
【請求項2】
前記ポケット部は、前記ボタン部を保持する後壁と、前記後壁に対向し当該後壁との間で受け留め空間を形成する前壁と、を有し、
前記後壁の前記ボタン部を保持する部分は、当該後壁の他の部分よりも前記前壁から離間するように凹んでいる、請求項1に記載のポケット取外式エプロン。
【請求項3】
前記ポケットは、前記ボタン部及び前記ポケット部と一体に成形され、前記ボタン部と前記ポケット部の前記後壁とを連接する連接片をさらに有し、
前記ボタン部が前記エプロン本体の前記縦切込みを通過した位置まで挿入されると、前記ボタン部と前記後壁との間に前記エプロン本体が挟まれ、且つ、前記連接片が前記縦切込み内に位置する、請求項2に記載のポケット取外式エプロン。
【請求項4】
前記後壁のうちの前記ボタン部と対面する領域の一部が繰り抜かれて繰抜部として形成されていて、
前記連接片は、前記ボタン部の前記繰抜部に対面する位置まで延びて当該ボタン部と接続している、請求項3に記載のポケット取外式エプロン。
【請求項5】
前記連接片は、前記繰抜部を横断して両端部で後壁に接続している、請求項4に記載のポケット取外式エプロン。
【請求項6】
前記ポケットは、横方向に間隔を空けて配置された少なくとも2つのボタン部を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポケット取外式エプロン。
【請求項7】
前記エプロン本体は、当該エプロン本体の表面及び裏面のうちの表面側に付与されたSR加工剤を含み、
前記エプロン本体の表面は、前記エプロン本体の裏面よりも親水性が高い、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポケット取外式エプロン。
【請求項8】
前記エプロン本体は、表生地と裏生地とを有し、
前記表生地の表面に、SR加工剤が付与されていて、
前記裏生地の裏面に、撥水処理が施されている、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポケット取外式エプロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケットを取り外し自在なポケット取外式エプロンに関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児の首に掛けられて乳幼児の前面を食事による汚れから保護するエプロンが利用に供されている。乳幼児の食事中には、保護者からの補助を必要とされるだけでなく食べこぼしも多く、乳幼児の食事には相当な手間がかかる。そこで、昨今では、乳幼児の食べこぼしを受け止めて保護者の負担を和らげるべく、ポケット付きのエプロンが注目を集めている(例えば特許文献1参照)。典型的なポケット付きエプロンは、エプロン本体とポケットとを肉厚のある軟質樹脂の一体部品として構成される。
【0003】
しかしながら、エプロン本体とポケットとを肉厚のある軟質樹脂で一体部品とした場合、持ち運びが容易ではない。そこで、ポケットをエプロン本体に着脱自在に取り付けたポケット取外式エプロンの開発も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−206999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポケットがエプロン本体から分離可能な場合、エプロン本体として肉厚のある軟質樹脂ではなくさらに軟質な素材を採用することも可能となる。しかしながら、エプロン本体を軟質な素材にて構成した場合、乳幼児の首に掛けられるエプロン本体でポケットを支えるのは容易ではない。
【0006】
従来において、エプロン本体が肉厚のある軟質樹脂からなる場合、ポケットに設けられた係止突起を、エプロン本体に設けられた係止孔に嵌合させて、ポケットをエプロン本体に取り付けていた。しかしながら、エプロン本体が軟質な素材からなる場合には、エプロン本体の係止孔がポケットの自重で変形してしまい、このような構造ではうまくポケットを支えられない。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、エプロン本体でポケットの自重を安定して支えることが可能なポケット取外式エプロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるポケット取外式エプロンは、縦切込みが形成されたエプロン本体と、
前記エプロン本体の前記縦切込みに挿入されるボタン部、及び、前記ボタン部に接続され、当該ボタン部を介して前記エプロン本体に取り付けられるポケット部を有するポケットと、を備え、
前記ポケットの前記ボタン部と前記ポケット部とは、一体に成形されている。
【0009】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記ポケット部は、前記ボタン部を保持する後壁と、前記後壁に対向し当該後壁との間で受け留め空間を形成する前壁と、を有し、前記後壁の前記ボタン部を保持する部分は、当該後壁の他の部分よりも前記前壁から離間するように凹んでいてもよい。
【0010】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記ポケットは、前記ボタン部及び前記ポケット部と一体に成形され、前記ボタン部と前記ポケット部の前記後壁とを連接する連接片をさらに有し、前記ボタン部が前記エプロン本体の前記縦切込みを通過した位置まで挿入されると、前記ボタン部と前記後壁との間に前記エプロン本体が挟まれ、且つ、前記連接片が前記縦切込み内に位置してもよい。
【0011】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記後壁のうちの前記ボタン部と対面する領域の一部が繰り抜かれて繰抜部として形成されていて、前記連接片は、前記ボタン部の前記繰抜部に対面する位置まで延びて当該ボタン部と接続していてもよい。
【0012】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記連接片は、前記繰抜部を横断して両端部で後壁に接続していてもよい。
【0013】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記ポケットは、横方向に間隔を空けて配置された少なくとも2つのボタン部を有してもよい。
【0014】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記エプロン本体は、当該エプロン本体の表面及び裏面のうちの表面側に付与されたSR加工剤を含み、前記エプロン本体の表面は、前記エプロン本体の裏面よりも親水性が高くてもよい。
【0015】
本発明によるポケット取外式エプロンにおいて、前記エプロン本体は、表生地と裏生地とを有し、前記表生地の表面に、SR加工剤が付与されていて、前記裏生地の裏面に、撥水処理が施されていてもよい。
【0016】
本発明による別のポケット取外式エプロンは、エプロン本体と、前記エプロン本体に取り外し自在に取り付けられたポケットと、を備え、前記エプロン本体は、表生地と裏生地とを有し、前記表生地の表面に、SR加工剤が付与され、前記SR加工剤と前記表生地の表面とにより構成される前記エプロン本体の表面は、前記エプロン本体の裏面よりも親水性が高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるポケット取外式エプロンによれば、エプロン本体の縦切込みにポケットのボタン部を挿入することで、エプロン本体にポケットを着脱自在に取り付ける構造を採用している。ボタンを用いる取り付け構造は、エプロン本体が柔軟な素材からなる場合であっても、エプロン本体でポケットの自重を安定して支えることに適している。とりわけ、エプロン本体に形成された切り込みは、縦切込みである。縦切込みによれば、エプロン本体の縦方向への剛性を大きく低減することなく、エプロン本体にポケットを取り付けることができる。また、ボタン部は、ポケット部と一体に成形されているため、高い剛性を保ちつつポケット部に保持される。これらのことから、エプロン本体の縦切込みに、ポケット部と一体のボタン部を挿入する構造を採用することで、エプロン本体でポケットの自重を十分に安定して支えることが可能となる。また、ボタン部がポケット部と一体に成形されているため、ボタンが外れてなくしてしまうおそれもない。
【0018】
また、本発明による別のポケット取外式エプロンによれば、エプロン本体の表面にSR加工剤が付与されることにより、乳幼児の食事中にエプロン本体の表面に油を含んだ食品が付着しても容易に洗い落とすことができる。また、水分を多く含んだ飲料をこぼした場合であっても、親水性を示すエプロン本体の表面から吸収することができる。その一方で、エプロン本体の裏面は表面よりも親水性が低いことから、吸収した飲料がエプロン本体の裏面から乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。このため、本発明によるポケット取外式エプロンは、乳幼児の食事中に食品による汚れから保護する用途に適している。
一方、非食事中の日常の活動においては、ポケットが取り外されたエプロン本体がスタイ乃至よだれ掛けとして機能する。この場合、乳幼児の唾液がエプロン本体に付着しても、親水性を示すエプロン本体の表面から吸収することができる。その一方で、エプロン本体の裏面は表面よりも親水性が低いことから、吸収した唾液がエプロン本体の裏面から乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。このため、本発明によるポケット取外式エプロンは、日常の活動中に唾液による汚れから保護する用途にも適している。
これらの結果、本実施の形態のポケット取外式エプロンは、食事中のエプロンとしても、非食事中のスタイ乃至よだれかけとしても、両方の用途に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施の形態によるポケット取外式エプロンを示す斜視図。
図2図1に示すポケット取外式エプロンを構成するエプロン本体を示す平面図。
図3図2に示す線III−IIIに沿ったエプロン本体の断面図。
図4図1に示すポケット取外式エプロンを構成するポケットを示す平面図。
図5図4に示すポケットの正面図。
図6図5に示すポケットのボタン部を拡大して示す斜視図。
図7図6に示すポケットのボタン部を前面側から示す正面図。
図8図6に示すポケットのボタン部を背面側から示す背面図。
図9図6に示す線IX−IXに沿ったポケットの断面をエプロン本体と共に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。図1乃至図9は、本実施の形態によるポケット取外式エプロン1を説明するための図である。このうち、図1は、本実施の形態によるポケット取外式エプロン1を示す斜視図である。
【0021】
ポケット取外式エプロン1は、乳幼児の首に掛けられて乳幼児の前面を汚れから保護する前面保護カバーである。図1に示すポケット取外式エプロン1は、エプロン本体2と、エプロン本体2に着脱自在に取り付けられたポケット3と、を有している。典型的には、乳幼児の食事中に、エプロン本体2で乳幼児の前面を食事による汚れから保護しつつ、ポケット3で食べこぼしまでも受け留めるようになっている。その一方で、エプロン本体2からポケット3を取り外せば、非食事中の日常の活動においてスタイ乃至よだれ掛けとして使用することが可能である。
【0022】
ポケット3を取り外した状態でエプロン本体2がスタイとして機能する場合、乳幼児が自由に動き回れるよう、エプロン本体2は柔軟な素材で構成されているのがよい。ただし、エプロン本体2が柔軟な素材からなる場合、エプロン本体2でポケット3を安定して支えるのは容易ではない。そこで、本実施の形態によるポケット取外式エプロン1は、エプロン本体2をポケット3に安定して取り付けるための工夫がなされている。以下このようなポケット取外式エプロン1を構成する各構成部品について説明していく。
【0023】
先ず、エプロン本体2について説明する。エプロン本体2は、乳幼児の首に掛けて使用される布状の部材である。エプロン本体2は、乳幼児の首に掛けられた状態において、乳幼児の前面の一部を覆い乳幼児の前面を保護する。図2に、エプロン本体2の平面図を示す。図2に示すように、エプロン本体2は、乳幼児の首周りを覆う首周り領域11と、乳幼児の胸乃至お腹周りを覆う胸周り領域12と、を含んでいる。
【0024】
首周領域11には、乳幼児の首の形状に対応したくびれ部11aが形成され、このくびれ部11aの周りに乳幼児の首に掛け渡される帯状の一対の首掛け片11bが位置している。一対の首掛け片11bは、使用時に乳幼児の首の周りに掛け渡されてその先端を互いに連結される。本実施の形態において、各首掛け片11bの先端に、面ファスナー11cが設けられている。一対の首掛け片11bを乳幼児の首の周りに掛け渡した状態で面ファスナー11cを互いに接合することにより、エプロン本体2を乳幼児に装着させることができる。なお、一対の首掛け片11bを連結する機構は、面ファスナー11cに限定されない。一対の首掛け片11bを連結する他の機構として、ボタン構造や紐の締結構造が挙げられる。
【0025】
この首周り領域11に胸周り領域12が一体に繋がっている。図2に示すように、この胸周り領域12には、ポケット3を取り付けるための一対の縦切込み13が形成されている。一対の縦切込み13は、エプロン本体2の横方向d2に間隔を空けて配置されている。
【0026】
図2に示すように、各縦切込み13の延びる方向は、エプロン本体2の横方向d2よりも縦方向d1となす角度が小さくなるように形成されている。本実施の形態において、各縦切込み13は、エプロン本体2の縦方向d1に沿って形成されている。なお、本明細書中において、「エプロン本体2の縦方向d1」とは、平面状に引き延ばした状態でのエプロン本体2の表面10aに平行な面内において、エプロン本体2とポケット3との並ぶ方向をいう。つまり、「縦方向d1」とは、図2における紙面の上と下とを結ぶ方向に相当する。一方、「エプロン本体2の横方向d2」とは、平面状に引き延ばした状態でのエプロン本体2の表面10aに平行な面内において、縦方向d1に直交する方向をいう。つまり、「横方向d2」とは、図2における紙面の左と右とを結ぶ方向に相当する。使用状態において縦方向d1が鉛直方向と一致する場合、横方向d2は水平方向と一致する。
【0027】
図3に、エプロン本体2の層構成を示す。図3に示すように、エプロン本体2は、表生地14と、裏生地15と、表生地14及び裏生地15の周縁を覆うバイアステープ16と、を含んでいる。上述のように、エプロン本体2がスタイ乃至よだれ掛けとして使用される場合には、乳幼児が自由に動き回れるよう、エプロン本体2は柔軟な素材で構成されているのがよい。そこで、本実施の形態では、各生地14〜16として、合成繊維、半合成繊維あるいは天然繊維を編み込んだ織布を採用している。これらの織布は、使用する乳幼児に快適な肌触り及び付け心地を提供し、乳幼児が自由に動き回ることを容易にさせる。ただし、各生地14〜16をなす素材は、このような例に限定されず、やや硬質の樹脂材料からなってもよいし、シリコンや天然ゴム等からなってもよい。
【0028】
表生地14は、使用状態において外方に面し、食事中の食べこぼしや日常活動中の唾液を受ける生地として機能する。エプロン本体2が食事による汚れに優れた耐性を示すためには、エプロン本体2の表面側が油によって汚れ難くなっているのがよい。その一方で、エプロン本体2がスタイ乃至よだれ掛けとして唾液を吸収するためには、エプロン本体2の表面側が親水性を呈する必要がある。そこで、このような要求を満たすべく、表生地14の表面14aにSR(ソイルリリース)加工が施されている。
【0029】
SR加工とは、生地の表面に付着した汚れを落としやすくする加工をいう。SR加工においては、汚れが繊維と繊維との間や繊維表面の凹凸乃至しわに、ファンデルワールス力、クーロン力あるいはイオン結合力の作用で入り込むことに着目し、汚れを落とすためにはこられの力を解放すればよいという知見に基づいている。本実施の形態では、エプロン本体2の洗浄時に、洗浄液に汚れを解放し易くし且つ解放された汚れが再び衣類に付着することを妨げるSR加工剤17を用いている。
【0030】
SR加工剤17は、表生地14の表面14aに付与され、当該表生地14の表面14aと共にエプロン本体2の表面10aを構成している。典型的なSR加工剤17としては、洗浄液への汚れの落ちやすさ及び衣類への再付着の抑制を主として目的とした親水タイプのものが挙げられる。
【0031】
親水タイプのSR加工剤17として、生地をなす繊維の表面を親水化して改質するタイプのもの、あるいは、生地をなす繊維自身を親水化して改質するタイプのものが挙げられる。このうち、表面を親水化して改質するタイプのものとしては、吸水加工剤、具体的には、例えばポリエチレングリコールとポリエチレンテレフタレートのブロック共重合物である親水性ポリエステル樹脂が挙げられる。吸水加工剤の一例として、ICI社のPermaloseTM、あるいは、高松油脂社のSR剤シリーズなどが挙げられる。
【0032】
一例として、SR加工剤17は、加工コストや性能のバランスを考慮して、表生地14の質量に対し0.1〜6.0質量%程度付与され得る。
【0033】
次に、表生地14の裏面14bに対面して位置する裏生地15について説明する。裏生地15は、使用状態において乳幼児に面する。裏生地15は、乳幼児への快適な肌触り及び付け心地と共に、表生地14が吸収した水分が裏生地15の裏面15bから乳幼児の衣服に染み込んでいくことを妨げることが期待されている。そこで、本実施の形態では、裏生地15の裏面15bに、撥水処理が施されている。
【0034】
撥水処理とは、生地の外面において水をはじく機能を高める処理をいう。典型的には、撥水処理には、シリコーン系、テフロン(登録商標)系、パラフィンワックス系などの種々の防水・撥水剤が用いられる。また、撥水処理は、裏生地15の裏面15bだけでなく、裏生地15の表面15aにも施してもよい。
【0035】
撥水処理された裏生地15の裏面15bは、エプロン本体2の裏面10bを構成している。裏生地15の裏面15bに撥水処理を施すことで、エプロン本体2の裏面10bの疎水性も高まる。したがって、本実施の形態では、エプロン本体2の裏面10bは、エプロン本体2の表面10aよりも親水性が低くなっている。
【0036】
このような表生地14及び裏生地15の周縁をバイアステープ16が覆っている。図3に示す例では、表生地14、裏生地15及びバイアステープ16を共に縫い付けることによって、これらを固定している。
【0037】
次に、エプロン本体2に着脱自在に取り付けられるポケット3について説明する。ポケット3は、食事中に乳幼児による食べこぼしを受け留めるためのものである。図4に、ポケット3の平面図を示し、図5に、ポケット3の正面図を示す。図4及び図5に示すように、ポケット3は、ポケット部20と、ポケット部20に保持されたボタン部30と、を有し、これらは一体に成形されている。
【0038】
ポケット部20は、食事中に乳幼児による食べこぼしを受け留めるための器として機能する。図4及び図5に示すように、ポケット部20は、横方向d2に長手軸をもつ上方に開口した器を乳幼児のお腹の形状に合わせて湾曲させたような形状をもつ。図4及び図5に示すポケット部20は、後壁21と、前壁22と、一対の側壁23、24と、底壁25と、を含んでいる。後壁21と、前壁22と、一対の側壁23、24と、底壁25と、によって囲まれる空間に、乳幼児による食べこぼしを受け留めるための受け留め空間Sが規定されている。
【0039】
後壁21は、ボタン部30を保持し、使用状態において乳幼児のお腹に対面する。後壁21のボタン部30を保持する機構については、後述する。一方、前壁22は、後壁21と間隔を空けて対向し、使用状態において後壁21よりも乳幼児の前方となる位置に位置する。図5から理解されるように、前壁22の高さ(エプロン本体2にポケット3を取り付けた状態での縦方向d1の長さ)は、後壁21の高さよりも低い。
【0040】
一対の側壁23、24は、横方向d2に間隔を空けて互いに対向している。各側壁23、24は、それぞれ、後壁21及び前壁22の横方向d2における端部の間を連結している。一方、底壁25は、後壁21、前壁22及び一対の側壁23、24の下端に接続され、受け留め空間Sの底を規定する。
【0041】
このようなポケット部20にボタン部30が一体に成形されている。図5に示すように、一対のボタン部30は、横方向d2に間隔を空けて配置されている。この一対のボタン部30の間隔は、一対の縦切込み13の間隔に対応する。各ボタン部30は、円盤状の形状をもち、後壁21の前方で当該後壁21と間隔を空けながら対面している。なお、ボタン部30の数は特に限定されない。エプロン本体2にポケット3をバランスよく取り付ける観点からは、少なくとも2つのボタン部30が、横方向d2に間隔を空けて配置されているのがよい。
【0042】
ここで、図6乃至図8を参照してポケット部20がボタン部30を保持する構造についてさらに詳しく説明する。図6乃至図8は、それぞれ、ボタン部30付近を拡大した斜視図、正面図及び背面図である。図6乃至図8に示すように、後壁21のうちのボタン部30を保持する部分21aは、当該後壁21の他の部分よりも前壁22から離間するように凹んでいる。そして、ボタン部30は、後壁21の凹んだ部分21aと連接片40を介して連接されている。
【0043】
連接片40は、ボタン部30と後壁21の凹んだ部分21aとの間隔を保ちつつ、当該ボタン部30を保持している。連接片40は、長尺状の形状をもち、連接片40の長手方向は、取付状態においてエプロン本体2の縦方向d1に沿う。
【0044】
本実施の形態において、後壁21の凹んだ部分21aの一部が繰り抜かれて繰抜部21bとして形成され、残りの部分がブリッジ片21cとして周囲の後壁21に掛け渡されている。繰抜部21bは、ポケット部20と一体成形されるボタン部30の成形性を確保するために設けられている。すなわち、繰抜部21bは、ボタン部30を成形するための型が出入りするための空間を提供する。
【0045】
図8から理解されるように、ボタン部30の一部は、繰抜部21bと対面しており、当該繰抜部21bと対面する部分についてのボタン部30の剛性を確保することが難しい。そこで、本実施の形態では、図8に示すように、連接片40が、ボタン部30の繰抜部21bに対面する位置まで延びて当該ボタン部30と接続している。これにより、ボタン部30の繰抜部21bと対面する部分を補強することができる。とりわけ、本実施の形態の連接片40は、ブリッジ片21cから繰抜部21bを超えて繰抜部21bを囲む後壁21の壁面21wまで到達している。すなわち、連接片40は、繰抜部21bを横断するようにして、その両端部41、42で後壁21に接続している。この場合、連接片40が後壁21によって両もちで支えられるため、連接片40をさらに強化することができる。
【0046】
本実施の形態において、ポケット部20とボタン部30と連接片40とは、一体に成形されている。このため、ボタン部30をポケット部20の後壁21にさらに安定して保持させることが可能となる。一例として、一体に成形されたポケット部20をなす材料として、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)に代表される熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0047】
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0048】
先ず、乳幼児が食事をするときには、エプロン本体2の各縦切込み13に、対応するポケット3のボタン部30を挿入する。図9に、ボタン部30が縦切込み13を通過した位置まで挿入された状態でのボタン部30の断面を示す。図9に示すように、ボタン部30が縦切込み13を通過した位置まで挿入されると、ボタン部30と後壁21との間にエプロン本体2が挟まれ、且つ、連接片40が縦切込み13内に挿入された状態となる。これにより、ボタン部30がエプロン本体2に係止される。
【0049】
エプロン本体2にポケット3を取り付けた後、エプロン本体2を乳幼児の首に掛けて食事が始められる。乳幼児の食事中は、エプロン本体2で乳幼児の前面を食事による汚れから保護しつつ、ポケット3で食べこぼしが受け留められる。とりわけ、本実施の形態のエプロン本体2の表面10aは、SR加工剤17が付与されて親水性を示すと共に、エプロン本体2の裏面10bには、撥水処理が施されている。SR加工剤17が表面10aに付与されることにより、乳幼児の食事中にエプロン本体2の表面10aに油を含んだ食品が付着しても洗い落とし易くなっている。また、水分を多く含んだ飲料をこぼした場合であっても、親水性を示すエプロン本体2の表面10aから吸収することができる。その一方で、エプロン本体2の裏面10bに撥水処理が施されていることから、吸収した飲料がエプロン本体2の裏面10bから乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。
【0050】
食事が終わり、エプロン本体2に付着した食事による汚れが目立つ場合には、エプロン本体2を水洗いする。上述のように、エプロン本体2の表面10aにSR加工が施されているため、付着した汚れが容易に洗浄液に解き放たれ、且つ、解き放たれた汚れが再び衣類に付着することが妨げられる。これにより、エプロン本体2の表面10aに付着した汚れを容易に落とすことが可能となる。
【0051】
なお、汚れたエプロン本体2を交換してポケット取外式エプロン1を有効に活用する観点から、1つのポケット3に対して複数のエプロン本体2を準備してもよい。すなわち、複数のエプロン本体2と、1つのポケット3と、をセットにしたポケット取外式エプロンユニットとして販売されていてもよい。この場合、各エプロン本体2毎に、材質やデザインを変更することで、ポケット取外式エプロンユニットに多様な機能を付与することができる。
【0052】
一方、非食事中の日常の活動においては、エプロン本体2からポケット3を取り外し、ポケット3を取り外した状態でエプロン本体2を乳幼児の首に掛ける。これにより、エプロン本体2をスタイ乃至よだれ掛けとして使用することができる。上述のように、エプロン本体2の表面10aは、親水性を示すため、乳幼児の唾液をエプロン本体2の表面10aから吸収することができる。その一方で、エプロン本体2の裏面10bには撥水処理が施されていることから、吸収した唾液がエプロン本体2の裏面10bから乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、縦切込み13が形成されたエプロン本体2と、エプロン本体2の縦切込み13に挿入されるボタン部30、及び、ボタン部30に接続され、当該ボタン部30を介してエプロン本体2に取り付けられるポケット部20を有するポケット3と、を備え、ポケット3のボタン部30とポケット部20とは、一体に成形されている。ボタン部30を用いた取り付け構造は、エプロン本体2が柔軟な素材からなる場合であっても、エプロン本体2でポケット3の自重を安定して支えることに適している。とりわけ、エプロン本体2に形成された切込み13は、縦切込みである。縦切込み13によれば、エプロン本体2の縦方向d1への剛性を確保しつつエプロン本体2にポケット3を取り付けることができる。また、ボタン部30は、ポケット部20と一体に成形されているため、当該ポケット部20に高い剛性を保ちつつ保持される。これらのことから、エプロン本体2の縦切込み13に、ポケット部20と一体のボタン部30を挿入する構造を採用することで、エプロン本体2でポケット3の自重を十分に安定して支えることが可能となる。
【0054】
また、ボタン部30がポケット部20と一体に成形されているため、ボタンが外れて紛失するおそれがない。さらには、外れたボタンを誤飲するといった事故をも防止することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、ポケット部20は、ボタン部30を保持する後壁21と、後壁21に対向し当該後壁21との間で受け留め空間Sを形成する前壁22と、を有し、後壁21のボタン部30を保持する部分21aは、当該後壁21の他の部分よりも前壁22から離間するように凹んでいる。このような形態によれば、後壁21のボタン部30を保持する部分21aが他の部分よりも凹んでいるため、ボタン部30が後壁21から前方に突出することを抑制することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、ポケット3は、ボタン部30及びポケット部20と一体に成形され、ボタン部30とポケット部20の後壁21とを連接する連接片40をさらに有し、ボタン部30がエプロン本体2の縦切込み13を通過した位置まで挿入されると、ボタン部30と後壁21との間にエプロン本体2が挟まれ、且つ、連接片40が縦切込み13内に位置する。このような形態によれば、エプロン本体2にポケット3を取り付けた状態において、連接片40が縦切込み13内でエプロン本体2に係止される。連接片40が縦切込み13内でエプロン本体2に係止されることにより、ポケット3がエプロン本体2に対して堅固に保持される。このため、エプロン本体2でポケット3の自重をさらに安定して支えることが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、後壁21のうちのボタン部30と対面する領域の一部が繰り抜かれて繰抜部21bとして形成されている。後壁21に繰抜部21bを形成した場合、ボタン部30の繰抜部21bに対面する部分の剛性を確保することが困難となり得る。この点、本実施の形態によれば、連接片40が、ボタン部30の繰抜部21bに対面する位置まで延びて当該ボタン部30と接続している。これにより、ボタン部30の繰抜部21bに対面する部分の剛性の低下を、連接片40によって補償することができる。結果として、ボタン部30の剛性を確保し、エプロン本体2でポケット3の自重を安定して支え
ることが可能となる。このような効果をより強化する観点から、連接片40は、繰抜部21bを横断して両端部41、42で後壁21に接続している。この場合、連接片40が後壁21によって両もちで支えられるため、連接片40をさらに強化することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、エプロン本体2は、当該エプロン本体2の表面10a及び裏面10bのうちの表面10a側に付与されたSR加工剤17を含み、エプロン本体2の表面10aは、エプロン本体2の裏面10bよりも親水性が高い。表面10aにSR加工剤17が付与されることにより、乳幼児の食事中にエプロン本体2の表面10aに油を含んだ食品が付着しても容易に洗い落とすことができる。また、水分を多く含んだ飲料をこぼした場合であっても、親水性を示すエプロン本体2の表面10aから吸収することができる。その一方で、エプロン本体2の裏面10bは表面10aよりも親水性が低いことから、吸収した飲料がエプロン本体2の裏面10bから乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。このため、本発明によるポケット取外式エプロン1は、乳幼児の食事中に食品による汚れから保護する用途に適している。
一方、非食事中の日常の活動においては、ポケット3が取り外されたエプロン本体2がスタイ乃至よだれ掛けとして機能する。この場合、乳幼児の唾液がエプロン本体2に付着しても、親水性を示すエプロン本体2の表面10aから吸収することができる。その一方で、エプロン本体2の裏面10bは表面10aよりも親水性が低いことから、吸収した唾液がエプロン本体2の裏面10bから乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。このため、本発明によるポケット取外式エプロン1は、日常の活動中に唾液による汚れから保護する用途にも適している。
これらの結果、本実施の形態のポケット取外式エプロン1は、食事中のエプロンとしても、非食事中のスタイ乃至よだれかけとしても、両方の用途に適用することが可能である。
【0059】
とりわけ、エプロンとしての使用、及び、非食事中のスタイ乃至よだれかけとしての使用の両方への適用をさらに効果的に実現する観点から、エプロン本体2は、表生地14と裏生地15とを有し、表生地14の表面14aに、SR加工剤17が付与されていて、裏生地15の裏面15bに、撥水処理が施されていることが好ましい。エプロン本体2が表生地14と裏生地15とを含むことで、さらに効果的に水分を吸収することも可能となる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、エプロン本体2と、エプロン本体2に取り外し自在に取り付けられたポケット3と、を備え、エプロン本体2は、表生地14と裏生地15とを有し、表生地14の表面14aに、SR加工剤17が付与され、SR加工剤17と表生地14の表面14aとにより構成されるエプロン本体2の表面10aは、エプロン本体2の裏面10bよりも親水性が高い、というポケット取外式エプロン1も実現される。表面10aにSR加工剤17が付与されることにより、乳幼児の食事中にエプロン本体2の表面10aに油を含んだ食品が付着しても容易に洗い落とすことができる。また、水分を多く含んだ飲料をこぼした場合であっても、親水性を示すエプロン本体2の表面10aから吸収することができる。その一方で、エプロン本体2の裏面10bは表面10aよりも親水性が低いことから、吸収した飲料がエプロン本体2の裏面10bから乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。このため、本発明によるポケット取外式エプロン1は、乳幼児の食事中に食品による汚れから保護する用途に適している。
一方、非食事中の日常の活動においては、ポケット3が取り外されたエプロン本体2がスタイ乃至よだれ掛けとして機能する。この場合、乳幼児の唾液がエプロン本体2に付着しても、親水性を示すエプロン本体2の表面10aから吸収することができる。その一方で、エプロン本体2の裏面10bは表面10aよりも親水性が低いことから、吸収した唾液がエプロン本体2の裏面10bから乳幼児の衣服に染み出すことは有効に妨げられる。このため、本発明によるポケット取外式エプロン1は、日常の活動中に唾液による汚れから保護する用途にも適している。
これらの結果、本実施の形態のポケット取外式エプロン1は、食事中のエプロンとしても、非食事中のスタイ乃至よだれかけとしても、両方の用途に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ポケット取外式エプロン
2 エプロン本体
3 ポケット
10a エプロン本体の表面
10b エプロン本体の裏面
13 縦切込み
14 表生地
14a 表生地の表面
14b 表生地の裏面
15 裏生地
15a 裏生地の表面
15 裏生地の裏面
17 SR加工剤
20 ポケット部
21 後壁
21a 凹んだ部分
21b 繰抜部
22 前壁
30 ボタン部
40 連接片
41、42 連接片の端部
d1 縦方向
d2 横方向
S 受け留め空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9