(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469452
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】自転車用スタンド
(51)【国際特許分類】
B62H 1/04 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
B62H1/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-6250(P2015-6250)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-132275(P2016-132275A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102565
【弁理士】
【氏名又は名称】永嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】藤木 優佑
(72)【発明者】
【氏名】太田 将夫
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−001669(JP,A)
【文献】
特開平10−138968(JP,A)
【文献】
特開平11−278328(JP,A)
【文献】
中国実用新案第202011444(CN,U)
【文献】
英国特許出願公開第00708279(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02− 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンド取付板に上端部を軸支とした脚部材の上端部近傍にロック片の上端部近傍を軸支し、前記スタンド取付板とロック片とを引張り方向に付勢するロック片スプリングにて連結するとともに、前記脚部材の跳上げ位置と起立位置間にて前記ロック片スプリングの張設方向線が脚部材およびロック片の軸支部の死点超えを行うように構成された自転車用スタンドにおいて、前記ロック片に形成した係止部が係止されるカム面を前記スタンド取付板に形成するとともに、スタンドの跳上げ位置を保持すべく、スタンド取付板がロック片の係止部を保持する構成にするとともに、前記スタンド取付板におけるカム面の形成方向を、前記脚部材の軸支部(脚軸支部)に対して起立位置に移動する際に係止部が接するカム面が脚軸支部を通る直線上に形成したことを特徴とする自転車用スタンド。
【請求項2】
前記スタンド取付板におけるカム面と係止部が接する際のカム面に前記脚軸支部を通る直線上よりも跳上げる方向である凹面部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自転車用スタンド。
【請求項3】
前記カム面の端部に前記ロック片における係止部が直接あるいはやや移動して係止して衝接する衝接部を形成して、前記脚部材の跳上げ位置を水平よりやや下方になるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の自転車用スタンド。
【請求項4】
前記ロック片における係止部を回転自在なローラにより構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自転車用スタンド。
【請求項5】
前記ロック片における係止部に対して、前記スタンド取付板におけるカム面側にローラを配設したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自転車用スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンド取付板に上端部を軸支した脚部材の上端部近傍にロック片の上端部近傍を軸支し、前記スタンド取付板とロック片とを引張り方向に付勢するロック片スプリングにて連結するとともに、前記脚部材の跳上げ位置と起立位置間にて前記ロック片スプリングの張設方向線が脚部材およびロック片の軸支部の死点超えを行うように構成された自転車用スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車の後車輪の軸支部に取り付けられるスタンド取付板を介して軸支された脚部材によって、自転車を起立させている。そして、その起立停止時に前記脚部材が妄りに走行位置である跳上げ位置に移動してしまわないように、スタンド取付板に上端部を軸支した脚部材の上端部近傍にロック片の上端部近傍を軸支し、前記スタンド取付板とロック片とを引張方向に付勢するロック片スプリングにて連結するとともに、前記脚部材の跳上げ位置と起立位置間にて前記ロック片スプリングの張設方向線が脚部材およびロック片の軸支部の死点超えを行うように構成されている。
【0003】
このように構成されていることによって、起立停止時に前記脚部材が妄りに走行位置である跳上げ位置に移動することが防止される。脚部材を起立位置から走行位置へ跳上げるには、前記ロック片を足等で上方へ蹴り上げることでロック片スプリングの張設方向線がロック片の軸支部の死点超えがなされてロック片スプリングが走行位置である跳上げ方向に付勢され、自転車の前方移動によって脚部材が後方へ回動するとともに、ロック片スプリングの張設方向線が脚部材の軸支部の死点超えもなされて、自動的に脚部材の跳上げもなされる。逆に走行からの停止時に、脚部材の跳上げ位置から起立位置への移動の際は、脚部材のみの起立方向への移動によって、自動的にロック片スプリングの張設方向線がロック片および脚部材の軸支部の死点超えがなされるので、ロック片を何ら操作することなくロックが可能となり、脚部材の起立位置が確実に保持される。
【0004】
一方、自転車の走行中に路面の凹凸等に起因して、跳上げ位置にあるロック片スプリングや脚部材の復帰スプリングとの関係で、脚部材がバタついていわゆる脚部材の垂れ下がりの虞れが生じた。あるいは、スプリングの切断による脚部材の垂れ下がりの虞れもあった。そこで、これらの脚部材の垂れ下がりの虞れをなくした、各種の走行中の脚部材の垂れ下がり防止の技術が提案されている。脚部材の跳上げ位置方向に付勢する弾圧部材を脚部材の軸支部に配設した実開昭53−64451号公報に開示された第1従来例のもの、脚部材を跳上げ位置に保持するフックレバーを別途に設置した実公昭57−27668号公報に開示された第2従来例のもの、ロック片とスタンド取付板との間に脚部材の跳上げ位置を保持できるストッパ等の保持部を形成した実開昭63−30285号公報に開示された第3従来例のもの等が提案されている。
【0005】
またさらに、近年多用されてきている電動アシスト自転車にあっては、シートフレームと後車輪との間にバッテリー等の電源装置を配設することから、自転車の全長が長くならないような工夫も求められている。そこで、スタンド取付板に対する脚部材の跳上げ位置が水平よりやや下方になるように構成することで、僅かでも走行中の自転車の全長が長くならないようにすることが考慮される。このようなものとして、下記特許文献1に記載されたような第4従来例としての自転車のスタンドがある。
【0006】
下記特許文献1に記載された第4従来例としての自転車のスタンドを
図3を用いて説明すると、
図3(A)に示すように、自転車の後車輪の軸支部に取り付けられる取付体105に脚部材110の上端部を軸支部111にて軸支し、該脚部材110の上端部近傍にロック片113が軸支部114にて軸支され、前記取付体105におけるばね止付部108とロック片113におけるばね止付部117との間に引張ばね116が張設される。一方、前記取付体105の下部後方にはカム面126が形成されており、脚部材110の起立位置と走行位置である跳上げ位置との間で、前記ロック片113の上部後方に設置されたローラ状の接触部材132が前記カム面126に接触してガイド案内されるものである。該ローラ状の接触部材132は、
図3(B)に示すように、断面コの字状のロック片113における両支承片130,131間の間隔が不測的に広がるのを防止するために径大部132aに形成されている。
【0007】
そして、前記カム面126の形状は、その上をガイドされて移動するローラ状の接触部材132が、前記脚部材110の跳上げ位置から起立位置へ移動する際に、前記引張ばね116における引張軸線116aが前記ロック片113における脚部材110の軸支部114である枢着点114Cの死点超えが行えるように構成されたものである。また、この従来例4に開示されたものでは、その
図8(図示省略)に示すように、スタンド取付体105に対する脚部材110の跳上げ位置が水平よりやや下方になるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2745011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の自転車用スタンドにあって、脚部材の跳上げ位置方向に付勢する弾性部材を脚部材の軸支部に配設した実開昭53−64451号公報に開示された第1従来例のものでは、主たるスタンドスプリングと弾性部材との間の調整およびその選定等が面倒であった。また、脚部材を跳上げ位置に保持するフックレバーを別途に設置した実公昭57−27668号公報に開示された第2従来例のものでは、フックレバー等の余分な部品を要して構造が複雑化した。さらに、ロック片とスタンド取付板との間に脚部材の跳上げ位置を保持できるストッパ等の保持部を形成した実開昭63−30285号公報に開示された第3従来例のものでは、スタンド取付板に形成した脚部材の跳上げ位置を保持できる受片やストッパ等の保持部を形成する等、加工が面倒であり、その上、ロック片とスタンド取付板におけるストッパ等の保持部との接触が円滑になされない虞れを生じた。
【0010】
さらには、図示して説明した前記第4従来例のものでは、前記カム面126の形状は、その上をガイドされて移動するローラ状の接触部材132が、前記脚部材110の跳上げ位置から起立位置へ移動する際に、前記引張ばね116における引張軸線116aが前記ロック片113における脚部材110の軸支部114である枢着点114cの死点超えが行えるように構成されたものであり、そのような引張ばね116における引張軸線116aの挙動を規制するカム面とローラ状の接触部材132との関連を特定しており、しかもカム面126の傾斜は脚部材110の軸支部111に対してなだらかな曲線にて傾斜している。そのため、このような構造のものを、その
図8に示されたようなスタンド取付体105に対する脚部材110の跳上げ位置が水平よりやや下方になるようにしたものに適用すると、前記引張ばね116の走行位置である跳上げ位置における張設保持力が僅かながらも減殺されることになる。しかも、前述したようにカム面126の上部は傾斜していて、脚部材110の起立位置への力は少なくて済むものの、走行中の振動等によって脚部材の垂れ下がりが生じ易くなる。そのために、引張ばね116あるいは脚部材の復元スプリングのばね力を高める必要が生じて、ばねや構成部品への負荷が高くなる虞れがあった。
【0011】
そこで本発明では、前記従来の自転車用スタンドの諸課題を解決して、あまり複雑な構造や調整および大きなばね力も要することなく簡素な構造を組み合わせることで耐久性に優れた構成部品への負担を軽減できる自転車用スタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明は、スタンド取付板に上端部を軸支とした脚部材の上端部近傍にロック片の上端部近傍を軸支し、前記スタンド取付板とロック片とを引張り方向に付勢するロック片スプリングにて連結するとともに、前記脚部材の跳上げ位置と起立位置間にて前記ロック片スプリングの張設方向線が脚部材およびロック片の軸支部の死点超えを行うように構成された自転車用スタンドにおいて、前記ロック片に形成した係止部が係止されるカム面を前記スタンド取付板に形成するとともに、スタンドの跳上げ位置を保持すべく、スタンド取付板がロック片の係止部を保持する構成に
するとともに、前記スタンド取付板におけるカム面の形成方向を、前記脚部材の軸支部(脚軸支部)に対して起立位置に移動する際に係止部が接するカム面が脚軸支部を通る直線上に形成したことを特徴とする。また本発明は、前記スタンド
取付板におけるカム面と係止部が接する際の
カム面に前記脚軸支部を通る直線上よりも跳上げる方向である
凹面部を形成したことを特徴とする。また本発明は、前記カム面の端部に前記ロック片における係止部が直接あるいはやや移動して係止して衝接する衝接部を形成して、前記脚部材の跳上げ位置を水平よりやや下方になるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ロック片における係止部を回転自在なローラにより構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ロック片における係止部に対して、前記スタンド取付板におけるカム面側にローラを配設したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、請求項1に記載の構成要件である、スタンド取付板に上端部を軸支とした脚部材の上端部近傍にロック片の上端部近傍を軸支し、前記スタンド取付板とロック片とを引張り方向に付勢するロック片スプリングにて連結するとともに、前記脚部材の跳上げ位置と起立位置間にて前記ロック片スプリングの張設方向線が脚部材およびロック片の軸支部の死点超えを行うように構成された自転車用スタンドにおいて、前記ロック片に形成した係止部が係止されるカム面を前記スタンド取付板に形成するとともに、スタンドの跳上げ位置を保持すべく、スタンド取付板がロック片の係止部を保持する構成に
するとともに、前記スタンド取付板におけるカム面の形成方向を、前記脚部材の軸支部(脚軸支部)に対して起立位置に移動する際に係止部が接するカム面が脚軸支部を通る直線上に形成したことにより、カム面のほぼ直線状の形状とロック片の係止部とのあまり複雑な構造や調整を要することのない係止によって、確実かつ比較的大きな保持力が得られるので、その分ロック片スプリング等のばね力を小さくして、スプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減できて脚部材の妄動が抑制できて耐久性に優れる自転車用スタンドが提供できることとなる。
しかも、跳上げ時に、カム面のほぼ直線状の形成方向に乗り上げたロック片の係止部が前記カム面からの反力をほぼ直角に充分に効率的に受けることができるので、前記脚部材の軸支部を通る直線方向に延びる脚部材の起立方向への挙動を有効に抑止できることになる。
【0014】
また、請求項2に記載の航背要件である、前記スタンド
取付板におけるカム面と係止部が接する際の
カム面に前記脚軸支部を通る直線上よりも跳上げる方向であ
る凹面部を形成した場合は、該カム面に係止するロック片の係止部が前記凹面部によってさらに移動しにくくなり、ロック片スプリング等のばね力を小さくできることとなる。
【0015】
さらに、また、請求項
3に記載の構成要件である、前記カム面の端部に前記ロック片における係止部が直接あるいはやや移動して係止して衝接する衝接部を形成して、前記脚部材の跳上げ位置を水平よりやや下方になるように構成した場合は、ロック片スプリング等のばねを小さくして、スプリング自体およびその他の構成部品への負担を軽減できて耐久性に優れる自転車において脚部材の走行位置である跳上げ位置における自転車の走行時の全長を僅かながらも短くでき、脚部材を確実に保持できることとなる。また移動部を設けた場合は係止部の移動による設計の自由度が向上する。請求項
4に記載の構成要件である、前記ロック片における係止部を回転自在なローラによ
り構成した場合は、同様に前述したような、ロック片スプリング等のばね力を小さくして、スプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減でき、係止部脚部材の妄動が抑制できて耐久性に優れる自転車において、ロック片における係止部のスタンド取付板におけるカム面への乗上げおよびカム面での挙動が円滑になり、ほぼ直線状に構成したカム面によって初動時のロック片の起立方向への大きな力での保持解除力を要するものでありながら、ひとたびロック片の起立方向への保持解除が始まると、ロック片における係止部が回転自在なローラにより構成されているので、円滑にロック片の移動を可能にして軽快である。
【0016】
さらに、請求項
5に記載の構成要件である、前記ロック片における係止部に対して、前記スタンド取付板におけるカム面側にローラを配設した場合は、円滑な挙動を可能にするローラを固定側であるスタンド取付板側に配設するので、ロック片における係止部側をほぼ直線状のカム面に形成するだけで済み、移動側であるロック片側の構造が簡素化される上設計の自由度が増す。スタンド取付板のカム面とロック片の係止部とを入れ替える等による。さらにまた、前記スタンド取付板におけるカム面の長さに対して前記ロック片におけるローラの直径を略等しく構成するとともに、前記脚部材の跳上げ位置を水平よりやや下方になるように構成した場合は、スタンド取付板におけるカム面に対するロック片におけるローラの長さをほぼ解消することができて、脚部材の跳上げ位置を水平よりやや下方になるようにするためのロック片の無駄な動きを解消できる。
【0017】
また、スタンド取付板に対する脚部材の跳上げ位置が水平よりやや下方になるように構成したことを特徴とする前記記載の自転車用スタンドを備えた電動アシスト自転車を特徴とする場合は、特に走行時の全長が長くなりがちな電動アシスト自転車においても、スタンド取付板に対する脚部材の跳上げ位置が水平よりやや下方になるように構成することで、走行時の全長を抑えたものでありながら、ロック片スプリング等のばね力を小さくして、スプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減でき脚部材の妄動が抑制できて耐久性に優れる電動アシスト自転車用スタンドが提供できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の自転車用スタンドの跳上げ走行時の全体側面図およびロック片を鎖線にて示した要部拡大側面図ならびに全体斜視図である。
【
図2】同、自転車用スタンドの起立時の全体側面図および要部拡大側面図ならびに全体斜視図である。
【
図3】第4従来例の自転車のスタンドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の自転車用スタンドを図面に基づいて説明する。本発明の自転車用スタンドは、
図1に示すように、スタンド取付板1に上端部を軸支4とした脚部材2の上端部近傍にロック片3の上端部近傍を軸支5し、前記スタンド取付板1とロック片3とを引張り方向に付勢するロック片スプリング12(点線)にて連結するとともに、前記脚部材2の跳上げ位置と起立位置(
図2)間にて前記ロック片スプリング12の張設方向線が脚部材2およびロック片
3の軸支部4,5の死点超えを行うように構成された自転車用スタンドにおいて、スタンドの跳上げ位置を保持すべく
、前記ロック片3に形成した係止部7が係止されるカム面6を前記スタンド取付板1に形成するとともに、スタンドの跳上げ位置を保持すべく、スタンド取付板1がロック片3の係止部7を保持する構成に
するとともに、前記スタンド取付板1におけるカム面6の形成方向を、前記脚部材の軸支部(脚軸支部)4に対して起立位置に移動する際に係止部7が接するカム面6が脚軸支部4を通る直線上に形成したことを特徴とする。
【実施例1】
【0020】
図1および
図2は本発明の自転車用スタンドの走行跳上げ時(走行時)と停止起立時(停車時)の第1実施例を示す。
図1および
図2に示す自転車用スタンドは両脚型のスタンドが示されているが、無論、軽快車のような片脚型のスタンドにも適用できることは言うまでもない。図示の実施例のものでは、両脚型であるために、車体左側の脚部材側にロック片3が配設され、車体右側の脚部材側に脚部材2の復元スプリング13が配設されている。
図1(A)(B)(C)では、脚部材の復元スプリング13が実
線で示されており、車体左側に配置されるロック片スプリング12は図示省略されており点線で示されている。なお、本発明の自転車用スタンドを片脚型のスタンドに適用する場合には、脚部材の復元スプリング13を省略したり、ロック片スプリングと干渉しない別形式の脚部材の復元スプリングを配設するように構成することもできる。
【0021】
図2に示すように、上端部の取付孔8を自転車の後車輪のハブ軸等に取り付けたスタンド取付板1のほぼ中央に、脚部材2の上端部を軸支して軸支部4とし、該脚部材2の上端部近傍にロック片3を軸支して軸支部5とする。前記スタンド取付板1の上部の一部を折り返して形成したスプリング取付部9と前記ロック片3の下端近傍を折り返して形成したスプリング取付部11との間に、前記スタンド取り付け板1とロック片3とを引張り方向に付勢するロック片スプリング12にて連結するとともに、前記脚部材2の跳上げ位置(
図1)と起立位置(
図2)間にて前記ロック片スプリング12の張設方向線が脚部材2およびロック片3の軸支部4、5の死点超えを行うように構成される。
【0022】
このように構成されているので、起立停止時には前記脚部材2が妄りに走行位置である跳上げ位置に移動することが防止される。脚部材2を
図2の停止起立位置から
図1の走行跳上げ位置にするには、死点超えによるロック片スプリング12によって起立位置に付勢されたロック片3および脚部材2を、ロック片3をロック片スプリング12の復元力に抗して足等で蹴り挙げることで、ロック片3を
図2の状態から反時計方向に回動させていくと、ロック片スプリング12の張設方向線がロック片3の軸支部5の死点超えが行われ、ロック片3に蹴り上げ方向への付勢力が付与されるに至り、自転車の前方移動によって脚部材2が後方へ回動するに伴い、脚部材2の復元スプリング13の張設方向線の死点超えもなされて、自動的に脚部材2の跳上げがなされる。
【0023】
逆に、
図1の跳上げ位置から
図2の起立停止位置に脚部材2を移動するには、脚部材2のみを
図1の跳上げ位置から足等にて地表面に向けて接地させていくと、
図1(B)にてよく理解されるように、先ず、ロック片スプリング12の張設方向線がロック片軸支部5を超える死点超えが先に自動的に行われてロック片3の起立方向への付勢が行われ、次いで、脚部材復元スプリング13の張設方向線が軸支部4を超える死点超えが行われて脚部材2の起立方向への付勢が行われるに至る。したがって、脚部材2を跳上げ位置から起立停止位置に移動するには、ロック片3を操作することなく脚部材2のみの起立動作を行えばよい。
【0024】
このように構成された自転車用スタンドにおいて、
図1(B)に拡大して示すように、ロック片3に形成した係止部7が係止されるカム面6をスタンド取付板1に形成するとともに、前記カム面6をほぼ直線状に構成した。これにより、カム面6の直線状の形状とロック片3の係止部7とのあまり複雑な構造や調整を要することのない係止によって、脚部材2の起立方向に有効に抗するための確実かつ比較的大きな保持力が得られるので、その分ロック片スプリング12等のばね力を小さくして、スプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減できて脚部材2の妄動が抑制され耐久性に優れる自転車用スタンドが提供できることとなる。
【0025】
また、前記スタンド取付板1におけるカム面6の形成方向を、前記脚部材2の軸支部4に対して直線上に形成することによって、跳上げ時に、カム面6のほぼ直線状の形成方向に乗り上げたロック片3の係止部7が、前記カム面6からの反力をほぼ直角に充分に効率的にうけることができるので、前記脚部材2の軸支部4に対して法線方向に延びる脚部材2の起立方向への挙動を有効に抑止できる。さらに、前記スタンド取付板1におけるカム面6に凹面部(例えば、カム面全体を凹湾曲状に形成したりあるいは節度感を付与した三角状の溝部をカム面の中間に刻設する等)を形成した場合は、該カム面6に係止するロック片3の係止部7が前記凹面部によってさらに移動しにくくなり、より、ロック片3の解除力すなわち脚部材2の起立方向への高い保持解除力を要することになり、その分さらにロック片スプリング12等のばね力を小さくできる。なお前記凹面はカム部前端部の角度を急にしたり、跳上げ方向より大きくできる。
【0026】
さらにまた、前記カム面6の端部に前記ロック片3における係止部7が係止して衝接する衝接部10を形成すると、前記脚部材2の跳上げ位置を確実に水平よりやや下方になるように構成でき、その場合は、ロック片スプリング12等のばね力を小さくして、スプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減できて耐久性に優れる自転車において、脚部材2の跳上げ位置における自転車の走行時の全長を僅かながらも短くでき、脚部材を確実に保持できる。また、前記ロック片3における係止部7を回転自在なローラにより構成することによって、同様に前述したような、ロック片スプリング12等のばね力を小さくしてスプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減できて耐久性に優れる自転車において、ロック片3における係止部7のスタンド取付板1におけるカム面6への乗上げおよびカム面6での挙動が円滑になり、ほぼ直線状に構成したカム面6によって初動時のロック片3の起立方向への大きな力での保持解除力を要するものでありながら、ひとたびロック片3の起立方向への保持解除が始まると、ロック片3における係止部7が回転自在なローラにより構成されているので、円滑にロック片3の移動を可能にして軽快となる。
【0027】
さらに、前記ロック片3における係止部7に対して、前記スタンド取付板1におけるカム面6側にローラを配設した場合は、円滑な挙動を可能にするローラを固定側であるスタンド取付板1に配設するので、ロック片3の係止部7側をほぼ直線状のカム面に形成するだけで済み、移動側であるロック片3側の構造が簡素化される。さらにまた、前記スタンド取付板1におけるカム面6の長さに対しては、前記ロック片3におけるローラ7の直径を略等しく構成するとともに、前記脚部材2の跳上げ位置を水平よりやや下方になるように構成した場合は、スタンド取付板1におけるカム面6に対するロック片3におけるローラ7の長さをほぼ解消することができて、脚部材2の跳上げ位置を水平よりやや下方になるようにするためのロック片3の無駄な動きを解消できる。
【0028】
また、スタンド取付板1に対する脚部材2の跳上げ位置が水平よりやや下方になるように構成した前記記載の自転車用スタンドを備えるようにした電動アシスト自転車にあっては、特に走行時の全長が長くなりがちな電動アシスト自転車においても、スタンド取付板1に対する脚部材2の跳上げ位置が水平よりやや下方になるように構成することで、走行時の全長を抑えたものでありながら、ロック片スプリング12等のばね力を小さくして、スプリング自体およびその他の構造部品への負担を軽減できて脚部材2の妄動が抑制された耐久性に優れる電動アシスト自転車用スタンドが提供できることとなる。
【0029】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、スタンド取付板の形状、形式(実施例の両脚型の場合は左右一対のスタンド取付板が配設されるが、片脚型の場合は一つのスタンド取付板とされる)、脚部材の形状(接地部の形状や門型の正面視形状等)、形式(両脚型あるいは片脚型)、スタンド取付板に対する脚部材の軸支形態、脚部材に対するロック片の軸支形態、前記ロック片における係止部の形状、形式(特にローラとした場合の、中央部を径大にする等の太鼓型ローラを採用する等の形状、カム面に対するローラの大きさ形式およびそのロック片への軸支形態およびその材質等)スタンド取付板あるいはロック片の形状(ローラ状の係止部がスタンド取付板側に設置される場合には、その軸支形態等)、カム面に形状される凹面部(カム面全体を凹湾曲状にしたり、三角状の溝部をカム面の中間に刻設する等とする等)および衝接部の形状(スタンド取付板の縁部を切り起こして衝接部とするのを好適とするが、係止部が節度的に落下して停止するように構成することもできる)、カム面をほぼ直線状に構成するとは、カム面と係止部が適切に脚部材の起立方向への高い抵抗力を付与できる形状に構成されればよく、ロック片における係止部は、カム面の直線と同様の直線に形成されてもよく、カム面の凹湾曲状等の凹面部の曲率に一致あるいは不一致の係止部やローラであってもよく、三角状の溝に対応する突起部等が形成されてもよい。また、請求項6における構成要件の趣旨は、スタンド取付板におけるカム面とロック片における係止部との形成形態を逆すなわち入れ替えてもよいというものである。したがって、凹面部等をロック片側に付与してこれらに対応するローラ等からなる係止部がスタンド取付板側に形成すること等も本発明の範囲内にある。また、スタンド取付板に対する脚部材の跳上げ位置を水平よりやや下方になるように構成した自転車用スタンドを備えた電動アシスト自転車の形状、形式についても適宜選定できる。以上述べた実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の自転車用スタンドは、特に電動アシスト自転車に適用して有用であるが、通常の両脚型スタンドを有する自転車から片脚型スタンドを有する軽快車にも適用でき、自動二輪車等のスタンド、介護用車両等のスタンドへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 スタンド取付板
2 脚部材
3 ロック片
4 脚軸支部
5 ロック片軸支部
6 カム面
7 ロック片係止部(ローラ部材)
8 取付孔
9 スプリング取付部
10 衝接部
11 スプリング取付部
12 ロック片スプリング
13 脚部材復元スプリング