(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態において説明するスイッチ及びコネクタは、高電圧に対応しているものであるが、本実施の形態においては、高電圧とは、電気設備技術基準に定められている「直流750V超」や、国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)による国際規定である「直流1500V以上」を意味するものではなく、安全低電圧(直流60V未満)を超える電圧、即ち、60V以上を意味するものとする。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
(コネクタの構造)
第1の実施の形態におけるコネクタの構造について説明する。本実施の形態におけるコネクタ10は、
図1から
図5に示されるプラグコネクタ200と接続されるもので、
図6から
図8に示される構造のコネクタ10に相当する。
【0014】
最初に、
図1から
図5に基づきプラグコネクタ200について説明する。
図1は、プラグコネクタ200の斜視図であり、
図2は上面図であり、
図3は側面図であり、
図4は底面図であり、
図5は正面図である。プラグコネクタ200は、絶縁体等により形成されたカバー210と、3本のプラグ端子221、222、223を有しており、3本のプラグ端子221、222、223が設けられている側と反対側には、電源ケーブル230が接続されている。プラグ端子221はGND端子であり、プラグ端子222、223よりも長く形成されている。プラグ端子222、223は、コネクタ10の端子と電気的に接続されることにより電力が供給される端子である。尚、プラグコネクタ200には、カバー210部分に、プラグ端子221、222、223の一部を覆うような形状で形成された保護部211が設けられている。更にカバー210には、プラグコネクタ200がコネクタ10と接続された後に、プラグコネクタ200がコネクタ10からはずれることのないようにコネクタ接続開口部212が設けられている。
【0015】
次に、
図6から
図8に基づき本実施の形態におけるコネクタ10について説明する。
図6は、コネクタ10の斜視図であり、
図7は正面図であり、
図8は側面図である。コネクタ10は、全体が筐体50に覆われており、プラグコネクタ200のプラグ端子221、222、223がそれぞれ挿入されるジャック開口部21、22、23と、プラグコネクタ200の保護部211が挿入される溝部31と、プラグコネクタ200とコネクタ10とが接続されている状態で電力を供給するか否かを切り替えるためのスライド操作部40が設けられている。スライド操作部40は「ON」の位置または「OFF」の位置にスライドさせることが可能であり、スライド操作部40をスライドさせることにより、コネクタ10を介して電力を供給するか否かを切り替えることができる。
【0016】
より詳細に
図9に基づき本実施の形態におけるコネクタ10の内部構造を説明する。
図9は、コネクタ10の断面図である。コネクタ10は、スライド操作部40の一部であるスライド操作上部40aが筐体50に設けられた開口より外側に飛び出た形状となっている。筐体50の外側よりスライド操作上部40aを矢印Aで示されるスライド方向に移動させることにより、筐体50の内部に設けられたスイッチ部100を電気的に接続するか否かの操作を行なうことができる。
【0017】
スライド操作部40は筐体50内に位置するスライド操作本体部40bを有しており、スライド操作本体部40bはスライドリンク部41と接続されている。
【0018】
スライドリンク部41は、スライド操作部40の移動に伴って矢印Aで示されるスライド方向と略平行に移動するものであって、L字状に形成されている。スライドリンク部41のL字状の一方の端は、コンタクトスライド部42のコンタクトスライド開口部42a内に入り込んだ構造となっている。尚、コンタクトスライド部42は、後述するように、スライド操作部40を図面における矢印Aの右方向に動かすことにより、ボタン160を押下するためのものである。コンタクトスライド開口部42aは、スライドリンク部41の移動方向、即ち、矢印Aで示されるスライド方向に沿った細長い形状に形成されている。また、コンタクトスライド部42には、矢印Aで示されるスライド方向に対し略垂直下方向に伸びるコンタクトスライド接触部42b(
図16図示)が設けられており、コンタクトスライド接触部42bの先端はスイッチ部100のボタン160の上面に接触している。
【0019】
(スイッチ部)
次に、スイッチ部100について説明する。本実施の形態によるコネクタ10のスイッチ部100は、電力の供給を切り替えるスイッチであって、電源スイッチとも称される。
図10にスイッチ部100の斜視図を示し、
図11にスイッチ部100の内部構造図を示す。
図11に示されるように、スイッチ部100は、固定部110の固定接点111と可動部120の可動接点121との接触・非接触により、電源の供給のオン、オフの制御を行なうことができるものである。
【0020】
固定部110は、金属等の導電性材料により形成されており、固定接点111が固定バネ112の一方の端部に設けられている。尚、固定バネ112は、銅又は銅を含む合金等からなる金属板等を折曲げることにより形成されており、固定接点111は銀と銅の合金により形成されている。固定バネ112の他方の端部はベースブロック130のベースブロック本体部131に固定されるとともに、固定バネ112の中程で固定部支持部132により支持されている。
【0021】
可動部120は、金属等の導電性材料により形成されており、固定接点111と接触する可動接点121が可動板部122の一方の端部に設けられ、可動板部122の他方の端部と可動バネ123の一方の端部とが接続されている。尚、可動板部122及び可動バネ123は、銅又は銅を含む合金等からなる金属板等を折曲げることにより形成されており、可動接点121は銀と銅の合金により形成されている。可動バネ123の他方の端部はベースブロック130のベースブロック本体部131に固定されているが、可動バネ123は金属板等から形成されているため柔軟性を有しており、可動板部122の一方の端部に設けられた可動接点121を上下方向に動かすことが可能である。また、ベースブロック130の固定バネ112の端部が固定されている部分と、可動バネ123の端部が固定されている部分との間には、難燃性の樹脂材料等からなる絶縁壁133が設けられており、可動バネ123は、絶縁壁133を回り込むような形状で曲げられている。
【0022】
可動部120の可動板部122の一方の面となる上面は、カード140の上部接触部141(第1の接触部)と接触しており、可動板部122の他方の面となる下面はカード140の下部接触部142(第2の接触部)と接触している。
図11の状態で、回転軸143を中心にカード140を回転させることにより、可動板部122が上部接触部141または下部接触部142と接触して可動板部122に力が加わり、可動接点121を上下方向に移動させることができる。尚、上部接触部141及び下部接触部142では可動板部122が摺動するため、可動板部122との間の摩擦抵抗を低減させるために上部接触部141及び下部接触部142の表面にフッ素樹脂等により形成された表面層を設けてもよい。
【0023】
固定部110及び可動部120は、ベースブロック130とスイッチ部ケース150に囲まれた領域の内部に設置されている。また、カード140は、スイッチ部ケース150に設けられた開口部151より外部に飛び出す突起部144と、ベースブロック130とスイッチ部ケース150に囲まれた領域の内部に位置するカード本体145とを有している。従って、上部接触部141及び下部接触部142は、ベースブロック130とスイッチ部ケース150に囲まれた領域の内部に設けられている。また、カード140、ベースブロック130及びスイッチ部ケース150は樹脂材料等からなる絶縁体材料により形成されている。
【0024】
スイッチ部ケース150の外部には、回転軸143を中心にカード140を回転させるために押下されるボタン160が設けられている。カード140は、突起部144の上部に設けられた接触部144aにおいてボタン160の内壁部161と接触している。尚、接触部144aは内壁部161の表面を摺動するため、接触部144aと内壁部161との間の摩擦抵抗を低減させるために、内壁部161の表面にフッ素樹脂等により形成された表面層を設けてもよい。また、スイッチ部ケース150の外部には、一方の端部がスイッチ部ケース150に接続され、他方の端部がボタン160に接続された開離バネ170が設けられている。開離バネ170は、
図9に示されるように、スライド操作部40を図面における矢印Aの左方向に動かした際に、ボタン160を上方向に戻す方向に復元力が働く。これによりカード140が上方向に動く。
【0025】
(スイッチ部におけるオン、オフ動作)
スイッチ部100のスイッチをオンにする場合には、後述するように、コンタクトスライド部42のコンタクトスライド接触部を一方の方向、
図9の例では図示右方向にスライドさせる。これにより、後述する16に示されるように、スライドするコンタクトスライド接触部42bがボタン160を押下するため、ボタン160の内壁部161で接触部144aと接触しているカード140が回転軸143を中心に
図11図示時計方向に回転する。これにより、上部接触部141と接触している可動板部122に下方向に力が加えられ、可動接点121が下方に移動することで可動接点121と固定接点111とが接触し、電源からの電力供給が可能となる。可動接点121と固定接点111とが接触した状態を
図12に示す。尚、後述するように、
図12の状態がコンタクトスライド部42のコンタクトスライド接触部によりボタン160が
図12図示の位置に維持されるため、可動接点121と固定接点111との接触が維持される。
【0026】
また、スイッチをオフにする場合には、後述するように、コンタクトスライド部42のコンタクトスライド接触部42bをスイッチオン時とは反対の方向、
図9図示左側に移動させる。コンタクトスライド接触部42bが移動してボタンを押下していない状態になると、開離バネ170のバネ性による復元力によりボタン160が上方に移動する。ボタン160の上方への移動に応じて、ボタン160の内壁部161に接触部144aが接触しているカード140がボタン160により引き上げられ回転軸143を中心に回転して、下部接触部142に接触する可動板部122に上方向に力が加わる。具体的には、
図20に示すカード140の上部に設けられた引っ掛け部146が、ボタン160の一部に引っかかり、ボタン160が上に動くことにより、カード140が上に引き上げられる。このように可動板部122に加えられた上方向の力により可動接点121が上方に移動し、
図11に示すように可動接点121と固定接点111との接触を離すことができ、電源からの電力の供給を停止することができる。この際、可動接点121と固定接点111との間でアークが発生する場合があるため、磁力によりアークを飛ばすことができるように、可動接点121と固定接点111との接触位置の近傍には、アークの発生する方向に対して略垂直方向の磁界を発生させる不図示の永久磁石が設けられている。
【0027】
スイッチ部100で電源からの電力の供給を遮断する際には、可動部120の可動バネ123の復元力を用いて可動接点121を上方に移動させるのではなく、スイッチ部ケース150の外部に設けられた開離バネ170の復元力によってボタン160を上に押し上げることにより、カード140を上方に移動させて、スイッチ部100をオフ状態にする。このため、可動バネ123等が可動接点121を固定接点111から引き離す程度の復元力を有していない場合においてもスイッチをオフにすることができる。また、熱により可動バネ123の一部が溶けてしまいバネとしての機能が失われた場合においても、可動バネ123の復元力を用いることなく、開離バネ170のバネ性によりスイッチをオフ状態にすることができ、電源からの電力の供給を確実に遮断することができる。また、開離バネ170はスイッチ部ケース150の外部に設置されているため、固定部110及び可動部120が受ける可能性のあるスイッチ部ケース150内部で発生する熱の影響を受けることはない。
【0028】
また、ベースブロック130の固定バネ112の端部が固定されている部分と、可動バネ123の端部が固定されている部分との間に絶縁壁133が設けられている。絶縁壁133により、熱による固定部110と可動部120との溶解が進行しても、固定部110の溶解した部分と、可動部120の溶解した部分とが絶縁壁133により分離される。よって、固定部110と可動部120とが溶解してくっついた状態のままとなって電流が流れ続けてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
(コネクタにおけるオン、オフ動作)
次に、本実施の形態によるコネクタ10のオン、オフ動作について説明する。
図13に示すコネクタ10とプラグコネクタ200が離れている状態から、
図14に示すようにコネクタ10とプラグコネクタ200とを嵌合させる。そして、
図14の状態でコネクタ10のオン、オフの切り替えを行なうことにより、スイッチ部100のオン、オフを行なうことができ、電源からの電力の供給を行なうことができる。具体的には、スライド操作部40のスライド操作上部40aを
図14に示す「OFF」側の位置から
図15に示す「ON」側の位置にスライドさせる。このスライド操作部40のスライド操作により、コンタクトスライド部42のコンタクトスライド接触部42bによってボタン160の上面より上に出ている上段部165が押されて、ボタン160が下がり、スイッチ部100が
図9に示すオフ状態から、
図16に示すオン状態となり、電源から電力が供給される。尚、スイッチをオンからオフにする場合には、スライド操作部40のスライド操作上部40aを
図15に示す「ON」側にある状態から
図14に示す「OFF」側にある状態にスライドさせる。
【0030】
この際、スイッチ部100がオンとなると、コネクタ10に設けられた不図示のフックが
図4に示されるプラグコネクタ200のコネクタ接続開口部212に入り込む。フックの入り込みによって、コネクタ10とプラグコネクタ200との嵌合状態が維持され、プラグコネクタ200の抜けを防止できる。また、スイッチ部100がオフとなると、コネクタ10に設けられたフックがプラグコネクタ200のコネクタ接続開口部212からはずれ、コネクタ10からプラグコネクタ200を外すことができる。
【0031】
(双子接点のスイッチ部)
ところで、コネクタ10のスイッチ部にスイッチが2つ設けられる場合がある。即ち、スイッチを構成する固定部と可動部とが各々2つスイッチ部に設けられている場合がある。
図17に示す例では、第1の固定部910a及び第2の固定部910bと、第1の可動部920a及び第2の可動部920bとの2つの組が設けられている。
【0032】
第1の固定部910aは、第1の固定接点911a及び第1の固定バネ912aを有しており、第2の固定部910bは第2の固定接点911b及び第2の固定バネ912bを有している。第1の可動部920aは、第1の可動接点921a及び第1の可動板部922aを有しており、第2の可動部920bは、第2の可動接点921b及び第2の可動板部922bを有している。
【0033】
第1の固定部910aと第1の可動部920aとにより第1のスイッチ901aが形成され、第2の固定部910bと第2の可動部920bとにより第2のスイッチ901bが形成される。従って、
図17に示す構造のスイッチ部では、第1のスイッチ901aと第2のスイッチ901bの双方がオンとなった場合にスイッチ部がオンとなり、第1のスイッチ901aまたは第2のスイッチ901bのうちのいずれか一方がオフとなったときにスイッチ部がオフとなる。尚、第1のスイッチ901aは、第1の固定接点911aと第1の可動接点921aとが接触することによりオンとなり、第1の固定接点911aが第1の可動接点921aと離れることによりオフとなる。同様に、第2のスイッチ901bは、第2の固定接点911bと第2の可動接点921bとが接触することによりオンとなり、第2の固定接点911bが第2の可動接点921bと離れることによりオフとなる。
【0034】
このような構造のスイッチ部の場合、
図18に示すように、第1の固定接点911aと第1の可動接点921aとの間、または第2の固定接点911bと第2の可動接点921bとの間に絶縁体等の異物970が存在している場合には、固定接点と可動接点との導通が妨げられ、スイッチ部がオンにならなくなるため、電力を供給することができない。
【0035】
次に、本実施の形態によるスイッチ部100について説明する。スイッチ部100が有する第1のスイッチ101aと第2のスイッチ101bの固定部あるいは可動部は双子接点により構成されている。
図19及び
図20に示す例では、第1の固定部110a及び第2の固定部110bが双子接点となっている。
【0036】
第1の固定部110aは、第1の固定接点111aと第2の固定接点111bの2つの固定接点を有している。第1の固定接点111aは第1の固定バネ112aに設置されており、第2の固定接点111bは第2の固定バネ112bに設置されている。第2の固定部110bは、第3の固定接点111cと第4の固定接点111dの2つの固定接点を有している。第3の固定接点111cは第3の固定バネ112cに設置されており、第4の固定接点111dは第4の固定バネ112dに設置されている。
【0037】
尚、
図20に示すように、第1の固定部110aを構成する第1の固定バネ112aと第2の固定バネ112bとは電気的に接続され、一体に形成されている固定バネに溝を設けることにより第1の固定バネ112aと第2の固定バネ112bとが分離されている。同様に、第2の固定部110bを構成する第3の固定バネ112cと第4の固定バネ112dも電気的に接続されており、一体に形成されている固定バネに溝を設けることにより、第3の固定バネ112cと第4の固定バネ112dとが分離されるように形成されている。
【0038】
第1の可動部120aは単一の第1の可動接点121aを有している。第1の可動接点121aは第1の可動板部122aに設置されており、第1の可動板部122aは第1の可動バネ123aに接続されている。同様に、第2の可動部120bは単一の第2の可動接点121bを有している。第2の可動接点121bは第2の可動板部122bに設置されており、第2の可動板部122bは第2の可動バネ123bに接続されている。
【0039】
本実施の形態では、第1の固定接点111a及び第2の固定接点111bを有する第1の固定部110aと、第1の可動接点121aを有する第1の可動部120aとにより第1のスイッチ101aが形成されている。また、第3の固定接点111c及び第4の固定接点111dを有する第2の固定部11bと、第2の可動接点121bを有する第2の可動部120bとにより第2のスイッチ101bが形成されている。
【0040】
スイッチ部100は、第1のスイッチ101aと第2のスイッチ101bの双方がオンとなった場合にオンとなり、第1のスイッチ101aまたは第2のスイッチ101bのうちのいずれかがオフの場合にオフとなる。
【0041】
尚、第1のスイッチ101aは双子接点のスイッチであるため、第1の固定接点111aまたは第2の固定接点111bの少なくともいずれか一方と、第1の可動接点121aとが接触することにより第1のスイッチ101aがオンとなる。同様に、第2のスイッチ101bも双子接点のスイッチであるため、第3の固定接点111cまたは第4の固定接点111dの少なくともいずれか一方と第2の可動接点121bとが接触することにより第2のスイッチ101bがオンとなる。
【0042】
従って、
図21に示すように、第1の固定接点111aと第1の可動接点121aとの間に異物70が存在している場合であっても、第2の固定接点111bと第1の可動接点121aとが接触していれば第1のスイッチ101aがオンとなり、第2のスイッチ101bもオンとなることでスイッチ部100をオンにできる。
【0043】
また、本実施の形態では、第1のスイッチ101aと第2のスイッチ101bとの間に永久磁石180が設置されている。永久磁石180を第1のスイッチ101aと第2のスイッチ101bとの間に設置することにより、永久磁石180により生じた磁界により固定接点と可動接点との間に発生したアークを吹き飛ばすことができる。例えば、
図22に示されるように、第1のスイッチ101aと第2のスイッチ101bとの間に設置された永久磁石180により一点鎖線矢印に示される方向に磁界が発生するため、破線矢印に示される方向に流れる電流により接点間に生じたアークを二点鎖線矢印に示す方向に吹き飛ばすことができる。
【0044】
ところで、
図17に示す構造のスイッチ部の場合、第1のスイッチ101aと第2のスイッチ101bとは必ずしも同時にはオンとならず、第1のスイッチ901a又は第2のスイッチ901bのうちのいずれか一方のスイッチが先にオンとなり、他方のスイッチが後でオンとなる可能性もある。この場合、後でオンとなる他方のスイッチがオンとなることにより、スイッチ部がオンとなる。従って、後にオンとなるスイッチの接点間に、チャタリング等に起因する突入電流によるアークが発生する場合があり、後でオンとなるスイッチの接点表面にダメージを与え、導通不良の原因となる。
【0045】
図17に示すスイッチ部の場合、
図23(a)に示すように、第1のスイッチ901aが先にオンとなり、第2のスイッチ901bが後でオンとなる場合と、
図23(b)に示すように、第2のスイッチ901bが先にオンとなり、第1のスイッチ901aが後でオンとなる場合との2通りが考えられる。よって、一回のオン動作時に、第1の固定接点911aと第1の可動接点921aとの間に突入電流が流れる確率と、第2の固定接点111bと第2の可動接点921bとの間に突入電流が流れる確率は、各々約1/2であると考えられる。
【0046】
これに対し、本実施の形態におけるスイッチ部100では、第1の固定接点111a、第2の固定接点111b、第3の固定接点111c、第4の固定接点111dと4つの固定接点が設けられている。スイッチ部100では、第1のスイッチ101aまたは第2のスイッチ101bのうち後でオンとなるスイッチの接点の先に接触する固定接点と可動接点との間において突入電流が生じる。
【0047】
図24(a)に示すように、第1の固定接点111aまたは第2の固定接点111bの少なくともいずれか一方が第1の可動接点121aと接触している状態では、第3の固定接点111cが第4の固定接点111dよりも先に第2の可動接点121bと接触する場合には、第3の固定接点111cと第2の可動接点121bとの間で突入電流が流れる。
【0048】
また、
図24(b)に示すように、第1の固定接点111aまたは第2の固定接点111bの少なくともいずれか一方が第1の可動接点121aと接触しているときに、第4の固定接点111dが第3の固定接点111cよりも先に第2の可動接点121bと接触する場合には、第4の固定接点111dと第2の可動接点121bとの間で突入電流が流れる。
【0049】
また、
図24(c)に示すように、第3の固定接点111cと第4の固定接点111dとの少なくともいずれか一方が第2の可動接点121dと接触している場合、第1の固定接点111aが第2の固定接点111bよりも先に第1の可動接点121aと接触するときには、第1の固定接点111aと第1の可動接点121aとの間で突入電流が流れる。
【0050】
また、
図24(d)に示すように、第3の固定接点111cまたは第4の固定接点111dの少なくともいずれか一方が第2の可動接点121dと接触している場合に、第2の固定接点111bが第1の固定接点111aよりも先に第1の可動接点121aと接触するときには、第2の固定接点111bと第1の可動接点121aとの間で突入電流が流れる。
【0051】
従って、一回のオン動作において、それぞれの固定接点に突入電流が流れる確率は1/4となると考えられる。このように、本実施の形態では、各々の固定接点に突入電流が流れる確率が
図17に示す例と比べ半分になるため、同じオン回数であっても、各々の固定接点に与えられるダメージを減らすことができ、コネクタを長寿命化させることができる。
【0052】
尚、上記ではスイッチがオフからオンになる際に発生する突入電流によるアークの場合について説明したが、スイッチがオンからオフになる際に発生するアークについても同様である。
【0053】
スイッチがオンからオフとなる場合、スイッチ部100では、第1のスイッチ101aまたは第2のスイッチ101bの先にオフとなるスイッチの接点のうち、後で離れる固定接点と可動接点との間にアークが生じる。
【0054】
具体的には、
図25(a)に示すように、第1の固定接点111aと第2の固定接点111bのうちの少なくともいずれか一方が第1の可動接点121aと接触している状態で、第3の固定接点111cが第4の固定接点111dよりも後に第2の可動接点121bから離れる場合には、第3の固定接点111cと第2の可動接点121bとの間でアークが発生する。
【0055】
また、
図25(b)に示すように、第1の固定接点111aと第2の固定接点111bの少なくとも一方が第1の可動接点121aと接触している場合において、第4の固定接点111dが第3の固定接点111cよりも後に第2の可動接点121bから離れる場合には、第4の固定接点111dと第2の可動接点121bとの間でアークが発生する。
【0056】
また、
図25(c)に示すように、第3の固定接点111cと第4の固定接点111dの少なくとも一方が第2の可動接点121dと接触している場合において、第1の固定接点111aが第2の固定接点111bよりも後に第1の可動接点121aから離れる場合には、第1の固定接点111aと第1の可動接点121aとの間でアークが発生する。
【0057】
また、
図25(d)に示すように、第3の固定接点111cと第4の固定接点111dの少なくとも一方が第2の可動接点121dと接触している場合、第2の固定接点111bが第1の固定接点111aよりも後に第1の可動接点121aから離れる場合には、第2の固定接点111bと第1の可動接点121aとの間でアークが発生する。
【0058】
従って、一回のオフ動作時に各々の固定接点でアークの発生する確率は1/4となる。このように一つの固定接点でアークの発生する確率が
図17の例と比べ半分となるため、同じオフ回数であっても、各々の固定接点に与えられるダメージを減らすことができ、長寿命化させることができる。
【0059】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、一つのスイッチに可動接点を複数設けた構造のものである。
【0060】
本実施の形態によるスイッチ部について説明する。本実施の形態によるスイッチ部は、各々の可動部が双子接点により形成された第1のスイッチ301aと第2のスイッチ301bとを有している。具体的には、
図27及び
図28に示すように、スイッチ部には、第1の固定部310a及び第2の固定部310bと、第1の可動部320a及び第2の可動部320bとが設けられている。尚、本実施の形態におけるコネクタは、第1の実施の形態におけるコネクタのスイッチ部100を本実施の形態におけるスイッチ部と置き換えた構造のものである。
【0061】
第1の固定部310aは、第1固定バネ312aに設置された第1の固定接点311aを有している。第2の固定部310bは、第2固定バネ312bに設置された第2の固定接点311bを有している。
【0062】
第1の可動部320aは、第1の可動接点321aと第2の可動接点321bとを有している。第1の可動接点321aは第1の可動板部322aに設置されており、第2の可動接点321bは第2の可動板部322bに設置されている。第1の可動板部322a及び第2の可動板部322bは、第1の可動バネ323aに接続されている。
【0063】
第2の可動部320bは、第3の可動接点321cと第4の可動接点321dとを有している。第3の可動接点321cは第3の可動板部322cに設置されており、第4の可動接点321dは第4の可動板部322dに設置されている。第3の可動板部322c及び第4の可動板部322dは、第2の可動バネ323bに接続されている。
【0064】
従って、本実施の形態では、第1の固定接点311aを有する第1の固定部310aと、第1の可動接点321a及び第2の可動接点321bを有する第1の可動部320aにより第1のスイッチ301aが形成されている。また、第2の固定部310bの第2の固定接点311bと第2の可動部320bの第3の可動接点321c及び第4の可動接点321dにより第2のスイッチ301bが形成されている。
【0065】
尚、第1のスイッチ301aは双子接点のスイッチであり、第1の固定接点311aと、第1の可動接点321aまたは第2の可動接点321bのうちの少なくとも一方とが接触することによりオンとなり、第1の固定接点311aと、第1の可動接点321a及び第2の可動接点321bの双方とが離れることによりオフとなる。同様に、第2のスイッチ301bは双子接点のスイッチであり、第2の固定接点311bと第3の可動接点321cまたは第4の可動接点321dのうちの少なくとも一方とが接触することによりオンとなり、第2の固定接点311bと、第3の可動接点321c及び第4の可動接点321dの双方とが離れることによりオフとなる。
【0066】
また、本実施の形態においては、第1のスイッチ301aと第2のスイッチ301bとの間に永久磁石180が設置されている。永久磁石180により生じた磁界により、固定接点と可動接点との間に発生したアークを吹き飛ばすことができる。例えば、
図28に示されるように、第1のスイッチ301aと第2のスイッチ301bとの間に設置された永久磁石180により、一点鎖線矢印に示される方向に磁界が発生し、破線矢印に示される方向に流れる電流により接点間に生じたアークを二点鎖線矢印に示す方向に吹き飛ばすことができる。
【0067】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。