【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省「環境認知型超高効率無線センサネットワークの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明によるワイヤレスセンサネットワークシステムおよびこれに用いる情報収集方法を実施するための形態を以下に説明する。なお、本願における各図は本発明を説明するための概念図であり、図示した各物理的構成や機能的構成は、ハードウェアまたはソフトウェアならびにそれらの組み合わせにより構成することができる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムの構成を示す図である。
図1に示したワイヤレスセンサネットワークシステムは、フュージョンセンタ1と、複数のセンサノード2−A〜2−Fを含んでいる。センサノード2は、位置や環境に係る情報を観測するセンサである。フュージョンセンタ1は、各センサノード2−A〜2−Fで観測された観測データを収集する基地局である。なお、
図1では一例として6台のセンサノード2−A〜2−Fが描かれているが、センサノードの台数に制限は特に無い。以降、複数のセンサノードのそれぞれを区別しない場合には、センサノード2などと記す。
【0014】
図1に示したワイヤレスセンサネットワークシステムの周辺には、周辺無線送信機4や、周辺無線受信機5が存在する場合がある。ここで、周辺無線送信機4および周辺無線受信機5は、フュージョンセンタ1と複数のセンサノード2から構成されるワイヤレスセンサネットワークシステムには含まれない。すなわち、別のネットワークシステムの構成要素である。
なお、
図1では一例として1台の周辺無線送信機4および1台の周辺無線受信機5が描かれているが、周辺無線送信機4および周辺無線受信機5のそれぞれについて、台数に制限は特に無い。また、同一の周辺無線機が、ある時は周辺無線送信機4として動作し、またある時は周辺無線受信機5として動作しても良い。以降、周辺無線送信機4および周辺無線受信機5の集合を、周辺無線システムと記す。
【0015】
図1において、センサノード2−A〜2−Fは、トーン信号3−A〜3−Fをそれぞれ送信している。また、フュージョンセンタ1は、トーン信号3−A〜3−Fを受信している。以降、各トーン信号のそれぞれを区別しない場合には、トーン信号3などと記す。
後述するように、フュージョンセンタ1も信号を送信し、センサノード2はこの信号を受信する。このように、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムでは、フュージョンセンタ1とセンサノード2とは無線で通信する。
なお、トーン信号3は、単一周波数を持つ正弦波信号である。したがって、トーン信号3は、一般的なパケット信号が含む諸データのような情報を含まないのが通常である。トーン信号3は、周波数と、信号強度と、送受信の時刻によって定義可能である。しかし、本発明は通常のトーン信号3だけでなく、各センサノード2を識別するため、トーン信号の周波数を時間で変化させたり、低速な変調を行うなどIDのようなごく小さな情報を含む応答信号でも適用可能である。本願において応答信号とは、フュージョンセンタ1から発信された送信リクエスト信号に応じて、センサノード2がフュージョンセンタ1に送信する信号であり、トーン信号3を含む概念である。実施形態においては、応答信号の一例として、本発明の効果を最も発揮できるトーン信号3を例に説明する。
【0016】
同様に、周辺無線送信機4が周辺無線信号6を送信し、周辺無線受信機5がこの周辺無線信号6を受信する。この周辺無線信号6がトーン信号3と同じ周波数帯域に含まれていれば、ワイヤレスセンサネットワークシステムと周辺無線システムとの間で干渉が発生する可能性がある。このような干渉を回避することが、本発明の目的の一つである。
【0017】
複数のセンサノード2は、それぞれに独立して観測対象を測定し、測定の結果を表すトーン信号3をフュージョンセンタ1に向けて一斉に送信する。フュージョンセンタ1は、複数のセンサノード2から一斉送信される測定結果としてのトーン信号3を、無線通信によって一括受信して収集した上で、その分析を行う。これらの動作の詳細については、後述する。
【0018】
図2Aは、本発明の第1実施形態によるフュージョンセンタ1の構成を、物理的な視点から示す図である。
図2Aに示したフュージョンセンタ1は、バス10と、演算部であるプロセッサ11と、記憶部であるメモリ12と、送受信装置13と、送受信用のアンテナ131と、入出力装置14とを有している。
メモリ12は、データを記憶するためのデータ領域121と、制御用プログラムを記憶したプログラム領域122を含んでいる。メモリ12は、一時記憶型のメモリまたは長期記憶型のハードディスク、ならびにそれらの組み合わせでも良い。
フュージョンセンタ1は、プログラムやデータを格納した記憶媒体141をさらに含んでいても良い。なお、記憶媒体141は、プログラムやデータをメモリ12に移動または複製した後に、フュージョンセンタ1から取り外しても良い。
【0019】
また、フュージョンセンタ1は、図示しない電源をさらに有している。フュージョンセンタ1は、各センサノード2を制御したり、受信した情報を処理したりするため、多くの電力を消費する。したがって、フュージョンセンタ1は、常時電力を供給できるよう、電源コンセントなどから電力を供給する構成が望ましい。
バス10、プロセッサ11、メモリ12、入出力装置14としては汎用のコンピュータを用いることができ、送受信用のアンテナ131を備えた送受信装置13を、コンピュータに有線または無線で接続することによりフュージョンセンタ1とすることができる。また、フュージョンセンタ1は、送受信装置13を備えたコンピュータそのものであっても良い。
【0020】
図2Aに示したフュージョンセンタ1の各構成要素の接続関係について説明する。プロセッサ11と、メモリ12と、送受信装置13と、アンテナ131と、入出力装置14とは、それぞれバス10を介して接続されている。ここで、バス10は、各構成要素の間で相互に信号を送受信する接続関係を一例として表しており、各構成要素は必ずしも図示したとおりに接続されていなくても良い。
アンテナ131は、送受信装置13に接続されている。
記憶媒体141は、入出力装置14に着脱可能に接続される。
【0021】
図2Aに示したフュージョンセンタ1の構成要素の動作について説明する。プロセッサ11は、プログラム領域122に格納されたプログラムを実行する。このとき、プロセッサ11は、データ領域121にアクセスしてデータの読み書きを行っても良いし、送受信装置13や入出力装置14を制御しても良い。
データ領域121は、データを読み書き可能に格納している。また、プログラム領域122は、プログラムを読み書き可能に格納している。
送受信装置13は、アンテナ131を介して、無線信号の送信および受信を行う。
【0022】
入出力装置14は、データ、プログラム、制御信号などの入力および出力を行う。入出力装置14は、一例として、記憶媒体141の読み書きを行うドライブであっても良いし、フュージョンセンタ1の動作を制御するボタンやマウス、キーボードなどのユーザ・インタフェースであっても良いし、プロセッサ11がプログラムを実行した結果などを表示するディスプレイであっても良いし、これらの集合であっても良い。
【0023】
図2Bは、本発明の第1実施形態によるフュージョンセンタ1の構成を、機能的な視点から示す図である。
図2Bに示したフュージョンセンタ1は、仮想バス110と、キャリアセンス部111と、通信条件算出部112と、送信リクエスト信号生成部113と、送受信部114と、分析部115とを有している。
キャリアセンス部111と、通信条件算出部112と、送信リクエスト信号生成部113と、送受信部114と、分析部115とは、それぞれ、仮想バス110を介して接続されている。ここで、仮想バス110は、各構成要素の間で相互に信号を送受信する接続関係を一例として表しており、各構成要素は必ずしも図示したとおりに接続されていなくても良い。
【0024】
次に、
図2Bに示したフュージョンセンタ1の構成要素の動作について説明する。キャリアセンス部111は、フュージョンセンタ1の周辺で、フュージョンセンタ1およびセンサノード2が利用する所定の周波数帯域で通信している、センサノード2以外の周辺無線送信機4を検出する。
通信条件算出部112は、周辺無線送信機4および周辺無線送信機4と通信する周辺無線受信機5との周波数帯域における干渉を回避できる通信条件を、キャリアセンス部111による周辺無線送信機4の検出結果に基づいて、算出する。
送信リクエスト信号生成部113は、通信条件算出部112によって算出された通信条件に基づいて、複数のセンサノード2の全てに向けた送信リクエスト信号を生成する。
キャリアセンス部111・通信条件算出部112・送信リクエスト信号生成部113の動作はそれぞれ、プロセッサ11が、プログラム領域122に格納されたキャリアセンスプログラム・通信条件算出プログラム・送信リクエスト信号生成プログラムを実行し、データ領域121にアクセスしてデータの読み書きを行うことなどによって、実現する。
【0025】
送受信部114は、送信リクエスト信号生成部113によって生成された送信リクエスト信号を、センサノード2に向けて送信する。また、送受信部114は、複数のセンサノード2から一斉送信される複数のトーン信号3の集合体を、受信信号として一括受信する。送受信部114の動作は、プロセッサ11が、プログラム領域122に格納された送信リクエスト信号送信プログラムまたは受信信号受信プログラムを実行し、送受信装置13を制御し、データ領域121にアクセスしてデータの読み書きを行うことなどによって、実現する。
【0026】
分析部115は、送受信部114によって受信された受信信号の分析を行う。分析部115の動作は、プロセッサ11が、プログラム領域122に格納された分析プログラムを実行し、データ領域121にアクセスしてデータの読み書きを行うことなどによって、実現する。
【0027】
図3Aは、本発明の第1実施形態によるセンサノード2の構成を、物理的な視点から示す図である。
図3Aに示したセンサノード2は、バス20と、プロセッサ21と、メモリ22と、送受信装置23と、アンテナ231と、入出力装置24と、センサ25とを有している。メモリ22は、データ領域221と、プログラム領域222とを含んでいる。センサノード2は、プログラムやデータを格納した記憶媒体241をさらに含んでいても良い。なお、記憶媒体241は、プログラムやデータをメモリ22に移動または複製した後に、センサノード2から取り外しても良い。
また、センサノード2は、図示しない電源をさらに有していることが望ましい。本発明におけるセンサノード2は低消費電力であるため、電源として乾電池などを使用することができ、小型化を図ることができる。
【0028】
図3Aに示したセンサノード2の構成要素の接続関係について説明する。プロセッサ21と、メモリ22と、送受信装置23と、アンテナ231と、入出力装置24と、センサ25とは、それぞれ、バス20を介して接続されている。ここで、バス20は、各構成要素の間で相互に信号を送受信する接続関係を一例として表しており、各構成要素は必ずしも図示したとおりに接続されていなくても良い。
アンテナ231は、送受信装置23に接続されている。
記憶媒体241は、入出力装置24に着脱可能に接続される。
【0029】
図3Aに示したセンサノード2の構成要素の動作について説明する。プロセッサ21は、プログラム領域222に格納されたプログラムを実行する。このとき、プロセッサ21は、データ領域221にアクセスしてデータの読み書きを行っても良いし、送受信装置23や、入出力装置24や、センサ25を制御しても良い。
データ領域221は、データを読み書き可能に格納している。また、プログラム領域222は、プログラムを読み書き可能に格納している。
送受信装置23は、アンテナ231を介して、無線信号の送信および受信を行う。
【0030】
入出力装置24は、データ、プログラム、制御信号などの入力および出力を行う。入出力装置24は、一例として、記憶媒体241の読み書きを行うドライブであっても良いし、センサノード2の動作を制御するボタンやマウス、キーボードなどのユーザ・インタフェースであっても良いし、プロセッサ21がプログラムを実行した結果などを表示するディスプレイであっても良いし、これらの集合であっても良い。
センサ25は、プロセッサ21によって制御されるなどして、観測対象の測定を行う。この測定の結果は、バス20やプロセッサ21を介して、データ領域221に格納されることが望ましい。
【0031】
図3Bは、本発明の第1実施形態によるセンサノード2の構成を、機能的な視点から示す図である。
図3Bに示したセンサノード2は、仮想バス210と、測定部211と、通信条件検出部212と、トーン信号生成部213と、送受信部214とを有している。
測定部211と、通信条件検出部212と、トーン信号生成部213と、送受信部214とは、それぞれ、仮想バス210を介して接続されている。ここで、仮想バス210は、各構成要素の間で相互に信号を送受信する接続関係を一例として表しており、各構成要素は必ずしも図示したとおりに接続されていなくても良い。
【0032】
次に、
図3Bに示したセンサノード2の構成要素の動作について説明する。測定部211は、センサノード2が設置されている場所において、観測対象の測定を行う。測定部211の動作は、
図3Aに示すプロセッサ21が、プログラム領域222に格納された測定プログラムを実行し、センサ25を制御し、データ領域221にアクセスしてデータの読み書きを行うことなどによって、実現する。
【0033】
通信条件検出部212は、受信された送信リクエスト信号から通信条件を検出する。検出された通信条件は、データ領域221に格納されることが望ましい。
トーン信号生成部213は、検出された通信条件に基づいて、測定の結果を表すトーン信号3を生成する。
通信条件検出部212・トーン信号生成部213の動作はそれぞれ、プロセッサ21が、プログラム領域222に格納された通信条件検出プログラム・トーン信号生成プログラムを実行し、データ領域221にアクセスしてデータの読み書きを行うことなどによって、実現する。
【0034】
送受信部214は、フュージョンセンタ1から送信された送信リクエスト信号を受信する。受信された送信リクエスト信号は、データ領域221に格納されることが望ましい。また、送受信部214は、トーン信号生成部213によって生成されたトーン信号3を、送信リクエスト信号に応じたタイミングでフュージョンセンタ1に向けて送信する。
送受信部214の動作は、プロセッサ21が、プログラム領域222に格納された送信リクエスト信号受信プログラムまたはトーン信号送信プログラムを実行し、送受信装置23を制御し、データ領域221にアクセスしてデータの読み書きを行うことなどによって、実現する。
ここまでは主に、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムの構成について説明した。ここからは主に、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークの動作、すなわち本実施形態による情報収集方法について説明する。
【0035】
まず、測定部211の動作の詳細について説明する。測定部211が測定する観測対象は、例えば、温度、湿度、気圧、明るさ、濃度、線量、緯度、経度、などであっても良い。いずれの場合も、センサ25として、温度計、湿度計、気圧計、照度計、濃度計、ガイガーカウンター、GPS(Global Positioning System:全地球測位網)受信装置、などの適切な測定手段を用意することが望ましい。観測対象は上記のものに限られず、種々のものが考えられる。
ここでは、一例として、観測対象がセンサノード2周辺の気温であり、センサ25が温度計である場合について説明する。
【0036】
測定部211が観測対象を測定するには、例えば、プロセッサ21の制御下でセンサ25が気温を測定する。その測定結果は、データ領域221に記憶させることが望ましい。この測定動作は、センサノード2の消費電力を節約する観点からは、送信リクエスト信号を受信した際にのみ実行されることが望ましい。しかしながら、例えばガイガーカウンターによる線量の測定には比較的長い時間が必要であるので、送信リクエスト信号を受信してからトーン信号3を送信するまでのタイムラグを最小化する観点からは、一連の測定動作を常時繰り返し実行されても良い。
【0037】
次に、トーン信号生成部213の動作の詳細について説明する。トーン信号生成部213は、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式でトーン信号3を生成する。すなわち、トーン信号3の周波数は、OFDMサブキャリア周波数の集合から選択されて設定される。観測値をトーン信号3の周波数に変換するこの手法を、以降、周波数軸マッピングと記す。
図4Aは、本発明による周波数軸マッピングの原理を概略的に示す図である。
図4Aは、観測値を示す第1の軸と、サブキャリア周波数番号を示す第2の軸とを示している。
【0038】
まず、観測値をkと置き、観測範囲の最小値をK
minと置き、同じく最大値をK
maxと置き、中心値をK
Cと置く。ここで、観測範囲中心値K
Cは、観測範囲の最大値および最小値の中心値であり、次の式で定義されるものとする。
K
C=(K
max+K
min)/2
なお、観測範囲の幅の半分の値Wは、以下のように定義される。
W=(K
max−K
min)/2
【0039】
次に、サブキャリア周波数番号をn
Cと置き、サブキャリア周波数番号の最小値をN
minと置き、同じく最大値をN
maxと置き、中心値をN
Cと置く。ここで、サブキャリア周波数中心番号N
Cは、サブキャリア周波数番号の最大値と、最小値との中心値であり、次の式で定義されるものとする。
N
C=(N
max+N
min)/2
なお、このようなサブキャリア周波数中心番号N
Cが存在するためには、サブキャリアの総数は奇数である必要があり、以下のように定義される整数Aが存在するものとする。
N
max−N
min=2A
【0040】
周波数軸マッピングの具体的な計算方法について説明する。観測値kが観測範囲最小値K
min以下であれば、サブキャリア周波数最小番号N
minを割り当てる。同様に、観測値kが観測範囲最大値K
max以上であれば、サブキャリア周波数最大番号N
maxを割り当てる。
観測値kが上記以外の、すなわち
K
min<k<K
max
の関係を満足する場合は、観測値kを整数2Aで刻んでサブキャリア周波数番号n
Cに割り当てる。このとき、割り当てられるサブキャリア周波数番号n
Cは以下の式で算出される。
【数1】
すなわち、観測値kと、観測範囲中心値K
Cとの差を、整数2Aの逆数で離散化し、小数点以下を切り捨てた上で、対応するサブキャリア周波数番号n
Cと、サブキャリア周波数中心番号N
Cとの差に置き換えることが出来る。
【0041】
図4Bは、本発明による周波数軸マッピングの具体例を示す図である。この例では、温度を20〜30°Cの範囲で測定し、サブキャリア周波数番号0〜100番の範囲でマッピングする。
図4Aに対応させて考えると、
K
min=20
K
max=30
K
C=25
W=5
N
min=0
N
max=100
N
C=50
A=50
となり、より具体的には、周波数軸マッピングは以下の式を演算することに等しくなる。
【数2】
【0042】
トーン信号3の周波数は、上記に説明したような周波数軸マッピングによって、すなわち観測対象の測定結果に応じて決定される。
決定されたトーン信号周波数は、少なくともトーン信号送信時刻までは、トーン信号周波数データとしてデータ領域221に格納されることが望ましい。なお、データ領域221に格納されたトーン信号周波数データは、次回に決定される周波数と入れ替わりで削除されても良いし、データ領域221に空き領域が残っている限り累積しても良い。または、最新のトーン信号周波数データをデータ領域221に格納する空き領域が足りなければ古いトーン信号周波数データから順番に入れ替わりで削除されても良い。
【0043】
ここで、センサノード2の送受信部214の動作のうち、トーン信号3を送信する動作の詳細について説明する。
送受信部214は、トーン信号周波数データと、トーン信号3の信号強度を表すトーン信号強度データと、トーン信号3を送信する時刻を表すトーン信号送信時刻データとを、データ領域221から読み出す。なお、詳細については後述するが、トーン信号強度データと、トーン信号送信時刻データとは、いずれも、後述する通信条件検出部212の動作によって、データ領域221に格納されている。
【0044】
送受信部214は、トーン信号送信時刻に、観測結果に応じたトーン信号周波数を有するトーン信号3を、フュージョンセンタ1に向けて送信する。トーン信号3の送信は、全てのセンサノード2またはその一部において、一斉に実行される。
このように、センサノード2からフュージョンセンタ1に向けたトーン信号3の送信は、それぞれのトーン信号3がごく短い上に、一斉に実行されるので、一度の送信がやはりごく短い時間で完了する。
【0045】
ここで、フュージョンセンタ1の送受信部114の動作のうち、トーン信号3を一括受信する動作の詳細について説明する。
複数のセンサノード2の送受信部214から一斉に送信された複数のトーン信号3は、フュージョンセンタ1にほぼ同時に到達する。厳密には、各センサノード2からフュージョンセンタ1までの距離が異なるため、各トーン信号3の到達時刻には多少のずれが生じ得るが、ここではこのずれを無視する。
フュージョンセンタ1の送受信部114は、複数のセンサノード2から一斉送信される複数のトーン信号3の集合体を、1つの受信信号として一括受信すれば良い。この動作の一例を、
図5A〜
図5Dを参照して説明する。
【0046】
図5Aは、本発明の第1実施形態によるセンサノード2−Aが送信するトーン信号3−Aの一例を示す図である。
図5Bは、本発明の第1実施形態による他のセンサノード2−Bが送信するトーン信号3−Bの一例を示す図である。
図5Cは、本発明の第1実施形態によるさらに他のセンサノード2−Cが送信するトーン信号3−Cの一例を示す図である。
図5A〜
図5Cに示した例では、3つのセンサノード2−A〜2−Cが送信する3つのトーン信号3−A〜3−Cは、それぞれ異なる周波数を有しているが、一部またはすべてのトーン信号3において周波数が同じであっても良い。なお、3つのセンサノード2−A〜2−Cが送信する3つのトーン信号3−A〜3−Cにおいて、信号強度は同じであることが望ましい。
【0047】
図5Dは、本発明の第1実施形態によるフュージョンセンタ1が1つの受信信号として一括受信する、複数のトーン信号3−A〜3−Cの集合体の一例を示す図である。
図5Dに示した例では、フュージョンセンタ1が受信する信号は、3つの周波数成分を有している。これら3つの周波数成分は、3つのトーン信号3−A〜3−Cの周波数にそれぞれ対応している。なお、同じ周波数を有する複数のトーン信号3は、当然ながら信号強度が大きい1つの周波数成分として受信される。
【0048】
これら3つの周波数成分において、それぞれの信号強度は必ずしも同じではない。受信時の信号強度の違いは、送信元から送信先までの距離に反比例して信号の強度が減衰することに由来する。各周波数成分の信号強度は、いずれの場合も、閾値である所望受信電力P
rFCより大きくなければならない。したがって、トーン信号3の送信時の信号強度は、所望受信電力P
rFCの値や、各センサノード2からフュージョンセンタ1までの最大距離などから逆算して設定されることが望ましい。
また、所望受信電力P
rFCや、トーン信号3の送信時の信号強度は、使用する周波数帯域における雑音電力よりも十分に大きいことが望ましい。
なお、トーン信号3の信号強度は予め所定値に決まっている必要はない。フュージョンセンタ1から送信される送信リクエスト信号にトーン信号3の信号強度を指定するトーン信号強度情報を含めることにより、トーン信号3の信号強度が、フュージョンセンタ1から送信される送信リクエスト信号により指定される構成でも良い。
【0049】
ここで、分析部115の動作の詳細について説明する。
フュージョンセンタ1が受信したトーン信号3の集合体が含む情報のうち、分析部115が主に利用するのは、その周波数成分である。すなわち、分析部115は、OFDMのサブキャリア周波数のうち、どれが利用されて、どれが利用されなかったか、を検出する。
【0050】
一例として、用意された0番から100番のサブキャリア周波数のうち、20番から30番までの11種類と、80番との、合計12種類のサブキャリア周波数に対応する周波数成分が、トーン信号3の集合体から検出された場合について考える。このような場合は、80番のサブキャリア周波数に対応する周波数成分が例外的であると推定することが出来る。これは、一つの室内に温度測定用のセンサノード2を例えば30個散在させたときに、通常の反応を示しているセンサノードはそれぞれ20番から30番までのサブキャリア周波数でトーン信号3を発信し、例外的に1個または数個のセンサノードが80番のサブキャリア周波数でトーン信号3を発信したことを意味する。
ここで、20番、21番、22番・・・30番は、それぞれ22.0℃、22.1℃、22.2℃・・・23.0℃を観測した場合に、センサノードが発信するトーン信号のサブキャリア周波数である。また80番は、28.0℃を観測した場合に、センサノードが発信するトーン信号のサブキャリア周波数である。1個または数個のセンサノードだけが80番のサブキャリア周波数でトーン信号3を発信したことは、22〜23℃の室内の一部に28℃の場所があることを示す。フュージョンセンタ1が受信したトーン信号3の集合体の中に、このような例外的な異常値を検出することにより、例えば部屋の一部で火災が起きていることなどを発見することができる。
【0051】
なお、各周波数成分の受信電力については、同じ周波数のトーン信号3を送信したセンサノード2の総数や、センサノード2ごとのフュージョンセンタ1までの距離などに左右されるため、ここでは情報か否かの閾値判定以外の分析には利用しない。
分析部115は、以上のような分析の結果を、データ領域121に格納しても良いし、入出力装置14から出力しても良い。
【0052】
次に、本発明の課題の1つである周辺無線システムとの干渉回避を実現するために行うキャリアセンスについて説明する。
まず、キャリアセンス部111の動作の詳細について説明する。
図6Aは、本発明の第1実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムと、その周辺で通信する周辺無線システムの無線機との相互干渉問題について、距離の観点から説明する図である。
【0053】
図6Aは、フュージョンセンタ1と、2つのセンサノード2−A、2−Bと、2つの周辺無線送信機4−A、4−Bと、周辺無線受信機5とが配置された位置関係の例を示している。ここで、周辺無線送信機4−A、4−Bおよび周辺無線受信機5は、フュージョンセンタ1とセンサノード2−A、2−Bから構成されるワイヤレスセンサネットワークシステムには含まれない。すなわち、別のネットワークシステムの構成要素である。
通信範囲200−Aは、センサノード2−Aから送信されるトーン信号3−Aが到達する範囲を示しており、その形状は例えば、センサノード2−Aを中心とする円である。同様に、通信範囲200−Bは、センサノード2−Bから送信されるトーン信号3−Bが到達する範囲を示しており、その形状は例えば、センサノード2−Bを中心とする円である。
また、通信範囲400−Aは、周辺無線送信機4−Aが送信する周辺無線信号6−Aが到達する範囲を示しており、その形状は例えば、周辺無線送信機4−Aを中心とする円である。その他、周辺無線送信機4−Bからは周辺無線信号6−Bが送信される。なお、本実施の形態においては、特に平面距離が問題となるため、送信機を中心とする円を基準にしているが、本発明は送信機を中心とする球面を基準に考えた場合にも同様に適用可能である。
【0054】
フュージョンセンタ1の位置は、通信範囲200−Aの内側であり、通信範囲200−Bの内側でもあるが、通信範囲400−Aの外側である。また、フュージョンセンタ1から周辺無線送信機4−Bまでの距離は、フュージョンセンタ1から周辺無線送信機4−Aまでの距離よりもさらに長い。
【0055】
図6Bは、
図6Aに例示したワイヤレスセンサネットワークシステムと、その周辺で通信する他の無線機との相互干渉問題について、周波数および信号強度の観点から説明する図である。
図6Bは、横軸が周波数を表し、縦軸が受信電力を表すグラフである。
図6Bのグラフには、
図6Aに例示した4つの信号、すなわちトーン信号3−A、3−Bおよび周辺無線信号6−A、6−Bと、その他の雑音Nと、が含まれている。ここで雑音とは、主としてフュージョンセンタ1の回路内で発生する不規則な信号を指しており、周辺無線システムがキャリアセンス対象のチャネルを利用して情報信号を発信していないにもかかわらず検出される信号を意味する。したがって、雑音は情報信号に比べて無視できるくらい小さい場合も含む。
図6Bに示した例では、4つの信号はそれぞれ周波数が異なっているが、実際には一部の信号において周波数が同じである場合も考えられる。その一方で、雑音Nは、幅広い周波数帯域に広がって存在している。
【0056】
図6Bの縦軸において、キャリアセンスレベルP
CSは、受信した信号の周波数成分ごとにキャリアセンス部111が検出可能な最小の受信電力である。言い換えれば、周辺無線信号6−Bのように、受信電力がキャリアセンスレベルP
CSを下回る信号を、キャリアセンス部111は無視する。このように、キャリアセンスレベルP
CSとしては、キャリアセンスにおいて空きチャネルとして無視できる程度の受信電力の値を設定する。なお、キャリアセンスレベルP
CSは、雑音Nの電力より十分に大きく設定されることが望ましい。
【0057】
図6Bの縦軸において、情報判定閾値P
THは、受信した信号の周波数成分ごとにキャリアセンス部111が有効と判定する最小の受信電力である。言い換えれば、受信信号のうち、所望する成分であるトーン信号3−A、3−Bは、
図6Bに例示したように、情報判定閾値P
THを上回っている必要がある。その一方で、
図6Bに示した例では、所望しない周辺無線信号6−Aも情報判定閾値P
THを上回っている。
このような周辺無線信号6−Aは、分析部115において、センサノード2から送信されたトーン信号3と区別できないおそれがある。すなわち、フュージョンセンタ1およびセンサノード2が、周辺無線送信機4および周辺無線受信機5から悪影響を受ける恐れがある。このような悪影響を、以降、干渉と記す。本出願において、周辺無線システムとの干渉を回避するとは、まったく干渉が生じない状態だけを意味するものではなく、ワイヤレスセンサネットワークシステムが情報の送受信を行うに際して、周辺無線システムから受ける悪影響が問題にならない程度に抑制された状態も含むものとする。
また、このような周辺無線信号6の存在は、反対に、フュージョンセンタ1およびセンサノード2が、周辺無線送信機4および周辺無線受信機5からなる周辺無線システムに悪影響を与えている可能性を示唆している。このような悪影響を、以降、与干渉と記す。本出願において、与干渉を回避するとは、まったく与干渉が生じない状態だけを意味するものではなく、周辺無線システムが情報の送受信を行うに際して、ワイヤレスセンサネットワークシステムから受ける悪影響が問題にならない程度に抑制された状態も含むものとする。
【0058】
上記に説明した干渉または与干渉を回避するために、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムでは、フュージョンセンタ1およびセンサノード2の間で通信を行う前に、この通信で使用する周波数帯域で周辺無線送信機4や周辺無線受信機5などが通信を行っているかどうかを検出する。このような検出をキャリアセンスと記す。キャリアセンスを行えば、チャネルが空いたタイミングで通信を行うことができる。その結果、周辺無線送信機4や周辺無線受信機5が通信を行っていないときに、ワイヤレスセンサネットワークシステムが情報の送受信を行うことができるため、周辺無線システムからの干渉を回避することができる。
【0059】
従来技術として、無線通信システムには、それに含まれる複数の無線送受信機がそれぞれにキャリアセンスを行う方法がある。このような方法では、無線送受信機の総数が増えるとキャリアセンスに必要な時間が増大する。また、各無線送受信機がキャリアセンスに必要な構造を有するため、無線送受信機のサイズが大きくなり、消費電力も大きくなる。
その一方で、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムでは、フュージョンセンタ1がキャリアセンスを行い、センサノード2はキャリアセンスを行わない。この方法は、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムでは、複数のセンサノード2の全てまたは一部がフュージョンセンタ1との通信を一斉に行い、かつ、一度の通信が非常に短い時間で完了するからこそ可能となる。
【0060】
図6Cは、本発明の第1実施形態によるフュージョンセンタ1が算出する想定与干渉範囲を説明する図である。ここで、想定与干渉範囲とは、フュージョンセンタ1および複数のセンサノード2が通信する際に、同じ周波数帯域で通信する周辺無線送信機4および周辺無線受信機5への干渉が発生し得る範囲である。
キャリアセンスを行うことで、周辺無線システムによる通信の有無、延いては周辺無線信号6を送信している周辺無線送信機4の存在を検出できる。また、フュージョンセンタ1から見た周辺無線信号6の受信電力に基づいて、フュージョンセンタ1から周辺無線送信機4までの距離を推測することもできる。
【0061】
また、フュージョンセンタ1は、周辺無線信号6に含まれるパケットデータの種類や、複数の周辺無線送信機4が配置されている密度などに係る情報に基づいて、周辺無線送信機4から周辺無線受信機5までの距離を推測することが出来る。
図6Cでは、周辺無線送信機4から周辺無線受信機5までの距離をd1と記している。
しかし、想定与干渉範囲を算出するためには、周辺無線送信機4までの距離のみならず、周辺無線受信機5までの距離も推定する必要がある。
図6Cでは、フュージョンセンタ1から周辺無線受信機5までの距離をd2と記している。
フュージョンセンタ1は、キャリアセンスを行うことによって、所定の周波数帯域で通信を行う周辺無線送信機4の存在を検出するのみならず、この周辺無線送信機4が送信する周辺無線信号6を受信する周辺無線受信機5が存在し得る場所も推測する。この動作について説明する。
【0062】
まず、フュージョンセンタ1のキャリアセンス部111は、キャリアセンスレベルを決定する。キャリアセンスレベルとは、キャリアセンスの対象となる周波数帯域で受信した信号を考慮するか否かの基準となる受信電力閾値である。したがって、キャリアセンスレベルを決定することは、
図6Cに示したキャリアセンス範囲401を決定することに等しい。
キャリアセンスレベルを低く設定することは、小さな受信電力であってもキャリアセンスの対象とすることを意味する。すなわち、フュージョンセンタ1から遠くにある周辺無線送信機4までキャリアセンスの対象とすることになり、キャリアセンス範囲401は広くなる。
逆に、キャリアセンスレベルを高く設定することは、小さな受信電力である場合にはキャリアセンスの対象としないことを意味する。すなわち、フュージョンセンタ1から近くにある周辺無線送信機4だけをキャリアセンスの対象とすることになり、キャリアセンス範囲401は狭くなる。
キャリアセンス範囲401の形状は例えば、フュージョンセンタ1を中心とする円である。
ここで、キャリアセンスレベルは、任意に決定して良い。例えば、予めデータ領域121にキャリアセンスレベルの候補値と、対応するキャリアセンス範囲の半径との対をリストアップしたテーブルを予め用意しておき、このテーブルの中から選択することでキャリアセンスレベルを決定すれば良い。この場合は、複数回のキャリアセンスをそれぞれ異なるキャリアセンスレベルで実行しても良い。また、キャリアセンスレベルを人為的に決定し、入出力装置14から入力して、キャリアセンス部111における決定値としても良い。
【0063】
次に、周辺無線送信機4が、キャリアセンス範囲401の外側に位置していると想定する。ここでは、キャリアセンス範囲401の境界線上に位置していると想定する。
上記のように、周辺無線送信機4から周辺無線受信機5までの距離d1を仮定し、
図6Cに示した周辺無線送信機4の通信範囲400を推測する。
図6Cに示した例では、通信範囲400の形状は、周辺無線送信機4を中心とし、距離d1を半径とする円である。
【0064】
そして、通信範囲400の中で、フュージョンセンタ1との距離が最小となる点に、周辺無線受信機5が位置していると推定する。このとき、
図6Cに示した距離d2が、フュージョンセンタ1から周辺無線受信機5までの距離である。
【0065】
次に、想定与干渉範囲402を算出する。
図6Cに示した例では、想定与干渉範囲402の形状は、フュージョンセンタ1を中心とし、距離d2を半径とする円である。
想定与干渉範囲402を算出した後は、周辺無線送信機4および周辺無線受信機5に対する干渉および与干渉を回避しつつフュージョンセンタ1およびセンサノード2の間で通信を行える範囲を算出する。このような範囲を、以降、情報収集範囲と記す。
【0066】
図6Dは、
図6Cに例示したフュージョンセンタ1が算出する情報収集範囲403について説明する概念図である。
図6Dには、
図6Cに例示したフュージョンセンタ1、センサノード2−A〜2−C、周辺無線送信機4、周辺無線受信機5、通信範囲400、キャリアセンス範囲401および想定与干渉範囲402の他に、情報収集範囲403がさらに例示されている。
情報収集範囲403は、基本的に、想定与干渉範囲402より狭い。
【0067】
ここで、通信条件算出部112の動作の詳細について説明する。以下の通信条件の算出は、通信条件算出部112によって行う。
フュージョンセンタ1においては、フュージョンセンタ1の送受信装置13で受信した受信電力が、ある所望の閾値である受信電力P
rFCを超えた場合を、センサノード2からのトーン信号3として認識する。
そのため、センサノード2がトーン信号3を送信する際の送信電力P
tSNは、トーン信号3がフュージョンセンタ1で受信されたときに、所望受信電力P
rFCを超えるように設計する必要がある。
以下に、センサノード2の送信電力P
tSNを設計する方法について説明する。
【0068】
OFDMサブキャリア1つあたりのフュージョンセンタ1の所望受信電力P
rFCと、SNR(Signal to Noise ratio:信号対雑音比)の関係は、以下の計算式で与えられる。
【数3】
ここで、SNR
FCはフュージョンセンタ1における所望SNRを示し、P
rFCはフュージョンセンタ1における所望受信電力を示す。Nはトーン信号3の帯域幅における雑音電力を示し、W
STはトーン信号3の使用帯域幅を示す。W
SNはOFDMサブキャリアの総帯域幅を示し、SCはサブキャリアの総数を示す。数3の分母は1サブキャリアあたりの雑音電力を表している。
【0069】
1つのセンサノード2あたりの送信電力P
tSNは、受信電力と距離による減衰の関係から算出される。ここでは、各センサノード2が送信するトーン信号3の送信電力が一律である場合について説明する。フュージョンセンタ1から最も遠いセンサノードの場合でも、送信電力P
tSNが距離による減衰によって所望受信電力P
rFCを下回らないことが望ましい。このような条件は、以下の式で表される。
【数4】
ここで、P
tSNは1つのセンサノード2あたりの送信電力を示し、P
rFCはフュージョンセンタ1の所望受信電力を示す。λはトーン信号3の波長を示し、d
cは情報収集範囲403の半径を示す。d
0は所定の参照距離を示し、nは伝搬減衰係数を示している。
【0070】
フュージョンセンタ1を中心とする情報収集範囲403の半径である距離d
cを徐々に大きく設定し、そのときに所望される送信電力P
tSNを数4より算出する。
そして、以下の数5より、フュージョンセンタ1および各センサノード2が周辺無線送信機4および周辺無線受信機5に与える合成干渉電力I
aggを、以下の式により算出する。
【数5】
ここで、I
aggは周辺無線システムへ与える合成干渉電力を示し、rはフュージョンセンタ1からの距離を示す。また、θはフュージョンセンタ1を中心とした所定方向との角度を示し、d
cは情報収集範囲403の半径を示す。P
tSN(d
c)はフュージョンセンタ1からの距離d
cに位置するセンサノード2の送信電力を示し、ρ
SN(r,θ)はフュージョンセンタ1を中心として距離r、角度θの範囲におけるセンサノード2の密度を示す。d
0は所定の参照距離を示し、zはセンサノード2から周辺無線受信機5までの距離を示す。
【0071】
算出された合成干渉電力I
aggが許容値よりも小さい場合は、情報収集範囲403の半径である距離d
cを徐々に大きくして、所望される送信電力P
tSNおよび合成干渉電力I
aggの算出を繰り返す。
算出された合成干渉電力I
aggが許容値を上回った場合はそこで算出の繰り返しを終了し、上回ったときのd
cの1つ前の半径である距離d
cを採用して、情報収集範囲403を決定する。
採用された情報収集範囲403の条件下で算出されたトーン信号3の送信電力P
tSNを、許容干渉値の条件を満たす送信電力として採用し、収集範囲内のセンサノード2に予め設計しておくことができる。その場合、この送信電力は、センサノード2のデータ領域221に格納されることが望ましい。
【0072】
または、採用されたトーン信号3の送信電力を、情報収集範囲403内の各センサノード2にその都度設定することもできる。その場合は、採用された送信電力P
tSNの値をトーン信号強度情報として通信条件に含め、送信リクエスト信号に含まれる通信条件の1つとしてフュージョンセンタ1から各センサノード2に送信される。送信リクエスト信号を受信したセンサノード2は、送受信装置23で受信された送信リクエスト信号に含まれるトーン信号強度情報を、通信条件検出部212で検出し、送信電力P
tSNのトーン信号3をフュージョンセンタ1に送信する。これにより、フュージョンセンタ1は、情報収集範囲403内にあるセンサノード2から、受信電力P
rFCを超えるトーン信号3を受信することができる。
なお、通信条件には、さらに、一部のセンサノード2にはトーン信号の送信を要求し、他のセンサノード2はこの要求の対象外とする、分別条件が含まれても良い。この分別条件については、本発明の他の実施形態として後述する。
【0073】
さらに、上記で求めた距離d
cを採用して決定される情報収集範囲403内にあるセンサノード2に対して送信リクエスト信号が届くように、送信リクエスト信号の送信電力を決定しても良い。この場合、送信リクエスト信号は通信条件を含まなくても良い。
送信リクエスト信号を受信した複数のセンサノード2は、送受信装置23で受信された送信リクエスト信号の信号電力が、センサノード内で設定されている閾値を超えた場合だけ、フュージョンセンタ1にトーン信号3を送信する。これにより、フュージョンセンタ1は、距離d
cを採用して決定される情報収集範囲403内にあるセンサノード2からのみトーン信号3の送信を受けることができる。
この送信リクエスト信号の送信電力は、通信条件としてフュージョンセンタ1のデータ領域121に格納されることが望ましい。
【0074】
または、上記で求めた距離d
cを採用して決定される情報収集範囲403内にあるセンサノード2のみを指定するID情報を、通信条件として送信リクエスト信号に含めても良い。この場合、送信リクエスト信号を受信した複数のセンサノード2は、送受信装置23で受信された送信リクエスト信号に含まれるID情報を、通信条件検出部212で検出し、自己が指定されたと判断した場合だけ、フュージョンセンタ1にトーン信号3を送信する。これにより、フュージョンセンタ1は、距離d
cを採用して決定される情報収集範囲403内にあるセンサノード2からのみトーン信号3の送信を受けることができる。
このセンサノード分別情報としてのID情報は、通信条件としてフュージョンセンタ1のデータ領域121に格納されることが望ましい。
以上の通信条件の算出は、通信条件算出部112によって行う。
【0075】
ここで、送信リクエスト信号生成部113の動作の詳細について説明する。
送信リクエスト信号生成部113は、センサノード2から観測結果としてのトーン信号3の送信を要求する送信リクエスト信号を生成する。各センサノード2は、送信リクエスト信号を受信した場合には、観測結果に対応する周波数のトーン信号3をフュージョンセンタ1に送信するように構成されている。したがって、この送信リクエスト信号は、単にセンサノード2に応答を要求する信号だけから成るものでも良いし、各種の通信条件を含んでいても良い。ここで、通信条件には、前述した送信電力P
tSNの値をトーン信号強度情報として含んでも良い。
送信リクエスト信号に含まれる通信条件には、さらに、各センサノード2がフュージョンセンタ1に向けたトーン信号3を送信するタイミングを指定する情報を含んでいても良い。ただし、実際には周辺無線送信機4による周辺無線信号6の送信が始まる可能性はいつでもあるので、各センサノード2は送信リクエスト信号を受信したら直ちにトーン信号3を送信することが望ましい。この場合は、タイミングを指定する必要が無い。
【0076】
ここで、送受信部114の動作のうち、送信リクエスト信号を送信する動作の詳細について説明する。
まず、フュージョンセンタ1のキャリアセンス部111でキャリアセンスを行い、キャリアセンスレベルP
CSを超える受信電力が無いことを確認する。キャリアセンスレベルを超える受信電力が検出されないということは、周辺無線システムが通信を行っていない、または通信を行っていても無視できるレベルであることを意味する。すなわち、フュージョンセンタ1およびセンサノード2が使用する周波数帯域が空いている状態である。
周波数帯域が空いていることを検出したら、送受信部114は、生成された送信リクエスト信号を、所定のタイミングで全てのセンサノード2に向けて送信する。ただし、前述したとおり、周辺無線送信機4による周辺無線信号6の送信が始まる可能性はいつでもあるので、送信リクエスト信号生成部113は送信リクエスト信号が生成されたら直ちに送信リクエスト信号を送信することが望ましい。ただし、その間に送信リクエスト信号を定義する諸条件を表すデータをデータ領域121に格納しても良い。
【0077】
ここで、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムの動作、すなわち本実施形態による情報収集方法についてまとめる。
図7Aは、本発明の第1実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムの動作の一例を示すシーケンス図である。
図7Aは、フュージョンセンタ1およびセンサノード2−A〜2−Fの動作の一例を示している。ただし、センサノード2−C〜2−Eの動作については図示を省略している。なお、前述したとおり、センサノード2の総数に制限は特に無い。
【0078】
図7Aに示した例では、まず、フュージョンセンタ1が、第1ステップS11としてキャリアセンスを行う。次に、フュージョンセンタ1が、第2ステップS12として通信条件を算出する。そして、フュージョンセンタ1が、第3ステップS13として送信リクエスト信号を生成する。次に、フュージョンセンタ1が、第4ステップS14として送信リクエスト信号をセンサノード2−A〜2−Fに向けて送信する。
【0079】
続いて、センサノード2−A〜2−Fのそれぞれが、第5ステップS21A〜S21Fとして送信リクエスト信号を受信する。次に、センサノード2−A〜2−Fのそれぞれが、第6ステップS22A〜S22Fとして通信条件を確認する。そして、センサノード2−A〜2−Fのそれぞれが、第7ステップS23A〜S23Fとして観測対象を測定する。
センサノード2−A〜2−Fのそれぞれが、第8ステップS24A〜S24Fとしてトーン信号を生成する。次に、センサノード2−A〜2−Fのそれぞれが、第9ステップS25A〜S25Fとしてトーン信号3をフュージョンセンタ1に向けて送信する。
【0080】
フュージョンセンタ1が、第10ステップS15としてトーン信号3の集合体を一括受信する。そして、フュージョンセンタ1が、第11ステップS16としてトーン信号3の集合体を分析する。
【0081】
ここで、本実施形態によるフュージョンセンタ1の動作、すなわち本実施形態によるフュージョンセンタ1による情報収集方法についてまとめる。
図7Bは、本発明の第1実施形態によるフュージョンセンタ1の動作の一例を示すフローチャートである。
フュージョンセンタ1は、まず、第1ステップS11に含まれるステップS111として周辺無線システムが通信中であるか否かの検出を行う。
通信中の周辺無線システムが検出された場合(YES)は、第1ステップS11に含まれるステップS112として周辺無線システムの通信が終了するまで待機する。その後、第1ステップS11に含まれるステップS113としてNAV(Network Allocation Vector)時間の待機と、DIFS(Distributed coordination function InterFrame Space)時間の待機とを行う。その後さらに、第1ステップS11に含まれるステップS114としてランダムバックオフ時間の待機を行う。そして、ステップS111に戻る。
【0082】
通信中の周辺無線システムが検出されなかった場合(NO)は、第2ステップS12として通信条件を算出する。続いて、第3ステップS13として送信リクエスト信号を生成する。そして、第4ステップS14として送信リクエスト信号を送信する。
第10ステップS15に含まれるステップS151としてトーン信号受信モードを開始する。
図7Aに示したとおり、第10ステップS15においてはトーン信号3を受信する。そして、第10ステップS15に含まれるステップS152としてトーン信号受信モードを終了する。
【0083】
次に、第11ステップS16として分析を行う一方で、第12ステップS17としてDIFS(Distributed coordination function InterFrame Space)時間の待機を行う。その後さらに、第13ステップS18としてランダムバックオフ時間の待機を行う。次に、ステップS111に戻る。
【0084】
以上に説明したフュージョンセンタ1の動作は、プログラムとしてプログラム領域122に格納されていることが好ましい。なお、このプログラムは、記憶媒体141からプログラム領域122に供給されても良い。
【0085】
ここで、本実施形態によるセンサノード2の動作、すなわち本実施形態によるセンサノード2による情報測定方法についてまとめる。
図7Cは、本発明の第1実施形態によるセンサノード2の動作の一例を示すフローチャートである。
各センサノード2は、まず、第5ステップS21に含まれるステップS211として送信リクエスト信号を受信するための待機を行う。次に、第5ステップS21に含まれるステップS212として送信リクエスト信号を受信する。
続いて、各センサノード2は、第6ステップS22に含まれるステップS221として通信条件を検出する。そして、第6ステップS22に含まれるステップS222として、各センサノード2は自身がトーン信号3の送信を要求されている対象であるか否かを確認する。
【0086】
自身がトーン信号3の送信を要求されている対象ではなかった場合(NO)、各センサノード2はステップS211に戻る。
反対に、自身がトーン信号3の送信を要求されている対象であった場合(YES)、各センサノード2は第7ステップS23として観測対象を測定する。
【0087】
その後、各センサノード2は、第8ステップS24としてトーン信号3を生成する。次に、各センサノード2は、第9ステップS25としてトーン信号3をフュージョンセンタ1に向けて送信する。そして、各センサノード2は、ステップS211に戻る。
以上に説明したセンサノード2の動作は、プログラムとしてプログラム領域222に格納されていることが好ましい。なお、このプログラムは、記憶媒体241からプログラム領域222に供給されても良い。
【0088】
ここで、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムおよびこれを用いる情報収集方法で得られる作用効果について説明する。
図8は、本発明の第1実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムおよび情報収集方法と、複数の無線送受信機がそれぞれにキャリアセンスを行う従来技術とを、情報収集回数で比較したシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図8は、横軸がキャリアセンスエリア内周辺無線システム数を示し、縦軸が収集回数を示すグラフを示している。このグラフは、合計6本のグラフa〜fを含んでいる。ここで、キャリアセンスエリア内周辺無線システム数は、周辺無線送信機および周辺無線受信機の対の総数を意味する。
【0089】
第1グラフaは、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムおよび情報収集方法を用いて多数のセンサノード2から送信されるトーン信号3のうち、フュージョンセンタ1が一括受信できたトーン信号3の総数を示している。第2グラフb〜第6グラフfは、本実施形態との比較対象として、従来技術によるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を用いた送受信機の間で信号を送受信できた回数を示している。なお、CSMA/CAは、例えば無線LAN(Local Area Network)などの通信手段に採用されている通信プロトコルである。
【0090】
ここで、第2グラフb〜第6グラフfに示した例は、センサノードの総数が異なる。すなわち、第2グラフbはセンサノードの総数が1個である場合を示し、第3グラフcはセンサノードの総数が3個である場合を示し、第4グラフdはセンサノードの総数が5個である場合を示し、第5グラフeはセンサノードの総数が10個である場合を示し、第6グラフfはセンサノードの総数が25個である場合を示している。
【0091】
図8から読み取れるように、いずれの場合も、キャリアセンスエリア内の周辺無線システム数が増えれば、収集回数は指数関数的に減少する傾向にある。これは、キャリアセンスエリア内の周辺無線システム数が増えれば、通信できない時間が増えるからであると考えられる。
また、第2グラフb〜第6グラフfから読み取れるように、センサノードの総数が増えれば、収集回数が反比例して減少する傾向にある。これは、同じフュージョンセンタと通信できるセンサノードは一度に1個であるからと考えられる。
【0092】
一方、第1グラフaは約500のサブキャリア周波数を用いて情報収集を行った場合のグラフである。本発明によれば、複数のセンサノードから情報を一括受信できるため、基本的にセンサノード数がいくつであっても、理論的には収集回数に変わりはない。そのため、
図8の第1グラフaにおいては、従来技術である第2グラフb〜第6グラフfのようなセンサノード数は観念されない。
第1グラフaから読み取れるように、本実施形態によれば、センサノード数には制限がなくなるため、例え100個以上と多数になった場合でも、第2グラフbに示した、CSMA/CAにおいてセンサノードの総数が1個である場合にほぼ等しい性能で情報の収集を行える、という優れた作用効果が得られることが分かる。その一因として、複数のセンサノード2が同じフュージョンセンタ1と同時に通信できる、という本発明の特徴が挙げられる。
【0093】
本発明の最も簡易な構成として、フュージョンセンタ1は、通信条件算出部112を有していなくても良い。また、センサノード2は、通信条件検出部212を有していなくても良い。
その場合、フュージョンセンタ1は、キャリアセンスの結果に応じて、空きチャネルを利用して通信条件を含まない送信リクエスト信号を全てのセンサノード2に向けて送信する。センサノード2は、送信リクエスト信号を受信したらすぐに、観測結果に対応する周波数でトーン信号3をフュージョンセンタ1に送信する。これにより、極めて短時間だけ空きチャネルを利用して、一括して大量の情報を収集することができる。センサノード2は通信条件検出部を持たないため構成が簡易になり、小型化および低消費電力化も実現できる。
【0094】
[第2実施形態]
本発明の第1実施形態においては、複数のセンサノード2の全てに向けて送信リクエスト信号を発信し、全てのセンサノード2から情報を収集する形態を説明した。本発明の第2実施形態においては、トーン信号3の送信を要求する対象と、対象外とに分別し、一部のセンサノードのみから情報を収集する形態について説明する。
本実施の形態によれば、情報収集の対象を一部のセンサノード2に限定することにより、センサノード2の密度を仮想的に下げることが可能となり、情報収集範囲を広げることに繋がる。
【0095】
図9は、本発明の第2実施形態による情報収集方法を説明する図である。
図9は、各センサノード2に固有のID番号を対応付けたテーブルを示している。このようなテーブルは、例えば、フュージョンセンタ1のデータ領域121に格納しておく。
また、各センサノード2は、自身のID番号をデータ領域221に格納しておく。
図9のテーブルでは、さらに、各センサノード2をグループ1またはグループ2に割り振っている。
図9に示した例では、ID番号が奇数のセンサノード2がグループ1に所属し、ID番号が偶数のセンサノード2がグループ2に所属している。
【0096】
フュージョンセンタ1が送信リクエスト信号を送信する際に、「ID番号が奇数」または「ID番号が偶数」を示す1ビットの情報を加えた通信条件を含める。送信リクエスト信号を受信した各センサノード2は、自身のID番号をデータ領域221から読み出し、通信条件と照合し、自身がトーン信号の応答を要求された対象であるか否かを判定する。各センサノード2は、判定結果に従って、自身が応答を要求されていた場合にはトーン信号3を送信し、要求されていない場合にはトーン信号3を送信しない。トーン信号3を送信しない場合は、消費電力を節約するために、センサ25における測定の動作を省略しても良い。
【0097】
応答対象となるセンサノード2を半分に絞ることにより、トーン信号3を送信するセンサノード2の総数も半分になり、トーン信号全体の送信電力も半分になる。その結果、与干渉電力が低減されるため、その分だけ情報収集範囲403を広げることが可能となる。
【0098】
また、次回の送信リクエスト信号では対象と対象外の分別条件を逆に設定することで、前回の送信リクエスト信号ではトーン信号3を送信しなかったセンサノード2だけにトーン信号3の送信を要求することが出来る。この動作を繰り返すことで、情報収集にかかる時間は2倍に増えるものの、情報収集範囲403を広げることが可能となる。
対象とするセンサノード2の一例として奇数IDと偶数IDで分別する例を示したが、IDが3の倍数のもののみに限定したり、ランダムで選ぶなどすることにより、対象とするセンサノード2の比率を変えることも可能である。なお、一度に情報収集する対象となるセンサノード数は、2個以上であることが望ましい。
また、
図9では、各センサノード2に固有のID番号を対応付けたテーブルを示したが、当該テーブルは、さらにID番号に対応させて各センサノード2の配置情報を含んでいても良い。
【0099】
[第3実施形態]
本発明の第2実施形態とは異なる分別条件として、送信リクエスト信号の送信電力を変更する方法について、本発明の第3実施形態として説明する。
図10は、本発明の第3実施形態による情報収集方法を説明する図である。
図10に示した例では、情報収集範囲を3つの同心円状の通信範囲201、202、203に分割している。通信範囲201、202、203の中心にはフュージョンセンタ1が位置している。センサノード2−A、2−Bは通信範囲201の内側に位置している。センサノード2−C、2−Dは通信範囲202の内側、かつ、通信範囲201の外側に位置している。センサノード2−E、2−Fは通信範囲203の内側、かつ、通信範囲202の外側に位置している。
【0100】
本実施形態では、情報収集を3回に分けて行う。1回目には、通信範囲201の内側だけに届く送信電力でフュージョンセンタ1が送信リクエスト信号を送信する。さらに、送信リクエスト信号に含まれる通信条件として、以降受信する送信リクエスト信号を2回だけ無視する指定を追加する。その結果、センサノード2−A、2−Bだけが送信リクエスト信号を受信してトーン信号3を送信する。
【0101】
2回目には、通信範囲202の内側だけに届く送信電力でフュージョンセンタ1が送信リクエスト信号を送信する。さらに、送信リクエスト信号に含まれる通信条件として、以降受信する送信リクエスト信号を1回だけ無視する指定を追加する。その結果、センサノード2−A〜2−Dだけが送信リクエスト信号を受信して、そのうちセンサノード2−C、2−Dだけがトーン信号3を送信する。
【0102】
3回目には、通信範囲203の全域に届く送信電力でフュージョンセンタ1が送信リクエスト信号を送信する。その結果、センサノード2−A〜2−Fの全てが送信リクエスト信号を受信して、そのうちセンサノード2−E、2−Fだけがトーン信号3を送信する。
【0103】
こうすることで、フュージョンセンタ1を中心とする同心円上の範囲ごとに測定情報を個別に収集することが可能となる、という優れた作用効果が得られる。なお、第2実施形態と同様に、一度にトーン信号3を送信するセンサノード2の総数が3分の1に減るので、トーン信号全体としての送信電力も3分の1に減り、その分だけ情報収集範囲が広がる、という作用効果も同時に得られる。
なお、上記の例では3段階に分けて情報収集を行ったが、段階の数は自由に変更可能である。本実施形態においても、一度に情報収集する対象となるセンサノード数は、2個以上であることが望ましい。
【0104】
[第4実施形態]
本発明の第2実施形態で用いた各センサノード2に固有のID番号を、本発明の第1実施形態で説明した周波数軸マッピングと組み合わせることについて、本発明の第4実施形態として説明する。
図11は、本発明の第4実施形態による情報収集方法を説明する図である。
図11は、センサノード2のID番号と、周波数軸マッピングで用いる観測値と、同じく周波数軸マッピングで用いるOFDMサブキャリア番号との対応関係を規定するテーブルの一例を示している。このテーブルは、フュージョンセンタ1のデータ領域121に格納されていることが好ましい。また、各センサノード2は、このテーブルのうち少なくとも自身に係る部分をデータ領域221に格納していることが好ましい。
【0105】
本実施形態では、OFDMサブキャリアの総数を、利用するセンサノード2の数で乗算する。すなわち、本発明の第1実施形態では101だったOFDMサブキャリアの総数を、例えば、センサノード2の総数が6であれば606以上に増やす。このとき、使用する周波数帯域を広げても良いし、サブキャリアごとに割り当てられる周波数帯域を狭めても良い。
【0106】
各センサノード2は、自身のデータ領域221に格納しているテーブルまたはその一部を参照し、このテーブルで規定されている対応関係に応じた周波数のトーン信号3を生成し、フュージョンセンタ1に向けて送信する。フュージョンセンタ1は、第1実施形態と同様にトーン信号3の集合体を一括受信しても、分析部115がデータ領域121に格納されているテーブルを参照することで、どの周波数成分がどのID番号を有するセンサノード2から届き、かつ、どの観測値を意味するかを読み取ることが出来る。その結果、本実施形態によるワイヤレスセンサネットワークシステムおよび情報収集方法では、より詳細な情報を収集することが可能となる。なお、本実施形態においても、一度に情報収集する対象となるセンサノード数は、2個以上であることが望ましい。
【0107】
第2〜第4実施形態では、応答対象とするセンサノード2を絞るための様々なバリエーションを説明したが、センサノード2を絞る方法が種々存在することを示唆する例示である。
また、各センサノード2の応答信号としてトーン信号3を例に説明したが、応答信号はトーン信号である必要はなく、測定結果に対応した所定の周波数を有する他の信号でも良い。
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0108】
また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。具体的には、第4実施形態に第2実施形態または第3実施形態を組み合わせることで、OFDMサブキャリアの総数に乗算する係数を減らし、第4実施形態をより安定的に実行することが可能となる。