(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧着する工程では、前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を部分的に厚み方向に突出させた前記突出部に、前記透明板材が当接するまで、前記透明板材を押圧することを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷蔵庫は、冷蔵庫本体に複数の貯蔵室が設けられており、上方から冷蔵室、冷凍室、野菜室が順次配置されている。また、冷蔵室、冷凍室および野菜室の前面開口は、断熱構造を有する扉により閉鎖されている。
【0003】
一般的に、このような扉は、扉枠の前面が前面板により塞がれ、扉枠の後面が後面板により塞がれている。そして、扉枠、前面板および後面板により囲まれる空間には発泡ウレタン等の発泡断熱材が充填されている。
【0004】
また、近年、冷蔵庫前面の外観性を向上させるために、前面がガラス板から構成された扉を有する冷蔵庫が登場してきている。このような構成を有する冷蔵庫の扉の構成が以下の特許文献に記載されている。
【0005】
特許文献1では、ガラス板から成る扉前板を備えた扉を有する冷蔵庫が開示されている。具体的には、
図1およびその説明箇所を参照すると、扉外枠9の前面はガラスからなる扉前板8により覆われ、扉外枠9の後面は扉後板14により覆われている。そして、扉外枠9、扉前板8および扉外枠9により囲まれる内部空間には真空断熱パネル10が配置されている。また、
図3およびその説明箇所を参照すると、前板8の周辺部は両面粘着テープ17を介して扉外枠9に接着されている。
【0006】
特許文献2を参照すると、前面がガラス板から構成される扉を有する冷蔵庫が開示されている。具体的には、
図8を参照すると、縁枠24の前面を透明前板25で塞ぎ、縁枠24の後面を内箱フレーム23で塞いでいる。また、縁枠24、透明前板25および内箱フレーム23で囲まれる内部空間には発泡ウレタン29が充填されている。更に、透明前板25の周辺部は、両面テープ30を介して、縁枠24の前面に接着されている。
【0007】
特許文献3では、扉枠12の前面をガラス11aで塞ぎ、扉枠12の後面を扉内板14で塞ぎ、これらにより囲まれる内部空間に発泡断熱材15を充填している。また、ガラス11aの外周端部は、内側から貼着される外板固定用テープ13にて、扉枠12に固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示された発明では、前面に配置されたガラス板を、両面テープを介して扉枠に接着していた。一般に、両面テープの接着力は必ずしも大きくないので、ガラス板を扉枠に強固に接着させるためには、接着される扉枠側にて広い接着面積が必要となり、これにより扉枠のサイズが多くなることが扉自体の軽量化・小型化を阻んでいた。
【0010】
更に、冷蔵庫の扉の製造工程を考慮すると、両面テープでガラス板を扉枠に貼着することは、作業員が手作業で行う必要があり、製造用機械で両面テープの貼着を行うことが容易でない。よって、ガラス板の接着に両面テープを採用することにより、製造工程の自動化が阻害される課題が有った。
【0011】
本発明は上記の問題点を鑑みて成され、本発明の目的は、透明板材と扉枠との接着構造が最適化された扉を備えた冷蔵庫およびその製造方法を提供することに成る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の冷蔵庫は、前面に開口が形成された冷蔵庫本体と、前記開口を閉鎖する扉と、を備え、前記扉は、額縁形状を呈する扉枠と、前記扉枠に前面から接着された透明板材と、前記扉枠に後面から接合された内側板材と、前記扉枠、前記透明板材および前記内側板材で囲まれる空間に充填された発泡断熱材と、を有し、前記扉枠は、前記扉の側面を構成する側面部と、前記透明板材が接着される接着面部と、を有し、前記透明板材は、接着剤を介して、前記扉枠の前記接着面部に接着され、
前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を、部分的に厚み方向に突出させて、突出部を設け、前記扉枠の前記接着面部の外周部付近を、
前記扉枠の各側面部に沿って連続して窪ませることで溝部を設け、
前記扉枠の前記溝部よりも外側の外周端部を、前記扉枠の各側面部に沿って、前記透明板材に接近する方向に連続して突出させることで壁部を形成し、前記溝部の底面は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材から離れる側に配置され、前記壁部の頂部は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材に接近する側に配置され、前記壁部は前記溝部に隣接されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の冷蔵庫では、前記突出部、前記壁部および前記溝部は隣接されていることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の冷蔵庫は、前記接着剤の厚みは、0.5mm以上1.5mm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明は、
額縁形状を呈する扉枠と、前記扉枠に前面から接着された透明板材と、前記扉枠に後面から接合された内側板材と、前記扉枠、前記透明板材および前記内側板材で囲まれる空間に充填された発泡断熱材と、を有し、前記透明板材は、接着剤を介して、前記扉枠の接着面部に接着される扉を備えた冷蔵庫の製造方法であり、
前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を、部分的に厚み方向に突出させて、突出部を設け、前記扉枠の前記接着面部の外周部付近を、前記扉枠の各側面部に沿って連続して窪ませることで溝部を設け、前記扉枠の前記溝部よりも外側の外周端部を、前記扉枠の各側面部に沿って、前記透明板材に接近する方向に連続して突出させることで壁部を形成し、前記溝部の底面は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材から離れる側に配置され、前記壁部の頂部は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材に接近する側に配置され、前記壁部は前記溝部に隣接されている前記扉枠を用意する工程と、前記扉枠の前記接着面部に
前記接着剤を塗布する工程と、前記扉枠の上面に
前記透明板材を載置する工程と、前記透明板材を前記扉枠に圧着する工程と、前記扉枠に後方から
前記内側板材を組み込み、前記扉枠、前記透明板材および前記内側板材で囲まれる空間に前記発泡断熱材を充填する工程と、を備え、前記圧着する工程では、前記透明板材を前記扉枠に押圧することで、前記扉枠の前記接着面部と前記透明板材との間で外側に移動する前記接着剤を、前記溝部に流入させることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の冷蔵庫の製造方法は、前記圧着する工程では、前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を部分的に厚み方向に突出させた突出部に、前記透明板材が当接するまで、前記透明板材を押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の冷蔵庫は、前面に開口が形成された冷蔵庫本体と、前記開口を閉鎖する扉と、を備え、前記扉は、額縁形状を呈する扉枠と、前記扉枠に前面から接着された透明板材と、前記扉枠に後面から接合された内側板材と、前記扉枠、前記透明板材および前記内側板材で囲まれる空間に充填された発泡断熱材と、を有し、前記扉枠は、前記扉の側面を構成する側面部と、前記透明板材が接着される接着面部と、を有し、前記透明板材は、接着剤を介して、前記扉枠の前記接着面部に接着され、
前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を、部分的に厚み方向に突出させて、突出部を設け、前記扉枠の前記接着面部の外周部付近を、
前記扉枠の各側面部に沿って連続して窪ませることで溝部を設け、
前記扉枠の前記溝部よりも外側の外周端部を、前記扉枠の各側面部に沿って、前記透明板材に接近する方向に連続して突出させることで壁部を形成し、前記溝部の底面は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材から離れる側に配置され、前記壁部の頂部は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材に接近する側に配置され、前記壁部は前記溝部に隣接されていることを特徴とする。よって、扉枠の周辺部に溝部を形成することで、透明板材を扉枠に接着させる接着剤の剰余分が溝部に流れ込むので、この剰余分の接着剤が扉枠から外部に流出することが防止される。更に、接着力が大きい接着剤で透明板材を扉枠に貼着することにより、扉枠の接着面部の面積を小さくし、扉枠の材料費を安くすることが出来る。
【0020】
また、本発明の冷蔵庫では、前記突出部、前記壁部および前記溝部は隣接されていることを特徴とする。
【0023】
更に、本発明の冷蔵庫によれば、前記接着剤の厚みは、0.5mm以上1.5mm以下である。従って、ガラス板と扉枠との熱膨張係数の差異による温度歪が、接着剤が変形することで吸収される。
【0024】
本発明は、
額縁形状を呈する扉枠と、前記扉枠に前面から接着された透明板材と、前記扉枠に後面から接合された内側板材と、前記扉枠、前記透明板材および前記内側板材で囲まれる空間に充填された発泡断熱材と、を有し、前記透明板材は、接着剤を介して、前記扉枠の接着面部に接着される扉を備えた冷蔵庫の製造方法であり、
前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を、部分的に厚み方向に突出させて、突出部を設け、前記扉枠の前記接着面部の外周部付近を、前記扉枠の各側面部に沿って連続して窪ませることで溝部を設け、前記扉枠の前記溝部よりも外側の外周端部を、前記扉枠の各側面部に沿って、前記透明板材に接近する方向に連続して突出させることで壁部を形成し、前記溝部の底面は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材から離れる側に配置され、前記壁部の頂部は、前記接着面部の主面よりも前記透明板材に接近する側に配置され、前記壁部は前記溝部に隣接されている前記扉枠を用意する工程と、前記扉枠の前記接着面部に
前記接着剤を塗布する工程と、前記扉枠の上面に
前記透明板材を載置する工程と、前記透明板材を前記扉枠に圧着する工程と、前記扉枠に後方から
前記内側板材を組み込み、前記扉枠、前記透明板材および前記内側板材で囲まれる空間に前記発泡断熱材を充填する工程と、を備え、前記圧着する工程では、前記透明板材を前記扉枠に押圧することで、前記扉枠の前記接着面部と前記透明板材との間で外側に移動する前記接着剤を、前記溝部に流入させることを特徴とする。よって、圧着する工程にて外側に向かって移動する接着剤を溝部に流入させることで、接着剤の外部への流出が防止される。
【0025】
更に、本発明の冷蔵庫の製造方法によれば、前記圧着する工程では、前記透明板材と重なりあう領域の前記接着面部を部分的に厚み方向に突出させた突出部に、前記透明板材が当接するまで、前記透明板材を押圧する。よって、突出部に透明板材が当接するまで透明板材を圧着することで、接着剤の厚みを所定の範囲にすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図を参照して本発明の実施の形態にかかる冷蔵庫10を説明する。
【0028】
図1を参照して、冷蔵庫10の概略的構成を説明する。
図1(A)は冷蔵庫10を全体的に示す正面図であり、
図1(B)は
図1(A)のB−B線で冷蔵庫10を切断した場合の断面図である。
【0029】
本形態では、上下前後左右の各方向を適宜用いて冷蔵庫10の構成等を説明する。ここで、左右方向とは、冷蔵庫10を正面から見た場合の方向を示している。
【0030】
図1(A)に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫10は、断熱箱体である冷蔵庫本体12を備え、この冷蔵庫本体12の内部に食品等を貯蔵する貯蔵室が形成されている。この貯蔵室として、上方から、冷蔵室14、製氷室16Aおよび上段冷凍室16B、下段冷凍室16C並びに野菜室18が形成されている。ここで、製氷室16A、上段冷凍室16Bおよび下段冷凍室16Cは、1つの貯蔵庫を区切ることで形成されており、以下の説明では、これらを冷凍室16と総称することもある。
【0031】
冷蔵庫10の基本的な機能は、各貯蔵室に収納された食品等の被貯蔵物を所定の温度に冷却することにある。一例として、冷蔵室14の庫内温度は冷蔵温度域であり、冷凍室16の庫内温度は冷凍温度域であり、野菜室18の庫内温度は冷蔵温度域である。
【0032】
冷蔵庫本体12の前面は開口しており、各貯蔵室の開口部には、各々扉が開閉自在に設けられている。冷蔵室14の左側部分を塞ぐ扉20Aは、左側上下端部が冷蔵庫本体12に回転自在に支持されており、冷蔵室14の右側部分を塞ぐ扉20Bは、右側上下端部が冷蔵庫本体12に回転自在に支持されている。また、製氷室16A、上段冷凍室16B、下段冷凍室16Cおよび野菜室18は、夫々、引き出し自在な扉22、24、26および28で塞がれている。
【0033】
図1(B)を参照して、冷蔵庫10の冷蔵庫本体12は、前面に開口部を有する鋼板製の外箱12Aと、外箱12Aの内側に間隙を持たせて配設されて前面に開口部を有する合成樹脂製の内箱12Bと、外箱12Aと内箱12Bとの間隙に充填発泡された発泡ポリウレタン製の断熱材12Cと、から構成されている。
【0034】
冷蔵庫本体12の前面開口を塞ぐ各扉20A〜28は、冷蔵庫本体12と同様の断熱構造を採用している。また、
図1(B)に示すように、冷蔵室14と冷凍室16との間に断熱仕切壁30が配置されており、冷凍室16と野菜室18との間にも断熱仕切壁32が配置されている。これらの断熱仕切壁30、32も、冷蔵庫本体12と同様の断熱構造を採用している。
【0035】
下段冷凍室16Cの後方に形成された冷却室の内部には、上記した各貯蔵室を循環する空気を冷却するための冷却器38(蒸発器)が配置されている。また、冷蔵庫本体12の野菜室18の後方に区画形成された機械室34には圧縮機36が配置されている。冷却器38は、圧縮機36、放熱器(図示せず)、膨張弁(キャピラリーチューブ)(図示せず)と冷媒配管を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成している。
【0036】
本形態では、上記した扉20A〜28の前面は、意匠性を向上させるために、ガラスから成る透明板材から構成されている。
【0037】
図2を参照して、上記した冷蔵庫10が備える扉20Aの構成を説明する。
図2(A)は扉20Aを前後方向に分解した状態を示す斜視図であり、
図2(B)は扉20Aの下部断面図である。
【0038】
図2(A)を参照して、扉20Aは、略額縁形状を呈する扉枠42と、扉枠42の前面に接着されたガラスから成る透明板材40と、扉枠42に後面から接合された内側板材44(パネル)と、を有している。また、扉枠42、透明板材40および内側板材44で囲まれる内部空間には、扉20Aに断熱性を持たせるために、
図2(B)に示すような発泡断熱材46が充填されている。このような断熱構造は、
図1(A)に示す他の扉20B〜28に関しても同様である。
【0039】
透明板材40は、正面視で矩形の形状を呈するガラス製の板材であり、所定の着色加工が施されている。この着色加工としては、透明なガラス板の後面が塗装されたものでも良く、有色ガラスによる着色でも良い。上記したように本形態では、扉20Aの前面に着色ガラスから成る透明板材40を配することにより意匠性を向上させ、更には扉20A全体の機械的強度を向上させている。透明板材40は、後述するように接着剤を介して扉枠42に接着される。
【0040】
扉枠42は、正面視で略額縁形状を呈する枠部材であり、扉20Aの側面部分を構成すると共に、扉20Aを構成する他の部品(透明板材40、内側板材44および発泡断熱材46)を支持する役割を有する。扉枠42は、射出成形により一体に成形されたABS樹脂から成る。扉枠42の前面には、上記した透明板材40を接着するための平坦面が形成されている。また、扉枠42の後面は、内側板材44の接着や接合を容易とする形状となっている。扉枠42の形状は、
図3を参照して後述する。
【0041】
内側板材44は、正面視で矩形の形状を呈する板状部材であり、扉枠42を後方から塞ぐ役割を有する。内側板材44は、扉枠42と同様に、一体に成形されたABS樹脂から成る。内側板材44には、扉20Aの後側側面にペットボトル等の被貯蔵物を格納するために、部分的に突起部が形成されている。
【0042】
発泡断熱材46は、上記した扉枠42、透明板材40および内側板材44により囲まれる内部空間に充填され、扉20Aが塞ぐ冷蔵室14(
図1(A))を外部から断熱する機能を有する。発泡断熱材46の材料としては、例えば発泡ウレタンが採用される。
【0043】
扉20Aの概略的構成は上記の通りであるが、具現化された扉20Aは、上記した各部材の他にも、扉20Aの後面周辺部に設けられるガスケット、扉20Aを冷蔵庫本体に密着させるための磁石、等を備えている。
【0044】
図3を参照して、上記した扉20Aに含まれる扉枠42の構成を詳述する。
図3(A)は扉枠42を示す斜視図であり、
図3(B)は
図3(A)のB−B線での断面図であり、
図3(C)は
図3(B)の要所を拡大して示す断面図である。
図3(B)では、扉枠42と共に透明板材40も示している。
【0045】
図3(A)を参照して、扉枠42は、扉の側面を構成する4つの側面部(上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48D)を有する。以下の説明では、これらの4つの側面部を側面部48と総称する場合もある。
【0046】
上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48Dの前方端部から、内側に伸びる平坦面として接着面部50が形成されている。接着面部50は、ガラスから成る透明板材40を接着するための部位であり、透明板材40の周辺部に対応した平坦面を呈している。
【0047】
左側面部48Cと右側面部48Dとの間には桟材43が架設されている。ここでは、桟材43は上下方向に等間隔に複数個が架設されている。このように、扉枠42の内部に桟材43を形成することにより、扉枠42の機械的強度を向上させることが出来る。
【0048】
図3(B)を参照して、扉枠42の下側面部48Bの前方端部から上方に向かって接着面部50が形成されており、この接着面部50の前面に透明板材40が接着されている。透明板材40は、接着剤58を介して、接着面部50に接着されている。この図では、接着面部50の下方部分のみが接着剤58を介して透明板材40に接着されているが、接着面部50の全体が接着剤58を介して透明板材40に接着されても良い。
【0049】
本形態で用いる接着剤58は、例えば熱可塑性接着剤が採用される。本形態の接着剤58は、背景技術で用いられていた接着用テープと比較すると強い接着力を発揮する。よって、透明板材40を扉枠42に接着させる為に必要とされる面積が狭くて済むため、接着面部50の高さL1を低くすることが可能となり、扉枠42を構成する樹脂材料の節約および、扉枠42の軽量化が実現される。
【0050】
図3(C)を参照して、扉枠42の角部に於ける構成を詳述する。扉枠42では、接着面部50の外周部付近を矩形に窪ませることにより溝部52を形成している。この溝部52は、
図3(A)に示した上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48Dに沿って形成されている。溝部52は、
図3(A)に示す、上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48Dに沿って連続して形成されても良いし、離散的に形成されても良い。溝部52の役割は、透明板材40の接着に用いられる接着剤58を貯留することにある。溝部52に接着剤58が貯留されることで、製造工程の途中段階では液状または半固形状である接着剤58が外部に漏出することが防止される。また、溝部52に接着剤58が充填されることで、接着剤58と扉枠42との接着強度が向上する効果も期待される。
【0051】
接着面部50の主面50Aを基準とした溝部52の深さL3は、例えば、0.5mm以上1.5mm以下である。この範囲であれば、透明板材40を扉枠42に接着する工程にて外部に向かって移動する接着剤58を溝部52に貯留させ、接着剤58が外部に漏出することを防止できる。一方、溝部52の深さL3が0.5mm未満であると、製造工程の途中段階に於いて接着剤58が充分に貯留されずに外部に漏出してしまう恐れがある。また、溝部52の深さL3が1.5mmよりも深いと、射出成形によりこのような深い溝部52を形成することが容易でない恐れがある。
【0052】
突出部56は、接着面部50の主面50Aを部分的に前方に突出させて形成されている。突出部56は、溝部52に隣接して形成されており、前方に突出する略円柱形状を呈している。突出部56は、
図3(A)に示す上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48Dに沿って離散的(断続的)または連続的に形成されている。突出部56が離散的に形成される場合は、少なくとも、扉枠42の四隅に突出部56を設けることで、突出部56で透明板材40を安定して離間させることが出来る。
【0053】
突出部56を離散的に形成することにより、下記する製造時の接着工程における接着剤の流動が、突出部56により阻害されないように成る。よって、
図3(B)に示すように、扉枠42の接着面部50と透明板材40との間に、十分に接着剤58を行き渡らせることができる。また、接着工程において、
図3(C)に示す溝部52に接着剤を良好に流入させることが可能となる。
【0054】
接着面部50に突出部56を形成することにより、突出部56の前面が透明板材40の後側主面に接触するので、主面50Aと透明板材40とを、突出部56の高さL2に応じて離間させることが出来る。換言すると、透明板材40と接着面部50とを接着する接着剤58の厚みが、突出部56と同程度に確保される。従って、ガラスから成る透明板材40とABS樹脂から成る扉枠42とで熱膨張係数が異なることにより、使用状況下で温度歪が発生しても、この温度歪を接着剤58が変形することで緩和できる。結果的に、温度歪みにより透明板材40や扉枠42が変形、破損してしまうことが防止される。ここで、
図3(C)では、突出部56は溝部52に隣接されているが、溝部52と突出部56は離間してもよい。
【0055】
接着面部50の主面50Aを基準とした突出部56の高さL2は、例えば0.5mm以上1.5mm以下である。突出部56の高さL2をこのような範囲とすることにより、接着剤58の厚みも同様な範囲に規定され、上記した温度歪を吸収する効果を奏することができる。一方、突出部56の高さL2が0.5mm未満であると、上記した接着剤58の厚みが充分に確保されず、温度歪が接着剤58により充分には吸収されないと考えられる。また、突出部56の高さL2が1.5mmよりも長いと、扉全体の厚みが過分に増加してしまうことが考えられる。
【0056】
壁部54は、接着面部50の外周端部を前方に突出させて形成されている。壁部54は、
図3(A)に示す上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48Dに沿って、連続して形成される。壁部54の断面形状は、透明板材40の端部との接触を考慮して、前方端面が傾斜面を呈する形状となっている。このような壁部54を形成することにより、製造工程の途中段階にて溝部52に流入した液状の接着剤58が外部に流出することが抑制される。接着面部50の主面50Aを基準とした壁部54の高さL4は、例えば0.5mm以上1.5mm以下である。壁部54の高さL4をこのような範囲にすることにより、接着剤58の外部への流出を防止しつつ、透明板材40との干渉を抑制することが出来る。ここで、壁部54の高さL4が0.5mm未満であると、製造工程の途中段階にて溝部52に一旦貯留された接着剤58が壁部54を超えて外部に流出してしまう恐れがある。また、壁部54の高さL4が1.5mmよりも長いと、扉枠42に透明板材40を組み付ける工程にて、壁部54の先端部が透明板材40に干渉してしまう恐れがある。
【0057】
図4以降の図面を参照して、上記した冷蔵庫10の製造方法を説明する。
【0058】
図4に示すフローチャートを参照して、本形態の冷蔵庫の製造方法は、扉枠等を用意する工程S11と、扉枠に接着剤を塗布する工程S12と、扉枠に透明板材を載置する工程S13と、扉枠に透明部材を圧着する工程S14と、扉枠に内側板材を組込み、断熱材を充填する工程S15と、を有している。各工程を以下に詳述する。
【0059】
先ず、扉を構成する扉枠42等を用意する(S11)。
図5は、本形態の冷蔵庫の製造方法で用いられる、ベルトコンベア等の製造装置を示している。本形態では、冷蔵庫の扉を製造する際に、ベルトコンベア60、62、64および66に、夫々、透明板材40A、扉枠42A、扉枠42Bおよび透明板材40Bを載置している。ベルトコンベア60、62、64および66は、これらを所定速度で搬送する。透明板材40A、扉枠42A、扉枠42Bおよび透明板材40Bは、ベルトコンベア60、62、64、66のP1で示す位置に投入される。
【0060】
ベルトコンベア60、62、64、66は、互いに同じ早さで、上面に載置された各部材を、紙面上にて左方から右方に搬送している。また、ベルトコンベア60およびベルトコンベア62は、扉を製造するために一対として用いられる。ベルトコンベア64とベルトコンベア66とは、他の扉を製造するために一対として用いられる。このように、扉を製造する二組のベルトコンベア60、62、64、66を接近して配置することにより、後に説明する塗布装置68、圧着装置70および移載ロボット72を共用することができ、生産効率を向上させることができる。
【0061】
次に、扉枠42に接着剤を塗布する(S12)。具体的には、先ず、
図5に示すベルトコンベア62、64を回転させることにより、これらの上面に載置された扉枠42A、42Bを、P2で示す位置まで搬送する。これにより、ベルトコンベア62、64に載置された扉枠42A、42Bは、塗布装置68の下方に配置されることになる。同時に、ベルトコンベア60、66に載置された透明板材40A、40Bも、P2で示す位置まで搬送される。
【0062】
図6を参照して、上記した塗布装置68を用いて扉枠42に接着剤を塗布する方法を説明する。
図6(A)は本工程を示す斜視図であり、
図6(B)は塗布が終了した後の扉枠42を示す断面斜視図である。
【0063】
図6(A)を参照して、扉枠42は4つの側面部(上側面部48A、下側面部48B、左側面部48Cおよび右側面部48D)を有しており、これらの側面部の端部から内側に接着面部50が延在している。本工程では、接着面部50の上面に接着剤58を塗布している。
【0064】
本形態で使用される接着剤は、ホットメルト型接着剤(熱可塑性接着剤)であり、100度程度に加熱されることで液状または半固形状とされた状態で、扉枠42の接着面部50に塗布されている。本形態では、塗布装置68(
図5)が備えるノズル74を用いて、接着面部50の上面に矩形を描くように、接着剤58を連続的して塗布している。
【0065】
図6(B)を参照して、接着剤58は、接着面部50の主面50Aにて、ビード状となるように塗布されている。また、接着剤58は、接着面部50の主面50Aに於いて、突出部56よりも内側に塗布されている。このようにすることで、圧着を行う後の工程にて接着剤58を主面50Aの内側部分の全域に行き渡らせることができる。
【0066】
また、
図5に示すように、本形態では、ベルトコンベア62の上面に載置された扉枠42Aと、ベルトコンベア64の上面に載置された扉枠42Bに対して、1つの塗布装置68で一括して塗布工程を行うことが可能である。これにより、製造設備が簡素化されて製造コストが低減する利点がある。
【0067】
背景技術で述べた接着テープを用いた接着方法であると、テープ貼着工程等を製造機械で自動化することが容易ではなく、作業員による手作業で貼り付け作業を行う必要があった。それに対して、本形態では、扉を構成する透明板材40を接着するために、液状または半固形状態で塗布される接着剤58を用いるので、上記した塗布装置68を用いて接着工程を自動化することが可能となる。
【0068】
上記工程が終了した後は、接着剤58が塗布された扉枠42の上面に、透明板材40を載置する(S13)。先ず、
図5を参照して、ベルトコンベア60、62、64、66を回転させることにより、これらの上面に載置された透明板材40A、扉枠42A、扉枠42Bおよび透明板材40Bを、P3で示す位置まで移動させる。
【0069】
次に、ベルトコンベア62とベルトコンベア64との間に配置された移載ロボット72を用いて、ベルトコンベア60の上面に載置された透明板材40Aを、ベルトコンベア62の上面に載置された扉枠42Aの上面に載置する。移載ロボット72は、ガラスから成る透明板材40Aの上面を吸着した状態で移送作業を行う。同様に、移載ロボット72により、ベルトコンベア66の上面に載置された透明板材40Bを、ベルトコンベア64の上面に載置された扉枠42Bの上面に載置する。本工程では、ベルトコンベア62とベルトコンベア64とが隣接しているので、両者の間に配置された1つの移載ロボット72で、上記の移載作業を一括して行える利点がる。
【0070】
図7(A)に示すように、本工程では、扉枠42の上面を塞ぐように透明板材40が載置される。前工程にて、扉枠42の接着面部50に沿ってビード状に接着剤58が塗布されているので、透明板材40の外周部全域が扉枠42の接着面部50に接着され、結果的に透明板材40は扉枠42に強固に接着される。
【0071】
図7(B)を参照して、扉枠42の上面に透明板材40を載置すると、透明板材40の下面周辺部が、液状または半固形状の接着剤58の上面に接触する。本工程では、接着剤58に対しては、透明板材40の重量が作用するのである。よって、接着剤58は、扉枠42の接着面部50と透明板材40との間で、充分に広がっていない。また、透明板材40の下面は、扉枠42の突出部56の上面に当接していない。
【0072】
上記工程が終了した後は、扉枠42に透明板材40を圧着させる(S14)。
【0073】
先ず、
図5を参照して、ベルトコンベア62、64を回転させることで、扉枠42A、42Bを、P4で示す地点まで動作させる。これにより、圧着装置70の下方に扉枠42A、42Bが配置される。扉枠42A、42Bの各々の上面には、前工程にて透明板材40A、40Bが載置されている。
【0074】
本工程でも、ベルトコンベア62とベルトコンベア64とが隣接されているので、一台の圧着装置70で、扉枠42A、42Bに対して一括して下記する圧着工程を行える利点がある。
【0075】
図8(A)を参照して、本工程では、扉枠42の上面に載置された透明板材40に対して上方から均等に押圧力を加えている。このようにすることで、接着剤58が透明板材40により押され、扉枠42と透明板材40との間で、接着剤58が好適に広がる。同時に、
図8(B)に示すように、透明板材40が扉枠42に対して押し付けられ、透明板材40の下面周辺部が、扉枠42の突出部56の上面に当接する。
【0076】
図3(C)を参照して説明したように、突出部56は、接着面部50の主面50Aから上方に0.5mm〜1.5mm突出している。よって、接着面部50の主面50Aと透明板材40との間に配置される接着剤58も、突出部56と同様の厚さ(0.5mm〜1.5mm)となる。接着剤58がこのような厚みの範囲となることで、使用状況下にて透明板材40と扉枠42との間に温度歪が発生したとしても、両者を接着させる接着剤58が変形することで温度歪が緩和される。
【0077】
更に本工程では、透明板材40を扉枠42に圧着させることで、液状または半固形状の接着剤58は、外側にも広がる。
【0078】
本形態では、外側に移動しようとする接着剤58を溝部52に流入させている。
図3(C)を参照して上記したように、溝部52は例えば0.5mm〜1.5mm程度と充分に深く形成されている。よって、外側に向かって移動する接着剤58は、溝部52に貯留され、接着剤58の外部への流出は防止されている。 更に本形態では、
図3(A)を参照して上記したように、突出部56を離散的に形成しているので、接着剤58の広がりが突出部56により阻害されることはない。よって、透明板材40の外周端部に至るまで、接着剤58を行き渡らせることができる。同様の理由により、溝部52に流入する接着剤58の流れが突出部56により阻害されることがないので、剰余の接着剤58は、溝部52に貯留され、外部に流出することは抑止されている。
【0079】
更に、溝部52の外側に、上方に突出する壁部54を形成している。上記したように壁部54が上方に突出する高さは0.5mm〜1.5mm程度であり充分に高く形成されている。よって、溝部52に貯留された接着剤58の外部への流出は壁部54があることで防止されている。
【0080】
上記の圧着が終了した後は、
図5を参照して、ベルトコンベア62、64を回転させることで、扉枠42A、42Bを、P5で示す位置まで移動させる。その後、ベルトコンベア62、64から扉枠42A、42Bを取り出す。
【0081】
本工程が終了して所定時間が経過すると接着剤58は冷却されて硬化する。本形態で用いられる接着剤58は熱可塑性型のものであるが、空気中の水分を吸収すると完全硬化し、その後は加熱しても軟化しない性質を有する。
【0082】
上記工程が終了した後は、内側板材を組込み、断熱材を充填する(S16)。具体的には、
図2(B)に示すように、扉枠42の後方主面に内側板材44を組み込む。内側板材44の組込みは、内側板材44の外周端部を扉枠42に対して嵌合させても良いし、内側板材44の外周端部を扉枠42に接着してもよい。更に、扉枠42、透明板材40および内側板材44で囲まれる内部空間に、例えば、発泡ウレタン等の発泡断熱材46を充填する。
【0083】
上記工程が終了した後は、ガスケット等の他の部材を扉枠42に対して取り付けることにより
図2に示す扉20Aが製造される。また、同様の製造方法により、
図1(A)に示す他の扉20B〜28も製造される。これらの扉20A〜28を、他の部材と共に、冷蔵庫本体12に取り付けることにより冷蔵庫10が製造される。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。