特許第6469489号(P6469489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6469489-冷凍サイクル装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469489
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/00 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   F25B39/00 N
   F25B39/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-56960(P2015-56960)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-176639(P2016-176639A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日野 尚宣
(72)【発明者】
【氏名】丹野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信裕
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−201107(JP,A)
【文献】 特開2007−051796(JP,A)
【文献】 特開2006−038290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 31/00−31/02
F25B 39/00−41/06
F25B 1/00− 7/00
F25B 13/00
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、冷媒と熱源側熱媒体とが熱交換する第1プレート式熱交換器と、四方弁と、膨張装置と、冷媒と利用側熱媒体とが熱交換する第2プレート式熱交換器と、を冷媒管により配管接続して構成される冷凍サイクル装置であって、
前記第2プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管の容積を前記第1プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管の容積よりも大きくするとともに、
前記第2プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管は、前記第1プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管よりも内径が大きな第1大径部と、前記第1大径部よりも内径が大きな第2大径部とで構成し
前記第1大径部を前記第2プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管の曲げ部分に用い、前記第2大径部を前記第2プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管の直管部に用いることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクル装置は、前記第1プレート式熱交換器と第2プレート熱交換器の両方が、前記利用側熱媒体を冷却する冷却運転時に、前記冷媒と前記熱媒体とが対向流となり、前記利用側熱媒体を加熱する加熱運転時に、前記冷媒と前記熱媒体とが並行流となることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に係り、特に水・ブラインなどの利用側熱媒体を加熱・冷却することで、利用側に冷温熱を供給する冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷温熱を供給する冷凍サイクル装置には、利用側熱交換器と熱源側熱交換器にプレート式熱交換器を備えたものがある。利用側熱交換器では、利用側機器で利用する冷水または温水と冷凍サイクルの冷媒とが熱交換し、熱源側熱交換では、地下水や工場排水等の熱源水と冷凍サイクルの冷媒とが熱交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−178110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の冷凍サイクル装置は、利用側機器において冷水と温水を利用できるように四方弁を設け、加熱運転と冷却運転とを切換えるものである。 しかし、冷却運転と加熱運転を切換える冷凍サイクル装置の場合、冷却運転と加熱運転とで必要とする冷媒量が異なるため、加熱運転時に余剰冷媒が発生する。一般的に、余剰冷媒は、冷凍サイクル中に設けられたアキュムレータやレシーバタンク等に溜められるが、アキュムレータやレシーバタンクを設けるスペースを確保するために冷凍サイクル装置が大きくなり、コストも高くなる。
【0005】
本発明が解決しようと課題は、冷凍サイクル装置を大型化することなく、また、コストの上昇を抑えることができる冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機と、冷媒と熱源側熱媒体とが熱交換する第1プレート式熱交換器と、四方弁と、膨張装置と、冷媒と利用側熱媒体とが熱交換する第2プレート式熱交換器と、を冷媒管により配管接続して構成される冷凍サイクル装置であって、第2プレート式熱交換器と膨張装置との間の冷媒管の容積を第1プレート式熱交換器と膨張装置との間の冷媒管の容積よりも大きくするとともに、第2プレート式熱交換器と膨張装置との間の冷媒管は、第1プレート式熱交換器と膨張装置との間の冷媒管よりも内径が大きな第1大径部と、この第1大径部よりも内径が大きな第2大径部とで構成し、前記第1大径部を前記第2プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管の曲げ部分に用い、前記第2大径部を前記第2プレート式熱交換器と前記膨張装置との間の冷媒管の直管部に用いる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の冷凍サイクル装置の内部構造を示す斜視図。
図2】実施形態の冷凍サイクル装置の冷凍サイクル構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の冷凍サイクル装置の内部構造を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る冷凍サイクル構成を示し、図2(a)は、冷却運転時の冷媒及び熱媒体の流れを示す冷凍サイクル構成図であり、図2(b)は、加熱運転時の冷媒及び熱媒体の流れを示す冷凍サイクル構成図である。
【0009】
図1及び図2に示すように、冷凍サイクル装置100は、3台の圧縮機1が並列に接続される。各圧縮機1の吐出口が吐出集合管11に配管接続され、吐出集合管11の他端は四方弁2を介して第1プレート式熱交換器3の冷媒流路3Aの一端に配管接続される。冷媒流路3Aの他端は並列に設けられた2つの膨張弁(膨張装置)4を介して第2プレート式熱交換器5の冷媒流路5Aの一端に配管接続される。冷媒流路5Aの他端は四方弁2を介して吸込み集合管12の一端に配管接続される。吸込み集合管12の他端は分岐して各圧縮機1の吸込口に配管接続される。これら配管接続によりヒートポンプ式冷凍サイクルが構成される。このヒートポンプ式冷凍サイクルには、R410AやR32等の冷媒が充填される。
【0010】
図2に示すように、第1プレート式熱交換器3は、冷媒流路3Aを流れる冷媒と熱交換する熱源側熱媒体が流れる熱媒体流路3Bが形成される。この熱媒体流路3Bには、熱源側熱媒体として工場排水や地下水等の熱源水が流れる。
第2プレート式熱交換器5は、冷媒流路5Aを流れる冷媒と熱交換する利用側熱媒体が流れる熱媒体流路5Bが形成される。この熱媒体流路5Bには、利用側熱媒体として水やブラインが流れる。
なお、本実施形態では、第1プレート式熱交換器3と第2プレート式熱交換器は、同一のプレート式熱交換器で構成される。
【0011】
本実施形態において、3台の圧縮機1は、それぞれ、一定速のスクロール圧縮機で構成される。なお、圧縮機1は、インバータ(図示しない)により回転数を制御するDCブラシレスモーターを搭載したロータリー圧縮機で構成されてもよい。また、圧縮機1の台数は1台または2台でもよい。
膨張弁4は、それぞれ、入力される駆動パルス信号のパルス数に応じて開度が連続的に変化するいわゆるパルスモータバルブで構成され、並列に設けられる。なお、膨張弁4の数は、1つでもよい。
【0012】
図1に示すように、膨張弁4と第2プレート式熱交換器5との間に設けられる冷媒管7は、膨張弁4と第1プレート式熱交換器3との間に設けられる冷媒管6よりも容積が大きく設けられる。
詳述すると、冷媒管6は、内径約19mm、管長約700mm、容積約0.2Lの1本の銅管で構成される。一方、冷媒管7は、内径約30mm、管長約300mm、容積約0.2Lの銅管2本と、内径約47mm、管長約400mm、容積約0.7Lの銅管1本とが接続されて構成される。以下、内径約30mmの銅管を第1大径部7a、内径約47mmの銅管を第2大径部7bという。つまり、冷媒管7の内径を全体的に冷媒管6よりも大きくすることで容積を大きくしている。
【0013】
また、比較的曲げ加工が容易な内径約30mmの第1大径部7aを冷媒管7の曲げ部分に用い、曲げ加工が困難な内径約47mmの第2大径部7bを冷媒管7の直管部に用いることで冷媒管7の製造が容易となる。冷媒管7の第1大径部7a、第2大径部7bに用いる銅管を上述の内径に近い規格品を用いることにより低コストで製造できる。
以上のように冷媒管7を構成したことにより、冷媒管7の容積は、冷媒管6の容積よりも約1L大きくなり、冷媒管7に余剰冷媒を溜めることができる。
【0014】
次に、この冷凍サイクル装置100での運転動作について図2を用いて説明する。
まず、図2(a)を用いて利用側熱交換器である第2プレート熱交換器5に流入する利用側熱媒体を冷却する冷却運転(冷房運転)について説明する。
圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁2を介して凝縮器として機能する第1プレート式熱交換器3に流入し、熱源側熱媒体である熱源水へ放熱することで凝縮、液化する。第1プレート式熱交換器3を流出した高圧の液冷媒は膨張弁4で減圧され低圧二相冷媒となり、冷媒管6を介して蒸発器として機能する第2プレート式熱交換器5に流入する。第2プレート式熱交換器5では、利用側熱媒体である冷水から吸熱することで蒸発、ガス化し、水を冷却し冷水を生成する。第2プレート式熱交換器5を流出した低圧ガス冷媒は圧縮機1へ吸い込まれる。
【0015】
ここで、熱源側熱交換器である第1プレート式熱交換器3においては、例えば25℃の熱源水が熱媒体流路3Bに流入し、冷媒流路3Aを流れる冷媒により加熱されて温度上昇し、例えば30℃となって流出する。
一方、利用側熱交換器である第2プレート式熱交換器5においては、例えば12℃の冷水が熱媒体流路5Bに流入し、冷媒流路5Aを流れる冷媒により冷却されて温度低下し、例えば7℃となって流出する。冷凍サイクル装置1から流出した冷水は、利用側機器であるファンコイル(図示しない)などに流入し、例えば、被空調室の空気を冷やすことで冷水そのものの温度は上昇し、例えば12℃まで上昇した後で、再び冷凍サイクル装置1に流入する。
このとき、第1プレート式熱交換器3と第2プレート式熱交換器5は共に、冷媒流路3A、5Aを流れる冷媒と、熱媒体流路3B、5Bを流れる熱媒体とが対向流となる。これにより、熱交換性能が向上し、効率の良い運転が可能となる。
【0016】
次に、図2(b)を用いて、利用側熱交換器である第2プレート熱交換器5に流入する利用側熱媒体を加熱する加熱運転運転(暖房運転)について説明する。
圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁2を介して凝縮器として機能する第2プレート式熱交換器5に流入し、利用側熱媒体である温水を加熱することで放熱し、凝縮、液化する。第2プレート式熱交換器5を流出した高圧の液冷媒は膨張弁4で減圧され低圧二相冷媒となり、蒸発器として機能する第1プレート式熱交換器3に流入する。第1プレート式熱交換器3では、熱源側熱媒体である熱源水から吸熱することで蒸発、ガス化し、熱源水を冷却する。第1プレート式熱交換器3を流出した低圧ガス冷媒は圧縮機1へ吸い込まれる。
【0017】
ここで、利用側熱交換器である第2プレート式熱交換器5においては、例えば40℃の温水が熱媒体流路5Bに流入し、冷媒流路5Aを流れる冷媒により加熱されて温度上昇し、例えば45℃となって流出する。
冷凍サイクル装置1から流出した温水は、利用側機器であるファンコイルなどに流入し、例えば、被空調室の空気を暖めることで温水そのものの温度は低下し、例えば40℃まで低下した後で、再び冷凍サイクル装置1に流入する。
一方、熱源側熱交換器である第1プレート式熱交換器3においては、例えば12℃の熱源水が熱媒体流路3Bに流入し、冷媒流路3Aを流れる冷媒により冷却されて温度低下し、例えば7℃となって流出する。
このとき、第1プレート式熱交換器3と第2プレート式熱交換器5は共に、冷媒流路3A、5Aを流れる冷媒と、熱媒体流路3B、5Bを流れる熱媒体とが並行流となる。冷房運転時の対向流に比べて暖房運転時の並行流では、プレート式熱交換器の熱交換性能が低下するため、冷凍サイクル装置1の冷媒循環量が低下し、余剰冷媒の量が多くなる。余剰冷媒は、液冷媒として凝縮器である第2プレート式熱交換器5の冷媒流路5Aに溜るため、さらに熱交換性能が悪化することになる。
【0018】
そこで本実施形態においては、四方弁2と第2プレート式熱交換器5との間の冷媒管7の容積を四方弁2と第1プレート式熱交換器3との間の冷媒管6の容積よりも大きくして、冷媒管7に液冷媒を溜めるようにした。
これにより、凝縮器として機能する第2プレート式熱交換器5に液冷媒が溜ることが防止できるので、並行流による熱交換性能悪化をさらに悪化させることなく暖房運転を行うことができる。
【0019】
また、余剰冷媒を冷媒管7に溜めることができるので、アキュムレータやレシーバタンクを設けるスペースが不要となり、冷凍サイクル装置を大型化することなく、また、コストの上昇を抑えることができる冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0020】
なお、上述の実施形態では、冷媒管6よりも冷媒管7の容積を大きくしたが、利用側機器で利用する冷温水の温度帯や熱源水の温度帯によっては、冷媒管7よりも冷媒管6の容積を大きくしてもよいし、余剰冷媒が発生しない場合は、冷媒管6と冷媒管7を同一の容積としてもよい。
【0021】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、実施形態の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
1…圧縮機、2…四方弁、3…第1プレート式熱交換器(熱源側熱交換器)、4…膨張弁(膨張装置)、5…第2プレート式熱交換器(利用側熱交換器)、6,7…冷媒管、7a…第1大径部、7b…第2大径部、100…冷凍サイクル装置
図1
図2