(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469501
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】映像配信システム、映像配信方法、および映像配信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/431 20110101AFI20190204BHJP
【FI】
H04N21/431
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-76223(P2015-76223)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-197784(P2016-197784A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年2月15日
【審判番号】不服2017-17680(P2017-17680/J1)
【審判請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 昌巳
(72)【発明者】
【氏名】西本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘道
(72)【発明者】
【氏名】下村 英介
【合議体】
【審判長】
鳥居 稔
【審判官】
小池 正彦
【審判官】
坂東 大五郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−161675(JP,A)
【文献】
特表2007−524288(JP,A)
【文献】
特開平7−23353(JP,A)
【文献】
特開2014−53745(JP,A)
【文献】
特開2005−51547(JP,A)
【文献】
特開2014−86782(JP,A)
【文献】
特開2012−138731(JP,A)
【文献】
特開2013−157663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N21/00-21/858
H04N 5/38- 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表示制御部と第2表示制御部に対してバス型接続の通信ネットワークで接続され、無線通信によって受信した元映像データを前記第1表示制御部と前記第2表示制御部に出力する中継部と、
第1表示器に応じた映像仕様に前記元映像データを変換して第1映像データとして前記第1表示器に出力する前記第1表示制御部と、
第2表示器に応じた映像仕様に前記元映像データを変換して第2映像データとして前記第2表示器に出力する前記第2表示制御部と、
を備え、
前記中継部は、前記第1表示制御部と前記第2表示制御部に対して、前記元映像データをマルチキャスト送信し、
前記第1表示制御部による前記第1映像データの出力期間と、前記第2表示制御部による前記第2映像データの出力期間とは、前記第1表示制御部と前記第2表示制御部との個別の制御によって、個別に切り替えられている、
映像配信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の映像配信システムであって、
前記第1表示器に応じた映像仕様は、前記第1表示器の表示仕様と、前記第1表示制御部と前記第1表示器との接続態様によって決定されており、
前記第2表示器に応じた映像仕様は、前記第2表示器の表示仕様と、前記第2表示制御部と前記第2表示器との接続態様によって決定されている、
映像配信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の映像配信システムであって、
前記中継部は、前記第1表示制御部と前記第2表示制御部に対して、Ethernetで接続されている、
映像配信システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の映像配信システムであって、
前記第1映像データの出力期間から前記第2映像データの出力期間への切り替えのタイミングに、前記第1表示制御部は、前記第1映像データの出力を停止し、前記第2表示制御部は、前記第2映像データの出力を開始し、
前記第2映像データの出力期間から前記第1映像データの出力期間への切り替えのタイミングに、前記第2表示制御部は、前記第2映像データの出力を停止し、前記第1表示制御部は、前記第1映像データの出力を開始する、
映像配信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の映像配信システムであって、
前記第1表示制御部に送信される元映像データと、前記第2表示制御部に送信される元映像データは同じである、
映像配信システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の映像配信システムであって、
前記第1表示制御部は、前記元映像データの受信前に前記第1表示器と接続が確立され、
前記第2表示制御部は、前記元映像データの受信前に前記第2表示器と接続が確立されている、
映像配信システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の映像配信システムであって、
前記中継部に対する接続が予め確立されており、前記元映像データを送信する送信元装置を、さらに備える、
映像配信システム。
【請求項8】
映像データの表示の操作開始前に、前記映像データの元となる元映像データの配信経路の接続を確立する工程と、
無線通信によって前記元映像データを受信する元映像データの受信工程と、
第1のアドレスと第2のアドレスに前記元映像データを送信する元映像データの配信工程と、
前記元映像データを第1映像仕様と第2映像仕様に変換し、前記第1映像仕様の前記映像データを第1表示器に出力し、前記第2映像仕様の前記映像データを第2表示器に出力する、変換後の映像データの出力工程と、
を有し、
前記元映像データの配信工程では、前記元映像データをマルチキャスト送信し、
前記変換後の映像データの出力工程では、前記第1映像仕様の前記映像データの前記第1表示器への出力期間と、前記第2映像仕様の前記映像データの前記第2表示器への出力期間とは、個別に切り替えられている、
映像配信方法。
【請求項9】
請求項8に記載の映像配信方法であって、
前記第1映像仕様は、前記第1表示器の表示仕様と、前記第1表示器に対する接続態様と、によって決定されており、
前記第2映像仕様は、前記第2表示器の表示仕様と、前記第2表示器に対する接続態様と、によって決定されている、
映像配信方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の映像配信方法であって、
前記元映像データの配信工程は、Ethernetを用いて行われている、
映像配信方法。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の映像配信方法であって、
前記第1映像仕様の映像データの出力期間と、前記第2映像仕様の映像データの出力期間と、は、交互に切り替えられている、
映像配信方法。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の映像配信方法であって、
前記元映像データの受信前に、前記第1表示器に対する接続を確立する工程と、
前記元映像データの受信前に、前記第2表示器に対する接続を確立する工程と、を有する、
映像配信方法。
【請求項13】
複数の表示器に対して映像データを配信する処理をコンピュータに実行させる映像配信プログラムであって、
前記コンピュータは、
映像データの表示の操作開始前に、前記映像データの元となる元映像データの配信経路の接続を確立する処理と、
無線通信によって受信した元映像データを第1のアドレスおよび第2のアドレスに送信する元映像データの配信処理と、
前記元映像データを第1の映像仕様と第2の映像仕様に変換し、前記第1の映像仕様の映像データと前記第2の映像仕様の映像データを、それぞれ別の表示器に出力する変換後の映像データの出力処理と、
を実行し、
前記元映像データの配信処理では、前記元映像データをマルチキャスト送信し、
前記変換後の映像データの出力処理では、前記第1の映像仕様の前記映像データの第1表示器への出力期間と、前記第2の映像仕様の前記映像データの第2表示器への出力期間とを、個別に切り替える、
映像配信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、元となるデータが同じ映像を複数の表示器に出力する映像配信システム、映像配信方法、および映像配信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配信映像を表示器に表示させるシステムが各種考案されている。例えば、特許文献1では、表示器に映像受信装置が接続されている。この際、例えば、映像受信装置と表示器は、HDMI(登録商標)のケーブルによって接続されている。映像受信装置は、無線ルータもしくは携帯通信端末と無線通信を確立し、当該無線通信によって映像データを受信する。映像受信装置は、受信した映像データをHDMI形式に変換して表示器に出力している。
【0003】
このような構成では、複数の表示器に映像データを表示する場合、表示器毎に映像受信装置を備える必要がある。各映像受信装置は、無線ルータもしくは携帯通信端末との無線通信をそれぞれ個別に確立し、それぞれ個別の無線通信によって映像データを受信する。
【0004】
図6は、従来の構成を採用した映像配信システムのブロック図である。
図6に示すように、従来の構成を採用した映像配信システムは、通信制御部41P,42Pを備える。通信制御部41Pは、表示器901に対してHDMIケーブル991で接続されている。通信制御部42Pは、表示器902に対してHDMIケーブル992で接続されている。
【0005】
通信制御部41P,42Pは、それぞれ個別にタブレット端末911,912と無線通信を行い、映像データを受信する。通信制御部41Pは、映像データをHDMI形式に変換して、表示器901に出力する。通信制御部42Pは、映像データをHDMI形式に変換して、表示器902に出力する。この通信制御部41P,42Pが上述の映像受信装置に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−78771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1の構成で、複数の表示器を表示する場合、各映像受信装置がそれぞれに通信制御および表示映像の生成を行うため、映像受信装置の負荷が高くなり、表示器への映像表示の遅れ等が生じることがある。また、複数の映像受信装置がそれぞれに通信を行うため、無線通信帯域に占める映像受信装置毎の通信帯域が狭くなり、映像データの送信に遅延が生じることがある。
【0008】
このように、上述の特許文献1の構成を用いた場合、複数の表示器で所望とするタイミングで映像を表示できないことがある。
【0009】
また、従来の別の映像配信方法としては、複数の映像受信装置を順に切り換えて通信の確立と映像データの送信を行う方法もある。この場合、複数の映像受信装置に対して、同時に映像データを送信することができない。
【0010】
本発明の目的は、複数の表示器に対して所望のタイミングで確実に映像を表示することが可能な映像配信システムおよび映像配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の映像配信システムは、中継部と第1、第2表示制御部とを備える。中継部は、無線通信によって受信した元映像データを第1表示制御部と第2表示制御部に出力する。第1表示制御部は、第1表示器に応じた映像仕様に元映像データを変換して第1映像データとして第1表示器に出力する。第2表示制御部は、第2表示器に応じた映像仕様に元映像データを変換して第2映像データとして第2表示器に出力する。
【0012】
この構成では、元映像データの受信を行う無線通信部を表示器毎に設けなくてもよく、1つの元映像データに対して、表示器毎に異なる映像仕様の映像が出力される。
【0013】
また、この発明の映像配信システムでは、中継部は、第1、第2表示制御部に対して元映像データをマルチキャスト送信する。
【0014】
この構成では、中継部と第1、第2表示制御部との間での通信データ量が軽減される。
【0015】
また、この発明の映像配信システムでは、中継部は、第1、第2表示制御部に対して、それぞれに個別の時刻に元映像データをユニキャスト送信する。
【0016】
この構成では、表示制御部毎に異なる時刻で元映像データが提供される。これにより、或る時刻において映像データが必要な表示制御部(および表示器)には元映像データが送信され、必要でない表示制御部(および表示器)には元映像データが送信されないという態様も実現可能になる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、複数の表示器に対して所望のタイミングで確実に映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る映像配信システムおよびその周辺装置のブロック図
【
図2】本発明の実施形態に係る映像配信システムの各部のデータおよび表示状態を示す図
【
図3】本実施形態に係る映像配信システムおよび従来の映像配信システムにおける操作開始から映像の表示までを示すタイムチャート
【
図4】本実施形態に係る映像配信システムにおいて、表示器毎に表示タイミングを変える態様のタイムチャート
【
図5】本発明の実施形態に係る映像配信方法の処理を示すフローチャート
【
図6】従来の構成を採用した映像配信システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る映像配信システムについて、図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る映像配信システムおよびその周辺装置のブロック図である。
図2は、本発明の実施形態に係る映像配信システムの各部のデータおよび表示状態を示す図である。
【0020】
映像配信システム10は、中継部21、および、表示制御部41,42,43を備える。表示制御部41,42,43の1つが本発明の「第1表示制御部」に相当し、他の1つが本発明の「第2表示制御部」に相当する。中継部21は、表示制御部41,42,43に対して、例えば、Ethernet(登録商標)31によって接続されている。なお、中継部21と表示制御部41,42,43との接続は、有線であっても無線であってもよいが、有線であることが好ましい。この接続には、Ethernet31を採用することが好ましく、中継部21と表示制御部41,42,43は、LANケーブルを介して接続されている。また、Ethernet31に限らず、中継部21と表示制御部41,42,43とは、データ通信可能なケーブルによって接続されていればよく、好ましくはマルチキャストが可能な接続態様であるとよい。また、Ethernet31に限らず、所謂、バス型接続のネットワークを用いてもよい。
【0021】
中継部21と外部のタブレット端末911,912とは、無線通信によって接続可能である。例えば、中継部21とタブレット端末911,912は、WiFi(登録商標)によって接続可能である。
【0022】
中継部21は、確立した無線通信を用いて、タブレット端末911またはタブレット端末912から元映像データVD0を受信する。中継部21は、Ethernet31を介して元映像データVD0を表示制御部41,42,43に送信する。この送信は、例えば、表示制御部41,42,43を対象にしたマルチキャスト送信によって実現されている。
【0023】
表示制御部41は、HDMIケーブル991を介して表示器901に接続されている。表示制御部42は、HDMIケーブル992を介して表示器902に接続されている。表示制御部43は、HDMIケーブル993を介して表示器903に接続されている。表示器901,902,903において、本発明の「第1表示制御部」に接続される表示器が本発明の「第1表示器」に相当し、「第2表示制御部」に接続される表示器が本発明の「第2表示器」に相当する。これらのHDMIケーブルによる表示制御部と表示器との接続態様が、本発明の「第1表示制御部と第1表示部との接続態様、第2表示制御部と第2表示部との接続態様」に相当する。
【0024】
表示制御部41は、データ受信部411と映像データ生成部412を備える。データ受信部411と映像データ生成部412は接続されている。データ受信部411はEthernet31を介して中継部21に接続されている。映像データ生成部412はHDMIケーブル991を介して表示器901に接続されている。
【0025】
データ受信部411は、Ethernet31を介した中継部21との通信を確立する。データ受信部411は、中継部21から元映像データVD0を受信する。データ受信部411は、元映像データVD0を映像データ生成部412に出力する。
【0026】
映像データ生成部412は、元映像データVD0をHDMI形式に変換する。この際、映像データ生成部412は、表示器901の表示仕様に応じた映像データDD1に変換する。映像データ生成部412は、変換後の映像データDD1を、HDMIケーブル991を介して表示器901に出力する。
【0027】
表示制御部42は、データ受信部421と映像データ生成部422を備える。データ受信部421と映像データ生成部422は接続されている。データ受信部421は中継部21に接続されており、映像データ生成部422は表示器902に接続されている。
【0028】
データ受信部421は、Ethernet31を介する中継部21との通信を確立する。データ受信部421は、Ethernet31を介して中継部21から元映像データVD0を受信する。データ受信部421は、元映像データVD0を映像データ生成部422に出力する。
【0029】
映像データ生成部422は、元映像データVD0をHDMI形式に変換する。この際、映像データ生成部422は、表示器902の表示仕様に応じた映像データDD2に変換する。映像データ生成部422は、変換後の映像データDD2を、HDMIケーブル992を介して表示器902に出力する。
【0030】
表示制御部43は、データ受信部431と映像データ生成部432を備える。データ受信部431と映像データ生成部432は接続されている。データ受信部431は中継部21に接続されており、映像データ生成部432は表示器903に接続されている。
【0031】
データ受信部431は、Ethernet31を介する中継部21との通信を確立する。データ受信部431は、Ethernet31を介して中継部21から元映像データVD0を受信する。データ受信部431は、元映像データVD0を映像データ生成部432に出力する。
【0032】
映像データ生成部432は、元映像データVD0をHDMI形式に変換する。この際、映像データ生成部432は、表示器902の表示仕様に応じた映像データDD3に変換する。映像データ生成部432は、変換後の映像データDD3を、HDMIケーブル993を介して表示器903に出力する。
【0033】
なお、変換後の映像データDD1,DD2,DD3において、「第1表示制御部」によって生成された変換後の映像データが本発明の「第1映像データ」に相当し、「第2表示制御部」によって生成された変換後の映像データが本発明の「第2映像データ」に相当する。
【0034】
このような構成とすることにより、
図2に示すように、映像配信システム10は、元映像データVD0から、表示器901の表示仕様に応じた映像データDD1、表示器902の表示仕様に応じた映像データDD2、および、表示器903の表示仕様に応じた映像データDD3を生成することができる。
【0035】
映像配信システム10は、映像データDD1を表示器901に出力し、映像データDD2を表示器902に出力し、映像データDD1,DD2,DD3を表示器903に出力する。すなわち、映像配信システム10は、表示器毎に設定された映像データを、この設定対象の表示器毎に個別に出力することができる。例えば、
図2に示す態様では、表示器901,902,903は、表示解像度および表示画面サイズが異なる。また、表示器901,903は字幕表示が指定されており、表示器902は字幕表示が指定されていない。このように、表示器901,902,903は、それぞれに表示仕様が異なる。このような場合であっても、映像配信システム10は、1つの元映像データから、表示器901,902,903の表示解像度、表示画面サイズ、および字幕等によって決定される表示仕様に応じて、表示器901,902,903毎に適切な映像データを出力することができる。
【0036】
また、映像配信システム10は、表示制御部41と表示器901との接続、表示制御部42と表示器902との接続、および、表示制御部43と表示器903との接続に応じて、個別に映像データDD1,DD2,DD3を決定している。すなわち、映像データDD1,DD2,DD3は、表示制御部と表示器との接続態様に応じて決定されている。
【0037】
これにより、映像配信システム10は、上述の各表示器の表示仕様とともに、表示制御部と表示器との接続態様に基づいて、すなわち各表示器901,902,903に対する映像仕様(本発明の「第1の映像仕様、第2の映像仕様」に基づいて、表示器901,902,903毎に適切な映像データを出力することができる。
【0038】
さらに、本実施形態の映像配信システム10では、複数の表示器901,902,903に対して共通の中継部21によって、タブレット端末911,912からの元映像データVD0の受信している。これにより、表示器901,902,903毎に元映像データの受信部を備える従来の構成よりも、簡素な構成を実現できる。
【0039】
また、本実施形態の映像配信システム10では、1つの中継部21がタブレット端末911,912と無線通信を行う。したがって、元映像データを受信する複数の受信部とタブレット端末911,912とが無線通信を行う構成(従来の構成)を必要とせず、各通信の通信帯域が狭くなり、データ通信速度が低下することを抑制できる。これにより、複数の表示器901,902,903への映像データの表示の遅延を抑制することができ、各表示器で所望のタイミングで確実に映像を表示することができる。
【0040】
また、本実施形態の映像配信システム10では、Ethernet31を介して、1つの中継部21から複数の表示制御部41,42,43に元映像データを送信している。したがって、元映像データを複数の表示制御部41,42,43に分配する構成を、安価で汎用性の高いケーブル(LANケーブル)等によって実現することができる。これにより、HDMIケーブル991,992,993よりも引き回しが容易な部材によって、映像配信システム10の構成を実現でき、表示器901,902,903を、容易に所望の位置に配置することができる。
【0041】
また、Ethernet31を用いることによって、表示器の個数が変化した場合に、この変化に応じて表示制御部の個数を変化させて、複数の表示制御部を1つの中継部21にLANケーブルで接続すればよい。したがって、表示器側の状況に応じた適切な映像配信システムを容易に構成することができる。この際、マルチキャストを用いることによって、表示制御部の個数に影響されることなく、所望とするタイミングで各表示器に映像を表示させることができる。
【0042】
また、本実施形態の映像配信システム10では、HDMI形式に変換する前の元映像データを複数に分配している。これにより、上述のように、表示器901,902,903の表示態様が異なっていても、各表示器901,902,903に応じた映像データDD1,DD2,DD3を出力できる。一方、HDMIの分配器を用いた場合、分配されたHDMIケーブルに接続された複数の表示器には、同じ映像データしか出力できない。このように、本実施形態の映像配信システム10を用いることによって、複数の表示器による多様な表示態様に、より柔軟に対応することができる。
【0043】
また、本実施形態の映像配信システム10では、映像データを圧縮すること無く、デジタルデータのままで、タブレット端末911,912から表示器901,902,903に提供することができる。したがって、タブレット端末911,912が出力する映像をそのまま表示器901,902,903で表示することができる。
【0044】
また、本実施形態の映像配信システム10では、中継部21における元映像データの受信処理を行う以前に、表示制御部41,42,43が表示器901,902,903との接続確立を行うことができる。これにより、次に示す作用効果を得ることができる。
【0045】
図3は、本実施形態に係る映像配信システムおよび従来の映像配信システムにおける操作開始から映像の表示までを示すタイムチャートである。
図3に示すように、従来構成は、操作開始を起点として、通信制御部が起動し、接続先であるタブレット端末をサーチし、タブレット端末と通信制御部との接続、および通信制御部と表示器との接続を確立する。従来構成は、この接続確立後に、タブレット端末から元映像データを取得して、表示器に応じた映像データに変換する表示準備を実行する。従来構成は、この表示準備の終了後に映像の表示(再生)を実行する。
【0046】
一方、本実施形態に係る映像配信システム10では、各部がEthernet等のバス型接続の通信ネットワークで接続されているので、中継部21と表示制御部41,42,43が起動していれば、これら中継部21と表示制御部41,42,43との接続、および中継部21とタブレット端末との接続が確立されている。このため、本実施形態に係る映像配信システム10は、操作開始を起点として、接続先サーチや接続確立処理を行うことなく、すぐに、元映像データを取得して表示器に応じた映像データに変換する表示準備を実行する。本実施形態に係る映像配信システム10は、この表示準備の終了後に映像の表示(再生)を実行する。
【0047】
このように、本実施形態に係る映像配信システム10では、操作開始後に、表示器またはタブレット端末に対する接続のサーチ、接続の確立を行う必要が無いため、従来構成よりも、操作開始から表示の開始までの時間を短縮することができる。なお、本実施形態に係る映像配信システム10では、タブレットへの接続処理を加えなくても、操作開始後に接続確立を行う必要が無いので、操作開始から表示器での表示までの時間を、従来構成よりも短くすることができる。
【0048】
図4は、本実施形態に係る映像配信システムにおいて、表示器毎に表示タイミングを変える態様のタイムチャートである。
図4(A)は、複数の表示器で表示開始タイミングを異ならせる態様を示している。
図4(B)は、時系列で複数の表示器が交互に表示する態様を示している。
【0049】
図4(A)に示すように、本実施形態に係る映像配信システム10では、表示制御部41と表示制御部42に、同じタイミング(時刻)で、同じ元映像データが送信されている。表示制御部41は、元映像データを表示器901に応じた映像データDD1に変換する表示準備を実行する。表示制御部42は、元映像データを表示器901に応じた映像データDD2に変換する表示準備を実行する。これらの表示準備は、表示制御部41,42で個別に平行して行われる。
【0050】
表示制御部41は、自装置が映像データDD1を出力するタイミング(時刻)になると、映像データDD1を表示器901に出力する。表示制御部42は、自装置が映像データDD2を出力するタイミング(時刻)まで待機し、当該出力するタイミングになると、映像データDD2を表示器902に出力する。
【0051】
このように、本実施形態に係る映像配信システム10を用いることによって、表示器毎に異なるタイミング(時刻)で、それぞれのタイミングに遅延することなく、映像を表示することができる。
【0052】
図4(B)に示すように、本実施形態に係る映像配信システム10では、表示制御部41と表示制御部42に、同じタイミング(時刻)で、同じ元映像データが送信されている。表示制御部41は、元映像データを表示器901に応じた映像データDD1に変換する表示準備を実行する。表示制御部42は、元映像データを表示器901に応じた映像データDD2に変換する表示準備を実行する。これらの表示準備は、表示制御部41,42で個別に平行して行われる。
【0053】
表示制御部41は、自装置が映像データDD1を出力するタイミング(時刻)になると、映像データDD1を表示器901に出力する。
【0054】
表示制御部42は、表示器901から表示器902に切り替わるタイミング(時刻)まで待機し、当該タイミングになると、映像データDD2を表示器902に出力する。この際、表示制御部41は、映像データDD1の出力を停止する。
【0055】
次に、表示制御部41は、表示器902から表示器901に切り替わるタイミング(時刻)まで待機し、当該タイミングになると、映像データDD1を表示器901に出力する。この際、表示制御部42は、映像データDD2の出力を停止する。
【0056】
このように、本実施形態に係る映像配信システム10を用いることによって、複数の表示器で切り換えながら映像を表示することができる。切り換えるタイミングに遅延することなく、映像を切り換えて表示することができる。
【0057】
上述の説明に示した中継部21と表示制御部41,42,43で実行する処理をプログラム化しておき、コンピュータが当該プログラムを実行してもよい。
図5は、本発明の実施形態に係る映像配信方法の処理を示すフローチャートである。
【0058】
中継部21は、タブレット端末911,912から元映像データVD0を無線通信によって受信する(S201)。中継部21は、複数の表示制御部41,42,43を対象としたマルチキャスト送信によって、元映像データVD0を送信する(S202)。
【0059】
表示制御部41は、中継部21から元映像データVD0を受信する(S411)。表示制御部41は、元映像データVD0を、HDMI形式の映像データDD1に変換する。表示制御部41は、HDMIケーブル991を介して、表示器901の表示態様を予め表示器901から取得している。表示制御部41は、表示器901の表示態様に応じた映像データDD1を生成する(S412)。表示制御部41は、映像データDD1を表示器901に出力する(S413)。
【0060】
表示制御部42は、中継部21から元映像データVD0を受信する(S421)。表示制御部42は、元映像データVD0を、HDMI形式の映像データDD2に変換する。表示制御部42は、HDMIケーブル992を介して、表示器902の表示態様を予め表示器902から取得している。表示制御部42は、表示器902の表示態様に応じた映像データDD2を生成する(S422)。表示制御部42は、映像データDD2を表示器902に出力する(S423)。
【0061】
表示制御部43は、中継部21から元映像データVD0を受信する(S431)。表示制御部43は、元映像データVD0を、HDMI形式の映像データDD3に変換する。表示制御部43は、HDMIケーブル993を介して、表示器903の表示態様を予め表示器903から取得している。表示制御部43は、表示器903の表示態様に応じた映像データDD3を生成する(S432)。表示制御部43は、映像データDD3を表示器903に出力する(S433)。
【0062】
なお、上述の説明では、タブレット端末が2台の場合を示したが、1台であっても3台以上であってもよい。また、表示器が3台の場合を示したが、2台または4台以上であってもよい。すなわち、表示器は複数台であればよく、表示器毎に表示制御部が備えられていればよい。
【0063】
また、上述の説明では、中継部21と表示制御部41,42,43との間での元映像データVD0の送信をマルチキャスト送信にする態様を示したが、ブロードキャスト送信やユニキャスト送信を用いてもよい。ユニキャスト送信の場合、中継部21は、表示制御部41,42,43に対して個別に異なる時刻で送信を行うことが可能になる。したがって、表示制御部41,42,43がそれぞれに必要とする時刻のみに元映像データVD0を必要とする表示制御部に送信することができる。
【符号の説明】
【0064】
10:映像配信システム
21:中継部
31:Ethernet
41:表示制御部
41,42,43:表示制御部
411,421,431:データ受信部
412,422,432:映像データ生成部
901,902,903:表示器
911,912:タブレット端末
991,992,993:HDMIケーブル
DD1,DD2,DD3:映像データ
VD0:元映像データ