特許第6469546号(P6469546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469546
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   B60R21/207
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-156310(P2015-156310)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-35907(P2017-35907A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
(72)【発明者】
【氏名】佐山 達雄
(72)【発明者】
【氏名】野中 秀恒
(72)【発明者】
【氏名】藤原 周平
(72)【発明者】
【氏名】盛田 克彦
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−247800(JP,A)
【文献】 特開2010−120407(JP,A)
【文献】 特開2002−225668(JP,A)
【文献】 特開平11−091485(JP,A)
【文献】 特開2004−338703(JP,A)
【文献】 特開2015−009623(JP,A)
【文献】 特開2009−040328(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/053082(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0111405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と後部座席との間に設けられるサイドエアバッグ装置であって、
膨出可能なエアバッグと、
該エアバッグの内部にガスを供給するインフレータと、
折り畳まれた状態の前記エアバッグ及び前記インフレータを格納するベース格納部を有し、車体ドアと前記後部座席との間に取り付けられるベース部材と、
前記ベース格納部を車体後方側から保持するリテーナ部材と、を備え、
該リテーナ部材には、車体幅方向に間隔を空けて設けられ、車体後方側にある前記車体の一部に向かってそれぞれ突出し、該車体の一部に設けられた係合穴に係合する左右の係合爪が設けられていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記リテーナ部材は、前記ベース格納部の車体後方側に配置される後壁部と、該後壁部の車体幅方向の両端部から車体前方側に延びる左右の側壁部と、を備え、
左右の前記係合爪は、前記後壁部の上下方向の一端部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、上下方向において前記ベース格納部を挟む位置に設けられ、前記車体の一部にそれぞれ取り付けられる上下のベース取り付け部を備え、
上下の前記ベース取り付け部を通る面であって、車体前後方向に沿って延びる仮想面が、左右の前記係合爪の間を通過するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記係合爪は、前記後壁部の上端部分を一部切り起こして形成され、前記車体の一部に設けられた上部係合穴に係合する上部係合爪であって、
前記リテーナ部材には、前記上部係合爪よりも下方位置に設けられ、前記車体の一部に設けられた下部係合穴に係合する下部係合爪が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記下部係合爪は、前記リテーナ部材において車体幅方向の両端部分のうち、前記仮想面に近接した側の端部分に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ベース格納部及び前記リテーナ部材の各々には、前記インフレータに設けられた組み付け軸部を挿通させるための穴部が連通して形成され、
前記組み付け軸部に対して、前記穴部の前記インフレータ側とは反対側から組み付け部材が組み付けられて構成され、
前記組み付け軸部は、前記リテーナ部材の前記側壁部に組み付けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側方から加えられる衝撃を緩和するためのサイドエアバッグ装置に係り、特に、車体と後部座席との間に配置されるサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体幅方向において車体ドアと後部座席との間に配置されるサイドエアバッグ装置として、エアバッグの内部にガスを注入するインフレータと、エアバッグおよびインフレータを格納する箱状の格納ボックスと、格納ボックスを車体前方側から覆う樹脂製のベースカバーと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、金属製の格納ボックスに格納されたエアバッグをインフレータで膨出させると、エアバッグが車体前方側にある樹脂製のベースカバーの薄肉部を破壊して膨出展開する構成となっている。
詳しく説明すると、車体側方から所定値以上の衝撃が加わったときに不図示の衝撃センサが感知し、インフレータに点火用電力が供給され、エアバッグが着座者の側方で膨出展開することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−40328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなサイドエアバッグ装置では、インフレータが作動してエアバッグが膨出するときに、エアバッグを膨出させるインフレータのガス圧力が格納ボックスに大きく負荷されることになる。
そのため、エアバッグが膨出展開するときに、エアバッグ及びインフレータを格納する格納ボックス周辺の剛性を向上させる技術が求められていた。
特に、上記従来技術においては、強度向上を図るべくサイドエアバッグ装置の格納ボックスを金属製としているが、一方で軽量化を図るべく樹脂製に変更することが望まれており、格納ボックスを樹脂製に変更しても、エアバッグの膨出展開時における格納ボックスの剛性を向上させる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エアバッグが膨出展開するときに、エアバッグ及びインフレータを格納する格納ボックス周辺の剛性を向上させたサイドエアバッグ装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、軽量化を図ることが可能なサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のサイドエアバッグ装置によれば、車体と後部座席との間に設けられるサイドエアバッグ装置であって、膨出可能なエアバッグと、該エアバッグの内部にガスを供給するインフレータと、折り畳まれた状態の前記エアバッグ及び前記インフレータを格納するベース格納部を有し、車体ドアと前記後部座席との間に取り付けられるベース部材と、前記ベース格納部を車体後方側から保持するリテーナ部材と、を備え、該リテーナ部材には、車体幅方向に間隔を空けて設けられ、車体後方側にある前記車体の一部に向かってそれぞれ突出し、該車体の一部に設けられた係合穴に係合する左右の係合爪が設けられていること、により解決される。
【0008】
上記のように、リテーナ部材には、車体幅方向に間隔を空けて設けられ、車体後方側にある前記車体の一部に向かってそれぞれ突出し、該車体の一部に設けられた係合穴に係合する左右の係合爪が設けられているため、ベース格納部を保持するリテーナ部材の取り付け剛性が向上する。その結果、エアバッグが膨出展開するときに、ベース格納部周辺の剛性を向上させ、エアバッグの膨出展開方向をより安定させることができる。
また、リテーナ部材を含むサイドエアバッグ装置全体の車体に対する取り付け作業が容易になる。
【0009】
このとき、前記リテーナ部材は、前記ベース格納部の車体後方側に配置される後壁部と、該後壁部の車体幅方向の両端部から車体前方側に延びる左右の側壁部と、を備え、左右の前記係合爪は、前記後壁部の上下方向の一端部分に設けられていると良い。
上記構成により、リテーナ部材のベース格納部に対する保持性が高まり、また、リテーナ部材の車体部材に対する取り付け剛性がより向上する。
【0010】
このとき、前記ベース部材は、上下方向において前記ベース格納部を挟む位置に設けられ、前記車体の一部にそれぞれ取り付けられる上下のベース取り付け部を備え、上下の前記ベース取り付け部を通る面であって、車体前後方向に沿って延びる仮想面が、左右の前記係合爪の間を通過するように構成されていると良い。
上記のように、ベース部材の中で特に取り付け剛性が必要となるベース格納部の配置を考慮して上下のベース取り付け部をそれぞれ設けているため、ベース部材及びリテーナ部材を車体の一部に取り付けるにあたって、ベース格納部の取り付け剛性が一層向上する。
その結果、ベース格納部周辺の剛性を向上させ、エアバッグの膨出展開方向をより安定させることができる。
【0011】
このとき、前記係合爪は、前記後壁部の上端部分を一部切り起こして形成され、前記車体の一部に設けられた上部係合穴に係合する上部係合爪であって、前記リテーナ部材には、前記上部係合爪よりも下方位置に設けられ、前記車体の一部に設けられた下部係合穴に係合する下部係合爪が設けられていると良い。
また、前記下部係合爪は、前記リテーナ部材において車体幅方向の両端部分のうち、前記仮想面に近接した側の端部分に設けられていると良い。
上記構成により、リテーナ部材の車体に対する取り付け剛性がより向上する。
また、係合爪はリテーナ部材を一部切り起こして形成されているため、別途取り付けて形成する場合よりもリテーナ部材の軽量化を図ることができる。
【0012】
このとき、前記ベース格納部及び前記リテーナ部材の各々には、前記インフレータに設けられた組み付け軸部を挿通させるための穴部が連通して形成され、前記組み付け軸部に対して、前記穴部の前記インフレータ側とは反対側から組み付け部材が組み付けられて構成され、前記組み付け軸部は、前記リテーナ部材の前記側壁部に組み付けられていると良い。
上記構成により、インフレータの組み付け軸部は、ベース格納部及びリテーナ部材の側壁部に組み付けられているため、従来のようにベース格納部及びリテーナ部材の後壁部に組み付けられる場合と比較して、車体前後方向のコンパクト化を達成できる。
また、本発明においては、車体前後方向においてリテーナ部材と車体の一部とを係合させる構成にしているため、当該車体の一部との干渉を抑制し易くなる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、リテーナ部材には、車体の一部に設けられた係合穴に係合する左右の係合爪が設けられているため、ベース格納部を保持するリテーナ部材の取り付け剛性が向上する。その結果、エアバッグが膨出展開するときに、ベース格納部周辺の剛性を向上させ、エアバッグの膨出展開方向をより安定化できる。
また、リテーナ部材を含むサイドエアバッグ装置全体の車体に対する取り付け作業が容易になる。
請求項2の発明によれば、リテーナ部材のベース格納部に対する保持性が高まり、また、リテーナ部材の車体部材に対する取り付け剛性がより向上する。
【0014】
請求項3の発明によれば、ベース部材及びリテーナ部材を車体の一部に取り付けるにあたって、ベース格納部の取り付け剛性が一層向上する。その結果、ベース格納部周辺の剛性を向上させ、エアバッグの膨出展開方向をより安定化できる。
請求項4、5の発明によれば、リテーナ部材の車体に対する取り付け剛性がより向上する。また、リテーナ部材の軽量化を図ることができる。
請求項6の発明によれば、車体前後方向のコンパクト化を達成できる。また、当該車体の一部との干渉を抑制し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のサイドエアバッグ装置の配置を示す説明図である。
図2】サイドエアバッグ装置のベース部材を正面側から見たときの斜視図である。
図3】ベース部材を背面側から見たときの斜視図である。
図4】インフレータと、ベース部材と、リテーナ部材の組み付け構造を説明する分解斜視図である。
図5】リテーナ部材と車体部材の組み付け構造を説明する分解斜視図である。
図6】サイドエアバッグ装置の背面図である。
図7図1のA−A断面図であって、エアバッグが格納された状態を示す図である。
図8図1のA−A断面図であって、エアバッグが膨出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るサイドエアバッグ装置について、図1図8を参照しながら説明する。
本実施形態は、車体ドアと後部座席との間に設けられるサイドエアバッグ装置であって、エアバッグ及びインフレータを格納するベース格納部と、上下方向においてベース格納部を挟む位置に設けられ、車体の一部に取り付けられる上下のベース取り付け部とを有するベース部材と、ベース格納部を車体後方側から保持するリテーナ部材とを備え、リテーナ部材の上端部分にある左右の係合爪が、車体後方側にある車体の一部に設けられた係合穴に係合するように配置されており、さらに上下のベース取り付け部を通り車体前後方向に沿って延びる仮想面が左右の前記係合爪の間を通過するように構成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置の発明に関するものである。
【0017】
本実施形態のサイドエアバッグ装置Sは、車体側方から着座者に加えられる衝撃を緩和するための装置であって、図1に示すように、車体幅方向において後部座席1の背もたれ部となるシートバック1aと、車体2の車体ドア2aとの間に配置されている。
なお、サイドエアバッグ装置Sは、後部座席1の車体幅方向の左右外側にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0018】
サイドエアバッグ装置Sは、図2に示すように、膨出可能なエアバッグ10と、エアバッグ10の内部にガスを供給するインフレータ11と、折り畳まれた状態のエアバッグ10及びインフレータ11を格納するベース部材20と、図3に示すように、ベース部材20に格納されたエアバッグ10及びインフレータ11を車体後方側から保持するリテーナ部材30と、インフレータ11に接続され、インフレータ11に点火用電力を供給するハーネス40と、を主に備えている。
また、サイドエアバッグ装置Sは、図7に示すように、ベース部材20の車体前方側の位置に載置されるパッド部材50と、ベース部材20及びパッド部材50を車体前方側から覆う表皮材60と、表皮材60に一端部が縫着され、他端部がベース部材20の力布係止部27に係止され、エアバッグ10の膨出方向をガイドする力布70と、を備えている。
【0019】
エアバッグ10は、車体側方から衝撃が加わったときに、図7に示す折り畳まれた状態から、図8に示すように車体前方側に向かって風船状に膨出展開する袋状部材からなる。
詳しく言うと、エアバッグ10に連結され、ガス発生源となるインフレータ11からエアバッグ10の内部に向かってガスが供給されることで、エアバッグ10が膨出する。
インフレータ11は、図2に示すように、長尺な略円柱形状のガス発生装置からなり、上下方向に長尺となるように配置されている。
インフレータ11は、その外表面よりも車体前方側に突出してエアバッグ10内部に連結される不図示のエアバッグ連結部と、上端部分に形成され、ハーネス40に接続されるハーネス接続部12と、外表面よりも車体側方側に突出し、ベース部材20及びリテーナ部材30に組み付けられる組み付け軸部13と、を備えている。
【0020】
上記構成において車体側方から衝撃が加わったときには、車体上において着座者の足下側に配置された不図示の車両用バッテリーからハーネス40を介してインフレータ11に点火用電力が供給され、エアバッグ10が着座者の側方で膨出展開する。
エアバッグ10及びインフレータ11は、ベース部材20に設けられた後述のベース格納部24に格納されている。
【0021】
ベース部材20は、サイドエアバッグ装置Sの基板となる樹脂製のフレーム部材からなり、図2に示すように、エアバッグ10及びインフレータ11を格納するものである。
ベース部材20は、車体側方から見て略逆L字形状からなり、車体幅方向においてシートバック1aと車体ドア2aの間に配置されており、上端部及び下端部がそれぞれ不図示の車体部材に着脱可能に取り付けられている。
ベース部材20は、図2図3に示すように、後部座席1と車体2との間に配置されるベース本体部21と、ベース本体部21の車体幅方向の両端部から連続して車体後方側に延びるベース外壁部22とベース内壁部23と、から主に構成されている。
【0022】
ベース本体部21は、略逆L字形状の板状部材からなり、構成要素として車体幅方向の中央部分よりもやや車体外側寄りに一体的に形成され、車体後方側に窪んだベース格納部24と、ベース格納部24を上下方向において挟む位置に一体的に形成され、不図示の車体部材に取り付けられる上部ベース取り付け部21aと下部ベース取り付け部21bと、を備えている。
下部ベース取り付け部21bは、図2又は図3に示すように、ベース本体部21から連続して下方に延出し、その延出端部が車体部材に取り付けられて構成されている。
詳しく説明すると、下部ベース取り付け部21bは、車体後方側にある車体の形状に沿わせるように折り曲げられた逃げ形状を有しており、その延出端部には、車体部材に向かってボルト締結穴が形成され、ボルトを締結することでベース部材20と車体部材とが取り付けられる。
【0023】
ベース外壁部22は、車体ドア2aと対向する部分に配置され、その延出端部には、上下方向に間隔を空けて複数設けられ、表皮材60の一端部を係止する係止爪22aが形成されている。
ベース内壁部23は、シートバック1aと対向する部分に配置され、図3に示すように、その延出端部には、上下方向に長尺に延びて設けられ、表皮材60の他端部を木目込む木目込み溝23aが形成されている。
【0024】
ベース格納部24は、図2に示すように、車体前方側に開口部を有する上下方向に長尺な箱体からなり、略凸形状の内部空間を備えており、エアバッグ10及びインフレータ11がベース格納部24の内部空間に着脱可能に格納されている。
ベース格納部24は、図4に示すように、エアバッグ10及びインフレータ11の車体後方側に配置される後壁部24aと、後壁部24aの車体幅方向の両端部から連続して車体前方側に延びて、車体幅方向の車外側に配置される外側壁部24bと車内側に配置される内側壁部24cと、を備えている。
なお、ベース格納部24の上方部分には、インフレータ11の上端部分が露出するように設けられた開口部分が形成されている。
【0025】
ベース格納部24の外側壁部24bには、図3に示すように、インフレータ11のハーネス接続部12に対向する部分において、ハーネス40の一部を支持可能な切欠き部分が設けられている。
内側壁部24cには、図4に示すように、上下方向に所定の間隔を空けて2つ張り出すように形成され、力布70の他端部を係止可能な力布係止部27と、上下方向に所定の間隔を空けて2つ形成され、2つの力布係止部27の間に配置され、インフレータ11の組み付け軸部13を挿通可能なベース穴部28が設けられている。
【0026】
リテーナ部材30は、エアバッグ10及びインフレータ11を車体後方側から保持する金属製の保持部材からなり、図3に示すように、ベース格納部24に車体後方側から装着されている。
リテーナ部材30は、横断面略コ字形状からなり、ベース格納部24の車体後方側に配置される後壁部30aと、後壁部30aの車体幅方向の両端部から連続して車体前方側に延びる外側壁部30b及び内側壁部30cと、を備えている。
【0027】
リテーナ部材30の後壁部30aは、図3に示すように、ベース格納部24を保持する部分から下部ベース取り付け部21bに向かって下方に延出し、一部が下部ベース取り付け部21bの背面に重ね合わされた状態で、下部ベース取り付け部21bと共に不図示の車体部材にボルト締結されている。
内側壁部30cには、図4に示すように、上下方向に所定の間隔を空けて2つ張り出すように形成され、力布70が係止された力布係止部27を保持する力布保持部32と、上下方向に所定の間隔を空けて2つ形成され、2つの力布保持部32の間に配置され、インフレータ11の組み付け軸部13を挿通可能なリテーナ穴部33と、が設けられている。
リテーナ穴部33とベース穴部28とは、リテーナ部材30及びベース格納部24が組み付けられた状態で互いに連通する配置となっている。
【0028】
上記構成において、図4に示すように、インフレータ11の組み付け軸部13がベース穴部28及びリテーナ穴部33を挿通し、その挿通端部が組み付けナットに相当する組み付け部材35に組み付けられることで、インフレータ11、ベース部材20及びリテーナ部材30がそれぞれ固定されている。
【0029】
後壁部30aには、図4図5に示すように、その上端部分を一部切り起こして形成され、車体後方側に向かって突出する左右の上部係合爪36と、上部係合爪36よりも下方位置において一部切り起こして形成され、車体後方側に向かって突出する下部係合爪37と、が設けられている。
上部係合爪36、下部係合爪37は、図5に示すように、車体後方側にある車体部材38に向かって突出し、車体部材38に設けられた上部係合穴38a、下部係合穴38bにそれぞれ係合する位置に配置されている。
【0030】
上部係合爪36は、図4図5に示すように、逆L字形状からなり、後壁部30aの上端部分から連続して車体部材38側に延びる第1延出部36aと、第1延出部36aの延出端部から連続して下方側、すなわち車体部材38の上部係合穴38a側に屈曲し、上部係合穴38aを挿通するように延びる第2延出部36bと、から主に構成されている。
下部係合爪37も同様に、逆L字形状からなり、第1延出部37aと、第1延出部36aの延出端部から連続して車体部材38の下部係合穴38bを挿通するように延びる第2延出部37bと、から主に構成されている。
【0031】
上記構成において、図3図4に示すように、上部係合爪36はリテーナ部材30の左右両端部分に配置され、下部係合爪37は左右両端のうち、一方の端部分のみに配置されている。
また、リテーナ部材30の下方延出部分は、ベース部材20の下部ベース取り付け部21bの背面に重ね合わされて不図示の車体部材にボルト締結されている。
そうすることで、リテーナ部材30の上方部分については左右の上部係合爪36によって車体部材に対する取り付け剛性が確保され、また、リテーナの下方部分については1つの下部係合爪37と、ボルト締結された下方延出部分とによって車体部材に対する取り付け剛性が確保されている。加えて、下部係合爪37を一方の端部分のみに配置することで、リテーナ部材30の軽量化を図っている。
【0032】
また上記構成において、図6に示すように、ベース部材20に設けられた車体取り付け用の上部ベース取り付け部21aと下部ベース取り付け部21bとを通り、車体前後方向に沿って延びる仮想面Lが、左右の上部係合爪36の間を通過しており、また、下部係合爪37を通過している。
そうすることで、ベース部材20及びリテーナ部材30を車体に取り付けるにあたって、ベース部材20の中で特に剛性が必要とされるベース格納部24の取り付け剛性が一層向上する。その結果、エアバッグ10が膨出展開するときに、ベース格納部24の剛性を向上させ、エアバッグ10の展開方向をより安定化できる。
【0033】
また上記構成において、図6に示すように、リテーナ部材30は、車体前後方向において後壁部30aと、上部係合爪36及び下部係合爪37とで、車体部材38の一部を挟むように配置されている。
そうすることで、リテーナ部材30の車体に対する保持力が高まり、リテーナ部材30のガタツキが抑制される。また、ベース部材20及びリテーナ部材30が、エアバッグ10の膨出展開時に発生する反力を効率良く受け止められる。
【0034】
ハーネス40は、インフレータ11に点火用電力を供給するワイヤーハーネスであって、複数の電気配線をコルゲートチューブでまとめ、カプラを端部に取り付けたものからなる。
ハーネス40は、図3に示すように、インフレータ11の上端部にあるハーネス接続部12に上端部41が接続され、下端部42が車体上において着座者の足下側に配置される車両用バッテリーに接続されており、上下方向に長尺となるように延びている。
【0035】
パッド部材50は、図7に示すように、ベース部材20と表皮材60との間に載置されるクッション材からなり、ベース部材20の車体前方側の全面にわたって配置されている。
なお、パッド部材50は、ベース部材20に設けられた不図示のパッド取り付け部に固定されることで、ベース部材20に連結されている。
パッド部材50には、ベース格納部24に対向する部分において、詳しく言うと、ベース格納部24のうち、外側壁部24b側の対向する部分において、車体前後方向に貫通したパッド開口部51が形成されている。
【0036】
パッド部材50は、パッド開口部51よりも車外側に配置されるアウタパッド部材50aと、パッド開口部51よりも車内側に配置されるインナパッド部材50bと、を一体的に備えている。
パッド開口部51は、上下方向に長尺な開口部分であり、表皮材60側からベース部材20側に向かって力布70が挿通されている。
パッド開口部51と、力布係止部27とは、エアバッグ10に対して互いに車体幅方向の反対側に位置している。
【0037】
上記構成において、図8に示すようにエアバッグ10が膨出展開したときには、パッド部材50は、車体幅方向においてパッド開口部51を分岐点としてアウタパッド部材50aとインナパッド部材50bとに分かれて展開される。
このとき、エアバッグ10の膨出方向が力布70によってガイドされるため、ベース格納部24の車体前方にあるパッド部材50の一部が飛散することなく、エアバッグ10を展開させることができる。
【0038】
表皮材60は、図7に示すように、ベース部材20及びパッド部材50を車体前方側から覆うカバー部材に相当し、車体幅方向の略中央部分であって、ベース格納部24の中央部分に対応する位置には、エアバッグ10の膨出展開時に開裂する表皮開裂部61が形成されている。
表皮材60は、一端部が各々表皮開裂部61の位置で連結され、表皮開裂部61に対して車外側に配置されるアウタ表皮材62と、車内側に配置されるインナ表皮材63と、から主に構成されている。
【0039】
アウタ表皮材62の車外側の他端部が、ベース外壁部22の係止爪22aに上下方向にわたって係止されており、インナ表皮材63の車内側の他端部がベース内壁部23の木目込み溝23aに木目込まれている。
具体的には、アウタ表皮材62の他端部には、係止爪22aに係止させるための係止孔が上下方向にわたって形成されており、インナ表皮材63の他端部には、木目込み溝23aに木目込むための樹脂製のトリムコードが縫着されている。
【0040】
上記構成において、図8に示すようにエアバッグ10が膨出展開したときには、表皮材60は、表皮開裂部61を分岐点としてアウタ表皮材62とインナ表皮材63とに分かれて展開される。
表皮開裂部61は、車体幅方向においてエアバッグ10に重なる位置に配置されている。
【0041】
力布70は、エアバッグ10の膨出展開方向を車体前方側にガイドする布部材からなる。
力布70は、図7に示すように、表皮材60の表皮開裂部61に一端部71が取り付けられ、一端部71から連続してパッド部材50を覆うように延びて、ベース格納部24に設けられた力布係止部27に他端部72が係止されている。
【0042】
具体的には、力布70は、インナ表皮材63側の表皮開裂部61に縫着された一端部71から連続してインナパッド部材50bの前面を沿うように車外側に延びて、パッド開口部51に対向する部分まで到達している。
そして、力布70は、パッド開口部51を通過してインナパッド部材50bの車外側面及び背面を沿うように連続して延びて、ベース格納部24の内側壁部24cに設けられた力布挿通孔29まで到達している。
【0043】
そして、力布70は、力布挿通孔29を通過して力布係止部27まで連続して延びて、力布係止部27に係止される。
このとき、力布70の他端部72には、力布係止部27に係止するための樹脂製のトリムコードが縫着されている。
【0044】
上記構成において、図8に示すようにエアバッグ10が膨出展開したときには、力布70は、エアバッグ10の膨出方向を表皮材60の表皮開裂部61側にガイドする。
また、力布70の一端部71側は、インナパッド部材50b及びインナ表皮材63と共に車体前後方向の前方側に展開され、また車体幅方向の車内側に展開されることになる。
【0045】
また上記構成において、図7に示すように、エアバッグ10及びインフレータ11を車体後方側から保持するリテーナ部材30は、その車体後方側にある車体部材38によって支持されている。
詳しく言うと、リテーナ部材30において後壁部30aと、上部係合爪36及び下部係合爪37とが、車体前後方向において車体部材38の一部を挟持している。
そして、リテーナ部材30の左右の上部係合爪36が、車体幅方向において車体部材38の一部によって挟持されている。
そのため、エアバッグ10が膨出展開するときに、ベース格納部24周辺の剛性を向上させ、エアバッグ10の膨出展開方向をより安定させることができる。
【0046】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、図4に示すように、上部係合爪36、下部係合爪37が、リテーナ部材30の上方部分、下方部分にそれぞれ形成されているが、特に限定されることなく、上部係合爪36及び下部係合爪37の一方のみがリテーナ部材30に形成されていても良いし、代わりにリテーナ部材30の上下方向の中央部分に中央係合部が形成されていても良い。
なお、下部係合爪37がリテーナ部材30の左右両端に設けられ、上部係合爪36が左右両端のうち、一方の端部分のみに配置された場合には、リテーナ部材30の上端部分が上方に延出し、その上方延出部分が、車体後方側の不図示の車体部材にボルト締結されていると望ましい。
【0047】
上記実施形態において、図5に示すように、上部係合爪36と上部係合穴38aとは、フック状の係合構造からなるが、特に限定されることなく、スナップフィットによって係合しても良いし、鉤状に係合してももちろん良い。
また、上部係合穴38aは、貫通穴として形成されているが、これに限定されることなく、窪んだ凹部として形成されていても良い。
【0048】
上記実施形態において、図5に示すように、リテーナ部材30の上下の係合爪36,37(係合部)が車体部材38の上下の係合穴38a,38b(被係合部)に係合しているが、特に限定されることなく、逆にリテーナ部材30に係合穴が形成され、車体部材38に係合爪が形成されていても良い。
【0049】
上記実施形態において、図6に示すように、リテーナ部材30は、後壁部30aと、上下の係合爪36,37とで車体部材38の一部を当接させて挟持しているが、特に限定されることなく、少なくとも後壁部30aと上下の係合爪36,37とで車体部材38の一部を挟むように配置されていれば良い。
すなわち、リテーナ部材30と車体部材38とを係合させたときに、後壁部30aと車体部材38との間に多少間隔が空いても良いし、上部係合爪36と車体部材38との間に多少間隔を空けて配置しても良い。
【0050】
上記実施形態において、力布係止部27は、図7に示すように、ベース格納部24の内側壁部24cに形成されているが、これに限定されることなく、ベース格納部24において外側壁部24bや後壁部24aに形成されていても良い。
なお望ましくは、力布係止部27は、ベース格納部24においてエアバッグ10及びインフレータ11よりも車体幅方向の車内側に形成されている方が良い。
このようにすれば、力布70によって、エアバッグ10を車体前方側に一層安定して膨出展開できるためである。
理由として、エアバッグ10を格納するベース格納部24の車体幅方向において、外側壁部24b側は、比較的剛性の高い車体ドア2aに支持されている一方で、内側壁部24c側は、比較的弾性の高い後部座席1に支持されている。すると、エアバッグ10の膨出展開方向が、車体幅方向において弾性の高い後部座席1側に引き寄せられる傾向となる。
そこで、内側壁部24c側に力布係止部27を設けて、内側壁部24c側を力布70によって優先的にガイドすれば、エアバッグ10の膨出展開方向がより安定するからである。
【0051】
上記実施形態において、インフレータ11の組み付け軸部13は、図4に示すように、ベース格納部24の内側壁部24cに組み付けられているが、これに限定されることなく、ベース格納部24において外側壁部24bや後壁部24aに組み付けられていても良い。
なお望ましくは、組み付け軸部13は、車体幅方向においてベース格納部24の内側壁部24c側に組み付けられている方が良い。
このようにすれば、ベース格納部24の内側壁部24c側の支持剛性が向上するため、上記で説明したように、エアバッグ10の膨出展開方向がより安定するからである。
【0052】
上記実施形態では、具体例として自動車の後部座席に用いられるサイドエアバッグ装置Sについて説明したが、これに限定されることなく、自動車の前部座席、電車、バス等の車両用シート、飛行機、船等の乗物用シート等に利用されるものであっても良い。
【0053】
本実施形態では、主として本発明に係るサイドエアバッグ装置Sに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
S サイドエアバッグ装置
1 後部座席
1a シートバック
2 車体
2a 車体ドア
10 エアバッグ
11 インフレータ
12 ハーネス接続部
13 組み付け軸部
20 ベース部材
21 ベース本体部
21a 上部ベース取り付け部
21b 下部ベース取り付け部
22 ベース外壁部
22a 係止爪
23 ベース内壁部
23a 木目込み溝
24 ベース格納部
24a 後壁部
24b 外側壁部
24c 内側壁部
27 力布係止部
28 ベース穴部
29 力布挿通孔
30 リテーナ部材
30a 後壁部
30b 外側壁部
30c 内側壁部
32 力布保持部
33 リテーナ穴部
35 組み付け部材
36 上部係合爪(係合爪)
36a,37a 第1延出部
36b,37a 第2延出部
37 下部係合爪
38 車体部材
38a 上部係合穴
38b 下部係合穴
40 ハーネス
41 上端部
42 下端部
50 パッド部材
50a アウタパッド部材
50b インナパッド部材
51 パッド開口部
60 表皮材
61 表皮開裂部
62 アウタ表皮材
63 インナ表皮材
70 力布
71 一端部
72 他端部
L 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8