(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469552
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ストレーナ装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
E02B 9/04 20060101AFI20190204BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20190204BHJP
B01D 35/16 20060101ALI20190204BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20190204BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
E02B9/04 E
B01D35/02 A
B01D35/16
B01D29/04 510B
B01D29/04 520Z
B01D29/04 530A
B01D29/38 580Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-171197(P2015-171197)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-48549(P2017-48549A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】谷本 賢也
(72)【発明者】
【氏名】河尻 正巳
(72)【発明者】
【氏名】横家 大樹
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−034095(JP,U)
【文献】
特開平10−000313(JP,A)
【文献】
実開昭47−026572(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3050454(JP,U)
【文献】
実開平02−061485(JP,U)
【文献】
特開2003−172298(JP,A)
【文献】
特開2005−226321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/02−9/06
B01D 35/02
B01D 35/16
B01D 29/01
B01D 29/39
B01D 29/66
B07B 1/28
B07B 1/54
E02D 15/00−15/10
E02D 5/00
E02D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水配管の周壁に設けられた取水口から取水するように構成され、前記取水口には複数の取水孔を有するとともに、水中の夾雑物を遮るためのストレーナを備え、前記ストレーナには、一端がストレーナに固定され、他端がストレーナに対して非固定状態で水の流れにより揺動して夾雑物による取水孔の詰まりを抑える複数の揺動部材を備えることを特徴とするストレーナ装置。
【請求項2】
前記取水口は通水配管の側部中央位置に設けられ、揺動部材はストレーナの下半部において水の流れに並行して延びるように複数設けられている請求項1に記載のストレーナ装置。
【請求項3】
前記取水口は通水配管の側部中央位置に設けられ、揺動部材はストレーナの下半部において水の流れの方向に複数設けられ、各揺動部材は揺動したとき互いに接触しないように配置されている請求項1又は請求項2に記載のストレーナ装置。
【請求項4】
前記揺動部材はチェーンにより構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のストレーナ装置。
【請求項5】
前記チェーンの一端はストレーナに固定され、チェーンの他端には取水孔よりも大きく形成されたリングが連結されている請求項4に記載のストレーナ装置。
【請求項6】
前記ストレーナの外面には塗料による被膜が形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のストレーナ装置。
【請求項7】
前記通水配管は水力発電所の水圧配管であり、取水口には少なくとも発電機の軸受部を冷却するための冷却水配管が接続されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のストレーナ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のストレーナ装置の使用方法であって、
前記ストレーナ装置の非使用時には揺動部材は自重で垂れ下がり、ストレーナ装置の使用時には揺動部材は通水配管内を流れる水によって揺動し、ストレーナに貼り付く夾雑物を除去することを特徴とするストレーナ装置の使用方法。
【請求項9】
前記揺動部材は、水の流れに並行して延びるように複数設けられるとともに、水の流れの方向に複数設けられ、各揺動部材が通水配管内を流れる水によって独自に揺動し、ストレーナに貼り付く夾雑物を除去する請求項8に記載のストレーナ装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水力発電所における発電機や水車の軸受用冷却水及び発電機巻線冷却用空気冷却器の冷却水等を得るために、通水配管(水圧鉄管)の取水口に設けられている舟形のストレーナに落葉等の夾雑物が詰まることを防止するためのストレーナ装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所においては、ダムに貯留された水が導水路を介して上水槽に導かれ、上水槽内の水が通水配管を経て水車へと導かれ、発電機による発電が行われる。前記通水配管には取水口が設けられ、その取水口には冷却水配管が接続され、冷却水が自動ストレーナを介して発電機や水車の軸受部及び冷却器等へと供給される。
【0003】
前記取水口には舟形のストレーナが取付けられ、落葉等の夾雑物が取水口から冷却水配管内へ流入しないようになっている。しかしながら、秋季から冬季にかけて落葉樹の落葉が増え、その落葉がストレーナに形成された多数の細孔に詰まるため、冷却水量が急激に減少して冷却性能が著しく低下する。この場合、発電機が突然故障停止するおそれがあることから、事前に発電機の運転を止めるとともに、通水配管内の通水を停止してストレーナの清掃を実施しなければならず、多大な手間と労力を費やす必要があった。このため、そのような異常事態を回避すべく、種々の検討が加えられている。
【0004】
この種のストレーナ装置が例えば特許文献1に示されている。すなわち、このストレーナ装置は、取水管の先端に取付けられ、取水管に連通する開口が複数箇所に設けられたストレーナ本体と、そのストレーナ本体の外側に被嵌され、ストレーナ本体に対して相対移動可能な開度調整部材と、該開度調整部材を相対移動させる操作手段とを備えている。そして、開度調整部材をストレーナ本体に対して相対移動させ、ストレーナ本体の開口の開度を繰り返し変化させることにより、ストレーナに付着した夾雑物を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−56407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載されている従来構成のストレーナ装置においては、開度調整部材をストレーナ本体の外周に相対移動可能に装着しなければならず、また開度調整部材にストレーナ本体の開口に合せた多数の孔を形成しなければならない。このため、従来のストレーナ装置は構成が複雑で、設置が煩雑であった。
【0007】
さらに、このストレーナ装置は、開度調整部材を操作手段によりストレーナに対して何度も相対移動させなければならず、操作が面倒であるとともに、ストレーナ本体の開口に多量の夾雑物が詰まったときには開度調整部材の操作が重くなったり、操作が困難になったりするおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、構成が簡易で、ストレーナの機能を長期にわたって持続させることができるストレーナ装置及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のストレーナ装置は、通水配管の周壁に設けられた取水口から取水するように構成され、前記取水口には複数の取水孔を有するとともに、水中の夾雑物を遮るためのストレーナを備え、前記ストレーナには、一端がストレーナに固定され、他端がストレーナに対して非固定状態で水の流れにより揺動して夾雑物による取水孔の詰まりを抑える複数の揺動部材を備えることを特徴とする。
【0010】
前記取水口は通水配管の側部中央位置に設けられ、揺動部材はストレーナの下半部において水の流れに並行して延びるように複数設けられることが好ましい。
前記取水口は通水配管の側部中央位置に設けられ、揺動部材はストレーナの下半部において水の流れの方向に複数設けられ、各揺動部材は揺動したとき互いに接触しないように配置されることが好ましい。
【0011】
前記揺動部材はチェーンにより構成されていることが好ましい。
前記チェーンの一端はストレーナに固定され、チェーンの他端には取水孔よりも大きく形成されたリングが連結されていることが好ましい。
【0012】
前記ストレーナの外面には塗料による被膜が形成されていることが好ましい。
前記通水配管は水力発電所の水圧配管であり、取水口には少なくとも発電機の軸受部を冷却するための冷却水配管が接続されていることが好ましい。
【0013】
前記ストレーナ装置の使用方法は、前記ストレーナ装置の非使用時には揺動部材は自重で垂れ下がり、ストレーナ装置の使用時には揺動部材は通水配管内を流れる水によって揺動し、ストレーナに貼り付く夾雑物を除去することを特徴とする。
【0014】
前記揺動部材は、水の流れに並行して延びるように複数設けられるとともに、水の流れの方向に複数設けられ、各揺動部材が通水配管内を流れる水によって独自に揺動し、ストレーナに貼り付く夾雑物を除去することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のストレーナ装置によれば、構成が簡易で、ストレーナの機能を長期にわたって持続させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態において、ストレーナ外面に揺動部材としてのチェーンを取付けたストレーナ装置を示す正面図。
【
図2】通水配管内の冷却水配管への取水口に固定されたストレーナを示す側断面図。
【
図3】通水配管内の冷却水配管への取水口に固定されたストレーナを示す平断面図。
【
図4】通水配管内の冷却水配管への取水口に固定されたストレーナにチェーンを取付けたストレーナ装置を拡大して示す側断面図。
【
図5】チェーンの自由端にストレーナの取水孔より大きいリングを連結した状態を示す正面図。
【
図6】チェーンが水流によって揺動する状態を示す作用図。
【
図7】ストレーナ装置による実施形態の効果を示す斜視図。
【
図8】水力発電所における全体構成を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図8に基づいて詳細に説明する。
図8に示すように、ダム11の下流には上水槽12が設けられ、導水路13を介してダム11内の水が上水槽12に貯留される。前記上水槽12には斜め下方へ延びる通水配管(水圧配管)14が接続され、その通水配管14は主弁15を介して水車16に接続されている。前記通水配管14は鋼鉄製で、その直径が例えば2600mm、厚さが例えば28mmに形成される。そして、上水槽12内の水は通水配管14を経て水車16内に到り、通水配管14を流れ落ちる水の力により水車16を回し、発電機17で発電を行うように構成されている。
【0018】
図2に示すように、前記通水配管14の周壁14aの一側部中央位置には取水口18が開口され、その取水口18には冷却水配管19が水平方向に延びるように溶接によって固定されている。
図8に示すように、この冷却水配管19は、自動ストレーナ20を介して発電機17の複数の軸受部21や水車16の軸受部21a及び発電機17の巻線冷却用の空気冷却器21bに到るように構成され、前記取水口18から取水された水が冷却水配管19を通って軸受部21、21a及び発電機17の巻線を冷却するようになっている。
【0019】
図1〜
図3に示すように、前記通水配管14の周壁14a内面における取水口18の周囲には、正面長円形でかつ断面円弧形の舟形状をなすストレーナ22が、通水配管14の周壁14a内面から内方へ膨出するように、溶接により接合されている。このストレーナ22の中心は、冷却水配管19よりも上流側に位置している。このストレーナ22は鋼鉄製で、長さが例えば1050mm、幅が400mm、厚さが12mmに形成される。また、ストレーナ22の通水配管14内への膨出高さは例えば130mmに形成される。
【0020】
図1に示すように、このストレーナ22には、円孔状の取水孔(細孔)23が縦横に一定間隔をおいて多数穿設され、通水配管14内を流れる水が各取水孔23から冷却水配管19へ導かれるようになっている。各取水孔23は、その直径が例えば22mmに形成され、通水配管14内を流れる水に混ざった落葉、木屑、ごみ等の夾雑物24が取水孔23から冷却水配管19内へ流入し難いようになっている。なお、取水孔23はストレーナ22の上流側端部及び下流側端部には設けられていない。
【0021】
前記自動ストレーナ20は図示しない多数の微小孔を有する回転かごにより構成され、前記ストレーナ22で除去されなかった微小な夾雑物24を除去する。前記微小孔は、例えば直径3.2mmに形成される。
【0022】
前記ストレーナ22の下半部において、揺動部材としての複数のチェーン25はその一端(固定端25a)がストレーナ22の外面に取付けられ、他端(自由端25b)がストレーナ22に非固定状態で通水配管14内の水の流れにより揺動するように構成されている。チェーン25の固定端25aは、例えばストレーナ22の取水孔23に図示しない銅線等を通してチェーン25を構成する鎖素子26を結合し、チェーン25がストレーナ22に固定されている。
【0023】
前記チェーン25は、例えば上下方向に3列、左右方向(上流から下流方向)に5列、合計15個取付けられる。各チェーン25の長さは例えば100〜150mmに設定され、水の流れ方向におけるチェーン25間の間隔は例えば150〜200mmに設定される。
【0024】
図5に示すように、前記チェーン25は長円状をなす鎖素子26が連結して構成されている。各鎖素子26はステンレス鋼により形成されている。各チェーン25の非固定状態である自由端25bには、ストレーナ22の取水孔23よりも大きく形成されたステンレス鋼製の円環状をなすリング27が連結されている。このリング27により、チェーン25の自由端25bが取水孔23内へ吸い込まれないように構成されている。
【0025】
そして、前記通水配管14内への非通水時には
図1及び
図4の実線に示すように自重で垂れ下がり、通水配管14内への通水時には
図1の二点鎖線に示すように水の流れの方向すなわちほぼ水平方向に並行して延びる。各チェーン25は、水の流れによって揺動したとき、互いに接触しない長さに設定されている。このような各チェーン25の揺動運動により、夾雑物24による取水孔23の詰まりを抑えるようになっている。
【0026】
図4に示すように、前記ストレーナ22の外面或いはストレーナ22の周囲の通水配管14の周壁14a内面には塗料による被膜28が形成され、チェーン25の揺動によるストレーナ22外面及び周壁14a内面の摩耗を抑制する。この塗料は密着性(付着性)に優れるとともに、耐摩耗性も発現できるものであり、具体的にはエポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、アクリル変性ウレタン樹脂塗料等が用いられる。塗布形態としては、塗料を塗布して被膜28を一層形成する形態でもよいが、下塗り塗料を塗布後に上塗り塗料を塗布して被膜28を二層形成する形態が好ましい。具体的には、下塗り塗料としてエポキシ樹脂塗料、上塗り塗料としてアクリル変性ウレタン樹脂塗料を使用して、密着性、耐摩耗性等の特性を有する被膜28を形成する。
【0027】
前述したストレーナ22、揺動部材としてのチェーン25、被膜28等によりストレーナ装置30が構成されている。
次に、以上のように構成されたストレーナ装置30の使用方法について作用とともに説明する。
【0028】
さて、
図8に示すように、水力発電所において発電を行う場合には、ダム11に貯留された水を上水槽12から通水配管14を経て水車16に導いて発電機17で発電を行う。前記水車16や発電機17の軸受部21、21a及び発電機17の空気冷却器21bは、通水配管14の取水口18から冷却水配管19に流入された冷却水により冷却される。このとき、通水配管14の取水口18にはストレーナ22にチェーン25が取付けられたストレーナ装置30が設けられている。
【0029】
図1、
図4及び
図6の実線に示すように、ストレーナ装置30の非使用時には全てのチェーン25は自重により垂れ下がった状態にある。次いで、ストレーナ装置30の使用時、すなわち通水配管14内への通水時には、
図6の矢印に示すように、チェーン25の他端が自由端25bになっていることから、チェーン25の自由端25b側はストレーナ22外面において通水配管14内の水流によりその固定端25aを起点にして半円状(又は扇状)を描くように揺動運動をする。すなわち、
図6の一点鎖線又は二点鎖線に示すように、チェーン25の自由端25b側は水流の強さ、方向等に応じてその固定端25aを起点にして揺動(回動)し、水流の方向へと延びる。
【0030】
図1の二点鎖線に示すように、チェーン25は、水の流れに並行して延びるように3列に設けられるとともに、水流の方向にも5列に設けられていることから、各チェーン25が通水配管14内を流れる水の状態に応じてそれぞれ独自に揺動する。
【0031】
このような多数のチェーン25の揺動運動により、ストレーナ22外面に貼り付く落葉等の夾雑物24をストレーナ22外面から剥して落としたり、ストレーナ22外面から離間させたりすることができる。その結果、
図7に示すように、ストレーナ22外面の下半部において夾雑物24が取り除かれ、取水孔23の詰まりが防止される。このため、通水配管14から冷却水配管19への冷却水の流れを維持することができ、冷却水の水量や水圧を十分に確保することができる。
【0032】
ちなみに、同一の条件でストレーナ22にチェーン25を取付けた場合とチェーン25を取付けなかった場合について効果を比較した。その結果、冷却水配管19への冷却水量は、チェーン25を取付けた場合には96%を維持できたのに対し、チェーン25を取付けなかった場合には50%の低下が見られた。また、自動ストレーナ20の入口圧力は、チェーン25を取付けた場合には87%(1.28MPaから1.11MPa)維持できたのに対し、チェーン25を取付けなかった場合には66%(1.28MPaから0.84MPa)に低下した。加えて、ステンレス鋼により形成されたチェーン25の摩耗量は、10ヶ月経過後に鎖素子26の線径で0.3mmであり、線径が50%以下に減肉するには3.5年を要することから、チェーン25は耐久性の高いことが示された。
【0033】
以上詳述した実施形態によって得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態のストレーナ装置30は、一端がストレーナ22に固定され、他端が非固定状態に形成された複数の揺動部材としてのチェーン25を有している。このため、複数のチェーン25が通水配管14内の水の流れにより揺動し、ストレーナ22外面への夾雑物24の貼り付きを抑えることができる。従って、夾雑物24によるストレーナ22の取水孔23の詰まりを抑制することができる。
【0034】
よって、この実施形態のストレーナ装置30によれば、構成が簡易で、ストレーナ22の機能を長期にわたって持続させることができる。その結果、通水配管14への通水を緊急停止してストレーナ22の清掃作業を行ったり、定期的にストレーナ22の清掃作業を実施したりする必要がなく、そのための手間や費用を節約することができる。
【0035】
(2)前記チェーン25は、水の流れに並行して延びるように複数設けられている。このため、水の流れを利用してストレーナ22外面の夾雑物24を有効に除去することができる。
【0036】
(3)前記取水口18は通水配管14の側部中央位置に設けられ、チェーン25はストレーナ22の下半部において水の流れの方向に複数設けられ、各チェーン25は揺動したとき互いに接触しないように配置されている。そのため、チェーン25は自重で垂れ下がった状態からその自由端25bが水の流れる方向へ移動するときにストレーナ22外面の夾雑物24を効率的に拭うことができる。しかも、複数のチェーン25は揺動時に接触しないように構成されていることから、各チェーン25が独立して揺動することができ、チェーン25による夾雑物24の除去を有効に進めることができる。
【0037】
(4)前述のように、揺動部材はチェーン25により構成されている。このため、チェーン25を構成する鎖素子26間が水の流れにより相対的に動くことができ、夾雑物24の除去効率を向上させることができる。
【0038】
(5)前記チェーン25の一端はストレーナ22に固定され、チェーン25の他端には取水孔23よりも大きく形成されたリング27が連結されている。この場合には、チェーン25の他端がストレーナ22の取水孔23に吸い込まれることを防止でき、夾雑物24の除去を継続して実施することができる。
【0039】
(6)前記ストレーナ22の外面には密着性が良く、耐摩耗性も発揮できる塗料による被膜28が形成されている。このため、チェーン25とストレーナ22外面との接触による摩耗を抑制でき、チェーン25による夾雑物24の除去を長期にわたって継続することができる。
【0040】
(7)前記ストレーナ22は舟形状をなし、通水配管14内へ膨出するように構成されている。そのため、ストレーナ22の強度を高めることができるとともに、ストレーナ22の面積を拡大でき、通水配管14から冷却水配管19への冷却水の供給量を十分に確保することができる。
【0041】
(8)前記通水配管14は水力発電所の水圧配管であり、取水口18には発電機17の軸受部21、水車16の軸受部21a及び発電機17の巻線を冷却するための冷却水配管19が接続される。この場合、水力発電所において、発電機17の停止を抑制して発電機17の稼動を持続させることができ、水力発電所の管理水準を向上させることができる。
【0042】
(9)前記ストレーナ装置30の使用方法は、ストレーナ装置30の非使用時にはチェーン25が自重で垂れ下がり、ストレーナ装置30の使用時にはチェーン25が通水配管14内を流れる水によって揺動し、ストレーナ22に貼り付く夾雑物24を除去するものである。従って、チェーン25を水の流れによって揺動させることにより、ストレーナ22の詰まりを容易に抑制することができる。
【0043】
(10)前記チェーン25は、水の流れに並行して延びるように複数設けられるとともに、水の流れの方向に複数設けられ、各チェーン25が通水配管14内を流れる水によって独自に揺動し、ストレーナ22に貼り付く夾雑物24を除去する。この場合、複数のチェーン25がそれぞれ独自に働き、チェーン25による夾雑物24の除去効率を高めることができる。
【0044】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・前記揺動部材として、複数の金属棒、金属線や金属管をそれぞれ相対回動可能に連結したものを使用してもよい。
【0045】
・前記実施形態において、チェーン25を水の流れに並行するように、2列、4列等に配置してもよい。また、水の流れの方向におけるチェーン25間の間隔を長くするとともに、チェーン25自体の長さを長く設定してもよい。
【0046】
・前記複数のチェーン25をストレーナ22の上半部と下半部に設けるように構成してもよい。
・前記複数のチェーン25の配置を、互いに干渉しない範囲で、千鳥状に設定したり、ランダムに設定したりしてもよい。
【0047】
・前記チェーン25を構成する鎖素子26の形状を、円形状、楕円形状、非対称形状等に形成してもよい。また、鎖素子26の材料として、鋼線等を使用してもよい。
・前記ストレーナ22の形状、膨出高さ等を適宜変更してもよい。
【0048】
・前記チェーン25を、水流によって揺動したときその自由端25b側が隣接するチェーン25の固定端25a側に接触(干渉)するように構成してもよい。この場合には、揺動範囲の狭いチェーン25の固定端25a側に付着した夾雑物24に対し、隣接するチェーン25の自由端25b側が当たってその夾雑物24を振り落して取り除くことができる。そのため、チェーン25の自由端25b側への夾雑物24の堆積を抑制することができる。
【0049】
・前記取水口18を、通水配管14の側部中央位置以外の位置、例えば通水配管14の上部中央位置に設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
14…通水配管、14a…周壁、17…発電機、18…取水口、19…冷却水配管、21、21a…軸受部、21b…空気冷却器、22…ストレーナ、23…取水孔、24…夾雑物、25…揺動部材としてのチェーン、27…リング、28…被膜、30…ストレーナ装置。