【実施例】
【0013】
図1を参照し、半導体装置100について説明する。半導体装置100は、基板2、バッファ層4、ヘテロ接合層7、p型窒化物半導体層14、ポリシリコン層16、ゲート電極18、ソース電極20及びドレイン電極10を備えている。
【0014】
基板2の材料は、シリコンである。基板2の表面に、窒化アルミニウム(AlN)を材料とするバッファ層4が設けられている。バッファ層4の表面に、ヘテロ接合層7が設けられている。ヘテロ接合層7は、第1窒化物半導体層6と第2窒化物半導体層8を備えている。第1窒化物半導体層6が、バッファ層4の表面に設けられている。第1窒化物半導体層6の材料は、窒化ガリウム(GaN)である。第1窒化物半導体層6は、ノンドープ(i型の窒化物半導体)である。第1窒化物半導体層6の厚みは、0.1μm〜0.3μmに調整されている。第2窒化物半導体層8は、第1窒化物半導体層6の表面に設けられている。第2窒化物半導体層8の材料は、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である。第2窒化物半導体層8は、ノンドープである。第2窒化物半導体層8の厚みは、15nm〜20nmに調整されている。第2窒化物半導体層8のバンドギャップは、第1窒化物半導体層6のギャップより大きい。第1窒化物半導体層6と第2窒化物半導体層8の接合面22の近傍に、2次元電子ガス層が形成される。
【0015】
p型窒化物半導体層14は、ヘテロ接合層7の表面の一部に設けられている。p型窒化物半導体層14の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。p型窒化物半導体層14には、p型不純物としてマグネシウム(Mg)が導入されている。p型窒化物半導体層14の不純物濃度は7×10
18〜2×10
19cm
−3に調整されている。また、p型窒化物半導体層14の厚みは、70nm〜120nmに調整されている。なお、p型窒化物半導体層14の組成は、第2窒化物半導体層8と同一である。
【0016】
ポリシリコン層16は、p型窒化物半導体層14の表面に設けられている。ポリシリコン層には、n型不純物としてリンが導入されている。ポリシリコン層の不純物濃度は、1×10
14〜1×10
17cm
−3に調整されている。ポリシリコン層16不純物濃度は、p型窒化物半導体層14の不純物濃度より低い。ポリシリコン層16は、p型窒化物半導体層14より高抵抗である。ポリシリコン層16の厚みは、250nm〜400nmに調整されている。
【0017】
ゲート電極18は、ポリシリコン層16の表面に設けられている。ゲート電極18の材料は、アルミニウム(Al)である。ゲート電極18は、ポリシリコン層16にオーミック接続されている。ゲート電極18,ポリシリコン層16及びp型窒化物半導体層14は、半導体装置100のゲート部17を構成している。そのため、ゲート部17が、ヘテロ接合層7の表面の一部に設けられているということもできる。
【0018】
なお、ゲート電極18の材料として、アルミニウムに代えて、チタン,ニッケル,パラジウムを用いることもできる。また、ゲート電極18として、アルミニウム,チタン,ニッケル,パラジウムの何れかを含む積層体を用いることもできる。あるいは、ゲート電極18の材料として、ポリシリコンを用いることもできる。この場合、ゲート電極18として用いられるポリシリコンは、ポリシリコン層16よりも不純物を濃く含んでいる。例えば、ゲート電極18の材料としてポリシリコンを用いる場合、ゲート電極18(ポリシリコン)は、不純物を1×10
19cm
−3以上に調整されている。換言すると、p型窒化物半導体層14上に高抵抗のポリシリコン層(ポリシリコン層16)と、低抵抗のポリシリコン層(ゲート電極18)が積層されている。ゲート電極18は、ポリシリコン層16より低抵抗であれば、目的に応じて、種々の材料を選択することができる。
【0019】
ソース電極20及びドレイン電極10は、各々ヘテロ接合層7の表面の一部に設けられいる。ソース電極20とドレイン電極10は、ヘテロ接合層7の表面に離反して設けられている。ソース電極20とドレイン電極10の間に、ゲート部17が配置されている。ソース電極20とドレイン電極10は、チタンとアルミニウムの積層電極である。ソース電極20とドレイン電極10は、ヘテロ接合層7(第2窒化物半導体層8)にオーミック接続されている。ソース電極20とドレイン電極10は、パッシベーション膜12によって、ゲート部17から絶縁されている。
【0020】
半導体装置100は、ノーマリーオフタイプのHFET(Heterostructure Field Effect Transistor)であり、接合面22の近傍に形成される2次元電子ガス層をチャネルとして利用する。具体的には、ドレイン電極10に正電圧が印加され、ソース電極20に接地電圧が印加され、ゲート部17に正電圧(オン電圧)が印加されると、ソース電極20から注入された電子が、2次元電子ガス層を通過して、ドレイン電極10に向けて走行する。
【0021】
ゲート部17にオン電圧が印加されてないときは、p型窒化物半導体層14から接合面22に向けて空乏層が伸びている。空乏層により、2次元電子ガス層の電子が枯渇し、ソース電極20からドレイン電極10に向かう電子の走行が停止する。すなわち、ゲート部17にオン電圧が印加されていないときは半導体装置100はオフ状態を維持し、ゲート部17にオン電圧が印加されるとオン状態に切り替わる。
【0022】
上記したように、半導体装置100は、ゲート部17にオン電圧を印加したときに、オン状態に切り替わる。半導体装置100では、ゲート電極18とp型窒化物半導体層14の間に高抵抗のポリシリコン層16が設けられているので、オン状態のときにゲート電流が流れることを抑制することができる。仮に、ゲート電極18とp型窒化物半導体層14が直接接している、あるいは、ゲート電極18とp型窒化物半導体層14の間に低抵抗の層が設けられていると、オン状態のときにゲート電流が流れやすくなってしまう。なお、ポリシリコン層16には不純物が導入されている。
【0023】
図2から
図4を参照し、半導体装置100の製造方法(第1製造方法)について説明する。まず、
図2に示すように、シリコン基板2の表面にAlNを材料とするバッファ層4を成長させる。その後、GaNを材料とする第1窒化物半導体層6を結晶成長させ、AlGaNを材料とする第2窒化物半導体層8を結晶成長させる。第2窒化物半導体層8は、第1窒化物半導体層6が所定の厚みに達した後に原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム:Al(CH
3)
3)を導入することにより、第1窒化物半導体層6の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。第2窒化物半導体層8が所定の厚みに達した後、原料ガスにCp
2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を導入し、p型窒化物半導体層14aを結晶成長させる。p型窒化物半導体層14aは、第2窒化物半導体層8の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。なお、第1窒化物半導体層6,第2窒化物半導体層8及びp型窒化物半導体層14aは、MOVPE法(metal organic vapor phase epitaxy)を用いて1000℃で結晶成長させる。
【0024】
次に、
図3に示すように、p型窒化物半導体層14aの表面に、ポリシリコン層16aを成膜する。ポリシリコン層16aを成膜するときに、原料ガスにホスフィン(PH
3)を導入することにより、リンが導入されたn型のポリシリコン層16aが形成される。ポリシリコン層16aは、CVD法(chemical vapor deposition)を用いて600〜700℃で成膜される。なお、ポリシリコン層16aは、第1窒化物半導体層6,第2窒化物半導体層8及びp型窒化物半導体層14aとは異なる装置で成膜される。そのため、p型窒化物半導体層14aを形成する際に製造装置内に付着したp型不純物(マグネシウム)が、ポリシリコン層16aを成膜する過程でポリシリコン層16a内に混入することはない。また、ポリシリコン層16aは、窒化物半導体(窒化物半導体層6,8,14a)より低温で成膜される。そのため、ポリシリコン層16aを成膜するときに、p型窒化物半導体層14aに導入されたp型不純物がポリシリコン層16a内に混入することはない。
【0025】
次に、
図4に示すように、ポリシリコン層16aの表面の一部にエッチングマスク(図示省略)を形成し、エッチングマスクが形成されていない部分のポリシリコン層16a及びp型窒化物半導体層14aを、第2窒化物半導体層8が露出するまでエッチングする。それにより、
図1に示すp型窒化物半導体層14とポリシリコン層16が完成する。その後、エッチングマスクを除去し、ゲート電極18,ソース電極20,ドレイン電極10及びパッシベーション膜12を既知の方法で形成することにより、
図1に示す半導体装置100が完成する。
【0026】
なお、
図5及び
図6に示すように、ゲート電極18の材料としてポリシリコンを用いる場合、他の製造方法(第2製造方法)により半導体装置100を製造することができる。第2製造方法は、
図3の工程までは第1製造方法と同一である。第2製造方法では、ポリシリコン層16aが所望の厚みに達した後に、ホスフィンの導入量を増加させ、ポリシリコン層16aとゲート電極18aを連続して成膜する(
図5)。その後、
図6に示すように、ゲート電極18aの表面の一部にエッチングマスク(図示省略)を形成し、エッチングマスクが形成されていない部分のゲート電極18,ポリシリコン層16a及びp型窒化物半導体層14aを、第2窒化物半導体層8が露出するまでエッチングする。その後の工程は、第1製造方法と実質的に同一のため説明を省略する。
【0027】
上記したように、半導体装置100では、p型窒化物半導体層14上に、窒化物半導体とは異なる材料のポリシリコン層16が設けられている。p型窒化物半導体層14上に材料が異なる層(ポリシリコン層16)を設けることにより、ゲート電極18とp型窒化物半導体層14の間の層(ポリシリコン層16)の不純物濃度を所望する濃度(1×10
14〜1×10
17cm
−3)に制御することができる。すなわち、ゲート電極18とp型窒化物半導体層14の間に、高抵抗の層(ポリシリコン層16)を確実に設けることができ、半導体装置100がオン状態のときに、ゲート電流が流れることを抑制することができる。
【0028】
なお、p型不純物(典型的にマグネシウム)は、上方向に拡散しやすい。そのため、p型窒化物半導体層14とゲート電極18の間に別の窒化物半導体層を設ける場合、別の窒化物半導体層内の不純物濃度を所望する濃度に制御することは難しい。換言すると、高抵抗の(不純物濃度が低い)窒化物半導体層をp型窒化物半導体層14とゲート電極18の間に設けることは困難である。本明細書で開示する技術は、p型窒化物半導体層14とゲート電極18の間にポリシリコン層16を設けることにより、p型窒化物半導体層14とゲート電極18の間の層(ポリシリコン層16)を確実に高抵抗にすることができる。半導体装置100がオン状態のときに、ゲート電流が流れることを確実に抑制することができる。
【0029】
上記実施例では、ポリシリコン層16にn型不純物(リン)が導入された半導体装置について説明した。しかしながら、ポリシリコン層16に導入する不純物は、p型不純物(例えばボロン)であってもよい。この場合、原料ガスに三フッ化ホウ素(BF3)を導入する。なお、ポリシリコン層16は、CVD法に代えてスパッタ法を用いて形成することもできる。また、ポリシリコン層16への不純物の導入は、イオン注入法、熱拡散法等を用いて実施することもできる。基板は、シリコン基板に代えて、炭化ケイ素(SiC)基板,サファイア基板等であってもよい。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。