(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の組の複数の官能基の少なくとも一部を重合させることをさらに含み、前記重合工程は、第一の組の複数の官能基を一つ又は複数のモノマーと、任意に一つ又は複数のスペーサーモノマーの存在下で反応させて、粒子表面から伸びるポリマー鎖を形成させることを含む、請求項8に記載の方法。
クロマトグラフィー装置に使用するのに適切なクロマトグラフィー用カラム又はカートリッジであって、前記クロマトグラフィー用カラム又はカートリッジは請求項1〜7のいずれか1項に記載の官能化粒状保持体を含有するクロマトグラフィー用カラム又はカートリッジ。
前記第一の組の複数の官能基の少なくとも一部が、一つ又は複数のモノマー及び一つ又は複数のスペーサーモノマーと重合して、前記粒子表面から伸びるポリマー鎖を形成する、請求項10に記載のクロマトグラフィー用カラム又はカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0022]本発明は、液体クロマトグラフィー(例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はフラッシュ)のようなクロマトグラフィーのカラム又はカートリッジに使用するのに適切な官能化粒状保持体に向けられる。本発明はさらに、官能化粒状保持体を含むクロマトグラフィー用カラム又はカートリッジにも向けられる。本発明はなお更に、官能化粒状保持体及びクロマトグラフィー用カラム又はカートリッジの製造法、ならびに一つ又は複数の標的分子を含有している可能性のある、複合混合物(例えば生物成分を含有する混合物)を含むサンプルを分析するための官能化粒状保持体及びクロマトグラフィー用カラム又はカートリッジの使用法にも向けられる。
【0019】
[0023]本明細書及び添付のクレームにおいて、単数形の“a”、“an”及び“the”は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数形の指示対象も含むことに注意せねばならない。従って、例えば、“一つの酸化物(an oxide)”への言及は複数のそのような酸化物を含み、“酸化物(oxide)”への言及は一つ又は複数の酸化物及び当業者に公知のそれらの等価物を含む等々。開示の態様の説明において使用される、例えば組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、回収率又は収率、流速、及び同様の値、ならびにそれらの範囲を修飾している“約(about)”は、例えば、典型的な測定及び取扱い手順を通じて、これらの手順における故意でない誤りを通じて、方法を実施するために使用される成分の違いを通じて、及び同様の近似考慮を通じて発生しうる数量の変動を意味する。“約(about)”という用語は、特定の初期濃度又は混合物を有する製剤(配合物)の老化(熟成)が原因で異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する製剤(配合物)の混合又は加工が原因で異なる量も包含する。“約(about)”という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、本明細書に添付されたクレームは、これらの量の等価物を含む。
【0020】
[0024]本明細書において、“生体分子”という用語は、生体によって産生される何らかの分子、例えば、タンパク質、多糖類、脂質、及び核酸のような大分子、ならびに一次代謝産物、二次代謝産物、及び天然産物のような小分子を意味する。生体分子の例は、細胞及び細胞残屑;タンパク質及びペプチド;DNA及びRNAなどの核酸;内毒素;ウィルス;ワクチンなどである。生体分子のその他の例は、WO2002/074791及び米国特許第5,451,660号に列挙されているものなどである。
【0021】
[0025]本明細書において、“無機酸化物”は、無機成分が陽イオンで酸化物が陰イオンである二元酸素化合物と定義される。無機材料は金属を含み、メタロイドも含みうる。金属は、周期表でホウ素からポロニウムへと引かれた対角線の左側にある元素を含む。メタロイド又は半金属は、この線の右側にある元素を含む。無機酸化物の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、及びそれらの混合物を含む。
【0022】
[0026]本明細書において、“粒子”は、無機材料、有機材料、又は無機材料(例えば、金属、半金属、及びそれらの合金;無機酸化物を含むセラミックなど)と有機材料(例えば有機ポリマー)の組合せ、例えば本質的に不均質又は均質である複合材料で構成される粒子を含む。例えば、不均質複合材料は、材料の単なる混合物、層状材料、コアシェルなどを含む。均質複合材料の例は、合金、有機−無機ポリマーのハイブリッド材料などを含む。粒子は、チェーン形、ロッド形又はラス(木摺)形を含む様々な対称、非対称又は不規則形でよい。粒子は非晶質又は結晶構造などを含む様々な構造を有しうる。粒子は、異なる組成、サイズ、形状又は物理的構造を含む粒子の混合物を含んでいても、又は表面処理が異なる以外は同じであってもよい。粒子の多孔率(porosity)は、粒子内の多孔率であっても、又は小粒子が凝集して大粒子を形成している場合、粒子間の多孔率であってもよい。一つの例示的態様において、粒子は、無機酸化物、硫化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩などの無機材料で構成されるが、好ましくは無機酸化物である。これは
いずれかの公知法によって形成できる。例えば、コロイド粒子を形成する場合のような溶液重合、溶融粒子を形成する場合のような連続火炎加水分解、ゲル化粒子を形成する場合のようなゲル化、沈殿、噴霧、型取り、ゾル−ゲルなどであるが、これらに限定されない。
【0023】
[0027]本明細書において、“官能化”という用語は、粒子表面(粒子の外側部分の表面領域及び/又は内部細孔の表面領域を含む)の少なくとも一部の選択性を変更するために、官能性化合物との反応によって表面修飾されている粒子を意味する。官能化表面は、結合相(共有結合又はイオン結合)、被覆表面(例えば逆相C18結合)、クラッド表面(例えばEP6におけるような炭素クラッド)、重合表面(例えばイオン交換)、固有表面(例えば無機/有機ハイブリッド材料)などを形成するために使用できる。例えば、無機粒子をオクタデシルトリクロロシランと反応させると、シランの無機表面への共有結合によって“逆相”が形成される(例えば、C4、C8、C18など)。別の例では、無機粒子をアミノプロピルトリメトキシシランと反応させた後、アミノ基を四級化すると“陰イオン交換相”が形成される。第三の例では、結合相は、無機粒子をアミノプロピルトリメトキシシランと反応させた後、酸塩化物でアミドを形成させることによって形成できる。他の結合相は、ジオール、シアノ、陽イオン、アフィニティー、キラル、アミノ、C18、親水性相互作用(HILIC)、疎水性相互作用(HIC)、混合モード、サイズ排除などを含む。結合相又は官能化表面の一部として、米国特許第4,895,806号に示されているように、リガンドを使用すれば標的分子又は生体分子(例えばリゲート)との特異的相互作用を提供することもできる。
【0024】
[0028]本明細書において、“平均分子量”という用語は、各ポリマー鎖における反復単位数が異なるために分子量分布を有するポリマーの分子量のモル質量平均を意味すると定義される。この値は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析を用いて測定される。
【0025】
[0029]本明細書において、“クロマトグラフィー”という用語は、移動相に溶解させた混合物を、カラム又はカートリッジ又はその他の容器内に収容された固定相(すなわちクロマトグラフィー担体)に通し、標的分子を混合物中の他の分子から分離し、それを単離することを可能にするプロセスを意味する。使用されるクロマトグラフィーの種類に応じて、標的分子は固定相上に吸着されうるが望まざる成分は装置を通過するか、又はその逆である。“液体クロマトグラフィー”という用語は、液体が移動相として使用され、固体又は固体保持体上の液体が固定相として使用されるクロマトグラフィーの形態である。“フラッシュクロマトグラフィー”という用語は、陽圧下(例えば最大300psi)で実施される液体クロマトグラフィーを意味する。“高速液体クロマトグラフィー”(HPLC)という用語は、高陽圧下(例えば最大5000psi)で実施される液体クロマトグラフィーを意味する。“分取クロマトグラフィー”という用語は、標的化合物又は分子の単離及び精製のためのHPLCを意味する。“高速タンパク質液体クロマトグラフィー”(FPLC)という用語は、生体分子の分離に有用なHPLCの形態である。
【0026】
[0030]本明細書において、“不純物”という用語は、無機粒子中に存在する、その無機物以外の物質を意味する。
[0031]本明細書において、無機粒子に適用される“不規則”という用語は、粒子ごとの粒子形状が一様でなく(すなわちランダムな粒子形状)、アスペクト比が1.0より大きいことを意味する。
【0027】
[0032]本明細書において、“ハウジング”という用語は、クロマトグラフィーで使用する固定相を保持するための容器又はコンテナを意味し、カートリッジ、カラム、管、デバイス、ベッド、バッグなどを含む。
【0028】
[0033]本明細書において、“固定相”又は“クロマトグラフィー担体”又は“クロマトグラフィー保持体”という用語は、サンプル混合物中の異なる成分に対して異なる親和性を示す材料を意味し、標的分子を一つ又は複数のその他の分子の混合物から分離するためにクロマトグラフィーで使用される。固定相は、有機及び無機材料、又はそれらのハイブリッドを含み、本明細書中に定義の通り、官能化された粒子、モノリス、膜、コーティングなどの形態でありうる。
【0029】
[0034]本発明の一態様において、官能化粒状保持体は、粒子表面を有する粒子と、その粒子表面から伸びる官能基の組合せとを含み、前記官能基の組合せは、(i)第一の組の官能基であって、粒子表面上での一つ又は複数のモノマーの重合を、その第一の組の官能基と前記一つ又は複数のモノマーとの間に共有結合を形成することによって可能にする第一の組の官能基と、そして(ii)粒子表面の湿潤性を増大する第二の組の官能基とを含む。本発明の例示的態様において、粒子は、シリカ又はシリカゲル粒子(一つ又は複数)のような無機金属酸化物粒子(一つ又は複数)を含む。
【0030】
[0035]本発明の別の態様において、官能化粒状保持体は、粒子表面を有する粒子と、その粒子表面から伸びる官能基の組合せとを含み、前記官能基の組合せは、(i)粒子表面から伸びる少なくとも一つのポリマーに結合された粒子表面上の第一の組の官能基と、そして(ii)粒子表面の湿潤性を増大する第二の組の官能基とを含む。
【0031】
[0036]本発明のさらなる態様において、官能化粒状保持体は、粒子表面及び少なくとも150Åのメジアン細孔径を有する粒子と、その粒子表面から伸びる第一の組の官能基とを含み、粒子表面上の前記第一の組の官能基は、粒子表面から伸びる少なくとも一つのポリマーに結合されている。別の態様において、官能化粒状保持体は、前記粒子表面の湿潤性を増大する第二の組の官能基を含む。
【0032】
[0037]一つの例示的態様において、官能化粒状保持体の第二の官能基は、一つ又は複数のモノマー又は粒子表面に結合されうる。別の態様において、第一の組の官能基は、不飽和結合、例えばビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、又はそれらの
基のいずれかの組合せを含む。別の態様において、第二の組の官能基は、少なくとも一つの親水性有機基、例えばヒドロキシル基、ジオール基、オキシエチレン基、ポリエチレン基、カルボン酸基、アミン基、アミド基、又はそれらの
基のいずれかの組合せを含む。さらなる態様において、第一の組の官能基はビニル基を含み、第二の組の官能基はジオール基を含む。別の態様において、第一及び第二の組の官能基は、アゾ基及びカルボン酸基を含む分子の一部であってもよい。さらなる態様において、粒子表面から伸びるポリマー鎖を形成させるために、前記第一の組の官能基の少なくとも一部を一つ又は複数のモノマー及び一つ又は複数のスペーサーモノマーと重合させる。スペーサーモノマーは、一つ又は複数のモノマーを相互に分離するので、ポリマー上の官能基の配向に役立ちうる。一つ又は複数のモノマーは陰イオ性又は陽イオン性モノマーを含みうる。一つ又は複数のモノマーが陰イオン性モノマーである態様において、そのモノマーは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸でよく、
任意の一つ又は複数のスペーサーモノマーはメチレンビスアクリルアミドでよい。一つ又は複数のモノマーが陽イオン性モノマーである態様において、その一つ又は複数のモノマーは3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド又はメチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどでよく、
任意の一つ又は複数のスペーサーモノマーはジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどでよい。別の態様において、重合は、ポリマーの鎖長又は分子量を低減する連鎖移動剤を含む。連鎖移動剤は、硫黄基、チオールカルボニル基、チオールエステル基、チオールカーボネート基及びそれらの組合せなどでありうる。別の態様において、ポリマー鎖は、下記式:
【0034】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり;
R’及びR”は、それぞれ独立にH又はCH
3であり;
Yは、
【0036】
であり;
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、
(a)C
1−10−アルキル、フェニル、フェニル−C
1−10−アルキル、シクロアルキル、C
1−10−アルキル−シクロアルキル又はC
1−10−アルキルフェニル、
(b)アミノ、モノ−又はジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、カルボキシル、又はスルホニルのそれぞれによって一置換又は多置換された、(a)の中の上記基の一つ、
(c)5〜10個のC原子を有する環状又は二環式ラジカル、ここで一つ又は複数のCH又はCH
2基は、(i)N又はNH、(ii)N又はNH及びS、又は(iii)N又はNH及びOによって置換されている、又は
(d)R
2又はR
3の一つはHである;
であり、R
2及びR
3は、二つのラジカルとも酸性又は塩基性であるか、又はラジカルの一つが中性で一つが酸性又は塩基性であるように互いに調整され;そして
R
4は、C
1−10−アルキル、フェニル、フェニル−C
1−10−アルキル、シクロアルキル又はC
1−10−アルキル−シクロアルキル、又はC
1−10−シクロアルキルフェニルであり、それぞれアミノ、モノ−又はジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、カルボキシル、又はスルホニルのそれぞれによって一置換又は多置換されており;そして
nは2〜1000である]の同一又は異なる反復単位を含む。
【0037】
[0038]本発明はさらに、イオン交換カラムに使用するのに適切な硬質保持体にも向けられる。例えば、
図1に示されている例示的硬質保持体151のようなものである。本発明の硬質保持体、好ましくは無機保持体は、下記の成分の一つ又は複数を含む。
【0038】
[0039]本発明で使用するのに適切な無機保持体は、クロマトグラフィー担体として市販されている製品を含む。無機保持体は、当該技術分野で公知の方法を用いて製造できる。無機支持体は、無機支持体の表面に適用された一つ又は複数の追加成分を保持する役割を果たす。一般に、無機支持体は、無機酸化物、さらに適切には無機金属酸化物、ケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩、又は制御された制御された多孔質ガラス(controlled pore glass)である。無機金属酸化物がより望ましい。本発明で使用するのに適切な無機酸化物は、典型的には、他の化学官能基と結合できる又は反応できる遊離ヒドロキシル基を有する。望ましくは、無機酸化物は、固体無機酸化物1平方ナノメートルあたり約1〜約10個のヒドロキシル基を有する。
【0039】
[0040]適切な無機酸化物は、クロマトグラフィー用のシリカ又はシリカゲルなどのシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、ジルコン酸塩、多孔性ガラス又はチタニアなどであるが、これらに限定されない。本発明の一つの所望の態様において、無機金属酸化物はシリカ、さらに望ましくはクロマトグラフィー用のシリカ又はシリカゲルである。WO98/31461(この開示内容は引用によってその全文を本明細書に援用する)に開示されているケイ質酸化物被覆磁性粒子のような磁気応答性無機酸化物も本発明に使用できる。混合無機酸化物、例えばシリカとアルミナの共ゲル又は共沈物も使用できる。
【0040】
[0041]固体無機酸化物は、粒子状、繊維状、板状、又はそれらの組合せの物理的形状でありうる。望ましくは、固体無機酸化物は、実質的に球形の粒状体又は粒子の物理的形状である。物理的形状にかかわらず、固体無機酸化物は、約150マイクロメートル(μm)までの最長寸法(すなわち、長さ、幅又は直径)を有する。固体無機金属酸化物が実質的に球形の複数の粒子を含む場合、その複数の粒子は望ましくは約1μmから約120μmの範囲のメジアン粒径を有する。本発明の一つの所望の態様において、固体無機金属酸化物は、実質的に球形を有する複数のシリカ又はシリカゲル粒子を含み、その複数のシリカ又はシリカゲル粒子は、約10μm〜約130μm、又は約20μm〜約120μmの範囲のメジアン粒径を有する。
【0041】
[0042]本発明には様々な市販の固体無機酸化物が使用できる。適切な固体無機酸化物は、W.R.Grace & Co.社(メリーランド州コロンビア)から、DAVISIL(登録商標)の商品名で市販されているシリカ粒子(これは、約300Å〜約3000Å、望ましくは約500Å〜約1500Åのメジアン細孔径を有する不規則形)、又は球状(spheroidal)で約300Åのメジアン細孔径を有するVYDAC(登録商標)シリカなどであるが、これらに限定されない。本発明の一つの所望の態様においては、球状で約300Åの初期メジアン細孔径を有するVYDAC(登録商標)シリカが、メジアン細孔径を約800Åに増大する修正をされた後に使用される。有機材料は、アガロースゲル、ポリスチレンジビニルベンゼン(PSDVB)樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)樹脂などである。ハイブリッド材料は、Waters Corp.社製Xterra(登録商標)のような、ゾル−ゲル法によって製造されるエチレン架橋シリカハイブリッド粒子などである。
【0042】
[0043]上記無機保持体の表面は、無機支持体への、非標的分子の非特異的、非選択的結合及び/又は吸着(すなわち、標的分子以外の材料の非特異的結合)及びリガンド特異的標的分子の非特異的、非選択的結合及び/又は吸着(すなわち、一つ又は複数のリガンドによって提供される反応部位以外の反応部位への標的分子(すなわちリゲート)の非特異的結合)を低減するために、処理又は修飾(すなわち官能化)される。得られた修飾保持体表面は、(i)無機表面上に比較的不活性なR基が存在するため、非標的分子(すなわち標的分子以外の材料)に対して低親和性である、及び(ii)無機支持体表面の一つ又は複数のリガンド(下記)に直接又はリンカーを通じて選択的に結合するための反応部位の量が制御されているといった性質を備えている。一つ又は複数のリガンドに選択的に結合するための反応部位の量は、無機保持体表面に結合されている一つ又は複数のリガンドへの、一つ又は複数の目的分子の選択的で制御された結合をもたらす。
【0043】
[0044]本発明はさらに、上記官能化粒状保持体の製造法にも向けられる。別の態様において、本発明は、粒子の粒子表面を、粒子表面から伸びる官能基の組合せが得られるように処理することによって官能化粒状保持体を製造する方法を含み、前記官能基の組合せは、(i)第一の組の官能基であって、その第一の組の官能基を介して粒子表面上での一つ又は複数のモノマーの重合を可能にする第一の組の官能基と、そして(ii)粒子表面の湿潤性を増大する第二の組の官能基とを含む。別の態様において、処理工程は、粒子表面を、(i)第一の組の官能基からの官能基を有する少なくとも一つのシラン、及び(ii)第二の組の官能基からの官能基を有する少なくとも一つのシランに暴露することを含む。別の態様において、処理工程は、第一の組の官能基又は第二の組の官能基の少なくとも一つを粒子表面に結合し、その後に重合が行われる。一つの例示的態様において、官能化粒状保持体の第二の官能基は、一つ又は複数のモノマー又は粒子表面に結合されうる。別の態様において、第一の組の官能基は、不飽和結合、例えばビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、又はそれらの
基のいずれかの組合せを含む。別の態様において、第二の組の官能基は、少なくとも一つの親水性有機基、例えばヒドロキシル基、ジオール基、オキシエチレン基、ポリエチレン基、カルボン酸基、アミン基、アミド基、又はそれらの
基のいずれかの組合せを含む。さらなる態様において、第一の組の官能基はビニル基を含み、第二の組の官能基はジオール基を含む。別の態様において、第一及び第二の組の官能基は、アゾ基及びカルボン酸基を含む分子の一部であってもよい。別の例示的態様において、粒子表面はさらに、重合の前に第四アンモニウム塩(例えばテトラメチルアンモニウムクロリド)又は第四アンモニウム陽イオン(例えばテトラメチルアンモニウム陽イオン)で処理される。これはその後洗浄によって粒子表面から除去される。さらなる態様において、前記第一の組の官能基の少なくとも一部は、粒子表面から伸びるポリマー鎖を形成させるために、一つ又は複数のモノマー及び一つ又は複数のスペーサーモノマーと重合される。一つ又は複数のモノマーは、陰イオン性又は陽イオン性モノマーを含みうる。一つ又は複数のモノマーが陰イオン性モノマーである態様において、そのモノマーは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸でよく、
任意の一つ又は複数のスペーサーモノマーはメチレンビスアクリルアミドでよい。一つ又は複数のモノマーが陽イオン性モノマーである態様において、その一つ又は複数のモノマーは3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド又はメチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどでよく、
任意の一つ又は複数のスペーサーモノマーはジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどでよい。別の態様において、重合は、ポリマーの鎖長又は分子量を低減する連鎖移動剤を含み、連鎖移動剤は、硫黄基、チオールカルボニル基、チオールエステル基、チオールカーボネート基及びそれらの組合せなどでありうる。別の態様において、ポリマー鎖は、下記式:
【0045】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり;
R’及びR”は、それぞれ独立にH又はCH
3であり;
Yは、
【0047】
であり;
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、
(a)C
1−10−アルキル、フェニル、フェニル−C
1−10−アルキル、シクロアルキル、C
1−10−アルキル−シクロアルキル又はC
1−10−アルキルフェニル、
(b)アミノ、モノ−又はジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、カルボキシル、又はスルホニルのそれぞれによって一置換又は多置換された、(a)の中の上記基の一つ、
(c)5〜10個のC原子を有する環状又は二環式ラジカル、ここで一つ又は複数のCH又はCH
2基は、(i)N又はNH、(ii)N又はNH及びS、又は(iii)N又はNH及びOによって置換されている、又は
(d)R
2又はR
3の一つはHである;
であり、R
2及びR
3は、二つのラジカルとも酸性又は塩基性であるか、又はラジカルの一つが中性で一つが酸性又は塩基性であるように互いに調整され;そして
R
4は、C
1−10−アルキル、フェニル、フェニル−C
1−10−アルキル、シクロアルキル又はC
1−10−アルキル−シクロアルキル、又はC
1−10−シクロアルキルフェニルであり、それぞれアミノ、モノ−又はジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、カルボキシル、又はスルホニルのそれぞれによって一置換又は多置換されており;そして
nは2〜1000である]の同一又は異なる反復単位を含む。
【0048】
[0045]別の例示的態様において、粒子表面はさらに、重合後、何らかの非結合ポリマー又はモノマーがあればそれを除去するために、5wt%塩化ナトリウム溶液のような塩溶液に粒子表面を暴露することによって処理される。
【0049】
[0046]本発明の別の例示的態様において、処理工程後の粒子表面上の炭素含量は、70℃で一晩乾燥後、粒子の全重量を基にして、約3.5%以下、又は約3.0重量%以下、又は約2.5重量%以下、又は約2.0重量%以下、又は約1.5重量%以下である。本発明のさらなる例示的態様において、重合工程後の粒子表面上の炭素含量は、70℃で一晩乾燥後、粒子の全重量を基にして、少なくとも約3.5重量%、又は少なくとも約4.0重量%、又は少なくとも約4.5重量%、又は少なくとも約5.0重量%、又は少なくとも約5.5重量%である。本発明によるさらなる例示的態様において、重合工程後の粒子表面上の炭素含量を処理工程後の粒子表面上の炭素含量と比較した比は、少なくとも約1.5、又は少なくとも約2.0、又は少なくとも約2.5、又は少なくとも約3.0、又は少なくとも約3.5、又は少なくとも約4.0である。
【0050】
[0047]本発明は、
図1に示されている例示的イオン交換カラムのような、一つ又は複数の下記構成要素を含むイオン交換カラムに向けられる。本明細書において、“イオン交換カラム”という用語は、陰イオン又は陽イオン交換カラムのようなイオン交換カラムを含む、一つ又は複数の下記構成要素を有するカラムを含む。
【0051】
[0048]本発明のイオン交換カラムは、所望の寸法、カラム容積、及び構造的団結性を有するカラム構造を含む。典型的には、カラム構造は管状構造を含み、管状構造の両端に着脱式の端部キャップを有する。端部キャップは、材料が管状構造から望まざる漏出をするのを防止するために、管状構造に対して漏れ防止の封止を形成する。本発明の例示的イオン交換カラム100を
図1に示す。
【0052】
[0049]
図1に、本発明の例示的クロマトグラフィーカラム100の図を提供する。
図1に示されているように、例示的クロマトグラフィーカラム100は、カラムハウジング150;カラムハウジング150内に配置された担体ベッド空間151を含む。望ましくは、担体151は、少なくとも10オングストローム(Å)のメジアン細孔径を有する多孔性無機粒子を含む。
図1にさらに示されているように、カラムハウジング150は、典型的には、管状ハウジング部材156、第一の管状ハウジング部材端部キャップ152、端部キャップ152の反対側に第二の管状ハウジング部材端部キャップ153、カラム入口154、及びカラム出口155を含む。カラム100には、カラム入口154からスラリー状の多孔性無機粒子を充填でき、カラム入口は、内部に通路を有する中央孔157、及びノズル158を含む。ベッド空間内へのスラリーの分配及びさらには充填までも容易にする様々なノズルが使用できる。フィルター159が端部キャップ152、153の内面にそれぞれ配置され、管状部材156と共にベッド空間151を規定する働きのほか、ベッド空間151からの粒状担体の漏出を防止する役割も果たす。分配チャネル160は、第一の端部キャップ152及び/又は第二の端部キャップ153の面を横断して配置され、フィルター159と流体連結されている。流体分配チャネル160は、液体の放射状分配を促進するための働きをする。単純な形態では、分配チャネル160は、第一及び/又は第二の端部キャップ152及び153の面に少なくとも一つの円周方向及び/又は放射状の溝を含む。溝は、入口154のノズル158から放出される液体の周方向及び/又は放射状分配が実行できるように配置される。カラムを使い捨てカラムとして使用する場合、広範囲のカラム容積、典型的には0.1〜2000リットル、及び0.1〜100リットルの範囲のカラム容積が可能であることは理解されるであろう。US2008/0017579も参照(その全主題は引用によって本明細書に援用する)。
【0053】
[0050]カラムハウジング150は様々な材料から形成できる。典型的には、カラムハウジング150は、ポリマー材料、金属材料、ガラス材料、セラミック材料、又はそれらの複合材料を含み、望ましくはポリマー材料を含む。カラムハウジング150を形成するための適切なポリマー材料は、ポリオレフィンを含む成形可能なプラスチックのような
いずれかの合成又は半合成有機固体などであるが、これらに限定されない。
【0054】
[0051]カラムハウジング150は、慣用の熱成形技術を用いて形成できる。例えば、カラムハウジング150の管状ハウジング部材156、第一の管状ハウジング部材端部キャップ152、及び第二の管状ハウジング部材端部キャップ153は、それぞれ独立に成形工程を通じて形成できる。一部の態様では、カラムハウジング150の管状ハウジング部材156と、(i)第一の管状ハウジング部材端部キャップ152及び(ii)第二の管状ハウジング部材端部キャップ153の一つは、単一成形工程を通じて形成される(すなわち、端部キャップの一つは管状ハウジング部材156の一つの端部に一体形成される)。
【0055】
[0052]管状構造150は様々な材料から製造でき、管状構造150内の比較的高速(高性能)に耐えられるような壁構造を有する。望ましくは、管状構造150は、最大約6000psi(400バール)、さらに望ましくは約15psi(1バール)〜約4500psi(300バール)の定圧に耐えられる構造的完全性を有する。管状構造150を形成するための適切な材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリプロピレンのようなポリマー;ステンレススチールのような金属;及びガラスのような無機材料などであるが、これらに限定されない。本発明の一つの所望の態様において、管状構造150は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はポリカプロラクトンを含む。
【0056】
[0053]管状構造150の寸法は、粒子のサイズ及び形状、流量、注入量、必要なプレートの数など(これらに限定されない)といったいくつかの要因に応じて変動しうる。典型的には、管状構造150は、円形断面、約2mm〜約5000mm範囲の外径、約1mm〜約4000mmの範囲の内径、及び約2mm〜約5000mm範囲の全長を有する。
【0057】
[0054]管状構造150と共に使用するための端部キャップ152及び153は、典型的にはPEEKから形成され、管状構造150の端部に対して漏れ防止の封止を形成するような寸法を有する。
【0058】
[0055]円形断面を有する管状構造が望ましいが、他の断面を有する管状構造も本発明の範囲内であることに注意すべきである。様々な管状構造の適切な断面形状は、正方形、長方形、三角形、楕円形、五角形及び六角形の断面形状などであるが、これらに限定されない。
【0059】
[0056]本発明のクロマトグラフィー用カラム及びカートリッジは、下記の工程を用いて製造できる。
(1)管状構造の第一の端部を密封し;
(2)管状構造のカラム空洞に、上記の硬質保持体のいずれかのような硬質保持体を少なくとも部分的に充填し;
(3)管状構造のカラム空洞に第一のバッファー溶液を少なくとも部分的に充填して硬質保持体をカプセル化し;そして、任意に、
(4)管状構造の反対端(すなわち第二の端部)を密封する。
イオン交換カラムは将来の使用に備えて保管しても、又はその後上記の装置構成要素の一つ又はすべてを含む装置に接続してもよい。
【0060】
[0057]本発明はなお更に、一つ又は複数の目的分子を含有している可能性のあるサンプルを分離する方法にも向けられる。本発明の一つの例示的態様において、方法は、(a)硬質保持体を含有するイオン交換カラムにサンプルを導入する工程を含み、ここで硬質保持体は複数の無機金属酸化物粒子を含み、各粒子は(i)金属酸化物支持体;(ii)無機支持体への、非標的分子材料の非特異的結合(すなわち標的分子以外の材料の非特異的結合)及びリガンド特異的標的分子の非特異的結合(すなわち一つ又は複数のリガンドによって提供される反応部位以外の反応部位への標的分子の非特異的結合)を低減する修飾された支持体表面;及び(iii)無機支持体に結合された一つ又は複数のリガンドを含む。
【0061】
[0058]さらなる態様において、本発明は混合物から標的分子を単離する方法を提供し、該方法は、a)標的分子を含有する混合物をイオン交換クロマトグラフィーマトリックスと接触させ、ここでマトリックスは、1)150Åより大きく6000Å未満のメジアン細孔径と、20マイクロメートルより大きい平均粒径を有するシリカ粒子を含む固体保持体、及び2)固体保持体に連結された、標的分子に対して特異性を有するイオン交換リガンドを含み;そしてb)標的分子をイオン交換クロマトグラフィーマトリックスから溶出することを含む。
【0062】
[0059]さらにその他の態様において、本発明は混合物から標的分子を単離する方法を提供し、該方法は、a)標的分子を含有する混合物をクロマトグラフィーマトリックスと接触させ、ここでイオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、カラムなどのハウジング内に収容され、イオン交換クロマトグラフィーマトリックスを充填されたカラムは少なくとも400cm/時の最大流量を有し、マトリックスは、1)シリカ粒子、及び2)標的分子に対して特異性を有するイオン交換リガンドを含み、標的分子に対するマトリックスの動的容量は10%破過時で少なくとも45g/リットルであり;そして任意に、b)標的分子をイオン交換クロマトグラフィーマトリックスから溶出することを含む。
【0063】
[0060]さらにその他の態様において、本発明は混合物から標的分子を単離するためのシステムを提供し、該システムは、a)イオン交換クロマトグラフィーマトリックス、ここでマトリックスは、1)150Åより大きく6000Å未満の細孔径と20マイクロメートルより大きく120マイクロメートル未満のメジアン粒径を有するシリカ粒子、及び2)固体保持体に連結された、標的分子に対して特異性を有するイオン交換リガンドを含む固体保持体を含み;そしてb)イオン交換クロマトグラフィーマトリックスを収容するためのハウジングを含む。
【0064】
[0061]さらなる態様において、本発明は混合物から標的分子を単離するためのシステムを提供し、該システムは、a)イオン交換クロマトグラフィーマトリックスを含み、ここでイオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、カラムなどのハウジング内に収容され、イオン交換クロマトグラフィーマトリックスを充填されたカラムは少なくとも400cm/時の最大流量を有し、マトリックスは、1)シリカ粒子、及び2)標的分子に対して特異性を有するイオン交換リガンドを含み、標的分子に対するマトリックスの動的容量は少なくとも45g/リットルである。システムは、イオン交換クロマトグラフィーマトリックスからの標的分子の溶出を検出するための手段を含んでいてもよい。
【0065】
[0062]他の態様において、本発明は、150Åより大きく6000Å未満のメジアン細孔径と20マイクロメートルより大きく120マイクロメートル未満のメジアン粒径を有するシリカ粒子を含むイオン交換クロマトグラフィーマトリックスを含む容器と、少なくとも一つの容器を提供する。
【0066】
[0063]さらなる態様において、本発明は、イオン交換クロマトグラフィーマトリックスと、ここでイオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、カラムなどのハウジング内に収容され、イオン交換クロマトグラフィーマトリックスを充填されたカラムは少なくとも400cm/時の最大流量を有し、マトリックスは、1)シリカ粒子、及び2)標的分子に対して特異性を有するイオン交換リガンドを含み、標的分子に対するマトリックスの動的容量は少なくとも45g/リットルである;そして少なくとも一つの容器とを含む装置を提供する。
【0067】
[0064]サンプルの分離法は、(a)サンプルを硬質保持体及びその上のリガンドと接触させ;(b)硬質保持体を濯いで、リガンドと結合しなかった何らかのサンプル成分を洗い流し;(c)溶離液をイオン交換カラムに導入して溶離液が硬質保持体上のリガンドに結合した一つ又は複数の分子と接触するようにし;(d)溶離液を硬質保持体と一定時間接触させておいて、一つ又は複数の分子を含有する可能性のある溶離液サンプルが形成されるようにし;そして(e)カラムの内容物を分離して、サンプル中に一つ又は複数の分子が存在することを調べる工程を含みうる。
【0068】
[0065]この態様において、イオン交換カラムがイオン交換カラムと流体連結されている溶離液サンプルの分離法は、下記工程の一つ又は複数をさらに含みうる。
(1)約200バールまでのカラム圧に耐えることができる硬質保持体含有イオン交換カラムにサンプルを導入する、ここで硬質保持体は、それに結合された一つ又は複数のリガンドを有し、一つ又は複数のリガンドは一つ又は複数の分子に選択的に結合できる;
(2)サンプルを硬質保持体及びその上のリガンドと接触させる;
(3)硬質保持体を濯いで、一つ又は複数の標的分子以外の何らかのサンプル成分を洗い流す;
(4)溶離液をイオン交換カラムに導入して溶離液が硬質保持体上のリガンドに結合した一つ又は複数の標的分子と接触するようにする;そして
(5)溶離液サンプルを形成させるために溶離液を硬質保持体と一定時間接触させておく。典型的には、溶離液は、約1分〜約4時間の範囲の時間、硬質保持体と接触させておく。
【0069】
[0066]以上のように本発明を記載してきたが、以下の実施例によってさらに説明する。これらの実施例は、決して本発明の範囲に制限を課すものと見なされてはならない。それどころか、様々なその他の態様、修正、及びその等価物のための手段となりうることは明らかに理解されるはずである。そうしたその他の態様、修正、及びその等価物は、本明細書中の記載を読めば、当業者には本発明の精神及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく分かるであろう。
【実施例】
【0070】
[0067]以下の実施例で、イオン交換を含む官能化表面を有するクロマトグラフィー担体を製造するための本発明による方法を記載するが、他の表面官能化も使用できる。実施例中に示される本発明の一態様は、多孔性無機担体をベースとするイオン交換材料に関する。これは二つの主な工程からなる方法によって製造された。すなわち、(1)粗孔シリカに二つのシラン:(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを結合して初期結合中間体を形成し;そして(2)初期結合シリカ中間体の存在下、アゾ開始剤を用いてイオン性モノマーを溶液重合し、強陰イオン交換担体(Q−シリカ)又は強陽イオン交換担体(S−シリカ)のいずれかを製造した。
【0071】
[0068]実施例に示されている本発明の別の態様はQ−シリカの製造法であり、そこで利用されたモノマーは、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、少量のジアリルジメチルアンモニウムクロリド溶液であり、開始剤は2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド(V−50開始剤)であった。
【0072】
[0069]実施例に示されている本発明の別の態様はS−シリカの製造法である。この方法は、初期結合中間体をテトラメチルアンモニウムクロリド溶液で洗浄する追加の工程を含むが、これは重合を補助するために追加される。この重合の態様において、モノマーは2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)であり、開始剤は4,4'−アゾビス(シアノ吉草酸)(V−501開始剤)である。この重合は、連鎖移動剤(CTA)、例えばS,S’−ビス(α、α’−ジメチル−α”−酢酸)−トリチオカーボネート(ABCR GmbH KG社より入手できる)を使用する。CTAの機能は、重合の鎖長を制御すること及び細孔の何らかの閉塞を削減する手助けをすることである(
図2参照)。この方法は本質的にリビングラジカル重合法の一種である可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合である。
【0073】
[0070]これらの方法によって多くの異なる種類の多孔性粒子を官能化した。一部の実施例ではシリカゲルを利用した。これは、75ミクロンの粒径と250、500、800、1000Åのメジアン細孔径を有するシリカゲルであった。シリカゲルは下記手順を用いて製造された。190gの19%硫酸溶液を、オーバーヘッド撹拌機を備え、5℃に冷却された反応器に装入した。別に、263gのケイ酸ナトリウム溶液(22.9%SiO
2)も5℃に冷却した。その後、ケイ酸ナトリウム溶液を、全量のケイ酸塩が15分で添加されるような速度で硫酸溶液にポンプを通して加えた。添加中、温度は5℃に維持された。添加完了後、反応器を室温に温め、撹拌せずに内容物をゲル化させた。ゲル化後、ゲル塊を小片に切断し、水中に浸漬して、反応中に形成された硫酸ナトリウムを除去した。材料中に残留している硫酸ナトリウムのレベルを定期的にチェックしながら、洗浄水を排水して新鮮水をゲルに加えた。レベルが1%を下回ったら、ゲルを水中に懸濁させ、液体のpHをpH=9.7に調整し、溶液を67℃に加熱した。温度を20時間20分維持した。加熱時間終了後、ゲルをろ過により回収し、160℃のオーブン中でゲルの水分含量が約5重量%未満になるまで乾燥させた。このようにして得られたシリカゲルは、325m
2/gの窒素BET表面積及び1.24cc/gの窒素細孔容積を有していた。円筒形の細孔と仮定し、等式:細孔径(オングストローム)=40000×PV/SAを用いると、この材料は153オングストロームの細孔径を示す。その後、ACMを用いてゲルを所望の粒径(75ミクロン)に粉砕した後、300℃のオートクレーブ中で所望の細孔径が達成されるまで熱水処理する。
【0074】
[0071]実施例中で報告されている粒径は、Malvern Instruments Ltd.社製のMalvern Mastersizer 2000を用い、ASTM B822−10に従って、光散乱により測定された。細孔径分布は、Micromeritics Instrument Corp.社製のAutopore IV 9520を用いて水銀圧入により、及び同じくMicromeritics Instrument Corp.社製のTristar 3000を用いて窒素BETにより測定される。本明細書中で参照されている細孔容積は、10,000A以下の細孔への水銀圧入を表す。BET表面積は窒素吸着分析からも得られる。炭素及び硫黄含量の元素分析は、LECO Corp.社製のLECO Carbon and Sulfur Analyzer SC−632を用いて実施された。平均分子量は、Waters Corp.社製のRI及び粘度測定検出付きGPCV 2000を用い、GPC分析により決定された。シリカの純度は、Shimadzu Corp.社製のICPE−9000を用い、誘導結合プラズマ(ICP)によって測定された。
【0075】
[0072]実施例11〜24のサンプルの分子量は下記の手順を用いて決定された。0.5グラムの表面官能化シリカサンプルを50mlの遠心管に量り取り、10mlの脱イオン水を加え、次いで2.2ミリリットルの48%フッ化水素酸を加え、徹底的に混合後、サンプルを30分間放置した。その後、ホウ酸3.5グラムを加えて遊離フッ化物を封鎖し、サンプルをリストアクションシェーカー(wrist action shaker)に60分間入れて置いた。遠心分離し、真空下0.2μmフィルターを通してろ過した後、透明上清を分析のために回収した。上清をWaters Corp.社製のRI及び粘度測定検出付きGPCV 2000を用い(ウルトラヒドロゲルガードカラム(Ultrahydrogel guard column)と120、250、及び1000カラムを含む)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析に付した。上記の溶液を、RI検出器を備えたWaters HPLCシステムを用い、移動相の1%硝酸カリウム水溶液中に注入した。溶液の分子量は、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキシドを較正標準として用いることによって決定した。上記ポリマーの分子量は約200〜300KD未満であった。
【0076】
[0073]Qの静的結合試験は、BSA(バッファー中25mg/mlの濃度)を用い、50mM Tris HClバッファーによりpH8.0で実施した。結合/洗浄バッファーはpH8.0の50mM Tris−HClで、溶出バッファーはpH8.0の50mM/Tris−HCl/1M NaClであった。乾燥シリカサンプルをバイアルに量り取り、次に結合バッファー中のタンパク質溶液を加えた。一晩吸着後、サンプルを遠心分離し、上清を分離/廃棄した。シリカサンプルを、遠心分離と分離により洗浄バッファーで3回洗浄した。洗浄工程後、溶出バッファーを加え、溶出を2回繰り返した。合わせた溶出液について、Thermo Fisher Scientific Inc.社製のGenesys 10S Bio UV−Vis分光光度計を用い、280umでUV/Vis吸収を測定した。
【0077】
[0074]Sの静的結合試験は、ニワトリ卵白リゾチーム又はウシガンマグロブリン(バッファー中25mg/mlの濃度)を用い、50mM HOAc/NaOAcバッファーによりpH4.0で実施した。結合/洗浄バッファーはpH4.0の50mM HOAc/NaOAcで、溶出バッファーはpH4.0の50mM HOAc/NaOAc 中1M NaClであった。乾燥シリカサンプルをバイアルに量り取り、次に結合バッファー中のタンパク質溶液を加えた。一晩吸着後、サンプルを遠心分離し、上清を分離/廃棄した。シリカサンプルを、遠心分離と分離により洗浄バッファーで3回洗浄した。洗浄工程後、溶出バッファーを加え、溶出を2回繰り返した。合わせた溶出液について、Thermo Fisher Scientific Inc.社製のGenesys 10S Bio UV−Vis分光光度計を用い、280umでUV/Vis吸収を測定した。
【0078】
[0075]動的結合試験は、直径0.66cmのOmniガラスカラムを用いて実施した。2mlのカラムの場合、カラム長はほぼ5.8cmであった。シリカサンプルをDI水で洗浄した後、Akta FPLCを用い、約4000cm/hの線速度でカラムにスラリー充填した。Qの破過曲線について、pH8.0の50mM Tris−HClバッファー中BSAタンパク質(又は、Sについては、pH4.0の50mM HOAc/NaOAcバッファー中リゾチーム又はガンマグロブリン)を、Aktaを用い、約500又は1000cm/hでカラムに通液した。280nmにおけるUV−VisシグナルをGeneral Electric社製UV900を用いて測定し、クロマトグラムをMicrosoft Excelで記録及びプロットした。動的結合容量(Dynamic Binding Capacities, DBC)は、下記の等式を用いて5%破過点で算出した。
【0079】
【数1】
【0080】
[0076]結果は以下の表に示した。
[0077]
図2に、Q−シリカ及びS−シリカ材料を製造するための一般的な合成経路を示す。
【0081】
実施例1〜10
[0078]初期結合多孔性シリカ粒子のサンプルは、粒子を、処理剤1(ビニルシラン)、すなわち3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、及び/又は処理剤2(エポキシシラン)、すなわち(3−グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシランで処理することによって製造した。ビニル及びエポキシシランを予備混合した。丸底フラスコに多孔性粒子を装入し、一定量の処理剤ミックスをフラスコに加えた。混合物を一晩回転させた。シリカの1/10の量(重量による)の0.5M硫酸を加えた。混合物を室温で1時間回転させ、次に70℃に1時間加熱した。フラスコを放冷した後、シリカを1M硫酸に30分浸漬し、次いでろ過した。それを次にDI水で5回洗浄し、ろ過し、70℃で一晩乾燥させた。得られたサンプルを、元素分析(LECO)にかけてシリカ上の炭素のパーセンテージを求め、それぞれ実施例1〜10と標識した。これらの実施例の結果を以下の表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
[0079]実施例3以外は、等量の2種類のシランをこれらの官能化に使用した。得られた炭素の量は、一般に、使用されたシランの総量に比例していた。実施例3では乾式結合にビニルシランのみが使用された。表1に示されているように、結合工程後の清浄かつ乾燥シリカサンプルの元素分析によって測定された炭素の量は、表面官能化後の表面官能基の量を決定するための指標として使用された。
【0084】
実施例11〜24
[0080]実施例11〜28に強陰イオン交換材料の製造法を記載する(表2)。これらの実施例では、実施例1〜10の初期結合シリカを、第一のモノマー、すなわち(3−アクリルアミドプロピル)−トリメチルアンモニウムクロリド(75%水溶液);代替モノマー1、すなわち[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(50%水溶液);代替モノマー2、すなわち[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(80%水溶液);第二のモノマー、すなわちジアリルジメチルアンモニウムクロリド(65%水溶液);V−50開始剤;及び追加の脱イオン水(DIW)を用いて表面処理した。
【0085】
[0081] 三つ口丸底フラスコに、気密嵌合されたオーバーヘッド機械撹拌機、窒素ガスの入口と出口、及び熱電対フィードバック付き加熱マントルを備え付けた。シリカと、開始剤以外の全試薬をまずフラスコに装入した。システムに窒素を20分間通気した。次いで開始剤を導入した。窒素をさらに20分間通気した後、フラスコを徐々に65℃に加熱する。混合物をオーバーヘッド撹拌しながら65℃に2時間維持し、その後室温に冷却した。混合物をビーカー中の5%NaCl溶液中に注いだ。フラスコをDI水で濯ぎ、フラスコ内部の残留シリカを完全に取り出した。混合物をオーバーヘッド撹拌機で数分間撹拌後、ろ過し、5%NaClで3回、そしてDI水で3回、繰り返し洗浄した。サンプルは、少量のシリカを90℃で一晩乾燥させてから炭素含量の元素分析に付した以外は風乾させた。上記サンプルについて結合容量を計算した。得られたサンプルを実施例11〜24と標識した。これらの実施例の分析結果と結合容量を以下の表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
[0082]試薬比は、反応に使用された試薬の量の重量比である。表2において、使用されたすべてのモノマーは水溶液なので、実際の量は濃度を掛け算して補正される。例えば、実施例11では、試薬の量は、シリカ=10g、モノマー=6.6g、第二のモノマー=0.6g、開始剤=0.045g、DI水=65gなので、比は、10:(6.6×0.75):(0.6×0.65):0.045:65=1:0.5:0.04:0.0045:6.5と計算される。C%[初期結合]は、元素分析によって測定された初期結合工程後の乾燥シリカサンプル上の炭素の量である。C%[最終]は、元素分析によって測定された精製乾燥シリカサンプル上の炭素の量である。C[ポリ]=C%[最終]−C%[初期結合]は、シリカ表面上のポリマー基によって寄与された炭素の量である。C[ポリ]/C[初期結合]比は二つの炭素数の割り算であり、ポリマーによって寄与された炭素を初期結合によって寄与された炭素と比べた尺度である。理論に拘束されるつもりはないが、比が高いほど表面上の鎖の数が少ない長鎖ポリマーを示しており、これは、より高いタンパク質結合のためには、表面上に鎖の多い短鎖を示す低い比よりも好適である。長鎖の方が結合ポリマーに対してより柔軟性を提供するからである。ウシ血清アルブミン(BSA)をサンプルのすべての結合試験のモデルタンパク質として使用した。高い結合値ほど好適である。表2中、(S)は、BSAの修飾シリカへの結合が静的モードで測定された静的結合(SBC)を表す(測定の手順については以下を参照)。(D)は、BSAの修飾シリカへの結合が動的フローモードで測定された動的結合(DBC)を表す(測定の手順については以下を参照)。n/mは測定されなかったことを意味することに注意する。
【0088】
[0083]表2から分かるように、実施例13以外、全サンプルとも容認できる結合結果を提供した。実施例13では、ポリマーのシリカ表面への結合はなかった。実施例14及び15では、第二のモノマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドが一般に高いBSAタンパク質結合を提供した。実施例16では、C%[ポリマー]/C%[初期結合]の比が増大し、BSAの結合が改良された。実施例17、18及び20では代替モノマーを試験した。代替モノマー1は、第一のモノマーのサンプル(実施例19)よりわずかに高いBSA結合を示したが、代替モノマー2は、第一のモノマーよりずっと低いタンパク質結合しか示さなかった。実施例21では、サンプルは800Åの細孔径/サイズを有するシリカを用いて製造され、これが最も高いBSAタンパク質結合をもたらした。実施例22は23よりも高いBSA結合を示したが、これは実施例22の方が高い炭素数比を有していたためである。実施例24では低いタンパク質結合しか得られなかった。
【0089】
実施例25〜28
[0084]実施例25〜28に強陰イオン交換材料の別の製造法を示す。実施例25〜28(表3)の初期結合サンプルのための一般的方法手順は次の通りであった。回転蒸発器上の乾燥1L丸底フラスコ中で、50gの乾燥シリカを0.6gのビニルシラン及び0.6gのエポキシシランと周囲温度で一晩(16時間)混合し、次いでシリカを1Lビーカーに移して500mlの1M硫酸に1時間浸漬した。ろ過及び5×500 DI水による洗浄で初期結合シリカサンプルを得、これを70℃で一晩乾燥させた。
【0090】
実施例25〜27
[0085]実施例25〜27の重合法手順は次の通りであった。実施例11〜24で使用された方法と同様に、前工程からの乾燥シリカ30gを表3に従ってモノマー、開始剤及び水と混合した。実施例25〜27の最終生成物の分析結果及び結合容量測定及び計算も表3に示した。
【0091】
実施例28
[0086]実施例28の重合法手順は次の通りであった。250mlビーカーに、表3の実施例28に記載されている量の試薬を混合した。すべてが水に溶解するように撹拌する。この溶液を、30gの初期結合シリカ(0.76%炭素)を含有する250mlエーレンマイヤーフラスコに注ぎ入れた。窒素ガスをフラスコに30分間通気した後(シリカと水溶液をよく混合させるためにフラスコを時々振盪した)、ガス管を素早く除去し、フラスコの頂部をテープで密封した。水浴を用いてフラスコを徐々に65℃に加熱し(〜30分間)、温度を65℃に2時間維持した。次いで混合物を室温に冷却した。混合物を1Lビーカー中の400〜500mlの10%NaCl溶液中に注ぎ入れ、フラスコ内部の残留シリカを完全に取り出すために多少のDI水で濯いだ。シリカをスパチュラで数分間撹拌した後、放置して粒子を沈降させた。上部の液相上清をデカントして廃棄し、残留シリカを500mlの5%NaCl溶液と混合した。次に、シリカサンプルを3×500mlの5%NaCl溶液、さらに3×500mlのDI水で洗浄した。各洗浄ごとに真空下でろ過した。最終サンプルは、少量のサンプルを炭素含量の元素分析のために90℃で乾燥させた以外は風乾させた。
【0092】
【表3】
【0093】
[0087]実施例29〜38に強陽イオン交換材料Sの製造法を示す(
図2参照)。
実施例29〜34
[0088]ビニル及びエポキシシラン(それぞれ2.5g)を20mlのシンチレーションバイアル中に予備混合した。2Lの丸底フラスコに200グラムのD1000シリカを装入し、一定量の処理剤ミックスを良く混合しながらフラスコに滴下添加した。フラスコ中の混合物を回転蒸発器内で一晩回転させた。20mlの0.5M硫酸を加えた。混合物を室温で1時間回転させた後、70℃に1時間加熱した。フラスコを放冷した後、シリカを500mlの1M硫酸に30分間浸漬し、次いでろ過した。それを次にDI水で5回洗浄し、ろ過した。100gのテトラメチルアンモニウムクロリドを1000mlのメタノール中に溶解し、シリカをこの溶液中に1時間浸漬した後、シリカをろ過し、3×500mlのメタノールで洗浄した。シリカを70℃で一晩乾燥させた。サンプルを元素分析(LECO)に付し、シリカ上の炭素のパーセンテージを決定した。サンプルは、100gのサンプルあたり0.79gの炭素を含有していることが分かった(0.79%)。表4に記録されている実施例29〜34のすべての初期結合は上記のようにして製造された。
【0094】
[0089]500ml三つ口丸底フラスコに、気密嵌合されたオーバーヘッド機械撹拌機、窒素ガスの入口と出口、及び熱電対フィードバック付き加熱マントルを備え付けた。初期結合されテトラメチルアンモニウムクロリドで処理されたシリカ(30g)、及び37.5gのAMPS、少量のCTA及び200mlのDI水をまずフラスコに装入した。システムに窒素を20分間通気した。次いで0.15gのV501開始剤を導入した。窒素をさらに20分間通気した後、フラスコを徐々に65℃に加熱する。混合物をオーバーヘッド撹拌しながら65℃に2時間維持し、次いでさらに2時間80℃にした。フラスコを室温に放冷した。混合物をビーカー中の600mlの5%NaCl溶液中に注いだ。フラスコをDI水で濯ぎ、フラスコ内部の残留シリカを完全に取り出した。混合物をオーバーヘッド撹拌機で数分間撹拌後、ろ過し、500mlの5%NaClで3回、そして500mlのDI水で3回、繰り返し洗浄した。サンプルは、少量のシリカを90℃で一晩乾燥させてから炭素及び硫黄含量の元素分析に付した以外は風乾させた。
【0095】
【表4】
【0096】
[0090]実施例29〜34では、ニワトリ卵白リゾチーム(M
w約17kD)及びウシガンマグロブリン(M
w約140kD)タンパク質を陽イオン交換材料の静的結合容量(SBC)試験に使用した。試験手順は、上記実施例11〜24のQ−シリカに対するBSAの場合と同様であったが、ただし、異なるタンパク質を使用し(同じく25mg/ml濃度)、結合及び洗浄バッファーはpH4.0の50mM HOAc/NaOAcであった。溶出バッファーはpH4.0の50mM HOAc/NaOAc中1M NaClであった。
【0097】
[0091]Q−シリカとは異なり、AMPSの重合は少量の連鎖移動剤(CTA)、例えばS’−ビス(α,α’−ジメチル−α”−酢酸)−トリチオカーボネートの使用を必要とすることが分かった。CTAなしでは、タンパク質のシリカサンプルへの結合はずっと少なかった。表4から分かるように、CTAの量は、ポリマーの量(炭素及び硫黄含量から判断)だけでなく、サンプルの静的結合容量にも顕著な影響を及ぼしていた。CTAの量が多いと、少量のポリマー結合、低いリゾチーム結合をもたらしたが、ずっと大きいサイズのタンパク質であるグロブリンに対しては高結合をもたらした。CTAがなければ、リゾチームの場合もグロブリンの場合も著しく少ない結合量しか達成されなかった。
【0098】
実施例35及び36
[0092]実施例35及び36では、重合で使用されるCTAの量に対するポリマーのサイズについて示す(シリカ使用せず)。三つ口丸底フラスコに、37.5g(181mmol)のAMPS、1.4g(18.1mmol)のメタクリル酸、0.2g(実施例36では1g)のCTA、及び200mlのDI水を装入した。重合は上記と同様に実施した(シリカなし)。重合後、サンプルをGCP分析に付し、製造されたポリマーの分子量を決定した。実施例35のM
wは87471で、実施例36のM
wは20678であることが分かった。
【0099】
実施例37
[0093]この実施例では強陽イオン交換相を製造するための代替法を提示する。この方法は熱的に不安定なアゾ基のほか親水性カルボン酸基も含有する官能基の化学結合を含む。
図3に示されているように、アゾ開始剤をまずアミノプロピルトリメトキシシランと結合させた後、官能基をシリカと結合させる。重合はモノマーの存在下で熱により進行する。
【0100】
[0094]N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、11.5gを350mlの塩化メチレンに溶解し、溶液を氷浴で約5℃に冷却した。この溶液に、7.78gの4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)(V−501開始剤)を加え、次いで10gのアミノプロピルトリメトキシシランを加えた。混合物を冷温で3時間撹拌した後、さらに2時間で室温に温まらせた。反応後、未溶解の固体(大部分は尿素副産物)をろ過除去し、ろ液に100gの実施例7の未処理シリカ(800Å)を混合した。混合物を1Lの丸底フラスコに装入し、回転蒸発器上、室温で一晩回転させ、次いでろ過し、4×400mlのメタノールで洗浄した。固体を室温で一晩風乾させた。少量のサンプルを元素分析に付し、サンプルについて2.03%という炭素数が得られた。
【0101】
[0095]30gの上記シリカを200mlの水中で40gのAMPSモノマーと混合した。水性混合物中に窒素を30分間通気した後、三つ口丸底フラスコを窒素下で撹拌しながら65℃に2時間加熱した。反応後、混合物をろ過し、3×500mlの5%NaCl、次いで3×500mlのDI水で洗浄した。サンプルの乾燥後、乾燥サンプルの元素分析から、炭素数4.23%、硫黄数1.17%が示された。BSAタンパク質の静的結合(pH4.0の50mM酢酸ナトリウムバッファーを使用)により、このサンプルのBSA結合容量は150mg/mlであることが示された。
【0102】
実施例38
[0096]この実施例では、異なる反応の組を使用して強陽イオン交換材料を製造した。
図4に示されているように、シリカゲルをまずアミノプロピルトリメトキシシランと結合させた後、修飾シリカをDMF中でカップリング触媒作用(DCC)を用いてアゾ開始剤と結合させ、次いでAMPSモノマーの存在下、高温で重合させた。
【0103】
[0097]D1000(平均粒径75μm、平均細孔径1000Å)、200gを、実施例1〜10と同様の手順を用いて、まず20gのアミノプロピルトリメトキシシランと結合させた。一晩回転した後、シリカを600mlの0.1M HClに浸漬し、その後ろ過した。1LのDI水による3回の洗浄を実施し、各工程ごとに真空下でろ過した。シリカろ過ケーキを70℃で一晩乾燥させ、乾燥シリカの炭素の量は0.80%と決定された。
【0104】
[0098]上記の乾燥シリカ35gを、100mlの乾燥DMF溶媒中1.92gのDCC、2.24gのV−501アゾ開始剤、及び0.8gのトリエチルアミンの溶液と混合した。混合物を500mlの丸底フラスコに入れ、回転蒸発器上、室温で4時間回転させた。得られた混合物をろ過し、2×200mlのDMF、そして2×150mlのアセトンで洗浄した。サンプルをオーブン中で乾燥させて元素分析をしたところ、炭素含量1.74%が示された。残りのシリカはドラフト内にて室温で6時間乾燥させた。
【0105】
[0099]34gの上記シリカを200gのDI水中で40gのAMPSモノマーと混合した。システムを窒素で20分間フラッシュ洗浄した後、撹拌しながら65℃に加熱し、この温度に2時間維持した。その後、混合物を室温に冷却し、3×500mlの5%NaCl、次いで3×500mlのDI水で洗浄した。サンプルの乾燥後、乾燥サンプルの元素分析から、炭素数5.47%、硫黄数1.69%、及びpH7.0(50mmolリン酸塩バッファー)におけるゾチームタンパク質の静的結合(5%破過)125mg/mlが示された。
【0106】
実施例39及び40
[0100]実施例39及び40では、エポキシ多孔性樹脂(ポリメタクリレートポリマー樹脂)粒子を使用した(
図5参照)。粒子(50μm又は100μmの平均粒径)はエポキシ基を有していて、これは水性媒体中で加水分解されてジオール基になるので、Qポリマーの重合で修飾に必要なのはビニル基のみである。従って、100gの粒子を、400mlのNMP中、室温で1時間、次いで60℃で1時間、40mlのアリルアミン(Aldrich社製)で処理した。冷却後、サンプルをろ過し、3×500mlのDI水、次いで500mlのメタノールで洗浄し、一晩風乾させた。30gの上記修飾樹脂の重合は実施例11に記載の手順を用いて実施した。表5から分かるように、どちらの実施例も容認できるBSAタンパク質の静的結合を提供した。
【0107】
【表5】
【0108】
[0101]本発明を限られた数の態様に関して記載してきたが、これらの特定の態様は、本明細書において別段に記載され特許請求されている本発明の範囲を制限することを意図したものではない。当業者には、本明細書中の例示的態様を検討すれば、更なる修正、等価物、及び変形が可能であることは明白であろう。実施例中ならびに本明細書の残りの部分において、すべての部及びパーセンテージは、特に明記されない限り重量による。さらに、本明細書又は特許請求の範囲に列挙されている、特定の一連の性質、測定単位、条件、物理的状態又はパーセンテージを表すような何らかの数値範囲は、文字通り、そのように列挙された何らかの範囲内のいずれかの数値のサブセットも含め、そのような範囲内に入るあらゆる数字を引用又はその他によって本明細書中に明示的に取り込むことを意図している。例えば、下限R
L及び上限R
Uを有する数値範囲が開示される場合はいつでも、その範囲内に入る任意の数値Rも具体的に開示される。特に、その範囲内の下記数値Rが具体的に開示される。すなわち、R=R
L+k(R
U−R
L)、ここでkは、1%ずつ増加する1%〜100%の範囲の変数、例えば、kは1%、2%、3%、4%、5%...50%、51%、52%...95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。さらに、上で計算されたような、Rの任意の二つの数値によって表される何らかの数値範囲も具体的に開示される。本明細書中に示され記載されたものに加えて、当業者には本発明の何らかの修正が上記の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。そのような修正も、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本明細書中で引用されたすべての文献は、参照によってそれらの全文を本明細書に援用する。