(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記HSV−2抗原をコードする前記ベクターおよびリポソームに封入された前記HSV−2抗原の組み合わせが、前記哺乳動物にヘルペス病変の再発の徴候の際に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
前記ヘルペス病変の再発が、未処置哺乳動物または非粘膜ワクチンがワクチン接種された哺乳動物と比べて前記哺乳動物では低減および/または完全に阻止されている、請求項9に記載の組み合わせ物。
ウイルス排出が、未処置哺乳動物または非粘膜ワクチンがワクチン接種された哺乳動物と比べて前記哺乳動物において低減されている、請求項10に記載の組み合わせ物。
抗原特異的IgAおよびIgGが、未処置哺乳動物または非粘膜ワクチンがワクチン接種された哺乳動物と比べて前記哺乳動物の膣分泌物において増大している、請求項1に記載の組み合わせ物。
前記第1ブースティング調製物および第2ブースティング調製物中の前記リポソーム封入抗原が、gD糖タンパク質の細胞外ドメインである、請求項1に記載の組み合わせ物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な記載)
全不活化ウイルス、生弱毒化ウイルス、生複製欠損ウイルス、サブユニットワクチンおよびDNAワクチンの使用を含め、多くの異なるHSV−2免疫化戦略が、開発され、そして評価されている。しかしながら、HSV−2の安全かつ有効なワクチンは依然として利用できないままである。本発明は、一つには、HSV−2に対する防御的および治療的免疫を誘発する新たなHSV−2ワクチンの発見に基づいている。本明細書で詳細に記載しているように、本発明者らは、HSV−2抗原をコードするDNAベクターの筋肉内プライミング用量、次いで粘膜(例えば、鼻腔内)送達される抗原のリポソーム封入タンパク質形態の初回ブースト、次いでDNAベクターおよびリポソーム封入抗原の両方による1回以上の後続ブーストから成る異種免疫化プロトコルを開発した。このプロトコルは、既にHSV−2に感染している被験体を処置するため治療的免疫応答を誘導するのに特に有効である。この治療用ワクチンは、体液性免疫、T細胞免疫、および粘膜免疫から成る相乗的免疫応答を誘導する。具体的には、このワクチンは、高力価の膣抗原特異的IgGおよびIgA抗体、Th1偏向型免疫応答、および高力価の血清抗原特異的IgGを刺激する。さらに、この治療用ワクチンは、それがヘルペス(herpatic)病変の再発を阻止または低減することおよびウイルス排出を低減することができるという点でHSV−2gD抗原を含む皮下投与されるワクチンよりも優れている。
【0020】
したがって、本発明は、哺乳動物などの動物においてHSV−2に対する治療的免疫応答を誘発する方法を提供する。治療的ワクチン接種の目標は、感染個体における免疫応答を標的として、ウイルスに既に感染した細胞を根絶するか、または潜伏ウイルスが再活性化し、元の感染部位に戻るのを予防することである。本明細書で使用される場合、「治療的免疫(性)」または「治療的免疫応答」は、感染を改善または排除するかまたはその少なくとも1つの症状を低減させる免疫または感染性因子に対する免疫応答を誘発することをいう。具体的には、ワクチン投与からの治療的免疫応答の誘導は、感染性因子により誘導される疾患の1つ以上の症状の存在の排除または低減またはかかる症状の持続時間または重症度の低減により明らかとなる。例えば、一実施形態では、HSV−2に対する治療的免疫は、HSV−2感染の重症度または持続時間を低減する免疫をいう。治療的免疫は、一部の実施形態において、HSV−2誘導疾患の1つ以上の症状の存在の排除または低減により証明される。HSV−2誘導疾患の臨床症状としては、生殖器および/または直腸領域の周囲の水疱様ただれまたは潰瘍(例えば、ヘルペス(herpatic)病変)、生殖器および/または直腸領域の皮膚での発疹または小隆起、有痛性の排尿、帯下(virginal fluid discharge)、およびインフルエンザ様症状(例えば、熱および鼠蹊リンパ腺の腫れ)がある。一部の実施形態において、有効な治療的免疫応答は、生殖器粘膜からのウイルス排出の量を低減させる。
【0021】
一実施形態では、本発明は、動物(例えば、哺乳動物、ヒト)においてHSV−2感染を処置する方法であって、HSV−2抗原をコードする核酸(例えば、ベクター)を含むプライミング調製物、リポソームに封入されたHSV−2抗原を含む第1ブースティング調製物、およびHSV−2抗原をコードする核酸およびリポソームに封入されたHSV−2抗原を含む第2ブースティング調製物を該動物に投与することを含む方法を提供する。ある種の実施形態では、核酸(例えば、ベクター)は筋肉内投与され、リポソーム封入タンパク質抗原は粘膜投与される。粘膜投与経路としては、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下、口腔内経路、または肺への吸入によるものがあるが、これらに限定される訳ではない。一特定実施形態では、リポソーム封入タンパク質抗原は鼻腔内投与される。一部の実施形態では、該処置方法で使用されるHSV−2抗原は、gD糖タンパク質である。
【0022】
好ましくは、異種プライムおよびブーストHSV−2ワクチンの投与後、特に第2ブースティング調製物の投与後に、HSV−2感染の1つ以上の症状が、軽減、改善もしくは低減されるかまたは治癒される。例えば、生殖器病変(すなわち、ヘルペス(herpatic)病変)の数、重症度または頻度は、未処置動物または非粘膜ワクチンをワクチン接種された動物と比較して免疫化動物では著しく低減される。一実施形態では、ヘルペス(herpatic)病変の再発が、未処置動物または非粘膜ワクチンをワクチン接種された動物と比較して免疫化動物では低減または完全に阻止される。別の実施形態では、生殖管からのウイルス排出が、未処置動物または非粘膜ワクチンをワクチン接種された動物と比較して免疫化動物では低減される。本明細書で使用される場合、「非粘膜ワクチン」は、粘膜経路以外の経路により被験体に投与されるHSV−2に対するワクチンを全て指す。一部の実施形態では、非粘膜ワクチンは、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内または皮下投与されるHSV−2タンパク質抗原またはHSV−2抗原をコードする核酸を含む。一実施形態では、非粘膜ワクチンは、皮下投与用に処方された短縮型HSV−2gDタンパク質(例えば、gD細胞外ドメイン)を含む。
【0023】
本発明の方法およびキットで処置することができる、長期感染を確立する他のウイルスとしては、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)がある。ウイルスについての治療用ワクチンの開発は、感染した細胞を認識および破壊するためのCTLの活性化および/またはウイルス拡散の制御に焦点を絞ってきた。本発明の方法は、細胞性免疫応答を増強し、それらを治療用ワクチン接種の提供に適したものとするのに有効である。本方法の有効性は、抗癌ワクチンの開発において特に有望であることが示されているサイトカインアジュバントおよびCpGモチーフを含有させることによりさらに増強され得る(Belardelliら、Cancer Res.64:6827−6830(2004))。
【0024】
本発明はまた、動物(例えば、哺乳動物)においてHSV−2に対する治療的免疫応答を誘発するためのキットを提供する。一実施形態では、該キットは、HSV−2抗原をコードする核酸配列を含む第1免疫化成分、リポソームに封入されたHSV−2抗原を含む第2免疫化成分、および使用者が動物に第1免疫化成分を投与し、次いで第2免疫化成分を投与し、次いで第1および第2免疫化成分の組み合わせを投与することにより、動物において治療的免疫応答を誘発させるための指示書を含む。一部の実施形態では、第1免疫化成分を筋肉内投与用に処方し、第2免疫化成分を、例えば鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下、口腔内経路または吸入による粘膜投与用に処方する。ある種の実施形態では、第2免疫化成分を鼻腔内投与用に処方する。別の実施形態では、該キットは、第1免疫化成分、第2免疫化成分またはその両方を投与するための送達装置をさらに含む。送達装置は、下記送達装置、例えば点滴器、スワブ、エアゾール噴霧器、注入器、ネブライザー、吸入器、針を備えた注射器または自動注入装置を含む送達装置のいずれであってもよい。
【0025】
本発明の方法およびキットはまた、予防ワクチン接種(すなわち、動物における防御的免疫応答の誘導)に有用である。本発明は、哺乳動物などの動物においてHSV−2に対する防御的免疫応答を誘発する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、HSV−2抗原をコードする核酸(例えば、ベクター)を含むプライミング調製物、リポソームに封入されたHSV−2抗原を含む第1ブースティング調製物、およびHSV−2抗原をコードする核酸およびリポソームに封入されたHSV−2抗原を含む第2ブースティング調製物を哺乳動物に投与することを含む。ある種の実施形態では、HSV−2抗原をコードする核酸(例えば、ベクター)は筋肉内投与され、リポソーム封入HSV−2タンパク質抗原は、例えば鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下、口腔内経路または吸入により粘膜投与される。一特定実施形態では、リポソーム封入HSV−2タンパク質抗原は、鼻腔内投与される。かかる実施形態において、本方法は、高い中和活性、Th1型偏向応答、およびHSV−2ウイルスの侵入部位である膣腔での強力な防御的免疫を伴う高力価の血清および膣抗体を誘導する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「防御的免疫応答」または「防御的免疫」は、感染を阻止するか感染に対して防御する、脊椎動物(例えば、ヒト)が呈する免疫または感染性因子に対する免疫応答の誘導をいう。疾患の症状の出現を阻止するかまたはそれに対して防御する防御的免疫応答は、ウイルス排出を低減させることにより集団におけるHSV−2の拡散を低減または停止させることになる。一部の実施形態では、本発明のワクチンにより誘導される防御的免疫は、完全排除免疫(sterilizing immunity)である。「完全排除免疫」は、検出可能な痕跡を全く残さずに、感染を完全に排除または阻止するかまたは急速に取り除かれる免疫応答である。
【0027】
さらに本発明は、Tヘルパー1型(Th1)応答に向かって偏向された望ましい免疫応答が動物において誘発され得るように免疫応答を調節する方法を提供する。この方法は、HSV−2抗原などの抗原をコードする核酸配列を含むプライミング調製物を動物に投与し、リポソームに封入された抗原を含む第1ブースティング調製物を動物に投与し、それに続いて抗原をコードする核酸およびリポソーム封入タンパク質抗原の組み合わせを含む第2ブースティング調製物を投与することを含む。ある種の実施形態では、抗原をコードする核酸は筋肉内投与され、リポソーム封入タンパク質抗原は粘膜(例えば、鼻腔内)投与される。「〜に向かって偏向された」とは、観察された免疫応答が、免疫化前の応答と比べてTh1またはTヘルパー2型(Th2)応答に近くなった状況をいう。ある種の実施形態では、免疫化は、完全にTh2応答をTh1応答に切り替えることになる。他の実施形態では、免疫化は、Th2応答をTh1応答に完全には切り替え得ないが、代わりに混合または平衡状態の応答またはさらに弱いTh2応答をもたらす。
【0028】
ほとんどの免疫応答は、応答を開始させ、その性質を形作るTリンパ球により調節される。免疫応答が成熟すると、CD4
+Tリンパ球は、Tヘルパー1型(Th1)またはTヘルパー2型(Th2)免疫応答に向かって分極されることになり得る。Th1型応答およびTh2型応答の顕著な特徴は、存在するサイトカインの支配的パターンである。Th1応答は、高レベルのIFN−γおよび低レベルのIL−4およびIL−10を特徴とし、Th2応答は、低レベルのIFN−γおよび高レベルのIL−4およびIL−10を特徴とする。これらのサイトカインは、T細胞の機能的能力の決定においてある重要な役割を演じる。Th2型応答は、IgG1サブクラスの抗体の好ましい産生を招くが、CTLはほとんどまたは全く生成されない。Th1型応答は、IgG2aサブクラスの抗体の好ましい産生およびウイルスまたは他の生物に感染した細胞を有効に殺すことができるCTLの誘導を招く。
【0029】
下表1は、Th1およびTh2分極化免疫応答の免疫学的特徴を要約している。Th1分極化応答は、典型的にはウイルスまたは細菌による感染中に生成される。対照的に、Th2分極化応答は、寄生虫感染、アレルギー反応において、およびヒトで使用される慣用的なミョウバンベースの筋肉内送達式タンパク質ワクチンにより観察されることが多い。また、遺伝学により、発せられた免疫応答の型を決定することができる。例えば、Th1応答は、C57BL/6系統のマウスにおいて優勢であり、Th2応答は、Balb/c系統のマウスにおいて優勢である。免疫応答はまた、Th1成分およびTh2成分の両方により構成され得、免疫応答の体液性アームおよび細胞媒介性アームの両方による防御を与え得る。サイトカイン産生細胞の頻度の直接的決定は、ELISPOT(酵素結合イムノソルベントSPOTアッセイ)の使用または細胞内サイトカイン産生を明らかにするための免疫蛍光染色により達成される。また、血清IgG1:IgG2a比率は、Tヘルパー型を決定するために広く許容され、準拠された基準である(表1)。平衡状態のTh1およびTh2応答についてのIgG1:IgG2a比率は、0.5と2.0の間となる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「Tヘルパー1型応答」および「Th1応答」は、上表1の中央の縦列に列挙した1つ以上、普通は全部の特徴を含むある一定範囲の宿主動物応答をいうのに互換的に使用される。これらの特徴としては、0.5以下のIgG1:IgG2a比率;Tヘルパー1細胞により増大したIFN−γ(および他のTh1サイトカイン)分泌およびTヘルパー2細胞により減少したIL−10およびIL−4(および他のTh2サイトカイン)分泌;および高いCTL活性がある。
【0032】
同様に、本明細書で使用される場合、「Tヘルパー2型応答」および「Th2応答」は、上表1の右側縦列に列挙した1つ以上、普通は全部の特徴を含むある一定範囲の宿主動物応答をいうのに互換的に使用される。これらの特徴としては、2.0以上のIgG1:IgG2a比率;Tヘルパー1細胞により減少したIFN−γ(および他のTh1サイトカイン)分泌およびTヘルパー2細胞により増大したIL−10およびIL−4(および他のTh2サイトカイン)分泌;および低いかまたは欠如したCTL活性がある。
【0033】
さらに本発明は、微生物の最も一般的な侵入部位である、身体の粘膜表面を特異的に標的とするのに有効なワクチンおよびワクチン接種プロトコルの開発方法を提供する。本発明は、ワクチンを規定の組成/サイズをもつリポソームに封入することにより、そしてワクチンを直接粘膜表面へ送達することによりワクチンをさらに効果的なものにすることができるようにする。リポソーム封入ワクチンを適切な免疫化レジメンと組み合わせることにより、より有効かつ特異的なワクチンを提供するように免疫応答を調整することができる。ある種の実施形態では、理想的なワクチンは、強固な抗体応答、CTL生成およびTh1型サイトカイン産生も含む、均衡した、またはTヘルパー1(Th1)偏向型の免疫応答、および粘膜部位での局所免疫を生じさせる。他の実施形態では、Tヘルパー2(Th2)偏向型の免疫応答を生じさせるように免疫応答を調整することが可能であり得、このことは移植片宿主における拒絶の阻止およびある種の寄生虫感染に対する防御において有益であり得る。
【0034】
一実施態様において、本発明は、ウイルス抗原(例えば、HSV−2抗原)などのある種の抗原に対し、動物、特に哺乳動物(例えば、ヒト)において防御的免疫応答および治療的免疫応答などの免疫応答を効果的に誘発するための方法、試薬およびキットを提供する。本発明の1つの著しい特徴は、宿主動物に粘膜的(例えば、鼻腔内的(IN))または筋肉内的(IM)に送達されるリポソーム封入タンパク質抗原の使用に関するものである。
【0035】
本発明の方法およびキットの1つの構成要素は、同一抗原の後続投与のための調製物における、動物、特にヒト患者への1つ以上の抗原の最初の投与を含む、「プライミング」免疫化の使用である。具体的には、本明細書で使用される場合、「プライミング」の語は、抗原を用いる最初の免疫化であって、所望の抗原に対して免疫応答を誘導し、同一または異なるワクチン送達系の状況で投与されたときの同一抗原による後続の再免疫化時に所望の抗原に対しさらに高レベルの免疫応答を呼び戻す最初の免疫化をいう。
【0036】
本発明の方法およびキットの別の構成要素は、プライミング免疫化でコードされたのと同じ抗原を送達する組成物の投与を意味する、「ブースティング免疫化」または「ブースト」の使用である。ブーストは、既往応答、すなわち、以前に感作された動物における免疫応答と称されることもある。各ブーストについて同一または異なる量を用いて、複数のブーストを施与することができる。プライミングとは異なる抗原送達系を用いるブースティングは、「異種ブースト」と称され得、プライミングと同じ抗原送達系を用いるブースティングは「同種ブースト」と称され得る。
【0037】
上記逐次投与に代わるものとして、プライミング調製物およびブースティング調製物は、同時に、すなわち実質的に同じ時間に投与され得る。本発明の方法は、本方法が動物において誘発することができる免疫応答に関してプライミング免疫化とブースティング免疫化(複数も可)の間に強力な相乗効果を引き起こす。結果として、本発明の方法により望ましいレベルの免疫応答を誘発することができるが、プライミング調製物およびブースティング調製物(複数も可)をそれぞれ動物に単独で投与した場合、望ましいレベルの免疫応答を達成するのには不十分である。一部の実施形態において、本発明の異種免疫化方法は、未処置/非免疫化動物または非粘膜ワクチンをワクチン接種した動物と比較した場合に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の増大および膣分泌物における抗原特異的IgGおよびIgAの増大を特徴とする治療的免疫応答を生じさせる。他の実施形態において、本明細書に記載される異種免疫化方法は、未処置/非免疫化動物または非粘膜ワクチンをワクチン接種した動物での観察結果と比較して、ヘルペス(herpatic)病変の再発を低減させるかまたは完全に阻止し、および/または生殖管からのウイルス排出を低減させる。
【0038】
体液性免疫応答および細胞性免疫応答を含む、宿主動物における免疫応答の効果は、当該分野で公知の様々なアッセイにより評価され得る。体液性免疫応答には、血清中または粘膜表面での総抗原特異的抗体(免疫グロブリン、すなわちIg)力価;血清中または粘膜表面でのHSV−2抗原特異的抗体の力価;IgG、IgA、IgG1、およびIgG2aを含む特異的抗体アイソタイプおよび/またはサブタイプの力価;IgG1とIgG2aの比率が含まれる。抗原特異的抗体力価は、ELISAアッセイなど、当該分野で公知の慣用的方法により測定され得る。細胞性免疫応答には、細胞傷害性T細胞(CTL)表現型および活性が含まれる。また、細胞性免疫応答には、IFN−γを含むTh1応答に特有のサイトカインの分泌、およびIL−10およびIL−4を含むTh2応答に特有のサイトカインの分泌が含まれる。これらのサイトカインは、サイトカインELISPOTおよび/またはELISAアッセイにより直接検出され(すなわち、IFN−γ、IL−10および/またはIL−4)、IgG1:IgG2a比率から推測される(例えば、Th1応答対Th2応答)。血清および粘膜抗体の中和活性は、実施例に記載されている補体依存的中和アッセイを含む様々な方法により測定され得る。神経系におけるHSV−2ウイルスの潜伏度は、例えば、後根神経節細胞の定量的実時間PCR(qPCR)解析により評価され得る。検出されるウイルスコピーの数は、宿主、ニューロン細胞におけるHSV−2ウイルス組み込みと相関している。
【0039】
抗原(例えば、HSV−2抗原)をコードする核酸およびタンパク質抗原(例えば、リポソーム封入抗原)は、電子的/機械的装置および/または電気穿孔などの方法の使用を含め、以下の経路:皮下、筋肉内、皮内および粘膜経路のいずれか1つにより投与され得る。粘膜投与経路の例としては、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下、口腔内経路または吸入によるものがあるが、これらに限定される訳ではない。抗原をコードする核酸およびタンパク質抗原は、同じ経路により、または異なる経路により投与され得る。ある種の好ましい実施形態では、抗原をコードする核酸(例えば、ベクター)は筋肉内投与され、タンパク質抗原(例えば、リポソーム封入タンパク質抗原)は鼻腔内投与され、その結果、CTL応答だけでなく、強固な粘膜免疫応答も誘導される。ある種の実施形態では、抗原をコードする核酸は、プライミング調製物中に存在する。抗原をコードする核酸はまた、典型的にはタンパク質抗原(例えば、リポソーム封入タンパク質抗原)のみを含む、初回または第1ブースティング調製物後の1つ以上のブースティング調製物中に存在してもよい。特定実施形態では、初回または第1ブースティング調製物に続くブースティング調製物は、2成分:(1)ベクターなどの抗原をコードする核酸、および(2)リポソームに封入されたタンパク質抗原などの抗原のタンパク質形態を含む。好ましくは、これら2成分を別々の経路により投与できるように、2成分は別々の処方物中に入れられる。例えば、一部の実施形態では、第2ブースティング調製物の核酸成分は筋肉内投与され、一方第2ブースティング調製物のタンパク質成分は鼻腔内投与される。
【0040】
本発明はまた、本発明の方法およびキットで使用するための本明細書に記載されるプライミング調製物およびブースティング調製物を分配する装置を検討している。例えば、ブースティング調製物またはブースティング調製物のタンパク質成分が鼻腔内送達される実施形態については、鼻腔内処方物用分配装置は、例えば、エアロゾル送達系の形態を取り得、単用量のみ、または多用量を分配するように配置され得る。かかる装置は、定量のブースティング調製物を鼻孔に送達する。適切な装置の他の例としては、点滴器、スワブ、エアゾール噴霧器(例えば、VaxINator(登録商標))、注入器(例えば、Valois Monopowder Nasal Administration Device、単用量Bespak UniDose DP乾燥粉末鼻腔内送達装置)、ネブライザーおよび吸入器があるが、これらに限定される訳ではない。これらの装置は、被験体が処方物を鼻腔中へ吸入するのを必要とする受動的手段によりブースティング調製物またはブースティング調製物のタンパク質成分を送達し得る。別法として、該装置は、鼻腔中へ用量を注ぎ込むかまたは噴霧することによりブースティング調製物またはブースティング調製物のタンパク質成分を能動的に送達し得る。ブースティング調製物またはブースティング調製物のタンパク質成分は、1つ以上のかかる装置により片方または両方の外鼻孔中に送達され得る。投与は、1被験体当たり2装置(1外鼻孔当たり1装置)を含み得る。プライミング調製物またはブースティング調製物の核酸成分が筋肉内投与される実施形態では、自動注入装置またはペン型注入装置などの装置が注射液の送達に使用され得る。
【0041】
プライミング調製物および第1ブースティング調製物間では異なる間隔が使用され得る。第1ブースティング調製物は、一次調製物の投与後2〜8週間、好ましくは4〜6週間、さらに好ましくは約2〜4週間で投与され得る。一実施形態では、第1ブースティング調製物は、プライミング調製物の約7〜約18日後に投与される。別の実施形態では、第1ブースティング調製物は、プライミング調製物の約10〜約16日後に投与される。
【0042】
また、ブースティング調製物(例えば、第1ブースティング調製物および第2ブースティング調製物)間でも異なる間隔が使用され得、それらはプライミング調製物および第1ブースティング調製物の投与間の間隔と同一または異なり得る。例えば、第2ブースティング調製物(または後続のブースティング調製物)は、第1ブースティング調製物または前のブースティング調製物の投与後2〜8週間、好ましくは4〜6週間、または好ましくは約2〜4週間で投与され得る。一実施形態では、第2ブースティング調製物は、第1ブースティング調製物(または前のブースティング調製物)の約7〜約18日後に投与される。別の実施形態では、第2ブースティング調製物は、第1ブースティング調製物(または前のブースティング調製物)の約10〜約16日後に投与される。多ブースティング調製物は、プライミング調製物および第1ブースティング調製物の投与後に動物(例えば、哺乳動物、ヒト)に投与され得る。好ましい実施形態では、後続のブースティング調製物は、核酸抗原成分(すなわち、抗原をコードする核酸)およびタンパク質抗原成分(例えば、リポソーム封入タンパク質抗原)の両方を含む。一部の実施形態では、これら2成分を含む後続のブースティング調製物が、ウイルス感染の1つ以上の症状の徴候の際に動物に投与される。例えば、ウイルス感染がHSV−2である実施形態では、HSV−2抗原をコードする核酸およびリポソーム封入HSV−2タンパク質抗原を含む後続ブースティング調製物は、生殖器病変(すなわち、ヘルペス(herpatic)病変)の再発の徴候の際に動物に投与される。
【0043】
本発明は、プライミング調製物またはブースティング調製物、またはその両方における抗原の総用量が1回以上の投与で動物に投与され得ることを検討している。例えば、プライミング調製物は、2または3日間の過程にわたって投与され得る。一実施形態では、プライミングは、約3〜6週間あけた1または2回の投与を含み、第1ブースティング調製物は、最後のプライミング投与後約3〜10週間で投与され、そして第2ブースティング調製物は、第1ブースティング後約3〜10週間で投与される。別の実施形態では、プライミングは、3日間あけた1または2回の投与を含み、第1ブースティング調製物は、最後のプライミング投与後3週間で投与され、第2ブースティング調製物は、第1ブースティング後約3週間で投与される。ある種の実施形態では、プライミングは、1日あけた2回の投与を含み(例えば、プライム調製物は、1日目および3日目に投与)、第1ブースティング調製物は、最後のプライミング投与後2〜3週間で投与され、そして第2ブースティング調製物は、第1ブースティング後2〜3週間で投与される。
【0044】
初回ブースト投与および後続ブースティング投与は、同量または異なる量のタンパク質抗原(例えば、リポソーム封入タンパク質抗原)を使用し得、後続のブースト投与および初回ブースト投与は、同一または異なる経路により実施され得る。最初のプライミング投与およびブースト投与(複数も可)は、同一または異なるスケジュールにしたがって送達される同量または異なる量の核酸抗原(例えば、ベクターコード化抗原)を使用し得る。一部の実施形態では、プライミング調製物中の核酸抗原の用量は、1回以上の投与(例えば、3日間経過するうちに、2回投与)にわたって送達され、ブースティング調製物中の核酸抗原の用量は、1回の投与(例えば、1日で全部)で送達される。核酸抗原の量は、ブースティング調製物で送達されるタンパク質抗原の量と同一または異なり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「抗原」または「免疫原」の語は互換的に使用され、関係している動物内で免疫応答を誘導することができる全てのペプチドまたはタンパク質配列を包含することが意図される。「抗原」または「免疫原」の語は、既知または野生型抗原のペプチドまたはタンパク質類似体を包含し、該類似体は野生型抗原より可溶性または安定性が高いものであり得、また抗原をより高い免疫活性を示すものにし、またはある種の細胞型での発現に最適なものとする(すなわち、ヒト化コドン使用)変異または修飾を含み得るものとする。抗原はまた、タンパク質構造を改変する特定アミノ酸置換が天然に存在する抗原に加えられたペプチド、既知防御性エピトープ(すなわち、CTLエピトープ)を含む天然に存在する抗原の一部分、または1つの病原体に限定されていても、またはされていなくてもよい(多価ワクチン)既知エピトープの合成的に誘導されたストリングであり得る。
【0046】
また、所望の抗原のアミノ酸配列と相同性である配列を有するさらなるペプチドまたはタンパク質も、相同性抗原がそれぞれの病原体に対して免疫応答を誘導する場合には有用である。所望の抗原コード化配列と相同性である遺伝子は、それらが所望の抗原の生物活性と実質的に類似した生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードするならば、本発明に包含されるものと考えるべきである。
【0047】
本明細書に記載される抗原の類似体は、保存的アミノ酸、配列差異により、または配列に影響を及ぼさない修飾を通して、またはそれら両方により天然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なり得る。例えば、保存的アミノ酸変化を行ってもよく、その場合それらがタンパク質またはペプチドの一次配列を改変するにせよ、通常その機能を改変することはない。修飾(通常一次配列を改変することはない)には、ポリペプチドのインビボまたはインビトロ化学的誘導体化、例えばアセチル化、またはカルボキシル化が含まれる。また、グリコシル化により修飾されたタンパク質、例えばその合成およびプロセッシング中またはさらなるプロセッシング段階中にポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することにより、例えばグリコシル化に影響を及ぼす酵素、例えば哺乳動物グリコシル化酵素または脱グリコシル化酵素にポリペプチドを曝露することにより作製されたものも抗原として包含される。また、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリンまたはホスホトレオニンなど、リン酸化されたアミノ酸残基を有する配列も、本発明による抗原として包含される。また、ポリペプチドのタンパク質分解に対する抵抗性を改善するため、または溶解度特性を最適化するために通常の分子生物学的技術を用いて修飾されたポリペプチドも抗原として包含される。上記ポリペプチドの類似体には、天然に存在するL−アミノ酸以外、例えばD−アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸の残基を含むものがある。本発明の抗原は、本明細書で列挙されている具体例としてのプロセスのいずれかの生成物に限定されない。
【0048】
抗原は、完全長抗原もしくは短縮型抗原、その免疫原性フラグメント、または該抗原から誘導されたエピトープであり得る。ある種の実施形態では、ブースティング調製物中の病原体特異的抗原は、弱毒化または死滅病原体の形態であり得る。また、有効な抗原には、これらの病原体の表面抗原が含まれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」の語は、少なくとも約3〜5、好ましくは約5〜10または15、かつ約1000以下(またはその間の任意の整数)のアミノ酸の配列であって、それ自体またはさらに大きな配列の一部として、かかる配列に応答して産生された抗体に結合するか、または細胞性免疫応答を刺激する配列として定義されるものをいう。「エピトープ」の語は、天然配列と同一である配列、ならびに天然配列に欠失、付加および置換などの修飾(一般的に性質について保存的)を加えたものを包含する。本発明で使用される抗原は、例えば、単一CTLエピトープなど、単一エピトープのみを含んでいてもよい。
【0050】
プライミング調製物またはブースティング調製物中の核酸によりコードされる抗原およびブースティング調製物中のタンパク質抗原は、好ましくは重複するエピトープを有する。ある種の実施形態では、2つの抗原は互いに同一であってもよい。別法として、2つの抗原は、重複するが、異なるセットのエピトープを有していてもよい。説明的な例を挙げると、HSV−2についてのワクチン接種プロトコルでは、HSV−2糖タンパク質をコードするDNAは、プライミング調製物で使用され得、ブースティング調製物は不活化HSV−2であり得る。別の説明的な例を挙げると、プライミング調製物はHSV−2抗原をコードするベクターであり得、ブースティング調製物は、抗原のタンパク質形態を含み得、逆もまた可能である。
【0051】
ある種の実施形態では、抗原はHSV−2抗原である。適切なHSV−2抗原としては、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gE、またはgD糖タンパク質またはその誘導体またはICP27、ICP47、ICP4、またはICP36などの前初期タンパク質があるが、これらに限定される訳ではない。一実施形態ではHSV−2抗原はgD糖タンパク質である。gD糖タンパク質は、タンパク質の完全長形態(例えば、配列番号3)またはgDの細胞外ドメインなどの短縮形態、またはその免疫原性フラグメントであり得る。HSV−2糖タンパク質(例えば、gD糖タンパク質)の短縮形態は、該糖タンパク質を発現する細胞により分泌される短縮形態を含み得る。例えば、一部の実施形態では、抗原は、gDタンパク質のアミノ酸1〜314から成るgDの細胞外ドメインである。他の実施形態では、抗原は、配列番号2のアミノ酸配列を含むgDの細胞外ドメインである。gDの完全長または短縮形態の改変体も使用され得る。例えば、一実施形態において、gD糖タンパク質は、配列番号4、配列番号5、配列番号6または配列番号7の配列を含む。HSV−2糖タンパク質(例えば、gD糖タンパク質)の完全長または短縮形態は、シグナルペプチドおよび/または精製タグ(例えば、ヒスチジンまたはc−mycタグ)を含み得る。ある種の実施形態では、抗原をコードする配列は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞での発現用に最適化される。例えば、ヒト細胞での最適化のため、内部TATA−ボックス、chi部位、リボソーム進入部位、高ATまたは高GC配列伸長部、ARE、INS、CRS配列エレメント、隠れた(cryptic)スプライスドナーおよびアクセプター部位、および分岐点などのシス作用性モチーフが、抗原をコードする配列から排除または数の上で低減される。一実施形態では、適切なヒトコドン最適化gD配列は、配列番号1の配列を含む。
【0052】
以下は、本発明の方法を用いて他の病原体に対して防御的または治療的免疫を誘導するために本発明の方法で使用され得る追加的抗原を説明する例である。
【0053】
前記抗原は、HIV−1、(例えばtat、nef、gp120またはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revなど)、ヒト単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)(例えばgH、gL gM gB gC gK gEまたはgDまたはその誘導体またはICP27、ICP47、ICP4、ICP36などの前初期タンパク質)、サイトメガロウイルス、特にヒト、(gBまたはその誘導体など)、エプスタイン・バールウイルス(gp350またはその誘導体など)、水痘−帯状疱疹ウイルス(gpI、II、IIIおよびIE63など)から、または肝炎ウイルス、例えばB型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原または肝炎コア抗原またはpol)、C型肝炎ウイルス抗原およびE型肝炎ウイルス抗原などから、または他のウイルス性病原体、例えばパラミクソウイルス類:RS(呼吸器多核体)ウイルス(FおよびGタンパク質またはその誘導体)、またはパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えばHPV6、11、16、18;例えば、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7タンパク質)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(HA、NP、NA、またはMタンパク質、またはその組合せなど)に由来する抗原、または細菌性病原体、例えばNeisseria spp[N.gonorrheaおよびN.meningitidis(例えば、トランスフェリン結合性タンパク質、ラクトフェリン結合性タンパク質、PilC、アドヘシン)を含む];S.pyogenes(例えばMタンパク質またはそのフラグメント、C5Aプロテアーゼ)、S.agalactiae、S.mutans;H.ducreyi;Moraxella spp[M.catarrhalis、別名Branhamella catarrhalis(例えば高分子量および低分子量アドヘシンおよびインバシン)を含む];Bordetella spp[百日咳菌(B.pertussis)(例えばパータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、繊維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、B.parapertussisおよびB.bronchisepticaを含む];Mycobacterium spp.[結核菌(M.tuberculosis)(例えばESAT6、抗原85A、−Bまたは−C、MPT44、MPT59、MPT45、HSP10、HSP65、HSP70、HSP75、HSP90、PPD19kDa[Rv3763]、PPD38kDa[Rv0934])、M.bovis、M.leprae、M.avium、ヨーネ菌(M.paratuberculosis)、M.smegmatisを含む];Legionella spp[L.pneumophilaを含む];Escherichia spp[腸管毒性大腸菌(E.coli)(例えばコロニー形成因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌(例えば志賀毒素様毒素またはその誘導体)を含む];Vibrio spp[コレラ菌(V.cholera)(例えばコレラ毒素またはその誘導体)を含む];Shigella spp[S.sonnei、S.dysenteriae、S.flexneriiを含む];Yersinia spp[Y.enterocolitica(例えばYopタンパク質)、ペスト菌(Y.pestis)、Y.pseudotuberculosisを含む];Campylobacter spp[C.jejuni(例えば毒素、アドヘシンおよびインバシン)およびC.coliを含む];Salmonella spp[S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidisを含む];Listeria spp.[L.monocytogenesを含む];Helicobacter spp[ヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)(例えばウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含む];Pseudomonas spp[P.aeruginosaを含む];Staphylococcus spp.[S.aureus、S.epidermidisを含む];Enterococcus spp.[E.faecalis、E.faeciumを含む];Clostridium spp.[破傷風菌(C.tetani)(例えば破傷風毒素およびその誘導体)、ボツリヌス菌(C.botulinum)(例えばボツリヌス毒素およびその誘導体)、C.difficile(例えばクロストリジウム(clostridium)毒素AまたはBおよびその誘導体)を含む];Bacillus spp.[B.anthracisを含む];Corynebacterium spp.[ジフテリア菌(C.diphtheriae)(例えばジフテリア毒素およびその誘導体)を含む];Borrelia spp.[B.burgdorferi(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.afzelii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsiiを含む];Ehrlichia spp.[E.equiおよびヒト顆粒球エーリキア症の因子を含む];Ricketsia spp[R.rickettsiiを含む];Chlamydia spp.[C.trachomatis(例えばMOMP、ヘパリン結合性タンパク質)、C.pneumoniae(例えばMOMP、ヘパリン結合性タンパク質)、C.psittaciを含む];Leptospira spp.[L.interrogansを含む];Treponema spp.[T.pallidum(例えば希外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriaeを含む];またはPlasmodium spp.[P.falciparumを含む];Toxoplasma spp.[T.gondii(例えばSAG2、SAG3、Tg34)を含む];Entamoeba spp.[E.histolyticaを含む];Babesia spp.[B.microtiを含む];Trypanosoma spp.[T.cruziを含む];Giardia spp.[G.lambliaを含む];Leshmania spp.[L.majorを含む];Pneumocystis spp.[P.cariniiを含む];Trichomonas spp.[T.vaginalisを含む];Schisostoma spp.[S.mansoniを含む]などの寄生虫に由来するか、またはCandida spp.[C.albicansを含む];Cryptococcus spp.[C.neoformansを含む]などの酵母に由来する抗原などから誘導され得る。
【0054】
一部の実施形態では、2以上の抗原が、本発明の免疫化方法およびキットにおいて使用され得る。プライミング調製物および核酸成分を有するブースティング調製物では、それら2以上の抗原は融合タンパク質であり得、完全長抗原性タンパク質またはその免疫原性フラグメントのいずれかが単一読み取り枠から発現される(例えば、単一転写物として発現される)。他の実施形態では、それら2以上の抗原は、単一プロモーターまたは種々のプロモーターの制御下、異なる読み取り枠から発現され(例えば、別々の転写物として発現され)得る。ブースティング調製物では、それら2以上の抗原は、抗原の混合物として、または1以上の融合タンパク質として存在し得る。それら2以上の抗原は、単一病原体または複数の病原体に由来し得る。
【0055】
結核菌(M.tuberculosis)についての他の好ましい特異的抗原は、例えばRv2557、Rv2558、RPFs:Rv0837c、Rv1884c、Rv2389c、Rv2450、Rv1009、aceA(Rv0467)、PstS1、(Rv0932)、SodA(Rv3846)、Rv2031c 16kDal.、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1である(国際公開第99/51748号)。また、結核菌についてのタンパク質には、結核菌(M.tuberculosis)の少なくとも2、好ましくは3ポリペプチドがより大きなタンパク質に融合されている融合タンパク質およびその改変体が含まれる。好ましい融合体には、Ra12−TbH9−Ra35、Erd14−DPV−MTI、DPV−MTI−MSL、Erd14−DPV−MTI−MSL−mTCC2、Erd14−DPV−MTI−MSL、DPV−MTI−MSL−mTCC2、TbH9−DPV−MTIがある(国際公開第99/51748号)。クラミジアについての最も好ましい抗原には、例えば高分子量タンパク質(HWMP)(国際公開第99/17741号)、ORF3(欧州特許第366412号)、および推定的膜タンパク質(Pmp)がある。ワクチン処方物の他のクラミジア抗原は、国際公開第99/28475号記載の群から選択され得る。
【0056】
好ましい細菌性ワクチンは、S.pneumoniae(PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合性タンパク質)を含むStreptococcus spp由来の抗原およびタンパク質抗原ニューモリシン(Biochem Biophys Acta、1989、67、1007;Rubinsら、Microbial Pathogenesis、25、337−342)、およびその変異無毒化誘導体(国際公開第90/06951号;国際公開第99/03884号)を含む。他の好ましい細菌性ワクチンは、H.influenzaeB型(例えばPRPおよびそのコンジュゲート)、分類不可能なH.influenzae、例えばOMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、およびフィンブリンおよびフィンブリン由来のペプチド(米国特許第5,843,464号)またはその多コピー改変体もしくは融合タンパク質を含む、Haemophilus sppに由来する抗原を含む。
【0057】
本発明で使用され得る抗原は、マラリアを誘発する寄生虫に由来する抗原をさらに含み得る。例えば、Plasmodia falciparum由来の好ましい抗原には、RTS,SおよびTRAPがある。RTSは、B型肝炎ウイルスの表面(S)抗原にB型肝炎表面抗原のプレS2部分の4アミノ酸を介して結合されたP.falciparumのスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の実質的に全てのC末端部分を含むハイブリッドタンパク質である。その完全構造は、英国特許出願9124390.7号からの優先権を主張している国際公開第93/10152号のもとで公開された、国際特許出願第PCT/EP92/02591号に開示されている。RTSは、酵母で発現されたとき、リポタンパク質粒子として生成され、またRTSは、HBVからのS抗原と共に発現されたとき、RTS,Sとして知られている混合粒子を生成する。TRAP抗原は、国際公開第90/01496号のもとで公開された、国際特許出願第PCT/GB89/00895号に記載されている。本発明の好ましい実施形態はマラリアワクチンであり、その抗原性調製物はRTS,SおよびTRAP抗原の組み合わせを含む。多段階マラリアワクチンの成分であると思われる候補である他のマラリア原虫抗原は、P.faciparum MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セケストリン、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびPlasmodium sppにおけるそれらの類似体である。
【0058】
本発明のワクチンはまた、アレルギーまたは感染性疾患に加えて慢性障害の予防または治療にも使用され得る。かかる慢性障害は、喘息、アテローム性動脈硬化症およびアルツハイマー病などの疾患ならびに他の自己免疫障害である。避妊薬として使用されるワクチンも考えられる。
【0059】
アルツハイマー型神経変性疾患に罹りやすいか、または罹患している患者の予防および治療に関連している抗原は、特に、N末端39〜43アミノ酸フラグメント(Aβ)、アミロイド前駆体タンパク質およびより小さいフラグメントである。この抗原は、国際特許出願第WO99/27944号−−(Athena Neurosciences)に開示されている。
【0060】
自己免疫障害用ワクチンとして、または避妊薬ワクチンとして含まれ得る潜在的自己抗原としては、サイトカイン類、ホルモン類、成長因子または細胞外タンパク質、より好ましくは4−へリックス型サイトカイン、最も好ましくはIL13がある。サイトカイン類には、例えば、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL20、IL21、TNF、TGF、GMCSF、MCSFおよびOSMがある。4−へリックス型サイトカイン類には、IL2、IL3、IL4、IL5、IL13、GMCSFおよびMCSFがある。ホルモン類には、例えば、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、絨毛性ゴナドトロピン(CG)、VGF、グレリン、アグーチ、アグーチ関連タンパク質およびニューロペプチドYがある。成長因子には、例えば、VEGFがある。
【0061】
プライミング調製物またはブースティング調製物で使用される核酸は、ゲノムDNA、合成DNAまたはcDNAを含むRNAまたはDNAであり得る。好ましくは、ヌクレオチド配列は、DNA配列、最も好ましくは、cDNA配列である。哺乳動物細胞内における抗原性ペプチドの発現を取得するためには、抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が適切なベクター系に提供されることが必要である。本明細書で使用される場合、「適切なベクター」によって、免疫応答を誘発するのに十分な量で哺乳動物内において抗原性ペプチドを発現させることができるあらゆるベクターが意味される。
【0062】
例えば、選択されたベクターは、プラスミド、ファージミド(phagemid)またはウイルスベクターであり得る。ベクターは、抗原性ペプチドの発現を取得するため正確な順序で配置されたプロモーターおよびポリアデニル化/転写終結配列を含み得る。一実施形態では、ベクターは、プラスミド(例えば、pDNAVACC)である。これらの成分およびエンハンサー、制限酵素部位および選択遺伝子、例えば抗生物質耐性遺伝子などの必要に応じた他の成分を含むベクターの構築は、当業者には周知であり、Maniatisら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory、Cold Spring Harbour Press、1−3巻,第2版、1989において詳細に説明されている。
【0063】
ある種の実施形態では、プライミング調製物または核酸成分を伴うブースティング調製物中の核酸は、プロモーターの制御下でHSV−2抗原をコードするベクターである。本明細書で使用される場合、「〜の制御下で」または「機能し得るように結合された」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写およびポリヌクレオチドの発現の開始を制御すべく抗原をコードするポリヌクレオチドに関して正確な位置および配向であることを意味する。該ベクターでの使用に適したプロモーターには、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復、RNA pol I、pol II、およびpol IIIプロモーターがあるが、これらに限定される訳ではない。ある種の実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター、好ましくはCMV前初期遺伝子プロモーターである。HSV−2抗原をコードする配列は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化され得る。ある種の実施形態では、ベクターは、完全長のヒトコドン最適化gD糖タンパク質をコードする。一実施形態では、完全長gD糖タンパク質ヒトコドン最適化配列は、配列番号1の配列を含む。
【0064】
抗原性ペプチドをコードする核酸を運ぶベクターは、様々な方法で投与され得る。ベクターを、裸の形態(すなわち、リポソーム処方物とも、ウイルスベクターまたはトランスフェクション促進性タンパク質とも結合されていない裸のヌクレオチド配列として)で適切な媒質、例えば、PBSなどの緩衝食塩水溶液に懸濁し、次いで筋肉内、皮下、皮内または粘膜に注射するか、または遺伝子銃または他の電気的(すなわち、エレクトロポーテーション)装置を用いて投与することが可能である。さらに、ベクターを、鼻もしくは肺経路で投与するために、例えば、リポソームにより、またはポリラクチド・コ−グリコリド(PLG)粒子内に封入することも可能である。好ましい実施形態では、HSV−2抗原をコードする核酸を運ぶベクターは、筋肉内経路により裸の形態で投与される。
【0065】
また、本発明の一実施形態によると、好ましくは遺伝子銃(特に粒子衝撃)投与技術の使用によるベクターの皮内投与も可能である。かかる技術は、例えば、Haynesら、J.Biotechnology 44:37−42(1996)に記載されたように、金ビーズにベクターをコーティングし、次いで高圧下で表皮に投与することを含み得る。
【0066】
組換えウイルスベクターはまた、DNA抗原を送達するのに使用され得る。このアプローチによる利点としては、多くの細胞型におけるDNAコード化タンパク質の豊富な発現、CTL応答の強い促進およびウイルスが多くの遺伝子をコードできることが挙げられる。ワクシニアウイルス(修飾ウイルスAnkaraを含む)およびアデノウイルス(非複製性)は、ワクチン開発に使用される2つの人気の高いウイルスである(ImおよびHanke、Expert,Rev.Vaccines 3:S89−S97(2004);Basakら、Viral Immunol.17:182−196(2004))。
【0067】
DNAワクチンの最近の改良には、単CTLエピトープをコードするミニ遺伝子の開発、MHC経路によるエピトープのより効率的な提示を可能にする遺伝子コード化標的化シグナルの使用およびMHCクラスII経路を標的とするための分泌タンパク質の生成がある(Doria−RoseおよびHaigwood,Methods 31:207−216(2003);Leifertら、Immunol.Rev.199:40−53(2004))。
【0068】
ある種の実施形態では、ブースティング調製物は、リポソームに封入されたタンパク質抗原を含む。ブースティング調製物中の抗原は、一部の実施形態では、プライミング調製物および核酸成分を有するブースティング調製物中の核酸によりコードされる抗原と同じ抗原である。一実施形態では、ブースティング調製物は、リポソームに封入されたHSV−2抗原を含む。別の実施形態では、HSV−2抗原はgD糖タンパク質である。このgD糖タンパク質は、完全長糖タンパク質またはその免疫原性フラグメントであり得る。例えば、ある種の実施形態では、ブースト調製物(例えば、第1および第2ブースティング調製物)中のリポソームに封入された抗原は、gDタンパク質のアミノ酸1〜314を含むgDの細胞外ドメインである。他の実施形態では、抗原は、配列番号2のアミノ酸配列を含むgDの細胞外ドメインである。
【0069】
リポソームは、ワクチン用送達プラットホームとして幾つかの潜在的利点を有する。リポソーム内における抗原の封入はこれらの抗原を隔離するもので、したがって、リポソームは、持続的抗原放出が可能な抗原デポーとしての役割を果たす。さらに、リポソームは生体適合性および生物分解性であり、かつ低毒性および低免疫原性である。適切なサイズ(例えば、>0.2μmかつ5μm以下)であるとき、リポソームは、体内の抗原提示細胞により選択的に取り込まれるため、体液性抗体応答およびCTL応答の両方を誘導する可能性を有する。リポソームは、抗原担体/ビヒクルとしての役割を果たし、また毒性または免疫原性を伴わない反復投与することができるアジュバントでもある。
【0070】
リポソームは、通常球形状をした、生物起源または合成起源のリン脂質で構成される膜2分子層から成る構造物である。リン脂質または脂質が水と接触したとき、リポソームは自然に形成される。リポソームの構造は、熱、音波エネルギー形態でのエネルギーの投入、凍結解凍サイクル、またはせん断力を含む、実験室でリポソームを形成させる方法により操作され得る。リポソームのリン脂質二分子膜は、内部水性コア中に捕捉された材料を外部から隔離し、保護する。水溶性および水不溶性物質は両方とも異なる区画、同じリポソームの水性コアおよび二分子膜にそれぞれ捕捉され得る。前記物質はこれらの異なる区画中にあるため、これらの物質の化学的および物理的相互作用を排除することができる。
【0071】
本発明の方法およびキットで使用されるリポソームは、当該分野で公知の任意の方法を用いて調製され得る。これらのリポソームは、約0.5〜5ミクロン、約2〜4ミクロン、または約1〜4ミクロンの平均直径を有し得る。また、場合によっては、約0.2〜8ミクロンのリポソームが有用なこともある。ある種の実施形態において、本発明の方法およびキットで使用され得るリポソームは、(例えば、負に荷電された)陰イオン性リポソームである。リポソームの電荷は、イオン性脂質を組み込むことにより操作され得る。例えば、米国特許第5,290,563号参照、これは本明細書に参考として組み込まれる。例えば、リン酸ジセチルを組み込むことにより、リポソームに負の電荷を付与する。一実施形態において、ブースト調製物で使用されるリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびリン酸ジセチルを含む陰イオン性リポソームである。別の実施形態では、リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびリン酸ジセチルを、7:3:0.5モル%の比率で含む。一部の実施形態では、ブースト調製物で使用されるリポソームは脂質から成り、すなわち、リポソームが、さらなるタンパク質、リガンドまたはアジュバントを含むことはない。例えば、一実施形態において、リポソームは、非融合誘導性リポソームである(すなわち、リポソーム膜に組み込まれたウイルスタンパク質などのタンパク質を一切含まない)。
【0072】
例を挙げると、本発明の方法およびキットにおけるブースティング調製物で使用され得るリポソームの一製造方法は、以下のごとく報告されている。対象発明のリポソームは、以下の脂質濃度で調製される:ホスファチジルコリン/コレステロール/リン酸ジセチル7/3/0.5モル%。リン酸ジセチルをクロロホルム+5%のエタノールに溶解し、音波処理し、次いでホスファチジルコリンおよびコレステロールを加える。脂質をLabconcoロータリーエバポレータで1時間乾燥し、一晩Freezone4.5Freeze Dry Systemでの凍結乾燥により、クロロホルムの痕跡を除去する。脂質薄膜を、10mMのHEPES−緩衝液、150mMのNaCl、pH7.4(HBS)中125〜300μg/mlの濃度で、HSV−2からのgD糖タンパク質(gD)などの抗原と水和し、0.2μmナイロンフィルターで濾過する。混合物を徹底的にボルテックスし、1時間放置し、次いで再びボルテックスすることにより、多重ラメラ小胞の形成を確実にする。次いで、生成したリポソームを、3回の凍結および解凍サイクル(1サイクル=1時間冷凍および1時間室温で解凍)にかける。リポソームのサイズを、N4 MD Submicron Particle Size Analyzer(Coulter Electronics)で測定する。5mM HEPES緩衝液、1.0mM NaCl、pH7.4中でZeta−Pulsゼータ電位分析装置(Brookhaven Instruments)を用いて、ゼータ電位を測定した。2ミクロン未満の特定平均直径を有するリポソームを得るため、3回目の凍結解凍サイクルの後、リポソームを水浴中で50℃に温め、孔サイズが1.0μmのポリカーボネートフィルターに通して押し出すことにより、平均直径が約1.0μmのリポソームを得ることができる。前記リポソームをさらに押し出すことにより小さなサイズのリポソームを得ることができ、例えば、手持ち式Avantiマイクロ押し出し成形機を用いてリポソームを、孔サイズが0.4μmおよび最後には0.2μmのポリカーボネートフィルターに通してさらに押し出すことにより、平均直径が約0.2μmのリポソームを得ることができる。
【0073】
ある種の実施形態において、本発明の方法およびキットで使用され得るリポソームは、「長期循環リポソーム」(別名「立体安定化リポソーム」)であり、これらは1つ以上の特殊化した脂質を含むリポソームであって、前記脂質がリポソームに組み込まれたとき、かかる特殊化脂質を欠くリポソームに比べて長い循環寿命が得られる。当該分野で公知の長期循環リポソームの例としては、リポソームが、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つ以上の糖脂質を含むか、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分など、1つ以上の親水性ポリマーで誘導体化された1つ以上の脂質を含むものがある。理論に縛られるのは望むところではないが、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEG−誘導体化脂質を含む長期循環リポソームの場合、これらのリポソームの向上した循環半減期は、細網内皮系(RES)の細胞への取り込みの低減によるものである(Allenら、FEBS Letters、1987、223、42;Wuら、Cancer Research、1993、53、3765)。
【0074】
1つ以上の糖脂質を含む様々なリポソームが、当該分野では知られている。Papahadjopoulosら(Ann.N.Y.Acad.Sci.、1987、507、64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシド硫酸エステルおよびホスファチジルイノシトールが呈するリポソームの血中半減期を改善する能力について報告した。これらの発見は、Gabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1988、85、6949)に基づいて説明された。米国特許第4,837,028号および公開されたPCT出願国際公開第88/04924号(両方ともAllenら)は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、公開されたPCT出願国際公開第97/13499号(Limら)に開示されている。
【0075】
1つ以上の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含む多くのリポソーム、およびその調製方法は、当該分野では公知である。Sunamotoら(Bull.Chem.Soc.Jpn.、1980、53、2778)は、PEG部分を含有する非イオン性洗浄剤、2C1215Gを含むリポソームについて記載している。Illumら(FEBS Letters、1984、167、79)は、ポリマー性グリコールでポリスチレン粒子を親水性コーティングすることにより、血中半減期が著しく向上することに注目した。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボキシル基の結合により修飾された合成リン脂質およびかかるリン脂質を含むリポソームは、Sears(米国特許第4,426,330号および同第4,534,899号)により記載されている。Klibanovら(FEBS Letts.、1990、268、235)は、PEGまたはPEGステアレートで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが血中循環半減期の著しい増大を示すことを実証する実験について報告した。Blumeら(Biochimica et Biophysica Acta、1990、1029、91)は、上記の観察報告を、DSPE(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)へのPEGの化学結合から形成される他のPEG誘導体化リン脂質、例えばDSPE−PEGまで拡大した。
【0076】
外部表面に共有結合したPEG部分を有するリポソームは、欧州特許第0445131B1号および公開されたPCT出願国際公開第90/04384号(Fisher)に記載されている。1〜20モルパーセント(mol%)のPEG誘導体化PEを含有するリポソーム組成物、およびその使用方法は、Woodleら(米国特許第5,013,556号および同第5,356,633号)およびMartinら(米国特許第5,213,804号および欧州特許第0496813B1号)により記載されている。幾つかの他の脂質−ポリマーコンジュゲートを含むリポソームは、公開されたPCT出願国際公開第91/05545号および米国特許第5,225,212号(両方ともMartinら)および公開されたPCT出願国際公開第94/20073号(Zalipskyら)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームは、公開されたPCT出願国際公開第96/10391号(Choiら)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazakiら)および同第5,556,948号(Tagawaら)は、表面が官能性部分でさらに誘導体化され得るPEG含有リポソームを記載している。
【0077】
ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)を含む様々なリポソームが、記載されている。しがしながら、一般的に、かかるリポソームは、約10%以上のmol%でDMPGを含有する(例えば、Akhtarら(Nucl.Acids Res.、1991、19、5551;Yachiら(Biopharm.Drug Dispos.、1996、17、699;およびFarmerら(Meth.Enz.、1987、149、184参照)。3mol%のDMPGを有するリポソームも記載されているが、かかるリポソームは、本発明のリポソーム組成物では見い出されない成分(特に、ホスファチジルコリン誘導体)を含んでいた。このホスファチジルコリン誘導体成分には、例えば、10mol%のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)(Brodtら、Cancer Immunol.Immunother.、1989、28、54)または7mol%のジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)(Perez−Solerら、J.Nuclear Med.、1985、26、743;Wasanら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、1993、37、246;およびLiら、Oncology Res.、1995、7、611)が含まれる。
【0078】
リポソーム調製物は、新たに調製してもよいし、または長期貯蔵用に凍結乾燥してもよい。両調製物とも、同等の有効性で使用され得る。本発明の方法で使用されるリポソームは、全て同じ(例えば、同じ組成または同じサイズ)であり得るか、または複数タイプのリポソームを含み得る。
【0079】
ある種の実施形態では、市販されているリポソームを使用することができる。例えば、リポソームは、脂質に基づくリポソーム処方物の開発を専門とする医薬品開発業務受託機関である、Northern Lipids Inc.(バンクーバー、ブリティッシュ・コロンビア)による契約のもとで作製され得る。ある種の他の実施形態では、様々なサイズのリポソームを、以下に記載する方法を用いて調製することができる。具体的な調製プロトコルしだいで、生成されるリポソームは、調製物をマイクロフルイダイザーに通すことにより、典型的には約0.5μmと5μmの間、例えば、4μm、1μmまたは0.2μmのサイズにされる。簡単に述べると、負に荷電したリポソームは、次の脂質濃度で調製され得る:ホスファチジルコリン/コレステロール/リン酸ジセチル7/3/0.5mole%。HSV−2抗原などの抗原(例えば、HSV−2のgD糖タンパク質)は、免疫応答の試験のために幾つかの濃度で多重薄層リポソームに組み込まれる。リポソームサイズは、N4 MC Submicron Particle Size Analyzer(Coulter Electronics)で測定され得る。ある種の実施形態では、抗原調製物を、貯蔵のために凍結乾燥し、次いで使用前に再構成することができる。サイズおよびζ−電位(ゼータ、電荷の尺度)は両方とも、使用前に測定してもよい。ζ−電位は、Zeta−Pulsζ−電位分析装置(Brookhaven Instruments)を用いて測定され得る。脂質:抗原タンパク質比率は、特異的抗原(例えば、HSV−2のgD)に対する免疫応答に対するこの比率の重要性を決定するために一部の調製物において変えられ得る。
【0080】
プライミング調製物およびブースティング調製物は、予防的または治療的に有効となる量で投与される。正確な量は、免疫化されている動物の種および体重、投与経路、プライミング調製物およびブースティング調製物の効力および用量、処置されているかまたは防御の対象となっている疾患状態の性質、被験体の免疫系が免疫応答を生じる能力および所望の防御または治療有効性の程度によってかなり変動し得る。これらの変数に基づき、開業医または獣医であれば、容易に適切な投薬レベルを決定することができる。以下の例では、プライミング調製物および第2ブースティング調製物で使用されるHSV−2からのgD糖タンパク質をコードするDNAベクターの適切な用量は、モルモットについては約50μg〜100μgであることが決定された。当業者であれば、過度の実験を行わずとも、これらの用量をヒトでの使用に適した用量に応じて換算することができる。例えば、ヒトで使用するためのHSV−2gDタンパク質をコードするDNAベクターの適切な用量は、約0.5mg〜約10mg、または約1mg〜約5mgであり得る。正確な投薬量は、使用されるベクターのタイプ、プロモーター、抗原の発現レベル、投与方法、ならびに抗原ヌクレオチド配列のコドン最適化のタイプおよびレベルにより異なる。以下の実施例において、ブースティング調製物で使用されるリポソーム封入HSV−2gD糖タンパク質の適切な用量は、モルモットの場合約30μg/100μlであることが決定された。DNAベクターの用量と同様、ブースティング調製物についてのこれらの用量は、ヒトでの使用に向けて適切に調整され得る。リポソーム封入gD抗原についての適切なヒト用量は、約3〜6μg/100〜400μl、例えば約3μg/100μl〜約6μg/100μlであり得る。
【0081】
本発明による方法およびキットは、例えば、家畜、実験動物、農場動物、捕獲野生動物、および最も好ましくはヒトを含め、全ての動物の予防手順または処置手順に関して使用され得る。
【0082】
本発明の方法およびキットはまた、当該分野で公知の1種以上のアジュバントを加えて実施され得るものと考えられる。しかしながら、一部の実施形態では、ブースティング調製物に追加的アジュバントは含まれない。本発明者らは、本明細書で提供されている新規方法が、リポソーム以外にアジュバントを必要とすることなく、したがって多くのアジュバント、特にコレラ毒素(CT)およびE.coli(大腸菌)熱不安定性エンテロトキシン(LT)などの細菌性毒素に付随する危険性および合併症を回避しながら、所望の免疫応答を達成することを発見した。
【0083】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することにより抗原に対する特異的免疫応答を増大させる物質または手順である。アジュバントの例としては、ミョウバン塩類などの塩に基づくアジュバント、リポ多糖類および細菌性毒素など細菌に由来するアジュバント、抗原のゆっくりした放出を可能にするアジュバントエマルジョン、共刺激分子に対するアゴニスト(agonsitic)抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、および組換え/合成アジュバントがある。一特定実施形態では、アジュバントは、toll様受容体(TLR)リガンド、特にTLR−4、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)、またはR837などのTLR−7リガンドである。最近では、TLR−4およびTLR−7リガンドをナノ粒子処方物と組み合わせると、免疫化後に抗原と投与したとき、抗体応答が増強および延長されることが報告されている(Kasturiら、(2011)Nature、第470巻:543−560)。したがって、TLR−4リガンドおよび/またはTLR−7リガンドは、本発明のプライミング調製物および/またはブースティング調製物に含まれ得る。ミョウバンは、タンパク質ワクチンに対する免疫応答を刺激するのに使用される最も一般的な塩に基づくアジュバントであり、合衆国においてヒト使用について認可された唯一のアジュバントである(Alving、Vaccine 20(3):S56−S64(2002);Hunter、Vaccine 20(3):S7−12(2002))。しかしながら、ミョウバンは、Th2偏向応答に有利であり、細胞媒介性免疫を刺激することはない。粘膜免疫は、コレラ毒素(CT)およびE.coli(大腸菌)熱不安定性エンテロトキシン(LT)などの細菌性毒素の使用を通して誘導され得るが、これらのアジュバントの安全性は疑わしい(Alving、Vaccine 20(3):S56−S64(2002);Hunter、Vaccine 20(3):S7−12(2002))。より新しく、より安全なアジュバントの開発は、最近では特定の免疫応答経路を刺激することに焦点を絞っている。インターフェロン−γおよび顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)などのサイトカインの共投与は、細胞性免疫応答の刺激において有望であることが示されている(PetrovskyおよびAguilar、Immunol.Cell Biol.82:488−496(2004)で検討されている)。しかしながら、高レベルのサイトカインは毒性を誘発し得るため、投薬レジメンを注意深く調節しなければならない。サイトカインの投与はDNAワクチン接種について特に有望であり、この場合サイトカインおよび抗原の両方をコードする遺伝子を、同一ベクターにより同時に発現させることができる。調査されているさらなるアジュバントには、tollシグナル伝達経路を標的とするものがある。細菌性DNAで通常見い出されるCpG DNAモチーフは、細胞性免疫応答の強力な活性化因子であり、さらに新しい世代のDNAに基づくワクチンは、複数のCpGモチーフをコードすることが多い(PetrovskyおよびAguilar、Immunol.Cell Biol.82:488−496(2004)で検討されている)。
【0084】
以下のさらなる実施例により、本発明についてさらに説明するが、それらの実施例は限定的なものとしてみなされるべきではない。当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更が開示されている具体的な実施形態に加えられ得、それでもなお同様または類似した結果が得られることを認めるはずである。
【実施例】
【0085】
実施例1.ウイルス感染モルモットにおける粘膜単純ヘルペスウイルス2型ワクチンの有効性
以前、本発明者らは、粘膜HSV−2ワクチンが、HSV−2ウイルス感染モルモットにおける陰部ヘルペスの再発を著しく低減することを示し、それによってワクチンの治療有効性を実証した。米国特許公開第2012/0027841A1号参照、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。この実施例において、本発明者らは、確立されたHSV−2感染後4週間のモルモットにおいて、ミョウバンおよびMPLを含むHSV−2gDサブユニットワクチンと、筋肉内投与されたHSV−2gD抗原をコードするDNAベクターおよび鼻腔内投与されたリポソーム封入gDタンパク質抗原から成る粘膜HSV−2ワクチン(すなわち、BRMワクチン)の治療有効性を比較した。モルモットモデルは、陰部ヘルペスを研究するために最も汎用されている動物モデルの一つである(Stanberryら(1985)Intervirology、第24(4)巻:226−231;Stanberryら(1982)J Infect Dis、第146(3)巻:397−404)。ヒトと同様、モルモットモデルは、重篤な生殖器病変を伴う初期急性感染症、その後の自然発生的再発事象を特徴とし、予防用および治療用の両ワクチンを評価するため広く使用されてきた。
【0086】
以前、本発明者らは、実験に使われたことがないDunkin−Hartleyモルモットにおいて3つの異なる感染用量(1×10
6、2×10
5および2×10
4pfu/動物)でMS株を投与することによりHSV−2感染の潜伏性を確立するのに成功した。2×10
5pfu HSV−2/動物の用量により死に至った動物はより少なく、この試験用の動物においてHSV−2感染を確立するのにこの感染用量を選択した。モルモットに2×10
5pfu HSV−2/動物(MS株)の用量で膣内接種を行った。疾患の臨床徴候および病的状態を感染後毎日モニターした。臨床徴候を以下の尺度にしたがってスコア付けした:0=疾患の臨床徴候無し(目に見える赤みまたは病変無し)、1=膣紅斑(赤みまたは軽度の腫脹)、2=1または数カ所の軽度のヘルペス病変(びらん、小水疱または中等度の腫脹)、3=幾つかの大きいかまたは融合した水疱、4=重篤な浸軟および/または尿閉および/または後肢麻痺を伴う大きな潰瘍、5=死体で発見。臨床スコア4に達した動物は即座に安楽死させた。感染後2日目、4日目および21日目に集めた膣スワブをプラークアッセイにより分析して、ウイルス感染および複製が膣腔において成功裏に行われているか否かを確認した。成功裏に感染したモルモットは、急性期中2〜3の臨床スコア範囲の疾患の臨床徴候を示し、これらを感染後28日目に3処置群に無作為に分けた(n=10〜12/群)。処置前の再発(病変の出現)率の点で3群間に有意な差は無かった(
図1)。
【0087】
3処置群のそれぞれについて、以下のうちの1つで免疫化を行った:下表および
図2の概略図で示されているところの粘膜ワクチン(BRMワクチン)、HSV−2gDサブユニットワクチン(参照ワクチン)、またはビヒクル対照。
【0088】
【表2】
【0089】
粘膜ワクチンにおけるプライム(gD−DNA)は、サイトメガロウイルス前初期プロモーターの制御下でコドン最適化完全長gD糖タンパク質遺伝子をコードするDNAプラスミドベクターであり、BRMワクチン群において感染後28日目と30日目に筋肉内投与された(1モルモット当たり合計100μgのDNA;1日当たり動物当たり50μg)。gD−DNAベクターは、第2ブースト調製物の一部として感染後58日目に再び筋肉内投与された(2×50μg/200ul/足;1モルモット当たり合計100μgのDNA)。gD遺伝子を伴わないプラスミド(DNAベクター)は、gD−DNAベクターと同じ用量、頻度および経路でビヒクル対照群中の動物に投与された。
【0090】
粘膜ワクチンにおけるブースト調製物(gD−lip)は、gD糖タンパク質の細胞外ドメイン(アミノ酸1〜314)を封入する負に荷電されたリポソームの調製物であり、BRMワクチン群において感染後44日目と58日目に鼻腔内投与された(30μg/100μl/動物、50μg/鼻孔)。負に荷電された空のリポソームの調製物(Lipビヒクル)は、gD−lip調製物と同じ用量、頻度および経路でビヒクル対照群の動物に投与された。
【0091】
参照ワクチン(HSV−2gDサブユニットワクチン)の各用量は、5μgのgD糖タンパク質の細胞外ドメイン(アミノ酸1〜306)、125μgのミョウバン(Alhydrogel)、および12.5μgのモノホスホリル脂質A(MPL)を含んでいた。HSV−2gDサブユニットワクチンは、参照ワクチン群の動物に感染後29日目、44日目および58日目に皮下投与された。
【0092】
血清および膣スワブ試料を、感染後3週間の21日目(プライムの7日前)、42日目(第1ブーストの直前)、56日目(第2ブーストの直前)、および83日目(試験の最後)にモルモットのワクチン接種群および非ワクチン接種群から集めた。試料をELISAで分析して、血清および膣抗体応答を評価した。3処置群のそれぞれについての抗原特異的(HSV−2gD)IgG抗体血清応答を
図3Aに示す。結果は、参照HSV−2サブユニットワクチンが血清中抗原特異的IgGの急速な増大を誘導した一方、粘膜ワクチン(BRMワクチン)が血清中抗原特異的IgGレベルのより緩徐な増大を生じさせたことを示す。しかしながら、粘膜ワクチンは、感染後83日目にビヒクル対照群と比較して抗HSV−2gD膣IgG抗体のおよそ10倍増大を誘導した一方、HSV−2サブユニットワクチンはより中等度の増大を誘導した(
図3B)。重要なことに、粘膜ワクチンのみ、抗原特異的膣IgA抗体の著しい増大を誘導した(
図4)。非ワクチン接種動物またはサブユニットワクチンをワクチン接種された動物では、膣IgAの増大は全く観察されなかった。
【0093】
膣スワブ試料のHSV−2 DNAコピーについてRT−PCRによりウイルス排出を評価した。
図5は、感染後83日目でHSV−2 DNAについて陽性であった(5コピーより多いHSV−2DNA)各処置群からの試料のパーセンテージを示す。粘膜ワクチン(BRMワクチン)を受けた動物では、非ワクチン接種動物またはサブユニット参照ワクチンを受けた動物の場合と比べて、ウイルスについて陽性であった膣試料のパーセンテージが著しく低かったことから、粘膜ワクチンは膣ウイルス排出の量を実質上低減させることが示された。BRMワクチンにより誘導される強い粘膜抗体応答は、このワクチンで観察されるウイルス排出の低減に貢献し得る。
【0094】
一次感染後、HSV−2は、仙骨神経節で潜伏的感染を引き起こし、ウイルスの再活性化が個体の生涯にわたって定期的に起こり、その結果、再発性疾患または初期ウイルス感染に対する免疫応答の存在下でさえ起こる明白でないウイルス排出が誘発され得る(WhitleyおよびRoizman(2001)Lancet、第357巻(9267):1513−1518)。成功裏の治療用ワクチンとは、定期的な再発を予防するかまたは著しく低減させるものでなければならない。感染モルモットの免疫化後、自然発生的な再発性ヘルペス(herpatic)病変の証拠について動物を25日間観察した。再発エピソードを、各群について1モルモット当たりの累積的再発(病変の出現)として数え、再発が観察された日数について調整した。
図6は、プライミング用量投与後および第1ブーストの直前の一定期間(感染後15日目〜42日目)の各処置群における再発の数を示す。データは、粘膜ワクチン群におけるgD−DNAベクターのプライミング用量の投与が、ヘルペス(herpatic)病変の再発数の低減において急速な治療効果を有したことを示す。gD−DNAベクターのプライミング用量の投与により誘導されたT細胞応答(データは示さず)は、28日目から42日目までに観察されたこの急速かつ顕著な治療有効性と相関すると思われる。対照的に、HSV−2gDサブユニットワクチンを受けた動物について、この参照ワクチンはこの期間の間抗HSV−2gD血清IgGの顕著な増大を誘導したという事実にもかかわらず、再発数に対する効果は全く観察されなかった(
図3Aおよび
図6を比較)。
【0095】
図7は、プライミング用量の投与後から試験の最後までの一定期間(感染後28日目〜83日目)における各処置群での再発数を示している。これらのデータは、感染前モルモットへの粘膜ワクチンの投与により、非ワクチン接種動物およびHSV−2gDサブユニットワクチンを受けた動物と比較してHSV−2臨床疾患の再発数が著しく低減されたことを示す。
図7の表は、ワクチン接種後、粘膜ワクチン群と他の2処置群との間の差異が高度に有意であることを示す(P<0.0001)。
【0096】
要約すると、この実施例で記載した一連の実験の結果は、DNAおよびタンパク質抗原成分の両方を含む粘膜ワクチンが、感染動物において強い膣IgGおよびIgA抗体応答を誘導し、膣ウイルス排出を低減させ、ヘルペス(herpatic)病変の再発数を顕著かつ急速に低減させることを示している。対照的に、ミョウバンおよびMPLアジュバントを含む皮下投与されたHSV−2gDサブユニットワクチンは、強くて急速な血清IgG抗体応答を誘導するが、顕著な粘膜抗体応答を誘導することはできない。サブユニットワクチンはまた、ウイルス排出を低減させず、粘膜ワクチンよりヘルペス(herpatic)病変の再発数低減について有効性は劣っている。
【0097】
本明細書で検討され、引用されている全ての出版物、特許および特許出願については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。記載されている特定の方法、プロトコルおよび材料は変わり得るため、開示された発明は、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、本明細書で使用される場合、用語は、特定の実施形態の記載を目的としているに過ぎず、添付の請求の範囲でのみ限定される本発明の範囲を制限する意図はないことは言うまでもない。
【0098】
当業者であれば、本明細書に記載される本発明の具体的実施形態と均等物である多くのものを認めるはずであり、または単なる慣用的実験を用いて確かめることができるはずである。かかる均等物のものは、後記請求の範囲に包含されるものとする。
【0099】
【化1】
【0100】
【化2】
【0101】
【化3】
【0102】
【化4】
【0103】
【化5】
【0104】
【化6】
【0105】
【化7】
【0106】
【化8】
【0107】
【化9】