(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回路を備えるシステムであって、目的対象物および前記目的対象物(16)を出る液体を処理するための装置がシステム内に挿入されており、該装置が請求項1〜6の何れか1項に記載の装置であり、リアクター(25)内でキャビテーションによって形成された気泡が、気体分離機(30)内に捕捉されるように、該気体分離機(30)が、前記リアクター(25)の下流に該リアクターから1メートル未満の距離で挿入されている、上記システム。
浮遊粒子を分離するための該手段は、ブラシフィルタ、ディスクフィルタ、粒状媒体フィルタ、限外ろ過膜、ナノろ過膜、および逆浸透膜から形成される群から選択されたフィルタである、請求項8に記載のシステム。
該目的対象物は、熱交換器、冷却塔、プール、冷却用若しくは空調用回路、加熱回路、ろ過回路、逆浸透脱塩回路、家庭用熱湯回路、または飲料用水分配回路によって形成された群から選択される、請求項7〜9のいずれか1項に記載のシステム。
液体が該回路内を循環し、この液体は、塩素、アルミニウム、臭素、クロムおよびストロンチウムによって形成された群から選択された元素を含む少なくとも1つの化合物を含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載のシステム。
溶解気体を含む液体を処理するための方法であって、前記方法は、リアクターがキャビテーションによって気泡を発生するように、適切な熱力学的条件のもとで、該液体を請求項1〜6の何れか1項に記載の装置を通過させることを包含し、該気体分離機が前記気泡を捕捉するために該リアクターの下流に置かれている、上記方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
様々な図で、同一または類似の要素は、同一の参照符号を付けられている。
【0024】
図1は、本発明に従う、液体Lがその中を循環する閉回路(12)を備えるシステム(10)を表示している。目的対象物(この場合にはラジエータ(16))および本発明に従う処理装置(20)が、回路(12)内に挿入され、処理装置(20)は該目的対象物の上流にある。
【0025】
処理装置(20)は、導管(22)を備え、該導管(22)の途中に、上流から下流に(上流と下流は導管(22)内での液体の流れの方向によって決定される)水力学的リアクター(25)、気体分離機(30)、およびフィルタ(31)が挿入されている。システム(10)はまた、処理装置(20)の上流又は下流に挿入され、液体Lの循環を可能にするポンプ(32)を備えている。
【0026】
回路(12)は、補給液体を有し若しくは有さないで、液体を大気と接触させ若しくはさせないで、示されるように、開かれ、半分開かれ、または閉じられていてよい。
【0027】
システム(10)は、限定されず、かつ特に一般的な冷水、家庭用熱湯、加熱用熱湯、空調用水、冷却用水、飲料水、工業用水、散水用又は/及び灌漑用水、防火用水、水泳用プール水、または入浴及び治療法のプールのための水のためのシステムでありうる。このシステムは、宿泊用の又はサービス産業の建物、例えば病院又は学校でありうる。
水力学的リアクター
【0028】
キャビテーションによって気泡、特に微小気泡を作り出すために液体内の圧力の急激な低下を生じさせることが可能などのようなデバイスも、水力学的リアクター(25)として用いられうる。
【0029】
水力学的リアクターは、水力学的リアクターがその途中に挿入されるところの導管の流れ面積より小さい流れ面積を有する部分を備えている。好ましくは、水力学的リアクターは、少なくとも2つのそのような部分を備えている。
【0030】
しかし、その流れ面積の減少による液体の単純な膨張は、もし流れが層流を保っていると、キャビテーションを生み出すのに十分でない。したがって、膨張は、大きな乱流及び局所的に非常に大きな圧力勾配を生み出すために急激でなければならない。
【0031】
好ましくは、水力学的リアクターは、受動的であり、即ちエネルギー消費物、特にモータを備えていない。より好ましくは、水力学的リアクターは、可動部分を備えていない。
【0032】
水力学的リアクターは、上流のチェンバー内に上流で開いているところの1以上の第1チャネルで構成された加速帯域を特に備え得て、該液体が該上流チェンバーと該第1チャネルの間で加速する。
【0033】
好ましくは、S”/Σ”比は、2を超え、5を超え、10を超え、20を超え、50を超え、100を超え、又は200を超え、及び/又は1000未満、500未満、400未満、又は300未満でありえ、
‐ S”は、複数の第1チャネルが上流チェンバー内に開いているところの領域の直前の上流での横方向平面内で測られた上流チェンバーの断面を示す;
‐ Σ”は、複数の第1チャネルが上流チェンバー内に開いているところの領域の直後の下流での横方向平面内で測られた上記第1チャネルの横方向断面の合計を示す。
【0034】
複数の第1チャネルは、流れを徐々に加速するように、例えばノズル形状の狭くなってゆく長手方向断面を有しうる。
【0035】
複数の第1チャネルは、好ましくは相互に平行である。それらは、直線状でありえ、または直線状でなくてもよい。特に、それらは液体の流れ方向に沿って延在しうる。第1チャネルの数は、好ましくは3を超え、5を超え、10を超え、20を超え、30を超え、及び/又は200未満、150未満、100未満、80未満、60未満である。チャネルの横方向断面は、どのような形状、例えば円形でもよい。1の実施態様において、第1チャネルは、その全長にわたって実質的に一定の横方向断面を有している。
【0036】
第1チャネルの等価内径は、好ましくは2mmを超え、10mmを超え、15mmを超え、または20mmを超え、及び/又は50mm未満、40mm未満、35mm未満である。約30mmの等価内径は、非常に適している。
【0037】
第1チャネルの長さは、好ましくは20mmを超え、30mmを超え、及び/又は50mm未満、40mm未満である。
【0038】
勿論、水力学的リアクターは、様々な溶解ガスの気泡を発生するキャビテーションを引き起こすために適応されうる。
【0039】
好ましくは、水力学的リアクターは、微細気泡のみを発生するために構成されている。
【0040】
1の実施態様において、処置装置は、その有効性を増すために、第1チャネルの上流に挿入され、かつ該第1チャネルに入る液体の温度を増加させることができる加熱器を備えている。
【0041】
しかし、液体を加熱することは、一般に費用がかかる。
【0042】
好ましい1の実施態様において、第1チャネルを出る液体は、圧縮チェンバーに入る。本明細書の残りで詳細に分かるように、圧縮チェンバーは、キャビテーション気泡の圧壊(implosion:内破)および有利な反応の生成に貢献する。
【0043】
好ましくは、流れ方向に沿って測定され且つ換算(reduced)座標 のオイラー系における、圧縮チェンバーの長さは、0.5*L
1を超え、及び/又は2*0.5*L
1未満である。ここで、L
1は、問題の圧縮チェンバーに相対的な上記第1チャネルの長さである。
【0044】
好ましくは、圧縮チェンバーは、0.0001dm
3を超える、0.001dm
3を超える、0.01dm
3を超える、0.1dm
3を超える、及び/又は20dm
3未満、10dm
3未満、1dm
3未満の容積を有している。
【0045】
S/Σ比は、2を超え、5を超え、10を超え、20を超え、50を超え、100を超え、又は200を超え、及び/又は1000未満、500未満、400未満、又は300未満でありえ、
‐ Sは、第1チャネルが圧縮チェンバー内に開いているところの領域の直後の下流での横方向平面内で測られた圧縮チェンバーの断面を示す;
‐ Σは、第1チャネルが圧縮チェンバー内に開いているところの領域の直前の上流での横方向平面内で測られた上記第1チャネルの横方向断面の合計を示す。
【0046】
高いS/Σ比は、第1チャネルの口で、マイクロジェットの生成を有利に可能にし、これはキャビテーションの発生のために非常に効果的である。
【0047】
S/Σ比を計算するために、問題の全ての第1チャネルが、考慮される。
【0048】
もし装置が、キャビテーションが生じる幾つかの加速帯域を備えているならば、装置は、好ましくは、これら加速帯域の各々の下流に個別の圧縮チェンバーを備えている。全圧縮チェンバーは、実質的に同一のS/Σ比を有しうる。
【0049】
好ましくは、水力学的リアクターは、液体と接触するよう配置された誘電物質を、好ましくは液体が高速で循環する領域内に備えている。好ましくは、上記第1チャネルは、そのような誘電物質で作られた内部壁で区切られている。第1チャネルは、上記誘電物質で作られたブロック内に作られうる。
【0050】
誘電物質は、好ましくは、プラスチック、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはこれら物質の混合物である。他の誘電物質、例えばセラミックスはまた、それらが、液体の循環によって摩擦帯電による静電荷を発生させること可能にする限りで用いられうる。
【0051】
PTFEは、好まれる誘電物質である。特に、この誘電物質は、液体の固形物が該誘電物質の表面へ付着するのを防止する。
【0052】
水力学的リアクターは、好ましくは、ガルバニ電流作用を介して酸化還元現象を生み出すように、液体の通路に沿って置かれた、電気伝導性物質で作られた部分を備えている。
【0053】
より好ましくは、電気伝導物質は亜鉛である。
【0054】
水力学的リアクターは、特に、上記電気伝導物質で作られた内壁によって区切られた複数の第2チャネルを備えている。第2チャネルは、上記電気伝導物質で作られたブロック内に作られうる。1の実施態様において、圧縮チェンバーは、第1チャネルと第2チャネルの間に、または逆に第2チャネルと第1チャネルの間に、液体の通路に沿って配置されている。
【0055】
複数の第2チャネルは、第1チャネルのように、キャビテーション気泡の源でありうる。それらは相互に平行でありうる。それらは直線でありえ、又は直線でなくてもよい。特に、それらは水力学的リアクターの長手方向軸に沿って延在しうる。第2チャネルの数は、好ましくは2を超え、3を超え、5を超え、10を超え、20を超え、30を超え、及び/又は100未満、80未満、60未満である。第2チャネルの横方向断面は、どのような形状、例えば円形でもよい。1の実施態様において、第2チャネルは、その全長にわたって実質的に一定の横方向断面を有している。
【0056】
第2チャネルの等価内径は、好ましくは2mmを超え、4mmを超え、または5mmを超え、及び/又は15mm未満、13mm未満、10mm未満、8mm未満、または7mm未満である。
【0057】
1の実施態様において、第2チャネルの等価内径は、第1チャネルのそれよりも大きく、又は1.1倍、1.5倍、2倍、または3倍大きい。
【0058】
第2チャネルの長さは、好ましくは20mmを超え、30mmを超え、及び/又は50mm未満、40mm未満である。
【0059】
圧縮チェンバーは、好ましくは幾つかの第1及び/又は第2チャネルに共通、または第1及び/又は第2チャネルの全てに共通である。
【0060】
好ましくは、第1チャネルは、第2チャネルの反対には開かない、このことは第1チャネルを出る且つ圧縮チェンバーをすでに通過した液体が、直線通路に従うことによって第2チャネルに入るのを妨げる。
【0061】
第1チャネル、任意的には第2チャネル、および圧縮チェンバーは、水力学的リアクター内に一緒にグループ化される。
【0062】
水力学的リアクターは、流体の流入口および流出口を備えているハウジングを備えうる。
【0063】
ハウジングは、本体、好ましくは円筒状本体、および例えば該本体にねじ締めされた1以上の端部キャップを備えている。端部キャップは、特に水力学的リアクターの流入口および流出口を規定しうる。端部キャップの長さは制限されない。
【0064】
好ましくは、水力学的リアクターは、流入口の及び/又は流出口のパイプへの接続を可能にする結合部、例えば、上記パイプの対応するフランジと協働できる、ボルト穴を備えたフランジ、または上記パイプのメス若しくはオス部分に夫々ねじ締めされるオス若しくはメス部分を備えている。結合部分は、任意的な端部キャップへしっかりと装着されうる。
【0065】
ハウジングおよび、特に1以上の端部キャップは、電気伝導物質で作られ、特に鋼鉄で作られうる。
【0066】
その長手方向端部で、第1ブロックは、上流面と下流面によって区切られ、上記上流及び下流面の少なくとも1つは、好ましくは凹である。
【0067】
第1ブロックは特に、上記誘電物質で構成されうる。
【0068】
ハウジングは、誘電物質で作られた壁によって少なくとも部分的に縦方向に区切られ、かつ圧縮チェンバー内へ流出口側で開いている複数の第1チャネルを規定するところの第1ブロックを含みえて、上記第1チャネルは、液体が、少なくとも1つの第1チャネルおよび圧縮チェンバーを通過することによって、流入口から流出口へ水力学的リアクターを通過するように配置されている。
【0069】
ハウジングはまた、電気伝導物質で作られた壁によって少なくとも部分的に縦方向に区切られた複数の第2ブロックを含んでいる。
【0070】
その長手方向端部で、第2ブロックは、上流面及び下流面によって区切られ、上記上流及び下流面の少なくとも1つは、好ましくは凹である。
【0071】
第2ブロックは、圧縮チェンバーが上記ハウジング内部に作られるという条件で、第1ブロックの上流または下流に配置されうる。圧縮チェンバーは、特に、第1ブロックと第2ブロックの間に又はハウジング内の最下流ブロックの下流に配置されうる。好ましい実施態様において、第1と第2ブロックは、液体が第1チャネル、全ての第1及び第2チャネルがその中に開いているところの圧縮チェンバー、それから第2チャネルを順次通過するように配置されている。
【0072】
第1及び/又は第2チャネルが開通しているところの、特に圧縮チェンバー内への開口は、好ましくは乱流を助長するように鋭い。
【0073】
第1及び第2ブロックの第1及び第2チャネルは、一般的な仕方で上述された第1及び第2チャネルの最適特徴の1以上を有しうる。誘電物質および電気伝導物質はまた、上で引用された物質から選択しうる。
【0074】
好ましくは、水力学的リアクターは、第1及び第2ブロックをハウジング内に位置取りするための手段を備えている。これらの手段は、長手方向及び/又は角方向(長手方向軸に関する)の位置取り止め具、好ましくは誤り防止手段を備えうる。有利には、第1チャネルの下流開口は、同一の圧縮チェンバー内に開いている第2チャネルの上流開口に関して正確かつ迅速に配置されうる。
【0075】
別の実施態様として又は追加的に、水力学的リアクターは、第2チャネルの上記電気伝導物質と水力学的リアクターのハウジングの金属構成物の間の電気的接触および接触圧力の正確性を増大させるための機械的手段を備えうる。好ましくは、金属の第2チャネルを規定する電気伝導物質と水力学的リアクターのハウジングの金属構成物の間の電気的接触は、締付け(クランプピング)によって与えられる。好ましくは、第2ブロックは、ハウジングの円筒状本体にねじ締めされた端部キャップに対してもたれかかる。好ましくは、このねじ締めは、第2ブロックと端部キャップの間の一定の圧力を調節することを可能にする。より好ましくは、第2ブロックは、端部キャップのねじ締めの間、上記第2ブロックの端部が端部キャップ内に切り込むように、余分の長さを有している。
【0076】
好ましくは、上記電気的接触はドライである、即ち電気的接触の帯域は、水力学的リアクター内を循環している液体と接触していない。この目的のために、封止がこの接触帯域を隔離するために配置されうる。例えば、第1及び第2Oリングが、ハウジングと第2ブロックの間に、例えば第2ブロックの上流面及び下流面の近傍に配置されうる。
【0077】
第2ブロックは、端部キャップに対して弾性的にもたれかかりうる。
【0078】
1の実施態様において、第2ブロックは、ハウジングの本体と端部キャップの間の接合部に置かれ、上記接合部とオーバーラップする。
【0079】
第1及び/又は第2ブロックの数は、好ましくは1を超え、2を超え、または3を超え、及び/又は10未満、7未満、または5未満である。
【0080】
1の実施態様において、水力学的リアクターは、上流から下流へ、第1ブロック、圧縮チェンバー、第2ブロック、圧縮チェンバー、第1ブロック、圧縮チェンバー、第2ブロック、圧縮チェンバー、第1ブロック、および圧縮チェンバーを順次に備えている。
【0081】
1の実施態様において、水力学的リアクターは、第2ブロックをハウジングの各端部で備え、好ましくは、各端部は夫々の端部キャップと接触している。
【0082】
1の実施態様において、水力学的リアクターは、1つの第1ブロックと2つの第2ブロックを備えている。該第1ブロックは、該2つの第2ブロックの間に置かれている。
【0083】
水力学的リアクターは、例えば、特許EP-B2-680 457または国際公開第2011/033476号公報に記載された水力学的リアクターの1つ、特に、ISB WATER会社によって、IONSCALE BUSTER(商標)(ISB)の名の下に販売された水力学的リアクターである。
【0084】
図2は、そのような水力学的リアクター(110)を概略的に示している。
【0085】
長手方向軸Xの水力学的リアクター(110)は、流入口(112)および流出口(114)を備えたハウジング(111)を備えている。
【0086】
ハウジング(111)は、順次、上流から下流へ、誘電物質で作られた第1ブロック(116)および電気伝導物質で作られた第2ブロック(118)を含んでいる。好ましくは、ハウジング(111)は、電気伝導物質で作られ、かつ第2ブロック(118)を構成するところの電気伝導物質でできた犠牲アノードと電気的に接続されている。
【0087】
第1及び第2ブロックは、第1及び第2チャネル(それぞれ120、122で参照される)によって長手方向に貫かれる。
【0088】
第1チャネルは、上流で、流入口(112)の方へ、「上流」開口(120
1)を通して上流チェンバー(123)内に開き、そして下流で、「下流」開口(120
2)を通して第1円筒状圧縮チェンバー(124)内へ開いている。
【0089】
第2チャネル(122)は、上流で、「上流」開口(122
1)を通して、第1圧縮チェンバー(124)の方へ開き、且つ下流で、流出口(114)の方へ、「下流」開口(122
2)を通して第2圧縮チェンバー(125)内へ開いている。
【0090】
上流チェンバー(123)の直径および第1圧縮チェンバー(124)の直径は、270mmでありうる。全ての第1チャネル(数は9つ)は、6.3mmの内径を有しうる。
【0091】
S/Σ比は、したがって近似的に200であり、
‐ Sは、第1チャネルの「下流」開口(120
2)の直後の下流での横方向平面P
S内で測られた第1圧縮チェンバー(124)の断面を示す;
‐ Σは、これら「下流」開口の直前の上流での横方向平面P
Σ内で測られた上記第1チャネルの横方向断面の合計を示す。
【0092】
第2圧縮チェンバー(125)、および第2チャネルの下流開口(122
2)は、圧縮チェンバー(124)の、および上述された第1チャネルの下流開口(120
2)の構成に類似の、又は同一でさえある構成を有しうる。
【0093】
さらに、全ての第2チャネル(数は3つ)は、9mmの内径を有しうる。
【0094】
S’/Σ’比、ここで
‐ S’は、第2チャネルの「上流」開口(122
1)の直前の上流での横方向平面P
S’内で測られた第1圧縮チェンバー(124)の断面を示し;
‐ Σ’は、これら「上流」開口の直後の下流での横方向平面P
Σ’内で測られた上記第2チャネルの横方向断面の合計を示す、
は、2を超え、5を超え、10を超え、20を超え、50を超え、100を超え、又は200を超え、及び/又は1000未満、500未満、400未満、又は300未満でありうる。
【0095】
高いS’/Σ’比は、圧縮チェンバーの流入口での第1チャネルによって発生されたキャビテーション気泡を取り除くのに非常に有効な、第2チャネルの口での大きな背圧の生成を有利に可能にする。
【0096】
第1圧縮チェンバー(124)は円筒状であるから、S’=Sである。
【0097】
S’/Σ’比を計算するために、問題の第2チャネルの全てが考慮に入れられる。
【0098】
もし水力学的リアクターが幾つかの圧縮チェンバーを備えているならば、水力学的リアクターの圧縮チェンバーの全ては、実質的に同一のS’/Σ’比を有してよい。
【0099】
上流チェンバー(123)および第1チャネルの上流開口(120
1)は、圧縮チェンバー(124)の構成および上述した第2チャネルの上流開口(122
1)の構成に類似の、又は同一でさえある構成を有しうる。
【0100】
第1及び第2チャネルの全ては、実質的に軸Xに沿って延在している。
気体分離機
【0101】
水力学的リアクター内で形成され、圧縮チェンバーを横切るときに任意的に分割される気泡は、その後気体分離機(30)内にトラップされる。
【0102】
キャビテーション発生条件は、液体が圧縮チェンバーに入ると急速に消滅し、従って気泡は液体内に再溶解される。気体分離機は、したがって水力学的リアクターの下流に、好ましくは2m未満、1m未満、0.5m未満、0.2m未満の距離で、又は水力学的リアクターに接触さえして配置されている。
【0103】
液体から気泡を抽出することができるどのような装置も、用いられうる:
‐ 大気気体分離機:該大気気体分離機は、液体が空気と接触することを可能にし、特に溶解CO
2の除去をもたらし、液体が細かく分割され且つ空気が急速に置き換えられるとき、よりよく除去される;
‐ 熱気体分離機:105℃に近い温度の水蒸気の対向流の流れの中に液体を散布することは、液体内に含まれている溶解ガスのほぼ完全な除去を可能にする;
‐ 圧力低下または真空に引くことによる脱ガス:真空脱ガスは、大気圧沸騰点以下の温度で使われる。液体は微細な液滴にまで小さくされ、これは溶解ガスの脱ガスに有利に働く。
【0104】
気体分離機において、液体は、好ましくは加圧に保たれている。好ましくは気体分離機において、液体は移動可能に保たれている。好ましくは、気体分離機において、液体は、気体との水平な接触面、例えばプール内のような、を有しない。
【0105】
特に、気体分離機は、合体させる分離機でありうる。
【0106】
合体させる分離機は、簡易で非常にコンパクトな仕方で構築されうる。それらは、特に、運転中の閉回路の脱ガスに適している。
【0107】
これら分離機は、様々な運転原理を組み合わせたものである:
‐ 流れ速度の減速、
‐ 上向きの(浮)力および遠心分離の役割を最適化するための装置の実装
‐ 合体を促進するのに適した異物の存在。
【0108】
合体させる分離機内で、公知の合体現象に従い、蓄積された気体気泡は、互いに融合し、こうしてより大きなサイズの気泡を形成し、浮力の下で、気泡が上記液体から抜け出しうるところの液体の境界へ上昇する。
【0109】
図3に示された1の実施態様において、合体させる分離機(130)は、タンク(132)を備え、好ましくはそれは垂直で、例えば円筒状であり、液体流入口(134)、液体流出口(136)および気体流出口(138)を備えている。
【0110】
流体流入口は、好ましくは実質的に接線方向にタンク内に開いている。好ましくは、分離機は、入ってくる液体の遠心分離を促進するために置かれた取水案内フィン(140)を備えている。
【0111】
抽出された気体の排出を意図された気体流出口は、好ましくはタンクの上側部分に置かれる。
【0112】
液体流出口は、好ましくはタンクの下側部分に置かれ、そして内部円筒(142)によってタンクの内側に延在させられ、該内部円筒はタンクの底から測られた高さが、タンク高の約2/3に対応する高さまで伸びている。
【0113】
タンクはまた、タンクの下側部分に置かれ且つタンクの排出およびパージ操作を容易にすることを意図された、分離弁(146)を備えたパージ開口部(144)を備える。
【0114】
タンクは、気体気泡合体現象に有利に働くことを意図されたパッキング(148)を部分的に充填される。パッキングは、タンクの外殻、内部シリンダーおよび好ましくは穿孔された上側(150)及び下側(152)支持プレートによって画定された容積内に配置されうる。好ましくは、上側及び下側支持プレートは、タンクの頂部から及び底から夫々タンクの高さの約1/4に置かれる。
【0115】
パッキングは、例えば、Pall会社によって販売されているRasching(ラシヒ)リング(Pall-Rings)を特に備えている。
【0116】
タンクは、好ましくは、扱われる液体の流速を実質的に低下させように、好ましくは3m/秒未満、2m/秒未満、または1m/秒未満の流速を保証するように、十分に大きな内径を有している。
【0117】
パッキング要素のサイズは、分離機の内部容積および目的対象物によって決定されたサービス条件に適合される。
【0118】
このようにして捕捉された気体は、好ましくは自動排気弁(154)の助けによって、回路の外部に解放されうる。
浮遊粒子を分離するための手段
【0119】
浮遊粒子を分離するために、沈殿手段またはフィルタが特に用いられうる。
【0120】
水力学的リアクターの下流に置かれたフィルタ(31)は、浮遊粒子を抽出することを可能にする。ろ過の原理は、ろ過の閾値よりも大きなサイズを有する粒子の流れに対する物理的な障壁を設けることである。ろ過は、液体の質を高め、ひいては装置を守り、そして水垢、沈泥及び腐食、およびまた微生物、例えば藻類及び細菌の生物増殖のリスクを制限する。
【0121】
フィルタ(31)は、特に、水力学的リアクターと気体分離機の間に、または気体分離機の下流に、好ましくは気体分離機の下流に、好ましくは流れの全てを扱えるように直列(「インライン」)に配置されうる。流れの一部は、しかし並列(「オンライン」)扱い回路へ迂回されうる。
【0122】
フィルタは、特に、ブラシフィルタ、ディスクフィルタ、粒状媒体フィルタ、限外ろ過膜、ナノろ過膜(特に、単独で又は限外ろ過膜の下流で)、および逆浸透膜から形成されるグループから選択されうる。
【0123】
ブラシフィルタは、液体を、ケーシング内に実装されたブラシの繊維を通過させることによって粒子を機械的に除去することを可能にする。ブラシフィルタは特に、100μmを超えるサイズを有する粒子のろ過に適している。好ましくは、ブラシフィルタは、宿泊用又は第3次産業の、GCW(general cold water:一般冷水)、DHC(domestic hotwater:家庭用熱湯)、加熱および空調システムのために、または小冷却回路のために用いられる。
【0124】
ディスクフィルタは、液体を、溝を彫られたディスク(例えばポリプロピレンで作られた)の堆積を通過させることによって粒子を機械的に除去することを可能にする。ディスクフィルタは、特に、20μm〜200μmの間のサイズを有する粒子のろ過に適している。好ましくは、ディスクフィルタは、飲料水用、散水用又は/及び灌漑用水、防火用水、工業用水又は冷却用水、または大規模な宿泊用又は第3次産業の設備(例えば病院又は学校のための)のシステムのために用いられる。
【0125】
粒状媒体フィルタは、液体を、加圧されたケーシング内に置かれた粒子集合体を通過させることによって粒子を機械的に除去することを可能にする。汚染物は、ろ過媒体の機能としての保持及び/又は吸着によって除去される。粒状媒体フィルタは、特に、水泳プールの水、および入浴または治療用プールの水、塔及び回路の冷却用の水、またはコロイド粒子による著しい汚染のある水のろ過に適している。
【0126】
限外ろ過膜は、浮遊粒子、細菌及びウイルス、およびまた最大の有機分子を除去することを可能にする。限外ろ過膜は、特に、約0.01μmのサイズを有する粒子をろ過するのに適している。好ましくは、PES-7 bores-Internal/External モジュールの使用がなされる。限外ろ過膜は、水力学的リアクター内に強制的に沈殿させられ、それから気体分離機内で安定化された初期の形状で存在するCaCO
3を除去することを可能にする。これは、有利的に、液体内のTHの減少をもたらす。限外ろ過膜は、特に、飲料水、宿泊用又は修道会第三会の設備のための水、GCW、DHW、加熱用および空調用の水、又は小規模冷却回路、散水用又は/及び灌漑用水、防火用水、工業用水又は冷却用水、核施設の1次回路用水、または放射性汚染物質によって汚染された、または大規模な宿泊用又は第3次産業の設備のための(例えば病院又は学校のための)他の水性液体をろ過するのに適する。
運用
【0128】
液体Lは、ポンプ(14)によって、回路(12)内に運ばれる。
【0129】
目的対象物(16)から発する液体Lは水力学的リアクター(110)に入り、その中でキャビテーションを局所的に生成しうる乱流を生成するためにその流れが変化される。より具体的には、扱われるべき液体は、流入口(112)(
図2に示された矢印F)および上流チェンバー(123)を介して水力学的リアクター(110)へ入る。
【0130】
液体は、その後、誘電物質で出来た第1ブロック(116)内に作られた第1チャネル(120)を通過する。
【0131】
第1チャネル内へ入ることは、液体の急激な加速、およびキャビテーションの出現へ導く圧力の低下が伴なう。運転条件(流れ速度、圧力)は、膨張がキャビテーションを引き起こすように決定される。IONSCALE BUSTER(商標)水力学的リアクターで、水力学的リアクターの流入口での(上流チェンバー(123)内への)液体の速度は、好ましくは2m/sを超え、及び/又は15m/s未満、12m/s未満、10m/s未満、8m/s未満、6m/s未満、または4m/s未満であり、そして水力学的リアクターの流入口での圧力は、好ましくは、1バールを超え、及び/又は20バール未満、10バール未満、または5バール未満である。
【0132】
Christopher Earls Brennenによる本「CAVITATION AND BUBBLE DYNAMICS(キャビテーション及びバブル動力学)」(発行Oxford University Press, 1995)は、水力学的キャビテーションを得ることを可能にする条件を記載している。
【0133】
キャビテーションは、この液体の流れの幾何学的変更による、液体内の局所的な圧力低下から起きる周知の現象である。それは特に、遊離のまたは乳化された分散システムを得るために用いられる。
【0134】
キャビテーションは、
図4に示すように、液体流れ内での及び/又は流れが生じる水力学的リアクターの壁の境界層での、気体が詰まっているキャビテーション気泡の形成をもたらす。
【0135】
もし圧力が、液体が沸騰点に達する値以下の値にまで減少すると、多数のキャビテーション気泡が形成される。
【0136】
液体内に含まれた気体を解放する物理的現象を定量化することを可能にするのは、ヘンリーの法則であり、そしてそれは、温度が高くなればなるだけ、及び/又は圧力が低下すればするだけ、液体は溶解された気体をより多く解放する。溶解された気体のこの解放は、気泡の形状で生じ、そのサイズは数十マイクロメータから数ミリメータまで変わりうる。
【0137】
キャビテーションによって気泡を発生する、水力学的リアクターの能力は、多くの因子に依存し、それらの中の主要なものは、
‐ 液体内に溶解された1又は複数の気体の圧力;
‐ 液体内に存在する1又は複数の気体の種類および物理化学的特性;
‐ 液体の温度;
‐ 液体の圧力;
‐ 水力学的リアクターの幾何形状;
‐ 液体の流速又は流れ速度。
【0138】
バッフル(邪魔板)の存在は、有利には流れの非常に急激な局所的収縮を生成することを可能にし、それはキャビテーションにとって好ましい。具体的には、液体流がバッフルによって生成された収縮点を通過するとき、液体流は、水力学的キャビテーションの現象に有利に働くところの低下圧力帯域に入る。
【0139】
キャビテーションの強さは、キャビテーション数Cvによって運転条件に結び付けられている。
【0140】
キャビテーション数Cvは、次の仕方で表現されうる:
Cv=(P
2−Pv)/(ρ
LV
O2/2) ここで、
‐ P
2は、水力学的リアクター下流での圧力である、
‐ Pvは、運転温度での液体Lの蒸気圧である、
‐ V
Oは、水力学的リアクター内の液体Lの平均速度である、
‐ ρ
Lは、液体の密度である。
【0141】
キャビテーション現象が現れ始めるところのキャビテーション数は、Cv=1である。キャビテーション現象の効果は、Cvの値が低いときに、より大きくさえなるであろう。
【0142】
水力学的リアクター内のキャビテーション現象の最適化は、ノズルおよびベンチュリーシステム中の液体の流れを記述する理論的モデルの従来の応用に基づいている。
【0143】
最適の理論モデルは、二相流に関するモデルである。ベンチュリーを通る気泡の流れは、気泡の動力学方程式と組み合わせた、質量保存の方程式、及び存在する二相の運動量の保存方程式を用いてモデル化されうる。このシステムの数値解は、ベンチュリーの首部の半径の変化の影響、および気泡の半径の軸方向の進展に対する当初の空隙比の、気体‐液体混合物の圧力の、および流れの速度の効果を研究することを可能にする。
【0144】
好ましくは、水力学的リアクターは、数で50%を超える気泡について、0.2μmと2mmの間の直径を有する気泡を発生するように構成されている。
【0145】
実際には、キャビテーションは、「核」または「種」から生じる。これらのキャビテーション出発点は、液体内の気体の取り込み、すなわち遊離マイクロバブル(微小気泡)、浮遊固形不純物に付着した又は固体壁の裂け目に捕捉された気体粒子等によって構成される。流れの熱力学的条件および上記第1チャネルの幾何形状に依存して、これら核は、多少とも爆発的に成長しうる。特に、上記気体の飽和値に近い溶解気体の圧力の存在において、この気体は、キャビテーション気泡の形状で容易に解放されるであろう。
【0146】
有利的に、キャビテーションによって生成される非常に強い局所的な熱力学的及び機械的条件はまた、液体内に存在することもあり得る、病原性又は非病原性微生物の破壊をもたらす。
【0147】
第1チャネルにおいて、液体は誘電物質をこする。誘電物質に対する液体の摩擦は、誘電物質の表面で静電荷の蓄積を引き起こし、こうして下記の反応を促進する能力をもつ局所的な静電界を生成する:
‐ 或るイオン、例えば或る金属酸化物、炭酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩の物理化学的沈殿;
‐ 或るコロイド粒子の凝集。
【0148】
コロイド粒子は一般に、あまりに微細であるので、ろ過システムの大多数によって捉えられず、そしてもしそれらを分離する能力のあるフィルタ、例えば限外ろ過システムのような、が実装されると、それらは直ぐに限外ろ過膜の目詰まりの危険を冒し、禁止的な程の圧力低下または流速の減少を引き起こす。
【0149】
誘電物質によって生成された静電効果の存在およびそれからもたらされるコロイド粒子の凝集によって、コロイド粒子のクラスタのサイズは、それらがフィルタにより効果的かつ経済的に捉えられることができるような、十分なサイズに達しうる。
【0150】
より具体的に、コロイド粒子は、それら内部電荷の非対称:ゼータ電位、を多くの場合有している。誘電物質の近傍において、コロイド粒子の凝集を防ぐところのこの静電バリアの除去は、証明されている。さらに、コロイド粒子間の衝突の頻度は、キャビテーションによって引き起こされた液体の流れ形態の乱れによって大きく増大させられる。
【0151】
この理論によって限定されることなく、発明者は、誘電物質の表面に生成された静電電位は、熱と電気エネルギーへ変換されるところの、液体の流れの運動エネルギーの一部分から生じると考える。
【0152】
静電電位は、液体と、液体がその上を流れるところの誘電物質の領域との摩擦の強さの関数である。
【0153】
静電荷の蓄積は、誘電物質の表面と流れる液体の間の電位、および誘電物質の表面と液体がその中を流れる回路の配管の金属表面との間の電位の不均衡をもたらす。
【0154】
このように液体内に存在する正又は負イオンは、様々な機構、例えば静電力、化学的吸着、および極性基の解離によって、または液体と誘電物質の間の反応によって、液体−固体界面で相互に結合されるであろう。
【0155】
イオンが溶解された塩の解離から生じるとき(これによって等量の正および負電荷を生じる)、一方のイオンが誘電物質により強く結合されるので、帯電現象のみが生じる。1879年にこれを研究した物理学者にちなんで名付けられた「ヘルムホルツ(Helmholtz)層」と呼ばれるコンパクト層が、このように作られる。別の物理学者であるグイ(Gouy)は、他方の極性のイオンは、拡散層へと自身を組織化することを、1910年に示した。
【0156】
拡散層又は「グイ層」の厚さは、液体の抵抗に依存している:厚さは、高い伝導性の液体については非常に薄く、そして液体の抵抗と共に増大する。
【0157】
液体が運動状態に置かれると、この二重層は、固体−液体界面への結合されたままのヘルムホルツ層と、液体と共に引きずられるグイ層に分離されるであろう。液体内の電荷の蓄積は、界面へのイオンの拡散によって、および液体の抵抗ρによって支配される。
【0158】
2相流体は、第1圧縮チェンバー(124)内へ出る。第1圧縮チェンバー(124)への流入口は、速度の低下、圧力の急激な上昇、およびキャビテーション気泡の内部での凝縮を導き、それはキャビテーション気泡のほとんどの圧壊を引き起こし、圧力パルス(その振幅は非常に大であり得る)を生成する(
図4参照)。
【0159】
これら非常に突然の圧壊は、ショックウエーブの形成の結果をもたらし、それは次に物理化学的または熱力学的および機械的現象、例えば圧壊する気泡に近い何らかの物質の破壊を起こす。
【0160】
このように、キャビテーション気泡の破壊の間、非常な高圧及び非常に高い局所的温度が達成される:気泡内の温度は、5000℃のオーダーの値に達しえ、そして圧力は、500kg/cm
2のオーダーの値に達しうる(K.S.Suslick, Science, Vol. 247, 23 March 1990, p.1439-1445)。
【0161】
これらの温度および圧力条件は、気泡の内部または上記気泡の近傍の液体内において、物理化学的および熱力学的反応、特に炭酸塩の沈殿およびCO
2の解放を活性化させる。
【0162】
上に説明したように、誘電物質の存在は、ゼータ電位バリアを弱くすることによって、炭酸カルシウム(CaCO
3)の沈殿現象および他のコロイド化合物の凝集の増大に有利に働く。有利的に、この沈殿は、添加剤の濃度を低下させること、および働いている液体を取り換える頻度を制限することを可能にする。この沈殿はまた、保護膜(Thillmann膜として呼ばれる)の形成によって腐食現象の多さを制限し、ひいてはシステムの或る電気防食を保証する。
【0163】
さらに、乳化、均質化、および分散の過程は、キャビテーション気泡の圧壊によって生成された運動エネルギーのお陰で得られうる。
【0164】
第1圧縮チェンバー(124)内に開いている第1チャネルの「下流」開口(120)の形状は、例えばそこに障害物又は発散区間を置くことによる乱流および圧力変更を最大化するように適合されうる。第1圧縮チェンバー(124)内の水力学的条件はまた、液体の強力な混合を保証することによって、合体に貢献する。したがって、合体を開始するところの第1圧縮チェンバーを誘電物質の下流に置くことは、特に有利である。
【0165】
第1圧縮チェンバー(124)は、第1チャネルの「下流」開口を、第2チャネルの「上流」開口から分離する。
【0166】
第1圧縮チェンバー(124)を出る液体は、このように第2ブロック(118)の第2チャネル(122)へ入る。好ましくは、しかし、乱流および引き続く沈殿を促進するように、第2チャネルは第1チャネルと軸的に位置合わせをされていない。
【0167】
液体が第2チャネル(122)内へ入ることは、その速度の突然の加速を引き起こす。したがって、圧縮チェンバー(124)と第2チャネル(122)の間の遷移領域は、流れの加速の及びキャビテーションの出現の領域を構成する。
【0168】
液体はまた、第2チャネルを規定する電気伝導物質、好ましくは亜鉛で作られた電気伝導物と接触する。
【0169】
亜鉛‐鉄(Zn‐Fe)電気ガルバニ対によって生成される「ダニエル電池」効果は、防食保護を与える能力のある電子の移動を引き起こす(カソード防食)。亜鉛(鉄よりも又は他に銅よりも良い還元剤である金属)は、事実、システムの還元力の小さな金属の代わりに酸化される。
【0170】
「バッテリー」効果はまた、亜鉛アノードと、システムの低還元性の金属、例えば鉄を含んでいるときの水力学的リアクターのハウジングとの間に自発的に確立される電解反応のせいで、液体内へZn
+イオンを放出すること可能にする。このように液体内へ放出されたこれらイオンは、不均一1次核生成反応の出現および展開のために核として働きうる。
【0171】
特に、これら亜鉛イオンの存在は、亜鉛イオンの周りの水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの凝集を可能にする。このように形成された核種は、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの局所結晶化条件の変更を可能にし、極端に大きく且つ非常に急速な2次核生成現象を引き起こす。この現象は、結晶化されるべき物質の結晶(イニシエータとして記載される)の存在において且つ本質的にかき混ぜられた媒質内で観察される。これら2次核の生成の速度は、媒質のかき混ぜの速度、開始剤の量、および液体の過飽和に依存している。
【0172】
水力学的リアクターの幾何的形状は、特に液体内に起こされた強力な混合によって、および圧縮チェンバーはキャビテーション気泡の圧壊を介して、物理化学的沈降および凝集を促進および加速するように、誘電物質および電気伝導物質と協働する。この予測は、金属、例えばアルミニウム、臭素、クロム、又はストロンチウムから、特に放射性金属から液体を分離するために特に有用である。
【0173】
第2ブロック(118)の流出口で、液体は、キャビテーション気泡の大半を圧壊することをやはり可能にする第2圧縮チェンバー(125)に入る。
【0174】
残留気泡の持続時間は、流れの形態および水力学的リアクターの幾何的形状に依存している。水力学的リアクターの下流に位置するパイプの区画において、それは典型的には20秒未満、5秒未満、2秒未満である。
【0175】
したがって、微小気泡を含む液体Lは、気泡が捕捉されて、システムの回路の外側に放出されることができるように、迅速に気体分離機に入らなければならない。したがって、気体分離機は、好ましくは、水力学的リアクターの近傍に置かれている。
【0176】
溶解気体、および特に炭酸カルシウム(CaCO
3)の初期の沈殿から生じる溶解酸素(O
2)および二酸化炭素(CO
2)をこのように除去する事実は、システムのより良い運転条件を得ることを可能にする:
‐ 騒音問題の低減、
‐ 腐食問題の低減、
‐ 起こりうる局所化された過熱ゾーンの除去、
‐ 起こりうる機械的(ポンプ、バルブ、ゲート等)劣化の除去。
【0177】
気体分離機を出る液体中のガス圧は、したがって、水力学的リアクターに入る液体中のそれよりも小さい(多分CO
2を除き。後者は水力学的リアクター内の炭酸塩の沈殿によって多分作られる)。溶解気体の有害性は、したがって、添加剤を加える必要なしに低下させられる。
【0178】
気体分離機を出た後、液体はフィルタ(31)を通過する。該フィルタは、水力学的リアクター内で生成された粒子、及び好ましくはシステムに対して損傷を与えうる他の粒子状汚染物を少なくとも部分的に保持することを可能にする。
【0179】
本発明に従う処理装置は、液体中の溶解ガスの存在が潜在的に有害であるところのあらゆる用途に用いられうる。特に、それは、冷却塔又は水泳プールに用いられうる。閉加熱回路と違って、液体(冷却用液体、水泳プール水)は、例えば大気へ放出されることによって蒸発し、このことは補給液体を必要とする。補給液体中に初から存在する或る化合物および或る処置添加剤は、蒸発しない。したがって、それらの濃度は、液体中で増加する傾向を持つ。添加剤の濃度が臨界レベルに達するとき、液体は、部分的に置換(希釈化排除)、または完全に置換(排出操作)されなければならない。従来は、冷却塔において、添加剤の濃度が2倍又は3倍になるときに、水は置換されねばならなかった。
【0180】
処理装置は、一般的に健康および環境に有害である添加剤の追加を制限すること、および液体を置き換える頻度を減らすことを可能にする。試験は、例えば、本発明に従う装置によって、置き換えの頻度は、600kW冷却塔で1/4になることを示している。処理装置は、冷却塔の回路を湯垢および腐食から保護することを追加的に可能にする。
【0181】
水泳プールにおいて、プール水を十分に消毒するために塩素化製品の注入が必要である。この塩素の注入は、水浴者によって導入された窒素含有汚染物と組み合されて、健康に対して有害であるクロラミンの形成を引き起こす。本処理装置は、塩素化製品の添加を制限または除去することさえ可能にする。800m
3の水泳プールにおいて、試験は、本発明に従う該装置が、クロラミンの生成を勧告基準より下の値へ非常に経済的に低下させることを可能にすることを示した。該目的対象物はまた、ろ過装置、例えば逆浸透ろ過装置、特に逆浸透による水の脱塩又は飲用可にするためのプラントでありえる。そのような装置は典型的には、脱塩されるべき水によって通過させられる膜を備えている。この膜の上流での沈殿現象は、それを詰まらせる傾向を有し、そして、それはしたがって従来技術では、水垢防止剤又は金属イオン封鎖化学薬品を加えることが必要である。
【0182】
本発明に従う装置の使用は、有利に、健康および環境に多くの場合有害であるところの金属イオン封鎖剤のこれらの添加を制限又は除去さえすることによって装置を保護することを可能にする。
【0183】
上に記載されたように、発明者は、均一な核生成および処理されるべき液体内に存在する或るイオンの塩、たとえば炭酸塩、硫酸塩、または他の類似の化合物の結晶の、非接着性結晶学的形態(例えば、炭酸カルシウムの場合のACCまたはMCC)にある初期の沈殿が、水力学的リアクター内に生じることを観察した。
【0184】
水力学的リアクターはまた、水力学的リアクター内に存在する強い機械的効力によって、コロイド粒子、例えば炭酸カルシウムの1次核生成のアモルファス形状の集合または凝集を可能にする。
【0185】
このように形成された粒子は、有利に、膜の外表面で保持されるための十分なサイズを有し、そして濃縮物流れに乗せられる。それらは、そのあと液体から、例えばろ過によって抽出されうる。
【0186】
逆浸透膜の上流に置かれた水力学的リアクターは、このようにそれを保護することを可能にする。
【0187】
本発明に従う処理装置はまた、原子力発電プラントの1次回路の水、またはより一般的に放射性金属イオンによって汚染された水性液体を処理するために用いられうる。本発明に従う水力学的リアクター装置は実際に、この汚染物を沈殿させることおよび凝集させることを可能にし、且つその後、液体からそれを抽出することを可能にしうる。
【0188】
今やはっきりと明確であるように、発明は、添加剤に関する資源を制限することによって、例えば酸または金属イオン封鎖剤の注入によって、及び/又はシステム内でそれらの置換を制限することによって、液体を処理することを可能にする解決策を提供する。
【0189】
しかし勿論、本発明は、記載され図示された実施態様に限定されるものではない。
【0190】
特に、上に記載された水力学的リアクターについて、第1チャネルの数又は形状は、第2チャネルのそれらとは違い得る。第1ブロックの数は、第2ブロックの数と同一でもまたは違ってもよい。第1ブロックは、水力学的リアクターの軸に沿って第2ブロックと交互に必ずしも置かれない。そして複数の圧縮チェンバーの数及び形状は異なりうる。
【0191】
処理回路内の水力学的リアクターの数は制限がない。
【0192】
フィルタはまた、気泡分離機能を実行しうる。分離機およびフィルタは、場合により1の且つ同一の装置に組み合わされさえする。
【0193】
第1チャネルは、必ずしも誘電物質で作られておらず、そして第2チャネルは、必ずしも電気伝導物質で作られていない。
【0194】
第1チャネルは、第2チャネルの上流または下流でありうる。