(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469587
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】含水型貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4174 20060101AFI20190204BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20190204BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190204BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20190204BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20190204BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20190204BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20190204BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61P25/20
A61P43/00 111
A61K9/70 405
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/38
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-553566(P2015-553566)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2014083335
(87)【国際公開番号】WO2015093503
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-261118(P2013-261118)
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393028036
【氏名又は名称】丸石製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000161714
【氏名又は名称】救急薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕洋
(72)【発明者】
【氏名】野坂 宜宏
【審査官】
渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特表平05−503916(JP,A)
【文献】
特開平04−001127(JP,A)
【文献】
特開昭60−163811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)デクスメデトミジン又はその塩、(B)ポリアクリル酸又はその塩とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含む水溶性高分子、(C)グリコール類、並びに(D)高級脂肪酸アルキルエステル及び多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる脂肪酸エステルの1種又は2種以上を含有し、水を膏体中に25〜70質量%含有する含水型貼付剤。
【請求項2】
水溶性高分子の含有量が膏体中に5〜25質量%である請求項1記載の含水型貼付剤。
【請求項3】
膏体のpHが6〜7である、請求項1又は2記載の含水型貼付剤。
【請求項4】
(C)グリコール類が、プロピレングリコールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【請求項5】
(D)脂肪酸エステルが、C8−C24脂肪酸C1−C6アルキルエステル及び多価アルコールC8−C24脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【請求項6】
(D)脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピル及びモノカプリル酸プロピレングリコールから選ばれる1種又は2種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【請求項7】
(D)脂肪酸エステルが、C8−C24脂肪酸C1−C6アルキルエステルである請求項1〜6のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【請求項8】
(D)脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピルである請求項1〜7のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【請求項9】
(C)グリコール類の含有量が膏体中に10〜60質量%であり、(D)脂肪酸エステルの含有量が膏体中に0.01〜15質量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【請求項10】
該貼付剤が鎮静剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の含水型貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮静剤として有用なデクスメデトミジン又はその塩を含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デクスメデトミジン又はその塩は、α
2アドレナリン受容体のアゴニストであり、鎮静作用、鎮痛作用、交感神経抑制作用を有し、鎮静剤として用いられている。現在、日本では集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静に用いられるが、海外では広く鎮静剤、鎮痛剤として用いられている。当該デクスメデトミジンの投与形態としては、静脈内投与のみが使用されている。
【0003】
一方、デクスメデトミジンの投与形態としては、経皮吸収製剤の検討もされている。例えば、裏当て層/固定接着剤層/多孔性中間層/接触接着剤層/剥離ライナーで構成された非水系貼付剤(特許文献1)、リザーバー型貼付剤(特許文献2)、シクロデキストリン誘導体を用いた貼付剤(特許文献3)、及びデクスメデトミジンをカルボン酸との塩として配合した貼付剤(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3043064号公報
【特許文献2】特許第3011459号公報
【特許文献3】特許第3734267号公報
【特許文献4】特許第3483881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来のデクスメデトミジン含有貼付剤は、高吸収性を得るために複雑な製剤構成や放出機構を用いたり、デクスメデトミジンを特殊な塩にしている。このため、皮膚に対する刺激性やかぶれの発生等の問題が生じる可能性が高くなっていた。
従って、本発明の課題は、デクスメデトミジンの吸収性が十分に高く、かつ皮膚刺激性の少ない貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、種々の基剤を用いてデクスメデトミジン含有貼付剤を製造し、その経皮吸収性を検討してきたところ、全く意外にもデクスメデトミジン又はその塩と水溶性高分子とを配合して水を多量含有する含水型貼付剤とすれば、デクスメデトミジンの経皮吸収性に優れ、かつ皮膚刺激の少ない貼付剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕デクスメデトミジン又はその塩及び水溶性高分子を含有する含水型貼付剤。
〔2〕水溶性高分子の含有量が膏体中に5〜25質量%であり、水の含有量が膏体中に25〜70質量%である〔1〕記載の含水型貼付剤。
〔3〕水溶性高分子が、ポリアクリル酸又はその塩とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含むものである〔1〕又は〔2〕記載の含水型貼付剤。
〔4〕膏体のpHが6〜7である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の含水型貼付剤。
〔5〕さらに、多価アルコール及び脂肪酸エステル系吸収促進剤から選ばれる1種又は2種以上を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の含水型貼付剤。
〔6〕さらに、多価アルコール、高級脂肪酸アルキルエステル、二塩基酸ジアルキルエステル及び多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の含水型貼付剤。
〔7〕さらに、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、ミリスチン酸イソプロピル及びモノカプリル酸プロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の含水型貼付剤。
〔8〕該貼付剤が鎮静剤である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の含水型貼付剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貼付剤は、デクスメデトミジンの経皮吸収性に優れ、皮膚刺激性が少ないので、デクスメデトミジンの鎮静剤としての効果が長時間安定して得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の貼付剤の有効成分は、デクスメデトミジン又はその塩である。デクスメデトミジンは、化学名(+)−(S)−4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−1H−イミダゾールであり、中枢性α
2アドレナリン受容体のアゴニストである。当該デクスメデトミジンの塩としては、酸付加塩が挙げられ、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸付加塩が好ましく、特に塩酸塩が好ましい。
【0011】
デクスメデトミジン又はその塩の含有量は、経皮吸収性、皮膚刺激性、製剤安定性の点から、貼付剤の膏体中に0.1〜10質量%、さらに0.1〜7質量%であるのが好ましい。
【0012】
本発明の貼付剤に使用される水溶性高分子としては、ゼラチン、デンプン、カンテン等の水溶性天然高分子;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;アクリル酸デンプン等の加工デンプン;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸部分中和物、架橋型ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、N−ビニルアセトアミド・ポリアクリル酸ナトリウム共重合体等の水溶性合成高分子等が挙げられる。このうち、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸部分中和物、架橋型ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。これらの水溶性高分子は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
これらの水溶性高分子のうち、デクスメデトミジン又はその塩の経皮吸収性、皮膚刺激性及び製剤安定性の点から、ポリアクリル酸又はその塩とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを組み合わせて用いるのがさらに好ましい。当該ポリアクリル酸又はその塩とカルボキシメチルセルロース又はその塩のうち、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの組み合わせがさらに好ましい。ここで、ポリアクリル酸又はその塩(PA)とカルボキシメチルセルロース又はその塩(CMC)との含有質量比(PA:CMC)は、1:5〜5:1が好ましく、1:3〜3:1がより好ましく、1:2〜2:1がさらに好ましい。また、ポリアクリル酸部分中和物(PA)とポリアクリル酸ナトリウム(PANa)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)とを用いる場合、それらの含有質量比(PA+PANa):(CMCNa)は、1:5〜5:1が好ましく、1:3〜3:1がより好ましく、1:2〜2:1がさらに好ましい。
【0014】
水溶性高分子の含有量は、経皮吸収性、皮膚刺激性、製剤安定性の点から、貼付剤の膏体中に5〜25質量%、さらに5〜20質量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明の貼付剤は含水型貼付剤であり、デクスメデトミジン又はその塩の経皮吸収性及び皮膚刺激性の点から、比較的多量の水を含有することが重要である。当該水の含有量は、経皮吸収性、皮膚刺激性及び製剤安定性の点から、貼付剤の膏体中25〜70質量%、さらに30〜60質量%、さらに30〜55質量%であるのが好ましい。
【0016】
本発明の貼付剤は、デクスメデトミジン又はその塩の経皮吸収性を向上させる点から、多価アルコール及び脂肪酸エステル系吸収促進剤から選ばれる1種又は2種以上を配合するのが好ましい。
【0017】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量1000以下)、ポリプロピレングリコール(分子量1000以下)等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコールが好ましい。特に、プロピレングリコールは、膏体中でのデクスメデトミジン又はその塩の結晶化防止の点で、添加するのが好ましい。尚、後述するように製剤中でデクスメデトミジン又はその塩が結晶しても、皮膚透過性に殆ど影響しないが、製剤の外観の点から結晶は無い方が好ましい。
多価アルコールの含有量は、経皮吸収性、皮膚刺激性の点から、貼付剤中の膏体に10〜60質量%、さらに20〜55質量%、さらに25〜55質量%含有するのが好ましい。
【0018】
脂肪酸エステル系吸収促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル等の高級脂肪酸アルキルエステル(好ましくはC
8−C
24脂肪酸C
1−C
6アルキルエステル);セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル等の二塩基脂肪酸ジアルキルエステル(好ましくは二塩基酸ジC
1−C
6アルキルエステル);モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸グリセリン、モノカプリル酸テトラグリセリン、ヘキサカプリル酸ソルビタン等の多価アルコール脂肪酸エステル(好ましくは多価アルコールC
8−C
24脂肪酸エステル)等が挙げられる。
このうち、高級脂肪酸アルキルエステル、多価アルコール脂肪酸エステル、二塩基脂肪酸ジアルキルエステルが好ましく、特に高級脂肪酸アルキルエステル、多価アルコール脂肪酸エステルが好ましく、さらに高い吸収促進効果に加えて所望の鎮痛レベルを維持しやすい点でミリスチン酸イソプロピル、モノカプリル酸プロピレングリコールが好ましい。
これらの脂肪酸エステル系吸収促進剤は、添加しなくても良いが、貼付剤の膏体中に0.01〜15質量%、さらに0.1〜10質量%、さらに0.1〜5質量%含有するのが好ましい。
【0019】
これらの多価アルコール、前記吸収促進剤のうち、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、高級脂肪酸アルキルエステル及び多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましく、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、ミリスチン酸イソプロピル及びモノカプリル酸プロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。
具体的には、グリセリンと糖アルコールを組み合わせるのが好ましく、さらに、グリセリン、糖アルコール、高級脂肪酸アルキルエステルを組み合わせるのが好ましく、さらにグリセリン、糖アルコール、高級脂肪酸アルキルエステル、プロピレングリコールを組み合わせて用いるのが好ましく、さらにグリセリン、糖アルコール、高級脂肪酸アルキルエステル、多価アルコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールを組み合わせて用いるのが好ましい。ここで糖アルコールとしては、ソルビトールが特に好ましい。また、高級脂肪酸アルキルエステルとしては、ミリスチン酸イソプロピルが特に好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、モノカプリル酸プロピレングリコールが特に好ましい。ここで多価アルコール脂肪酸エステルを配合すると、貼付剤の長期保存安定性が向上する。
【0020】
なお、本発明の貼付剤には、他の吸収促進剤を配合することもできる。その吸収促進剤としては、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等C
8〜C
18脂肪酸;カプリルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等のC
8〜C
18高級アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキル硫酸塩、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0021】
本発明の貼付剤には、前記成分の他、架橋剤、pH調整剤、キレート剤、界面活性剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0022】
架橋剤は、水溶性高分子を架橋してゲルを形成する成分であり、アルミニウム化合物が好ましい。当該アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミナマグネシウム、硫酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、経皮吸収性及び製剤安定性の点から、貼付剤の膏体中に0.001〜1質量%、さらに0.01〜1質量%含有するのが好ましい。
【0023】
pH調整剤としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、酢酸及びこれらの塩等が用いられる。pH調整剤の含有量は、貼付剤の膏体中に0.001〜1質量%、さらに0.01〜1質量%が好ましい。デクスメデトミジン又はその塩の経皮吸収性を高める上で、含水型貼付剤の膏体pHが、6〜7になるようにするのが好ましい。
【0024】
キレート剤としては、エデト酸(EDTA)ナトリウム、グルコノデルタラクトン、メタリン酸ナトリウム等のポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。キレート剤の含有量は、貼付剤の膏体中に0.001〜1質量%、さらに0.01〜1質量%が好ましい。
【0025】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、添加しなくても良いが、貼付剤の膏体中に0.01〜5質量%、さらに0.01〜3質量%含有するのが好ましい。
【0026】
その他の添加剤としては、アクリル共重合体(メ
タクリル酸・アクリル酸・
nブチルコポリマー、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシルコポリマー)、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、賦形剤(カオリン、無水ケイ酸、酸化チタン、タルク等)、香料、着色剤、油成分(クロタミトン、ヒマシ油)等が挙げられる。
【0027】
本発明の含水型貼付剤は、通常、前記成分を含有する膏体を支持体上に塗工し、その膏体面には被覆フィルム(剥離シート)を付着させて製造される。
【0028】
支持体としては、水不透過性の支持体が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムに不織布をラミネートしたものが好ましい。
【0029】
被覆フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム及びポリエステルフィルムが用いられる。またこれらのフィルムには、シリコン剥離処理、放電コロナ処理及び、エンボス処理を施してもよい。
【0030】
膏体の塗布量は、40〜400g/m
2が好ましく、50〜300g/m
2がさらに好ましい。
【0031】
本発明の貼付剤のサイズは10〜100cm
2の大きさで、方形、円形、楕円形等の形状とするのが好ましい。
【0032】
本発明の含水型貼付剤は、貼付剤であることから一定量のデクスメデトミジン又はその塩を、貼付等の際に、手を汚すことなく簡便に投与することができる。さらに、デクスメデトミジン又はその塩の有効量を含有し、皮膚刺激性が少なく、経皮吸収性が良好なので、静脈内投与を行わなくても、1日1〜3回貼りなおすことによって、連日持続的な効果が期待でき、所望の鎮静レベルに早く到達し、安定した鎮静作用を得ることができる。
尚、安定した鎮静作用は、RASS(Richmond Agitation−Sedation Scale)に準じて評価するとき、スコア0〜−2の鎮静レベルを得ることが出来ることをいう。
安定した鎮静効果を速やかに得るために、本発明の含水型貼付剤の経皮吸収速度は、ヘアレスマウス腹部摘出皮膚を用いて評価するとき、デクスメデトミジン塩酸塩の皮膚透過速度が3.40μg/cm
2/hr以上、さらに4.45μg/cm
2/hr以上であるのが好ましい。また、ヒトでの経皮吸収速度は0.2μg/kg/hr以上であるのが好ましい。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1〜10
表1〜表3の処方に従い、含水型貼付剤を製造した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
(1)精製水にゼラチン、酒石酸、エデト酸ナトリウム及びデクスメデトミジン塩酸塩を加え溶解した。この液に、別に、多価アルコールにポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート及び必要に応じミリスチン酸イソプロピル、ポリソルベート80、モノカプリル酸プロピレングリコールを加えて分散したものを加え、攪拌し膏体を製した。
(2)膏体を支持体上に、膏体の塗布量が160g/m
2となるように展延し、さらに粘着面をシリコン剥離処理したポリエステルフィルムで覆った後、所定の大きさに裁断し、デクスメデトミジンの含水型貼付剤を得た。
(3)支持体にはポリエステルフィルムにポリエステル不織布を積層したものを用いた。
【0039】
試験例1<皮膚透過試験>
試験方法
ヘアレスマウス(7週齢、オス)の腹部摘出皮膚を、ウォータージャケット付き横型拡散セルに装着した。角質層側には所定の貼付剤を適用し、レシーバー側にはpH6.8のリン酸緩衝液2.5mLを適用した。ウォータージャケットには32℃の温水を循環させ一定温度に保った。レシーバー側溶液を、攪拌子で攪拌しながら経時的にレシーバー側の液0.5mLを採取し試料溶液とした。尚、レシーバー液採取後直ちに、新しいリン酸緩衝液0.5mL補液をした。試料溶液中のデクスメデトミジン塩酸塩の量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量し、製剤からレシーバー側へのデクスメデトミジン塩酸塩の累積透過量を求めた。また、デクスメデトミジン塩酸塩の累積透過量の経時変化から、試験開始後6〜9時間目のデクスメデトミジン塩酸塩の透過速度を計算した。結果を表4〜表6に示す。
さらに、表4〜表6には、各製剤のpHを記載した。製剤のpHは膏体1質量部を精製水9質量部に加温溶解し、溶解液が20〜25℃になった後pHメーターを用いて測定した。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
表4〜表6の結果より、デクスメデトミジン又はその塩は、水溶性高分子を配合し、かつ水分量の多い含水型貼付剤とすることにより、経皮吸収性が良好になることが判明した。また、多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール)又は/及び高級脂肪酸アルキルエステル(ミリスチン酸イソプロピル)を配合することにより、経皮吸収性が向上することも判明した。なお、上記実施例1〜10の貼付剤は、皮膚刺激性がなく、安定であることも確認した。
【0044】
試験例2(皮膚透過速度及び長期安定性)
実施例1、6、8、9及び10の含水型貼付剤を製造し、長期保存安定性(結晶の析出の有無及びデクスメデトミジン塩酸塩の安定性)を評価した。また、実施例1の含水型貼付剤については、試験例1と同様にして長期保存後の皮膚透過試験も行った。
【0045】
(結晶の確認方法)
製剤(10cm
2)をアルミ袋に包装し、室温で8ヶ月保管した後の、製剤中のデクスメデトミジン塩酸塩の結晶の有無を目視確認し、下記のスコアにしたがって評価する。
【0046】
【表7】
【0047】
(デクスメデトミジン塩酸塩の安定性試験)
製剤1枚(10cm
2、デクスメデトミジン塩酸塩として160mg)をアルミ袋に包装し、60℃で3週間保管した。保管後の製剤中のデクスメデトミジン塩酸塩をメタノールで加熱還流抽出した。抽出液中のデクスメデトミジン塩酸塩の量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量し、イニシャル値に対する、保管後のデクスメデトミジン塩酸塩の残存率(%)を求めた。
【0048】
【表8】
【0049】
【表9】
【0050】
表8より、多価アルコール脂肪酸エステルも添加することにより長期間保存しても結晶の析出がなく、安定性が向上することがわかる。また、表9より、長期保存により結晶が析出した貼付剤であっても、デクスメデトミジン塩酸塩の皮膚透過速度にはほとんど影響しないことがわかる。但し、製剤の外観上、結晶の析出は無い方が好ましい。