特許第6469591号(P6469591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッドの特許一覧

特許6469591血液凝固第VII因子を含有する組成物におけるウイルス不活性化法
<>
  • 特許6469591-血液凝固第VII因子を含有する組成物におけるウイルス不活性化法 図000003
  • 特許6469591-血液凝固第VII因子を含有する組成物におけるウイルス不活性化法 図000004
  • 特許6469591-血液凝固第VII因子を含有する組成物におけるウイルス不活性化法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469591
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】血液凝固第VII因子を含有する組成物におけるウイルス不活性化法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/04 20060101AFI20190204BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20190204BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20190204BHJP
   C12N 9/48 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   C12N7/04ZNA
   C12N15/57
   A61K38/36
   A61P7/04
   !C07K14/745
   !C12N9/48
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-555914(P2015-555914)
(86)(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公表番号】特表2016-510216(P2016-510216A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】KR2014000898
(87)【国際公開番号】WO2014119953
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0011472
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】キム デジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン サンユン
(72)【発明者】
【氏名】チェ イニョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン セチャン
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−528850(JP,A)
【文献】 特表2002−518411(JP,A)
【文献】 特表2007−537994(JP,A)
【文献】 特表2009−525724(JP,A)
【文献】 特表2004−529640(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/082931(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/027257(WO,A2)
【文献】 国際公開第2013/051900(WO,A2)
【文献】 Medical Journal of the Islamic Republic of Iran,2001年,Vol.15, No.2,pp.103-108
【文献】 SUPEROXIDE DISMUTASE 1, PARTIAL [HOMO SAPIENS],Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accessin No. ABL96474, 26-DEC-2006 uploaded, [retrieved on 2017-12-12] ,<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/119710570?sat=14&satkey=3129478>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
C12N 1/00 − 9/99
A61K 38/00 − 51/12
C07K 1/00 − 19/00
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液凝固第VII因子誘導体を含む組成物に界面活性剤を加える段階を含む、ウイルス不活性化法であって、
前記血液凝固第VII因子誘導体は、血液凝固第VII因子のC-末端に、配列番号3及び6〜12からなる群より選択される1つのペプチド配列を有するペプチドリンカーが連結された形態である、ウイルス不活性化法。
【請求項2】
前記組成物中における活性化された血液凝固第VII因子誘導体の含量が、血液凝固第VII因子誘導体の総量に対して5%未満である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が液状組成物である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記液状組成物がpH5.0〜8.0である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が4〜25℃の温度である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物中の血液凝固第VII因子誘導体の濃度が、0.01mg/mL〜5.0mg/mLである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、トゥイーン、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマ188、トリトンX-100及びその組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤は、最終濃度が0.01〜1.00%(w/v)になるように加える、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤は、最終濃度が0.1〜0.5%(w/v)になるように加える、請求項に記載の方法。
【請求項10】
血液凝固第VII因子誘導体を含む組成物に界面活性剤を加えることを含む、血液凝固第VII因子誘導体を含むウイルス不活性化組成物の製造方法であって、
前記血液凝固第VII因子誘導体は、血液凝固第VII因子のC-末端に、配列番号3及び6〜12からなる群より選択される1つのペプチド配列を有するペプチドリンカーが連結された形態である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固第VII因子を含有する組成物におけるウイルス不活性化法に関するもので、より具体的には、血液凝固第VII因子又はその誘導体を含有する組成物に界面活性剤を加える段階を含むウイルス不活性化法、及び血液凝固第VII因子又はその誘導体を含むウイルスが不活性化された組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な血友病患者は14万人と推定されており、毎年20%の増加傾向を示している。遺伝的に、1万人に一人の割合で血友病が発症しているが、全患者の約25%しか診断又は治療を受けていない。前記血友病は病因により大きく2つのタイプに分けられる。一方は、血液凝固第VII因子(第VII因子、FacVII)の欠乏により発病する血友病Aであり、全血友病患者の80%を占める。他方は、血液凝固第XI因子(第XI因子)の欠乏により発病する血友病Bであり、全血友病患者の20%を占める。このような血友病の治療のために、血液凝固因子を外部から投与する方法が行われているが、このような治療法は、全血友病A患者の10〜15%で血液凝固因子に対する抗体が生成され、全血友病B患者の1〜3%で血液凝固因子に対する抗体が生成されるという問題がある。
【0003】
一方、血友病患者の半分以上を占める血友病Aの病因であるFacVIIは、主に肝臓で生産される406個のアミノ酸からなる酵素であって、10位のグルタミン酸がγ-カルボキシ化、145位と322位のアスパラギンがN-グリコシル化、及び52位と60位のセリンがO-グリコシル化されていることを含む。さらに、FacVIIは、2つのEGF様ドメイン及び1つのセリンプロテアーゼドメインを有し、152位のアルギニンと153位のイソロイシン間の開裂によって軽鎖と重鎖からなる二本鎖のFacVIIaが生成され、一本鎖FacVIIが活性化する。よって、活性型FacVIIaは、他の血液凝固因子とは異なる補助的な血液凝固機序を通じて作用するため、FacVIIaの高用量投与でも抗体が生成されない。従って、従来の治療により、FacVIIに対する抗体を有する患者だけでなく、血友病A患者の治療にも用いることができ、前記問題の解決手段として知られている。
【0004】
しかし、動物細胞を用いたFacVII組換え体の生産ではウイルスによる汚染のリスクが高いため、FacVII生産の工程では、潜在的なウイルスの除去工程を含むことが求められている。ウイルスによる汚染を不活性化させる工程を経た組成物では、不活性化以前の初期組成物に比べてFacVIIの力価が低いという問題が頻繁に発生する。
【0005】
このような背景の下、本発明者らは、FacVII又はそのアミノ酸配列を有するFacVII誘導体を含む組成物において、FacVIIの力価を低下させることなく、ウイルスを効果的に不活性化させた組成物を開発するために鋭意努力した。その結果、FacVIIを含む組成物に界面活性剤を加えた場合、FacVII又はその誘導体の活性に影響を及ぼさず、汚染されたウイルスを不活性化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公報第10-2013-0037659号
【特許文献2】韓国特許公報第880509号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Urlaub et al., Somat. Cell. Mol. Genet., 12, 555-566, 1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、血液凝固第VII因子(第VII因子、FacVII)又はその誘導体を含む組成物におけるウイルス不活性化法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、血液凝固第VII因子又はその誘導体を含むウイルスが不活性化された組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための一態様として、本発明は、血液凝固第VII因子(第VII因子、FacVII)又はその誘導体を含む組成物に界面活性剤を加える段階を含む、ウイルス不活性化法を提供する。
【0011】
具体的な一実施態様として、本発明による組成物において活性化された血液凝固第VII因子又はその誘導体の含量は、全血液凝固第VII因子又はその誘導体に対して5%未満である。
【0012】
他の実施態様として、本発明による組成物は液状組成物である。
【0013】
他の実施態様として、本発明による液状組成物はpH5.0〜8.0である。
【0014】
他の実施態様として、本発明による液状組成物はpH5.5である。
【0015】
他の実施態様として、本発明による組成物は4〜25℃の温度を有する。
【0016】
他の実施態様として、本発明による組成物における血液凝固第VII因子又はその誘導体の濃度は、0.01mg/mL〜5.0mg/mLである。
【0017】
他の実施態様として、本発明の方法で用いられた界面活性剤は、トゥイーン、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマ188、トリトンX-100、及びその組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0018】
他の実施態様として、前記界面活性剤を、最終濃度が0.01〜1.00%(w/v)になるように本発明の組成物に加えることである。
【0019】
他の実施態様として、前記界面活性剤を、最終濃度が0.1〜0.5%(w/v)になるように本発明の組成物に加えることである。
【0020】
他の実施態様として、本発明の方法で用いた血液凝固第VII因子誘導体は、血液凝固第VII因子のC-末端にペプチドリンカーが連結されることによって製造したものである。
【0021】
他の実施態様として、血液凝固第VII因子誘導体におけるペプチドリンカーは、C-末端の最後のアミノ酸残基としてシステインを有するものである。
【0022】
他の実施態様として、血液凝固第VII因子のC-末端に連結されたペプチドリンカーが、配列番号3及び6〜12からなる群より選択される1つのペプチド配列を有するものである。
【0023】
他の実施様態として、本発明は、血液凝固第VII因子又はその誘導体を含有する組成物に界面活性剤を加える段階を含む、血液凝固第VII因子又はその誘導体を含有するウイルス不活性化組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により提供されたウイルス不活性化法を用いると、FacVII又はFacVII誘導体の活性を維持しつつ、FacVII及びそのアミノ酸配列を有する誘導体を含有する溶液中のウイルスを不活性化させることができる。従って、このような方法は、血友病の予防又は治療剤の効果的な生産に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】FacVII誘導体を、CHO細胞株を用いて発現させた後、精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後において純度を分析した結果を表す電気泳動の画像である。サイズマーカーを基準に左側は、非還元条件下におけるFacVII誘導体の純度分析の結果を示し、サイズマーカーを基準に右側は、還元条件下におけるFacVII誘導体の純度分析の結果を示す。
図2】FacVII誘導体を、CHO細胞株を用いて発現させた後、精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後において活性を分析した結果を表すグラフである。丸(○)は、ウイルス不活性化前のFacVII誘導体の活性を示し、四角(□)は、ウイルス不活性化後のFacVII誘導体の活性を示す。
図3】FacVII誘導体を、CHO細胞株を用いて発現させた後、精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後において純度を分析した結果を表す電気泳動分析の画像である。サイズマーカーを基準に左側の写真は、非還元条件下におけるFacVIIの純度分析の結果を示し、右側の写真は、還元条件下におけるFacVIIの純度分析の結果を示す。図3の点線の四角い部分は、ウイルス不活性化工程により生成されたFacVIIaを表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、血液凝固第VII因子(第VII因子、FacVII)又はその誘導体を含有する組成物に界面活性剤を加える段階を含むウイルスの不活性化法、又は血液凝固第VII因子又はその誘導体を含有するウイルス不活性化組成物の製造方法に関するものである。
【0027】
本発明における用語「血液凝固第VII因子(第VII因子、FacVII)」とは、プロコンバーチンとも言う、血液凝固に関与する因子の一つであって、大きさは48kDaで、大きさ12.8kbの遺伝子によりコードされる。主に、肝臓で生産されるビタミンK依存性血漿タンパク質の一つである。第VII因子は、セリンプロテアーゼ前駆体及び平滑筋細胞のような血管外組織、腫瘍組織又は活性化した白血球の表面の組織因子(血液凝固第III因子)に結合して血液凝固第IX因子及びXを活性化することによって、外因性血液凝固の開始を誘導することが知られている。本発明において、FacVIIは、天然型FacVIIの正常な活性を保持しつつ、天然型FacVII、天然型FacVIIの正常な活性を保持する化学的に修飾されたFacVII誘導体、及び少なくとも80%のアミノ酸配列相同性を有し、好ましくは85%、90%又は95%のアミノ酸配列相同性を有し、より好ましくは98%又は99%のアミノ酸配列相同性を有する変異体であってもよい。しかし、前記配列相同性は、本発明の方法に適用できるものであれば、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明における用語「血液凝固第VIIa因子(第VIIa因子、FacVIIa)」とは、血液凝固第VII因子の活性型を意味する。FacVIIの活性において、重鎖の活性部位は、FacVIIの152位のアルギニンと153位のイソロイシン間の開裂により露出し、それによって、1つのアミノ酸配列からなるFacVIIから2つのアミノ酸配列(軽鎖及び重鎖)からなる二量体の形態が生成される。この際、152位のアルギニン残基と153位のイソロイシン残基は、最初に発現したFacVIIポリペプチドにおけるプロセッシングの結果によるシグナルペプチド及びプロペプチド(プレ-プロリーダー配列とも言う)を除いて、FacVII軽鎖の1番目のアミノ酸を1位のアミノ酸として番号づけたものである。活性型FacVIIaは、他の血液凝固因子とは異なり補助的な血液凝固機序を通じて作用するため、FacVIIaの高用量投与でも抗体が生産されない。
【0029】
本発明における用語「FacVII誘導体」とは、FacVIIのC-末端にペプチドリンカーが連結されることにより製造されたポリペプチド配列からなる改変されたFacVIIを意味する。前記FacVII誘導体は、ペプチド結合を介してFacVIIのC-末端にペプチドリンカーが連結されることにより製造された形態であってもよく、この形態は、融合タンパク質の形態を有する。本発明において、前記FacVII誘導体は、特定の方法によって活性化される際に前述のとおり二量体の形態を有する。
【0030】
本発明における用語「ペプチドリンカー」とは、FacVIIのC-末端に連結されるペプチドであって、血中半減期を延長できる担体を連結する機能を持つ。特に、ペプチドリンカーは、C-末端にシステインを有するペプチドであってもよい。
【0031】
前記ペプチドリンカーの例としては、ATKAVC(配列番号3)、GGGGSC(配列番号6)、SOD1(配列番号7)の1〜149位のアミノ酸配列、変異型SOD1(配列番号8)の1〜149位のアミノ酸配列、SOD1(配列番号9)の1〜90位のアミノ酸配列、変異型SOD1(配列番号10)の1〜90位のアミノ酸配列、SOD1(配列番号11)の1〜25位のアミノ酸配列及び変異型SOD1(配列番号12)の1〜25位のアミノ酸配列を含んでもよいが、特に、これらに限定されるものではない。
【0032】
さらに、前記FacVII誘導体は、FacVII誘導体のC-末端にATKAVC(配列番号3)が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号13)、FacVII誘導体のC-末端にGGGGSC(配列番号6)が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号14)、FacVII誘導体のC-末端にSOD1(配列番号7)の1〜149位のアミノ酸配列が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号15)、FacVII誘導体のC-末端に変異型SOD1(配列番号8)の1〜149位のアミノ酸配列が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号16)、FacVII誘導体のC-末端にSOD1(配列番号9)の1〜90位のアミノ酸配列が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号17)、FacVII誘導体のC-末端に変異型SOD1(配列番号10)の1〜90位のアミノ酸配列が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号18)、FacVII誘導体のC-末端にSOD1(配列番号11)の1〜25位のアミノ酸配列が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号19)、FacVII誘導体のC-末端に変異型SOD1(配列番号12)の1〜25位のアミノ酸配列が連結されることにより製造されたポリペプチド(配列番号20)などであってもよいが、特に、これらに限定されるものではない。さらに、本発明のFacVII又はその誘導体と関連して、特許文献1の明細書の全体がその参考資料として含まれる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前述のFacVII又はその誘導体を含み、好ましくは、FacVII又はその誘導体の総量に対して活性化されたFacVII又はその誘導体を5%未満の量で含む組成物に界面活性剤を適用する場合、前記組成物中に含まれるウイルスを効果的に不活性化することができ、FacVIIaにおける工程で生産される不純物を防ぎ、及び前記組成物中に含まれるFacVIIaの力価をウイルス不活性化の前とほとんど同程度にすることができる。
【0034】
本発明における用語「FacVII又はその誘導体を含む組成物」とは、界面活性剤を処理する対象となるFacVII又はその誘導体を含む物質を意味する。好ましくは、前記組成物は、液状組成物であってもよい。
【0035】
本発明者らは、FacVII活性化の特徴を考察し、ウイルス不活性化組成物に含まれるFacVIIaの力価を低下させることなく、FacVII又はその誘導体を含む溶液中におけるウイルス不活性化工程を開発した。FacVIIは、軽鎖と重鎖が相互連結された単鎖構造を持つため、重鎖のN-末端は露出しておらず、軽鎖のN-末端のみが露出している。FacVIIがFacVIIaに転換されると、重鎖の活性部位が、FacVIIの152位のアルギニンと153位のイソロイシン間の開裂によって露出し、FacVIIの露出した153位のイソロイシンは、重鎖のN-末端の1位のアミノ酸になる。軽鎖と重鎖のN-末端は、FacVIIaの活性化に重要であるため、FacVIIaの活性は、軽鎖又は重鎖のN-末端が影響を受ける場合、FacVIIaの活性は、天然型FacVIIaに比べて低下することがある。さらに、FacVIIaが強いセリンプロテアーゼ活性を示すため、FacVIIaの活性に重要な部位がウイルス不活性化工程中に開裂され、自己開裂型のような不純物が簡単に発生しやすい。
【0036】
従って、本発明者らは、活性型FacVIIa又はその誘導体が非活性型FacVII又はその誘導体より高い比率で存在する組成物をウイルス不活性化工程に適用せず、代わりに、非活性型FacVII又はその誘導体が活性型FacVIIa又はその誘導体より高い比率で存在する組成物を、ウイルス不活性化工程に適用することで、非活性型ウイルス組成物におけるFacVIIaの不純物及びFacVIIaの力価の低下を予防できることを確認した。
【0037】
従って、FacVIIを含む組成物に界面活性剤を処理し不活性化させる場合、活性化されていないFacVII又はその誘導体が、活性化されたFacVII又はその誘導体より高い割合、好ましくは、95%以上の割合で存在する組成物に界面活性剤を処理することが、ウイルス不活性化の後に組成物の力価を維持させる上で利点である。従って、前記FacVIIa又はその誘導体は、組成物中に5%未満の割合で存在することが好ましい。
【0038】
さらに、意図的ではない不活性化によるFacVIIのFacVIIaへの転換を防ぐために、前記組成物をpH8.0以下、好ましくはpH5.0〜8.0、より好ましくはpH5.0〜pH5.5、及び25℃以下、好ましくは4〜25℃、より好ましくは4〜10℃の温度に維持する。
【0039】
さらに、前記組成物は、FacVII又はその誘導体を0.01〜5.0mg/mLの濃度で含んでもよく、0.01〜1.0mg/mLの濃度であることが好ましい。
【0040】
FacVII又はその誘導体を含む前記組成物は、FacVII又はその誘導体を生産する細胞、例えば、FacVII又はその誘導体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換された形質転換体又は/及びその培養液から培養上清液を取得し、その後、ろ過又は/及びクロマトグラフィー(アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等)のような一つ以上の精製段階を通じて細胞上清液を精製することによって製造することができる。一方、前記細胞は、FacVII又はその誘導体を生産できるものであれば、特に、特別な種類に限定されない。当業界に公知の適切な細胞を用いてもよく、例えば、動物細胞、植物細胞、原核細胞、昆虫細胞などを用いてもよい。動物細胞が好ましく、その例としては、CHO細胞などであるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明における用語「ウイルス不活性化」とは、FacVII又はその誘導体を含む組成物におけるウイルス感染力、すなわち、感受性細胞との細胞接触によるウイルスの増殖可能性が除去されたり、弱まることを意味する。本発明において、前記ウイルス不活性化は、界面活性剤の処理により効果的に行われる。
【0042】
本発明における用語「界面活性剤」とは、表面活性剤とも言い、一般的に一つの分子中に疎水基及び親水基を有する両親媒性化合物であって、希釈液中で界面に吸着し表面張力を低下させる物質を意味する。前記界面活性剤は、水溶液がイオン化するか否かによってイオン界面活性剤と非イオン界面活性剤に分けられ、イオン界面活性剤は、水溶液中のイオン性によって界面活性剤の主成分として陰イオンを有する陰イオン界面活性剤、界面活性剤の主成分として陽イオンを有する陽イオン界面活性剤、及び界面活性剤の主成分として陰イオンと陽イオンを両方有する双性イオン界面活性剤に分けられる。前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールなどを含み、前記陰イオン界面活性剤は、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩などを含み、前記陽イオン界面活性剤は、高級アミンハロゲン化合物、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などを含み、及び前記双性イオン界面活性剤は、アミノ酸などを含む。一般的に、前記界面活性剤は、洗浄力、乳化力、分散力、浸透力及び泡立て力などの機能を有する。このような特性により、洗浄剤、繊維製品処理剤、乳化剤、浮選剤、セメント用発泡剤、潤滑油添加剤、殺菌剤、色素分散剤などとして広く用いられている。本発明の目的と関連して、前記界面活性剤は、ウイルスを除去するための殺虫剤として用いられており、適切な界面活性剤は、トゥイーン、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマ188、トリトンX-100などを含んでもよく、好ましくはトリトンX-100であるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0043】
ウイルス不活性化のために、前記界面活性剤を最終組成物の全体積に対して0.01〜1.00重量%で加え、好ましくは0.01〜0.5重量%で加えることである。
【0044】
本発明の一実施態様では、代表的なFacVII誘導体であるFacVIIのC-末端にATKAVCペプチドが連結されることにより製造されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入されたCHO細胞で前記FacVII誘導体を生産し、培養上清液は、前記細胞培養液から取得した後精製し、FacVIIを含む組成物を製造した(実施例1)。さらに、界面活性剤のトリトンX-100を0.2%(w/v)濃度でpH5.5の組成物に加えて4℃で反応させ、ウイルス不活性化を行った(実施例2)。次に、ウイルス不活性化によりFacVII誘導体の純度が変化するか否かを検討した。その結果、不活性化する前と不活性化した後において活性型FacVIIaのバンドは観察されず、特に、不活性化した後にも自己開裂型は観察されなかった(実施例3及び4)。さらに、界面活性剤のトリトンX-100を0.1〜0.5%(w/v)濃度でpH5.5のFacVIIを含む組成物に加えて4℃で反応させ、ウイルス不活性化を行った。その結果、前記の全試料において活性型FacVIIa又は自己開裂型のバンドは観察されなかった。さらに、界面活性剤のトリトンX-100を0.1〜0.5%(w/v)の濃度でpH8.0のFacVIIを含む組成物に加えて4℃で反応させ、ウイルス不活性化を行った。その結果、活性型FacVIIa又は自己開裂型のバンドは、0.1〜0.2%(w/v)トリトンX-100の低濃度条件では観察されなかったが、0.5%(w/v)トリトンX-100を組成物に加えた場合には、前記活性型FacVIIaが観察された(実施例5及び6)。
【0045】
前記結果より、ウイルス不活性化の前後における組成物の力価を比較分析すると、ウイルス不活性化の前後において力価がほとんど同様であることを示す。これらの結果より、本発明の方法は、分解又は変形されやすいことが知られているFacVII又はその誘導体を含む組成物に適用しても、タンパク質構造にダメージを与えず、力価を低下させることなく、ウイルスを効果的に不活性化させることを示す。
【0046】
以下、本発明を、実施例を参考にしてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、単に目的を例示するためのものであり、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1:FacVII誘導体の製造
実施例1−1:FacVII遺伝子を含む発現ベクターの製造
まず、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、シグナル配列を含むヒト第VII因子の遺伝子を取得した。第VII因子(FacVII)遺伝子の増幅のために、ヒト胎児肝cDNAライブラリー(TAKARA BIO USA)を鋳型として用い、下記配列番号1及び2のフォワードプライマーとリバースプライマーを用いてPCRを行った(95℃で1分間変性;30サイクル(95℃で30秒、60℃で30秒及び68℃で90秒);68℃で5分)。この際、クローニングを容易にするために、BamHI制限酵素認識部位を配列番号1のプライマーに挿入し、XhoI制限酵素認識部位を配列番号2のプライマーに挿入した。引き続き、PCRにより得られたおよそ1.3kbのPCR産物のヌクレオチド配列を調べた。

VII BHISS F:5'-cccggatccatggtctcccaggccctcaggctcc-3'(配列番号1)

VII XhoIAS R:5'-gggctcgagctagggaaatggggctcgcagg-3'(配列番号2)
【0048】
CMVプロモーターの調節の下、得られたPCR産物を発現させるために、動物細胞の発現ベクターpX0GCにクローニングした。前記pX0GCベクターは、一つ以上のCCGCCC反復配列が除去されたDHFRプロモーターを含み、それに作動可能に連結されたDHFRをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターである(特許文献2)。具体的には、前記PCR産物は、制限酵素のBanHIとXhoIを用いて37℃で2時間ダイジェストし、PCR精製キット(Qiagen、USA)を用いて開裂したDNA断片を取得した。前記DNA断片を、制限酵素のBanHIとXhoIで処理したpX0GCベクターと混合し、T4 DNAリガーゼを用いてクローニングしてFacVII遺伝子(pX0GC-FVII)を含む発現ベクターを製造した。
【0049】
実施例1−2: 組み換えFacVII誘導体発現ベクターのpX0GC-FVII-ATKAVCの製造
実施例1−1で製造した発現ベクターpX0GC-FVIIに含まれるFacVII遺伝子の3-'末端におけるSOD1配列(ATKAVC、配列番号3)の1〜6位の配列をコードするポリヌクレオチドを有するポリヌクレオチドをさらに含む組み換えFacVII誘導体の発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCを製造した。詳しくは、前記発現ベクターpX0GC-FVIIを鋳型として用い、下記配列番号4及び5のフォワードプライマーとリバースプライマーを用いてPCRを行った(95℃で1分間変性;30サイクル(95℃で60秒、60℃で60秒及び68℃で90秒);68℃で5分)。この際、クローニングを容易にするために、EcoRI制限酵素認識部位を配列番号4のプライマーに挿入し、XhoI制限酵素認識部位を配列番号5のプライマーに挿入した。引き続き、PCRにより得られたおよそ1.4kbのPCR産物のヌクレオチド配列を確認した。

FVII EcoRISS F:5'-ccggaattcatggccaacgcgttcctggaggagctgcggccgggc-3'(配列番号4)

F VII #1XhoIAS R:5'-ccgctcgagtcagcacacggccttcgtcgcgggaaatggggctcgcaggaggactcctgggc-3'(配列番号5)
【0050】
CMVプロモーターの調節の下、得られたPCR産物を発現させるために、動物細胞の発現ベクターpX0GCにクローニングした。具体的には、前記PCR産物は、制限酵素のEcoRIとXhoIを用いて37℃で2時間ダイジェストし、PCR精製キットを用いて開裂したDNA断片を取得した。前記DNA断片を、制限酵素のBanHIとXhoIで処理したpX0GCベクターと混合し、T4 DNAリガーゼを用いてクローニングし、FacVII遺伝子の3'-末端に連結されたSOD1配列の1〜6位の配列ATKAVC(配列番号3)をコードするヌクレオチドを含むFacVII誘導体をコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクター(pX0GC-FVII-ATKAVC)を製造した。
【0051】
実施例1−3:CHO細胞株におけるFacVII誘導体(pX0GC-FVII-ATKAVC)の発現
実験例2−1で製造した前記発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCを、DHFRの欠損により不完全なDNA合成を示すDG44/CHO細胞株(CHO/dhfr-)(非特許文献1)に導入して形質転換体を取得し、前記形質転換体からFacVII-ATKAVC誘導体を発現させた。
【0052】
具体的には、前記DG44/CHO細胞株が80〜90%コンフルエンスに達するまで培養し、前記細胞をOpti-MEM(Gibco、カタログ番号51985034) で3回洗浄した。
【0053】
一方、3mLのOpti-MEMと5μgの発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCの混合物、及び3mLのOpti-MEMと20μLのリポフェクタミン(Gibco、カタログ番号18324-012)の混合物をそれぞれ室温で30分間静置した。引き続き、前記混合物を混合し、培養したDG44/CHO細胞株に加えた。その後、前記細胞を37℃、5%CO2で約18時間培養することで、DG44/CHO細胞株に発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCを導入した。引き続き、前記培養した細胞を10%FBSを含むDMEM-F12(Gibco、カタログ番号11330)で3回洗浄した後、前記培地を加え、48時間培養した。前記培養した細胞をトリプシン処理により分離し、選択培地を含まず(HTサプリメント(ヒポキサンチン-チミジン)10%FBS及び1mg/mLのG418(Cellgro、カタログ番号61-234-RG)を含むMEM-α培地(WELGENE社、カタログ番号LM008-02)に接種した。前記形質転換された細胞が生き残ってコロニーを形成するまで、前記培地を2日又は3日毎に選択培地に交換した。従って、前記形質転換された細胞を前記分離した細胞から選抜した。この際、選抜された形質転換細胞におけるFacVII-ATKAVC誘導体の発現レベルを増加させるために、10nMのMTX(シグマ、カタログ番号M8407)を選択培地に加えてその濃度を徐々に増やし、2〜3週間後にはMTXの含量を30nMまで増加させた。
【0054】
実施例1−4:FacVII-ATKAVCの精製
実施例1−3で製造した形質転換体を培養してFacVII-ATKAVCを発現させ、前記培養液を3000rpmで5分間遠心分離し培養上清液を取得した。
【0055】
前記培養上清液を0.2μmのマイクロフィルターを用いてろ過し、0.6Mの硫酸アンモニウムを加えた。前記結果物をブチルHPカラムに供し、0.6〜0Mの硫酸アンモニウムを含む濃度勾配緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5)を用いて溶出し、FacVII-ATKAVCを含む活性分画を取得した。
【0056】
前記取得した活性分画の緩衝液の条件を10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)に変えた後、ヘパリンHPカラムに供した。その後、0〜1.0MのNaCl濃度勾配緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム、pH7.0)を用いて溶出し、FacVII-ATKAVCを含む活性分画を取得した。
【0057】
前記活性分画を濃縮した後、Superdex75カラムに供した後、150mMのNaCl、20mMのTris-HCl(pH7.5)緩衝液を用いて溶出し、FacVII-ATKAVCを含む活性分画を取得した。前記取得した活性分画の緩衝液の条件を、2mMのベンズアミジン、20mMのTris-HCl(pH7.5)緩衝液)に変えた後、Q FFカラムに供した。その後、洗浄(2mMのベンズアミジン、0.2MのNaCl、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)、再平衡化(2mMのベンズアミジン、0.1MのNaCl、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)、及び濃縮勾配溶出(2mMのベンズアミジン、25mMのNaCl、35mMのCaCl2、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)し、FacVII-ATKAVCを精製した。
【0058】
実施例2:FacVII誘導体を含む溶液のウイルス不活性化
実施例1で精製した前記FacVII誘導体を、最終緩衝液(10mMのNaAc(pH5.5)、0.02%プルロニックF-68.5%マンニトール、0.01%L-メチオニン、50mMのNaCl)に、限外濾過(ペリコンXL、PLCGC 10 50cm2、ミリポア)及び血液透析濾過により最終濃度が0.46mg/mLになるように溶解した。ウイルスの不活性化のために、界面活性剤のトリトンX-100を0.2%(w/v)の濃度でサイズ排除クロマトグラフィーにより純度97%以上のFacVII誘導体を含む溶液に加え、4℃で30分間ゆっくり攪拌した。
【0059】
実施例3:ウイルスが不活性化されたFacVII誘導体における純度分析
実施例2でウイルス不活性化を経たFacVII誘導体の純度をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した(図1)。図1は、CHO細胞株を用いて発現させた後精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後において純度を分析した結果を表す電気泳動の画像である。図1に示すように、ウイルス不活性化の前後の試料間において分子量と純度の差は見られず、FacVIIa誘導体のような活性型又は自己開裂型は観察されなかった。
【0060】
実施例4:ウイルスが不活性化されたFacVII誘導体における力価分析
FacVII誘導体の有効濃度50(EC50)及びウイルス不活性化FacVII誘導体をCOASET Chromogenic assay kit(Chromogenix社、Italy)を用いて測定した。ウイルス不活性化を経ていないFacVII誘導体と、ウイルス不活性化を経たFacVII誘導体を、キットに含まれるworking bufferを用いて60ng/mLから0.03ng/mLまで、2倍連続希釈法により希釈し、96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ分注した。その後、FacX、CaCl2及びトロンボプラスチンを含む組合せた試薬(combined reagent)50μLを各ウェルに加え、37℃で7分間反応させた。50μLの基質を各ウェルに加えた。最後に、405nmの吸光度で測定し、各FacVII誘導体のEC50を比較分析した(図2及び表1)。図2は、CHO細胞株を用いて発現させた後精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後におけるFacVII誘導体の活性を分析した結果を示すグラフであり、丸(○)を示す線は、ウイルス不活性化する前のFacVII誘導体の活性を示し、四角(□)を示す線は、ウイルス不活性化した後のFacVII誘導体の活性を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
図2と表1に示すように、ウイルス不活性化を経ていないFacVII誘導体と、ウイルス不活性化を経たFacVII誘導体のEC50は、それぞれ0.961ng/mLと1.024ng/mLであり、これは、ウイルス不活性化の後にもEC50値に大きな差はないことを示す。
【0063】
実施例5:FacVIIを含む溶液のウイルス不活性化
実施例1で説明した方法と同様に、FacVIIを精製し、最終的に、溶出緩衝液(2mMのベンズアミジン、25mMのNaCl、35mMのCaCl2、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)を用いて溶出した。精製したFacVIIは、限外濾過(ペリコンXL、PLCGC 10 50cm2、ミリポア)及び血液透析濾過を通じて最終緩衝液(10mMのTris(pH8.0))及び50mMのリン酸カリウム(pH5.5)に最終濃度が1.0mg/mLになるように溶解した。ウイルスの不活性化のために、界面活性剤のトリトンX-100をSDS-PAGEにより純度97%以上のFacVIIを含む溶液に0.1〜0.5%(w/v)の濃度で加え、4℃で30分間ゆっくり攪拌した。その後、前記溶液をサイズ排除クロマトグラフィーにより最終溶液を溶解した。
【0064】
実施例6:ウイルスが不活性化されたFacVIIの純度分析
実施例5でウイルス不活性化を経たFacVIIの純度をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した(図3)。図3は、CHO細胞株を用いて発現させた後精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後におけるFacVIIの純度分析の結果を示す電気泳動の画像である。
【0065】
図3に示すように、トリトンX-100を0.1〜0.5%(w/v)の濃度でpH5.5のFacVIIを含む組成物に加えた場合、ウイルス不活性化の前後の試料間において分子量と純度の差は見られず、FacVII誘導体のような活性型又は自己開裂型は観察されなかった。一方、界面活性剤のトリトンX-100を0.1〜0.5%(w/v)の濃度でpH8.0のFacVIIを含む組成物に加えた場合、0.1〜0.2%(w/v)トリトンX-100の低濃度条件では、活性型FacVIIa又は自己開裂型のバンドは観察されなかった。しかし、0.5%(w/v)トリトンX-100(高濃度条件)を組成物に加えた場合、活性型FacVIIaが観察された(点線の四角い部分)。
【0066】
当業界の当業者は、本発明の範囲と思想から離脱することなく、様々な修正又は変更することができる。従って、前記実施例は、全ての面おいて例示的なものであって、限定的ではないものとして理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求範囲の意味及び範囲、及びその等価概念から導出される全ての変更又は修飾されて形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]