【実施例】
【0047】
実施例1:FacVII誘導体の製造
実施例1−1:FacVII遺伝子を含む発現ベクターの製造
まず、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、シグナル配列を含むヒト第VII因子の遺伝子を取得した。第VII因子(FacVII)遺伝子の増幅のために、ヒト胎児肝cDNAライブラリー(TAKARA BIO USA)を鋳型として用い、下記配列番号1及び2のフォワードプライマーとリバースプライマーを用いてPCRを行った(95℃で1分間変性;30サイクル(95℃で30秒、60℃で30秒及び68℃で90秒);68℃で5分)。この際、クローニングを容易にするために、BamHI制限酵素認識部位を配列番号1のプライマーに挿入し、XhoI制限酵素認識部位を配列番号2のプライマーに挿入した。引き続き、PCRにより得られたおよそ1.3kbのPCR産物のヌクレオチド配列を調べた。
VII BHISS F:5'-cccggatccatggtctcccaggccctcaggctcc-3'(配列番号1)
VII XhoIAS R:5'-gggctcgagctagggaaatggggctcgcagg-3'(配列番号2)
【0048】
CMVプロモーターの調節の下、得られたPCR産物を発現させるために、動物細胞の発現ベクターpX0GCにクローニングした。前記pX0GCベクターは、一つ以上のCCGCCC反復配列が除去されたDHFRプロモーターを含み、それに作動可能に連結されたDHFRをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターである(特許文献2)。具体的には、前記PCR産物は、制限酵素のBanHIとXhoIを用いて37℃で2時間ダイジェストし、PCR精製キット(Qiagen、USA)を用いて開裂したDNA断片を取得した。前記DNA断片を、制限酵素のBanHIとXhoIで処理したpX0GCベクターと混合し、T4 DNAリガーゼを用いてクローニングしてFacVII遺伝子(pX0GC-FVII)を含む発現ベクターを製造した。
【0049】
実施例1−2: 組み換えFacVII誘導体発現ベクターのpX0GC-FVII-ATKAVCの製造
実施例1−1で製造した発現ベクターpX0GC-FVIIに含まれるFacVII遺伝子の3-'末端におけるSOD1配列(ATKAVC、配列番号3)の1〜6位の配列をコードするポリヌクレオチドを有するポリヌクレオチドをさらに含む組み換えFacVII誘導体の発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCを製造した。詳しくは、前記発現ベクターpX0GC-FVIIを鋳型として用い、下記配列番号4及び5のフォワードプライマーとリバースプライマーを用いてPCRを行った(95℃で1分間変性;30サイクル(95℃で60秒、60℃で60秒及び68℃で90秒);68℃で5分)。この際、クローニングを容易にするために、EcoRI制限酵素認識部位を配列番号4のプライマーに挿入し、XhoI制限酵素認識部位を配列番号5のプライマーに挿入した。引き続き、PCRにより得られたおよそ1.4kbのPCR産物のヌクレオチド配列を確認した。
FVII EcoRISS F:5'-ccggaattcatggccaacgcgttcctggaggagctgcggccgggc-3'(配列番号4)
F VII #1XhoIAS R:5'-ccgctcgagtcagcacacggccttcgtcgcgggaaatggggctcgcaggaggactcctgggc-3'(配列番号5)
【0050】
CMVプロモーターの調節の下、得られたPCR産物を発現させるために、動物細胞の発現ベクターpX0GCにクローニングした。具体的には、前記PCR産物は、制限酵素のEcoRIとXhoIを用いて37℃で2時間ダイジェストし、PCR精製キットを用いて開裂したDNA断片を取得した。前記DNA断片を、制限酵素のBanHIとXhoIで処理したpX0GCベクターと混合し、T4 DNAリガーゼを用いてクローニングし、FacVII遺伝子の3'-末端に連結されたSOD1配列の1〜6位の配列ATKAVC(配列番号3)をコードするヌクレオチドを含むFacVII誘導体をコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクター(pX0GC-FVII-ATKAVC)を製造した。
【0051】
実施例1−3:CHO細胞株におけるFacVII誘導体(pX0GC-FVII-ATKAVC)の発現
実験例2−1で製造した前記発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCを、DHFRの欠損により不完全なDNA合成を示すDG44/CHO細胞株(CHO/dhfr-)(非特許文献1)に導入して形質転換体を取得し、前記形質転換体からFacVII-ATKAVC誘導体を発現させた。
【0052】
具体的には、前記DG44/CHO細胞株が80〜90%コンフルエンスに達するまで培養し、前記細胞をOpti-MEM(Gibco、カタログ番号51985034) で3回洗浄した。
【0053】
一方、3mLのOpti-MEMと5μgの発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCの混合物、及び3mLのOpti-MEMと20μLのリポフェクタミン(Gibco、カタログ番号18324-012)の混合物をそれぞれ室温で30分間静置した。引き続き、前記混合物を混合し、培養したDG44/CHO細胞株に加えた。その後、前記細胞を37℃、5%CO
2で約18時間培養することで、DG44/CHO細胞株に発現ベクターpX0GC-FVII-ATKAVCを導入した。引き続き、前記培養した細胞を10%FBSを含むDMEM-F12(Gibco、カタログ番号11330)で3回洗浄した後、前記培地を加え、48時間培養した。前記培養した細胞をトリプシン処理により分離し、選択培地を含まず(HTサプリメント(ヒポキサンチン-チミジン)10%FBS及び1mg/mLのG418(Cellgro、カタログ番号61-234-RG)を含むMEM-α培地(WELGENE社、カタログ番号LM008-02)に接種した。前記形質転換された細胞が生き残ってコロニーを形成するまで、前記培地を2日又は3日毎に選択培地に交換した。従って、前記形質転換された細胞を前記分離した細胞から選抜した。この際、選抜された形質転換細胞におけるFacVII-ATKAVC誘導体の発現レベルを増加させるために、10nMのMTX(シグマ、カタログ番号M8407)を選択培地に加えてその濃度を徐々に増やし、2〜3週間後にはMTXの含量を30nMまで増加させた。
【0054】
実施例1−4:FacVII-ATKAVCの精製
実施例1−3で製造した形質転換体を培養してFacVII-ATKAVCを発現させ、前記培養液を3000rpmで5分間遠心分離し培養上清液を取得した。
【0055】
前記培養上清液を0.2μmのマイクロフィルターを用いてろ過し、0.6Mの硫酸アンモニウムを加えた。前記結果物をブチルHPカラムに供し、0.6〜0Mの硫酸アンモニウムを含む濃度勾配緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5)を用いて溶出し、FacVII-ATKAVCを含む活性分画を取得した。
【0056】
前記取得した活性分画の緩衝液の条件を10mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)に変えた後、ヘパリンHPカラムに供した。その後、0〜1.0MのNaCl濃度勾配緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム、pH7.0)を用いて溶出し、FacVII-ATKAVCを含む活性分画を取得した。
【0057】
前記活性分画を濃縮した後、Superdex75カラムに供した後、150mMのNaCl、20mMのTris-HCl(pH7.5)緩衝液を用いて溶出し、FacVII-ATKAVCを含む活性分画を取得した。前記取得した活性分画の緩衝液の条件を、2mMのベンズアミジン、20mMのTris-HCl(pH7.5)緩衝液)に変えた後、Q FFカラムに供した。その後、洗浄(2mMのベンズアミジン、0.2MのNaCl、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)、再平衡化(2mMのベンズアミジン、0.1MのNaCl、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)、及び濃縮勾配溶出(2mMのベンズアミジン、25mMのNaCl、35mMのCaCl
2、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)し、FacVII-ATKAVCを精製した。
【0058】
実施例2:FacVII誘導体を含む溶液のウイルス不活性化
実施例1で精製した前記FacVII誘導体を、最終緩衝液(10mMのNaAc(pH5.5)、0.02%プルロニックF-68.5%マンニトール、0.01%L-メチオニン、50mMのNaCl)に、限外濾過(ペリコンXL、PLCGC 10 50cm
2、ミリポア)及び血液透析濾過により最終濃度が0.46mg/mLになるように溶解した。ウイルスの不活性化のために、界面活性剤のトリトンX-100を0.2%(w/v)の濃度でサイズ排除クロマトグラフィーにより純度97%以上のFacVII誘導体を含む溶液に加え、4℃で30分間ゆっくり攪拌した。
【0059】
実施例3:ウイルスが不活性化されたFacVII誘導体における純度分析
実施例2でウイルス不活性化を経たFacVII誘導体の純度をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した(
図1)。
図1は、CHO細胞株を用いて発現させた後精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後において純度を分析した結果を表す電気泳動の画像である。
図1に示すように、ウイルス不活性化の前後の試料間において分子量と純度の差は見られず、FacVIIa誘導体のような活性型又は自己開裂型は観察されなかった。
【0060】
実施例4:ウイルスが不活性化されたFacVII誘導体における力価分析
FacVII誘導体の有効濃度50(EC
50)及びウイルス不活性化FacVII誘導体をCOASET Chromogenic assay kit(Chromogenix社、Italy)を用いて測定した。ウイルス不活性化を経ていないFacVII誘導体と、ウイルス不活性化を経たFacVII誘導体を、キットに含まれるworking bufferを用いて60ng/mLから0.03ng/mLまで、2倍連続希釈法により希釈し、96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ分注した。その後、FacX、CaCl
2及びトロンボプラスチンを含む組合せた試薬(combined reagent)50μLを各ウェルに加え、37℃で7分間反応させた。50μLの基質を各ウェルに加えた。最後に、405nmの吸光度で測定し、各FacVII誘導体のEC
50を比較分析した(
図2及び表1)。
図2は、CHO細胞株を用いて発現させた後精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後におけるFacVII誘導体の活性を分析した結果を示すグラフであり、丸(○)を示す線は、ウイルス不活性化する前のFacVII誘導体の活性を示し、四角(□)を示す線は、ウイルス不活性化した後のFacVII誘導体の活性を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
図2と表1に示すように、ウイルス不活性化を経ていないFacVII誘導体と、ウイルス不活性化を経たFacVII誘導体のEC
50は、それぞれ0.961ng/mLと1.024ng/mLであり、これは、ウイルス不活性化の後にもEC
50値に大きな差はないことを示す。
【0063】
実施例5:FacVIIを含む溶液のウイルス不活性化
実施例1で説明した方法と同様に、FacVIIを精製し、最終的に、溶出緩衝液(2mMのベンズアミジン、25mMのNaCl、35mMのCaCl
2、20mMのTris-HCl(pH8.0)緩衝液)を用いて溶出した。精製したFacVIIは、限外濾過(ペリコンXL、PLCGC 10 50cm
2、ミリポア)及び血液透析濾過を通じて最終緩衝液(10mMのTris(pH8.0))及び50mMのリン酸カリウム(pH5.5)に最終濃度が1.0mg/mLになるように溶解した。ウイルスの不活性化のために、界面活性剤のトリトンX-100をSDS-PAGEにより純度97%以上のFacVIIを含む溶液に0.1〜0.5%(w/v)の濃度で加え、4℃で30分間ゆっくり攪拌した。その後、前記溶液をサイズ排除クロマトグラフィーにより最終溶液を溶解した。
【0064】
実施例6:ウイルスが不活性化されたFacVIIの純度分析
実施例5でウイルス不活性化を経たFacVIIの純度をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した(
図3)。
図3は、CHO細胞株を用いて発現させた後精製し、界面活性剤を用いてウイルスを不活性化する前と不活性化した後におけるFacVIIの純度分析の結果を示す電気泳動の画像である。
【0065】
図3に示すように、トリトンX-100を0.1〜0.5%(w/v)の濃度でpH5.5のFacVIIを含む組成物に加えた場合、ウイルス不活性化の前後の試料間において分子量と純度の差は見られず、FacVII誘導体のような活性型又は自己開裂型は観察されなかった。一方、界面活性剤のトリトンX-100を0.1〜0.5%(w/v)の濃度でpH8.0のFacVIIを含む組成物に加えた場合、0.1〜0.2%(w/v)トリトンX-100の低濃度条件では、活性型FacVIIa又は自己開裂型のバンドは観察されなかった。しかし、0.5%(w/v)トリトンX-100(高濃度条件)を組成物に加えた場合、活性型FacVIIaが観察された(点線の四角い部分)。
【0066】
当業界の当業者は、本発明の範囲と思想から離脱することなく、様々な修正又は変更することができる。従って、前記実施例は、全ての面おいて例示的なものであって、限定的ではないものとして理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求範囲の意味及び範囲、及びその等価概念から導出される全ての変更又は修飾されて形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。