特許第6469595号(P6469595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469595果実由来の生物活性組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469595
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】果実由来の生物活性組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/73 20060101AFI20190204BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 36/45 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 36/33 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20190204BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20190204BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20190204BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20190204BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20190204BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20190204BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20190204BHJP
   C11D 3/382 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   A61K36/73
   A61K36/185
   A61K36/736
   A61K36/87
   A61K36/45
   A61K36/752
   A61K36/33
   A61K36/81
   A61P13/02
   A61P1/04
   A61P1/16
   A61K9/08
   A61P39/06
   A61K8/97
   A61Q19/10
   A61Q5/02
   A61Q19/00
   A61K9/12
   A61K9/06
   C11D17/08
   C11D17/06
   C11D3/382
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-562100(P2015-562100)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-516680(P2016-516680A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014054758
(87)【国際公開番号】WO2014140054
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】61/792,709
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596121138
【氏名又は名称】アイエスピー インヴェストメンツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コガノヴ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デューバ−コガノヴ,オルガ,ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】デューヴ,アルチョーム
(72)【発明者】
【氏名】ミッケリ,スティーヴン
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0129279(US,A1)
【文献】 特開2004−307370(JP,A)
【文献】 特開2008−255182(JP,A)
【文献】 特開昭55−122153(JP,A)
【文献】 J. Sci. Food Agric., 2008, Vol.88, pp.2738-2743
【文献】 Comprehensive Reviews in Food Safety, 2005, Vol.1, pp.8-21
【文献】 生物工学会誌, 2011, Vol.89, No.7, pp.404-407
【文献】 Nongye Jixie Xuebao, 2006, Vol.37, No.3, pp.64-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モモ、西洋ナシ、バナナ、プラム、リンゴ、パイナップル、アンズ、サクランボ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー、タンジェリン、ウチワサボテン、ネクタリン、ザクロ、オレンジ、グレープフルーツ、トマト、並びに、それらの組合せ及び混合物から選択される果実に由来し、25マイクログラム/kg未満のパツリン及び0.1%未満の総タンパク質を含む生物活性分画物を単離するための方法であって、
(a)前記果実を最初の果汁と繊維濃縮沈殿物とに分離する工程、
(b)前記最初の果汁をpH3に調節して第1の果汁上清と第1の沈殿物とを得る工程、
工程(b)で得られた前記果汁上清、果汁の温度を40℃未満に維持しながら、膜分画物の脱安定化を達成するのに効果的な時間にわたって2.45GHzから7.0GHzに至るまでの電磁波処理に供して、脱安定化された果汁を得る工程、
工程(c)で得られた前記脱安定化された果汁を膜分画物分離工程に供して膜分画物と果汁上清とを得る工程、及び、
工程(d)で得られた前記果汁上清を、少なくとも1つの保存剤、少なくとも1つの酸化防止剤、少なくとも1つの安定剤、或いは、それらの混合物又は組合せの混合物において前記単離された生物活性成分をインキュベーションすることを含む安定化工程に供して、安定化された、果汁由来の生物活性分画物を得る工程、
を含む方法
【請求項2】
前記果実が、モモ、西洋ナシ、バナナ、プラム、リンゴ、パイナップル、アンズ、サクランボ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー、タンジェリン、ウチワサボテン、ネクタリン、ザクロ、オレンジ、グレープフルーツ、トマト、並びに、それらの組合せ及び混合物から選択される、請求項1に記載の方法により得られる生物活性分画物。
【請求項3】
前記果実がリンゴ(Pyrus malus)である、請求項1に記載の方法により得られる生物活性分画物。
【請求項4】
請求項1に記載される方法により得られる生物活性分画物を含む組成物であって、クリーム、手当用品、ゲル、ローション、軟膏、液体、噴霧アプリケーター及びそれらの組合せからなる群から選択されるリーブ・オン(leave on)製品、又は、食器手洗い用洗剤、液体ハンドソープ、固形石けん、ボディーソープ、シャンプー、汎用洗浄剤及びそれらの組合せからなる群から選択されるウォッシュ・オフ(wash-off)製品である組成物。
【請求項5】
前記膜分画物の脱安定化を達成するために効果的な時間にわたって、前記果汁上清が3.0GHzから6.0GHzに至るまでの電磁波に供される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記膜脱安定化工程(c)の期間中における前記果汁の温度が35℃未満で維持される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記膜脱安定化工程(c)の期間中における前記果汁の温度が30℃未満で維持される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記膜脱安定化工程(c)の期間中における前記果汁の温度が20℃未満で維持される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記果汁を脱安定化させるために必要な電磁波が、マグネトロン、パワーグリッド管、クライストロン、クライストローデ(klystrode)、交差電磁界増幅器、進行波管及び/又はジャイロトロンによって発生させられる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
工程(e)の前記保存剤、酸化防止剤及び/又は安定剤が、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ペンチレングリコール、或いは、それらの混合物又は組合せから選択されるものである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パツリン及びタンパク質を含まないか、又は、実質的に含まないかのいずれかである果汁由来の単離された生物活性分画物を含む生物活性分画物(成分)に関する。さらに、本発明の生物活性分画物は、酸化防止、フリーラジカル消去、保湿化及び緩衝化のための活性及び性質を有する。
【背景技術】
【0002】
リンゴはあらゆる食事療法における一部であり、その治療的価値が種々の病気について周知である(胃分泌物の吸収、毒素の排出を決定し、利尿効果を有する)。堅さ及び糖含有量が、新鮮なリンゴ果実を購入するときに消費者に直接的な影響を及ぼす重要な品質属性である。有機酸が果実風味の重要な成分であり、可溶性糖及び芳香成分と一緒になって、新鮮なリンゴ果実の全体的な官能的特性の一因となっている。リンゴ酸はリンゴ果実における主たる有機酸である。[Campeanu, G., G. Neata and G. Darjanschi (2009). Chemical composition of the fruits of several apple cultivars growth as biological crop. Notulae Botanicae Horti Agrobotanici Cluj-Napoca 37(2):161-164]。
【0003】
リンゴ酸が、肝臓を健康な状態で維持することが見出されるリンゴの主要成分であり、リンゴ酸は消化プロセスを助けている。有機酸の含有量はまた、ある種の酸が食後の血中グルコース応答及び血中インスリン応答の低下を引き起こすことがあるという点で関心対象となり得る[Suni, M., M. Nyman, N.-A. Eriksson, L. Bjork and I. Bjorck (2000). Carbohydrate composition and content of organic acids in fresh and stored apples. J. Sci. Food Agric. Journal of the Science of Food and Agriculture 80:1538-1544]。リンゴ、とりわけ、リンゴの皮は、強力な抗酸化活性を有することが見出されており、肝臓ガン細胞及び結腸ガン細胞の成長を著しく阻害することができる。皮を伴うリンゴの総抗酸化活性はおよそ83μmolのビタミンC相当量であった。このことは、100gのリンゴ(約一人分のリンゴ)の抗酸化活性が約1500mgのビタミンCと同等であることを意味する。しかしながら、100gのリンゴにおけるビタミンCの量はほんの約5.7mgにすぎない。リンゴにおいてビタミンCによる抗酸化活性への貢献は総抗酸化活性に0.4%未満であった。[Boyer, J. and R. H. Liu (2004).
【0004】
リンゴの様々なフィトケミカル及びそれらの健康利益が周知である。Nutrition Journal 3(5): http://www.nutritionj.com/content/3/1/5](Boyer and Liu, 2004)。Lee他[Lee, K, Y. Kim, D. Kim, H. Lee and C. Lee (2003). Major phenolics in apple and their contribution to the total antioxidant capacity. Journal of Agriculture and Food Chemistry 51:6516-6520]は、6つのリンゴ栽培品種の間におけるアスコルビン酸の平均濃度が12.8mg/100g果実であったことを見出した。リンゴは、高濃度のフラボノイド、同様にまた、様々な他のフィトケミカルを含有しており、これらのフィトケミカルの濃度は、多くの要因に、例えば、リンゴの栽培品種、収穫、貯蔵及び加工処理などに依存することがある。消費者は、それらの抗酸化活性のために果実における健康増進化合物の含有量に一層関心を持つようになっている[Robards, K., P.D. Prenzler, G. Tucker, P. Swatsitang and W. Glover (1999)]。
【0005】
果実におけるフェノール系化合物及び酸化プロセスでのそれらの役割もまた周知である[Food Chem. 66:401-436]。果汁は、圧砕及び圧搾によって様々な果実から絞られる液体である。果汁は、透明、混濁状又は果肉状であり得る。合衆国におけるアップルサイダー(apple cider)の用語は多くの場合、濁った非発酵の保存剤非添加のリンゴ果汁を意味するために使用される;アップルサイダーは、細胞内及び細胞外の水、炭水化物(糖、ペクチン、ヘミセルロース、セルロース、デンプン)、タンパク質、脂質、有機酸(リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、アスコルビン酸)、タンニン、フェノール系酸及び複合フェノール、ビタミン、ミネラル、繊維、カロテノイド、アントシアニン、微量のクロロフィルを含有する。これらの固体物は、可溶性(すなわち、果汁に容易に絞られるもの)及び不溶性(すなわち、主として圧搾残渣からなるもの)として分類される。いくつかの化合物は少量であるにもかかわらず、これらの固体物は、果実の魅力、安定性又は健康価値に劇的な影響を及ぼす可能性がある。多くの固有的(果実特異的)な要因及び外因的(プロセス依存的)な要因が果汁組成に影響を与える。果汁が加工処理されるか、又は清澄化されるならば、果汁はリンゴ果汁と呼ばれる[Principles and practices of small and medium-scale fruit juice processing by R.P. Bates, J.R. Morris and P.G. Crandall FAO (2001) Agricultural Services Bulletin]。
【0006】
リンゴ果汁に存在するリンゴ酸及び/又はリンゴ酸ナトリウムは、pH調節及び効果的な緩衝化目的のために、同様にまた、風味添加物のために化粧用製品及び食物において使用され続けている。リンゴ酸は、何らかの皮膚剥落作用を有することがあるアルファ−ヒドロキシ酸(AHA)であり、リンゴ酸をその能力について宣伝する様々な製品が存在する。リンゴ酸ナトリウムは湿潤特性及び保湿特性を有することがあるかもしれない。リンゴ酸はリンゴにおいて天然かつ圧倒的に見出される;リンゴ酸は穏やかな皮膚剥落剤として作用し、一方で、皮膚/頭皮にトリカルボン酸回路(TCA回路)又はクレブス回路の成分として養分を与える。
【0007】
したがって、リンゴの組成、リンゴの公知の健康利益、及び、医師を遠ざけるその噂されている能力は、この果実が、飲料、皮膚、毛髪及び口腔ケアでの製品及び適用において長い寿命を有することが予想されることを示唆している。しかしながら、リンゴ果実及びリンゴ果汁に存在するある種の望まれない成分、すなわち、パツリン及びタンパク質が存在する。
【0008】
パツリン、すなわち、4−ヒドロキシ−4H−フロ[3,2−c]ピラン−2(6H)−オンは、アスペルギルス属及びペニシリウム属のある種の種によって産生されるカビ毒である。果汁製造への加工処理のために使用されるリンゴは、不注意によって損傷を輸送期間中に受け得るかもしれない。様々な程度の損傷(腐敗)を有する果実のある一定の割合がパツリンを含有する可能性がある。パツリンは、果汁製造のための加工処理の前に損傷を受けているリンゴ及び他の果実では一般的である。パツリンは、リンゴのかびた部分に主に感染している様々なカビによって産生される。果実のかびた部分及び損傷部分を除くことは、パツリンのすべてを除去することにならない場合がある。これは、パツリンの一部が果肉の健全な部分に移動することがあるからである。また、果実が目に見えるほどにかびていないことがある場合でさえ、パツリンが果実内で産生される可能性がある。かびたリンゴが、リンゴ果汁を製造するために使用されるならば、パツリンが果汁に移行する。パツリンは熱処理(例えば、低温殺菌プロセスなど)によって破壊されない。パツリンは、ヒトに対する天然毒であり、したがって、様々な遺伝的影響を、発達中の胎児、免疫系及び神経系を含めて様々な細胞の内部において有する可能性がある。推奨される勧告レベルがリンゴ果汁において1kgあたり50マイクログラムのパツリンである[Guidance on the control of patulin in directly pressed apple juice, http://www.newark-sherwooddc.gov.uk/ppimageupload]。
【0009】
ペニシリウム・エクスパンスム(Penicillium expansum)は1つのそのような真菌であり、リンゴ及び他の果実の腐敗の原因である。英国農漁食糧省はそのFood Surveillance Paper No. 36 (1993) 「Mycotoxins 「Third Report」において、パツリンを産生するペニシリウム・エクスパンスムは、多様な様々な生産物(例えば、リンゴ、モモ、西洋ナシ、バナナ、パイナップル、アンズ、サクランボ及びブドウ)における一般的な問題であることを示している。リンゴ果汁について、パツリンのレベルは、濁った果汁の方が、透明な果汁よりも一般に高いことが示されている(そのデータにおける最高レベルはそれぞれ、434マイクログラム/kg及び118マイクログラム/kgとして示されている)。カビ毒は、動物に対するその毒性及びヒトに対するその潜在的毒性のために、リンゴ又は他の果実から得られる成分において望ましくない。パツリンの毒性活性、その催奇性、発ガン性及び変異原性が公知であり、また、関心事である。
【0010】
国連合同FAO/WHO食品基準計画の一部としての国際食品規格委員会はパツリンに関してのそれらの第28回会議(1997年6月)で、体重1キログラムあたり1日につき0.4マイクログラム(すなわち、0.4マイクログラム/kg.bw/日)のPMTDI(暫定最大許容摂取量)を示している。一般にはリンゴ果汁(特に、リンゴ果汁原液(例えば、11.5ブリックス度))は1リットルあたり50マイクログラム未満のパツリンレベルを有するにもかかわらず、リンゴ果汁がときにはひどく汚染されている可能性があることが報告された。より低い勧告(例えば、1リットルあたり25マイクログラム未満のパツリン又は一層より低い値への勧告)が現在、検討及び勧告されようとしている。いくつかのリンゴ果汁サンプル(風で落ちた果実及び/又は腐りかけている果実の使用が著しい場合)には、1500マイクログラム/lもの高さであることが公知である。しかしながら、リンゴ果汁はより一般には、最大で200マイクログラム/lのパツリンを含有する。
【0011】
米国特許第6,248,382号(Miller他)は、果汁におけるパツリン濃度を低下させるためのプロセスであって、20.ANG.未満の最小細孔幅のミクロ細孔を大量に有し、かつ、パツリンを化学吸着の力によって保持することができる少なくとも1つの細孔表面を有する樹脂材料に果汁を与えることを含むプロセスを記載する。好ましくは、樹脂は弱塩基官能性を有しており、メソ細孔及びマクロ細孔が実質的にない。樹脂は好ましくは表面積が900m/g(BET)を超えており、かつ、樹脂は、膨潤状態にある間に超架橋されている。再生は、樹脂によって保持されるパツリンを、アンモニア又は揮発性塩基を使用して、好ましくは、高pH溶液からその場で生じるより容易に洗い流される誘導体に転換することを要する。
【0012】
S.Drusch他は、パツリンの安定性を水性の果汁様モデル系において調べた。酸性pHでは、アスコルビン酸の存在がパツリンの安定性を低下させた。34日後、パツリンが、アスコルビン酸を伴わないサンプルにおける68%〜71%と比較して、アスコルビン酸の存在下ではその最初の濃度の30%に減少した。貯蔵期間中の条件(光、酸素及び/又は金属イオンの存在)がパツリンの安定性に影響を与えた。そのうえ、パツリンの分解を、ヒドロキシルラジカルを生成させることによるか、又は、かなり安定なラジカルのジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(DPPH)を添加することによるかのいずれかにより誘導することが可能であった。この研究のデータは、パツリンが、アスコルビン酸がデヒドロアスコルビン酸に酸化されることにより生じるフリーラジカルによって分解されることを示している。酸素の存在下でのアスコルビン酸の迅速な酸化(これは遊離金属イオンによって触媒された)により、パツリンの低下がもたらされた。アスコルビン酸が完全に酸化された後では、さらなるパツリン酸化は認められなかった。対照的に、金属キレーターの存在下でのアスコルビン酸の遅い酸化では、パツリンの継続的な遅い酸化が誘導された。食品包装物のヘッドスペースにおける低い酸素含有量のために、生産物(例えば、リンゴ果汁など)へのアスコルビン酸の添加は充填前では、効果的な混入物除去戦略として見なすことができない[Stability of patulin in a juice-like aqueous model system in the presence of ascorbic acid S. Drusch, S. Kopkaa and J. Kaedinga Food Chemistry Volume 100, Issue 1, 2007, Pages 192-197]。
【0013】
タンパク質は果汁中のタンパク質を含めて、タンパク質接触性皮膚炎を過敏性の個体において引き起こす可能性がある。原因となるタンパク質性物質との接触の直後に、そのような個体は、様々な症状、例えば、かゆみ、灼熱及び/又は刺痛が多くの場合には付随する、皮膚における急性のじんま疹性皮疹又は小水疱性皮疹などを経験する可能性がある[V. Janssens, et al., 「Protein contact dermatitis: myth or reality?」, British Journal of Dermatology 1995; 132: 1-6]。
【0014】
したがって、できる限り少ないパツリン及びできる限り少ないタンパク質を含有するリンゴ果汁を得ること、及び使用することが非常に望ましく、リンゴ果汁中のパツリン及びタンパク質を同時に除くこと、又はそれらの濃度を実質的に低下させることは重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,248,382号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Campeanu, G., G. Neata and G. Darjanschi (2009). Chemical composition of the fruits of several apple cultivars growth as biological crop. Notulae Botanicae Horti Agrobotanici Cluj-Napoca 37(2):161-164
【非特許文献2】Suni, M., M. Nyman, N.-A. Eriksson, L. Bjork and I. Bjorck (2000). Carbohydrate composition and content of organic acids in fresh and stored apples. J. Sci. Food Agric. Journal of the Science of Food and Agriculture 80:1538-1544
【非特許文献3】Boyer, J. and R. H. Liu (2004). Nutrition Journal 3(5): http://www.nutritionj.com/content/3/1/5
【非特許文献4】Lee, K, Y. Kim, D. Kim, H. Lee and C. Lee (2003). Major phenolics in apple and their contribution to the total antioxidant capacity. Journal of Agriculture and Food Chemistry 51:6516-6520
【非特許文献5】Robards, K., P.D. Prenzler, G. Tucker, P. Swatsitang and W. Glover (1999)
【非特許文献6】Food Chem. 66:401-436
【非特許文献7】Principles and practices of small and medium-scale fruit juice processing by R.P. Bates, J.R. Morris and P.G. Crandall FAO (2001) Agricultural Services Bulletin
【非特許文献8】Guidance on the control of patulin in directly pressed apple juice, http://www.newark-sherwooddc.gov.uk/ppimageupload
【非特許文献9】英国農漁食糧省、Food Surveillance Paper No. 36 (1993) 「Mycotoxins 「Third Report」
【非特許文献10】Stability of patulin in a juice-like aqueous model system in the presence of ascorbic acid S. Drusch, S. Kopkaa and J. Kaedinga Food Chemistry Volume 100, Issue 1, 2007, Pages 192-197
【非特許文献11】V. Janssens, et al., 「Protein contact dermatitis: myth or reality?」, British Journal of Dermatology 1995; 132: 1-6
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明はまた、果汁に由来し、かつ、タンパク質及びパツリンを含まないか、又は実質的に含まない生物活性分画物を単離するための方法に関連する。本発明はまた、安定化され、かつ、パツリン及びタンパク質を含まないか、又は実質的に含まないかのいずれかである果汁由来の生物活性分画物を調製するための方法に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、果汁におけるパツリン及びタンパク質を除くこと、又はそれらの含有量を実質的に低下させることのための商業的に実行可能なプロセスを提供する。本発明の主たる目的は、様々なリンゴ栽培品種(Granny Smith, Golden Delicious, Gala, Cameo, McIntosh, Braeburnなど)から得られる生物活性成分(分画物)におけるパツリン及びタンパク質の除去、又はそれらの含有量の実質的な低下である。しかしながら、パツリン及びタンパク質の含有量が、記載されたプロセスの使用により、他の果汁(例えば、モモ、西洋ナシ、バナナ、プラム、リンゴ、パイナップル、アンズ、サクランボ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー、タンジェリン、ウチワサボテン、ネクタリン、ザクロ、オレンジ、グレープフルーツ、トマト、並びに、それらの組合せ及び混合物)から得られる生物活性成分(分画物)において低下させられないであろうことを予想する理由は何もない。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「パツリンを実質的に含まない」は、公認分析化学者協会(AOAC)の公定分析法(995.10 リンゴ果汁中のパツリン)によって求められる25マイクログラム/kg未満の含有量を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質を実質的に含まない」は、Hitachi L−8900アミノ酸分析計で行われる加水分解アミノ酸分析及び非加水分解アミノ酸分析によって求められる0.1%未満の総タンパク質含有量を意味する。
【0021】
本発明の生物活性分画物(成分)を含有する配合物は、当業者によって周知である方法論を使用して調製される場合がある。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「局所適用」は一般には、本発明の生物活性成分又はこれらの生物活性成分を含有する配合物を、例えば、手又はアプリケーター(例えば、ワイプなど)を使用して外側皮膚に直接に塗ること、又は広げることに関連する技術を示す。本発明の生物活性成分は「化粧品許容性」である。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「化粧品許容性(の)」は、過度な毒性、不適合性、不安定性、刺激及びアレルギー応答などを伴わない、妥当な利益/危険性比に相応する哺乳動物の組織(例えば、ヒトの皮膚)との接触での使用のために好適である生物活性成分、配合物、化粧品活性薬剤又は不活性な成分を示す。
【0024】
果実(例えば、リンゴ)栽培の条件、成長年、及び、特定の収穫に依存して、果実における乾物含有量が変化し得ること、また、乾物含有量が果汁特性の一貫性に影響を及ぼすことがあり、したがって、果汁由来の生物活性分画物(成分)の再現性に影響を及ぼすことがあることには留意しなければならない。
【0025】
本発明は、最初の果汁特性を標準化することにより、生物活性(分画物)成分の再現性が改善されることを可能にする。最初の果汁特性を標準化することが、リンゴの栽培及び収穫のための均一な条件を探求することによって改善され得る。
【0026】
単離された生物活性分画物(成分)は安定化剤と一緒にされる。特に好適な安定化剤には、限定されないが、保存剤、安定剤及び/又はそれらの混合物が含まれ得る。単離された生物活性成分は、スキンケアにおけるさらなる利用のために、局所適用、経口適用及び機能的飲料適用のためにさらに濃縮し、その後、安定化させることができる。本発明の生物活性成分はさらに、当分野で一般に使用される様々な送達システムにおいて含むことができる。
【0027】
パツリン及びタンパク質を含まないか、又は実質的に含まないかのいずれかである果汁由来の単離された生物活性分画物を調製する例示的な方法は、新鮮な果実を収穫すること、集めること、及び洗浄することを伴う。新鮮な果実バイオマスを調製するために従う好適な工程には、例えば、下記のことが含まれる:(1)果実の生来の水分含有量を保つこと;(2)果実の一体性を収穫期間中に保つこと;(3)果実バイオマスの生物学的劣化の環境的影響及び時間因子を最小限に抑えること;及び(5)果実バイオマスを加工処理の前に(例えば、破砕及び浸軟の前に)清浄化すること。これらの工程のそれぞれが下記で議論される。
【0028】
生来の水分含有量を保つこと:
収穫は、水分喪失に起因してしおれることを避けるように行われなければならない。最適な条件が、天然の水分含有量が維持され、かつ保たれる条件である。
【0029】
果実の一体性を収穫期間中に保つこと;
果実バイオマスの収穫が、果実の切り刻み、すりつぶし、圧砕、又は他のタイプの傷害を避けるか、又は最小限に抑える様式で行われる。大規模な工業的収穫のためには、要求される設備のタイプに起因する切り刻みを避けることが可能でないことがある場合、微生物成長、水分喪失、酸化プロセス、重合プロセス、異性化プロセス及び加水分解プロセスの増大(すなわち、望まれない異化プロセス)を集められた果実において引き起こし得るかもしれない傷害を最小限に抑えるように注意される。さらに、収穫期間中及び収穫後の傷害を最小限に抑えるために特に注意がなされる。
【0030】
劣化の環境的影響及び時間因子を最小限に抑えること:
加工処理施設への果実材料の配送時間、並びに、日光、高温及び他の負の環境的要因に対するバイオマスの暴露は、上記で記載されるような望まれない劣化プロセスの影響を防止するために最小限に抑えられなければならない。例えば、本発明の1つの実施形態において、さらなる加工処理のための果実についての配送時間は収穫時から30分を超えない。別の実施形態において、長距離の輸送を受ける果実は、果実バイオマスを、新鮮さ及び天然の水分含有量を加工処理施設への一晩の配送の期間中に維持することを助けるための凍結ゲルパックの袋を含有するStyrofoamクーラーに直ちに入れることを伴う収穫後手段のために処理される。限定されない一例として、多くの果実種については、加工処理のための配送時間を最小限にするだけでなく、果実材料を、必要ならば冷蔵によって低温状態で保つこともまた、加工処理の前及び/又は期間中における望まれない劣化を防止するために、及び/又は最小限に抑えるために有益である。
【0031】
破砕及び浸軟の前における清浄化工程:
さらなる加工処理の前に果実からごみを除くための洗浄工程が、果実が収穫されると行われる。この洗浄は、果実からの果汁の放出の開始、傷害を引き起こすこと、又は、有益な成分を除くことを防止するための条件のもとで短期間にわたって低圧すすぎを使用して達成される。例えば、本発明の1つの実施形態において、果実バイオマスの洗浄が、1kg/cm以下の水圧により5分以下で達成された。残留する水洗浄液は緑色又は黄色の色素を何ら含有していなかった。このことは、傷害がなかったことを示している。過剰な水が、乾物含有量を天然レベルの近くで保つために洗浄後の果実バイオマスから除かれる。
【0032】
果実が収穫された後、上記で記載されるように、果実のさらなる加工処理が、果汁を得るために行われる。1つの実施形態において、果実バイオマスは、細胞内内容物、すなわち、果汁を分離するために、また、細胞内内容物を、主に細胞壁を含有する繊維濃縮圧搾ケークから分離するために、破砕、浸軟及び圧搾に供される。
【0033】
好適な加工処理プロトコルの一例では、下記で記載される工程が伴う。ハンマーミルが、果実を破砕して、小さいサイズの果実組織粒子を短時間で、かつ、バイオマス温度の著しい上昇を伴うことなく得るために使用される場合がある。1つの実施形態において、改変されたハンマーミルが、0.5センチメートル以下の最大サイズの浸軟された果実粒子を10秒以下の処理の期間中にもたらすために使用され、この場合、バイオマス温度の上昇は5℃以下である。
【0034】
破砕及び浸軟が行われた果実バイオマスの暴露は、上記で記載されるように、望まれない異化プロセスの影響を防止するために最小限に抑えられる。繊維濃縮物(又は圧搾ケーク)からの果汁の分離が果実バイオマスの破砕及び浸軟の後できる限り早く開始される。果実バイオマスは、短時間で、かつ、温度における著しい上昇を伴うことなく加工処理される。1つの実施形態において、破砕及び浸軟の直後に、果実バイオマスは、水平型の連続スクリュープレス機(Compact Press 「CP−6」、Vincent Corporation、FL)を使用して圧搾される。コーン上の圧力が24kg/cmのレベルで維持され、スクリュー速度が12rpmであり、バイオマスの温度上昇が5℃以下である。
【0035】
最初の果汁は通常の場合、有益な果汁成分を吸収し、かつ、ホース及びポンプをも閉塞させる可能性がある小さい繊維粒子、デンプン粒子、ペクチン性物質、ヘミセルロース粒子及びセルロース粒子を含有する。上記粒子はろ過又は低速遠心分離によって除かれなければならない。例えば、圧搾工程の後でもたらされる最初の果汁は、果実細胞液を本発明の方法において使用する前に4層のナイロン織物でろ過される。
【0036】
果汁が分離されると、果実細胞液は、オルガネラが分散相を表し、細胞質が連続相を表す比較的安定なコロイド状懸濁物である。果汁はその後、(1)「膜分画物凝集工程の開始」を行う上記のコロイド状分散物の脱安定化を誘発させて、脱安定化された果汁を得ること、及び、(2)「膜分画物分離工程」を脱安定化された細胞液混合物に対して行って、(核、ミトコンドリア又はそれらの組合せを含有する)膜分画物と、果樹上清とを得ることを伴うプロセスのために処理される。1つの実施形態において、膜分画物脱安定化の開始が、前記細胞液を2.45GHzの周波数での電磁波に供することによって達成される。別の実施形態において、用いられる周波数は2.45GHzを超え、7.0GHzまでである。別の実施形態において、用いられる周波数は、膜分画物の脱安定化を達成するために効果的である2.45GHz〜7.0GHzの間でのいずれかの周波数である。脱安定化が達成された後、膜分画物分離工程が行われる。この工程は、例えば、脱安定化された果汁を、ろ過又は遠心分離又はそれらの組合せを含む分離技術を使用して膜分画物及び果汁上清に分離することを含む。
【0037】
様々な装置を、果汁を脱安定化するために必要である電磁波を発生させるために本発明のプロセスにおいて用いることができ、そのような装置には、マグネトロン、パワーグリッド管、クライストロン、クライストローデ(klystrode)、交差電磁界増幅器、進行波管及びジャイロトロンが含まれるが、これらに限定されない。1つのそのような装置には、高出力マグネトロンが含まれるが、これに限定されない。従来のマグネトロン及び工業用マグネトロンは915MHz及び2.45GHzの周波数で稼動しており、これらを用いることができる。しかしながら、それらの周波数では、細胞液組成を変性させる可能性がある望ましくない熱が生じる可能性がある。したがって、従来のマグネトロン又は工業用マグネトロンの周波数よりも実質的に高い周波数で作用する電磁波を使用することが好都合であり、これにより、果汁の脱安定化が、熱発生に起因する望ましくない変性を伴うことなく可能となる。この周波数は典型的には、従来のマイクロ波マグネトロンの周波数を超えており、すなわち、2.45GHzを超えており、別の実施形態では2.45GHzを超えて、約7GHz未満であり、別の実施形態では約3GHz〜約6GHzであり、さらに別の実施形態では、果汁の脱安定化を達成するために効果的である2.45GHz〜7.0GHzの間の任意の周波数である。本発明の脱安定化工程の期間中、果汁の温度が有益には40℃未満で維持され、別の実施形態においては約35℃未満で維持され、別の実施形態においては約30℃未満で維持され、別の実施形態においては約25℃未満で維持され、別の実施形態においては約20℃未満で維持される。
【0038】
新しく得られた膜分画物は、原料起源物に特異的である色及び特異な臭気を有するペーストである。この膜分画物は、果実に存在する疎水性化合物によって主に表される。膜分画物の組成は主に、リン脂質、膜タンパク質、有色体、微量の葉緑体、微量のクロロフィル、核、ミトコンドリア及びカロテノイドを含む。
【0039】
パツリン及びタンパク質を含まないか、又は実質的に含まないかのいずれかである果汁由来の生物活性分画物が製造された後、生物活性分画物はその後、安定化された果汁を得るために安定化工程に供される。1つの実施形態において、安定化工程は、生物活性分画物を、少なくとも1つの保存剤、少なくとも1つの酸化防止剤及び少なくとも1つの安定剤の混合物においてインキュベーションして、安定化された生物活性漿液分画物を得ることを伴う。本発明における使用のための好適な保存剤、酸化防止剤及び安定剤には、例えば、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及びペンチレングリコールが含まれる。
【0040】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚及び/又は毛髪への局所適用のために好適である生物活性な局所用配合物に関連する。組成物は、リーブ・オン(leave on)製品、例えば、クリーム、手当用品、ゲル、ローション、軟膏、液体、噴霧アプリケーター及びそれらの組合せなど、又は、ウォッシュ・オフ(wash-off)製品、例えば、食器手洗い用洗剤、液体ハンドソープ、固形石けん、ボディーソープ、シャンプー、汎用洗浄剤及びそれらの組合せなどであることが可能である。
【0041】
1つの実施形態において、生物活性な局所用配合物は、局所効果的な量の本発明の生物活性組成物を含む。生物活性な局所用配合物はさらに、局所的に許容されるキャリアを含むことができる。好適な局所的に許容されるキャリアには、限定されないが、親水性のクリーム基剤、親水性のローション基剤、親水性の界面活性基剤、親水性のゲル基剤、親水性の溶液基剤、疎水性のクリーム基剤、疎水性のローション基剤、疎水性の界面活性基剤、疎水性のゲル基剤、及び/又は、疎水性の溶液基剤が含まれることが可能である。1つの実施形態において、生物活性組成物は、生物活性な局所用配合物の総重量の約0.001パーセントから約90パーセントにまで及ぶ量で存在することができる。
【0042】
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
パツリン及びタンパク質を実質的に含まない、果実に由来する生物活性分画物。
項2.
前記果実が、モモ、西洋ナシ、バナナ、プラム、リンゴ、パイナップル、アンズ、サクランボ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー、タンジェリン、ウチワサボテン、ネクタリン、ザクロ、オレンジ、グレープフルーツ、トマト、並びに、それらの組合せ及び混合物から選択される、項1に記載の生物活性分画物。
項3.
25マイクログラム/kg未満のパツリン及び0.1%未満の総タンパク質の含有量を含む、項1に記載の生物活性分画物。
項4.
リンゴに由来する、項1に記載の生物活性分画物。
項5.
項1に記載される生物活性分画物を含む組成物であって、クリーム、手当用品、ゲル、ローション、軟膏、液体、噴霧アプリケーター及びそれらの組合せからなる群から選択されるリーブ・オン(leave on)製品、又は、食器手洗い用洗剤、液体ハンドソープ、固形石けん、ボディーソープ、シャンプー、汎用洗浄剤及びそれらの組合せからなる群から選択されるウォッシュ・オフ(wash-off)製品である組成物。
項6.
リンゴ(Pyrus malus)の果汁に由来する生物活性分画物を単離するための方法であって、
リンゴ(Pyrus malus)の新鮮な果実を提供すること;
前記果実を、タンパク質及びパツリンを少なくとも実質的に含まない果汁を得るために効果的な条件のもとで加工処理すること(但し、前記果実を加工処理することは、(i)前記果実を最初の果汁と繊維濃縮沈殿物とに分離すること、及び、(ii)前記最初の果汁をpH調節に供して第1の果汁上清と第1の沈殿物とを得ることを含む);
前記第1の果汁上清をマイクロ波処理に供して第2の果汁上清と第2の沈殿物とを得ること;及び、
前記第2の果汁上清を遠心分離工程及びろ過工程に供して第3の果汁上清と第3の沈殿物とを得ることを含み、
前記第3の果汁上清がパツリン及びタンパク質を実質的に含まないものである、方法。
項7.
前記第3の果汁上清が25マイクログラム/kg未満のパツリン及び0.1%未満の総タンパク質の含有量を含む、項6に記載の方法。
項8.
果実から項1に記載される生物活性分画物を単離するための方法であって、前記果実を加工処理して果汁を得ること、及び、前記果汁を下記のプロセス工程に供することを含む方法。
(1)前記果汁を、脱安定化された果汁をもたらす膜分画物脱安定化工程に供する工程、
(2)前記脱安定化された果汁を膜分画物分離工程に供して、膜分画物と果汁上清とを得る工程、及び、
(3)前記果汁上清を安定化工程に供して果汁由来の安定化された生物活性分画物を得る工程。
項9.
前記膜分画物脱安定化工程が、前記膜分画物の脱安定化を達成するために効果的な時間にわたって、前記果汁を2.45GHzから約7.0に至るまでの電磁波に供することを含む、項8に記載の方法。
項10.
前記膜分画物の脱安定化を達成するために効果的な時間にわたって、前記果汁が3.0GHzから約6.0GHzに至るまでの電磁波に供される、項9に記載の方法。
項11.
前記膜脱安定化工程の期間中における前記果汁の温度が約40℃未満で維持される、項9に記載の方法。
項12.
前記膜脱安定化工程の期間中における前記果汁の温度が約35℃未満で維持される、項9に記載の方法。
項13.
前記膜脱安定化工程の期間中における前記果汁の温度が約30℃未満で維持される、項9に記載の方法。
項14.
前記膜脱安定化工程の期間中における前記果汁の温度が約20℃未満で維持される、項9に記載の方法。
項15.
前記果汁を脱安定化させるために必要な電磁波が、マグネトロン、パワーグリッド管、クライストロン、クライストローデ(klystrode)、交差電磁界増幅器、進行波管及び/又はジャイロトロンによって発生させられる、項9に記載の方法。
項16.
前記安定化工程が、前記生物活性分画物を、少なくとも1つの保存剤、少なくとも1つの酸化防止剤、少なくとも1つの安定剤、或いは、それらの混合物又は組合せの混合物においてインキュベーションして、安定化された生物活性漿液分画物を得ることを含む、項8に記載の方法。
項17.
前記保存剤、酸化防止剤及び/又は安定剤が、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ペンチレングリコール、或いは、それらの混合物又は組合せから選択されるものである、項16に記載の方法。
下記の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために意図され、しかし、本発明の範囲を限定するためには決して意図されない。
【0043】
実施例1−リンゴ果汁(Granny Smithの栽培品種)からの生物活性分画物(成分)の調製
下記は、本発明の方法の1つの実施形態の関連態様の説明である。
【0044】
全果リンゴをリンゴ農園で樹から直接に集果する。傷物果実の検査及び除去を行う。その後、リンゴを、ろ過された水道水で加工処理前に徹底的に洗浄する。その後、全果を破砕(浸軟)し、圧搾し、ろ過して、最初の果汁、すなわち、化粧成分Recentia(登録商標)PM[INCI:Pyrus Malus(リンゴ)果汁](CAS RN 1310712−55−0)又は機能的飲料成分Purecentia(商標)PMの最初の供給源を製造する。
破砕、圧搾及びろ過の後でのリンゴ果実からの最初のリンゴ果汁の収率が約63%〜69%(重量/重量)である。
【0045】
その後、最初の果汁を、pH調節、集中マイクロ波照射、並びに、遠心分離及びろ過による分離を含む様々な処理に供する。最初の果汁及び中間の上清のpHを、集中マイクロ波処理工程に先立って希塩酸(HCl)溶液(5N)又は水酸化ナトリウム(NaOH)の25%溶液により調節する。約3.2〜3.6である最初のリンゴ果汁のpHを、5N塩酸(HCl)を利用する滴定法を使用して調節して、細胞液のpHを約3.0に下げる。その後、pH調節された果汁を直ちに、2.45GHzの周波数及び3,200ワットの出力を有する特別に設計された連続流システム(Microwave Research&Applications, Inc., Laurel, Md.)を使用してマイクロ波照射にさらす。このシステムは定速撹拌装置BDC1850(Caframo Ltd., Wiarton, Ontario, カナダ)及び温度制御プローブを備える。この処理を、マイクロ波チャンバー内の果汁の温度が約92℃〜96℃に達するまで続けた。その後、処理された果汁を直ちに、1HP再循環冷却装置と接続される連続流遠心分離デバイス(Model 6106P, Polyscience Corporation, Niles, Ill.)にポンプ送液して、上清1及び沈殿物1を得る。
【0046】
その後、上清1のpHを、水酸化ナトリウム(NaOH)の25%溶液を利用する滴定法を使用して、上清1のpHを約3.0から約8.0に上げる。その後、pH調節された上清1を直ちに、2.45GHzの周波数及び3,200ワットの出力を有する特別に設計された連続流システム(Microwave Research&Applications, Inc., Laurel, Md.)を使用してマイクロ波照射にさらす。このシステムは定速撹拌装置BDC1850(Caframo Ltd., Wiarton, Ontario, カナダ)及び温度制御プローブを備える。この処理を、マイクロ波チャンバー内の上清1の温度が約92℃〜96℃に達するまで続けた。その後、処理された上清1を直ちに、1HP再循環冷却装置と接続される連続流デバイス(Model 6106P, Polyscience Corporation, Niles, Ill.)にポンプ送液して、上清2及び沈殿物2を得る。
【0047】
その後、上清2のpHを、5N塩酸(HCl)を利用する滴定法を使用して調節して、上清2のpHを約8.0のpHから約3.0のpHに下げ、再び遠心分離して、上清3及び沈殿物3を得る。
その後、適切な保存剤及び安定剤を上清3に加えて、Recentia(登録商標)PM又はPurecentia(商標)PMを得る。
【0048】
マイクロ波処理の照射量率が約1380ジュール/秒であった。集中マイクロ波照射工程の期間中、蒸発に起因する果汁上清の濃縮は認められない。使用されるシステムは完全に密封されており、蒸発に起因する細胞内水分のいかなる喪失も防止している。
【0049】
プロセス期間中の温度がプロセスの間中にわたって調節され、モニターされ、制御され、マイクロ波処理を除いて30℃未満で保たれる。但し、マイクロ波処理では、温度が約92℃〜96℃に上がるが、その時点で、温度は即座かつ迅速に30℃未満に冷却される。予想外にも、化粧成分Recentia(登録商標)PM又は機能的飲料成分Purecentia(商標)PMに残留する生物学的構成成分は、パツリン及びタンパク質を含まないか、又は実質的に含まない最初のリンゴ果汁の水溶性成分であることが見出された。
【0050】
実施例2−生物活性成分Recentia(登録商標)PM[INCI:Pyrus Malus(リンゴ)果汁]の特徴づけ及び性質
生物活性成分Recentia(登録商標)PM[INCI:Pyrus Malus(リンゴ)果汁]を実施例1に記載されるプロセスに従って調製した。
【0051】
生物活性成分Recentia(登録商標)PMの分析を、その様々な物理化学的特徴及び微生物的特徴を明らかにするために行った。
【0052】
Recentia(登録商標)PM[INCI:Pyrus Malus(リンゴ)果汁]の選択された物理化学的特徴及び試験方法が下記において表1に示される。
【0053】
【表1A】
【0054】
【表1B】
【0055】
【表1C】
【0056】
【表1D】
【0057】
【表1E】
【0058】
Recentia(登録商標)PM及びPurecentia(商標)PMはどのような割合でも水に易溶性であり、生分解性の成分である。Recentia(登録商標)PMは、総平板カウント数、カビ及び酵母のカウント数、並びに、病原体の非存在に関するスキンケア産業要求を満たしている。
Recentia(登録商標)PM及びPurecentia(商標)PMは保存剤の効果的な系を有する。
Recentia(登録商標)PM及びPurecentia(商標)PMは、遮光される密閉容器において4℃〜25℃の間の温度で貯蔵される間は少なくとも12ヶ月間〜18ヶ月間、安定であることが明らかにされた(すなわち、物理的及び化学的な一体性を維持する)。
【0059】
表2には、Recentia(登録商標)PMのフリーラジカル消去活性に関するデータが含まれる。
【表2】
【0060】
方法
DPPH(2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル)フリーラジカル消去活性を、SUN-SRi(Rockwood, TN)から得られるガラス被覆のポリプロピレン96ウエル・マイクロタイター・プレート(カタログ番号400062)及びBioTek Instruments Inc.(Winooski, VT)から得られるSynergy2マイクロプレートリーダーの使用のために適合化される速度論的比色アッセイによって求めた。吸光度を515nmの波長で測定した。それぞれのマイクロプレートウエルにおける反応体積が200μlであり、DPPHの初期濃度が114μMに等しかった。L−アスコルビン酸を陽性コントロールとして使用した。DPPH(Sigma D9132)及び米国薬局方のL−アスコルビン酸(Sigma A-2218)をSigma-Aldrich(St.Louis, MO)から得た。反応の化学量論を計算し、1ユニット重量のDPPHを消去するために必要なユニット数の重量の試験物として表した。これは、サンプル重量あたりのDPPH相当量として容易に再計算することができる。この方法は、W.Brand-Williams他によって、LWT - Food Science and Technology(Volume 28、Issue 1、1995、pp 25-30)に発表された、「Use of a free radical method to evaluate antioxidant activity」に記載される手順から適合化された。