(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変異K201R、N202S、G204S、T207A、及びL208Mでのみ野生型マウスCCR7と相違する変異型マウスCCR7に、抗体mAb197よりよく結合する、請求項1に記載の単離された抗CCR7抗原結合タンパク質。
CCR7抗原結合タンパク質を作製する方法であって、請求項14〜23のいずれか一項に記載の単離された細胞を、前記細胞が前記抗原結合タンパク質を発現することを可能にする条件下でインキュベートすることを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において使用する見出しは整理を目的とするものにすぎず、記載されている内容を限定するものと解釈してはならない。
【0030】
本明細書に別段の定義がある場合を除き、本願との関連で使用される科学用語および技術用語は、当技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解している意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がある場合を除き、単数形の用語は複数を包含するものとし、複数形の用語は単数を包含するものとする。
【0031】
一般に、本明細書に記載する細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質化学および核酸化学、製造、製剤、薬理学、ならびに医学の術語および技法は、当技術分野において周知でありよく使用されているものである。本発明の方法および技法は、別段の表示がある場合を除き、一般に、当技術分野において周知の従来法に従って、本明細書の全体にわたって引用し論述するさまざまな一般文献およびより専門的な文献に記載されているように行われる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrookら著「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2001)、Ausubelら著「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane著「Antibodies:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1990)を参照されたい。酵素反応および精製技法は、製造者の仕様書に従って、当技術分野で一般に遂行されているように、または本明細書に記載するように行われる。本明細書に記載する分析化学、有機合成化学、医化学および薬化学との関連で使用される術語ならびにその実験手法および技法は、当技術分野において周知でありよく使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤、および送達、ならびに患者の処置には、標準的な技法を使用することができる。
【0032】
本発明は、本明細書に記載する特定の方法論、プロトコール、試薬などに限定されない。本明細書において使用する術語には、特定の実施形態を説明するという目的しかなく、特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲を限定する意図はない。
【0033】
実施例または別段の表示がある場合は別として、本明細書において使用する成分の量または反応条件を表現する数字は全て、いずれの場合も「約」という用語で修飾されていると理解すべきであり、この用語は関連技術分野の当業者によって解釈されるであろう。
【0034】
定義
「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチドポリマーを包含する。それらは、例えば一本鎖、二本鎖、または三本鎖であるか、一本鎖および/または二本鎖および/または三本鎖の組み合わせであることができる。ヌクレオチドポリマーが2本以上の鎖を含む場合、各鎖はそれ自体がポリヌクレオチドまたは核酸であると理解される。ヌクレオチドポリマーが二本鎖である場合、その鎖のそれぞれは、典型的には、互いに相補的であるが、その相補性は完全である必要はなく、場合によっては、あるハイブリダイゼーション条件下でのみそれら2本の鎖の安定な会合またはハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な相補性である。ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、天然ヌクレオチドまたは人工ヌクレオチド類似体、例えばリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはどちらかのタイプのヌクレオチドの修飾型、または異なるタイプのヌクレオチドおよび/もしくはヌクレオチド類似体の組み合わせなどであることができる。該修飾としては、例えば、ブロモウリジンおよびイノシン誘導体などの塩基修飾、2’,3’−ジデオキシリボースなどのリボース修飾、ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニラデート(phosphoraniladate)およびホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合修飾が挙げられる。「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、1つ以上の非ポリヌクレオチド化学物質、例えばラベル(例えば放射性ラベル)、蛍光ラベル、ハプテンまたは抗原性ラベルなどの付加によって、共有結合的に、または非共有結合的に修飾されたヌクレオチドポリマー、ならびにハイブリダイゼーションメンブレン(例えばニトロセルロースハイブリダイゼーションメンブレン)、ビーズ、容器の壁面などの固形物または表面に、共有結合的に、または非共有結合的に結合されたヌクレオチドポリマーを包含する。
【0035】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、一般に、短いポリヌクレオチドまたは核酸配列を指す。特定オリゴヌクレオチドの長さは、その作製方法および/または意図したその用途に依存するであろう。この用語は、典型的には、200個以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドが10〜60塩基長である。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドが12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば一本鎖でも、二本鎖でも、三本鎖でもよい。一本鎖オリゴヌクレオチドはセンスオリゴヌクレオチドでもアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。オリゴヌクレオチドは、例えばPCRプライマー、クローニングプライマー、2つ以上のポリヌクレオチドを接合するためのアダプター、およびハイブリダイゼーションプローブなどといった、多くの用途を有しうる。
【0036】
「単離された核酸分子」は、ゲノム由来、mRNA由来、cDNA由来、もしくは合成由来のDNAまたはRNA、あるいはそれらの何らかの組み合わせであって、その自然の環境から少なくとも部分的に取り出されているものを意味する。単離された核酸分子の例として、自然界に見いだされる配列を有するが合成的に生産された核酸、天然の核酸であって、自然界において当該単離されたポリヌクレオチド中に見いだされるポリヌクレオチドの全部または一部分を伴わないもの、天然の核酸であって、自然界では当該核酸が連結されていないポリヌクレオチドに連結されているもの、および天然の核酸であって、それぞれにとって自然の細胞環境から少なくとも部分的に取り出されたものが挙げられる。本開示に関して、特定ヌクレオチド配列「を含む核酸分子」は、インタクトな天然染色体を包含しないと理解すべきである。指定した核酸配列「を含む」単離された核酸分子は、例えば1つ以上の他のコード配列、言及した核酸配列のコード領域の発現を制御し、またはその発現に影響を及ぼす作動的に連結された調節配列、ベクターまたはプラスミド配列、核酸の複製を制御し、またはその複製に影響を及ぼす配列、制限部位、プライマー結合部位などといった、他の配列も含みうる。
【0037】
別段の指定がある場合を除き、本明細書に記載するどの一本鎖ポリヌクレオチド配列もその左端は5’端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向を5’方向という。新生RNA転写産物の5’→3’付加の方向を転写方向といい、RNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上でRNA転写物の5’端に対して5’側にある配列領域を「上流配列」といい、RNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上でRNA転写産物の3’端に対して3’側にある配列領域を「下流配列」という。
【0038】
「制御配列」という用語は、それがライゲーションされているコード配列の発現および/またはプロセシングに影響を及ぼすことができるポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存しうる。特定の実施形態において、原核生物用の制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含みうる。真核生物用の制御配列の例には、1つまたは複数の転写因子認識部位、転写エンハンサー配列、および転写終結配列が含まれる。「制御配列」という用語がリーダー配列および/または融合パートナー配列を指す場合もある。
【0039】
「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞中に移行させるために使用される任意の分子または実体(例えば核酸、プラスミド、バクテリオファージまたはウイルス)を意味する。
【0040】
「発現ベクター」、「発現プラスミド」、および「発現コンストラクト」という用語は、それぞれ、宿主細胞の形質転換に適し、それに作動的に連結された1つ以上の異種コード領域の発現を(宿主細胞と協力して)可能にする核酸を含有するベクターを指す。限定するわけではないが、発現コンストラクトは、転写、翻訳に影響を及ぼし、または転写、翻訳を制御し、イントロンが存在する場合には、それに作動的に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含みうる。
【0041】
本明細書にいう「作動的に連結された」とは、この用語を適用される構成要素が、適切な条件下で、それらがそれぞれの固有のまたは所望の機能を果たすことを可能にする関係にあることを意味する。ベクター内でタンパク質コード配列に「作動的に連結された」制御配列の一例は、タンパク質コード配列の発現が当該エンハンサー領域の転写活性に適合する条件下で達成されるような形でタンパク質コード配列に(直接または中間配列を介して)ライゲーションされているエンハンサー領域である。
【0042】
「宿主細胞」という用語は、目的のコード配列を正しい条件下で発現する能力を有する細胞を意味する。この用語は、目的のコード配列が存在する限り、子孫が元の親細胞と形態または遺伝子構成が同一であるかどうかに関わりなく、親細胞の子孫を包含する。「宿主細胞」は、核酸配列で形質転換された結果、目的のコード配列を発現する細胞、または核酸配列で形質転換されることで目的のコード配列を発現する能力を有する細胞であることができる。
【0043】
「形質導入」という用語は、ある細菌から別の細菌への遺伝子の移行を意味し、通常はバクテリオファージによって起こる。「形質導入」は、複製欠損レトロウイルスによる真核細胞配列の獲得および移行も指す。
【0044】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAまたは外因性DNAの取り込みを意味し、外因性DNAが細胞中に導入された時に、細胞は「トランスフェクトされた」という。いくつかのトランスフェクション技法が当技術分野ではよく知られており、本明細書でも開示する。例えば、Grahamら,1973,Virology 52:456;Sambrookら著(2001)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(前掲);Davisら著(1986)「Basic Methods in Molecular Biology」Elsevier;Chuら,1981,Gene 13:197を参照されたい。そのような技法は、適切な宿主細胞中に1つ以上の外因性DNA部分を導入するために使用することができる。トランスフェクト細胞を作製するために使用する技法と所望するトランスフェクト細胞の用途とに応じて、細胞を安定にトランスフェクトするか、一過性にトランスフェクトすることができる。
【0045】
「形質転換」という用語は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、新しいDNAまたはRNAを含有するように細胞が修飾された時に、細胞は形質転換されたという。例えば、細胞が形質転換されると、新しい遺伝物質が、例えばトランスフェクションもしくは形質導入によって、または化学的技法、バリスティック技法、もしくはエレクトロポレーション技法などといった他の技法によって導入されることで、細胞は、そのネイティブな状態から遺伝的に改変される。形質転換に続いて、形質転換DNAは、細胞の染色体中に物理的に組み込まれることによって細胞のDNAとの組換えを起こすか、複製されかつ/または細胞分裂時に安定に増殖されることなく、エピソーム要素として一過性に維持されるか、プラスミドとして独立して複製しうる。形質転換DNAが宿主細胞の細胞分裂周期の一部として複製される場合、その細胞は「安定に形質転換された」と見なされる。
【0046】
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すために可換的に使用される。この用語は、天然のアミノ酸ポリマーだけでなく、1つ以上のアミノ酸残基が天然アミノ酸の類似体、誘導体、またはミメティックであるアミノ酸ポリマーにも適用される。この用語は、修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような修飾には、ポリペプチドの天然の修飾または人工的な修飾がいずれも含まれる。そのような修飾にはポリペプチドの配列を変えるものも変えないものもある。そのような修飾の例として、糖質残基の付加およびリン酸化が挙げられる。ポリペプチドおよびタンパク質は、天然の非組換え細胞によって生産しかつ/または修飾するか、遺伝子操作された細胞または組換え細胞によって生産することができる。「ポリペプチド」および「タンパク質」は、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはネイティブ配列から1つ以上のアミノ酸が欠失し、ネイティブ配列に1つ以上のアミノ酸が付加され、かつ/もしくはネイティブ配列の1つ以上のアミノ酸が置換されている分子を含む。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、具体的には、CCR7抗原結合タンパク質、抗体、または抗原結合タンパク質配列から1つ以上のアミノ酸が欠失し、抗原結合タンパク質配列に1つ以上のアミノ酸が付加され、かつ/もしくは抗原結合タンパク質配列の1つ以上のアミノ酸が置換されている配列を包含する。「ポリペプチドフラグメント」という用語は、完全長タンパク質と比較してアミノ末端欠失、カルボキシ末端欠失、および/または内部欠失を有するポリペプチドを指す。そのようなフラグメントは、完全長タンパク質と比較して、修飾アミノ酸も含有しうる。ある実施形態では、フラグメントが約5〜500アミノ酸長である。例えば、フラグメントは、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸長であることができる。有用なポリペプチドフラグメントとして、結合ドメインなどといった、抗体の免疫機能性フラグメントが挙げられる。CCR7結合抗体の場合、有用なフラグメントとして、CDR領域、重鎖または軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の一部分、または2つのCDRを含むその可変領域のみなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
「単離されたタンパク質」は、(1)通常は当該タンパク質と一緒に見いだされる他のタンパク質または細胞構成要素を少なくともいくつかは含まないか、(2)同じ供給源からの、例えば同じ種からの、他のタンパク質を本質的に含まないか、(3)異なる種からの細胞によって発現されるか、(4)当該タンパク質に本来付随しているポリヌクレオチド、脂質、糖質、または他の物質の少なくとも約50%から分離されているか、(5)当該タンパク質に本来付随していないポリペプチドが(共有結合または非共有結合によって)作動的に付随しているか、または(6)自然には存在しない。「単離されたタンパク質」は、所与の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、または少なくとも約50%を構成することができる。ゲノムDNA、cDNA、mRNAもしくは合成由来の他のRNA、またはそれらの任意の組合せは、そのような単離されたタンパク質をコードしうる。いくつかの実施形態において、単離されたタンパク質は、その自然環境において見いだされるタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の夾雑物であって、その治療的使用、診断的使用、予防的使用、研究的使用または他の使用を妨害するであろうものを、実質的に含まない。
【0048】
ポリペプチド(例えば抗原結合タンパク質または抗体)の「変異体」は、もう一つのポリペプチド配列との比較で、1つ以上のアミノ酸残基が挿入され、欠失し、かつ/または置換されているアミノ酸配列を含む。あるポリペプチドの全部または一部を含む融合タンパク質は、そのポリペプチドの変異体の一例である。
【0049】
ポリペプチドの「誘導体」は、アミノ酸の挿入、欠失、および/または置換とは異なる何らかの方法で、例えばもう一つの化学部分へのコンジュゲーションなどによって、化学的に修飾されたポリペプチド(例えば抗原結合タンパク質、または抗体)である。抗体の軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインのいずれかの全部または大半を含有するが、抗体の他方の可変ドメインの大半または全部を欠く抗原結合タンパク質は、抗体の誘導体の一例である。
【0050】
例えばポリペプチド、核酸、宿主細胞などといった生物学的材料との関連で本明細書の全体を通して使用する「天然の」という用語は、自然界に見いだされる材料を指す。
【0051】
本明細書にいう「抗原結合タンパク質」は、指定したターゲット抗原、例えばCCR7またはヒトCCR7に特異的に結合するタンパク質を意味する。
【0052】
抗体または抗体フラグメント、変異体、もしくは誘導体などの抗原結合タンパク質は、それがそのターゲット抗原に免疫特異的に結合する場合に、そのターゲット抗原に「特異的に結合する」という。いくつかの実施形態において、特異的に結合する抗原結合タンパク質は、1〜10×10
−8Mの解離定数(K
D)を有する。K
Dが1〜10×10
−9Mである場合、抗体は抗原に「高いアフィニティ」で特異的に結合し、K
Dが1〜10×10
−10Mである場合は「非常に高いアフィニティ」で特異的に結合する。一実施形態では、抗体が1〜10×10
−9MのK
Dおよび約1×10
−4/秒のオフ速度を有する。一実施形態では、オフ速度が約1×10
−5/秒である。別の実施形態では、抗体が、CCR7またはヒトCCR7に、約10
−8M〜10
−10MのK
Dで結合し、またもう一つの実施形態では、1〜2×10
−10のK
Dで結合するであろう。
【0053】
「抗原結合領域」とは、抗体または他の抗原結合タンパク質、またはそのフラグメント、誘導体、もしくは変異体のうち、指定した抗原に特異的に結合する部分を意味する。抗原結合領域は、1つ以上の「相補性決定領域」(「CDR」)を含むことができる。ある抗原結合領域は、1つ以上の「フレームワーク」領域も含む。いくつかの抗体および他の抗原結合タンパク質のフレームワーク領域内の残基は、その抗原への抗体または抗原結合タンパク質の特異的結合に直接寄与することができるが、典型的には、フレームワーク領域は、抗原結合領域と抗原の間の結合を可能にするCDRのコンフォメーションを維持するのを助ける。
【0054】
ある態様では、CCR7またはヒトCCR7に結合する組換え抗原結合タンパク質が提供される。この文脈において「組換えタンパク質」とは、組換え技法を使って、例えば組換え核酸の発現によって作製されたタンパク質である。組換えタンパク質を生産するための方法および技法は当技術分野ではよく知られている。
【0055】
「抗体」という用語は、任意の種類のインタクトな抗原結合免疫グロブリン、またはそのフラグメントであってそれ自体が抗体のターゲット抗原に特異的に結合するものを指し、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および二特異性抗体などを包含する。「抗体」は抗原結合タンパク質の一タイプである。いくつかの実施形態において、インタクトな抗体は、2本の完全長重鎖と2本の完全長軽鎖を含む。別の実施形態では、ラクダ科動物において天然に見られる抗体のように、インタクトな抗体が含む鎖の数が少なく、重鎖だけを含んでもよい。別の実施形態では、抗体の軽鎖または軽鎖可変領域の一部または全部を欠く抗体のフラグメントまたは誘導体が作製される。別の実施形態では、抗体の重鎖の一部または全部を欠く抗体のフラグメントまたは誘導体が作製される。そのような誘導体またはフラグメントは、典型的には、軽鎖または軽鎖フラグメントを接合し、かつ/またはそれらが、その抗原への当該フラグメントまたは誘導体の結合を可能にするコンフォメーションをとることを可能にするために、1つ以上のリンカーまたは他のアミノ酸配列を含むであろう。
【0056】
抗体のアミノ酸配列はもっぱら単一の供給源に由来してもよいし、「キメラ」であってもよい(すなわち、後段でさらに説明するとおり、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してもよい)。抗原結合タンパク質、抗体、または結合フラグメントは、ハイブリドーマで生産するか、組換えDNA技法によって生産するか、またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断によって生産することができる。別段の表示がある場合を除き、「抗体」という用語は、2本の完全長重鎖および2本の完全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、フラグメント、および変異種を包含する。
【0057】
「軽鎖」という用語は、完全長軽鎖を包含すると共に、必要に応じて適切な重鎖または重鎖フラグメント、誘導体、もしくは変異体との組合せで、抗原への特異的結合を付与するのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメント、誘導体、および変異体も包含する。完全長軽鎖は可変領域ドメインV
Lと定常領域ドメインC
Lとを含む。軽鎖の例として、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖が挙げられる。
【0058】
「重鎖」という用語は、完全長重鎖を包含すると共に、必要に応じて適切な軽鎖または軽鎖フラグメント、誘導体、もしくは変異体との組合せで、抗原への特異的結合を付与するのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメント、誘導体、および変異体も包含する。完全長重鎖は、可変領域ドメインV
Hと3つの定常領域ドメインC
H1、C
H2、およびC
H3とを含む。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプを含む)、IgMおよびIgE、ならびにその誘導体および変異体を含めて、どのアイソタイプであってもよい。
【0059】
本明細書にいう抗体または免疫グロブリン鎖(重鎖または軽鎖)の「免疫機能性フラグメント」は、完全長鎖中に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠いているが、抗原に特異的に結合する能力は有している、抗体の一部分(その部分が取得または合成された方法を問わない)を含む抗原結合タンパク質である。そのようなフラグメントは、ターゲット抗原に特異的に結合するという点で、生物学的に活性である。いくつかの実施形態では、そのようなフラグメントが、完全長軽鎖または完全長重鎖中に存在する少なくとも1つのCDRを保ち、またいくつかの実施形態では、単一の重鎖および/もしくは軽鎖またはその一部分を含むであろう。これらの生物活性フラグメントは、例えば組換えDNA技法によって、または抗原結合タンパク質の、例えばインタクトな抗体の、酵素的もしくは化学的切断によって、生産することができる。免疫機能性免疫グロブリンフラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、ドメイン抗体および一本鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、任意の哺乳動物供給源、例えば限定するわけではないが、ヒト、マウス、ラット、ラクダ科動物またはウサギなどに由来しうる。さらに、本明細書に開示する抗原結合タンパク質の機能性部分、例えば1つ以上のCDRを、第2のタンパク質または小分子に共有結合することで、二機能性の治療特性を有する、または血清中半減期が延長されている、体内の特定ターゲットを指向する治療剤を創製することも考えられる。
【0060】
「一本鎖抗体」は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とがフレキシブルなリンカーで接続されることで、抗原結合領域を形成する単一のポリペプチド鎖を形成している、Fv分子である。一本鎖抗体は、国際特許出願公開WO88/01649および米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号に詳述されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域だけを含有する免疫機能性免疫グロブリンフラグメントである。場合によっては、2つ以上のV
H領域をペプチドリンカーで共有結合的に接合することで、二価ドメイン抗体が創製される。二価ドメイン抗体の2つのV
H領域のターゲットは同じ抗原であっても異なる抗原であってもよい。
【0062】
「二価抗原結合タンパク質」または「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態では、それら2つの結合部位が同じ抗原特異性を有する。別の実施形態では、二価抗原結合タンパク質および二価抗体が二特異性である。
【0063】
「多重特異性抗原結合タンパク質」または「多重特異性抗体」は、2つ以上の抗原またはエピトープに特異的に結合するものである。
【0064】
「二特異性」、「二重特異性」または「二機能性」の抗原結合タンパク質または抗体は、それぞれが異なるエピトープに特異的に結合する2つの抗原結合部位を有する、それぞれハイブリッド抗原結合タンパク質またはハイブリッド抗体である。前記2つのエピトープは同じ分子上(例えばCCR7タンパク質上)に存在することも、異なる分子上(例えばCCR7タンパク質上とCCL19またはCCL21上)に存在することもできる。二特異性の抗原結合タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質または多重特異性抗体の一種であり、限定するわけではないがハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結などといった、さまざまな方法によって生産することができる。例えばSongsivilaiおよびLachmann,1990,Clin.Exp.Immunol.79:315−321、Kostelnyら,1992,J.Immunol.148:1547−1553を参照されたい。
【0065】
「阻害抗原結合タンパク質」、「阻害抗体」、「アンタゴニスト抗原結合タンパク質」、「アンタゴニスト抗体」、「中和抗原結合タンパク質」および「中和抗体」という用語は、それぞれ、そのターゲットに特異的に結合し、その結果、ターゲットの生物学的活性、例えばリガンド、受容体、結合パートナー、調節分子、もしくは基質と結合し、または反応を触媒し、シグナルを送り、もしくは増幅し、またはそれ自体もしくは別のタンパク質をリン酸化もしくは脱リン酸化する能力などを、低減または防止する抗原結合タンパク質または抗体を指す。
【0066】
同じターゲットに結合する抗原結合タンパク質(例えば中和抗原結合タンパク質または中和抗体)に関連して使用する場合、「競合する」という用語は、試験対象の抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその免疫機能性フラグメント)が、共通する抗原(例えばCCR7またはそのフラグメント)へのリファレンス抗原結合タンパク質(例えばリガンドまたはリファレンス抗体)の特異的結合を防止し、低減し、または阻害するアッセイによって、抗原結合タンパク質間の競合が決定されることを意味する。例えば次に挙げるような数多くのタイプの競合結合アッセイを使用することができる:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えばStahliら,1983,Methods in Enzymology 9:242−253参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えばKirklandら,1986,J.Immunol.137:3614−3619参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えばHarlowおよびLane(1988)「Antibodies,A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Press参照);I−125ラベルを用いる固相直接ラベルRIA(例えばMorelら,1988,Molec.Immunol.25:7−15参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えばCheungら,1990,Virology 176:546−552参照);および直接標識RIA(Moldenhauerら,1990,Scand.J.Immunol.32:77−82)。典型的には、そのようなアッセイでは、固体表面に結合された精製抗原が使用されるか、または未標識試験抗原結合タンパク質および標識リファレンス抗原結合タンパク質のいずれかを保持する細胞が使用される。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合したラベルの量を決定することによって測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)には、リファレンス抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質、リファレンス抗原結合タンパク質のエピトープとオーバーラップするエピトープ、およびオーバーラップはしないが試験抗原結合タンパク質とリファレンス抗原結合タンパク質との間で立体障害を起こしうるエピトープが含まれる。競合結合を決定するための具体的方法は、本明細書の実施例に記載する。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合は、それが、共通する抗原へのリファレンス抗原結合タンパク質の特異的結合を、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%、阻害するであろう。場合によっては、結合が、少なくとも80%、85%、90%、95%、もしくは97%またはそれ以上、阻害される。
【0067】
「抗原」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその免疫機能性フラグメントを含む)などの選択的結合剤によって結合されうると共に、その抗原に結合する能力を有する抗体を生産するために動物において使用することができる分子または分子の一部分を指す。抗原は、異なる抗原結合タンパク質(例えば抗体)と相互作用することができる1つ以上のエピトープを有しうる。
【0068】
用語「エピトープ」は、ある分子のうち、抗原結合タンパク質(例えば抗体)によって結合される部分である。この用語は、抗体などの抗原結合タンパク質に、またはT細胞受容体に、特異的に結合する能力を有する任意の決定基を包含する。エピトープは連続的である場合も、非連続的(例えばポリペプチドにおいて、ポリペプチド配列では互いに隣接していないが、その分子内にあっては、抗原結合タンパク質によって結合される、複数のアミノ酸残基)である場合もある。ある実施形態において、エピトープは、抗原結合タンパク質を生成させるために使用したエピトープと類似する三次元構造を含むが、抗原結合タンパク質を生成させるために使用したエピトープ中に見いだされるアミノ酸残基を含まないか、一部しか含まないという点で、ミメティックでありうる。ほとんどの場合、エピトープはタンパク質上に存在するが、場合によっては、核酸など、他の種類の分子上にも存在しうる。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などといった、分子の化学的に活性な表面基群を含み、特異的な三次元構造特徴および/または特異的な電荷特徴を有しうる。一般に、特定のターゲット抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または高分子の複雑な混合物において、当該ターゲット抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0069】
「同一性」という用語は、配列を整列して比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子間または2つ以上の核酸分子間の関係を指す。「パーセント同一性」とは、比較される分子中のアミノ酸間またはヌクレオチド間の同一残基のパーセントを意味し、比較される分子のうち最も小さい分子のサイズに基づいて計算される。これらの計算のためには、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって、アラインメント中のギャップ(もしあれば)に対処しなければならない。整列された核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用することができる方法として、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.編),1988,ニューヨーク州:Oxford University Press;「Biocomputing Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編),1993,ニューヨーク州:Academic Press;「Computer Analysis of Sequence Data,Part I」(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編),1994、ニュージャージー州:Humana Press;von Heinje,G.(1987)「Sequence Analysis in Molecular Biology」ニューヨーク州:Academic Press;「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編),1991,ニューヨーク州:M.Stockton Press;ならびにCarilloら,1988,SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されているものが挙げられる。
【0070】
パーセント同一性の計算では、比較する配列を、配列間の一致が最大になるように整列する。パーセント同一性を決定するために使用されるコンピュータプログラムは、GAPを含むGCGプログラムパッケージである(Devereuxら,1984,Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,ウィスコンシン州マディソン)。コンピュータアルゴリズムGAPは、パーセント配列同一性を決定しようとする2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列するために使用される。配列は、各々のアミノ酸またはヌクレオチドの最適な一致が得られるように整列される(アルゴリズムによって決定される「一致区間(matched span)」)。ギャップ開始ペナルティ(gap opening penalty)(これは、3×平均対角(average diagonal)として計算される;ここで「平均対角」とは使用されている比較行列の対角(diagonal)の平均であり、「対角」とは、その特定比較行列によって各完全アミノ酸一致に割り当てられるスコアまたは数字である)およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)(これは、通常、ギャップ開始ペナルティの1/10倍である)、ならびにPAM250やBLOSUM62などの比較行列が、前記アルゴリズムと一緒に使用される。ある実施形態では、標準的比較行列(PAM250比較行列についてはDayhoffら,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345−352を、またBLOSUM62比較行列についてはHenikoffら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:10915−10919を参照されたい)も、前記アルゴリズムによって使用される。
【0071】
GAPプログラムを使ってポリペプチド配列またはヌクレオチド配列に関するパーセント同一性を決定するためのパラメータは、次のとおりである:
アルゴリズム:Needlemanら,1970,J.Mol.Biol.48:443−453;
比較行列:Henikoffら,1992(前掲)のBLOSUM62
ギャップペナルティ(Gap Penalty):12(ただしエンドギャップについてはペナルティなし)
ギャップ長ペナルティ(Gap Length Penalty):4
類似性の閾値(Threshold of Similarity):0。
【0072】
2つのアミノ酸配列を整列するための整列スキームには、2つの配列の短い領域だけの一致を与えるものもあり、この整列された小さな領域は、たとえそれら2つの完全長配列間に有意な関係がなくても、極めて高い配列同一性を有しうる。したがって、所望であれば、ターゲットポリペプチドのうち、少なくとも50個の連続するアミノ酸にまたがるアラインメントが得られるように、選択した整列方法(GAPプログラム)を調節することができる。
【0073】
本明細書にいう「実質的に純粋」とは、記載した分子種が、存在する最も優勢な種であること、すなわちモルベースで、同じ混合物中の他のどの個別種よりも、豊富に存在することを意味する。ある実施形態において、実質的に純粋な分子は、対象の種が、存在する全ての高分子種の少なくとも50%(モルベース)を占める組成物である。別の実施形態では、実質的に純粋な組成物が、組成物中に存在する全ての高分子種の少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%を占めるであろう。別の実施形態では、対象の種が本質的に均一に精製され、この場合、夾雑種は、従来の検出方法では組成物中に検出することができず、したがって組成物は単一の検出可能な高分子種からなる。
【0074】
「処置する」という用語は、緩解、寛解、症状の減弱、または傷害、病態または状態を患者にとって許容しやすいものにすること、変性または衰弱の速度を遅くすること、変性の最終点の消耗度を低下させること、患者の肉体的または精神的幸福を増進することなどといった、任意の客観的または主観的パラメータを含む、傷害、病態、疾患または状態の防止、予防、処置または改善の成功を示す任意の徴候を指す。症状の処置または改善は、理学的検査、神経精神医学的検査、および/または精神医学的評価の結果を含む、客観的または主観的パラメータに基づくことができる。例えば、本明細書に提示するある方法は、炎症の発生を減少させ、炎症の寛解を引き起こし、かつ/または炎症に関連する症状を改善することにより、炎症状態の処置に成功する。
【0075】
治療的処置の「有効量」は、一般に、症状の重症度および/または頻度を低減し、症状および/または基礎にある原因を排除し、症状および/またはそれらの基礎にある原因の発生を防止し、かつ/または症状もしくはそれらの基礎にある原因に起因するまたはそれらに関連する損傷を好転させまたは治療するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量が、治療有効量または予防有効量である。「治療有効量」とは、病状(例えば炎症)または症状、特に病状に関連する状態または症状を治療するか、さもなければ、病状の進行または疾患に関連する他の任意の望ましくない症状を何にせよ多少なりとも防止し、妨げ、遅延させ、または反転させるのに十分な量である。「予防有効量」とは、対象に投与された時に、例えば炎症の発症(または再発)を防止しもしくは遅延させること、または炎症もしくは炎症症状の発症(または再発)の可能性を低減することなどといった、意図する予防効果を有するであろう医薬組成物の量である。完全な治療効果または予防効果は、1回の投薬では必ずしも生じず、一連の投薬後に初めて生じることもありうる。したがって治療有効量または予防有効量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0076】
「アミノ酸」は、当技術分野におけるその通常の意味を包含する。20種類の天然アミノ酸とそれらの略号は従来の用法に従う。あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる「Immunology--A Synthesis」第2版(E.S.GolubおよびD.R.Green編),Sinauer Associates:マサチューセッツ州サンダーランド(1991)を参照されたい。20種類の通常アミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)、非天然アミノ酸、例えばα−,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、および他の異常アミノ酸も、ポリペプチドの適切な構成要素になることができ、それらも「アミノ酸」という表現に包含される。異常アミノ酸の例としては、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニンなどのアミノ酸およびイミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書において使用するポリペプチドの表記では、標準的な用法と慣例に従って、左側方向がアミノ末端方向であり、右側方向がカルボキシル末端方向である。
【0077】
「CCR7媒介疾患」という用語は、炎症性疾患、感染性疾患、および自己免疫疾患を包含するが、これらに限定されるわけではない。本明細書にいう「自己免疫疾患」は、患者の免疫応答が患者自身の構成成分に向けられる病状および状態を指す。例えば、CCR7媒介疾患として、後天性免疫不全症候群(AIDS)、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患、多発性硬化症、アジソン病、糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、心臓疾患、冠動脈疾患、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、重症筋無力症、天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、アテローム性動脈硬化、エリスロポエチン抵抗性、移植片対宿主病、移植片拒絶、自己免疫性肝炎誘発性肝障害、胆汁性肝硬変、アルコール性肝硬変を含むアルコール誘発性肝障害、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、強直性脊柱炎を含む脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、および心臓疾患が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。「CCR7媒介疾患」という用語は、CCL19もしくはCCL21またはCCR7のレベルの増加、あるいはCCL19またはCCL21に対する感受性の増加に関連する任意の医学的状態も包含する。
【0078】
抗原結合タンパク質
一態様において、本発明は、CCR7(例えばヒトCCR7)に結合する抗原結合タンパク質(例えば抗体、抗体フラグメント、抗体誘導体、抗体ムテイン、および抗体変異体)を提供する。
【0079】
本発明の抗原結合タンパク質には、CCR7の生物学的活性を阻害する抗原結合タンパク質が含まれる。そのような生物学的活性の例として、シグナリング分子(例えばCCL19またはCCL21)に結合すること、およびシグナリング分子の結合に応答してシグナルを伝達することが挙げられる。
【0080】
異なる抗原結合タンパク質はCCR7の異なるドメインまたはエピトープに結合するか、異なる作用機序によって作用しうる。例として、CCR7へのCCL19またはCCL21の結合を妨害する抗原結合タンパク質、またはシグナル伝達を阻害する抗原結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。作用の部位は、例えば細胞内(例えば細胞内シグナリングカスケードを妨害することによる)であっても、細胞外であってもよい。抗原結合タンパク質は、CCL19またはCCL21が誘導する活性を完全に阻害しなくても本発明には役立ち、むしろ、CCL19またはCCL21の特定の活性を低減する抗原結合タンパク質を使用することも考えられる。(特定の疾患の処置におけるCCR7結合性抗原結合タンパク質の特定作用機序に関する本明細書における論述は例示に過ぎず、本明細書に提示する方法がそれらに束縛されることはない)。
【0081】
もう一つの態様において、本発明は、本明細書に記載する配列から選択される軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含むCCR7抗原結合タンパク質、または本明細書に記載する配列から選択される1つ以上のCDR配列を含むCCR7抗原結合タンパク質を提供する。本発明の抗原結合タンパク質の例として、本明細書に開示する6B4.1、6B5.1、6E1.2、6B4.1 LC desS、6E1.2 HC G2V、6E1.2 HC F80Y、6E1.2 HC G2V F80Y、6E1.2 LC H36Q、MAB22_KLC−V1、MAB22_KLC_V2、MAB22_KLC_V3、MAB22_KLC_V4、MAB22_KLC_V5、MAB22_KLC_V6、MAB22_KLC_V7、MAB22_KLC_V8、および/またはMAB22_HC_V1の配列の全部または一部を含む抗原結合タンパク質、抗体、ならびに抗体誘導体および抗体フラグメントが挙げられる。そのような抗原結合タンパク質の具体例として、抗体6B4.1[配列番号2および42]、抗体6B5.1[配列番号18および50]、抗体6E1.2[配列番号26および58]、および抗体mAb22[配列番号92および108]が挙げられる。本発明のさまざまな実施形態に見いだされるこれらの抗体の具体的フラグメントは、それぞれのシグナル配列、可変ドメイン、CDR、フレームワーク領域、および定常領域を含む。そのような実施形態の一つでは、抗原結合タンパク質が、6B4.1 HC、6B5.1 HC、6E1.2 HC、6E1.2 HC G2V、6E1.2 HC F80Y、6E1.2 HC G2V F80YまたはMAB22_HC_V1の重鎖可変ドメインを含む。もう一つのそのような実施形態では、抗原結合タンパク質が、6B4.1 LC、6B5.1 LC、6E1.2 LC、6B4.1 LC desS、6E1.2 LC H36Q、MAB22_KLC−V1、MAB22_KLC_V2、MAB22_KLC_V3、MAB22_KLC_V4、MAB22_KLC_V5、MAB22_KLC_V6、MAB22_KLC_V7、またはMAB22_KLC_V8の軽鎖可変ドメインを含む。もう一つのそのような実施形態では、抗原結合タンパク質が、抗体6B4.1、6B5.1、6E1.2の軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとを含むか、6B4.1の重鎖可変ドメインと6B4.1 LC desSの軽鎖可変ドメインとを含むか、6E1.2 LCの軽鎖可変ドメインと6E1.2 HC G2V、6E1.2 HC F80Y、または6E1.2 HC G2V F80Yの重鎖可変ドメインとを含むか、6E1.2 HCの重鎖可変ドメインと6E1.2 LC H36Qの軽鎖可変ドメインとを含む。もう一つのそのような実施形態では、抗原結合タンパク質が、抗体6B4.1 HC、6B5.1 HC、または6E1.2 HCの重鎖CDR配列を含む。もう一つのそのような実施形態では、抗原結合タンパク質が、抗体6B4.1、6B5.1、または6E1.2の軽鎖CDR配列を含む。もう一つのそのような実施形態では、抗原結合タンパク質が、重鎖CDR配列と、抗体6B4.1 LC、6B5.1 LC、または6E1.2 LCの軽鎖CDR配列とを含む。そのような実施形態のいくつかでは、抗原結合タンパク質が、抗体または抗体の抗原結合フラグメントである。
【0082】
もう一つの実施形態において、本発明は、本明細書に開示する軽鎖可変ドメインの配列と15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1残基しか相違せず、それら配列相違のそれぞれは、独立して、1アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換のいずれかであるアミノ酸の配列を含む、軽鎖可変ドメインを含むCCR7抗原結合タンパク質を提供する。もう一つの実施形態では、軽鎖可変ドメインが、本明細書に開示する軽鎖可変ドメイン配列から選択される軽鎖可変ドメインの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、軽鎖可変ドメインが、本明細書に開示するヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、軽鎖可変ドメインが、本明細書に開示するポリヌクレオチドの相補鎖に中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、軽鎖可変ドメインが、本明細書に開示するポリヌクレオチドの相補鎖に中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、軽鎖可変ドメインが、本明細書に開示する軽鎖ポリヌクレオチドの相補鎖に中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。
【0083】
もう一つの実施形態において、本発明は、本明細書に開示する重鎖可変ドメインの配列と15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1残基しか相違せず、それら配列相違のそれぞれは、独立して、1アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換のいずれかであるアミノ酸の配列を含む、重鎖可変ドメインを含むCCR7抗原結合タンパク質を提供する。もう一つの実施形態では、重鎖可変ドメインが、本明細書に開示する重鎖可変ドメイン配列の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、重鎖可変ドメインが、本明細書に開示するヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、重鎖可変ドメインが、本明細書に開示するポリヌクレオチドの相補鎖に中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、重鎖可変ドメインが、本明細書に開示するポリヌクレオチドの相補鎖に中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。もう一つの実施形態では、重鎖可変ドメインが、本明細書に開示する重鎖ポリヌクレオチドの相補鎖に中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。
【0084】
本発明の抗原結合タンパク質の特定実施形態は、本明細書に開示するCDRおよび/またはFRのうちの1つ以上のアミノ酸配列と同一な1つ以上のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に記載する軽鎖CDR1配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する軽鎖CDR2配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する軽鎖CDR3配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖CDR1配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖CDR2配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖CDR3配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する軽鎖FR1配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する軽鎖FR2配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する軽鎖FR3配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する軽鎖FR4配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖FR1配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖FR2配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖FR3配列を含む。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する重鎖FR4配列を含む。
【0085】
一実施形態において、本発明は、それぞれが本明細書に開示するCDR配列とは5、4、3、2、または1個以下のアミノ酸残基で相違する1つ以上のCDR配列を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0086】
もう一つの実施形態において、本発明は、ヒトCCR7の細胞外ドメインへの結合に関して本明細書に記載する抗体の1つ以上と交差競合する抗体を提供する。ここで、2つの抗体に関して、各抗体が他方の抗体の結合を少なくとも80%低減する場合、それら2つの抗体は「交差競合する」という。
【0087】
本明細書に開示するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を、例えばランダム変異導入法または部位指定変異導入法(例えばオリゴヌクレオチド指定部位特異的変異導入法)で改変することで、非変異型ポリヌクレオチドと比較して1つ以上の特定ヌクレオチドの置換、欠失、または挿入を含む改変オリゴヌクレオチドを創製することができる。そのような改変を行うための技法の例は、Walderら,1986,Gene 42:133;Bauerら,1985,Gene 37:73;Craik,BioTechniques,January 1985,12−19;Smithら著(1981)「Genetic Engineering:Principles and Methods」Plenum Press;および米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号に記載されている。これらの方法および他の方法を使って、例えば、望ましい性質(例えば、誘導体化されていない抗体との比較で、CCR7に対する増加したアフィニティ、アビディティ、もしくは特異性、インビボもしくはインビトロでの増加した活性もしくは安定性、または低減したインビボ副作用)を有する抗CCR7抗体の誘導体を作製することができる。
【0088】
本発明の範囲内にある抗CCR7抗体の他の誘導体として、抗CCR7抗体ポリペプチドのN末端またはC末端に融合された異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現などによる、抗CCR7抗体またはそのフラグメントと他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合コンジュゲートまたは集合コンジュゲートが挙げられる。例えば、コンジュゲートされるペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグなどのペプチドであることができる。抗原結合タンパク質含有融合タンパク質は、抗原結合タンパク質の精製または同定を容易にするために付加されたペプチド(例えばポリ−His)を含むことができる。抗原結合タンパク質は、Hoppら,Bio/Technology 6:1204,1988および米国特許第5,011,912号に記載されているように、FLAGペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)に連結することもできる。FLAGペプチドは抗原性が高く、特異的モノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合されるエピトープとなり、発現した組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAGペプチドが所与のポリペプチドに融合されている融合タンパク質を調製するのに役立つ試薬は市販されている(Sigma,ミズーリ州セントルイス)。
【0089】
1つ以上の抗原結合タンパク質を含有するオリゴマーを、CCR7アンタゴニストとして使用してもよい。オリゴマーは、共有結合で連結された、または非共有結合で連結された、二量体、三量体、またはさらに高次のオリゴマーの形態をとりうる。2つ以上の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーの使用が考えられ、その一例はホモ二量体である。他のオリゴマーとして、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体などが挙げられる。
【0090】
一実施形態は、抗原結合タンパク質に融合されたペプチド部分間の共有結合的または非共有結合的相互作用によって接合された複数の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーに向けられる。そのようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)であるか、オリゴマー化を促進する性質を有するペプチドであることができる。ロイシンジッパーおよび抗体由来のあるポリペプチドは、後段で詳述するように、それらに取り付けられた抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促進することができるペプチドの例である。
【0091】
特定の実施形態では、オリゴマーが2〜4つの抗原結合タンパク質を含む。オリゴマーの抗原結合タンパク質は、上述した形態のいずれか、例えば変異体またはフラグメントなど、任意の形態をとりうる。好ましくは、オリゴマーはCCR7結合活性を有する抗原結合タンパク質を含む。
【0092】
一実施形態では、免疫グロブリン由来のポリペプチドを使ってオリゴマーが調製される。抗体由来ポリペプチドのさまざまな部分(Fcドメインを含む)に融合されたある異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えばAshkenaziら,1991,PNAS USA 88:10535;Byrnら,1990,Nature 344:677、および「Current Protocols in Immunology」Suppl.p.4,10.19.1−10.19.11のHollenbaughら著(1992)「Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins」によって記載されている。
【0093】
本発明の一実施形態は、抗CCR7抗体のCCR7結合フラグメントを抗体のFc領域に融合することによって創製される2つの融合タンパク質を含む二量体に向けられる。この二量体は、例えば融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を適当な発現ベクター中に挿入し、その組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞中で遺伝子融合物を発現させ、発現した融合タンパク質を抗体そっくりの分子に集合させることによって作製することができ、その結果、鎖間ジスルフィド結合がFc部分間に形成されて二量体を与える。
【0094】
本明細書において使用する「Fcポリペプチド」という用語は、抗体のFc領域に由来するネイティブ型およびムテイン型のポリペプチドを包含する。二量体化を促進するヒンジ領域を含有するそのようなポリペプチドの切頭型も含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(およびそこから形成されるオリゴマー)には、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムでのアフィニティクロマトグラフィーによる容易な精製という利点がある。
【0095】
PCT出願WO93/10151(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている適切なFcポリペプチドの一つは、ヒトIgG1抗体のN末端ヒンジ領域からネイティブC末端まで伸びる一本鎖ポリペプチドである。もう一つの有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaumら,1994,EMBO J.13:3992−4001に記載されているFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変えられ、アミノ酸20がLeuからGluに変えられ、アミノ酸22がGlyからAlaに変えられている点を除けば、WO93/10151に提示されているネイティブFc配列のアミノ酸配列と同一である。このムテインはFc受容体に対して低減したアフィニティを呈する。
【0096】
別の実施形態では、ある抗体重鎖および/または抗体軽鎖の可変部分を、抗CCR7抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分で置換することができる。
【0097】
あるいは、オリゴマーは、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を伴うまたは伴わない、複数の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質である。適切なペプチドリンカーには、米国特許第4,751,180号および同第4,935,233号に記載されているものなどがある。
【0098】
オリゴマー抗原結合タンパク質を調製するためのもう一つの方法では、ロイシンジッパーが使用される。ロイシンジッパードメインは、それが見いだされるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、最初は、いくつかのDNA結合タンパク質に同定されたが(Landschulzら,1988,Science 240:1759)、それ以来、多種多様なタンパク質に見いだされている。既知のロイシンジッパーには、二量体化または三量体化する天然ペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマータンパク質を生産するのに適したロイシンジッパードメインの例はPCT出願WO94/10308に記載されており、肺サーファクタントタンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーは、参照により本明細書に組み込まれるHoppeら,1994,FEBS Letters 344:191に記載されている。そこに融合された異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする修飾ロイシンジッパーの使用は、Fanslowら,1994,Semin.Immunol.6:267−78に記載されている。あるアプローチでは、ロイシンジッパーペプチドに融合された抗CCR7抗体フラグメントまたは誘導体を含む組換え融合タンパク質を、適切な宿主細胞中で発現させ、形成される可溶性オリゴマー抗CCR7抗体フラグメントまたは誘導体を、培養上清から回収する。
【0099】
もう一つの態様において、本発明は、ヒトCCR7のリガンド結合ドメインに結合する抗原結合タンパク質を提供する。リガンド結合ドメインに結合する抗原結合タンパク質は、当技術分野において知られている任意の技法を使って作製することができる。例えば、そのような抗原結合タンパク質は、完全長CCR7ポリペプチドを使って(例えば膜結合型調製物において)、またはCCR7の可溶性細胞外ドメインフラグメントを使って、またはリガンド結合ドメインを含むもしくはリガンド結合ドメインからなるCCR7細胞外ドメインのさらに小さいフラグメントを使って、単離することができる。そうして単離された抗原結合タンパク質は、当技術分野において知られている任意の方法を使って、それらの結合特異性を決定するためにスクリーニングすることができる。適切なアッセイの例は、CCR7を発現する細胞へのCCL19またはCCL21の結合を阻害する能力に関して抗原結合タンパク質を試験するアッセイ、または細胞表面CCR7受容体へのCCL19またはCCL21の結合に起因する生物学的応答または細胞応答を低減する能力に関して抗原結合タンパク質を試験するアッセイである。
【0100】
もう一つの態様において、本発明は、本明細書に開示するリファレンス抗体、例えば6B4.1、6B5.1、または6E1.2と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態では、抗原結合タンパク質が、ヒトCCR7への結合に関してリファレンス抗体と競合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質とリファレンス抗体とが、ヒトCCR7への結合に関して交差競合する。もう一つの実施形態では、リファレンス抗体のエピトープおよび抗原結合タンパク質のエピトープが、ヒトCCR7(例えばヒトCCR7の可溶性フラグメント)に結合した抗体または抗原結合タンパク質のX線結晶構造を解析することによって決定される。そのような一実施形態において、エピトープは、ヒトCCR7の表面上の残基であって、リファレンス抗体または抗原結合タンパク質がヒトCCR7に結合した時に、ヒトCCR7がどちらにも結合していない時と比較して、溶媒露出度に少なくとも10%の低減を示す残基と定義される。一実施形態では、エピトープが、ヒトCCR7のCCL19またはCCL21結合ドメインと実質的にオーバーラップする。
【0101】
もう一つの態様において、本発明は、種選択性を示す抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、1つ以上の哺乳動物CCR7に、例えばヒトCCR7とマウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類CCR7のうちの1つ以上とに結合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、1つ以上の霊長類CCR7に、例えばヒトCCR7とカニクイザル、マーモセット、アカゲザル、およびチンパンジーCCR7のうちの1つ以上とに結合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、ヒト、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、またはチンパンジーCCR7に特異的に結合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類CCR7のうちの1つ以上に結合しない。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、マーモセットなどの新世界ザル種に結合しない。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、CCR7以外のどの天然タンパク質にも特異的結合を呈さない。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、哺乳動物CCR7以外のどの天然タンパク質にも特異的結合を呈さない。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、霊長類CCR7以外のどの天然タンパク質にも特異的結合を呈さない。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、ヒトCCR7以外のどの天然タンパク質にも特異的結合を呈さない。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトCCR7に特異的に結合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトCCR7に、類似する結合アフィニティで、特異的に結合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、ヒトCCL19またはCCL21とマウス、ラット、カニクイザル、およびヒトCCR7との結合をブロックする。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、ヒトCCL19またはCCL21とマウス、ラット、カニクイザル、およびヒトCCR7との結合を、類似するK
iでブロックする。
【0102】
CCR7に対する抗原結合タンパク質の選択性は、当技術分野において周知の方法を使用し、本明細書の教示に従って、決定することができる。例えば、ウェスタンブロット、FACS、ELISAまたはRIAを使って、選択性を決定することができる。
【0103】
本発明の抗原結合タンパク質の抗原結合フラグメントは、従来の技法で生産することができる。そのようなフラグメントの例として、FabフラグメントやF(ab’)2フラグメントが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。遺伝子工学的技法によって生産される抗体フラグメントおよび抗体誘導体も考えられる。
【0104】
さらなる実施形態として、キメラ抗体、例えばヒト化型の非ヒト(例えばマウス)モノクローナル抗体が挙げられる。そのようなヒト化抗体は、既知の技法を使って調製することができ、抗体をヒトに投与する場合に免疫原性が低減しているという利点がある。一実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体が、マウス抗体の可変ドメイン(またはその抗原結合部位の全部もしくは一部)およびヒト抗体由来の定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体フラグメントは、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位と、ヒト抗体由来の可変ドメインフラグメント(抗原結合部位を欠くもの)とを含みうる。キメラモノクローナル抗体およびさらに工学的に操作されたモノクローナル抗体を生産するための手法には、Riechmannら,1988,Nature 332:323、Liuら,1987,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 84:3439、Larrickら,1989,Bio/Technology 7:934、およびWinterら,1993,TIPS 14:139に記載されているものなどがある。一実施形態では、キメラ抗体がCDR移植抗体である。抗体をヒト化するための技法は、例えば米国特許出願第10/194,975号(2003年2月27日公開)、米国特許第5,869,619号、同第5,225,539号、同第5,821,337号、同第5,859,205号、Padlanら,1995,FASEB J.9:133−39、およびTamuraら,2000,J.Immunol.164:1432−41において論述されている。
【0105】
非ヒト動物においてヒト抗体または部分的ヒト抗体を生成させるための手法が開発されている。例えば、1つ以上の内在性免疫グロブリン遺伝子がさまざまな手段で不活化されたマウスが、調製されている。不活化されたマウス遺伝子を置き換えるために、ヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入されている。この動物で生産される抗体には、その動物に導入されたヒト遺伝物質によってコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖が組み込まれる。一実施形態では、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物を、CCR7ポリペプチドに対する抗体がその動物内で生成するように、CCR7ポリペプチドで免疫する。適切な免疫原の一例は可溶性ヒトCCR7、例えばその細胞外ドメインまたは他の免疫原性フラグメントを含むポリペプチドである。ヒト抗体または部分ヒト抗体を生産するためのトランスジェニック動物を作出し使用するための技法の例は、米国特許第5,814,318号、同第5,569,825号、および同第5,545,806号、Lo編「Antibody Engineering:Methods and Protocols」Humana Press,ニュージャージー州:191−200のDavisら著(2003)「Production of human antibodies from transgenic mice」、Kellermannら,2002,Curr Opin Biotechnol.13:593−97、Russelら,2000,Infect Immun.68:1820−26、Galloら,2000,Eur J Immun.30:534−40、Davisら,1999,Cancer Metastasis Rev.18:421−25、Green,1999,J Immunol Methods.231:11−23、Jakobovits,1998,Advanced Drug Delivery Reviews 31:33−42、Greenら,1998,J Exp Med.188:483−95、Jakobovits A,1998,Exp.Opin.Invest.Drugs.7:607−14、Tsudaら,1997,Genomics.42:413−21、Mendezら,1997,Nat Genet.15:146−56、Jakobovits,1994,Curr Biol.4:761−63、Arbonesら,1994,Immunity.1:247−60、Greenら,1994,Nat Genet.7:13−21、Jakobovitsら,1993,Nature.362:255−58、Jakobovitsら,1993,Proc Natl Acad Sci USA.90:2551−55、Chen,J.,M.Trounstine,F.W.Alt,F.Young,C.Kurahara,J.Loring,D.Huszar「Immunoglobulin gene rearrangement in B cell deficient mice generated by targeted deletion of the JH locus」International Immunology 5(1993):647−656、Choiら,1993,Nature Genetics 4:117−23、Fishwildら,1996,Nature Biotechnology 14:845−51、Hardingら,1995,Annals of the New York Academy of Sciences、Lonbergら,1994,Nature 368:856−59、Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101 113:49−101に記載の「Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies」、Lonbergら,1995,Internal Review of Immunology 13:65−93、Neuberger,1996,Nature Biotechnology 14:826、Taylorら,1992,Nucleic Acids Research 20:6287−95、Taylorら,1994,International Immunology 6:579−91、Tomizukaら,1997,Nature Genetics 16:133−43、Tomizukaら,2000,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 97:722−27、Tuaillonら,1993,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 90:3720−24、およびTuaillonら,1994,Journal of Immunology 152:2912−20に記載されている。
【0106】
もう一つの態様において、本発明は、CCR7に結合するモノクローナル抗体を提供する。モノクローナル抗体は、当技術分野において知られている任意の技法を使って、例えば免疫化スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から収穫した脾臓細胞を不死化することなどによって、生産することができる。脾臓細胞は当技術分野において知られている任意の技法を使って、例えば脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを作出することなどによって、不死化することができる。ハイブリドーマを作出する融合手法において使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは非抗体生産性であり、高い融合効率を有し、かつ所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を支持するある選択培地における骨髄腫細胞の成長を不可能にする酵素欠損を有する。マウス融合用の適切な細胞株の例にはSp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO,NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulがあり、ラット融合に使用される細胞株の例にはR210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210がある。細胞融合に役立つ他の細胞株はU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6である。
【0107】
一実施形態では、動物(例えばヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をCCR7免疫原で免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を収穫し、収穫した脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合することによってハイブリドーマ細胞を生成させ、ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、CCR7ポリペプチドに結合する抗体を生産するハイブリドーマ細胞株を同定することによって、ハイブリドーマ細胞株が作出される。そのようなハイブリドーマ細胞株、およびそれらが生産する抗CCR7モノクローナル抗体は、本発明に包含される。
【0108】
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は、当技術分野において知られている任意の技法を使って精製することができる。ハイブリドーマまたはmAbをさらにスクリーニングして、特定の性質、例えばCCL19またはCCL21が誘導する活性をブロックする能力などを有するmAbを同定してもよい。そのようなスクリーンの例を下記実施例に記載する。
【0109】
Schierら,1996,J.Mol.Biol.263:551に記載されているように、抗体結合部位の中心にある相補性決定領域(CDR)の分子進化を使って、増加したアフィニティを有する抗体、例えばc−erbB−2に対して増加したアフィニティを有する抗体が、単離されている。したがって、そのような技法はCCR7に対する抗体を調製する際に有用である。
【0110】
CCR7に対する抗原結合タンパク質は、例えばCCR7ポリペプチドの存在を検出するためのアッセイにおいて、インビトロで、またはインビボで、使用することができる。本抗原結合タンパク質は、イムノアフィニティクロマトグラフィーによるCCR7タンパク質の精製にも使用しうる。CCR7へのCCL19またはCCL21の結合をブロックすることもできる抗原結合タンパク質は、そのような結合に起因する生物学的活性を阻害するために使用することができる。ブロッキング抗原結合タンパク質は本発明の方法において使用することができる。CCL19またはCCL21アンタゴニストとして機能するそのような抗原結合タンパク質は、CCL19またはCCL21が誘発する任意の状態、例えば限定するわけではないが狼瘡、SLE、および関節炎などの処置に使用することができる。一実施形態では、トランスジェニックマウスの免疫化を伴う手法によって生成させたヒト抗CCR7モノクローナル抗体が、そのような状態の処置に使用される。
【0111】
抗原結合タンパク質は、CCL19またはCCL21が誘導する生物学的活性を阻害するために、インビトロ法で使用するか、インビボ投与することができる。こうして、CCL19またはCCL21と細胞表面CCR7との相互作用によって(直接的または間接的に)引き起こされるまたは悪化する障害(その例は本明細書に記載する)を処置することができる。一実施形態において、本発明は、治療を必要とする哺乳動物に、CCL19またはCCL21ブロッキング抗原結合タンパク質を、CCL19またはCCL21が誘導する生物学的活性を低減するのに有効な量で、インビボ投与することを含む治療法を提供する。
【0112】
本発明の抗原結合タンパク質には、CCL19またはCCL21の生物学的活性を阻害する部分ヒトモノクローナル抗体および完全ヒトモノクローナル抗体が含まれる。一実施形態は、ヒトCCR7を発現する細胞へのCCL19またはCCL21の結合を少なくとも部分的にブロックするヒトモノクローナル抗体に向けられる。一実施形態では、トランスジェニックマウスをCCR7免疫原で免疫することによって、抗体を生成させる。もう一つの実施形態では、免疫原がヒトCCR7ポリペプチド(例えばCCR7細胞外ドメインの全部または一部を含む可溶性フラグメント)である。そのような免疫マウスに由来するハイブリドーマ細胞株であって、CCR7に結合するモノクローナル抗体を分泌するものも、ここに提供される。
【0113】
ヒト抗体、部分ヒト抗体、またはヒト化抗体は、多くの応用に、とりわけヒト対象への抗体の投与を伴う応用に、好適であるだろうが、ある応用には他のタイプの抗原結合タンパク質が好適であるだろう。本発明の非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(例えばサル(例えばカニクイザルまたはアカゲザル)または類人猿(例えばチンパンジー))などといった任意の抗体産生動物に由来しうる。本発明の非ヒト抗体は、例えばインビトロで細胞培養ベースの応用や、本発明の抗体に対する免疫応答が起こらないか、わずかであるか、防止することができるか、問題にならないか、または望まれる他の任意の応用に使用することができる。一実施形態では、本発明の非ヒト抗体が、非ヒト対象に投与される。もう一つの実施形態では、非ヒト抗体が、非ヒト対象において免疫応答を引き出さない。もう一つの実施形態では、非ヒト抗体が非ヒト対象と同じ種から得られ、例えば本発明のマウス抗体がマウスに投与される。特定種からの抗体は、その種の動物を所望の免疫原(例えば可溶性CCR7ポリペプチド)で免疫することによって、またはその種の抗体を生成させるための人工的な系(例えば特定種の抗体を生成させるための細菌に基づく系またはファージディスプレイに基づく系)を使って、または例えば抗体の定常領域を別の種からの定常領域で置き換えたり、抗体の1つ以上のアミノ酸残基を別の種からの抗体の配列により近くなるように置き換えたりすることで、ある種からの抗体を別の種からの抗体に転化することによって、作製することができる。一実施形態では、抗体が、2つ以上の異なる種からの抗体に由来するアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。
【0114】
抗原結合タンパク質は、いくつかある従来技法のどの技法でも調製することができる。例えば、抗原結合タンパク質は、当技術分野において知られている任意の技法を使って、それを天然に発現する細胞から精製するか(例えば抗体を生産するハイブリドーマからその抗体を精製することができる)、または組換え発現系で生産することができる。例えば「Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses」Kennetら編,Plenum Press,ニューヨーク(1980)、および「Antibodies:A Laboratory Manual」HarlowおよびLand編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1988)を参照されたい。
【0115】
本発明の組換えポリペプチドの作製には、当技術分野において知られている任意の発現系を使用することができる。一般的には、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換する。使用しうる宿主細胞には、原核生物、酵母または高等真核細胞などがある。原核生物にはグラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば大腸菌または桿菌などがある。高等真核細胞には、昆虫細胞や、哺乳動物由来の樹立細胞株が含まれる。適切な哺乳動物宿主細胞株の例として、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら,1981,Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMcMahanら,1991,EMBO J.10:2821に記載のアフリカミドリザル腎臓細胞株CVIから派生したCVI/EBNA細胞株(ATCC CCL 70)が挙げられる。細菌宿主、真菌宿主、酵母宿主、および哺乳動物細胞宿主と共に使用するための適当なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Pouwelsらによって記載されている(「Cloning Vectors:A Laboratory Manual」Elsevier,ニューヨーク,1985)。
【0116】
ポリペプチドの発現を促進する条件化で形質転換細胞を培養し、ポリペプチドを従来のタンパク質精製手法で回収することができる。そのような精製手法の一つとして、例えばCCR7の全部または一部分(例えば細胞外ドメイン)が結合されているマトリックスなどでの、アフィニティクロマトグラフィーの使用が挙げられる。ここでの使用が考えられるポリペプチドとして、夾雑内在性物質を実質的に含まない実質的に均一な組換え哺乳類抗CCR7抗体ポリペプチドが挙げられる。
【0117】
抗原結合タンパク質は、いくつかある既知の技法のうちの任意の技法によって、調製し、所望の性質についてスクリーニングすることができる。それらの技法のうち、あるものは、目的の抗原結合タンパク質(例えば抗CCR7抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部分)をコードする核酸を単離すること、その核酸を組換えDNA技術によって操作することを伴う。核酸は、もう一つの目的の核酸に融合するか、例えば1つ以上のアミノ酸残基を付加、欠失、または置換するために(例えば変異導入法または他の従来技法によって)改変することができる。
【0118】
一態様において、本発明は、本発明の抗CCR7抗体の抗原結合フラグメントを提供する。そのようなフラグメントは、もっぱら抗体由来配列だけからなることも、追加の配列を含むこともできる。抗原結合フラグメントの例として、Fab、F(ab’)2、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびドメイン抗体が挙げられる。他の例が、Lundeら,2002,Biochem.Soc.Trans.30:500−06に挙げられている。
【0119】
一本鎖抗体は、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)フラグメントをアミノ酸橋(短いペプチドリンカー)を介して連結して、単一のポリペプチド鎖とすることによって形成させることができる。そのような一本鎖Fv(scFv)が、前記2つの可変ドメインポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNAの間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合することによって調製されている。その結果生じるポリペプチドは、2つの可変ドメイン間のフレキシブルリンカーの長さに依存して、折れ曲がって抗原結合性モノマーを形成するか、多量体(例えば二量体、三量体または四量体)を形成することができる(Korttら,1997,Prot.Eng.10:423;Korttら,2001,Biomol.Eng.18:95−108)。異なるVLおよびVH含有ポリペプチドを組み合わせることで、異なるエピトープに結合する多量体型scFvを形成させることができる(Kriangkumら,2001,Biomol.Eng.18:31−40)。一本鎖抗体を生産するために開発された技法には、米国特許第4,946,778号;Bird,1988,Science 242:423;Hustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879;Wardら,1989,Nature 334:544、de Graafら,2002,Methods Mol Biol.178:379−87に記載されているものがある。本明細書に記載する抗体に由来する一本鎖抗体として、本明細書に開示する1つ以上の可変ドメイン配列を含むscFv、または1つ以上の可変ドメイン配列からのCDR配列を1つ以上含むscFvが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質(例えば抗体、抗体フラグメント、および抗体誘導体)が、軽鎖および/または重鎖抗体定常領域を含む。当技術分野において知られている任意の抗体定常領域を使用することができる。軽鎖定常領域は、例えばカッパ型またはラムダ型の軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ型またはヒトラムダ型の軽鎖定常領域であることができる。重鎖定常領域は、例えばアルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型、またはミュー型の重鎖定常領域、例えばヒトアルファ型、ヒトデルタ型、ヒトイプシロン型、ヒトガンマ型、またはヒトミュー型の重鎖定常領域であることができる。一実施形態では、軽鎖または重鎖定常領域が、天然定常領域のフラグメント、誘導体、変異体、またはムテインである。
【0121】
目的の抗体から異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を誘導するための技法、すなわちサブクラススイッチングの技法は、知られている。したがって、例えばIgG抗体をIgM抗体から誘導することができ、その逆も可能である。そのような技法によって、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有するが、親抗体とは異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスに関連する生物学的性質も呈する、新しい抗体の調製が可能になる。組換えDNA技法を使用することができる。そのような手法では、特定抗体ポリペプチドをコードするクローン化DNA、例えば所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAなどを使用することができる。Lanttoら,2002,Methods Mol.Biol.178:303−16も参照されたい。
【0122】
したがって、本発明の抗原結合タンパク質には、例えば、本明細書に開示する可変ドメイン配列のうちの1つ以上を含み、かつ所望のアイソタイプ(例えばIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgE、およびIgD)を有するもの、ならびにそれらのFabフラグメントまたはF(ab’)2フラグメントが含まれる。さらにまた、IgG4を所望する場合は、IgG4抗体に不均一性をもたらしうるH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を緩和するために、参照により本明細書に組み込まれるBloomら,1997,Protein Science 6:407に記載されているように、ヒンジ領域に点変異(CPSCP→CPPCP)を導入することも望ましいかもしれない。
【0123】
異なる性質を有する抗原結合タンパク質(すなわちそれらが結合する抗原に対してさまざまなアフィニティを有する抗原結合タンパク質)を誘導するための技法も知られている。鎖シャッフリングと呼ばれるそのような技法の一つでは、免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーが線維状バクテリオファージの表面にディスプレイされ、ファージディスプレイと呼ばれることが多い。Marksら,1992,BioTechnology,10:779に記載されているように、鎖シャッフリングは、ハプテンである2−フェニルオキサゾール−5−オンに対する高アフィニティ抗体を調製するために使用されている。
【0124】
もう一つの実施形態において、本発明は、CCR7からの解離速度が低い抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態では、抗原結合タンパク質が1×10
−4s
−1以下のK
offを有する。もう一つの実施形態では、K
offが5×10
−5s
−1以下である。もう一つの実施形態では、K
offが本明細書に開示する抗体と実質的に同じである。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する抗体と実質的に同じK
offで、CCR7に結合する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、本明細書に開示する抗体からのCDRを1つ以上含む抗体と実質的に同じK
offで、CCR7に結合する。
【0125】
もう一つの態様において、本発明は、インビトロまたはインビボで(例えばヒト対象に投与した場合に)、少なくとも1日の半減期を有する抗原結合タンパク質を提供する。一実施形態では、抗原結合タンパク質が、少なくとも3日の半減期を有する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が4日以上の半減期を有する。もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、8日以上の半減期を有する。もう一つの実施形態では、非誘導体化または非修飾抗原結合タンパク質と比較して、より長い半減期を有するように、抗原結合タンパク質が誘導体化、または修飾される。もう一つの実施形態では、参照により本明細書に組み込まれるWO00/09560(2000年2月24日公開)に記述されているように、抗原結合タンパク質が、血清中半減期を増加させるために、1つ以上の点変異を含有する。
【0126】
本発明はさらに、多重特異性抗原結合タンパク質、例えば二特異性抗原結合タンパク質、例えば、2つの異なる抗原結合部位または領域を介して、CCR7の2つの異なるエピトープに結合する抗原結合タンパク質、またはCCR7のエピトープと別の分子のエピトープとに結合する抗原結合タンパク質も提供する。さらにまた、本明細書に開示する二特異性抗原結合タンパク質は、本明細書に記載する抗体のうちの一つからのCCR7結合部位と、本明細書に記載する抗体(他の刊行物の参照によって本明細書に記載するものを含む)のうちのもう一つからの第2のCCR7結合領域とを含むことができる。あるいは、二特異性抗原結合タンパク質は、本明細書に記載する抗体のうちの一つからの抗原結合部位と、当技術分野において知られているもう一つのCCR7抗体からの第2の抗原結合部位、または既知の方法もしくは本明細書に記載する方法によって調製される抗体からの第2の抗原結合部位とを含みうる。
【0127】
二特異性抗体を調製する方法は、当技術分野では数多く知られており、2001年4月20日に出願された米国特許出願第09/839,632号(参照により本明細書に組み込まれる)において論述されている。そのような方法には、Milsteinら,1983,Nature 305:537および他の研究者ら(米国特許第4,474,893号、米国特許第6,106,833号)に記載のハイブリッドハイブリドーマの使用や、抗体フラグメントの化学的カップリング(Brennanら,1985,Science 229:81;Glennieら,1987,J.Immunol.139:2367;米国特許第6,010,902号)などがある。さらにまた、組換え手段により、例えばロイシンジッパー部分(すなわち、優先的にヘテロ二量体を形成するFosタンパク質およびJunタンパク質からのもの;Kostelnyら,1992,J.Immnol.148:1547)を使って、または米国特許第5,582,996号に記載の他の鍵と鍵穴相互作用ドメイン構造を使って、二特異性抗体を生産することもできる。他の有用な技法には、Korttら,1997(前掲);米国特許第5,959,083号;および米国特許第5,807,706号に記載されているものがある。
【0128】
もう一つの態様において、本発明の抗原結合タンパク質は、抗体の誘導体を含む。誘導体化された抗体は、例えば特定の用途における増加した半減期などといった所望の性質を抗体に付与する任意の分子または物質を含むことができる。誘導体化された抗体は、例えば検出可能な(または標識)部分(例えば放射性分子、比色分子、抗原分子または酵素分子、検出可能なビーズ(例えば磁気ビーズまたは高電子密度(例えば金)ビーズ)、または別の分子に結合する分子(例えばビオチンまたはストレプトアビジン))、治療用もしくは診断用部分(例えば放射性部分、細胞毒性部分、または医薬活性部分)、または特定の用途(例えばヒト対象などの対象への投与、または他のインビボもしくはインビトロ使用)のために抗体の安定性を増加させる分子を含むことができる。抗体を誘導体化するために使用することができる分子の例として、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。抗体のアルブミン連結誘導体およびPEG化誘導体は、当技術分野において周知の技法を使って調製することができる。一実施形態では、抗体が、トランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体にコンジュゲートされるか、他の形で連結される。TTRまたはTTR変異体は、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン)(poly(n−vinyl pyurrolidone)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される化学物質などで、化学的に修飾することができる。米国特許出願公開第20030195154号。
【0129】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質を使用する、CCR7に結合する分子に関するスクリーニングの方法を提供する。任意の適切なスクリーニング技法を使用することができる。一実施形態では、CCR7分子、または本発明の抗原結合タンパク質が結合するそのフラグメントを、本発明の抗原結合タンパク質およびもう一つの分子と接触させる。ここで、もし前記もう一つの分子がCCR7への前記抗原結合タンパク質の結合を低減するのであれば、前記もう一つの分子はCCR7に結合する。抗原結合タンパク質の結合は、任意の適切な方法、例えばELISAなどを使って、検出することができる。CCR7への抗原結合タンパク質の結合の検出は、上で論じたように、抗原結合タンパク質を検出可能なように標識することによって簡単にすることができる。もう一つの実施形態では、CCR7結合分子をさらに解析して、それがCCR7媒介シグナリングを阻害するかどうかを決定する。
【0130】
核酸
一態様において、本発明は、単離された核酸分子を提供する。本核酸は、例えば抗原結合タンパク質の全部または一部、例えば本発明の抗体の一方の鎖もしくは両方の鎖、またはそのフラグメント、誘導体、ムテイン、もしくは変異体をコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定し、解析し、変異させまたは増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたはシークエンスプライマーとして使用するのに十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するアンチセンス核酸、および前記の相補配列を含む。本核酸は任意の長さであることができる。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000ヌクレオチド長またはそれ以上であることができ、かつ/または1つ以上の追加配列、例えば調節配列を含むことができ、かつ/またはより大きい核酸、例えばベクターの一部であることができる。本核酸は一本鎖または二本鎖であることができ、RNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにその人工的変異体(例えばペプチド核酸)を含むことができる。
【0131】
抗体ポリペプチド(例えば重鎖または軽鎖、可変ドメインのみ、または完全長)をコードする核酸は、CCR7で免疫されたマウスのB細胞から単離することができる。本核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来手法によって単離することができる。
【0132】
本発明の抗体のいくつかをコードする代表的な核酸配列を本明細書に開示する。6B4.1、6B5.1、6E1.2、6B4.1 LC desS、6E1.2 HC G2V、6E1.2 HC F80Y、6E1.2 HC G2V F80Y、6E1.2 LC H36Q、MAB22_KLC−V1、MAB22_KLC_V2、MAB22_KLC_V3、MAB22_KLC_V4、MAB22_KLC_V5、MAB22_KLC_V6、MAB22_KLC_V7、MAB22_KLC_V8、およびMAB22_HC_V1の可変ドメインをコードする特定核酸配列を、本明細書に開示する。遺伝コードの縮重ゆえに、本明細書に開示するポリペプチド配列のそれぞれが、多数の核酸配列によってコードされることは、当業者には理解されるであろう。本発明は、本発明の各抗原結合タンパク質または他のポリペプチドをコードする各縮重ヌクレオチド配列を提供する。
【0133】
本発明はさらに、他の核酸(例えば本明細書に開示するヌクレオチド配列を含む核酸)に特定のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。核酸をハイブリダイズさせるための方法は当技術分野ではよく知られている。例えば「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons,ニューヨーク(1989),6.3.1−6.3.6を参照されたい。本明細書における定義では、中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する前洗浄溶液、約50%ホルムアミド、6×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または他の類似するハイブリダイゼーション溶液、例えば約50%ホルムアミドを含有するものと、42℃のハイブリダイゼーション温度)、ならびに0.5×SSC、0.1%SDS中、60℃の洗浄条件を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件では、6×SSC中、45℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1×SSC、0.2%SDS中、68℃で1回以上の洗浄を行う。さらに当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄の条件を操作してハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加または減少させることで、互いに少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98または99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、典型的には、互いにハイブリダイズした状態を保つようにすることもできる。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本的パラメータと、適切な条件を工夫するための指針は、例えばSambrook、Fritsch、およびManiatisらが記載しており(1989「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,チャプター9および11;ならびに「Current Protocols in Molecular Biology」1995,Ausubelら編,John Wiley & Sons,Inc.,セクション2.10および6.3〜6.4)、当技術分野における通常の知識を有する者であれば、例えばDNAの長さおよび/または塩基組成などに基づいて、容易に決定することができる。
【0134】
変異によって核酸に変化を導入し、よって、その核酸がコードするポリペプチド(例えば抗原結合タンパク質)のアミノ酸配列を変化させることができる。変異は、当技術分野において知られている任意の技法を使って導入することができる。一実施形態では、1つ以上の特定アミノ酸残基を、例えば部位指定変異導入プロトコールを使って変化させる。もう一つの実施形態では、1つ以上のランダムに選択された残基を、例えばランダム変異導入プロトコールを使って変化させる。どんな作製方法でも、ミュータントポリペプチドを発現させ、所望の性質(例えばCCR7への結合またはCCR7へのCCL19またはCCL21の結合のブロッキング)についてスクリーニングすることができる。
【0135】
変異は、当該核酸がコードするポリペプチドの生物学的活性を著しく変化させずに、核酸に導入することができる。例えば、非必須アミノ酸残基におけるアミノ酸置換につながるヌクレオチド置換を行うことができる。一実施形態では、本明細書に記載するヌクレオチド配列、またはその所望のフラグメント、変異体、もしくは誘導体を、それが、アミノ酸残基の欠失、置換、または付加を1つ以上含むアミノ酸配列をコードするように変異させる。もう一つの実施形態では、当該核酸がコードするポリペプチドの生物学的活性(例えばCCR7の結合、CCL19結合またはCCL21結合の阻害など)を選択的に変化させる1つ以上の変異が核酸に導入される。例えば変異は生物学的活性を定量的または定性的に変化させることができる。定量的変化の例として、活性の増加、低減または排除が挙げられる。定性的変化の例として、抗原結合タンパク質の抗原特異性を変化させることが挙げられる。
【0136】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の核酸配列を検出するためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに適した核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、例えばプローブもしくはプライマーとして使用することができるフラグメント、または本発明のポリペプチドの活性部分(例えばCCR7結合部分)をコードするフラグメントなど、本発明の完全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部だけを含むことができる。
【0137】
本発明の核酸の配列に基づくプローブは、核酸または類似する核酸、例えば本発明のポリペプチドをコードする転写産物を検出するために使用することができる。プローブは、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子などといったラベル基を含むことができる。そのようなプローブは、ポリペプチドを発現する細胞を同定するために使用することができる。
【0138】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその一部をコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターの例として、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物細胞用ベクターおよび発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0139】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を、宿主細胞における当該核酸の発現に適した形態で含むことができる。組換え発現ベクターは、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の調節配列であって、発現させようとする核酸配列に作動的に連結されているものを含む。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの(例えばSV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、ある宿主細胞だけでヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば組織特異的調節配列、Vossら,1986,Trends Biochem.Sci.11:287、Maniatisら,1987,Science 236:1237参照、これらは参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)、および特定の処理または条件に応答してヌクレオチド配列の誘導性発現を指示するもの(例えば哺乳動物細胞におけるメタロチオネイン(metallothionin)プロモーター、ならびに原核系と真核系の両方におけるtet応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター(同上書参照))などがある。発現ベクターの設計が、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベルなどといった因子に依存しうることは、当業者には理解されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによって本明細書に記載する核酸によってコードされるタンパク質またはペプチド(融合タンパク質または融合ペプチドを含む)を生産することができる。
【0140】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞を提供する。宿主細胞は任意の原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば酵母、昆虫、または哺乳動物細胞(例えばCHO細胞))であることができる。ベクターDNAは原核細胞または真核細胞に従来の形質転換技法またはトランスフェクション技法によって導入することができる。哺乳動物細胞の安定トランスフェクションの場合、使用する発現ベクターおよびトランスフェクション技法に依存して、ごく一部の細胞しか、そのゲノムに外来DNAを組み込みえないことが知られている。これらの組込み体を同定し選択するために、一般的には、選択可能マーカー(例えば抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択可能マーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与するものがある。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択(例えば選択可能マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生き残り、他の細胞は死ぬだろう)、その他の方法によって同定することができる。
【0141】
抗CCR7抗原結合タンパク質を作製する方法 本発明の抗CCR7抗原結合タンパク質をコードする配列を含む宿主細胞は、前記抗CCR7抗原結合タンパク質を作製するために使用することができる。典型的には、宿主細胞において使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列と、外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列とを含有するであろう。ある実施形態において「フランキング配列」と総称されるそのような配列は、典型的には、次に挙げるヌクレオチド配列のうちの1つ以上を含むであろう:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナースプライス部位とアクセプタースプライス部位を含有する完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させようとするポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、および選択可能マーカー要素。これらの配列のそれぞれを以下に論述する。
【0142】
場合により、ベクターは「タグ」コード配列、すなわち抗CCR7抗原結合タンパク質コード配列の5’端または3’端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含有してもよく、このオリゴヌクレオチド配列は、ポリHis(例えばヘキサHis)、または対応する市販の抗体が存在する他の「タグ」、例えばFLAG、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニン)、もしくはmycをコードする。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現時にポリペプチドに融合され、宿主細胞からの抗CCR7抗原結合タンパク質のアフィニティ精製手段または検出手段として役立ちうる。アフィニティ精製は、例えば、タグに対する抗体をアフィニティマトリックスとして使用することにより、カラムクロマトグラフィーによって達成することができる。場合によっては、次いでタグを、精製された抗CCR7抗原結合タンパク質ポリペプチドから、さまざまな手段によって、例えばあるペプチダーゼを切断に使用することなどにより、除去することができる。
【0143】
フランキング配列は、相同(すなわち宿主細胞と同じ種および/または同じ株に由来するもの)、異種(宿主細胞の種または株以外の種に由来するもの)、ハイブリッド(すなわち2つ以上の供給源に由来するフランキング配列の組み合わせ)、合成またはネイティブであることができる。したがって、フランキング配列の供給源は、そのフランキング配列が宿主細胞の機構において機能的であり、宿主細胞の機構によって活性化されうる限り、任意の原核生物または真核生物、任意の脊椎生物もしくは無脊椎生物、または任意の植物であることができる。
【0144】
本発明のベクターにおいて有用なフランキング配列は、当技術分野においてよく知られているいくつかの方法のうち、どの方法によっても得ることができる。典型的には、ここで有用なフランキング配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されたものであるだろうから、適正な組織供給源から適当な制限エンドヌクレアーゼを使って単離することができる。いくつかの例では、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列が既知であるだろう。その場合は、核酸合成または核酸クローニングについて本明細書に記載する方法を使って、フランキング配列を合成することができる。
【0145】
フランキング配列の全部がわかっているか、一部しかわかっていないかに関わらず、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使って、かつ/または適切なプローブ、例えばオリゴヌクレオチドおよび/または同じ種または別の種からのフランキング配列フラグメントでゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、フランキング配列を得ることができる。フランキング配列が未知の場合は、例えばコード配列や、さらには別の1つまたは複数の遺伝子を含有しうる、より大きなDNAの一片から、フランキング配列を含有するDNAのフラグメントを単離することができる。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化で適正なDNAフラグメントを生産した後、アガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(カリフォルニア州チャッツワース)、または当業者に知られている他の方法を使った単離を行うことにより、達成することができる。この目的を達成するための適切な酵素の選択は、当技術分野における通常の知識を有する者には明白であるだろう。
【0146】
複製起点は、典型的には、商業的に購入された原核発現ベクターの一部であり、この起点は宿主細胞におけるベクターの増幅を助長する。選択したベクターが複製起点部位を含有しない場合は、既知の配列に基づいて複製起点を化学的に合成し、ベクター中にライゲーションすることができる。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,マサチューセッツ州ベバリー)由来の複製起点は大半のグラム陰性細菌に適し、さまざまなウイルス起点(例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎(vesicular stomatitus)ウイルス(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)は、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点構成要素は哺乳類発現ベクターには必要ない(例えばSV40起点は、それがウイルス初期プロモーターを含有するので、しばしば使用されるに過ぎない)。
【0147】
転写終結配列は典型的には、ポリペプチドコード領域の末端に対して3’側に位置し、転写を終結するのに役立つ。通常、原核細胞における転写終結配列は、G-Cリッチフラグメントとそれに続くポリT配列である。この配列は、ライブラリーから容易にクローニングされ、ベクターの一部として商業的に購入されることさえあるが、本明細書に記載するような核酸合成の方法を使って、容易に合成することもできる。
【0148】
選択可能マーカー遺伝子は、選択培養培地中で生育する宿主細胞の生存と成長に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核宿主細胞用の、抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)細胞の栄養要求性欠損を補完するタンパク質、または(c)天然培地もしくは合成培地からは利用できない決定的栄養素を供給するタンパク質をコードする。好ましい選択可能マーカーはカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。また、有利なことに、ネオマイシン耐性遺伝子は、原核宿主細胞でも真核宿主細胞でも選択のために使用することができる。
【0149】
他の選択可能遺伝子を使って、発現される遺伝子を増幅することもできる。増幅とは、成長または細胞の生存にとって不可欠なタンパク質の生産に必要な遺伝子が、累代の組換え細胞の染色体内でタンデムに何度も反復されるプロセスである。哺乳動物細胞用の適切な選択可能マーカーの例として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体は、ベクター中に存在する選択可能遺伝子のおかげで形質転換体だけがユニークに適応して生き残る選択圧の下に置かれる。選択圧は、培地中の選択剤の濃度を次々と増加させ、それによって選択可能遺伝子ともう一つの遺伝子(例えばCCR7ポリペプチドに結合する抗体)をコードするDNAとの両方の増幅につながる条件下で形質転換細胞を培養することによってかけられる。結果として、増幅されたDNAから増加した量のポリペプチド(例えば抗CCR7抗体)が合成される。
【0150】
リボソーム結合部位は通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、Shine−Dalgamo配列(原核生物)またはKozak配列(真核生物)によって特徴づけられる。この要素は、典型的には、プロモーターの3’側かつ発現されるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。
【0151】
真核宿主細胞発現系におけるグリコシル化が望まれる場合など、いくつかの例では、グリコシル化または収量を改良するために、さまざまなプレ配列またはプロ配列を操作することができる。例えば特定シグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を改変すること、またはグリコシル化にも影響を及ぼしうるプロ配列を付加することができる。最終タンパク質産物は、−1位(成熟タンパク質の第1アミノ酸に対する位置)に、完全には除去されていない、発現に付随する1つ以上の追加アミノ酸を有しうる。例えば、最終タンパク質産物は、アミノ末端に取り付けられた、ペプチダーゼ切断部位中に見いだされる1つまたは2つのアミノ酸残基を有しうる。あるいは、いくつかの酵素切断部位が使用されることにより、酵素が成熟ポリペプチド内の当該区域で切断を行う場合には、わずかに切り詰められた形態の所望のポリペプチドがもたらされることもありうる。
【0152】
本発明の発現ベクターおよびクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、かつ抗CCR7抗原結合タンパク質をコードする分子に作動的に連結された、プロモーターを含有するであろう。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンに対して上流(すなわち5’側)(一般的には約100〜1000bp以内)に位置して構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。プロモーターは、従来から、2つのクラス、すなわち誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの一方に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の何らかの変化、例えば栄養素の有無または温度の変化などに応答して、その制御下にあるDNAから、増加したレベルの転写を開始する。これに反して、構成的プロモーターは、それが作動的に連結している遺伝子を一様に転写する。すなわち遺伝子発現に対する制御はほとんどまたは全くない。さまざまな潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。適切なプロモーターは、制限酵素消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、所望のプロモーター配列をベクター中に挿入することによって、本発明の抗CCR7抗原結合タンパク質を構成する重鎖または軽鎖をコードするDNAに作動的に連結される。
【0153】
酵母宿主と共に使用するための適切なプロモーターも、当技術分野ではよく知られている。酵母エンハンサーを酵母プロモーターと共に使用すると有利である。哺乳動物宿主細胞と共に使用するための適切なプロモーターはよく知られており、例えばポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものがあるが、これらに限定されるわけではない。他の適切な哺乳類プロモーターとして、異種哺乳類プロモーター、例えば熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが挙げられる。
【0154】
興味の対象となりうる他のプロモーターとして、SV40初期プロモーター(BenoistおよびChambon,1981,Nature 290:304−10);CMVプロモーター(Thomsenら,1984,Proc.Natl.Acad.USA 81:659−663);ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら,1980,Cell 22:787−97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:144445);メタロチオネイン(metallothionine)遺伝子からのプロモーターおよび調節配列(Brinsterら,1982,Nature 296:39−42);および原核プロモーター、例えばベータ−ラクタマーゼプロモーター(Villa−Kamaroffら,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75:3727−31);またはtacプロモーター(DeBoerら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:21−25)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。組織特異性を呈し、トランジェニック動物で利用されている、次に挙げる動物転写制御領域も興味深い:膵腺房細胞中で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら,1984,Cell 38:63946;Ornitzら,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399409(1986);MacDonald,1987,Hepatology 7:425−515);膵ベータ細胞中で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115−22);リンパ系細胞中で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら,1984,Cell 38:647−58;Adamesら,1985,Nature 318:533−38;Alexanderら,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436−44);精巣細胞、乳房細胞、リンパ系細胞および肥満細胞中で活性なマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Lederら,1986,Cell 45:485−95);肝臓中で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら,1987,Genes and Devel.1:268−76);肝臓中で活性なアルファフェトタンパク質遺伝子制御領域(Krumlaufら,1985,Mol.Cell.Biol.,5:1639−48;Hammerら,1987,Science 235:53−58);肝臓中で活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら,1987,Genes and Devel.1:161−71);骨髄性細胞中で活性なベータ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramら,1985,Nature 315:33840;Kolliasら,1986,Cell 46:89−94);脳内のオリゴデンドロサイト細胞中で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら,1987,Cell 48:703−12);骨格筋中で活性なミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283−86);および視床下部中で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら,1986,Science 234:1372−78)。
【0155】
本発明の抗CCR7抗原結合タンパク質を構成する軽鎖または重鎖をコードするDNAの、高等真核細胞による転写を増加させるために、エンハンサー配列をベクターに挿入することができる。エンハンサーは、通常は約10〜300bp長のDNAのシス作用性要素であり、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは、配向および位置に比較的依存せず、転写単位に対して5’側の位置にも3’側の位置にも見いだされている。哺乳動物遺伝子から入手することができるエンハンサーはいくつか知られている(例えばグロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファフェトタンパク質およびインスリン)。しかし典型的には、ウイルスからのエンハンサーが使用される。当技術分野で知られているSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマ(polyorna)エンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核プロモーターを活性化するための例示的増強要素である。エンハンサーはベクター中でコード配列の5’側にも3’側にも位置しうるが、典型的にはプロモーターから5’側の部位に位置する。
【0156】
抗体の細胞外分泌を促進するために、適当なネイティブシグナル配列または異種シグナル配列(リーダー配列またはシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチドまたはリーダーの選択は、抗体を生産させようとする宿主細胞のタイプに依存し、異種シグナル配列でネイティブシグナル配列を置き換えることができる。哺乳類宿主細胞において機能的なシグナルペプチドの例には、次に挙げるものがある:米国特許第4,965,195号に記載のインターロイキン−7(IL−7)のシグナル配列;Cosmanら(1984,Nature 312:768)に記載のインターロイキン−2受容体のシグナル配列;EP特許第0367566号に記載のインターロイキン−4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載のI型インターロイキン−1受容体シグナルペプチド;EP特許第0460846号に記載のII型インターロイキン−1受容体シグナルペプチド;ヒトIgKのシグナル配列;およびヒト成長ホルモンのシグナル配列。
【0157】
本発明の発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築することができる。そのようなベクターは、所望するフランキング配列の全部を含有しても含有しなくてもよい。本明細書に記載するフランキング配列の1つ以上がベクター中に既に存在しない場合は、それらを個別に入手して、ベクター中にライゲーションすることができる。フランキング配列のそれぞれを入手するために使用される方法は当業者にはよく知られている。
【0158】
ベクターを構築し、抗CCR7抗体を構成する軽鎖、重鎖、または軽鎖と重鎖をコードする核酸分子を、そのベクターの適正な部位に挿入した後、増幅および/またはポリペプチド発現のために、完成したベクターを適切な宿主細胞中に挿入することができる。選択した宿主細胞への抗CCR7抗原結合タンパク質用の発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE−デキストランによるトランスフェクション、または他の既知の技法を含む周知の方法によって達成することができる。選択される方法は、一つには、使用しようとする宿主細胞のタイプに依存するであろう。
【0159】
宿主細胞は、適当な条件下で培養すると、抗CCR7抗原結合タンパク質を合成し、それは次に、培養培地(宿主細胞が抗CCR7抗原結合タンパク質を培地中に分泌する場合)から、または抗CCR7抗原結合タンパク質を生産する宿主細胞から直接的に(分泌されない場合)、収集することができる。適当な宿主細胞の選択は、所望する発現レベル、または活性にとって望ましいもしくは必要なポリペプチド修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)および生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易さなどといったさまざまな因子に依存するであろう。
【0160】
発現用の宿主として利用することができる哺乳動物細胞株は、当技術分野ではよく知られており、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手することができる不死化細胞株、例えば限定するわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、およびいくつかの他の細胞株が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ある実施形態では、どの細胞株が高い発現レベルを有し、CCR7結合特性を有する抗体を構成的に発現させるかを決定することによって、細胞株を選択することができる。もう一つの実施形態では、自分自身の抗体は作製しないが、異種抗体を作製し分泌させる能力を有するB細胞系譜からの細胞株を選択することができる。
【0161】
製剤
いくつかの実施形態において、本発明は、治療有効量の1つまたは複数の本発明の抗体を、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、および/またはアジュバントと共に含む医薬組成物を提供する。好ましくは、許容される製剤物質は、使用される投薬量および濃度において、受容者にとって無毒性である。好ましい実施形態では、治療有効量の抗CCR7抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0162】
ある実施形態では、許容される製剤材料が、好ましくは、使用される投薬量および濃度において受容者にとって無毒性である。
【0163】
ある実施形態において、医薬組成物は、例えば組成物のpH、容量オスモル濃度、粘度、清澄性、色、等張性、匂い、滅菌性、安定性、溶解速度または放出速度、吸着または浸透などを修飾し、維持し、または保存するための製剤材料を含有しうる。そのような実施形態では、適切な製剤材料として、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなど);抗微生物剤;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、炭酸水素塩、トリス−HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンなど);充填剤;単糖;二糖;および他の糖質(グルコース、マンノースまたはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶剤(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサオポール(tyloxapal)など);安定性強化剤(スクロースまたはソルビトールなど);張性強化剤(ハロゲン化アルカリ金属、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトールソルビトール);送達媒体;希釈剤;賦形剤および/または医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」第18版(A.R.Gennaro編),1990,Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0164】
ある実施形態において、最適な医薬組成物は、例えば意図する投与経路、送達様式および所望の投薬量などに依存して、当業者によって決定されるであろう。例えば「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」(前掲)を参照されたい。ある実施形態では、そのような組成物が、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼしうる。
【0165】
ある実施形態では、医薬組成物の主要媒体または主要担体が、水性または非水性でありうる。例えば適切な媒体または担体は注射用水、生理食塩溶液または人工脳脊髄液であって、場合により、非経口投与用の組成物では一般的な他の材料が補足されている。中性緩衝食塩水または血清アルブミンと混合された食塩水は、さらなる例示的媒体である。好ましい実施形態では、医薬組成物が、pHが約7.0〜8.5のトリス緩衝液、またはpHが約4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、さらにソルビトールまたはその適切な代用物を含みうる。本発明のある実施形態では、所望の純度を有する選択された組成物を最適な調合剤(「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」(前掲))と混合することにより、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、抗CCR7抗原結合タンパク質組成物を貯蔵用に調製することができる。さらに、ある実施形態では、スクロースなどの適当な賦形剤を使って、抗CCR7抗原結合タンパク質産物を凍結乾燥物として製剤化することができる。
【0166】
本発明の医薬組成物は、非経口送達用に選択することができる。あるいは、吸入用に、または消化管を介した送達用に、例えば経口送達用に、組成物を選択してもよい。そのような医薬上許容される組成物の調製は当技術分野の技能の範囲内である。
【0167】
製剤の構成要素は、好ましくは、投与部位にとって許容できる濃度で存在する。ある実施形態では、組成物を生理的pHまたはわずかに低いpH、典型的には約5〜約8のpH範囲内に維持するために、緩衝液が使用される。
【0168】
非経口投与が考えられる場合、本発明において使用するための治療用組成物は、医薬上許容される媒体中に所望の抗CCR7抗原結合タンパク質を含むパイロジェンフリーの非経口的に許容される水溶液の形態で提供することができる。非経口注射にとりわけ好適な媒体は滅菌蒸留水であり、そこに抗CCR7抗原結合タンパク質が適正に保存処理された滅菌等張液として製剤化される。ある実施形態において、調製は、デポー注射によって送達することができる製品の制御放出または持続放出をもたらしうる薬剤、例えば注射可能なマイクロスフェア、生分解性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームによる所望の分子の製剤化を伴いうる。ある実施形態では、循環系における存続時間の持続を促進する効果を有するヒアルロン酸も使用することができる。ある実施形態では、埋め込み可能な薬物送達デバイスを使って、所望の抗体分子を導入することができる。
【0169】
本発明の医薬組成物は、吸入用に製剤化することができる。これらの実施形態では、抗CCR7抗原結合タンパク質を、乾燥した吸入可能な粉末として製剤化することが有利である。好ましい実施形態では、エアロゾル送達用の噴射剤を使って抗CCR7抗原結合タンパク質吸入溶液も製剤化することができる。ある実施形態では、溶液を噴霧することができる。経肺投与と製剤化の方法は、国際特許出願PCT/US94/001875にさらに詳しく記載されており、参照により本明細書に組み込まれるこの出願には、化学修飾されたタンパク質の肺送達が記載されている。
【0170】
製剤を経口投与することも考えられる。この方法で投与される抗CCR7抗原結合タンパク質は、錠剤やカプセル剤などの固形剤形の配合に通例使用される担体を使って、またはそのような担体を使わずに、製剤化することができる。ある実施形態では、バイオアベイラビリティが最大になり、体循環前分解(pre−systemic degradation)が最小限に抑えられるような消化管中のポイントで製剤の活性部分が放出されるように、カプセル剤を設計することができる。抗CCR7抗原結合タンパク質の吸収が容易になるように追加の薬剤を含めることができる。希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および結合剤も使用することができる。
【0171】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、錠剤の製造に適した非毒性賦形剤と混合された1つまたは複数の抗CCR7抗原結合タンパク質の有効量が含まれるように提供される。錠剤を滅菌水または他の適当な媒体に溶解することにより、単位用量型の溶液を調製することができる。適切な賦形剤として、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、もしくはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤、またはデンプン、ゼラチン、もしくはアラビアゴムなどの結合剤、またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクなどの潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0172】
さらなる医薬組成物は、持続送達製剤または制御送達製剤中の抗CCR7抗原結合タンパク質を伴う製剤を含めて、当業者には明白であるだろう。他のさまざまな持続送達手段または制御送達手段を製剤化するための技法、例えばリポソーム担体、生分解性の微粒子または多孔性ビーズ、およびデポー注射剤なども、当業者には知られている。例えば国際特許出願PCT/US93/00829を参照されたい(この出願は参照により本明細書に組み込まれ、医薬組成物を送達するための多孔性ポリマー微粒子の制御放出について記載している)。持続放出調製物として、フィルムまたはマイクロカプセルなどといった造形品の形態にある半透過性ポリマーマトリックスを挙げることができる。持続放出マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(これは米国特許第3,773,919号および欧州特許出願公開EP058481に開示されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidmanら,1983,Biopolymers 22:547−556)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langerら,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167−277およびLangerら,1982,Chem.Tech.12:98−105)、エチレン酢酸ビニル(Langerら,前掲)またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開EP133,988)を含みうる。持続放出組成物として、当技術分野において知られているいくつかの方法のいずれかによって調製することができるリポソームも挙げることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるEppsteinら,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692;欧州特許出願公開EP036,676、EP088,046およびEP143,949を参照されたい。
【0173】
インビボ投与に使用される医薬組成物は典型的には滅菌調製物として提供される。滅菌は滅菌濾過膜による濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使った滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のどちらにでも行うことができる。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥された形態で、または溶解した状態で、貯蔵することができる。非経口組成物は一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針で突き刺すことができる栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0174】
医薬組成物を製剤化し終えたら、それを溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固形物、結晶、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として、滅菌バイアルに貯蔵することができる。そのような製剤は、すぐに使用できる(ready−to−use)形態で、または投与前に再構成される(例えば凍結乾燥された)形態で、貯蔵することができる。
【0175】
本発明は、単一用量投与単位(single−dose administration unit)を作るためのキットも提供する。本発明のキットはそれぞれ、乾燥タンパク質が入っている第1容器と、水性製剤が入っている第2容器とを、どちらも含有する。本発明のある実施形態では、単室式および多室式充填済みシリンジ(例えば液体シリンジおよびライオシリンジ(lyosyringe))を含んでいるキットも提供される。
【0176】
適応
本発明の方法および組成物(例えば抗CCR7抗原結合タンパク質、抗体、抗体フラグメント、抗体誘導体、および本発明の他の分子など)は、広範囲にわたる疾患、状態および適応を処置するために使用することができる。処置することができる疾患のタイプの例として、炎症状態、がん性状態、ならびに組織移植または臓器移植から生じる状態および合併症が挙げられる。
【0177】
CCR7活性は、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)と関係づけられている。クローン病は、腸の細菌叢に対するTH1性免疫応答の過剰活性を反映していると考えられる慢性で消耗性の炎症性腸疾患である。クローン病の病変は腸内のどこにでも現れ、時には消化管の他の場所にも現れうる。これに対し、潰瘍性大腸炎の病変は、通常は結腸に現れる。病変の性質も異なるが、これらの疾患は非常によく似ているので、それらを臨床的に鑑別することが困難な場合もある。例えば米国特許第6,558,661号を参照されたい。本明細書に記載する組成物および方法は、IBD患者を処置し、かつ/またはIBDの1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0178】
CCR7活性の阻害は組織移植拒絶または臓器移植拒絶に関係づけられている(Loら,2011,Transplantation 91:70−77;Liuら,2011,Eur J Immunol.41:611−23;Yulingら,Am J Transplant 8:1401−12)。本明細書に記載する組成物および方法は、組織移植または臓器移植レシピエント、例えば腎臓、心臓、皮膚、または肺移植レシピエントを処置し、かつ/または移植手術の1つ以上の合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0179】
CCR7活性は、喘息、アレルギー性気道炎症、気道平滑筋過形成、および線維性肺疾患に関係づけられている(Gompertsら,2007,J Leukoc Biol.82:449−56;Kawakamiら,2012,Cell Immunol.2575:24−32;Saundersら,2009,Clin Exp Allergy 39:1684−92)。本明細書に記載する組成物および方法は、喘息、アレルギー性気道炎症、気道平滑筋過形成、または線維性肺疾患を有する患者を処置し、かつ/またはこれらの疾患の1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0180】
CCR7活性は、関節リウマチに関連付けられている(Moschovakisら,2012,Eur J Immunol.42:1949−55)。本明細書に記載する組成物および方法は、関節リウマチを有する患者を処置し、かつ/または関節リウマチの1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0181】
CCR7活性は、多発性硬化症に関連付けられている(Aungら,2010,J Neuroimmunol.226:158−64)。本明細書に記載する組成物および方法は、多発性硬化症を有する患者を処置し、かつ/または多発性硬化症の1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0182】
CCR7活性は、アテローム性動脈硬化に関連付けられている(Luchtefeldら,2010,Circulation 122:1621−28)。本明細書に記載する組成物および方法は、アテローム性動脈硬化を有する患者を処置し、かつ/またはアテローム性動脈硬化の1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0183】
CCR7活性は、HIV感染に関連付けられている(Evansら,2012,Cytokine Growth Factor Rev.23:151−57)。本明細書に記載する組成物および方法は、HIVに感染した患者(AIDSを有する患者を含む)またはHIVと接触するリスクがある患者もしくはAIDSを発症するリスクがある患者を処置し、かつ/またはHIVもしくはAIDSの1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。
【0184】
CCR7活性は、がんの発生および伝播のある態様に関連付けられている(Ben−Baruch,2009,3:328−33)。本明細書に記載する組成物および方法は、がんを有する患者を処置し、かつ/またはがんの1つ以上の症状もしくは合併症を低減し、防止し、もしくは排除するために使用することができる。特定の一実施形態では、本発明の組成物および/または方法が、患者におけるがんの転移拡散を防止し、低減し、遅くし、または反転させるために使用される。
【0185】
治療方法および抗原結合タンパク質の投与
一態様において、本発明は、対象を処置する方法を提供する。本方法は、例えば、対象に対して概して有益な効果を有することができる。例えば、本方法は、対象の予想余命を増加させる。あるいは、本方法は、例えば、疾患、障害、状態、または不健康(「状態」)を処置、防止、治療、軽減、または改善(「処置」)することができる。本発明に従って処置される状態には、CCR7および/またはCCL19および/またはCCL21の不適当な発現または活性を特徴とする状態が含まれる。前述の状態の一部では、発現レベルまたは活性レベルが高すぎ、処置は、本明細書に記載するCCR7アンタゴニストを投与することを含む。前述の状態の他の例では、発現レベルまたは活性レベルが低すぎ、処置は、本明細書に記載するCCR7アゴニストを投与することを含む。前述の状態の他の例では、CCR7活性および/またはCCL19活性および/またはCCL21活性のレベルが必ずしも上昇していないが、それらに対する対象の感受性が増している。
【0186】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の組成物および/または処置の方法を使った処置の恩恵を受ける可能性が高い対象を同定する方法を提供する。そのような方法により、介護者は、治療レジメンを特定対象のニーズに合わせて調整することおよび処置の経過が無効または逆効果になる可能性を低減することが可能になりうる。一実施形態において、本発明は、対象が本明細書に記載する組成物または方法を使った処置の候補であるかどうかを決定する方法であって、対象におけるターゲット細胞タイプがCCR7を発現するかどうかを決定することを含み、ターゲット細胞タイプがCCR7を発現する場合は、その対象が処置の候補である方法を提供する。もう一つの実施形態において、本方法は、1ターゲット細胞あたりのCCR7分子のおよその平均数を決定することを含み、1細胞あたり10
2、10
3、10
4、10
5、または10
6個のCCR7は、その対象が処置の候補であることを示す。1ターゲット細胞あたりのCCR7分子のおよその平均数は、当技術分野において知られている任意の技法を使って、例えばターゲット細胞タイプの細胞を含む試料をCCR7結合分子で染色し、試料に結合したCCR7結合分子の量を検出することなどによって決定することができ、この場合、検出されるCCR7結合分子の量は、試料中のCCR7分子の平均数に比例する。もう一つの実施形態において、本発明は、1ターゲット細胞あたりのCCR7分子のおよその平均数を、標準試料と比較することを含み、1ターゲット細胞あたりのCCR7分子のおよその平均数が標準試料より多ければ、その対象は本発明の組成物および/または処置の方法を使った処置の恩恵を受ける可能性が高い。もう一つの態様において、本方法は、関心対象の組織において、例えばCCR7を発現する免疫細胞の近傍において、CCL19またはCCL21が上昇したレベルで存在するかどうかを決定することを含む。もう一つの態様において、本方法は、CCR7の下流にある分子がCCR7依存的に改変または活性化されているかどうかを決定することを含む。
【0187】
本明細書に記載するある方法は、CCR7結合性抗原結合タンパク質を対象に投与し、それによって、特定の状態に関与するCCL19またはCCL21が誘導する生物学的応答を低減することを含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、対象への投与によって、またはエクスビボ手法で、内在性CCR7をCCR7結合性抗原結合タンパク質と接触させることを伴う。
【0188】
「処置」という用語は、障害の少なくとも1つの症状もしくは他の態様の緩和もしくは防止、または疾患重症度の低減などを包含する。抗原結合タンパク質が、実用的な治療剤となるために、完全な治癒を達成する必要はなく、疾患の全ての症状または所見を根絶する必要もない。関連分野では知られているように、治療剤として使用される薬物は、所与の病状の重症度を低減しうるが、有用な治療剤と見なされるために、その疾患の全ての所見を消失させる必要はない。同様に、予防的に施行される処置も、実用的な予防剤となるために、状態の発症を防止するのに完全に有効である必要はない。疾患の悪影響を(例えばその症状の数または重症度を低減すること、または別の処置の有効性を増加させること、または別の有益な効果をもたらすことなどによって)低減するだけで、または対象において疾患が発生するまたは悪化する可能性を低減するだけで、十分である。本発明の一実施形態は、患者にCCR7アンタゴニストを、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを上回る持続的改善を誘導するのに十分な量で、かつ十分な時間にわたって、投与することを含む方法に向けられる。
【0189】
関連分野では理解されるとおり、本発明の分子を含む医薬組成物は、適応に適した方法で、対象に投与される。医薬組成物は、任意の適切な技法で、例えば限定するわけではないが、非経口的に、外用で、または吸入によって、投与することができる。注射する場合、医薬組成物は、例えば関節内、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮下経路で、ボーラス注射または持続注入によって投与することができる。例えば疾患または傷害の部位などへの局所的投与や、経皮送達およびインプラントからの持続放出が考えられる。吸入による投与には、例えば経鼻吸入または経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル形態のアンタゴニストの吸入などが含まれる。他の選択肢として、点眼液;丸剤、シロップ剤、口中錠またはチューインガムを含む経口調製物;ならびにローション、ゲル、スプレー、および軟膏などの外用調製物が挙げられる。
【0190】
エクスビボ法における抗原結合タンパク質の使用も考えられる。例えば患者の血液または他の体液を、エクスビボで、CCR7に結合する抗原結合タンパク質と接触させることができる。抗原結合タンパク質は、適切な不溶性マトリックスまたは固形支持材料に結合していてもよい。
【0191】
抗原結合タンパク質は、生理的に許容される担体、賦形剤または希釈剤などといった1つ以上の追加構成要素を含む組成物の形態で投与することが有利である。場合により、組成物はさらに、1つ以上の生理学的に活性な薬剤、例えば第2のCCR7阻害物質、抗炎症物質、抗血管新生物質、化学療法物質、または鎮痛物質を含む。さまざまな特定実施形態において、組成物は、CCR7結合性抗原結合タンパク質に加えて、1、2、3、4、5または6種類の生理活性剤を含む。
【0192】
一実施形態において、医薬組成物は、緩衝剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、低分子量ポリペプチド(例えばアミノ酸数が10個未満のもの)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストリンなどの糖質、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、安定剤、および賦形剤からなる群より選択される1つ以上の物質と一緒に、本発明の抗原結合タンパク質を含む。中性緩衝食塩水または同種血清アルブミンと混合された食塩水は、適当な希釈剤の例である。適当な業界標準に従って、ベンジルアルコールなどの保存剤も加えることができる。適当な賦形剤溶液(例えばスクロース)を希釈剤として使用して、組成物を凍結乾燥物として製剤化してもよい。適切な構成要素は、使用する投薬量および濃度において、受容者にとって無毒性である。医薬製剤中に使用しうる構成要素のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版(1980)および第20版(2000),Mack Publishing Company,ペンシルバニア州イーストンに記載されている。
【0193】
医師が使用するためのキットは、本発明のCCR7阻害物質、およびラベル、または本明細書で論述する状態のいずれかの処置における使用に関する他の説明書を含む。一実施形態において、キットは、1つ以上のCCR7結合性抗原結合タンパク質の滅菌調製物を含み、これは、上に開示した組成物の形態にあってもよく、1つ以上のバイアルに入っていてもよい。
【0194】
投薬量および投与頻度は、投与経路、使用するその特定抗原結合タンパク質、処置される疾患の性質および重症度、状態が急性であるか慢性であるか、ならびに対象のサイズおよび全身の状態などといった因子に応じて変動しうる。適当な投薬量は、関連技術分野において知られている手法によって、例えば用量漸増試験を伴いうる臨床治験で、決定することができる。
【0195】
本発明のCCR7阻害物質は、例えば1回投与するか、2回以上、例えばある期間にわたって定期的に投与することができる。特定の実施形態では、抗原結合タンパク質が、少なくとも1ヶ月またはそれ以上、例えば1ヶ月、2ヶ月もしくは3ヶ月の期間にわたって、または無期限に投与される。慢性状態の処置には、一般に、長期間処置が最も有効である。しかし急性状態の処置の場合、短期間の投与、例えば1〜6週間の投与で十分であるかもしれない。一般に、抗原結合タンパク質は、患者が、選択した1つまたは複数の指標について、医学的に妥当な程度のベースラインからの改善を明示するまで、投与される。
【0196】
本発明の特定の実施形態では、抗原結合タンパク質が、対象に、対象の体重1kgあたり1日あたり約1ng(「1ng/kg/日」)の抗原結合タンパク質〜約100mg/kg/日、約500ng/kg/日〜約50mg/kg/日、約5μg/kg/日〜約20mg/kg/日、および約5mg/kg/日〜約20mg/kg/日の投薬量で投与される。さらなる実施形態では、CCR7媒介疾患、状態または障害、例えば本明細書に開示する医学的障害を処置するために、抗原結合タンパク質が、成人に、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、もしくは週に7回またはそれ以上、投与される。注射する場合、成人1回あたりの抗原結合タンパク質の有効量は、例えば1〜20mg/m
2、または約5〜12mg/m
2の範囲に及びうる。あるいは、一律の用量(flat dose)を投与することができ、その用量は、1〜300mg/回の範囲に及びうる。一律の用量に関する一範囲は1回あたり約20〜30mgである。本発明の一実施形態では、25mg/回の一律用量を注射によって反復投与する。注射以外の投与経路を使用する場合、用量は標準的な医薬実務に従って適当に調節される。治療レジメンの一例では、用量約20〜30mgの抗原結合タンパク質が、少なくとも3週間の期間にわたって、週に1〜3回注射される。ただし、所望の改善度を誘導するには、より長い期間にわたる処置が必要になるかもしれない。小児対象(4〜17歳)の場合、適切なレジメンの一例では、0.4mg/kg(最大容量25mgまで)の抗原結合タンパク質が、週に2回または3回の投与で皮下注射される。
【0197】
本明細書に記載する方法の特定実施形態では、週に1回または2回、0.5mg〜10mg、好ましくは3〜5mgの抗原結合タンパク質の皮下注射が行われる。もう一つの実施形態は、週に1回、3mg以上の抗原結合タンパク質の(例えばネブライザーによる)経肺投与に向けられる。
【0198】
本明細書に記載する治療レジメンの例は、CCR7シグナリングが関与する状態を処置するために、週に1回、1.5〜3mgの用量での抗原結合タンパク質の皮下注射を含む。そのような状態の例は、本明細書に記載すると共に、当技術分野では知られている。抗原結合タンパク質の投与は、所望の結果が達成されるまで、例えば対象の症状が静まるまで、継続することができる。処置は、必要に応じて再開するか、あるいは維持料を投与することができる。
【0199】
本明細書に記載する治療レジメンの他の例は、対象の体重1キログラムあたり1、3、5、6、7、8、9、10、11、12、15、または20ミリグラム(mg/kg)の用量での本発明のCCR7阻害剤の皮下または静脈内投与を含む。この用量は、対象に1回投与するか、2回以上、ある間隔で、例えば1日1回、週に3回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に3回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または1年に1回、投与することができる。処置の継続期間、ならびに用量および/または処置頻度の変更は、その対象の特定ニーズに合致するように、処置の経過中に改変または変動させることができる。
【0200】
もう一つの実施形態では、抗原結合タンパク質が、抗原結合タンパク質の濃度を所望のレベル以上に維持し、バイオマーカーの量、濃度、または他の状態を所望のレベルに維持し、または処置している障害の重症度を反映する少なくとも1つの症状または他の指標の改善(好ましくは持続的改善)を誘導するのに十分な量で、十分な時間にわたって、対象に投与される。処置の量および時間が十分であるかどうかを決定するために、対象の不健康、疾患または状態の程度を反映するさまざまな指標を評価することができる。そのような指標として、例えば疾患重症度、症状または問題の障害の所見の臨床上認識されている指標が挙げられる。一実施形態では、対象が2〜4週間隔たった少なくとも2つの機会に改善を呈するのであれば、その改善は持続的であると見なされる。改善の程度は、一般に、医師によって決定され、医師は、徴候、症状、生検、または他の試験結果に基づいてこの決定を行うことができ、また医師は、対象に与えられる質問票、例えば所与の疾患のために開発された生活の質に関する質問票を使用することもできる。
【0201】
併用療法
大半のCCR7媒介疾患には処置方法が存在する。ただし、これらの処置の多くは有効性に限界があるか、患者の一部にしか有効でないか、かつ/またはかなりの毒性があって、それが処置の患者認容性を制限している。本明細書に記載するCCR7阻害剤は、CCR7媒介疾患に関する他の既存の治療法と併用することができる。
【0202】
一実施形態では、クローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)を患っている患者を、IBDの治療法と本明細書に記載する抗CCR7抗体とで並行して処置することができる。IBDの既存の治療法として、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸およびその誘導体(オルサラジン、バルサラジド、およびメサラミンなど)、抗IFN−γ抗体、抗TNF抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブペゴールを含む)、経口投与用または非経口投与用のコルチコステロイド(プレドニゾン、メチルプレドニゾン、ブデソニド、またはヒドロコルチゾンを含む)、副腎皮質刺激ホルモン、抗生物質(メトロニダゾール、シプロフロキサシン、またはリファキシミンを含む)、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、およびサリドマイドが挙げられる。
【0203】
別の実施形態では、関節リウマチを患っている患者を、RA治療に使用される薬物と本明細書に記載する抗CCR7抗体とで並行して処置することができる。関節リウマチ(RA)の治療法としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(アスピリンおよびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤など)、疾患修飾性抗炎症薬(DMARD)(メトトレキサート、レフルノミド、およびスルファサラジンなど)、抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキンなど)、シクロホスファミド、D−ペニシラミン、アザチオプリン、金塩、腫瘍壊死因子阻害剤(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブペゴールなど)、リツキシマブなどのCD20阻害剤、アナキンラなどのIL−1アンタゴニスト、トシリズマブなどのIL−6阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害剤(トファシチニブ)、アバタセプト、およびグルココルチコイドなどが挙げられる。
【実施例】
【0204】
実施例1:ヒトモノクローナル抗体の調製
次に挙げるものを含む1つ以上の適切な形態のCCR7抗原を使って免疫化を行った:(1)huCCR7を安定に発現するように工学的に操作したCHO/AM1D細胞、(2)完全長ヒトCCR7を安定に発現するように工学的に操作したマウスL1.2細胞、および(3)ヒトCCR7を一過性にトランスフェクトした293T細胞。
【0205】
1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759,620号ならびに国際特許出願WO98/24893およびWO00/76310(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法に従って、XENOMOUSE(商標)(Amgen,カリフォルニア州サウザンドオークス)の初回免疫化には、適切な量の免疫原(すなわち、3〜4×10
6細胞/マウスの上記安定トランスフェクトCHO細胞、一過性トランスフェクト293T細胞、または他のCCR7発現細胞タイプ)を使用した。初回免疫化後は、引き続いて免疫原(2.0×10
6個のCCR7トランスフェクト細胞/マウス)による追加免疫を、マウスにおける適切な抗CCR7価を誘導するのに必要なスケジュールで、必要な期間にわたって施行した。力価は適切な方法、例えば蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって決定した。
【0206】
適切な力価を呈する動物を同定し、流入領域リンパ節からリンパ球を取得し、必要であればコホートごとにプールした。適切な培地(例えばダルベッコ変法イーグル培地;DMEM;Invitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)から入手))中で摩砕して組織から細胞を遊離させることによってリンパ組織からリンパ球を分離し、DMEMに懸濁した。標準的方法を使ってB細胞を選択し、かつ/または増殖し、適切な融合パートナー、例えば非分泌型骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(American Type Culture Collection CRL 1580;Kearneyら(1979)J.Immunol.123:1548−1550)などと、当技術分野において知られている技法を使って融合した。
【0207】
適切な融合方法の一つでは、リンパ球を融合パートナー細胞と1:4の比で混合した。その細胞混合物を400×gで4分間の遠心分離によって穏やかにペレット化し、上清をデカントし、細胞混合物を穏やかに混合した。PEG/DMSO(ポリエチレングリコール/ジメチルスルホキシド;Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手;リンパ球100万個につき1ml)で融合を誘発した。穏やかに撹拌しながらPEG/DMSOを1分かけてゆっくり加えた後、1分間混合した。次に、穏やかに撹拌しながらIDMEM(グルタミンを含まないDMEM;B細胞100万個につき2ml)を2分かけて加えてから、IDMEM(B細胞100万個につき8ml)を3分かけて加えた。
【0208】
融合した細胞をペレット化し(400×g、6分)、B細胞100万個につき20mlの選択培地(例えばアザセリンおよびヒポキサンチン[HA]ならびに必要に応じて他の添加物を含有するDMEM)に再懸濁した。細胞を37℃で20〜30分間インキュベートした後、200mlの選択培地に再懸濁し、T175フラスコで3〜4日間培養してから、96ウェルプレートに移した。
【0209】
結果として生じるコロニーのクローン性が最大になるように、標準的技法を使って、細胞を96ウェルプレートに分配した。最初からモノクローン性を保証するために、代替的方法も使用し、融合された細胞を384ウェルプレートに直接、クローン的にプレーティングした。数日間の培養後に上清を集め、ヒトCCR7受容体への結合の確認を含めて、下記の実施例で詳述するスクリーニングアッセイに付した。陽性細胞をさらに選択し、標準的クローニングおよびサブクローニング技法に付した。クローン株をインビトロで増殖し、分泌されたヒト抗体を解析のために得た。
【0210】
このようにして、およそ1ヶ月〜2ヶ月半の期間にわたる11〜17回の範囲の免疫処置により、完全長CCR7を発現する細胞で、マウスを免疫した。CCR7特異的抗体を分泌する数個のハイブリドーマ株を得て、それらの抗体をさらに特徴づけた。
【0211】
こうして生成させた抗体には、6B4.1、6B5.1、および6E1.2が含まれていた。
【0212】
実施例2:FMATによる結合抗体の選択
14日間の培養後に、FMAT(Fluorometric Microvolume Assay Technology)で、ヒトCCR7がトランスフェクトされているCHO AM1/D/huCCR7細胞株または組換えHEK293T細胞のいずれかに対するスクリーニングと、親CHO/AM1D細胞またはHEK293T細胞に対する対比スクリーニングとによって、ハイブリドーマ上清をCCR7特異的モノクローナル抗体についてスクリーニングした。簡単に述べると、Freestyle培地(Invitrogen;カリフォルニア州カールズバッド)中の細胞を、384ウェルFMATプレートに、体積を50μL/ウェルにして、安定トランスフェクタントについては3500細胞/ウェルの密度で、また親細胞については8500細胞/ウェルの密度で播種し、細胞を37℃で終夜インキュベートした。次に20μL/ウェルの上清を加え、プレートを4℃で約1時間インキュベートした後、10μL/ウェルの抗ヒトIgG−Cy5二次抗体を、2.8μg/mlの濃度(最終濃度400ng/ml)で加えた。次にプレートを4℃で1時間インキュベートし、FMAT Cellular Detection System(Applied Biosystems,ニューヨーク州グランドアイランド)を使って蛍光を読み取った。
【0213】
FMAT法により、全部で81のハイブリドーマ上清が、CCR7受容体発現細胞には結合するが、親細胞には結合しないと同定された。次に、これらの上清を後述するCCR7機能アッセイで試験した。
【0214】
実施例3:ヒト化抗体の調製
正常マウス(すなわちマウス免疫系を持つマウス)をヒトCCR7発現細胞で免疫した。これらのマウスから、ブロッキング抗体MAb22を含むマウス抗ヒトCCR7抗体を単離した。重鎖定常領域残基をそれぞれのヒト対応物で置き換えることによってMAb22をキメラ化し、MAb22_HC_V1およびMAb22_LC_V1を生成させた。この抗体は、ヒトCCR7に結合するというその能力を保っていた。フレームワーク領域1、2、3、および4を改変することによってこの抗体の軽鎖をさらに改変して、一連のヒト化MAb22変異体を生成させた。これにより、配列MAb22_KLC_V2、MAb22_KLC_V3、MAb22_KLC_V4、MAb22_KLC_V5、MAb22_KLC_V6、MAb22_KLC_V7、およびMAb22_KLC_V8が作出された。
【0215】
実施例4:抗体アンタゴニストを同定するための機能スクリーニング ハイブリドーマ上清を、CCL19依存的またはCCL21依存的CCR7シグナリングをブロックする能力についてスクリーニングした。使用した機能アッセイは、工学的に操作されたCHO細胞株を使用するヒトCCR7またはカニクイザル(cyno)CCR7依存的エクオリン系リポーターシステムである。このアッセイは、96ウェルプレートに60,000細胞/ウェルを播種し、それらを37℃で終夜成長させることによって行った。2日目に、成長培地を取り除き、30μMセレンテラジンを含有するアッセイ緩衝液を細胞に加えた。次に細胞を34℃で3時間インキュベートした。次に、ハイブリドーマ上清または対照試料を各ウェルにスパイクし、34℃でさらに30分間インキュベートした。次にCCL19リガンドをEC
80濃度(約113.6nM)で加えた。あるいは、CCL21リガンドをEC
80濃度(約166.7nM)で使用した。次に、469nmの波長で放射される青色光をミニFLASHマシン(mini FLASH machine)で検出することによって、エクオリン活性をアッセイする。CCL19依存的またはCCL21依存的CCR7シグナリングをブロックする抗体を、活性化エクオリンのレベルを低減してシグナル強度の低減をもたらした試料として同定した。ハイブリドーマ上清について生成したデータを
図2に示す。陰性対照と比較して50%以上のシグナルの低減を引き起こす試料として、アンタゴニストを同定した。同様のアプローチで、同じアッセイを使って、精製抗体試料のIC
50活性を決定した。データを
図3および
図4に示す。
【0216】
実施例5:エピトープマッピング
ヒトCCR7の一連の変異型変異体を作製した。各変異体は、その細胞外ドメイン(ECD)、細胞外ループ(ECL)1、ECL2、またはECL3に、hCCR7アミノ酸残基をそれぞれの対応するマウスCCR7残基に転化する変化を含有した。ECDでは、位置D35E、F44Y、L47VおよびS49Fに変異を導入した。ECL1では、A118E、V123I、H127YおよびF128L位に変異導入を行った。ECL2では、D198G、R201K、S202N、S204G、Q206D、A207T、M208L、I213V、T214S、E215AおよびH216Q位に変異導入を行った。ECL3については、位置S295N、T297SおよびL300Tに変異導入を行った。
【0217】
変異導入は次のオリゴを使って行った:
【化1】
【0218】
前記オリゴを50ng/μlの濃度に希釈した。次に示すテンプレートDNA pcDNA3.1 Neo−hCCR7(20100121357)100ngを使って、PCR反応をセットアップした。
【0219】
【化2】
【0220】
【化3】
【0221】
各々の変異について、QuikChange Multi Site−Site Directed Mutagenesis Kit(カタログ番号200531)(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)を使用し、製造者の説明書に従って、PCR産物を生成させた。その結果生じたPCR産物をDpnI消化してから、Top10化学コンピテントセル(Invitrogen,ニューヨーク州グランドアイランド)に形質転換した。各コンストラクトについて個々のコロニーを拾い、配列決定した。正しい配列を持つクローンをスケールアップし、再び配列決定した。最終的なクローンDNA配列と翻訳されたタンパク質配列は次のとおりである。
【0222】
【化4】
【0223】
【化5】
【0224】
【化6】
【0225】
【化7】
【0226】
【化8】
【0227】
【化9】
【0228】
【化10】
【0229】
【化11】
【0230】
【化12】
【0231】
【化13】
【0232】
【化14】
【0233】
【化15】
【0234】
【化16】
【0235】
【化17】
【0236】
【化18】
【0237】
【化19】
【0238】
【化20】
【0239】
【化21】
【0240】
【化22】
【0241】
【化23】
【0242】
【化24】
【0243】
【化25】
【0244】
【化26】
【0245】
【化27】
【0246】
【化28】
【0247】
【化29】
【0248】
【化30】
【0249】
【化31】
【0250】
【化32】
【0251】
【化33】
【0252】
【化34】
【0253】
【化35】
【0254】
【化36】
【0255】
【化37】
【0256】
【化38】
【0257】
【化39】
【0258】
【化40】
【0259】
【化41】
【0260】
【化42】
【0261】
【化43】
【0262】
【化44】
【0263】
【化45】
【0264】
【化46】
【0265】
【化47】
【0266】
Fugene HD Transfection Reagent(カタログ番号04709705001)(Roche Applied Sciences,インディアナ州インディアナポリス)を使用し、製造者のプロトコールに従って、22個のコンストラクトのそれぞれを、293T細胞にトランスフェクトした。使用したDNA対Fugene HDの比は1:3であった。トランスフェクションに関する対照は、上に挙げたpcDNA3.1 Neo−hCCR7(20100121357)および次に示すpcDNA3.1 Neo−mouseCCR7(20060298628)とした。
【0267】
【化48】
【0268】
【化49】
【0269】
48時間後に、トランスフェクト細胞を収穫し、PBS+5%FBSで2回洗浄した。Nexcelom Cell Counter(Nexcelom Bioscience,マサチューセッツ州ローレンス)を使って細胞をカウントし、96ウェル丸底プレートに1ウェルあたり250,000個の細胞をプレーティングした。各コンストラクトをトランスフェクトした細胞を二つ一組にして次のように染色した:無染色対照、6B4.1一次Abに続いてヤギ抗ヒト−PE二次Ab、6B5.1一次Abに続いてヤギ抗ヒト−PE二次Ab、mAb197一次Ab(R&D Systems,ミネソタ州ミネアポリス)に続いてヤギ抗マウス−PE二次Ab、ならびに二次Abヤギ抗マウス−PEだけおよびヤギ抗ヒト−PEだけの対照。細胞をフローサイトメトリーによって視覚化し、幾何平均を生成して、解析した。
【0270】
図5は、mAb197が、6B4.1および6B5.1と比較して、F44Y変異を有するCDRコンストラクトに対して低い結合を示したことを示しており、抗体6B4.1および6B5.1が、それぞれmAb197とは異なるエピトープに結合することを実証している。3つの抗体はいずれも、野生型ヒトCCR7と比べて、D35変異体にはそれぞれほぼ同じ程度に、またL47V変異体には低く、またS49F変異体にはより良く結合した。これらの抗体のうち、mAb197だけは野生型マウスCCR7に結合した。
【0271】
図6は、ECL1内の変異体への結合に明白な相違がないことを示している。3つの抗体はそれぞれ各ミュータントに、野生型ヒトCCR7へのそれらの結合とほぼ同程度に結合した。
【0272】
図7は、mAb197が示すECL2のS202N、S204G、およびA207T変異体への(野生型ヒトCCR7へのその結合と比較した)結合の減少が、6B.4または6B.5のどちらが示す減少よりも小さかったことを示している。ただし、3つの抗体はいずれも、これらの変異体にも、R201K変異体およびM208L変異体にも、野生型ヒトCCR7へのそれらの結合よりは弱く結合した。
【0273】
図8は、3つの抗体がいずれも、試験したECL3変異体のそれぞれに、野生型CCR7へのそれらの結合とほぼ同じ程度に結合したことを示している。ここでもmAb197だけが野生型マウスCCR7受容体に結合した。
【0274】
野生型マウスCCR7配列を、そのアミノ酸残基のいくつかが野生型ヒトCCR7中の相同位置に見いだされる残基で置き換えられるように変異させた、相互コンストラクト(reciprocal construct)を作製した。
【0275】
次に挙げる変異導入を行った:Y44F、V47L、K201R、N202S、G204S、T207A、L208M。これらのアミノ酸変化を次に挙げる組合せで個々のコンストラクトとして使用した。
1)Y44F変異およびV47L変異
2)K201R/N202S/G204S/T207A/L208M
3)上記の全て:Y44F/V47L/K201R/N202S/G204S/T207A/L208M。
【0276】
次に挙げるオリゴを作製した:
Y44F_V47Lセンス:ACGGTGGACTACACCCTGTTCGAGTCGTTGTGCTTCAA
Y44F_V47L_アンチセンス:TTGAAGCACAACGACTCGAACAGGGTGTAGTCCACCGT
K201R_N202S_G204S_T207A_L208Mセンス:
CAGCGGCCTCCAGAGGAGCAGCAGCGAGGACGCGATGAGATGCTC
K201R_N202S_G204S_ T207A_L208M アンチセンス:
GAGCATCTCATCGCGTCCTCGCTGCTGCTCCTCTGGAGGCCGCTG
【0277】
オリゴを50ng/ lの濃度に希釈した。100ngのテンプレートDNA pcDNA3.1 Neo−mCCR7(20060298628)を使って、PCR反応をセットアップした。各々の変異について、QuikChange Multi Site−Site Directed Mutagenesis Kit(カタログ番号200531)(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)を使用し、製造者の説明書に従って、PCR産物を生成させた。その結果生じたPCR産物をDpnI消化してから、Top10化学コンピテントセル(Invitrogen,ニューヨーク州グランドアイランド)に形質転換した。各コンストラクトについて個々のコロニーを拾い、配列決定した。正しい配列を持つクローンをスケールアップし、再び配列決定した。最終的なクローンDNA配列と翻訳されたタンパク質配列は次のとおりである。
【0278】
Y44FおよびV47Lコンストラクト 20110094675(「YV」):
【化50】
【0279】
【化51】
【0280】
K201R/N202S/G204S/T207A/L208Mコンストラクト 20110094673(「KNGTL」):
【化52】
【0281】
【化53】
【0282】
1つのコンストラクト中に7つの変異の全てを入れるために、コンストラクト20110094673を使用し、次に挙げるオリゴを使って、さらに1ラウンドのQuikChange部位指定突然変異導入を行った。
Y44F_V47Lセンス:ACGGTGGACTACACCCTGTTCGAGTCGTTGTGCTTCAA
Y44F_V47L_アンチセンス:TTGAAGCACAACGACTCGAACAGGGTGTAGTCCACCGT
【0283】
Y44F/V47L/K201R/N202S/G204S/T207A/L208Mコンストラクト 20110105423(「YVKNGTL」):
【化54】
【0284】
【化55】
【0285】
Fugene HD Transfection Reagent(カタログ番号04709705001)(Roche Applied Sciences,インディアナ州インディアナポリス)を使用し、製造者のプロトコールに従って、22個のコンストラクトのそれぞれを、293T細胞にトランスフェクトした。使用したDNA対Fugene HDの比は1:3であった。トランスフェクションに関する対照は、上に挙げた野生型pcDNA3.1 Neo−hCCR7(20100121357)および野生型pcDNA3.1 Neo−mouseCCR7(20060298628)とした。48時間後に、トランスフェクト細胞を収穫し、PBS+5%FBSで2回洗浄した。Nexcelom Cell Counter(Nexcelom Bioscience,マサチューセッツ州ローレンス)を使って細胞をカウントし、96ウェル丸底プレートに1ウェルあたり250,000個の細胞をプレーティングした。各コンストラクトをトランスフェクトした細胞を二つ一組にして次のように染色した:無染色対照、6B4.1一次Abに続いてヤギ抗ヒト−PE二次Ab、6B5.1一次Abに続いてヤギ抗ヒト−PE二次Ab、mAb197一次Abに続いてヤギ抗マウス−PE二次Ab、ならびに二次Abヤギ抗マウス−PEだけおよびヤギ抗ヒト−PEだけの対照。細胞をフローサイトメトリーによって視覚化し、幾何平均を生成して、解析した。
【0286】
先に決定されたとおり、試験した3つの抗体のうち、mAb197だけが野生型マウスCCR7に結合し、一方、野生型ヒトCCR7には3つ全てが結合した。mAb197は試験した抗体の中で唯一YVコンストラクトに結合した。6B.4および6B.5はKNGTLコンストラクトに結合し、実際、mAb197より良く結合した。3つ全ての抗体がコンストラクトYVKNGTLにも結合したが、mAb197は6B.4または6B.5のどちらよりもよく結合した。