特許第6469650号(P6469650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469650高い表面積を有する酸素貧有のバルブ金属焼結体の製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469650
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】高い表面積を有する酸素貧有のバルブ金属焼結体の製造法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/10 20060101AFI20190204BHJP
   C22C 27/02 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B22F3/10 F
   C22C27/02 103
   C22C27/02 102Z
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-506971(P2016-506971)
(86)(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公表番号】特表2016-522318(P2016-522318A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014057244
(87)【国際公開番号】WO2014167045
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年1月26日
(31)【優先権主張番号】102013206603.1
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518241791
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク タンタルム アンド ニオビウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck Tantalum and Niobium GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ハース
(72)【発明者】
【氏名】マルツェル ハギマーシ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ ラヴォール
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−500480(JP,A)
【文献】 特開2003−013115(JP,A)
【文献】 特表2007−533854(JP,A)
【文献】 特表2011−510168(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0216558(US,A1)
【文献】 特開2009−124162(JP,A)
【文献】 特開2007−173450(JP,A)
【文献】 特開2011−210850(JP,A)
【文献】 特開平10−012474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
B22F 9/00− 9/30
C22C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体の製造法であって、次の工程:
a)i)4100ppm・g/m2を上回るBET比表面積に対する酸素含量、
ii)300ppm未満の量の窒素、
iii)10ppm未満の量のホウ素、
iv)20ppm未満の量の硫黄、
v)20ppm未満の量のケイ素、
vi)10ppm未満の量のヒ素および
vii)20ppm未満の量のリン
を含み、その際に、ppm値は、そのつど、質量割合に対するものである、バルブ金属粉末をプレス加工する工程、
b)工程a)で得られたグリーン成形体を還元剤と一緒に、当該グリーン成形体が固体または液状の還元剤と直接に接触しないかまたは固体または液状の還元剤との直接の接触に到らないように、準備する工程、
c)前記粉末を焼結して焼結体に変えると同時に当該焼結体内の前記バルブ金属の酸素含量が減少されるように加熱する工程;および
d)酸化された還元剤を鉱酸により除去する工程
を含み、
工程c)における焼結体が、BET比表面積に対する酸素含量2400〜3600ppm・g/m2を有する、前記方法。
【請求項2】
工程c)における加熱は、800℃〜1400℃の範囲内の温度で行なわれることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記還元剤は、リチウムおよびアルカリ土類金属からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記バルブ金属粉末は、1.5m2/g〜20m2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末は、ワイヤーの周囲でプレス加工されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤は、固体または液状の形でバルブ金属とは空間的に別々に存在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末は、圧粉密度が4.5g/cm3〜9g/cm3になるまでプレス加工されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記バルブ金属粉末は、4100〜8000ppm・g/m2のBET比表面積に対する酸素含量を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
焼結工程c)の後、500℃未満の温度で窒化が行われることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記バルブ金属粉末は、タンタルまたはニオブからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バルブ金属粉末は、10〜200μmの平均粒径D50を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結体内のバルブ金属の酸素含量は、大気圧未満の圧力で、減少されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)には、化成工程e)が引き継がれることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程d)における酸化された還元剤の除去は、焼結体の化成と同時に行なわれることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程d)における化成は、液状電解質の存在下に行なわれることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記液状電解質は、少なくとも1つの鉱酸とともに、過酸化水素(H22)を含むことを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記焼結体が1.5〜10m2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
【請求項18】
前記焼結体が2500〜3500ppm・g/m2のBET比表面積に対する酸素含量を有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
【請求項19】
前記焼結体が、
i)300ppm未満の量の窒素、
ii)10ppm未満の量のホウ素、
iii)20ppm未満の量の硫黄、
iv)20ppm未満の量のケイ素、
v)10ppm未満の量のヒ素および
vi)20ppm未満の量のリン
からなる群から選択された、焼結抑制剤を含有し、その際に、ppm値は、そのつど、質量割合に対するものであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
【請求項20】
電子素子のための、請求項1〜19のいずれかの焼結体の製造方法により得られる焼結体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その大きな表面積にもかかわらず、低い酸素含量および良好な陽極酸化性を有する、バルブ金属からなる焼結体の製造法に関する。さらに、本発明は、前記方法により得ることができる焼結体ならびに電子素子、殊にコンデンサのための前記焼結体の使用に関する。さらに、本発明は、特に、記載された方法における使用に適しているバルブ金属粉末に関する。
【0002】
極めて大きな活性コンデンサ表面積およびモバイルの通信電子機器に適した小型の構造形式を有する固体電解質コンデンサとして、主に、相応する導電性タンタル金属担体上に施されている五酸化タンタル遮断層を有するコンデンサモデルが使用される。この場合には、金属(“バルブ金属”)の安定性、比較的に高い比誘電率および電気化学的製造により極めて均一な層厚で製造可能な絶縁性ペントキシド層が利用される。金属担体は、同時にコンデンサの陽極であり、高多孔質の海綿状構造体からなり、この海綿状構造体は、微粒状一次構造体をプレス加工しかつ焼結させることによって製造されるか、または既に海綿状二次構造体をプレス加工しかつ焼結させることによって製造される。この場合、プレス加工品の機械的安定性は、焼結体への当該プレス加工品の後加工、本来の担体構造、またはコンデンサの陽極にとって本質的なことである。前記担体構造の表面は、電気分解により非晶質ペントキシドに酸化され(陽極酸化;“化成”)、その際に、ペントキシド層の厚さは、電解酸化の最大電圧(“化成電圧”)によって定められる。対向電極は、熱的に二酸化マンガンへと変換される硝酸マンガンで海綿状構造体を含浸することによって製造されるかまたはポリマー電解質の液状前駆体で界面構造体を含浸しかつ重合させることによって製造される。
【0003】
前記電極に対する接触は、陰極側ではグラファイトと導電性銀とからなる層構造によりリボンまたはワイヤーの形の出力導体上で行なわれ、陽極側ではタンタルまたはニオブからなるワイヤーにより行なわれ、その際に、このワイヤーは、通常、燒結前にプレス加工型内に挿入され、および当該ワイヤーは、コンデンサから送出される。前記ワイヤーが陽極構造体と一緒に焼結されている強度(引張強度またはワイヤー引張強度)は、コンデンサへの後加工のための本質的な性質である。
【0004】
当該焼結体を製造する際の一般的な問題は、酸素含量を制御することであり、この酸素含量は、特にタンタルを使用した際に、当該タンタルから製造されたコンデンサの性質に著しく影響を及ぼす。数多くの試験は、酸素が完成したタンタルコンデンサの性質に不利な影響を及ぼすことを証明している。高められた酸素含量は、非晶質酸化タンタルの望ましくない結晶化をまねく可能性があり、この望ましくない結晶化は、タンタル焼結体の化成中に形成される。非晶質酸化タンタルが卓越したアイソレータである一方で、結晶性酸化タンタルは、いずれにせよ、僅かな導電性を有し、このことは、残留電流が高まることによるコンデンサの故障をまねくかまたは破損箇所をまねく。タンタルは、酸化タンタルからなる天然の不動態層を有し、この不動態層は、金属の後酸化を阻止し、酸素を完全には除去することができず、この酸素の含量は、せいぜい最小にできるにすぎない。約3000ppm*g/m2の酸素含量は、不動態化に必要とされる。それというのも、さもなければタンタル粉末は自然発火性でありかつ周囲空気と接触した場合に燃え尽きるであろうからである。タンタルの天然の酸化物層は、約1〜2nmの厚さを有し、このことは、約3000ppm*g/m2の酸素含量に相当し、また、このことは、例えば、2m2/gの比表面積を有する粉末の場合に、ほぼ0.6%の含量に達するであろう。したがって、刊行物においてさえ、“酸素不含”と呼称されたタンタル粉末は、少なくとも前記酸素含量を有する(これについては、例えばB.Y.Freeman et al,J.Electrochem.Soc.2010,Vol.157,No.7,G161;J.D.Sloppy,Pennsylvania State University,Dissertation 2009,第180頁;Q.Lu,S.Mato,P.Skeldon,G.E.Thompson,D.Masheder,Thin Solids Films 2003,429(1−2),238;G.Battistig,G.Amsel,E.D’artemare,Nuclear Instruments & Methods in Physics Research B,1991,61,369−376;L.Young,Trans.Faraday Soc.1954,50,153−159;V.Macagno,J.W.Schultze,J.Electroanal.Chem.,1984,180,157−170;O.Kerrec in Transfert Electronique pour les Systems de type M.O.E.modification des electrodes par Constitution de structures de type M.O.M,Chimie 1992,Parisを参照のこと)。大きな表面積を有する焼結体にとって前記問題は大きい。それというのも、酸素含量は、直接にタンタル基材の表面積に比例するからである。
【0005】
WO 02/45109 A1には、焼結および脱酸素とともに、窒素での焼結体のドーピングを含む、タンタルコンデンサまたはニオブコンデンサの製造法が記載されている。前記焼結体は、酸素不含の雰囲気中で製造される。
【0006】
米国特許第4722756号明細書には、タンタル焼結体またはニオブ焼結体内の酸素含量を減少させる方法が開示されている。この場合、グリーン成形体は、水素雰囲気中で還元性物質の存在下に焼結される。前記還元性物質は、ベリリウム、カルシウム、セリウム、ハフニウム、ランタン、リチウム、プレセオジム、スカンジウム、トリウム、チタン、ウラン、バナジウム、イットリウムまたはジルコニウムおよびこれらの合金もしくは混合物からなることができる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許第3309891号明細書C2には、電解質コンデンサ用のバルブ金属陽極焼結体を製造するための二工程法が記載されており、この方法の場合、既に焼結されたタンタル焼結体は、還元性物質、例えばマグネシウムの存在下に脱酸素される。この場合、金属は、焼結体と一緒に反応室内に導入され、このことと同時に650℃〜1150℃の温度へ加熱される。
【0008】
WO 2009/140274 A2には、その内側部材が外側部材よりも高い密度を有する陽極が記載されている。こうして、ワイヤー接続は改善されるべきである。グリーン成形体の脱酸素のために、当該グリーン成形体にマグネシウムが供給され、この場合、処理温度は、マグネシウムを蒸発させるのに十分な高さである。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3130392号明細書A1には、凝集された純粋なバルブ金属粉末の製造法が記載されており、この方法の場合、熱凝集は、比較的低い温度で還元剤、例えばアルミニウム、ベリリウム、カルシウムまたはマグネシウムの存在下に実施される。そのために、前記バルブ金属粉末は、例えばマグネシウム粉末と徹底的に混合され、この混合物は、円筒形を有する成形体にプレス加工され、この成形体は、さらに1200℃〜1400℃の温度で焼結される。
【0010】
タンタルからなる焼結体の酸素含量が還元条件下での熱的後処理によって低下されうるかまたは還元条件下でのグリーン成形体の焼結によって低下されうるにもかかわらず、この方法の場合には、埋設されたワイヤー上への焼結体の接続の損失または少なくとも明らかな劣化が生じる。それによって劣化された、陽極体の電気的性質は、さらに全体的な故障をまねくかまたは少なくとも、コンデンサの著しい収量低下をまねく。
【0011】
したがって、本発明の課題は、少ない酸素含量および同時に良好なワイヤー接続を有するバルブ金属焼結体の製造法を提供することである。それによって、少ない残留電流と同時に高い電気容量を有するコンデンサを製造することが可能になる。さらに、本発明の課題は、酸素貧有のバルブ金属焼結体を製造するための従来法と比較して、より短い方法時間によって傑出している、バルブ金属焼結体の製造法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる課題は、本発明による方法で使用するのに特に適しておりかつ改善された焼結特性ならびに焼結体上へのワイヤーの改善された接続をもたらすバルブ金属粉末を提供することである。
【0013】
前記課題は、本発明によれば、次の工程:
a)バルブ金属を含むかまたはバルブ金属からなる粉末をプレス加工する工程、
b)工程a)で得られたグリーン成形体を還元剤と一緒に、当該グリーン成形体が固体または液状の還元剤と直接に接触しないかまたは固体または液状の還元剤との直接の接触に到らないように、準備する工程、
c)前記粉末を焼結して焼結体に変えると同時に当該焼結体内の前記バルブ金属の酸素含量が減少されるように加熱する工程;および
d)酸化された還元剤を鉱酸により除去する工程
を含む、焼結体の製造法を提供することによって解決される。
【0014】
好ましいバルブ金属粉末は、殊に、残留電流に不利な影響を及ぼしうる不純物の含量に対して高純度である。ナトリウムおよびカリウムの含量の総和は、とりわけ、5ppm未満、特に有利に2ppm未満である。鉄、クロムおよびニッケルの含量の総和は、とりわけ、25ppm未満、特に有利に15ppm未満である。ppmの記載は、そのつど、質量割合に対するものである。
【0015】
モバイルの通信電子機器の主要目的は、高性能の構造部品により市場を満足させることであるが、しかし、この構造部品は、小さな寸法を有するだけでよい。したがって、前記粉末を小さな成形体にプレス加工する、本発明による方法の実施態様が好ましい。
【0016】
本方法の効率的な経過を保証するために、グリーン成形体は、有利に自動プレス機により製造されるべきであった。粉末の表面積が増加すると粉末中の固体の割合が同様に増加するので、プレス加工工具が閉塞されうるかまたはむしろ損傷されうるという危険性が高まる。したがって、本方法の好ましい実施態様における粉末は、プレス加工助剤を含む。このプレス加工助剤は、バインダとして作用する。バルブ金属粉末がプレス加工助剤を含む場合の好ましい実施態様において、さらに、本発明による方法の工程a)とb)との間で、脱バインダ工程が行なわれる。
【0017】
とりわけ、プレス加工助剤は、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール、カンファー、ポリエチレンカーボネートおよびステアリン酸からなる群から選択されている。とりわけ、プレス加工助剤は、方法と規模により、一方でプレス加工すべき粉末中に良好に押込むことができ、他方で、プレス加工後に再び少ない費用で除去することができるように選択される。
【0018】
プレス加工助剤が使用される場合には、プレス加工助剤がプレス加工工程後にグリーン成形体から元通りに除去される、本発明による方法の実施態様が好ましい。この脱バインダは、例えば熱的に、例えばプレス加工助剤の蒸発、または熱分解によって行なうことができるか、またはアルカリ加水分解により行なうことができる。脱バインダ法は、とりわけ、粉末中に残留する炭素ができるだけ少ないように選択されており、後のコンデンサの劣化が回避される。
【0019】
とりわけ、前記焼結体の炭素含量は、そのつどの質量割合に対して、200ppm(parts per million)未満であり、さらに好ましくは、100ppm未満、殊に50ppm未満、特に40ppm未満でありかつ1ppmを上回る。
【0020】
本発明による方法の好ましい実施態様において、前記粉末は、圧粉密度が4.5g/cm3〜9g/cm3、特に5g/cm3〜8g/cm3、さらに有利に5.5g/cm3〜7.5g/cm3、殊に5.5g/cm3〜6.5g/cm3になるまでプレス加工される。
【0021】
前記コンデンサの重要な構成部品は、電極に対する電気的コンタクトである。電極に対する接触は、陰極側ではグラファイトと導電性銀とからなる層構造により、リボンまたはワイヤーの形の出力導体上で行なわれ、陽極側ではタンタルまたはニオブからなるワイヤーにより行なわれ、その際に、このワイヤーは、通常、燒結前にプレス加工型内に挿入され、および当該ワイヤーは、コンデンサから送出される。前記ワイヤーが陽極構造体内に、すなわち焼結体内に焼結されている強度、すなわち陽極体上へのワイヤー接続は、コンデンサへの焼結体の後加工のための本質的な性質である。したがって、前記粉末がワイヤーの周囲で、とりわけバルブ金属からなるワイヤーの周囲でプレス加工される、本発明による方法の実施態様は、好ましい。
【0022】
本発明による方法の他の選択可能な好ましい実施態様において、ワイヤー接続は、焼結体上への溶接によって行なわれる。
【0023】
とりわけ、ワイヤーのバルブ金属は、タンタルおよびニオブからなる群から選択されている。同様に好ましくは、ワイヤーの周囲でプレス加工されるバルブ金属粉末は、タンタルおよびニオブからなる群から選択されたバルブ金属を含む。さらに好ましくは、ワイヤーも粉末もタンタルおよびニオブからなる群から選択されたバルブ金属を含む。
【0024】
本発明による方法の好ましい実施態様において、前記バルブ金属粉末は、0.05〜0.4μmの最小寸法を有する凝集された一次粒子からなる。とりわけ、前記一次粒子は、1.5〜20m2/gの範囲内の比表面積を有し、その際に、ASTM D3663による比表面積が測定された。さらに好ましくは、バルブ金属粉末の粒度分布は、ASTM B822により測定された、2〜80μmのD10値に相当する。とりわけ、バルブ金属粉末は、10〜200μm、有利に15〜175μmのD50値を有する。同様に好ましくは、バルブ金属粉末は、30〜400μm、有利に40〜300μmのD90値を有する。D50値もD90値も例えば、ASTM B822により測定されうる。
【0025】
本発明による方法の好ましい実施態様において、バルブ金属粉末は、1.5m2/g〜20m2/g、特に2.0m2/g〜15m2/g、殊に3.0m2/g〜10m2/g、とりわけ4.0〜8.0m2/gのBET表面積を有する。本発明の範囲内のBET表面積は、ブルナウアー、エメットおよびテラー(Brunauer,Emmet und Teller)による方法により測定された比表面積を示す(DIN ISO 9277)。
【0026】
できるだけ大きな活性表面積を達成させるために、できるだけ連続気泡の粉末を使用することは、有利である。例えば、強すぎる焼結による、細孔の閉塞または閉鎖された細孔の形成は、活性のコンデンサ表面の損失をまねく。この損失は、窒素および/またはリンでの焼結保護ドーピングの使用によって防止することができ、早期には、ホウ素、ケイ素、硫黄またはヒ素での焼結保護ドーピングの使用によっても防止することができる。しかし、部分的に著しく減少された焼結活性で焼結保護ドーピングの濃度が高すぎる結果となる。したがって、バルブ金属粉末がそのつど、質量割合に対して、20ppm未満、特に0.1〜20ppm未満のリン含量を有する、本発明による方法の実施態様は好ましい。
【0027】
本発明による方法の好ましい実施態様において、バルブ金属粉末は、当該バルブ金属粉末の焼結保護作用に対して公知の物質のできるだけ少ない含量を有する。特に好ましい実施態様において、バルブ金属粉末は、有効な含量の焼結保護剤を含まない。
【0028】
とりわけ、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、300ppm未満、殊に300ppm未満で0.1ppmを上回る窒素含量を有する。
【0029】
さらに、好ましくは、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、10ppm未満、殊に10ppm未満で0.01ppmを上回るホウ素含量を有する。
【0030】
同様に好ましくは、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、20ppm未満、殊に10ppm未満で0.1ppmを上回る硫黄含量を有する。
【0031】
さらに好ましくは、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、20ppm未満、殊に20ppm未満で0.01ppmを上回るケイ素含量を有する。
【0032】
さらに好ましくは、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、10ppm未満、殊に10ppm未満で0.01ppmを上回るヒ素含量を有する。
【0033】
好ましい実施態様において、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、20ppm未満で0.1ppmを上回るリン含量、300ppm未満で0.1ppmを上回る窒素含量、10ppm未満で0.01ppmを上回るホウ素含量、20ppm未満で0.1ppmを上回る硫黄含量、20ppm未満で0.01ppmを上回るケイ素含量および10ppm未満で0.01ppmを上回るヒ素含量を有する。
【0034】
バルブ金属は、当該バルブ金属の酸化物が電流を一方向で遮断するが、しかし、電流を他の方向に通過させることによって傑出している。前記バルブ金属には、例えばタンタル、ニオブまたはアルミニウムが所属する。本発明の範囲内のバルブ金属は、合金であってもよい。バルブ金属のさらなる特徴は、当該バルブ金属がバルブ金属酸化物からなる不動態層を有し、この不動態層が後酸化、ひいては前記金属の発火を防止することである。この場合には、前記粉末の比表面積に対する酸素含量、すなわち、質量割合に対するppmでの酸素含量とBETにより測定された比表面積とからの商が記載される。
【0035】
前記バルブ金属の典型的な代表例は、Al、Bi、Hf、Nb、Sb、Ta、WおよびZrからなる群から選択されている。これらのバルブ金属の互いの合金も可能である。さらなる実施態様において、本発明の範囲内のバルブ金属は、前記バルブ金属の合金であってもよく、その際に、この合金は、とりわけ、Be、Ge、Mg、Si、Sn、TiおよびVからなる群から選択されているさらなる金属を有する。
【0036】
バルブ金属の割合が全合金に対して、少なくとも50質量%、さらに有利に少なくとも70質量%、殊に少なくとも90質量%、とりわけ少なくとも95質量%または少なくとも98.5質量%、または少なくとも99.5質量%であるバルブ金属とバルブ金属を含まないさらなる金属との合金が好ましい。
【0037】
本発明の範囲内で好ましいバルブ金属は、タンタルおよびニオブである。
【0038】
本発明による方法の好ましい実施態様において、前記バルブ金属粉末は、そのつど、質量割合に対して、3000ppm*g/m2を上回る、殊に3500ppm*g/m2を上回る、さらに有利に4100ppm*g/m2〜8000ppm*g/m2の酸素含量を有する。この場合、酸素含量は、Leco Instrumente GmbH社の窒素/酸素測定器(Nitrogen/Oxygen Determinator)型式TCH 600の機器でキャリヤーガスの反応による融解(Carrier Gas Reactive Fusion)により測定された。
【0039】
さらに、バルブ金属粉末が15〜175μm、特に20〜100μmの平均粒径D50を有する、本発明による方法の実施態様は、好ましく、その際にASTM B822による平均粒径が測定された。
【0040】
意外なことに、高められた酸素含量ならびに微少量の焼結抑制剤および定義された焼結抑制剤を使用することによって、焼結体上へのワイヤー接続も焼結能も著しく高めることができることが見い出された。
【0041】
したがって、本発明のさらなる対象は、次の成分:
i)4100ppm・g/m2を上回る、特に4100ppm・g/m2〜8000ppm・g/m2の量の酸素、
ii)任意に、300ppm未満、特に0.1ppm〜300ppmの量の窒素、
iii)任意に、10ppm未満、特に0.01ppm〜10ppmの量のホウ素、
iv)任意に、20ppm未満、特に0.1ppm〜10ppmの量の硫黄、
v)任意に、20ppm未満、特に0.01ppm〜20ppmの量のケイ素および
vi)任意に、10ppm未満、特に0.01ppm〜10ppmの量のヒ素、
vii)任意に、20ppm未満、特に0.1ppm〜20ppmの量のリン
を含むバルブ金属粉末であり、その際に、ppm値は、そのつど、質量割合に対するものである。
【0042】
本発明の特に好ましいバルブ金属粉末は、次の成分:
4100ppm・g/m2を上回る、特に4100ppm・g/m2〜8000ppm・g/m2の量の酸素、
300ppm未満、特に0.1ppm〜300ppmの量の窒素、
10ppm未満、特に0.01ppm〜10ppmの量のホウ素、
20ppm未満、特に0.1ppm〜10ppmの量の硫黄、
20ppm未満、特に0.01ppm〜20ppmの量のケイ素および
10ppm未満、特に0.01ppm〜10ppmの量のヒ素、
20ppm未満、特に0.1ppm〜20ppmの量のリン
を含み、その際に、ppm値は、そのつど、質量割合に対するものである。
【0043】
本発明によるバルブ金属粉末の酸素含量は、技術水準のバルブ金属粉末の酸素含量を上回り、すなわち、通常の、すなわち天然の酸素含量を上回り、この酸素含量は、金属と周囲空気との接触によって、金属表面上に酸化物層を形成する。本発明によるバルブ金属粉末の高められた酸素含量は、例えば、金属粉末を酸素で処理することによって特別に生じさせることができる。
【0044】
意外なことに、記載された組成の粉末は、改善された焼結能、ひいては焼結体上の改善されたワイヤー接続を有することが見い出された。バルブ金属粉末中の技術水準と比較して高められた酸素含量によって、焼結過程中にグリーン成形体の内部により高い温度が形成され、それによって焼結体上へのワイヤーのより良好な接続が達成される。
【0045】
好ましい実施態様において、前記バルブ金属粉末は、1.5m2/g〜20m2/g、特に2.0m2/g〜15m2/g、殊に3.0m2/g〜10m2/g、とりわけ4m2/g〜8m2/gのBET表面積を有する。
【0046】
さらに、0.05〜0.4μmの寸法を有する凝集された一次粒子からなるバルブ金属粉末が好ましい。とりわけ、前記一次粒子は、1.5〜20m2/gの範囲内の比表面積を有し、その際に、比表面積は、DIN ISO 9277により測定された。さらに、好ましくは、前記バルブ金属粉末の粒度分布は、ASTM B822により測定された、2〜80μm、有利に2〜30μmのD10値に相当する。とりわけ、前記バルブ金属粉末は、10〜200μm、有利に15〜175μmのD50値を有する。同様に、好ましくは、前記バルブ金属粉末は、30〜400μm、有利に40〜300μmの範囲内のD90値を有する。D50値もD90値も、例えばASTM B822により測定されてよい。
【0047】
本発明によるバルブ金属粉末は、特に、ニオブおよび/またはタンタルから選択されている。
【0048】
特に好ましい実施態様において、本発明によるバルブ金属粉末は、本発明による方法の工程a)において使用され、すなわち、プレス加工される。
【0049】
好ましいバルブ金属粉末は、殊に、残留電流に不利な影響を及ぼしうる不純物の含量に対して、高度に純粋である。ナトリウムとカリウムの含量の総和は、特に、5ppm未満、特に有利に2ppm未満である。鉄とクロムとニッケルの含量の総和は、特に、25ppm未満、特に有利に15ppm未満である。ppmの記載は、そのつど、質量割合に対するものである。
【0050】
コンデンサ中の高められた酸素含量は、劣悪な電気的性質をまねく。すなわち、高められた酸素含量のために、バルブ金属の当初の非晶質酸化物が結晶形に移行するが、当該の当初の非晶質酸化物は、より高い導電性を有している。こうして、誘電体の絶縁作用は減少し、コンデンサは、いわゆる、残留電流を、次第に程度を増して有する。金属の不動態化によって規定されている、天然の酸素含量とともに、グリーン成形体の焼結中に、非還元条件下で酸素のさらなる組み入れを生じる。したがって、グリーン成形体中の酸素含量を焼結中に減少させることは、重要である。このことは、グリーン成形体が焼結中に収縮し、それによって当該グリーン成形体の表面積が減少し、このことが他方で、多孔質金属複合体中の過剰の酸素をもたらすので、なおさら特に重要である。焼結中の高められた温度によって、室温の場合であろうよりも明らかに多くの酸素が飽和限界になるまで金属格子中に組み入れられうる。この組み入れは、金属格子の膨張をもたらす。臨界値を超えると直ちに、結晶性バルブ金属酸化物の破損が生じ、このことは、記載された不利な結果、例えば高められた残留電流をまねく。したがって、グリーン成形体の焼結が同時に脱酸素と結びつけられている、本発明による方法の実施態様が好ましい。
【0051】
本発明の範囲内の脱酸素は、既に還元された金属、例えば金属格子から過剰の酸素を除去することである。
【0052】
本発明による方法の好ましい実施態様において、グリーン成形体の焼結は、還元性雰囲気中で行なわれる。技術水準により公知の方法は、前記粉末と還元剤とを混合するかまたは還元剤を焼結体と一緒に同時に加熱することである。しかし、前記方法は、こうして実施された脱酸素が劣化されたワイヤー接続を生じ、酸素がさらなる処理の経過中に焼結体から溶解されかつ焼結体上の陽極酸化物層の形成がもはや不可能であるかまたはその後にこうして得られた陽極の電気的性質の測定がもはや不可能である限り、このことが行なわれうるという欠点を有する。したがって、同時に、ワイヤーと焼結体との十分に堅固な接続が与えられている間に、酸素含量を低下させる方法は、好ましい。
【0053】
本発明による方法の好ましい実施態様において、前記還元剤は、固体または液状の形でバルブ金属とは空間的に別々に存在する。還元剤を蒸発させる実施態様は、好ましい。所望の温度が達成されたら直ちに、多孔質のニオブ薄板またはタンタル薄板からなるバスケット内に存在するグリーン成形体は、蒸気中に浸漬され、およびグリーン成形体中の酸素は、還元剤と反応しうる。本発明による方法の好ましい浸漬処理によって、グリーン成形体の内部により高い温度が達成されてよく、このことは、グリーン成形体のより大きな収縮、ひいてはより高い圧縮をもたらす。意外なことに、この効果は、殊に、4100ppm*g/m2を上回る酸素含量を有する、本発明によるバルブ金属粉末を使用した場合に生じることが見い出された。その際に、前記グリーン成形体の最終的な収縮は、温度ならびに脱酸素の時間によって定められうる。
【0054】
本発明による方法のさらなる好ましい実施態様において、マグネシウムはタブレット上にある。その上方には、タンタルまたはニオブからなる多孔質薄板が懸吊されており、この多孔質薄板上には、グリーン成形体が存在する。その際に、マグネシウムを有するタブレットと多孔質ニオブ薄板との間の距離は、例えば4〜8cmであることができる。その上にマグネシウムが存在するタブレットは、加熱される。酸素がマグネシウム蒸気と接触すると直ちに、グリーン成形体中で酸素が反応する。
【0055】
さらに、還元剤とグリーン成形体が同じ処理室内に存在するが、しかし、空間的に互いに別々に存在する実施態様は、好ましい。その際に、とりわけ、最初に還元剤が蒸発し、次に、例えばグリーン成形体を蒸気内に懸吊することにより、グリーン成形体は蒸気と接触する。それによって、一方の処理室から他方の処理室内への蒸気の煩わしい迂回または転送は不要であり、このことは、さらに時間の節約をもたらす。さらに、グリーン成形体を蒸気内に浸漬することによって、グリーン成形体が過度に比表面積を失なうことが防止される。
【0056】
この場合も、意外なことに、4100ppm*g/m2を上回る酸素含量を有する、本発明によるバルブ金属粉末の使用は、焼結体上へのワイヤー接続をプラスになるように支持することが見い出された。
【0057】
本発明による方法の好ましい実施態様において、前記グリーン成形体の脱酸素は、不活性のキャリヤーガス、特にアルゴンの下で行なわれ、その際に、還元は、5〜650hPa、有利に40hPaを上回る、殊に100〜400hPaの還元性金属の蒸気分圧で行なわれる。さらに、好ましくは、不活性ガス圧は、50〜800hPa、有利に600hPa未満、殊に100〜500hPaの範囲内にある。
【0058】
さらに、前記焼結体内のバルブ金属の酸素含量が大気圧未満の圧力で、とりわけ、50〜800hPa、有利に600hPa未満、殊に100〜500hPaのガス圧で減少される、本発明による方法の実施態様は、好ましい。
【0059】
焼結を生じかつ酸素含量の減少を生じる加熱が800℃〜1400℃、特に900℃〜1200℃、殊に900℃〜1100℃の範囲内の温度で行なわれる、本発明による方法の実施態様は、好ましい。とりわけ、前記温度範囲は、前記焼結体の酸素含量が望ましい程度に低下するように選択されている。酸素は、一般に、当該酸素がグリーン成形体の焼結を妨害することが知られている。酸素含量を低下させることによって、前記粉末粒子の互いの効果的な焼結ならびに粉末粒子および埋設されたワイヤーの効果的な焼結が一般に通常よりも低い温度で生じる。
【0060】
本発明による方法の好ましい実施態様において、前記還元剤は、リチウムおよびアルカリ土類金属、特にマグネシウムまたはカルシウム、特にマグネシウムから選択されている。
【0061】
脱酸素中に生じる、還元剤の酸化生成物は、当該酸化生成物がいまだ焼結中に蒸発していない限り、希釈された鉱酸を用いて焼結体から洗い流される。焼結体のさらなる機械的負荷を回避させるために、この焼結体は、有利に多孔質のニオブ薄板または特殊鋼薄板上に置かれ、前記薄板は、洗浄液と一緒に洗浄容器内に導入される。前記溶液は攪拌され、その際に、攪拌速度は、とりわけ、焼結体が洗浄過程中に可動状態に陥らないように適合される。とりわけ、前記還元剤の酸化生成物は、組成MgOの酸化マグネシウムである。本発明の範囲内の鉱酸は、炭素を含有しない酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸である。
【0062】
脱酸素および引き続く洗浄過程によって、強度が低下し、この強度で、焼結体内に埋設されたワイヤーは焼結されている(ワイヤー引張強度)。その際に、焼結体上へのワイヤー接続は、焼結体の後加工中にワイヤーが当該焼結体から引き抜かれるかまたは取り除かれる場合には、取り外すことができる。しかし、意外なことに、4100ppm*g/m2を上回る酸素含量を有する、本発明によるバルブ金属粉末を使用することによって、焼結体上へのワイヤー接続をさらに向上させることができることが見い出された。他の場合には、前記接続は、電気的接続をもはや実施することができずかつコンデンサとしての使用には前記焼結体を使用することができないように価値が低い。当業者に公知であるように、技術水準による問題には、脱酸素されかつ洗浄された焼結体の新たな焼結によって対抗する。それによって、陽極体上へのワイヤー接続は、実際に向上されうるが、しかし、同時に、焼結体内の酸素含量は、元通りに上昇する。
【0063】
脱酸素された焼結体の酸素含量が2400〜3600ppm*g/m2の範囲内にある、本発明による方法の実施態様は、好ましく、その際に、ppmの記載は、そのつど、質量割合に対するものである。その際に、前記酸素含量は、Leco Instrumente GmbH社の窒素/酸素測定器(Nitrogen/Oxygen Determinator)型式TCH 600の機器でキャリヤーガスの反応による融解(Carrier Gas Reactive Fusion)により測定された。
【0064】
試験は、脱酸素されかつ洗浄された焼結体の含水量が焼結されただけの焼結体に対して明らかに高められていることを示した。高められた含水量によって、埋設されたワイヤーの脆さだけが増大するのではなく、全ての焼結体が強度を失なう。したがって、本発明による方法の同様に好ましい実施態様において、脱酸素されかつ洗浄された焼結体は、再度、加熱される。その際に、前記条件は、とりわけ、水素が蒸発するように選択することができる。意外なことに、当該焼結体にさらなる脱ガス化工程が供された焼結体は、埋設されたワイヤーの改善された接続を有することが見い出された。
【0065】
前記焼結体上へのワイヤー接続、すなわち“ワイヤー引張強度”は、次のように測定された:陽極ワイヤーは、半薄板の0.25mmの直径の開口に差し込まれ、自由端部は、動力計(Chatillon,出力源LTCM−6を有する型式:DFGS−50)の半クランプ中に張設され、この自由端部は、陽極構造体、焼結体と呼称される、からワイヤーが引き出されるまで負荷された。
【0066】
意外なことに、陽極ワイヤーのワイヤー接続は、焼結体の化成によって改善されうることが見い出された。したがって、本発明による方法の工程d)における酸化された還元剤の除去後に、工程e)において焼結体が化成される実施態様は、好ましい。前記化成は、当業者によく知られた方法である。
【0067】
既述したように、前記焼結体上での陽極ワイヤーのワイヤー接続は、最終的にさらに、焼結体がコンデンサへの後の使用に適しているかどうかを決定する重要な判断基準である。意外なことに、前記ワイヤー接続は、脱酸素後に極めて高度であるが、しかし、洗浄後に著しく低下することが見い出された。さらに、前記焼結体の化成後のワイヤー接続は、元通りに、脱酸素後および洗浄前と同等な程度を有することが判明した。このことは、化成前に、例えば化成用くし上での溶接(“リードフレーム(leadframe)”;電解液中への浸漬のための陽極の収容および陽極の接触)によって、陽極ワイヤーが機械的に負荷される限り、重要である。機械的負荷によって、ワイヤーの引裂きを生じる可能性があり、それによって、焼結体は、後加工に不適当になる。それというのも、陽極ワイヤーの事後の固定は、不可能であるからである。
【0068】
さらに、酸化された還元剤が鉱酸により除去される、脱酸素後の洗浄工程によって、必要とされる製造工程の数は、増大し、このことは、より高度で経済的かつ作業技術的な費用を生じる。
【0069】
したがって、前記焼結体からの酸化された還元剤の除去が当該焼結体の化成と同時に行なわれる、本発明による方法の実施態様は、好ましい。こうして、同時に、方法の経過が最適化される一方で、ワイヤー接続の重大な破断は回避されうる。好ましい実施態様において、工程d)における酸化された還元剤の除去は、化成と同時に行なわれる。
【0070】
さらに、工程d)における化成が液状電解質の存在下で行なわれる、本発明による方法の実施態様は、好ましい。その際に、液状の電解質は、とりわけ、焼結体からの酸化された還元剤の効果的な洗い流しも同じ焼結体の満足のいく化成も保証されているように選択されている。意外なことに、酸化された還元剤は、殊に、鉱酸により効果的に除去されうることが見い出された。さらに、酸化剤、例えば過酸化水素の存在は、有利に洗浄結果に作用を及ぼしうる。殊に、洗浄中の水素の吸収は、こうして減少されうる。さらに、過酸化水素を添加した場合、化成温度は、80℃未満へ低下させることができる。
【0071】
したがって、液状電解質が少なくとも1つの鉱酸とともに過酸化水素(H22)を含む実施態様は、好ましい。
【0072】
好ましい実施態様において、前記鉱酸は、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸ならびにこれらの混合物からなる群から選択されている。
【0073】
前記液状電解質が1つ以上の鉱酸を、そのつど、液状電解質の全質量に対して、0.1〜10質量%、特に1〜8質量%、特に有利に3〜6質量%の量で含む、本発明による方法の実施態様は、特に好ましい。
【0074】
さらに、前記液状電解質が過酸化水素を、そのつど、液状電解質の全質量に対して、0.1〜0.9質量%、特に0.3〜0.7質量%の量で含む実施態様は、好ましい。
【0075】
本発明による方法の好ましい実施態様において、窒化は、500℃未満、特に200℃〜400℃の温度で、焼結工程に引き継がれる。その際、焼結体には、例えば冷却中に窒素が供給される。焼結体の表面は、酸素を僅かだけ含有するので、窒素は、焼結体の表面の一部を覆うことができる。こうして、前記表面を酸素で覆うことは、減少される。好ましくは、焼結体内の窒素の濃度は、最小の残留電流およびコンデンサの最大の信頼性が保証されているように選択されている。
【0076】
好ましい実施態様において、前記グリーン成形体の焼結に引き続いて、焼結体表面の酸化による焼結体の不動態化が行なわれる。そのために、焼結体が100℃未満の温度へ冷却された後に、当該焼結体は、反応器中に残留する。さらに、焼結体の表面は、有利に、反応器中への酸素の制御された、緩徐な導入によって不動態化される。とりわけ、不動態化は、焼結後および焼結体の窒化後に行なわれる。
【0077】
好ましくは、引き続き、前記還元剤の形成された酸化物は、希釈された鉱酸により洗い流される。
【0078】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法によって得ることができる焼結体である。
【0079】
好ましい実施態様において、本発明による方法によって得ることができる焼結体は、1.5〜10m2/g、特に2m2/g〜8m2/g、殊に3m2/g〜6m2/gのBET表面積を有する。その際に、BET表面積は、DIN ISO 9277により測定された。
【0080】
さらなる好ましい実施態様において、本発明による焼結体は、有利に、バルブ金属からなるワイヤーを有するか、または焼結体と結合されている、殊に当該焼結体とプレス加工されている当該バルブ金属を含む。とりわけ、バルブ金属は、タンタルおよびニオブからなる群から選択されている。
【0081】
それとは別の好ましい実施態様において、本発明による焼結体は、焼結体上に溶接されている、特にバルブ金属からなるワイヤーを有する。とりわけ、前記バルブ金属は、タンタルおよびニオブからなる群から選択されている。
【0082】
さらに、本発明による方法によって得ることができる焼結体が、2000ppm*g/m2〜4000ppm*g/m2、特に2500ppm*g/m2〜3500ppm*g/m2、殊に2700ppm*g/m2〜3500ppm*g/m2の酸素含量を有する実施態様は、好ましい。その際に、ppmの記載は、そのつど、質量割合に対するものである。酸素含量は、Leco Instrumente GmbH社の窒素/酸素測定器(Nitrogen/Oxygen Determinator)型式TCH 600の機器でキャリヤーガスの反応による融解(Carrier Gas Reactive Fusion)により測定された。
【0083】
好ましい実施態様において、前記焼結体は、とりわけ、
i)300ppm未満、特に0.1ppm〜300ppmの量の窒素、
ii)10ppm未満、特に0.01ppm〜10ppmの量のホウ素、
iii)20ppm未満、特に0.1ppm〜10ppmの量の硫黄、
iv)20ppm未満、特に0.01ppm〜20ppmの量のケイ素、
v)10ppm未満、特に0.01ppm〜10ppmの量のヒ素、および
vi)20ppm未満、特に0.1ppm〜20ppmの量のリン
からなる群から選択された焼結抑制剤を含有し、その際に、ppm値は、そのつど、質量割合に対するものである。
【0084】
本発明による焼結体は、殊に、電子素子、殊にモバイル通信機器分野における当該電子素子に適している。
【0085】
したがって、本発明のさらなる対象は、電子素子、殊にコンデンサのための本発明による焼結体の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、実施例5に示された焼結体の、二次電子による顕微鏡写真を示す。
図2図2は、比較例3として第4表中で使用された焼結体の、二次電子による顕微鏡写真を示す。
【0087】
本発明による方法は、次の例につき明示され、その際に、前記例は、本発明思想を限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0088】
一般的な説明
タンタル粉末は、プレス加工助剤としてのステアリン酸とタンタルからなるワイヤーと一緒にプレス加工されて6.0g/cm3の圧縮密度を有する、埋設されたワイヤーを有するグリーン成形体に変わった。前記ステアリン酸は、アルカリ加水分解(NaOH)および引き続く、水によるグリーン成形体の洗い流しにより除去された。引続き、希釈された酸で後洗浄された。こうして、グリーン成形体は、50ppm未満の炭素含量および20ppm未満のナトリウム含量を有することが達成された。反応室内で、マグネシウムは加熱された。所望の温度が達成されたら直ちに、多孔質のニオブ薄板からなるバスケット内に存在するグリーン成形体は、マグネシウム蒸気中に導入された。正確な温度および個々の試験の時間は、第2表から確認することができる。こうして脱酸素されかつ焼結されたグリーン成形体は、当業者に公知の標準法により不動態化された。脱酸素中に生じたMgOは、希硫酸により焼結体から洗い流された。そのために、焼結体は、多孔質のニオブ薄板上に載置され、このニオブ薄板は、希硫酸を含む洗浄容器中に導入された。混合物は、焼結体が可動状態に陥らないように注意深く攪拌された。
【0089】
使用されたタンタル粉末の正確な組成は、第1表中および第1a表中にまとめられている。
【0090】
【表1】
【0091】
さらに、前記粉末に対して、次の値が測定された:
【表2】
【0092】
実施例1〜4で使用されたタンタル粉末は、2992ppm*g/m2の酸素含量を有し、実施例5および6で使用された粉末は、4155ppm*g/m2の酸素含量を有し、および実施例7および9で使用された粉末は、3044ppm*g/m2の酸素含量を有する。
【0093】
第2表には、焼結体を製造するための焼結条件が記載されている。本発明による実施例1〜7および9は、本発明による方法により、前記の記載と同様に製造された。
【0094】
比較例1〜4による焼結体は、記載された条件下で標準法により焼結された。
【0095】
【表3】
【0096】
こうして得られた焼結体は、第3表中にまとめられた組成を示した。
【0097】
【表4】
【0098】
さらに、本発明による方法により得られた焼結体は、第4表中にまとめられた性質を有していた。
【0099】
【表5】
【0100】
焼結体上へのワイヤー接続、すなわち、“ワイヤー引張強度”WPS、は、次のように測定された:陽極ワイヤーは、半薄板の0.25mmの直径の開口に差し込まれ、自由端部は、動力計(Chatillon,出力源LTCM−6を有する型式:DFGS−50)の半クランプ中に張設され、この自由端部は、陽極構造体、焼結体と呼称される、からワイヤーが引き出されるまで負荷された。
【0101】
前記焼結体は、0.1%のリン酸中に浸漬され、150mA/gに制限された電流の強さで化成電圧が10V(比較例1〜4および実施例1〜6)になるまで化成され、或いは17.5V(比較例3aおよび実施例8および10)になるまで化成された。実施例10として示された焼結体の化成には、硫酸5質量%および過酸化水素0.5質量%が添加された水性電解質が使用され、その際に、質量%の記載は、そのつど、水性電解質の全質量に対するものであり、その際に、化成電圧は、17.5Vであった。電流の強さの低下後に、電圧は、3時間保持された。
【0102】
個々の方法の工程の場合のワイヤー接続に関する試験の結果は、第5表中にまとめられている。前記表から確認することができるように、第1表、実施例3による粉末から製造された焼結体は、酸化された還元剤を洗い流した後に極めて低度なワイヤー接続を有し(実施例7)、それによって、前記焼結体は、機械的負荷に関する高い敏感性に晒されている。ワイヤー接続は、17.5Vでの化成後に元通りに高度になる(実施例8)。それに対して、脱酸素直後の焼結体は、比較的高度なワイヤー接続を有する(実施例9)。実施例10から確認することができるように、焼結体が脱酸素直後に組み合わされた洗浄/化成工程に供される場合には、高度なワイヤー接続を得ることができ、その際に、水性電解質には、硫酸5質量%および過酸化水素0.5質量%が添加される。こうして、処理中のワイヤー接続の低減は、回避される。それによって、処理過程を節約することができ、このことは、焼結体の製造法を時間的にも費用的にも効果のあるものにする。さらに、前記焼結体は、全時間を超えて高度なワイヤー接続を有し、それによって、機械的負荷、例えばワイヤーの引き抜きによる、場合によっては起こりうる損傷は、回避される。
【0103】
【表6】
【0104】
第7表から確認することができるように、組み合わされた洗浄/化成工程は、焼結体の電気的性質に対して不利な作用を有しない(第7表、実施例10)。高められたデータは、むしろ、酸化された還元剤の除去と化成が2つの互いに別々の処理工程で行なわれた、焼結体のデータと同等な範囲内にある(第7表、実施例8)。その電気的性質が比較例3aとしての第7表中の比較例として記録されている焼結体は、比較例3と同様に製造され、その際に、17.5Vの化成電圧が使用された。
【0105】
キャパシタンスの測定は、18%の硫酸からなる陰極が使用された。このキャパシタンスは、20Hzと120Hzでの交流電圧で1.5Vのバイアス電圧を同時に印加して測定された。
【0106】
こうして得られた焼結体には、第6表中にまとめられた性質がもたらされた。
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
記載されたデータから確認することができるように、製造された焼結体内の酸素含量は、現在の標準法により得ることができる焼結体内の酸素含量よりも明らかに低い。さらに、本発明による方法により製造された焼結体は、陽極体内に埋設されたワイヤーの減少された引張強度の通常の欠点を示さない。そのうえ、脱酸素後の焼結体の洗浄と当該焼結体の化成との本発明による組合せによって、処理中のワイヤー接続の一時的な低減は、回避されうる。さらに、前記焼結体は、より低い残留電流を有する。
【0110】
第4表の値から確認することができるように、その製造時により高い酸素含量(4155ppm*g/m2)を有するタンタル粉末が使用された焼結体は、その製造の際に技術水準で通常の酸素含量(2992ppm*g/m2)を有するタンタル粉末が使用された焼結体よりも改善されたワイヤー接続を有する。当業者に公知であるように、ワイヤー接続は、焼結条件によって強く影響を及ぼされる。したがって、同じ条件下で焼結された焼結体だけが互いに比較可能である。したがって、実施例1と実施例5との比較ならびに実施例2と実施例6との比較は、本発明により達成され改善されたワイヤー接続を示す。
【0111】
さらに、比較例は、比較可能な本発明による焼結体よりも本質的により高い残留電流を有することが見い出された。そのうえ、比較例1により低い温度で製造された焼結体は、電気的性質の測定を実施するのに十分な接続を有しないことが判明した。また、比較例2の焼結体では、10個の焼結体の中の2個だけが測定に適していることが示された。図1は、上記実施例5に示された焼結体の、二次電子による顕微鏡写真を示す。
【0112】
図1および2において結像された顕微鏡写真は、“黒”の領域のコントラストにより焼結体の細孔を示し、“灰色”の領域のコントラストにより酸化タンタル析出物を示し、かつ“白”の領域のコントラストによりタンタル析出物を示す。
【0113】
図2において確認することができるように、“灰色”の領域の割合が多く、このことは、酸化タンタルの割合が明確であることを示している。これとは異なり、図1による写真の前記の“灰色の領域”は、全く失われ、それによって、本発明による焼結体は、本質的に僅かな割合の酸化タンタルを有することが明らかになる。
図1
図2