特許第6469654号(P6469654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469654フェノール樹脂、該フェノール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び該硬化物を有する半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469654
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】フェノール樹脂、該フェノール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び該硬化物を有する半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/10 20060101AFI20190204BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20190204BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190204BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C08G8/10
   C08G59/62
   H01L23/30 R
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-511615(P2016-511615)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2015059580
(87)【国際公開番号】WO2015152037
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72864(P2014-72864)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591018707
【氏名又は名称】明和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 慎司
(72)【発明者】
【氏名】中江 勝
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 真人
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/013571(WO,A1)
【文献】 特開2008−274167(JP,A)
【文献】 特開2006−306953(JP,A)
【文献】 特公平07−119268(JP,B2)
【文献】 特開2012−193217(JP,A)
【文献】 特開平08−120039(JP,A)
【文献】 国際公開第00/34349(WO,A1)
【文献】 特開2001−164091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00−16/06
C08G 59/00−59/72
C08L
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂であって、
【化1】

(式中、Rは、アリル基を表。qは、1である。pは1又は2を表し、同一でもよく又は異なっていてもよい。nは0以上の整数を表す。)
前記フェノール樹脂は、軟化点が60℃以上90℃以下であり、該フェノール樹脂と、下記一般式(2)
【化2】

で表されるエポキシ樹脂と、硬化促進剤とから得られる硬化物に、40℃以上180℃以下において、1.5%以上の熱膨張率を与えるものであるフェノール樹脂。
【請求項2】
前記硬化物に、250℃において、15MPa以上の貯蔵弾性率を与えるものである請求項1に記載のフェノール樹脂。
【請求項3】
ゲル浸透クロマトグラフ測定による分子量分布において、一般式(1)中、n=0である化合物の含有量が5.5面積%以下である請求項1又は2に記載のフェノール樹脂。
【請求項4】
ゲル浸透クロマトグラフ測定による分散度[重量平均分子量/数平均分子量]が1.0以上4.0以下である請求項1ないし3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
更に硬化促進剤を含む請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
更に無機充填剤を含む請求項5又は6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項9】
40℃以上180℃以下における熱膨張率が1.5%以上である請求項8に記載のエポキシ樹脂硬化物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のエポキシ樹脂硬化物を有する半導体装置。
【請求項11】
薄型片面封止パッケージからなる請求項10に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール樹脂に関する。また本発明は、該フェノール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物及び該エポキシ樹脂組成物の硬化物に関する。更に本発明は、該硬化物を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性等により電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
近年、スマートフォンやタブレット端末などに代表される電子機器の高性能化、小型化、薄型化に伴い、半導体装置の多ピン化、高集積化、小型化、薄型化が加速している。このため、従来のBGA(Ball Grid Array)パッケージ等の片面封止パッケージにおいては薄型化に伴う反り低減による信頼性の向上が求められている。
【0004】
片面封止パッケージでは、基板材料と封止樹脂をはじめとする半導体装置に使用される部材との熱膨張率差により内部応力が残存し、そのことに起因して反りが発生し実装信頼性が低下するという問題点がある。従来の片面封止パッケージにおいては、ガラスクロス等の基材を含む基板材料よりも封止樹脂の熱膨張率が大きく、封止樹脂側に反りを発生することから封止樹脂の低熱膨張率化の検討が進められてきた。
【0005】
しかし、近年の片面封止パッケージにおいては薄型化が進行し、封止樹脂層の厚みが薄いパッケージが増えている。そのことに起因して、従来の片面封止パッケージと異なり、基板材料の収縮の影響を受け、基板材料側に反りを発生するという問題がある。そのため、成形後の封止樹脂の熱収縮を大きくすることで常温での基板材料側への反りを低減させる要望がある。
【0006】
このような封止樹脂の熱収縮を大きくすることによる反り低減の手法として、封止樹脂における無機充填材量の低減による熱収縮率の向上(特許文献1)や、シリコーン化合物のケイ素に直接結合するアルコキシ基を含有せず、シラノール基を含有するシリコーン化合物を用いることによる封止樹脂の熱収縮率の向上(特許文献2)を図る方法が提案されている。
【0007】
また、封止樹脂の厚みが薄くなるに従い、封止樹脂に対する熱時の剛性付与による信頼性向上の要望もある。そのため、熱時剛性の高い、すなわち熱時弾性率の高い材料の要望もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−153831号公報
【特許文献2】特開2013−224400号公報
【発明の概要】
【0009】
しかしながら特許文献1に記載の技術のように、無機充填剤の量を低減したのでは、硬化物の吸水率悪化に起因する耐湿信頼性の悪化が懸念される。また、特許文献2に記載のシラノール基を含有するシリコーン化合物を用いても、硬化物の弾性率の改良にはつながらない。このように、これまで提案されてきた技術はエポキシ樹脂組成物における添加剤に着目したものであり、樹脂そのものの改良についての提案は未だされていない。したがって、エポキシ樹脂組成物の硬化物を加熱したときの熱膨張が大きく、換言すれば冷却時の熱収縮が大きく、また熱時の弾性率が高いフェノール樹脂の開発が望まれている。
【0010】
したがって本発明の課題は、薄型化片面封止パッケージの反りを低減することによって、信頼性の向上の実現が可能な高熱収縮性且つ高熱時弾性率を有するエポキシ樹脂組成物を与え得るフェノール樹脂を提供することにある。
【0011】
前記の課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討した結果、加熱による熱膨張の程度が大きい硬化物は、冷却時の熱収縮率も高くなることを知見し、この知見に基づき更に検討を進めた結果、炭素数2以上15以下の飽和又は不飽和炭化水素基を有するフェノール化合物からなるフェノール樹脂を用いることにより、加熱による熱膨張の程度が大きく、冷却時の熱収縮率も高いエポキシ樹脂組成物及び硬化物が得られることを知見し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂であって、
【化1】
前記フェノール樹脂は、該フェノール樹脂と、下記一般式(2)
【化2】
で表されるエポキシ樹脂と、硬化促進剤とから得られる硬化物に、40℃以上180℃以下において、1.5%以上の熱膨張率を与えるものであるフェノール樹脂を提供することにより、前記の課題を解決するものである。
【0013】
また本発明は、前記のフェノール樹脂とエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物及び該エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物から形成された封止材料を有する薄型片面封止パッケージの半導体装置は、該封止材料の加熱時の熱膨張率が高いことに起因して、冷却時の熱収縮率も高く、そのことによって、半導体装置が実装された基板材料に発生した反りを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフェノール樹脂は前記一般式(1)で表されるものである。式(1)中、Rで表される飽和又は不飽和炭化水素基は、フェニレン軸まわりの回転自由体積が大きいものであることが、加熱時の高熱膨張性の発現、ひいては冷却時の高熱収縮性の発現の観点から好ましい。この観点から、Rの炭素数は上述のとおり2以上15以下であり、好ましくは3以上15以下であり、更に好ましくは3以上10以下であり、最も好ましくは3又は4である。
【0016】
式(1)においてRが飽和炭化水素基である場合、該基としては例えばエチル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、プロピル基、オクチル基などが挙げられる。特に、フェニレン軸まわりの回転自由体積が大きい基であるtert−ブチル基を用いることが好ましい。一方、Rが不飽和炭化水素基である場合、該基としては例えばアリル基、1−プロペニル基、アセチレン基などが挙げられる。特に、フェニレン軸まわりの回転自由体積が大きい基であるアリル基を用いると、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張率を高くすることができ、且つ熱時弾性率も高くすることができるので好ましい。Rは同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。好ましくはすべてのRは同一の基である。その場合、該基はアリル基であることが好ましい。
【0017】
式(1)中、qは、上述のとおり1以上3以下の整数を表し、好ましくは1又は2である。エポキシ樹脂硬化物の熱時弾性率を高めるためには、qの値は大きい方が好ましい。また式(1)中、pは1又は2のどちらも好ましい。p及びqがいずれも1のとき、RはOHに対してo位又はp位に結合していることが好ましい。
【0018】
式(1)中、nは、上述のとおり0以上の整数を表す。nの上限値は、本発明のフェノール樹脂の150℃における溶融粘度が30.0P以下となるような値であることが好ましく、より好ましくは0.1P以上20.0P未満、更に好ましくは0.1P以上10.0P以下、更に一層好ましくは0.1P以上7.0P以下、最も好ましくは、0.1P以上5.0P以下となるような値であることが好ましい。本発明のフェノール樹脂は、様々な分子量を有する高分子の集合体なので、nの値は、該集合体における平均値で表される。
【0019】
本発明のフェノール樹脂は、その150℃における溶融粘度が上述の範囲であることが、無機充填材等との混練によって得られる半導体封止材料を首尾よく製造し得る点から好ましい。また、その軟化点が、25℃を下回る温度(すなわち25℃で液体状態)から100℃以下、特に50℃以上100℃以下、とりわけ60℃以上90℃以下、とりわけ60℃以上80℃以下であることが、ブロッキング等による取扱い上のハンドリング性や、無機充填材等との混練作業のハンドリング性の点から好ましい。また、本発明のフェノール樹脂から得られるエポキシ樹脂硬化物の熱時弾性率を高め得る点からも好ましい。更に、その水酸基当量が400g/eq以下、特に300g/eq以下、とりわけ200g/eq以下であることが、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度が過度に低くなることが効果的に防止され、熱時弾性率の低下を効果的に抑制し得る点から好ましい。水酸基当量の下限値に特に制限はないが、100g/eq以上であれば、満足すべき結果が得られる。これらの物性値の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0020】
本発明のフェノール樹脂は、前記の一般式(2)で表されるエポキシ樹脂と、硬化促進剤とから得られる硬化物に、40℃以上180℃以下において、1.5%以上、好ましくは1.55%以上、より好ましくは1.60%以上、更に好ましくは1.65%以上、最も好ましくは2.00%以上という高い熱膨張率、換言すると冷却時に高い熱収縮率を与えるものである。このような熱膨張率を有する硬化剤からなる封止材料によって薄型片面封止パッケージの半導体装置を製造すると、該封止材料の熱膨張率が高い、すなわち冷却時の熱収縮率が高いことに起因して、半導体装置が実装された基板材料に発生した反りを低減させることができる。
【0021】
反りの低減の効果を更に一層顕著なものとする観点から、本発明のフェノール樹脂は、前記の一般式(2)で表されるエポキシ樹脂と、硬化促進剤とから得られる硬化物に、250℃において、15MPa以上の貯蔵弾性率を与えるものであることが好ましい。反りの低減の効果を更に一層顕著なものとする観点から、本発明のフェノール樹脂は、15MPa以上120MPa以下、特に30MPa以上110MPa以下、とりわけ80MPa以上100MPa以下の貯蔵弾性率を与えるものであることが一層好ましい。
【0022】
上述した熱膨張率及び貯蔵弾性率の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0023】
本発明のフェノール樹脂は、下記一般式(3)で表されるフェノール化合物とホルムアルデヒドとを、酸性触媒下又は塩基性触媒下で反応させることで得ることができる。
【0024】
【化3】
【0025】
式(3)で表されるフェノール化合物の例としては、特に限定はないがエチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、アリルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール等が挙げられる。これらのフェノール化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、本発明のフェノール樹脂から得られる硬化物の加熱時における熱膨張率を高めて、冷却時における熱収縮率を高める点から、アリルフェノール又はtert−ブチルフェノールを用いることが好ましく、とりわけo−アリルフェノールを用いることが好ましい。
【0026】
式(3)で表される化合物間にメチレン架橋基を形成する化合物であるホルムアルデヒドは、その形態に特に制限はない。例えばホルムアルデヒドは、その水溶液の形態で用いることができる。あるいは、パラホルムアルデヒドやトリオキサンなど、酸存在下で分解してホルムアルデヒドを生成する重合物の形態で用いることもできる。
【0027】
本発明における好ましいフェノール樹脂は、低分子量成分が少ない狭分散型のものであることが、エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を短縮化し得る点、及びエポキシ樹脂硬化物の熱膨張率を高め得る点から好ましい。特に一般式(1)中、n=0の化合物が少ないことが、ゲル化時間の一層の短縮化及び高熱膨張率の達成の点から好ましい。この観点から、本発明のフェノール樹脂をゲル浸透クロマトグラフ測定して得られたチャートに基づく面積比で、一般式(1)中、n=0の化合物が、フェノール樹脂全体を基準として5.5面積%以下であることが好ましく、4.5面積%以下であることが更に好ましい。n=0の化合物がフェノール樹脂全体に占める割合の下限値に特に制限はなく、小さければ小さいほど好ましく、最も好ましくは0である。
【0028】
また、エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を短縮化し得る点、及びエポキシ樹脂硬化物の熱時弾性率を高め得る点から、一般式(1)中、n=0である化合物と、n=1である化合物との合計の含有量が10.0面積%以下であることが好ましく、7.0面積%以下であることが更に好ましい。n=0の化合物及びn=1の化合物がフェノール樹脂全体に占める割合の下限値に特に制限はないが、熱時弾性率を高め得る点からは4.0面積%以上であることが好ましく、4.5面積%以上であることが更に好ましい。
【0029】
また、エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を短縮化し得る点、及びエポキシ樹脂硬化物の熱時弾性率を高め得る点から、一般式(1)中、n=2である化合物の含有量が4.0面積%以上14.0面積%以下であることが好ましく、5.0面積%以上13.5面積%以下であることが更に好ましい。
【0030】
一般式(1)中、n=0である化合物と、n=1である化合物との合計の含有量と一般式(1)中、n=2である化合物の含有量とをともに前記範囲とすることにより、分子量分布と分子量とのバランスがよい狭分散型のフェノール樹脂が得られ、フェノール樹脂の軟化点及び150℃溶融粘度を好ましい範囲とすることができ、エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を短縮化でき、併せてエポキシ樹脂硬化物の熱膨張率を高め且つ熱時弾性率を高めることができる。例えば、n=0である化合物と、n=1である化合物との合計の含有量が4.0面積%未満であり且つn=2である化合物の含有量が4.0面積%未満であるときは、n=2である化合物よりも分子量の高い化合物(n=3以上である化合物)の含有量が多くなり、高分子量化が進んでいるので、軟化点及び150℃溶融粘度が高くなりすぎる場合がある。また、n=0である化合物と、n=1である化合物との合計の含有量が10.0面積%以下である場合でも、n=2である化合物の含有量が14.0面積%より大きい場合は、分子量が低くなるので、軟化点及び150℃溶融粘度が低くなりすぎる場合がある。
【0031】
本発明における好ましいフェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定するものではないが、好ましくは1000以上8000以下、より好ましくは1400以上4000以下、更に好ましくは1500以上〜3000以下である。分子量分布の分散度である重量平均分子量/数平均分子量の値は、好ましくは1.0以上4.0以下、より好ましくは1.3以上2.5以下、更に好ましくは1.4以上2.0以下である。また、重量平均分子量及び分散度をともに前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を短縮化し、併せてエポキシ樹脂硬化物の熱膨張率を高め且つ熱時弾性率を高めることができる。
【0032】
本発明のフェノール樹脂は、上述したフェノール化合物及びホルムアルデヒドを原料として、酸性触媒存在下又は塩基性触媒存在下に得ることができる。使用できる触媒は、それが酸性触媒である場合には、例えばシュウ酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。塩基性触媒である場合には、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属触媒類、アンモニア、並びにトリエチルアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。特に、シュウ酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒を用いることが好ましく、とりわけ触媒除去効率の観点からシュウ酸を用いることが好ましい。特に、上述した狭分散型のフェノール樹脂は、限定するものではないが、例えば、前記一般式(3)で表されるフェノール化合物とホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下でレゾール化反応させる第1工程と、第1工程で得られた反応混合物に前記一般式(3)で表されるフェノール化合物を加えて、酸触媒の存在下でノボラック化反応させる第2工程とを含む製造方法によって、好適に調製することができる。この調製方法において、フェノール樹脂におけるi成分(iは一般式(1)におけるn=iの成分を表す)の成分の割合は、反応原料の割合、反応時間、及び反応温度を、以下で説明するように調節することで容易に制御することが可能である。なお、必要に応じて予備的な実験を行うことによって、当業者は実際の反応条件を精度よく決定することができる。
【0033】
前記の調製方法における第1工程について説明する。
第1工程で反応する、一般式(3)で表されるフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとの割合は、一般式(3)で表されるフェノール化合物1モルに対して、ホルムアルデヒドが好ましくは1〜3モル、より好ましくは1.5〜2.5モルである。フェノール化合物と、ホルムアルデヒドとの割合をこの範囲内に設定することで、低分子量成分の生成を抑制し得るとともに、高分子量成分の成分も抑制することができ、狭分散型のフェノール樹脂が得られる。
【0034】
第1工程における塩基性触媒の使用量は、限定するものではないが、一般式(3)で表されるフェノール化合物1モルに対して、0.1〜1.5モルの割合であることが好ましく、0.2〜1.0モルの割合であることがより好ましい。この割合で塩基性触媒を使用することで、反応が首尾よく進行して未反応成分が残存しづらくなり、また触媒の除去が容易になり生産性が向上する。反応温度は、限定するものではないが、好ましくは10〜80℃であり、より好ましくは20〜60℃である。反応温度をこの範囲内に設定することで、反応が首尾よく進行し、また高分子量成分の成分も抑制することができ、レゾール化反応を制御しやすくなる。反応時間は、限定するものではないが、好ましくは0.5〜24時間であり、より好ましくは3〜12時間である。
【0035】
次に、第2工程について説明する。
第2工程では、好ましくは、第1工程のレゾール化反応で得られた反応混合物を酸性化合物で中和した後、一般式(3)で表されるフェノール化合物を加え、更に酸性触媒を加える。中和に用いる酸性化合物としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、シュウ酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等を好適に挙げることができる。酸性化合物は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上の複数種を併用して構わない。
【0036】
第2工程で用いられる一般式(3)で表されるフェノール化合物は、第1工程で用いられる一般式(3)で表されるフェノール化合物1モルに対して、好ましくは0.5〜1.5モルであり、より好ましくは0.7〜1.1モルである。第2工程で用いられる一般式(3)で表されるフェノール化合物の使用量をこの範囲に設定することで、高分子量成分の生成が抑制され、そのことに起因し得フェノール樹脂の溶融粘度が過度に高くなることが抑制される。また未反応のフェノール類が残りにくくなる。
【0037】
第2工程で用いられる酸性触媒の使用量は、第1工程で用いられる一般式(3)で表されるフェノール類1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.07モルの割合であり、より好ましくは、0.0005〜0,05モルの割合である。この割合の範囲で酸性触媒を使用することで、反応を首尾よく進行させることができ、また高分子量成分の生成が抑制され、反応を制御しやすくなる。反応温度は、限定するものではないが、好ましくは50〜150℃程度、より好ましくは80〜120℃程度、更に好ましくは70〜100℃程度である。この温度範囲内に設定することで、反応を首尾よく進行させることができ、また高分子量成分の生成が抑制され、ノボラック化反応を制御しやすくなる。反応時間は、限定するものではないが、好ましくは0.5〜12時間であり、より好ましくは1〜6時間である。反応時間をこの範囲に設定することで、反応を首尾よく進行させることができ、また高分子量成分の生成が抑制される。第2工程で用いられる酸性触媒の例としては、同工程で用いられる酸性化合物と同様のものが挙げられる。
【0038】
次に、前記のフェノール樹脂を含んでなる本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては特に限定はないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂など分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に好ましいエポキシ樹脂は、先に述べた一般式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂である。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂の添加割合は、式(1)で表されるフェノール樹脂の水酸基当量(g/eq)とエポキシ樹脂中のエポキシ当量の比率である水酸基当量/エポキシ当量の値が、0.5以上2.0以下の範囲であることが好ましく、0.8以上1.2以下の範囲であることが更に好ましい。水酸基当量/エポキシ当量の値をこの範囲内に設定することで、硬化反応を十分に進行させることができ、未反応の硬化剤やエポキシ樹脂が残存することを効果的に防止することができる。それによって、加熱時に高熱膨張率を有し、ひいては冷却時に高熱収縮率を有する硬化物を得ることができる。
【0040】
式(1)で表されるフェノール樹脂は、本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の硬化剤の役割を有するところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)で表されるフェノール樹脂以外の他の硬化剤を含んでもよい。式(1)で表されるフェノール樹脂以外の他の硬化剤の種類に特に限定はなく、エポキシ樹脂組成物の使用目的に応じて種々の硬化剤を用いることができる。例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、すべての硬化剤に占める、式(1)で表されるフェノール樹脂の割合は、該エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物の加熱時における高膨張性を十分に高くし、ひいては冷却時における高熱収縮性を十分に高くする観点から、より高い割合であることが好ましい。具体的には、すべての硬化剤に占める、式(1)で表されるフェノール樹脂の割合は、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは70質量%以上、更に一層好ましくは90質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、通常のエポキシ樹脂組成物で用いられる他の成分を、その用途に応じて好適に用いることができる。例えば、エポキシ樹脂をフェノール樹脂で硬化させるための硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、例えば公知の有機ホスフィン化合物及びそのボロン塩、三級アミン、四級アンモニウム塩、イミダゾール類及びそのテトラフェニルボロン塩などを好適に挙げることができる。これらの中でも、硬化性や耐湿性の観点からトリフェニルホスフィンを用いることが好ましい。なお、エポキシ樹脂組成物に一層の高流動性が要求される場合には、加熱処理にて活性が発現する熱潜在性の硬化促進剤を用いることが好ましい。そのような硬化促進剤としては例えば、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルホスフォニウム誘導体が挙げられる。エポキシ樹脂組成物への硬化促進剤の添加の割合は、公知のエポキシ樹脂組成物における割合と同様とすることができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に、無機充填剤などの充填剤も好適に配合することができる。無機充填剤としては例えば非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどが使用できる。特に非晶性シリカ及び結晶性シリカを用いることが好ましい。無機充填剤の粒径に特に制限はないが、充填率を考慮すると0.01μm以上150μm以下であることが望ましい。無機充填剤の配合割合に特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に占める無機充填剤の割合が70質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。無機充填剤の配合割合をこの範囲に設定することで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水率が増加ににくくなるので好ましい。また、該硬化物の加熱時における熱膨張性が十分に高くなり、それによって冷却時における熱収縮性も十分に高くなり、しかも流動性が損なわれにくくなるので好ましい。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて、離型剤、着色剤、カップリング剤、難燃剤等を添加又は予め反応して用いることができる。これら添加剤の配合割合は、公知のエポキシ樹脂組成物における割合と同様でよい。本発明のエポキシ樹脂組成物には、この他、必要に応じて、メラミン及びイソシアヌル酸化合物等の窒素系難燃剤、並びに赤リン、リン酸化合物及び有機リン化合物等のリン系難燃剤を、難燃助剤として適宜添加することができる。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物を調製するには、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、更に必要に応じて加える硬化促進剤、無機充填剤、他の添加剤等を、ミキサー等を使用して均一に混合し、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融状態で混練し、混練物を冷却し、必要に応じて粉砕すればよい。
【0046】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物は、特に限定するものではないが、半導体素子を封止する封止材料として好適に用いることができる。例えば、該半導体素子を搭載したリードフレーム等を金属キャビティ内に設置した後に、エポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド又はインジェクションモールド等の成形方法で成形し、120℃から300℃程度の温度で加熱処理等をすることによりエポキシ樹脂組成物を硬化させることで、半導体装置を好適に得ることができる。特に半導体装置が薄型片面封止パッケージからなる場合、該エポキシ樹脂組成物の硬化物が高膨張性を有していることに起因して、該硬化物が冷却時に大きく収縮し、それによって反りの発生を効果的に低減することができるという有利な効果が奏される。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断らない限り「部」は「質量部」を示す。また「%」は「質量%」を示す。
【0048】
[1]フェノール樹脂の調製
以下のフェノール樹脂の調製の例で用いた分析方法及び評価方法について説明する。
<軟化点>JIS K6910に基づく環球法軟化点測定によって求めた。
<150℃溶融粘度>ICI溶融粘度計を用い、150℃でのフェノール樹脂及びエポキシ樹脂の溶融粘度を測定した。
ICI粘度の測定方法は以下のとおりである。
ICIコーンプレート粘度計 MODEL CV−1S TOA工業(株)
ICI粘度計のプレート温度を150℃に設定し、試料を所定量秤量する。
プレート部に秤量した樹脂を置き、上部からコーンで押さえつけ、90秒放置する。コーンを回転させて、そのトルク値をICI粘度として読み取る。
<水酸基当量>JIS K0070に準じた水酸基当量測定によって求めた。
<分子量分布の測定>以下のようにしてゲル浸透クロマトグラフ測定によりフェノール樹脂の分子量分布を測定した。フェノール樹脂におけるi成分(iは一般式(1)におけるn=iの成分を表す)の割合は解析ソフトMulti Station GPC−8020を用い、測定されたチャートにおけるピーク面積に基づき算出した。その際、ピーク前後の直線部分をベースライン(ゼロ値)とし、各成分のピーク間は最も低くなるところでの縦切りでピークを分けた。サンプリングピッチは500ミリ秒とした。また分子量(Mw、Mn)及び分散度(Mw/Mn)は標準ポリスチレン換算によって算出した。
装置:HLC−8220(東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフ分析装置)
カラム:TSK−GEL Hタイプ
G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件:カラム圧力 13.5MPa
溶解液:テトラヒドロフラン(THF)
フローレート:1mL/分
測定温度:40℃
検出器:RI検出部
RANGE:256(レコーダ出力:256×10−6RIU/10mV)
温度制御(RI光学ブロックの温調温度):40℃
インジェクション量:100μmL
試料濃度:5mg/mL(THF)
<分子量(Mw、Mn)及び分散度(Mw/Mn)の測定>以下のようにしてゲル浸透クロマトグラフ測定によりフェノール樹脂の分子量(Mw、Mn)及び分散度(Mw/Mn)を測定した。フェノール樹脂におけるi成分(iは一般式(1)におけるn=iの成分を表す)の割合は解析ソフトMulti Station GPC−8020を用い、測定されたチャートにおけるピーク面積に基づき算出した。その際、ピーク前後の直線部分をベースライン(ゼロ値)とし、各成分のピーク間は最も低くなるところでの縦切りでピークを分けた。サンプリングピッチは500ミリ秒とした。また分子量(Mw、Mn)及び分散度(Mw/Mn)は標準ポリスチレン換算によって算出した。
装置:HLC−8220(東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフ分析装置)
カラム:TSK−GEL Hタイプ
G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件:カラム圧力 13.5MPa
溶解液:テトラヒドロフラン(THF)
フローレート:1mL/分
測定温度:40℃
検出器:スペクトロフォトメーター(UV−8020)
RANGE:2.56
WAVE LENGTH:254nm
インジェクション量:100μmL
試料濃度:5mg/mL(THF)
<ゲル化時間>
使用機器:株式会社サイバー製 自動硬化時間測定装置
測定条件:150℃ 600rpm
測定方法:o−クレゾール型エポキシ樹脂 EOCN−1020−55(日本化薬株式会社製 エポキシ当量:195g/eq)のエポキシ当量とフェノール樹脂の水酸基当量を当量比(エポキシ当量と水酸基当量との比が1)にて混合し、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンをエポキシ樹脂に対し1.9%配合したエポキシ樹脂組成物を、50%メチルエチルケトン(MEK)溶液に調製する。エポキシ樹脂組成物のMEK溶液を約0.6mL量りとり装置の熱板上に乗せ測定する。測定されたトルクが、装置の測定上限トルク値の20%になった時間をゲルタイムとした。
【0049】
〔実施例1〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量300部のガラス製フラスコに、o−アリルフェノール134部(1.0モル)、92%パラホルムアルデヒド32部(0.98モル)、純水0.4部及びシュウ酸1.1部を入れた。還流下に、100℃で12時間反応させ、更に160℃で2時間反応させた後、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水130部を投入して水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、フェノールノボラック樹脂A(一般式(1)におけるRがアリル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Aの軟化点は73℃、150℃での溶融粘度は4.3P、水酸基当量は170g/eq、ゲル化時間は72秒であった。ゲル浸透クロマトグラフ測定による、n=0の化合物はフェノール樹脂全体の5.9面積%であり、n=1の化合物はフェノール樹脂全体の6.2面積%であった。
【0050】
〔実施例2〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量300部のガラス製フラスコに、o−アリルフェノール134部(1.0モル)、92%パラホルムアルデヒド36部(1.1モル)、純水0.4部及びシュウ酸1.1部を入れた。還流下に、100℃で12時間反応させ、更に160℃にて2時間反応させた後、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水130部を投入して水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、フェノールノボラック樹脂B(一般式(1)におけるRがアリル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Bの軟化点は98℃、150℃での溶融粘度は20P、水酸基当量は172g/eqであった。
【0051】
〔実施例3〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量2000部のガラス製フラスコに、o−アリルフェノール1200部(9.0モル)、42%ホルマリン127部(1.8モル)、及びシュウ酸12部を入れた。還流下に、100℃で7時間反応させた。反応終了後、90℃以上の純水600部を投入して水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することでフェノールノボラック樹脂C(一般式(1)におけるRがアリル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Cは常温で液状であり、水酸基当量は141g/eqであった。
【0052】
〔実施例4〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量300部のガラス製フラスコに、ジアリルレゾルシン95部(0.5モル)、42%ホルマリン14部(0.2モル)を入れた。還流下に、100℃で12時間反応させた後、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水110部を投入して水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧を行い、フェノールノボラック樹脂D(一般式(1)におけるRがアリル基、p=2、q=2のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Dは常温で液状であり、水酸基当量は108g/eqであった。
【0053】
〔実施例5〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量1000部のガラス製フラスコに、p−tert−ブチルフェノール200部(1.3モル)、42%ホルマリン57部(0.8モル)、シュウ酸0.3部を入れた。還流下に、100℃で20時間反応させた後、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水130部を投入して水洗した。その後、内温を180℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、フェノールノボラック樹脂E(一般式(1)におけるRがtert−ブチル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Eの軟化点は99℃、150℃でのICI粘度は4.3P、水酸基当量は167g/eqであった。
【0054】
〔実施例6〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び撹拌器を備えた容量300部(300mL)のガラス製フラスコに、o−アリルフェノール67.0部(0.50モル)、42%ホルマリン71.4部(1.00モル)、及び塩基性触媒として25%水酸化ナトリウム19.2部(0.12モル)を投入し、60℃で7時間反応させて第1工程のレゾール化反応を行った。この反応混合物に、反応停止用の純水134部を投入し、40℃に温度を下げて、25%塩化水素を17.5部(0.12モル)加えて中和して反応混合物を得た。次いで反応混合物にo−アリルフェノール73.7部(0.55モル)、及び酸触媒としてシュウ酸1.3部を投入し、100℃で2時間、次いで120℃で2時間反応させて第2工程のノボラック化反応を行った。得られた反応混合液を、95℃に温度を下げて、同温度の純水134部にて水洗した。水洗後、160℃に昇温し、減圧スチーミング処理を行い、未反応性分を除去することで、フェノールノボラック樹脂I(一般式(1)におけるRがアリル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Iの軟化点は59℃、150℃でのICI粘度は1.2P、水酸基当量は154g/eq、ゲル化時間は59秒であった。ゲル浸透クロマトグラフ測定による、n=0の化合物はフェノール樹脂全体の3.5面積%であり、n=1の化合物はフェノール樹脂全体の6.0面積%であった。
【0055】
〔実施例7〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び撹拌器を備えた容量300部のガラス製フラスコに、o−アリルフェノール67.0部(0.50モル)、42%ホルマリン71.4部(1.00モル)、及び塩基性触媒として25%水酸化ナトリウム19.2部(0.12モル)を投入し、60℃で7時間反応させて第1工程のレゾール化反応を行った。この反応混合物に、反応停止用の純水134部を投入し、40℃に温度を下げて、25%塩化水素を17.5部(0.12モル)加えて中和して反応混合物を得た。次いで反応混合物にo−アリルフェノール60.3部(0.45モル)、及び酸触媒としてシュウ酸1.3部を投入し、100℃で2時間、次いで120℃で2時間反応させて第2工程のノボラック化反応を行った。その後は実施例6と同様にして、フェノールノボラック樹脂J(一般式(1)におけるRがアリル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Jの軟化点は74℃、150℃でのICI粘度は4.3P、水酸基当量は159g/eq、ゲル化時間は55秒であった。ゲル浸透クロマトグラフ測定による、n=0の化合物はフェノール樹脂全体の1.9面積%であり、n=1の化合物はフェノール樹脂全体の4.1面積%であった。
【0056】
〔実施例8〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び撹拌器を備えた容量300部のガラス製フラスコに、o−アリルフェノール67.0部(0.50モル)、42%ホルマリン71.4部(1.00モル)、及び塩基性触媒として25%水酸化ナトリウム19.2部(0.12モル)を投入し、60℃で7時間反応させて第1工程のレゾール化反応を行った。この反応混合物に、反応停止用の純水134部を投入し、40℃に温度を下げて、25%塩化水素を17.5部(0.12モル)加えて中和して反応混合物を得た。次いで反応混合物にo−アリルフェノール46.9部(0.35モル)、及び酸触媒としてシュウ酸1.3部を投入し、100℃で2時間、次いで120℃で2時間反応させて第2工程のノボラック化反応を行った。その後は実施例6と同様にして、フェノールノボラック樹脂K(一般式(1)におけるRがアリル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Kの軟化点は91℃、150℃でのICI粘度は29P、水酸基当量は159g/eq、ゲル化時間は51秒であった。ゲル浸透クロマトグラフ測定による、n=0の化合物はフェノール樹脂全体の1.4面積%であり、n=1の化合物はフェノール樹脂全体の2.8面積%であった。
【0057】
〔比較例1〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量1000部のガラス製フラスコに、フェノール513部(5.5モル)、42%ホルマリン229部(3.3モル)、及びシュウ酸0.6部を入れた。還流下に、100℃で6時間反応させた。反応終了後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、フェノールノボラック樹脂F(一般式(1)におけるp=1、q=0のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Fの軟化点は83℃、150℃でのICI粘度は2.0P、水酸基当量は107g/eqであった。
【0058】
〔比較例2〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量300部のガラス製フラスコに、o−クレゾール108部(1.0モル)、92%パラホルムアルデヒド32部(0.98モル)、純水0.4部及びシュウ酸1.1部を入れた。還流下に、100℃で6時間反応させ、更に160℃で2時間反応させた。反応終了後、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、フェノールノボラック樹脂G(一般式(1)におけるRがメチル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Gの軟化点は130℃であったが、150℃でのICI粘度は測定できなかった。水酸基当量は116g/eqであった。
【0059】
〔比較例3〕
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量300部のガラス製フラスコに、o−フェニルフェノール170部(1.0モル)、42%ホルマリン42部(0.58モル)、及びパラトルエンスルホン酸3.8部を入れた。還流下に、100℃で7時間反応させた後、95℃まで冷却した。冷却後、25%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。更に、90℃以上の純水340部を投入して水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、フェノールノボラック樹脂H(一般式(1)におけるRがフェニル基、p=1、q=1のフェノールノボラック樹脂)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂Hの軟化点は81℃、150℃でのICI粘度は1.7P、水酸基当量は188g/eqであった。
【0060】
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂を用い、エポキシ樹脂組成物を調製し、該エポキシ樹脂組成物から得られた硬化物について硬化物特性を測定した。それらの結果を表1にまとめて示した。
【0061】
[2]エポキシ樹脂組成物及び硬化物の調製及び評価
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂と、前記の一般式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製 YX−4000 エポキシ当量:186g/eq)と、硬化促進剤としてのトリフェニルホスフィン(北興化学株式会社製 TPP)とを使用してエポキシ樹脂組成物を調製した。調製においては、フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを、水酸基当量とエポキシ当量との比である〔水酸基当量(g/eq)/エポキシ当量(g/eq)〕の値が1となるように両者を配合して加熱溶融混合した後、表1に示す量のトリフェニルホスフィンを加え均一に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を150℃で5時間、180℃で8時間のポストキュアを行い、エポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物について、熱膨張率、ガラス転移点、線膨張係数及び貯蔵弾性率を測定した。
【0062】
前記のエポキシ樹脂組成物の硬化物の例で用いた分析方法及び評価方法について説明する。
(1)貯蔵弾性率
エポキシ硬化物を40mm×2mm×4mmに切り出し測定試料とした。測定は、ティー・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置RSA−G2を用い、30℃から3℃/分の昇温速度で昇温しながら貯蔵弾性率を測定し、250℃での貯蔵弾性率を求めた。またTanδのピーク温度をTgとした。
(2)ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数(α1、α2)及び熱膨張率
エポキシ硬化物を10mm×6mm×4mmに切り出し測定試料とした。島津製作所株式会社製熱機械分析装置 TMA−60を用い、30℃から3℃/分の昇温速度で昇温しながら試料のガラス転移温度及び線膨張係数(α1、α2)を測定した。40℃から70℃の線膨張係数をα1、185℃から220℃の線膨張係数をα2とした。また、40℃から180℃における試料の熱膨張率を求めた。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたフェノールノボラック樹脂を用いて得られたエポキシ樹脂硬化物は、各比較例で得られたフェノールノボラック樹脂を用いて得られたエポキシ樹脂硬化物に比べて、加熱時に熱膨張率が高く、換言すれば冷却時に熱収縮率が高く、また貯蔵弾性率が高いことが判る。
特に、実施例1と実施例6ないし8との対比から明らかなとおり、一般式(1)においてn=0の化合物の割合を、フェノールノボラック樹脂の全体に対して5%以下の少量にすることによって、硬化物の熱膨張率を高くすることができ、且つゲル化時間を短縮化できる。
また、実施例1と実施例6ないし8との対比から明らかなとおり、一般式(1)においてn=0の化合物とn=1の化合物との合計の割合を、フェノールノボラック樹脂の全体に対して10%以下にすることによって、硬化物の熱膨張率を高くすることができ、且つゲル化時間を短縮化できる。
更に、実施例6ないし8との対比から明らかなとおり、一般式(1)においてn=0の化合物とn=1の化合物との合計の割合をフェノールノボラック樹脂の全体に対して10%以下とし、且つn=2である化合物の割合を5.0%以上13.5%以下とすることによって、硬化物の熱膨張率を高くすることができ、且つゲル化時間を短縮化でき、且つ貯蔵弾性率(熱時弾性率)を高くすることができる。
また実施例1、2、4及び7(置換基Rはアリル基)と、比較例1、2及び3(置換基Rはアリル基以外)との対比から明らかなとおり、置換基Rがアリル基とすることによって、硬化物の熱膨張率を高くすることができ、且つ熱時弾性率も高くすることができる。同様のことは、実施例1(置換基Rはアリル基)と実施例5(置換基Rはtert-ブチル基)との対比からも明らかである。
また、実施例1(150℃溶融粘度:4.3P、軟化点:73℃、貯蔵弾性率86MPa)と実施例2(150℃溶融粘度:20.0P、軟化点:98℃、貯蔵弾性率:33MPa)との対比から明らかなとおり、150℃溶融粘度の値が、より好ましくは0.1P以上20.0P未満、更に好ましくは0.1P以上10.0P以下、更に好ましくは0.1P以上7.0P以下、最も好ましくは、0.1P以上5.0P以下であるフェノールノボラック樹脂を用いて硬化体を製造すると、該硬化物の熱時弾性率を高くすることができる。同様のことは、実施例7(150℃溶融粘度:4.3P、軟化点:74℃、貯蔵弾性率96MPa)と、実施例8(150℃溶融粘度:29.0P、軟化点:91℃、貯蔵弾性率26MPa)との対比によっても明らかである。
更に、実施例4(置換基R:アリル基、p=2、q=2、軟化点:液状、150℃溶融粘度:<0.1、貯蔵弾性率100MPa)と、実施例3(置換基R:アリル基、p=1、q=1、軟化点:液状、150℃溶融粘度:<0.1、貯蔵弾性率19MPa)との対比から明らかなとおり、q(一つのフェノール核に結合するアリル基の数)が1を超える場合(2以上である場合)には、フェノールノボラック樹脂の150℃における溶融粘度が低い場合、例えば0.1P未満の場合であっても、高熱時弾性率の硬化体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上、詳述したとおり、本発明のフェノール樹脂を用いることで、加熱時の高熱膨張率、すなわち冷却時の高収縮率、及び高熱時弾性率を有するエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることができる。したがって本発明によれば、薄型片面封止パッケージのエポキシ樹脂組成物に好適に用いることができるフェノール樹脂を提供することができる。