特許第6469659号(P6469659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469659押出成型処理によってフィルムを製造するためのダイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469659
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】押出成型処理によってフィルムを製造するためのダイス
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20190204BHJP
【FI】
   B29C47/16
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-518970(P2016-518970)
(86)(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公表番号】特表2016-521648(P2016-521648A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2014061998
(87)【国際公開番号】WO2014198706
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】1355322
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513197921
【氏名又は名称】ブルー ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ル ガル、ギー
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−247343(JP,A)
【文献】 特開2001−293767(JP,A)
【文献】 特開2000−158516(JP,A)
【文献】 特開2003−145007(JP,A)
【文献】 特表2014−520693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成型処理によってフィルムを製造するためのダイスであって、共に流路ダクトを規定する2つのブロック構造部分を備え、前記2つのブロック構造部分のうちの少なくとも一方は、
−前記流路ダクトにおける押出口の唇型開口部近傍まで延伸し、弾力性により変形可能に構成された部分を有する本体部分と、
−前記変形可能な部分と前記ダイスの別のブロック構造部分との間における距離を選択的に修正するために使用され、前記本体部分における前記変形可能な部分の変位量を調整することによって前記変形可能な部分を変形させるための変位量調整手段と、
を備え、前記変位量調整手段は、
−前記ダイスの押出口における流路平面に対して垂直である一般的な方向に沿って延伸することにより、前記変形可能な部分の上に支持される位置に配置された少なくとも一つの担持部材であって、前記担持部材の各々は、前記変形可能な部分の上に支持される第1端部、および前記第1端部とは反対側に位置する第2端部を備え、前記第2端部は、前記ダイスの押出口から離れた場所に位置する、担持部材と、
−前記本体部分から見て相対的に移動可能に構成されており、前記担持部材の前記第2端部に対して力学的に作用することができ、それによって、前記担持部材の位置を修正することが可能となるように構成された調整手段と、
を備え、前記変位量調整手段は、少なくとも一つの中間的な梃子構造材をさらに備え、前記梃子構造材は、前記第2端部において担持する前記担持部材と前記調整手段との間に配置され
前記変形可能な部分に張り付いたブロック構造部分は、前記梃子構造材の上に形成された突起部分に対して相補的となる窪み構造を有し、
前記窪み構造は、前記担持部材の上に設けた前記梃子構造材の支持点に近接して設けられており、それにより、前記梃子構造材および対応する前記担持部材をブロック構造部分の定められた位置に保持する、ことを特徴とするダイス。
【請求項2】
前記変位量調整手段は、前記流路平面に対して垂直である一般的な方向に沿って延伸する複数の担持部材を備え、
前記担持部材は、第1端部と第2端部とを備え、前記担持部材は、前記変形可能な部分のうち、前記ダイスの横断線方向に沿って分散配置された複数の異なる箇所を、前記流路ダクトの唇型開口部に沿って前記第1端部により担持するような位置に来るように構成され、前記ダイスの押出口から離れた場所に位置する前記第2端部は、前記調整手段と接続され、前記調整手段は、前記複数の担持部材の各々の配置を互いに独立して修正することができるように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のダイス。
【請求項3】
少なくとも一つのブロック構造部分の本体部分は、前記流路平面を横切る一般的方向に沿って延伸し、前記流路ダクトにおける押出口の唇型開口部に隣接する端面を有するが、前記ブロック構造部分が有する本体部分または当該少なくとも一つのブロック構造部分を使用することにより、前記調整手段が流路方向から見て当該端面の上流に向かって延伸するように、上記変位量調整手段が構成される、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のダイス。
【請求項4】
前記梃子構造材の各々は、前記ブロック構造部分の本体部分の上に設けられ、回転軸の周りに関節接合された2本の枝部を有するL字型部材によって形成され、調整可能な部分を備え、
短い方の前記枝部は、対応する担持部材の第2端部の上に支持される端部を備え、それにより、短い方の前記枝部前記変形可能な部分に対して押し付けられる一方で、長い方の前記枝部は、当該調整手段と協働するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項5】
対応する前記ブロック構造部分における前記本体部分から相対的に見た前記梃子構造材の回転軸の位置から、前記梃子構造材の上に設けた各調整手段による支持点までの距離を一方の枝部の長さとし、
前記回転軸の位置から前記担持部材の各々の上に設けた前記梃子構造材までの距離を他方の枝部の長さとすると、
前記一方の枝部の長さと前記他方の枝部の長さの比率は2よりも大きい、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項6】
前記比率は、4〜6までの間の値であることを特徴とする、請求項5に記載のダイス。
【請求項7】
前記比率は、5のオーダーであることを特徴とする、請求項6に記載のダイス。
【請求項8】
ダイスはさらに、カスケード接続された複数の梃子構造材から成る梃子群を備え、
前記梃子群は、少なくとも一つの前記担持部材および対応する前記調整手段の間に配置され、それにより、前記調整手段の各々の変位量と前記調整手段に接続された前記担持部材の各々の変位量との間の比率を減少させる、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項9】
前記流路ダクトにおける押出口の唇型開口部に隣接し、流路平面を横切る一般的な方向に沿って延伸する前記ブロック構造部分の端面は、凹面形状を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項10】
前記端面は、回動方向に沿って円筒形状を成し、それより下流に位置する貼り合せ処理用シリンダの外縁形状に対して相補的な構造であることを特徴とする、請求項9に記載のダイス。
【請求項11】
前記ブロック構造部分における本体部分は、変形可能な部分を備え、前記変形可能な部分は、凹面形状を有する端面を備え、前記担持部材は、一定の厚みを有することによって、前記本体部分の窪んだ形状の輪郭曲線をなぞる、
ことを特徴とする、請求項9または10に記載されたダイス。
【請求項12】
前記変形可能な部分は、その全長にわたってほぼ一定の厚みを有するが、前記ダイスの押出口に隣接する自由端部の高さとなる過剰厚み部分を形成するように突出したリブ状部分を有し、前記リブ状部分は、変位量調整手段を所定位置で拘束する拘束部材としての役割を果たす、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項13】
前記2つのブロック構造部分は、流路平面を中心に互いにほぼ対称となるように構成されることによって、前記唇型開口部が前記ダイスの他の部分から突き出た突出部を形成する、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項14】
前記調整手段は、少なくとも一つの熱膨張部分をさらに備えることが可能であり、当該熱膨張部分は、担持部材の上に力学的に作用することができ、熱膨張部分の各々には、少なくとも一つの加熱手段が接続されており、それにより、熱膨張部分の寸法が、温度の関数として制御された形で変化させられる、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項15】
前記調整手段は、少なくとも一つの調整用ネジを備え、前記調整用ネジは、前記担持部材に対して力学的に作用することが可能である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載されたダイス。
【請求項16】
前記変形可能な部分は、前記ダイスの横断線方向に沿った寸法幅全体にわたって一体成型されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載されたダイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成型処理によってフィルムを製造するためのダイスの技術分野と関係する。より具体的には、本発明は、電池などのような蓄電装置を製造するためのフィルムを押出成型処理によって製造する製造技術の分野に応用することが可能である。本発明は、例えば、陰極すなわち電解質フィルムを製造するための用途に応用可能であり、特に、充電部材が固体状の電解質部材に張り付けられる構造を有するポリマー・リチウム電池を製造する場合に応用可能である。
【背景技術】
【0002】
平坦なフィルムの押出成型処理のためのダイスは、先行技術の中で既に知られている。これらのダイスは、一般には、押出成型処理用のスクリューあるいは鋳造された原料で形成される供給ポンプの押出口に配置され、粘性材料の流れの形状を、一般には円筒形状の流れから平坦形状の流れへと修正する。
【0003】
電池用のフィルムを作ることが目的であるならば、ダイスの押出口におけるフィルムは、厚さおよび出力速度の観点から可能な限り均一であることが重要であり、この均一性は、押出成型幅に沿ったフィルム状の如何なる場所でも保たれることが重要であり、なおかつ、押出成型処理段階の直後に実行される貼り合せ処理段階の実行中にフィルムが破損しないようにしなくてはならない。フィルムの厚みが均一でない場合、貼り合わせ処理により作られた積層構造は、実際には、機械的な強度不足あるいは厚み不足をもたらし得るので、そのようなフィルムを使用して用意された電池の動作不良につながる電気特性のばらつきを引き起こす。
【0004】
ところで、ダイスを通過している間に、フィルム厚みの不均一をしばしば生じさせる負荷損失が生じる。これにより、ダイスの押出口部分において、上記フィルムは特に、横断線に沿った中央の部分と比べて、横断線に沿った両端の箇所で厚みが薄くなる傾向がある。さらに、ダイス(特に圧力によって屈曲したダイスの中央部分)の機械力学的な性能特性によっては、さらに出力端においてもフィルム厚みの不均一性が生じる場合があり得る。
【0005】
この種の問題を解決するために、流路ダクト(あるいはギザギザ形状の流路)を間に形成する2つの部材を備えたダイスが既に知られている。当該流路ダクトに沿って設けられた部分の少なくとも一方は、弾力性によって変形可能に構成された唇形状の部分および複数の調節用ネジを含み、当該唇形状部分は、当該流路ダクトの押出口の唇型開口部近傍まで延伸しており、当該複数の調節用ネジは、当該ダイスに設けられた別の部分から相対的に見た距離を修正するためのネジであり、上記唇形状部分の横断線方向の寸法に従って上記唇形状部分の異なる部分を担持することを意図して設けられている。
【0006】
しかしながら、ダイスの押出口における調節用ネジの体積量に起因して、この種のダイスでは、貼り合わせ処理を実行する手段を、ダイスの押出口と非常に近接した状態で、当該押出口位置に直に配置することができない。ここで、ダイスの唇型開口部が貼り合わせ処理用のシリンダと近接して設けられている構造は、当該シリンダの横断線方向に沿った延伸変形効果を制限することによって、完成したフィルムの品質を改善することができ、当該延伸変形効果は、当該フィルムが支持部材の上に配置されていない場合に生じる現象である。上述したエアギャップを調節するための調節用ネジは、実際には体積が非常に嵩張るので、当該貼り合わせ処理用のシリンダと近接して設置することが困難であり、当該ダイスの押出口部分と当該貼り合わせ処理用のシリンダの収斂点との間に残された距離は短い。
【発明の概要】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態に係るダイスを実施することによって達成すべき目的は、上述した技術上の問題点を克服することである。この目的のために、本発明は、押出成型処理によってフィルムを製造するためのダイスを提案し、当該ダイスは、共に流路ダクトを規定する2つのブロック構造部分を備え、前記2つのブロック構造部分のうちの少なくとも一方は、
−前記流路ダクトにおける押出口の唇型開口部近傍まで延伸し、弾力性により変形可能に構成された部分を有する本体部分と、
−前記変形可能な部分と前記ダイスの別のブロック構造部分との間における距離を選択的に修正するために使用され、前記本体部分における前記変形可能な部分の変位量を調整することによって前記変形可能な部分を変形させるための変位量調整手段と、
を備え、前記変位量調整手段は、
−前記ダイスの押出口における流路平面に対して垂直である一般的な方向に沿って延伸することにより、前記変形可能な部分の上に支持される位置に配置された少なくとも一つの担持部材であって、前記担持部材の各々は、前記変形可能な部分の上に支持される第1端部、および前記第1端部とは反対側に位置する第2端部を備え、前記第2端部は、前記ダイスの押出口から離れた場所に位置する、担持部材と、
−前記本体部分から見て相対的に移動可能に構成されており、前記担持部材の前記第2端部に対して力学的に作用することができ、それによって、前記担持部材の位置を修正することが可能となるように構成された調整手段と、
を備え、前記変位量調整手段は、少なくとも一つの中間的な梃子構造材をさらに備え、前記梃子構造材は、前記第2端部において担持する前記担持部材と前記調整手段との間に配置される、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るさらに別の技術的に優れた特徴的構成によれば、前記変位量調整手段は、前記流路平面に対して垂直である一般的な方向に沿って延伸する複数の担持部材を備え、前記担持部材は、第1端部と第2端部とを備え、前記担持部材は、前記変形可能な部分のうち、前記ダイスの横断線方向に沿って分散配置された複数の異なる箇所を、前記流路ダクトの唇型開口部に沿って前記第1端部により担持するような位置に来るように構成され、前記ダイスの押出口から離れた場所に位置する前記第2端部は、前記調整手段と接続され、前記調整手段は、前記複数の担持部材の各々の配置を互いに独立して修正することができるように構成されている。
【0009】
従って、従来技術において見られるように、少なくとも当該ダイスが有する少なくとも一つのブロック構造部分の端部に変形可能な部分が配置されていることにより、前記2つのブロック構造部分の間のエアギャップが最適な幅となるように規制される。上述した担持部材は、ダイスの横断線方向に沿って当該変形可能な部分の位置を規制している状態を変化させ、本発明に関して後述する様式により、従来方式よりも高精度に上記の規制を行うことを可能にする。
【0010】
さらに、当該調整手段がダイスの唇型開口部分に位置しないように、当該調整手段を本来の位置から移動させ、当該唇型開口部分と当該変形可能な部分との間に担持部材を介在させるような位置に動かすことは、ダイスの端部に設けられた規制機構の体積量を減少させるのを助け、ダイスを設計する際に比類ない設計自由度を実現するという利点をもたらす。従って、貼り合わせ処理用シリンダと可能な限り近接した位置に設置することが可能となるようにダイスを構成することができる。
【0011】
好適には、少なくとも一つのブロック構造部分は、上記流路平面を横切る一般的方向に沿って延伸し、当該流路ダクトにおける押出口の唇型開口部に隣接する端面を有するが、上記ブロック構造部分が有する本体部分または当該少なくとも一つのブロック構造部分を使用することにより、上記調整手段が流路方向から見て当該端面の上流に向かって延伸するように、上記変位量調整手段が構成される。それらは、ダイスの端面と貼り合わせ処理用シリンダとの間には配置されない。
【0012】
好適には、当該担持部材は、基本的には、本発明に係るダイスの横断線方向に沿った寸法幅全体を覆うように設けられている。しかし、当該担持部材は、ダイスの横断線方向に沿った寸法幅に沿ってダイスの一部分のみを覆うように設けられることも可能である。当該複数の担持部材は、互いに横並びとなるように配置され、好適には、側面同士が接触し合うように配置される。このような配置構成は、調整動作の精度を高める効果がある。当該複数の担持部材の各々は、好適には、それぞれ対応する調整手段に接続されている。
【0013】
特に、梃子構造材の各々は、上記ブロック構造部分の本体部分の上に設けられ、回転軸の周りに関節接合された2本の枝部を有するL字型部材によって形成され、調整可能な部分を備え、短い方の枝部は、対応する担持部材の第2端部の上に支持される端部を備え、それにより、この部分が当該変形可能な部分に対して押し付けられる一方で、長い方の枝部は、当該調整手段と協働する。
【0014】
対応するブロック構造部分における本体部分から相対的に見た梃子構造材の回転軸の位置から、当該梃子構造材の上に設けた各調整手段による支持点までの距離を一方の枝部の長さとし、上述した回転軸の位置から各担持部材の上に設けた梃子構造材までの距離を他方の枝部の長さとすると、一方の枝部の長さと他方の枝部の長さの比率は2よりも大きく、好適には、上記比率は、4〜6までの間の値であり、技術的に優れた比率は、5のオーダーである。しかしながら、上述した比率が1よりも大きな値である梃子構造材もまた、当然に本発明の技術的範囲内に属する。
【0015】
実際、選択された調整手段のピッチが制限要因となることなしに、上記変形可能な部分の位置を非常に精細に規制することができるので、当該梃子構造材は、2つのブロック構造部分の間におけるエアギャップをさらに高精度に規制する。
【0016】
上記変形可能な部分に張り付いたブロック構造部分は、好適には、上記梃子構造材の上に形成された突起部分に対して相補的となる窪み構造を有し、当該窪み構造は、特に、当該担持部材の上に設けた梃子構造材の支持点に近接して設けられており、それにより、この梃子構造材および対応する担持部材をブロック構造部分の定められた位置に保持する。
【0017】
ダイスはさらに、カスケード接続された複数の梃子構造材から成る梃子群を備えることができ、当該梃子群は、少なくとも一つの担持部材および対応する調整手段の間に配置され、それにより、各調整手段の変位量と当該調整手段に接続された各担持部材の変位量との間の比率を減少させ、必要に応じて、調整の細かさを増大させる。
【0018】
基本的には、当該複数のブロック構造部分は、流路平面を中心に対象となるように構成され、それにより、ダイスの唇型開口部は、ダイスの残りの部分から見て突出した構造を形成する。この事は、貼り合わせ処理用シリンダのダイスと複数の貼り合せ処理用シリンダの収斂領域に位置するダイスの唇型開口部を、互いにより近接した位置にもってくることによって、シリンダ間のエアギャップが小さくなって貼り合わせ処理用シリンダと対応する位置に来るようにすることができる。特に、ダイスの唇型開口部は、複数のシリンダの少なくとも一部分と上記収斂領域との間における流路方向に沿って配置され得る。
【0019】
当該流路ダクトにおける押出口の唇型開口部に隣接し、流路平面を横切る一般的な方向に沿って延伸するブロック構造部分の端面は、凹面形状を有し、好適には、回動方向に沿って円筒形状を成し、それより下流に位置する貼り合せ処理用シリンダの外縁形状に対して相補的な構造である。従って、ダイスは、貼り合せ処理用シリンダの形状と構造的に整合する。
【0020】
ブロック構造部分における本体部分は、変形可能な部分を備え、当該変形可能な部分は、これもまた凹面形状を有する端面を備え、当該担持部材は、実質的に一定の厚みを有することによって、本体部分の窪んだ形状の輪郭曲線をなぞる。従って、当該担持部材もまた凹面形状を有する。
【0021】
ダイスの上流側に位置する調整手段が本来の位置から移動することにより可能となるこの構成は、ダイスの唇型開口部を、複数のシリンダの収斂領域に接合させ、ダイスの本体部分が唇型開口部の近傍に可能な限り強固に適合している状態を維持し、唇型開口部の近傍において後者に対して強固さを与え、その結果、唇型開口部の弾力性による変形量を低下させ、それにより、出力端におけるフィルム厚みの均一性を増大させる。
【0022】
流路平面に対して垂直な方向に沿って見た場合の上記変形可能な部分の厚みは、2mm〜5mmの数値範囲内であり、好適には、4mmのオーダーである。流路方向に沿って見た場合の当該変形可能な部分の長さは、好適には、その厚みの少なくとも2.5倍よりも大きい長さであり、上記変形可能尾な部分の変形を容易にする。実際に、上記変形可能な部分は、好適には、流路方向に沿ってブロック構造部分の本体部分から突出する流路平面内に沿って延伸する唇形状部材を形成する。
【0023】
上記変形可能な部分は、その全長にわたってほぼ一定の厚みを有するが、ダイスの押出口に隣接する自由端部の高さとなる過剰厚み部分を形成するように突出したリブ状部分を有し、当該リブ状部分は、変位量調整手段を所定位置で拘束する拘束部材としての(特に担持部材としての)役割を果たす。
【0024】
各担持部材は、ダイスの横断線方向に沿った寸法幅に従い、50mmより狭い幅を有し、その幅は、好適には、20mmよりは大きく、技術的に有利な幅は、20mm〜30mmの数値範囲内である。この幅は、製造コストを抑制しながら、ダイスの全幅にわたってエアギャップを精細に調節するために最適な幅である。実際、各担持部材の幅を短くする(これは製造コストも増大させるが)ことにより、担持部材の設置数を増やすことも可能であるが、この方向に沿った調整精度が改善されることはない。何故なら、上記変形可能な部分は、一体成型された部材であり、上記変形可能な部分の上で部分的に支持される担持部材の動作は、隣接する構造部分の位置決めに影響するからである。
【0025】
各担持部材は、2mm〜5mmの数値範囲内の厚みを有し、典型的には4mmのオーダーの厚みを有し、厚みを減らすことにより、ダイスにおける本体部分の個体性を増加させ、各担持部材の長さは、その厚みの10倍より大きい長さであり、技術的に有利な各担持部材の長さは、その厚みの15倍より大きい長さである。各担持部材は、特に、金属で形成される。
【0026】
調整手段は、少なくとも一本の調整用ネジを備えることができ、当該調整用ネジの各々は、担持部材の第2端部の上に(一つ以上の梃子構造材を介して)力学的に作用することが可能である。
【0027】
当該調整手段は、少なくとも一つの熱膨張部分をさらに備えることが可能であり、当該熱膨張部分は、(任意付加的に一つ以上の梃子構造材を介して)担持部材の上に力学的に作用することができ、熱膨張部分の各々には、少なくとも一つの加熱手段が接続されており、それにより、熱膨張部分の寸法が、温度の関数として制御された形で変化させられる。これは、調整手段の位置をさらに精細に調節することを可能にする。例えば、当該熱膨張部分は、ネジとすることも可能であり、当該加熱手段は、加温ナットとすることも可能である。
【0028】
上述した加熱手段は、標準的な調整用ネジとの間で互いに相補的な役割を果たすことによって、担持部材の位置を調節するように意図されることが可能である。最初に接近用の調節段階が標準的な調整用ネジによって実施されることが可能であり、所望の位置の近傍に達した後には、上述した加熱手段によってより精細な調節動作が実施され得る。
【0029】
調整手段は、例えば、ダイスまたは貼り合せ処理の出力端に設置された測定装置によってフィルムの局所的な厚みを測定した値の関数として、手動によりまたは自動で駆動され得る。そのような測定装置は、加熱手段または調整用ネジの各々を駆動するモータを制御することによって、ダイスを規制し、その結果、フィルム製造中の任意の時点において、できるだけ良好な品質でフィルムが製造されるようにする。
【0030】
ダイスにおける当該変形可能な部分はさらに、好適には、ダイスの横断線方向に沿った全寸法幅にわたって一体成型されており、それにより、材料の液漏れやダイスの押出口における厚みレベルの不均一性を防止している。さらに、2つのブロック構造部分の各々は、上記のように変位量調整手段に接続された変形可能な部分を有することが可能である。本発明に係るその他の特徴的構成、目的及び技術的優位性は、非限定的な実施形態として開示される以下の添付図面を参照しながら後述する発明の詳細な説明を読むことにより明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に従って実施されるダイスを横断線方向に沿った部分を示す図である。
図2】本発明に従って実施される変位量調整手段を拡大表示した図である。
図3】特に、複数の担持部材の形で変位量調整手段の製造を図示するために、本発明の変形例に係るダイスの斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、ダイスの断面図を示す図1図2を参照しながら、本発明に従って実施されるダイスの幾つかの実施形態について後述する。本発明に従って図1に示すダイスは、2つの主要なブロック構造材である第1の固定式ブロック構造材100と第2の調整可能に構成されたブロック構造材200を備える。
【0033】
図1において50〜53の符号番号を付して図式的に示す手段によって、2つのブロック構造材100と200は、互いに相手から見て固定された位置に配置されている。これらの手段50〜53は、それ自身既知であり、本発明に係る数多くの変形実施例の主題となり得るが、以下の記述においてはこれ以上詳細には説明されない。
【0034】
図1において与えられる任意の例示に従うならば、第1の固定式ブロック構造材100は、ダイスの下側構造部分を形成する一方で、第2の調整可能に構成されたブロック構造材200は、ダイスの上側構造部分を形成している。しかしながら、上記構成とは上下が逆になったダイスの構成もまた実施可能である。実際に、図3に示すように、調整可能に構成されたブロック構造材200は、ダイスの」下側構造部分を形成する一方で、固定式のブロック構造材100は、ダイスの上側構造部分を形成している。本発明に係るさらに別の変形実施例に従うならば、2つのブロック構造材100と200は、共に調整可能に構成される。さらに、ダイスは、垂直フィルムを形成するように構成することもまた可能である。
【0035】
これら2つのブロック構造材100と200との間には、流路ダクトすなわちギザギザ形状の流路を形成するための空隙110が存在し、当該流路ダクトは、押出成型処理装置から供給されるフィルム材料が流れる流路を形成することを可能とし、ダイスの材料投入口側におけるフィルム材料の円筒形状の流れを変形処理して、ダイスの押出口側において実質的に平坦な形状であるフィルム形状を有するフィルム材料の流れへと変換することを可能とする。従って、2つのブロック構造材100と200との間に設けられている空隙110は、ダイスの材料投入口側においては円筒形状であり、ダイスの中央部分にのみ設けられている。空隙110は、より薄い厚みを有し、ダイスの横断方向に沿った寸法幅全体にわたってダイスの反対側の端部112に達するまで延伸しており、端部112は、唇型開口部とも呼ばれ、ダイスの内部で形成されたフィルムが押出される部分である。上述した横断線方向に沿った寸法幅は、図1および図2の平面に対して垂直である。
【0036】
第1の固定式ブロック構造材100と第2の調整可能に構成されたブロック構造材200は、本発明に係る数多くの変形実施例における実施対象物となりえる。一つの側面では、2つのブロック構造材100と200は、互いに相補的な役割を果たす担持表面102および202を備え、2つのブロック構造材100と200とが接続された際には、担持表面102および202は、流路平面とも呼ばれる結合平面101を形成する。上述した担持表面102および202は、フィルム材料の流路となる空隙110を形成する窪み部分を除いては、全体的に平坦である。この結合平面101は、ダイスの中でフィルム材料が流れる流路の方向Lを含んでおり、当該流路方向Lは、図1の平面に対して並行であり、図1の平面に対して垂直である横断線方向とも並行である。
【0037】
2つのブロック構造材100と200において、ダイスの下流側に配置された貼り合せ処理装置の側を向いた端面は、図において参照符号104および204で示されている。図を単純化するために、図中においては、上述した貼り合せ処理装置は示されていない。一般的に、当該貼り合せ処理装置は、少なくとも一対の貼り合せ処理用シリンダを備えており、当該一対のシリンダは、結合平面101内の母線の高さ位置で収斂するように構成されている。当該貼り合せ処理用シリンダの一方は、ブロック構造材100の端面104に対向するように設けられ、当該貼り合せ処理用シリンダの他方は、ブロック構造材200の端面204に対向するように設けられている。結合平面101を横切る一般的な方向に沿って延伸するこれらの端面104および204は、好適には凹面形状を有し、その全体が回転方向に沿って円筒形状を成し、下流側に設けられた貼り合せ処理用シリンダの輪郭曲線と相補的な構造を成していることにより、以下において後述するように、当該一対の貼り合せ処理用シリンダが収斂する位置の近傍に唇型開口部112を配置することが可能となる。
【0038】
ダイスの固定式ブロック構造材100と調整可能に構成されたブロック構造材200は好適には金属により形成される。固定式ブロック構造材100は、単一体として一体成型された本体部分を有し、それにより、堅固で使用中に変形しないように作られている。
【0039】
調整可能に構成されたブロック構造材200もまた、本体部分210を備えているが、本体部分210は、唇型開口部112の近傍に配置されるように意図されている端面位置において変形可能部分220を備えており、変形可能部分220は、唇形状部分を形成しており、当該唇形状部分は、(図1および図2の平面に対して直交する方向である)ダイスの横断線方向の寸法幅全体に沿って、フィルム材料が流れる流路方向(長手方向Lとも呼ばれる)の外側に達するまで延伸している。
【0040】
着目する唇形状部分220について、流路平面に対して垂直である方向V(ここでは、垂直方向に対応する)に沿った厚みl1は、本体部分210に取り付けられたその基部221とその自由端部222との間において少なくともほぼ一定であることが好ましい。この厚みl1は、典型的には数ミリメートルであり、好適には、2mm〜5mmの数値範囲内であり、さらに好適には4mmとすべきである。流路方向Lに沿った形状部分220の長さl2は、典型的には、少なくとも上記厚みの2.5倍より大きい長さであり、好適には、20mm〜30mmのオーダーとすべきである。従って、特に、上述した寸法に起因して、唇形状部分220は、上記方向Vに沿った屈曲作用によって変形可能となるように構成されている。
【0041】
好適には、唇形状部分220は、本体部分210に窪み部分226を設けることによって形成され、当該窪み部分226は、唇形状部分220と本体部分210における残りの部分との間に位置するように形成され、より正確に言うと、貼り合せ処理用シリンダの近傍に位置するように意図された本体部分210の端面205内に位置するように形成される。
【0042】
図1および図2に示す実施形態に従うならば、窪み部分226は、2面角形状を有する溝状流路および端面205において終端される唇型開口部によって形成され、当該2面角形状は、基底位置において45°のオーダーの角度αを成している。
【0043】
より正確に言えば、図1および図2からさらに明らかなように、窪み部分226の幾何形状は、好適には、以下のような形状とすべきである。すなわち、窪み部分226の基部とダイスの唇型開口部の押出口との間において、唇形状部分220が、その全長にわたってほぼ一定の厚みを有する一方で、ダイスの押出口に隣接したその自由端部222の高さ位置に等しい過剰な厚みを形成する突出したリブ形状部分223を有するような形状とすべきである。そのため、唇形状部分220の境界を定めるような形で窪み部分226が有する表面227は、好適には、その自由端部の近傍において隙間228を有するのが好ましく、それにより、収斂する形状のエッジ部分を有する窪み部分226が形成される。この過剰な厚み223は、以下において後述する変位量調整手段300の位置を保つ役割を果たす。
【0044】
図1および図2に示す好適な実施形態に従うならば、変位量調整手段300は、少なくとも一つの担持部材310と組み合わせる形で、梃子構造材350および梃子構造材350を駆動し、調整するための駆動調整手段380を備え、本明細書全体を通して、駆動調整手段380は、調整手段あるいは駆動手段とも呼ばれる。
【0045】
調整可能に構成されたブロック構造材200は、唇形状部分220を押圧するように意図された少なくとも一つの担持部材310を備えている。より正確には、調整可能に構成されたブロック構造材200は、好適には複数の担持部材310を備えている。これらは、基本的に、ほぼ垂直方向Vに沿って本体部分210の端面205に当接する向きに延伸し、それにより、変形可能部分220に対してこの方向に沿って力学的に作用する。
【0046】
より具体的には、担持部材310の各々は、ブロック構造材200における本体部分210が有する端面205の輪郭曲線をなぞるようにして動いてゆき、唇型開口部112が配置されている本体部分210の端部にまで達する。このような構成により、調整可能に構成されたブロック構造材200の端面204は、変位量調整手段と共に、特にこの実施形態においては担持部材310によって境界を定められているが、端面204は、端面205の輪郭形状と同様の凹面形状の輪郭を有する。金属製の担持部材310は、その体積量が最小となるように、厚みを一定に保ちながら薄い厚みとなるように形成され、その厚みは、例えば、2mm〜5mmの数値範囲内であり、典型的には、4mmのオーダーである。このような構造に起因して、同じような体積量でも、ダイスの本体部分210は非常に強固に形成されることが可能であり、押圧による変形力に対して容易に対抗することができる。担持部材310の各々の一般的な方向Vに沿った長さl3は、典型的には、その厚みの10倍よりも大きい長さであり、技術的に有効な長さは、その厚みの15倍を上回る長さである。
【0047】
図3から明らかなように、複数の担持部材310は、唇型開口部112の近傍に配置されると共に、ブロック構造材200における本体部分210が有する端面205の横断線方向に沿った寸法幅全体にわたって、横並びとなるように配列されて設けられるのが好ましい。ダイスの横断線方向の寸法幅に沿って見た場合に、担持部材310の幅に相当する寸法は、50mmよりも狭く、好適には、20mmよりも広い。これら複数の担持部材310の各々は、好適には、この横断線方向に沿って約20mm〜30mmの幅を有するように構成されることが好ましい。
【0048】
実際に、担持部材310の横断線方向の寸法幅を大幅に狭くするのは望ましいことではない。何故なら、変形可能部分220は一体成型されており、従って、担持部材310の各々が変形可能部分220に対して及ぼす力学的作用は、担持部材310の各々が支持している箇所に作用するだけでなく、その箇所に近接した位置にある変形可能な唇形状部分220の一部にも作用するからである。従って、担持部材310の設置個数が際限なく増加していっても、それに応じて調整の細かさを必ずしも細かくしなくてもよい。
【0049】
上記のように、変形可能部分220が一体成型されており、従って、変形可能部分220の一部分の変形が周囲の隣接する部分をさらに変形させる効果を及ぼさないとは言えないという前提の下では、担持部材310の個数の増加が調整精度を改善しないという状況において、本発明の発明者は、担持部材310が有するこの幅は、変形可能部分220の位置の局所的な調整とダイスの製造コスト抑制とを両立させるための妥当な妥協案であると判断した。
【0050】
中間に介在する部分として梃子構造材とも呼ばれる部材350は、坦持部材310の各々と接続されている。梃子構造材350の各々は、調整可能に構成されたブロック構造材200によって坦持されており、唇型開口部112から離れた側において坦持部材310の端部の上に支持されている。複数の梃子構造材350はさらに、調整可能に構成されたブロック構造材200の横断線方向に沿った寸法幅全体にわたって横並びに配列されている。
【0051】
このようにして、複数の坦持部材310は、変形可能な唇形状部分220と複数の梃子構造材350との間に設けられる。坦持部材310の各々は、第1端部312と第2端部314を有し、第1端部312によって唇形状部分220の上に置かれており、第1端部と反対側にある第2端部314によって複数の梃子構造材350の一つに抗して当接している。梃子構造材350の各々は、2つの枝部360および370を備える一つのL字型部材を形成する。
【0052】
短い方の枝部360は、端部364を備え、端部364は、対応する坦持部材310の上端部314の上に支持され、それにより、この坦持部材310が下方向へと押し下げられることによって調整可能な変形可能部分220の位置に影響を与える。
【0053】
より正確に言うと、坦持部材310の各々における2つの端部312と314のそれぞれが有する先端部分は、全体的に角が丸められた凸型形状である。変形可能な唇形状部分220の自由端部の上に設けられた過剰な厚みを有する部分223は、窪み部分226の内側へと向いたその表面上にギザギザ形状の流路または凹断面形状の流路229を有しており、坦持部材310の各々における隣接する端部312が流路229の中に貫入することによって坦持部材310が唇形状部分220と接触している状態を保持し、梃子構造材350の押圧力が作用した際に、坦持部材310が唇形状部分220から滑って外れるのを防止している。さらに、梃子構造材350の端部364は、好適には、対応する坦持部材310に隣接するその表面上にギザギザ形状または凹断面形状の流路365を有しており、坦持部材310における隣接する端部314が流路365の中に貫入することによって坦持部材310が梃子構造材350と接触している状態を保持し、坦持部材310が梃子構造材350から滑って外れるのを防止している。
【0054】
短い方の枝部360は、ブロック構造材200の本体部分210が有する端面205に対向して配置されているが、この短い方の枝部360の自由端部364が坦持部材310を支持する役割を果たすと同時に、枝部360は、調整可能に構成されたブロック構造材200における本体部分210に形成された相補的形状部分230内に嵌合している。
【0055】
長い方の枝部370は、調整可能に構成されたブロック構造材200における上側表面206に対向して配置され、その全体が結合平面101と並行である。L字型形状を有する梃子構造材350における長い方の枝部370の端部においては、少なくとも一つの調整用ネジ380が配置されており、調整用ネジ380は、梃子構造材350の位置を動かすための駆動手段を形成するので、結果的に、調整用ネジ380は、対応する坦持部材310と変形可能な唇形状部分220の位置を動かす駆動手段を形成することとなる。
【0056】
この目的のために、調整用ネジ380は、好適には、梃子構造材350内に相補的な構造で設けられたネジ穴に嵌め込まれる形で梃子構造材350と一体化されており、当該ネジ穴は、長い方の枝部370の端部近傍に設けられている。また、調整用ネジ380は、本体部分210における上側表面206の上にその自由端部が当接する形で置かれている。
【0057】
さらに、梃子構造材350は、L字型形状を有する梃子構造材350における短い方の枝部360の端部近傍に位置する領域232においても、ブロック構造材200の本体部分210に当接する形で支持され、領域232における梃子構造材350の上記支持構造は、突出部362の高さ位置に設けられ、突出部362は、枝部360の端部からL字形状部材の屈曲凹部の内側に向かって突出しており、本体部分210の対応する窪み部分230内に嵌合している。
【0058】
梃子構造材350は、梃子構造材350がブロック構造材210の上に支持される支点となる上述した領域232に対応する回転軸を中心に回転方向に回動可動となるように構成されることが可能である。この支点は、上述した回転軸を中心に回動する関節接合部によって置き換えることもできる。
【0059】
より正確には、図1および図2に示す実施形態に従うならば、突出部362は、全体的に真っ直ぐな矩形の部分を有し、窪み部分230もまた、突出部362の矩形部分に対して相補的な構造である全体的に真っ直ぐな矩形部分を有する。「相補的な構造」とは、窪み部分230が有する矩形部分と、突出部362が有する矩形部分とが全体的に相似形であるが、窪み部分230の矩形部分の方が少しだけ寸法が大きく、それにより、窪み部分230の内部で突出部362が回転できる多少の隙間を残すことを可能にしている。さらに正確に言うならば、図1および図2に示す例においては、駆動手段である調整用ネジ380が力学的に作用した際、ブロック構造材200に対する梃子構造材350の回転軸は、領域232の高さ位置において、窪み部分230のより大きな角度によって形成される。
【0060】
図1および図2に示す例に従うならば、回転軸232と坦持部材310の上に支持される梃子構造材350の支点365との間の距離D1は、回転軸232と本体部分210の上に支持される調整用ネジ380の支点との間の距離D2よりもずっと小さい(より具体的には、1/5よりも小さい)。より一般的な場合、本発明に従うならば、中間介在部材である梃子構造材350の梃子比である比率D2/D1は、2よりも大きく、好適には4〜6の数値範囲内である。体積量が許すならば、この比率が10を上回るような構成としても良い。
【0061】
好適には、ブロック構造材200はさらに、突出部367に対して相補的な構造の窪み部分240を有しており、当該窪み部分240は、中間介在部材である梃子構造材350の上に形成されており、これにより、この梃子構造材350とそれに対応する担持部材310がブロック構造材200の所定の位置に保持されることとなる。この目的のために、変形可能に構成されたブロック構造材200における本体部分210は、対応する担持部材310との接触点の近傍において、梃子構造材350の各々に設けた突出部367が入る形で嵌合するように意図されたチャネル240を備える。チャネル240は、ブロック構造材210において結合平面101とは反対側にある表面の上で終端されている。この形状的な協働関係は、駆動手段を形成する調整ネジ380を取り外す際に、梃子構造材350(及び任意付加的には、対応する担持部材310も含めて)が、ダイスの押出口に配置されたローラー圧延機の中に落ち込んでしまうのを防止している。
【0062】
この目的のための変形実施例として、本体部分210の上に形成されたチャネル230は、少なくとも先端が少しだけ窄まった開口端部を有することが可能であり、同時に、梃子構造材350の上に形成された相補的な構造の突出部362は、その自由端部に向かって少しだけ広がった形状を有する。突出部362の各々は、横断線方向に沿ってスライドしながらチャネル230内に嵌合するが、本体部分210の外部表面に対して垂直な相対的並行移動操作によって引き抜くことが可能であり、それによって、本体部分210の上に梃子構造材350が強固に保持されることが保証される。担持部材310の各々もまた、その一端が過剰な唇型形状部220の厚み部分223の上に接触しており、他端が相補的構造を有する突出部365と噛み合っていることにより、ブロック構造210の上に非常に強固に保持されることとなる。
【0063】
調整用ネジ380を押し込んだり引き抜いたりすることにより、中間介在部材である梃子構造材350の各々は、対応する担持部材310の位置を変化させ、その結果として、変形可能な唇形状部分220の一部の領域の位置を変化させる。実際、本体部分210に対して端部が固定されている調整用ネジ380の変位量は、回転軸232を中心として梃子構造材350を回転させ、その結果として、梃子構造材350の端部364を本体部分210に対して相対的にシフトさせる。梃子構造材350は、結合平面110に近づいたり遠ざかったりすることによって、担持部材310の変位量を調整する。従ってその存在は、担持部材310の位置を調整するという観点から、顕著な設計自由度を与える。
【0064】
好適には、担持部材310の各々は、変形可能な唇形状部分220の変位量を調整する第1端部312の反対側に第2端部314を有しているが、担持部材310の各々は、その第1端部314において、梃子構造材(中間介在部材)350に当接する形で支持されている。他の観点から言えば、複数の担持部材310と同じ個数の梃子構造材350が設けられるのが好ましく、複数の梃子構造材350の各々は、それぞれ対応する担持部材310の変位量を調整し、複数の梃子構造材350の各々は、それぞれ対応する調整用ネジ380と接続されている。
【0065】
上記のような梃子構造材350を採用した仕組みを設けたことで、変形可能部分220の上に力学的に作用する担持部材310の各々の位置は、駆動手段である調整用ネジ380の働きにより、非常に精細に調整することが可能となる。何故なら、駆動手段である調整用ネジ380までの変位距離と担持部材310の各々までの変位距離との間の比率は約5となるように設計されているからである。さらに、これは、駆動手段である調整用ネジ380を規制するための力として、担持部材310の各々に対して作用する力よりも小さい力を作用させ、その結果として、当該作用力は、変形可能部分220にも作用する。
【0066】
さらに、ダイスは、唇型開口部112が設けられたその端部において、上述した端面104および204により規定される独特の形状を有することが明らかである。実際、ブロック構造材100および200の各々は、この高さ位置において、外部に張り出した凹曲線形状の端面104および204を有し、より正確に言うなら、ダイスの下流側に配置されるように意図された複数の貼り合せ処理用シリンダに対応して、これら複数のシリンダに対して相補的な輪郭線構造を成す部分を有する。端面104は、固定式のブロック構造材100の本体部分110によって境界線を定められている一方で、端面204は、担持部材310によって境界線を定められており、その場合の担持部材310は、調整可能に構成されたブロック構造材200の輪郭曲線上をなぞりながらブロック構造材200の本体部分210における端面205の上に張り付いている。より具体的には、ブロック構造材100および200は、基本的には、流路平面101を中心に互いに対称な構造であり、それにより、唇型開口部112は、ダイスの他の構成部分から突き出た突出部分を形成している。従って、ダイスのこのような輪郭形状は、V字型の凸形状曲線と同様の輪郭形状であり、これは、先端部分を形成する唇型開口部112が有する輪郭形状である。上記のような対称構造により、調整可能に構成されたブロック構造材200における端面205は、固定式のブロック構造材100の本体部分110が有する端面104と比較して相対的に窪んだ形状となっていることは明らかである。
【0067】
このようにして、ブロック構造材100および200のために選択された特異な凹曲線形状及び円筒形状に特に起因して、ダイスの押出口は、複数の貼り合せ処理用シリンダが収斂する領域の近傍に配置されることが可能となり、当該複数のシリンダは、フィルムの貼り合せ処理を行うと共に、ダイスの押出口部分においてフィルムの厚みを薄くする働きをする。これは、押出成型処理段階と貼り合せ処理段階との間において、フィルムの成型状態を安定化させ、さらには拘束現象の発生を抑制するので、完成したフィルムの品質を改善することが可能となる。
【0068】
本発明に係る実施形態において、調整手段である調整用ネジ380がダイスの唇型開口部112から離れる方向に移設され、担持部材310の設計が単純であるという事実により、上記のような構成が実現可能となり、これら複数の担持部材310は、ブロック構造材200の本体部分210が有する外側の端面205に対して薄い板状部材を押し付ける処理により形成することができる。
【0069】
従って、ダイスの端面に配置された担持部材310は、ダイスの本体部分210が有する端面205の輪郭曲線をなぞるように延伸するので、上述した貼り合せ処理用シリンダの円筒形状部分に対して相補的な構造である凹曲面形状をさらに有する。これらの担持部材310は、大部分の長さにわたってブロック構造材200の本体部分210の表面に張り付いているので、このような構成は、担持部材310が燃えてしまうのを防止する。
【0070】
本発明に係るダイスは、上述した幾つかの実施形態を変形して得られる数多くの変形実施例に従って実施することも可能であり、例えば、以下のような構成を有するダイスを実施することも可能である。
−ブロック構造材100および200の各々の本体部分は、一体成型され、または複数の構成部分から構成されることが可能であり、例えば、第1の構成部分は、ギザギザ形状の流路110を備え、第2の構成部分は、変形可能な唇形状部分220を形成し、
−上記2つのブロック構造材100および200は、変形可能部分220と担持部材310を備えることが可能であり、
−担持部材310は、ダイスの横断線方向に沿った寸法幅の一部にわたってのみ延伸し、それにより、特に担持部材310の中央部において、ダイスの中央部分を屈曲させようとする力学的作用に抗するように構成可能であり、
−さらに、複数の担持部材310は、厳密に横並びに配列されなくても良く(すなわち、厳密に互いに隣接して配列されなくても良く)、
−調整可能に構成されたブロック構造材200は、担持部材310と調整用ネジ(駆動手段)380との間において、互いにカスケード接続された複数の梃子構造材350を備えることが可能であり、それにより、調整用ネジ(駆動手段)380の変位量と担持部材310の各々の変位量との間の比率を低減し、
−調整用ネジ(駆動手段)380は、熱膨張部分および当該熱膨張部分に近接して設けられた加熱手段を備えることが可能であり、それにより、温度の関数として制御される態様で、その寸法を変化させ、
−唇型開口部の近傍におけるダイスの輪郭形状は、平面的又は凸型形状となることが可能であり、
−D1/D2で表される距離の比率は、上述した値には限定されず、
−複数の担持部材310の各々に対応する梃子構造材350の形状および変形可能部分220の形状は、上記実施形態において上述したものに限定されない。
【0071】
好適には、変形可能な唇時形状部分220は、ダイスの横断線方向に沿った寸法幅全体にわたって一体成型された部材であり、それにより、フィルム材料の液漏れが唇型開口部の高さ位置において発生するのを防止する。
【0072】
図1において、ブロック構造材100が有する上述した凹曲面形状かつ円筒形状の表面104の曲率半径は、符号R1で示されており、ブロック構造材200が有する上述した凹曲面形状かつ円筒形状の表面205の曲率半径は、符号R2で示されており、担持部材310の外縁部における凹曲面形状かつ円筒形状の表面204の曲率半径は、符号R3で表されている。好適には、曲率半径R1およびR3は、ほぼ同一形状であり、下流側に配置された貼り合せ処理用シリンダの曲率面に対して相補的な構造を有している。曲率半径R2は、厚みを持った担持部材310の曲率半径R3よりも大きい。梃子構造材350における短い方の枝部360が有する外表面361は、担持部材310の外表面が描く凹曲線形状の輪郭線と連続性を有することが好ましく、それによって、その下流側に隣接して貼り合せ処理用シリンダを設置する際の邪魔にならないようにしている。
図1
図2
図3