(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁場生成ヨークサブアセンブリ(100)が、強磁性材料から形成される成形された支持用開放フレームワークであって、その上に極性が交互の3つの長尺状強磁性極(115a、115b、116)が連続的に直列に配置される強磁性材料から形成される成形された支持用開放フレームワークをさらに含む、請求項1に記載の改良されたイオン源アセンブリ。
前記磁場生成ヨークサブアセンブリ(100)が、強磁性材料から形成される成形された支持用開放フレームワークであって、その上に極性が交互の長尺状強磁性極(115a、115b)が連続的に直列に配置された、強磁性材料から形成される成形された支持用開放フレームワークをさらに含む、請求項1に記載の改良されたイオン源アセンブリ。
各前記熱電子カソード(7)が、タングステンワイヤから形成されるフィラメントである又は交互嵌合パターンに切断されるタングステンのブロックであり、かつ、電流により直接加熱される、又は、前記アーク放電チャンバ(1)の外部に位置する源からの電子衝撃により間接的に加熱されるタングステンのブロックである、請求項1に記載の改良されたイオン源アセンブリ。
【背景技術】
【0004】
本発明は、イオンビーム源であって、特定の工業用ニーズに応えることのできるイオンビーム源を提供する。上で特定された用途のためには、多くの異なる荷電種のイオンビームを作ることが必要である−その範囲及び種類は、一般にリン、ホウ素、炭素、窒素、酸素、アルゴン、シリコン、ゲルマニウム及びヒ素イオンを含む。
【0005】
このような従来の用途は、大電流、数十eVから最大で100keVの範囲のエネルギー、安定性、イオンの厳密な制御、及び長い使用可能期間を必要とする。イオン注入のための大電流は、一般的に30mAを超える何ミリアンペアもの望ましい種のイオンを必要とし、本発明は、生産性の理由により最大で1A以上の遥かに大きいイオンビームを作ることに向けられるので、当業者は、イオン源の出口アパーチャで約10ma/sq.cm.を超え、好ましくは30mA/sqcmを超える電流密度を作ることができる拡張性のあるイオン源構造のみに関心を寄せるようになる。
【0006】
また、一価の原子イオンは、ほとんど全ての従来の用途例において望ましいが、分子イオンが使用可能であるときもある。さらなる詳細及び情報については、2つの標準的な教科書、特に、The Physics and Technology of Ion Source, 2nd ed. ,Edited by Ian G. Brown, Wiley, 2004、及び、Large Ion Beams, A. Theodore Forrester, Wiley, 1988を参照されたい。様々な操作上の詳細については、米国特許第7,498,572号、同第8,723,135号、同第6,160,262号、及び同第8,455,837号も参照されたい。
【0007】
プラズマ及びイオン化可能気体源
£一般的に受け入れられた定義によると、「プラズマ」は、物理的な物質の存在の第4の状態であると考えられている。気体(又は固体、又は液体)として現れている任意の物質を次第に加熱すると−その物質は最終的に、プラズマ状態であっていくつかの電子が原子から解放され、原子、正イオン、電子及びときにより負イオンの準中性混合が共存するプラズマ状態に入るのに十分なエネルギーを蓄積し含む。プラズマは、物質の状態であってそこからイオンが真空で最も容易に引き出される物質の状態である。
【0008】
プラズマ電子の温度は、概して10,000度Kを超えており、最も都合よくは電子ボルト(eV)単位で測定され、ここで1eVは11,627Kに対応する。
【0009】
いくつかの特定の使用例において、プラズマ全体は均一温度で熱平衡にあってもよいが、イオン源における現実世界のプラズマの圧倒的な大部分においては、電子はある温度(典型的には1又は2eV)で熱平衡を確立する。しかしながら、イオンは電子と平衡になく、その理由はそれらの質量が電子の質量の何千倍もあるからであり、それらは、気体であってそこからそれらが形成された気体により近い温度に留まり得るからである。このような衝突についての運動学の基本法則は、数百万もの衝突が、電子と原子/イオンとの間で、イオンエネルギーが電子の平均エネルギーへ近づき始める前に求められることを明らかにしている。
【0010】
従って、その最も一般化された形態において、イオン源は、予め選択された材料又は物質に由来する荷電の異なるイオン種のプラズマを作るよう機能し、次いでこれらのイオン種を引き出し、これらのイオン種を、成形「ビーム」であって、複数のイオンがおよそkm/sの速度を有する単一エネルギーである成形「ビーム」として高速になるよう加速する。
【0011】
£従って、典型的な気体状物質イオン源は少なくとも2つの作動可能な部分すなわち、(i)プラズマ生成システムと(ii)ビーム引き出しシステムとを提示する。これらのコンポーネントシステムの各々は有形の構造及び実体を用いてその意図された目的及び機能を達成する。
【0012】
・プラズマ生成装置は、源の作動的なサブユニットであって、プラズマを気体状物質から作り出し、そこから十分な量の望ましい又は適切なイオン種が、源の引き出しシステムにより成形ビームとして後に引き出される源の作動的なサブユニットである。プラズマを気体状物質から生成する方法は複数あるが、ここで焦点を当てるのは、電子衝撃イオン化であり、ここで、イオンは電子衝撃により作り出され、電子エネルギーができるだけ低く、通常は40〜120Vである。
【0013】
プラズマを生成するこの方法は、典型的には平均的なプラズマ電子よりはるかに高いエネルギーを有する電子源の存在が必要である。従って、プラズマ源は、典型的には以下を含む、すなわち、周囲温度(場合により数百Kの温度であり得る)の中性気体又は蒸気、40〜120eVのエネルギーを有する電子源、気体をイオン化するのに十分以上の電圧(
図2を参照)、数eVの温度で熱平衡に速やかに至る、電子又はイオン衝撃により気体原子から解放される電子、及び電子衝撃により作り出されるイオンであって、周囲に近い初期温度を有するが、プラズマを離れる際に、電子温度のかなりの部分である平均エネルギー値を有し得るイオン。イオンの密度が高いことと、それらの温度が可能な限り低いこともまた望ましい。
【0014】
・従って述べられた対比において、イオン源の引き出しシステムは、作動的なサブユニットであってプラズマからのイオンを加速し、流動イオンビームであってその目的地への輸送の望ましい形状及び正しい発散角の流動イオンビームを生成する作動的なサブユニットである。中性粒子及び電子は、引き出しシステムによりそれぞれ無視され退けられる。大電流正ビームのための引き出しシステムは先行技術
図1に示されるとおり最低でも3つの電極を使用する。
【0015】
£従ってここでは、リボン状イオンビームがどのようにして作り出されるのか、及び当該技術分野において経時的に生じている主たる進歩が何であったかだけでなく、現在の当業者の一般論及び支配的かつ有利なポイントを構成するものが何であるかを正しく特定する正確な概要の説明を提供することが、有用と考えられている。
【0016】
強制電子ビーム誘起アーク放電(FEBIAD:Forced Electron Beam Induced Arc Discharge)イオン源
多くの従来のイオン源はプラズマを、リボン状イオンビーム生成及び後続のリボン状イオンビームのアーク放電チャンバからの引き出しに用いる。このようなイオン源は典型的には、イオン化されてプラズマになる気体を導入するための入口アパーチャを有するプラズマ閉じ込めチャンバ、及び出口開口又は放出アパーチャであってそれを通じてリボン状イオンビームがプラズマから引き出される出口開口又は放出アパーチャを含む。
【0017】
従ってここで、強制電子ビーム誘起アーク放電(FEBIAD)イオン源の従来の動作理論が何であるか簡潔に説明することには価値がある。この目的のため、典型的なFEBIADイオン源の概略図が先行技術
図1により示される−ここで、
図1の特定の例は、バーナス型イオン源であって、磁場及びアンチカソードがこの型に特化したバーナス型イオン源である。
【0018】
FEBIADイオン源構造
イオン源の機能は、荷電イオンの流れを作ることと、これらの流動イオンを引き出し、高速になるまで加速することであることもまた思い出されたい。この目的及び目標の一部として、放出された荷電イオンの流れは、リボン状ビームであって、イオンがおよそkm/sの速度を有する単一エネルギーであるリボン状ビームを形成するよう導かれる。
【0019】
先行技術
図1により概略的に示すとおり、イオンビーム源の構造は典型的には、固体(solid)アークチャンバであってその中にアーク放電が含まれることになる固体アークチャンバと、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つのカソード電子エミッタと、1つ又は複数のエクストラクタ・グリッド又は電極と、場合により中和器とを含む。これらの先行技術の構造的実体の各々が簡潔に以下に記載される。
【0020】
基本的に、アーク放電イオン源は、最初に、予め選ばれた気体を固体壁アーク放電チャンバの内部キャビティ容積内に導入することにより作動する。カソード電子エミッタ(例えばフィラメント)は、気体をイオン化してプラズマ状態にする可動電子を提供する。
【0021】
関連する用途のための典型的には40〜120Vの電圧が、カソード電子エミッタとキャビティ容積のいくらかの他の部分(アノードと呼ばれる)との間に印加され、従ってカソードから放出される電子は、40〜120eVの範囲のエネルギーまで加速され、このエネルギーは、電子が気体原子又は分子に衝突するとき、電子が気体原子又は分子をイオン化できるほど十分である。
【0022】
イオン及び電子は共にプラズマを含む。電子はより高い速度を有するため、それらは壁により速く到達する傾向があり、これはプラズマ(高伝導性である)を正電位にする。一旦この電位が電子のさらなる損失を防止するのに十分になると、プラズマは安定し得る。プラズマは通常はアノードに対して僅かに正であり、標準的な教科書はこの状態をより詳細に説明する。
【0023】
穴、又はスロット、又は穴もしくはスロットの列を含む1つ又は複数の引き出し電極が、チャンバの前部に位置づけられ、キャビティ容積の外側で、チャンバにおけるアパーチャの合致する組と整列し、プラズマ内の正に帯電したイオンが流れて高速になるよう加速されるようになることを可能にする。電位差が引き出し電極とアークチャンバとの間に与えられる。
【0024】
中和器が、場合によりエクストラクタ・グリッドの下流に位置づけられ、それにより十分な追加的な電子が、次いで、流れているイオン流へ加えられて、リボン状ビーム内にある正に帯電したイオンの電荷密度の釣り合いをとる。複雑な関係が、電極電位と任意のこのような穴又はスロットの近傍のプラズマのエッジとの間に存在し、正しい条件が満たされると、極めて平行なイオンビームが形成され得る。
【0025】
FEBIAD源内の気体のイオン化
FEBIAD源内でイオン化されてプラズマ状態になり得る気体の説明のための一例はホスフィンである。ホスフィンがアーク放電チャンバ内の電子流へ曝露されると、中性ホスフィン気体分子は解離して正に帯電したリン(P
+)イオン、及び正に帯電した水素(H
+)イオン−すなわちリンイオン及び水素イオンの両方を同時に含むプラズマをもたらす。結果としてのプラズマは従って工作物への注入に望ましいイオン、すなわち正に帯電したリン(P
+)イオン、だけでなく、いくつかの望ましくないイオン種、すなわち正に帯電した水素(H
+)イオン、分子イオンPH
X+、及び場合によりP
2+をイオン化プロセスの不可避的な副産物として含む。
【0026】
リンイオン及び水素並びに他のイオンがプラズマ内に共存し、全ての正イオン種は、源構造の前部開口又は出口アパーチャを通じて引き出しグリッド又は電極により引き出された成形ビーム内に一緒に放出される。複数の正に帯電したイオン種のこの生産は、任意の適切な原料気体により提供される他の全ての種類のプラズマに当てはまり−その各々は、望ましいイオン種、例えばヒ素イオン(As
+)及びホウ素イオン(B
+)、並びに望ましくないイオン種(例えば正に帯電した水素イオン又は負に帯電したハロゲン化物イオン)を生じる。結果として、いずれのプラズマも複数種の正に帯電したイオンか負又は正に帯電した粒子の両方かのいずれかを−いくらかの比例した量の非イオン性の中性原子種と共に、生成し得ることが分かる。源が引き出し電極に対して正にバイアスされるため、負イオンは引き出されない。
【0027】
異なるイオン源タイプの適否
最適な電流(アンペア)値と特定のビーム質とを有する引き出されたイオンビームを得るために、引き出されたビーム収量を構成するイオン種の密度を最適化すること、及び他の望ましいビーム特性の有意味な範囲を提供することが必要である。リボン状イオンビームにおいてこのような特性を達成するために、以下の操作及び技術が従来用いられてきた。
【0028】
1.電子衝撃イオン化の技術:
中性原子又は分子種の電子衝撃イオン化は、プラズマ密度を増加させるための最も一般的な技術である。原子種の周りを軌道を描いて回る電子と相互作用するのに十分近くを通過するエネルギー電子は、エネルギーをその電子へ与え得る。最初に基底状態にある電子を完全に引き離すのに必要なエネルギーは、イオン化エネルギー(又は、単位Vで表される場合、電位)として公知である。
【0029】
先行技術の
図2は、原子種の荷電状態に対するイオン化電位の発生を示す。イオン化電位は単に閾値量であり、イオン化効率は、付帯的な電子エネルギーでイオン化電位の最大で約3倍に増加し、その後より高いエネルギー値で落下する。一次電子エネルギーが低いと、作られる高い荷電状態のイオンの数が最小化し、逆もまた同様であり、従って、電圧の思慮深い調節により、特定のイオン種のための最良の形成条件が最適化され得る。
【0030】
2.異なるイオン源による正イオンの生成
£当業者は、ある規模で、対象となる用途において使用可能なイオンビームを作ることのできる異なるタイプのイオン源を検討しなければならない。要件は、50eV〜100keVの範囲のエネルギーで、>1mA/sq cmの特定のイオン種であることを思い出されたい。当業者は、従って、以下のとおり、イオン源のいくつかのカテゴリーのさらなる検討を除くことができる:
(i)重イオンの負イオン源−固体ターゲットを使用するスパッタ源であり、用途が必要とする電流密度又は寸法を受け入れられない。
(ii)固体イオン化源−アルカリ金属のために非常に良好に機能することができるが、半導体をドープするために今日使用されるイオン種のためには全く良好には働かない。
【0031】
£代わりに、当業者は、従って、もっぱら気体状イオン源に専念することができ、かつもっぱら気体状イオン源に専念し、利用可能な選択肢を狭めるようさらに行動する。従って、さらなる検討に値するリストは以下のみを提示する。
〇冷カソードイオン源:これらはいくつかのぺニング源を含み、高いアーク電圧を必要とし、非常に低いイオン電流のみ生じる。さらに、高い放電電圧は、イオンエネルギーの範囲が広いことを意味し、これによりビームが高エミッタンスを有するようになり、その結果それほど容易には輸送され得ずかつ再び集中させられ得ない。
〇デュオプラズマトロン型及び同様の源:これらは、小さいタイトなカナルであって、その中で磁場が電子の流れを抑制する小さいタイトなカナルを必要とする。これらの源は電流密度要件を満たし得るが、リボン状ビームのために使用され得ず、十分にスケールアップしない。
〇マイクロ波源(ECR源を含む):これらは、特定の気体種の高信頼性の大電流を作ることができ、それらは、高い荷電状態のイオンの低い電流を作るのに適切である。しかし、それらは、高い電子温度及び比較的ノイズが多いプラズマを作り、比較的高いビームエミッタンスをもたらす。これらの源は、ビームエミッタンスがマイクロ波の波長を大きく超えるためメータ長さへスケールアップされ得ず、これは均一なイオン化を妨げる。
【0032】
様々なタイプのRFイオン源:これらの源も同様の欠点を抱える。結果として、それらはより低い電流のためにより良好に使用され、かつそれらは高いイオン及び電子エネルギーを引き起こし、そのため高いビームエミッタンスを生じさせる。プラズマ物理学は、これがそのようでなければならない明確な理由を与える−すなわち、これらの源は濃度の低い、より高い温度のプラズマの生産に有利である。
【0033】
£結果として、除去のプロセスにより、当業者は、電子衝撃による気体又は蒸気のイオン化に基づくイオン源を使用することに限定されることになり、ここで、電子は約40〜120eVの範囲のエネルギーを有する。電流密度要件を満たすために、当業者は、数アンペアの電子の大電流を必要とし、この要求は、今度は熱電子放出により電子を生じさせるための熱カソードが求められることを意味する。従って、カソードは、特定の電圧で大電流レベルに到達するためにプラズマ内に浸されなければならず、これは熱カソードアーク放電イオン源をもたらす。
【0034】
今日の当技術分野における先行技術の水準は、傍熱カソード(IHC:Indirectly Heated Cathode)が設置されたアセンブリを含む、バーナス源の変形形態を含み、及び限られた部門において、マルチカスプ型閉じ込め源の変形形態を含む。アノード層プラズマ加速(Anode Layer Plasma Acceleration)源もまた利用可能であり、これは大きいリボン状ビームにとっていくつかの有用な機能を有するが、単一エネルギーのイオンビームの生産の必要性を欠く。
【0035】
バーナス源及びそのタイプの変形形態
バーナス源は望ましい種の大電流リボン状ビームを作ることができる−イオン源を出るビーム幅は商業的生産において通常は約100mm以下であるが場合により最大で200mmである。このバーナス源において、アークチャンバは中空のキャビティであり、断面が約35mm、長さが100〜250mmであり、長さ方向の出口スロットがその前面にある(先行技術の
図1を参照)。このアークチャンバ内で、熱電子カソードが一端に位置し、およそ同じ電位のアンチカソードが他の端部に位置する。およそ200ガウスの均一磁場がバーナスイオン源の端部から端部へ延びている。典型的には60〜120Vのアーク電圧がカソード電子エミッタとアノードとの間に印加される。
【0036】
£バーナス源におけるカソードにより放出される電子は、磁場により直径約10mmの円筒形体積に閉じ込められ、端部でカソード電位により方向転換させられ、従って捕捉される。気体又は蒸気は、アークチャンバ内へ流れ込み、そこで一次電子がそれを非常に効率的にイオン化し、およそ1eVの電子温度を有すると測定された密集かつ安定したプラズマを形成する。
【0037】
中央捕捉カラム内の数アンペアの高速電子は、空間電荷全体にほとんど寄与せず、低速熱化電子の密度が遥かに大きいことが理解される。しかしながら、高速「一次」電子のみが新たなイオンを生成するのに十分なエネルギーを有する。電子エネルギーは、複数の種が形成される場合、供給気体からの所与のイオン種の生産を最大化するよう調節可能である。完全さのため、及びこのバーナスイオン源におけるプラズマ条件のより良好な一般的な理解のため、当業者は、The Physics and Technolgy of Ion Sources, 2nd ed., Edited by Ian G. Brown, Wiley, 2004; R. Bernas and A. O. Nier, ReV Sci Instr19:895(1947)、及びI. Chavet and R. Bernas, Nucl. Instr. dand Meth. 51:77(1967)を参照されたい。
【0038】
£バーナスイオン源に関する情報のいくつかの他のポイントが注目に値する:プラズマは壁から数デバイ長以内に延在し、デバイ長は、典型的な条件下で1mmをはるかに下回るよう計算される。プラズマ内の電位変動は、約1/2kT/eであり、ここでTは電子温度であり、Kはボルツマン定数であり、この数量は1eVで測定されている(引用されるBrown文献を参照)。従って、プラズマ内の電位は非常に均一であり、プラズマは測定から密度が非常に均一であることも分かっている。
【0039】
加えて、イオンは電子よりはるかに低温で、壁に向かってそれらの形成地点から外へ向かって半径方向に弱く加速される。プラズマ内の加速電位は約0.5Vであり(Ito文献参照)、プラズマと壁との間の加速は数ボルトである。プラズマは壁から1mm以内に延在する。
【0040】
£高温カソードからの電子は、プラズマ内のアノード電位より数ボルト大きいエネルギーへ速やかに加速され、磁力線上のタイトな渦巻軌道へ閉じ込められ、そのためそれらはアークチャンバを上下に何度も振動させる。それらは気体原子との非弾性衝突を受け、平均自由行程は典型的な条件下で1メートルを上回る。これらの衝突において、電子が気体をイオン化する場合、それらは少なくともエネルギーにおけるイオン化電位、及びおそらくはるかにそれ以上を損失する。従って電子は減速する。一旦約10eVまで減速すると、他の自由電子との弾性クーロン散乱衝突の可能性が増し、この可能性は電子速度に反比例し、そのためこれらの電子は、次第に強く相互作用し、速やかに熱平衡に至る。過剰な電子が存在する傾向があり、そのため、より大きいエネルギー及び従ってより大きい軌道半径を有する電子は、他の電子が衝突する前に、アノード電位で壁と衝突する傾向があり、この機構はプラズマの温度を低下させるよう作用する。
【0041】
作り出されたイオンの数パーセントのみが、直接出口スロットへ、正しい方向にランダムに動く。しかしながら、残りのイオンは壁に当たり、次いで再利用され、ほとんどがその後の試行で最終的にスロットを出る。望ましいイオン種が不揮発性(例えばB
+)である場合、ハロゲン化物気体の使用は、これは通常では無駄となる、壁からの材料をエッチングし、従ってBF
3がホウ素イオンのための共通の供給気体である。
【0042】
£バーナスイオン源は、非常に成功している設計であることが認められているが、これは容易にスケールアップされず、その理由は、バーナスイオン源がそのアークチャンバの長さにわたる磁場を必要とするからである。アークチャンバ長さ寸法が長いほど、磁場を生成するためにより多くのアンペア回数が必要となるが、副次的問題が進行を速やかに防止する−磁場は中央でより弱くなり端部でより強くなるのである。従って、寸法が有効なアーク長より約200mm長い場合、大胆な対応策がこの効果に対向するために必要であり、今日において目下使用されているこのような対抗策は非常に限られた利益を生むことしかできない。
【0043】
結果として、当業者は、バーナスイオン源は1メートル以上の長さに合わせて調整され得ないこと、及びバーナス源がそのようにスケールアップされ得たとしても、関連装置のコストは長さ寸法の増大の3乗増加するだろうと結論付けるだろう。
【0044】
多重極閉じ込め源
¶プラズマの密度はイオン生産プロセスとイオン損失プロセスとの間のバランスにより規定される−中性を維持するため、イオン電荷密度及び電子電荷密度は等しくなければならないという追加的な制約がある。イオン化のためにより有用なエネルギー電子は、高速電子をプラズマへ戻すための策が講じられない限り、より低速のイオンよりも容易にチャンバ壁へ損失される。最小イオン化エネルギー未満の低速電子が漏れることを可能にし、従って電子−イオン再結合の可能性を低減させることもまた利点である。
【0045】
プラズマ体積を囲む強い多重極磁場は、これらの必要条件を満たす。エネルギー電子の通路の長さの増加はイオン化の可能性を高める。冷(より低エネルギーの)電子は、はるかにより高速の弾性クーロン散乱を互いから受け、及び従って、(通常はそれらを閉じ込めるであろう)磁力線にわたるそれらの拡散速度は非常に速い。従って、冷電子は、それらが壁に到達し損失され得るまで多重極磁場にわたって拡散する。イオンイオン化効率の向上は、よりオープンな源に役立ち、真空ポンプ必要条件を緩和し得る同じプラズマ密度のための中立圧力の減少をもたらす。
【0046】
¶従ってここで簡潔に、多重極場が何であるのかを検討すること、及びその属性のいつくかを特定することが有用である。それらの最も単純な形態において、多くのタイプの磁場は単一軸を中心として特定の回転対称を有し、円筒形高調波として分析され得る。
【0047】
最も基本的な用語において、これらは正確に定義されかつ以下のとおり説明され得る:
・二重極場は、逆の極性を有する磁極の対により作られる種類の磁場である。逆の極性の磁極が準無限大平面である場合、生成された二重極磁場の全体は強さ及び方向の両方において均一である。
・四重極磁場は、軸の周りに直列に対称に配置された4つの磁極により集合的に作られる種類の磁場である。直列に配置された4つの磁極は極性が交互であり、それらの最も純粋な形態において、原点を通って平面の対に漸近する直双曲面の形状を有すると仮定される(先行技術
図3aに示されるとおり)。
【0048】
この四重極場フォーマットにおいて、当業者が、原点を中心とする円の周りの生成された四重極磁場の大きさ及び方向をプロットすると、大きさは一定であることが分かるが−場方向は円の周りを通ると一度回転する。また、四重極磁場の大きさは円の半径に正比例する。
【0049】
・六重極磁場は、(二重極及び四重極場と)同様の方法で構成されるが、典型的には直列の交互の極性の6つの別個の極を用い、双曲線は90°の代わりに60°傾いた平面に漸近する。典型的な六重極磁場は先行技術
図3bに示される。
【0050】
六重極磁場の大きさは同様に円の周りで一定であるが、場の方向は円の周りを通ると二度変化する。六重極場の大きさは中心からの距離の2乗に比例する。
【0051】
・より高次の多重極磁場が類推により必要とされる又は望ましいと考えられ得る。従って、例えば、八重極磁場は典型的には直列の極性が交互の8つの別個の極を使用する。これらの同様の例の各々において、より高次の磁場を生成するのに用いられる別個の極の総数は、典型的には数学的に偶数の値である。
【0052】
¶しかしながら、磁場の1タイプを生成するのに一緒に使用される選択された数の多重極は、複雑な方法で集合的に相互作用することに留意されかつ理解されたい。この理由のため、いくつかの異なる場の線形重ね合わせである多重極磁場がより単純な極形状により生成され得る−ここで、極形状は基本的な多重極の定義に従わないが、いくらかの対称性を維持する。極構成の保持された対称性は特定のタイプの多重極場が生成されることを可能にし得、一方で先行技術
図3cに示されるとおり他を抑制する。
【0053】
高いn次多重極場は、r
(n/2−1)で半径方向に増加する場の強度により特徴づけられるため、高次多重極磁場の中央の空間的ゾーンにおける場は、利用可能な体積全体のかなりの部分について、ゼロ値に極めて近づき、当該部分は用いられている極の実際の数と共に増加することになる。多くのイオン源において、磁場を非常に低く維持することが、電子を戻すことが意図されるエッジの近くを除いて、望ましいと考えられる。
【0054】
マルチカスプ磁場配置
磁場を生成するために使用された別個の極の数は、望ましい又は必要な場合増加され得、このような極は一般に円筒形回転対称を有する必要はない。軸方向及び方位角方向における交互の場成分は、極の「チェッカーボード」配列と特徴付けられるアプローチを構成し、この配置は「マルチカスプ」プラズマ閉じ込めデバイスにおいて使用される。
【0055】
¥永久磁石多重極閉じ込めに基づくイオン源は、1975年頃から公知であり開発されている[例えばK. N. Leung et. al., Characteristics of a Multidipole Ion Source, ReV. Sci. Inst., 49:321(1978)、及びK. N. Leung, Multicusp Ion Sources, Proc. 5th. Int. Conf. Ion Sources, Beijing, 1983, ReV. Sci. Inst., 65:1165(1984)参照]。これらの「マルチカスプ」源の主な利点はそれらの低い作動圧力、安定したプラズマ、及び、多重極場構成における間隙が多すぎない限り、それらがほとんどいずれの寸法でも作られ得るという能力である。
【0056】
この種の場配置は、複数の位置で磁気カスプが壁を横切るため、「マルチカスプ」と名付けられる。これは磁場が非常に高いポイント、通常はシステムにおいて最も高いポイントであり、同時に磁束線はほぼ垂直入射で壁を横切る。カスプにおいて、壁に向かってちょうど直線に沿って移動する電子は偏向無しに壁に到達し得るが、電子が非常に小さい角度だけこの通路から逸れると、これは「磁気ミラー効果」によりチャンバ内に戻される−磁気ミラー効果により最初に壁に向かって向けられる運動エネルギーは渦巻軌道が力線の周りできつくなると直交方向に方向を変えられる。そのとき、このエネルギーは、軌道が「跳ねない(unspring)」と壁から離れるように方向を変えられる。
【0057】
¥「モノカスプ(monocusp)」として知られるカスプ源の円柱状に対称のバージョンがある−これはこのような配置の最も単純なものであると考えられる[上で引用されたBrown文献で検討される、Brainard and O’Hagan参照]。
【0058】
マルチカスプ閉じ込めは、プラズマ閉じ込めが全くないよりもはるかに良いが、不完全である。これは高速電子を壁へ漏らす。ほとんどのマルチカスプ源におけるプラズマの密度は、バーナスイオン源のプラズマの密度の約1%である。
【0059】
アノード層プラズマ加速イオン源
Φイオン源の他の1タイプについては議論を要するが、その理由はそれが最初は要件に十分合致するように見える特定の特徴を有するからである:アノード層プラズマ加速(「ALPA」)源[例えば、V. V. Zhurin, H. R. Kaufman, and R. R. Robinson, Plasma Sources Science and Technology 8, R1(1999)参照]。
【0060】
このALPA源において、電子はチャネルにおける「レーストラック」と呼ばれる互いに直交する電場及び磁場により捕捉されるが、その理由は平行な側部を有する長尺状楕円形の形態を取り得るからである。レーストラックは、2つの側部で強磁性カソード電極により境界を定められる円形、楕円形又は他の閉曲線チャネルと、このチャネルの後ろに置かれた非磁性アノードとを含む。典型的にはチャネルは壁間で幅が約3mmであり、チャネルの周りを通る「レーストラック」は長さが0.2〜3メートルである。
【0061】
ALPA源におけるアノードはチャネルから約5mm後ろにあることが多く、アノードはチャネルを通って開放空間へ面する法線曲面を呈する。カソードチャネル壁はアノードから離れるよう約5mm〜10mm延在し、その後真空内へ開口する。
【0062】
ΦALPA源において、磁場が2つの強磁性カソード電極間の永久又は電磁手段により確立され、この磁場の一部がアノードに向かって延在し、いくつかの力線がアノードなどにその表面に平行に接する。アノードがカソードに対して正に500V程度バイアスされる場合、そのように形成された電場は大部分磁場に直交する。
【0063】
Φこの配置は安定したプラズマを形成するよう導電性であり、以下の事象が起こる:
(a)何らかの理由でカソード表面から放出される電子は、最初にアノードに向かって加速されるが、磁力線を渦巻き状にするようにされ、サイクロイド形状の長い複雑な通路を有する。これらのサイクロイドは、レーストラックチャネルの周りでドリフト速度であってその大きさがE/Bにより与えられるドリフト速度を有し、ここでEが電場であり、Bが磁場である。軌道は、散乱されない場合、非常に長い通路長さを有するだろう。
(b)チャネルに導入される気体は、チャネル内で軌道を周回する任意の電子との衝突によりイオン化され、そのようにして形成された正イオンはチャネルの開放面に向かって弱く加速される。同時に、そのようにして形成された電子はアノードに向かってさらに加速され、イオン化する電子の母集団に加わる。形成された正イオンの小さい割合がカソードへ衝突し得、大部分は、それらがイオン化される位置の電位に依存するエネルギーにより、源の前の空いた空間内へ漏れ得る。カソードに衝突するものはさらに多くの自由電子を遊離させる。
(c)これらの手段により、安定したプラズマが確立される。横磁場及び印加された電圧により、電場がプラズマ内に存在し、−イオンをアノードから離れてチャネルから出すよう加速し、アノードに向かって電子を加速するようとする。電子の動きは磁場により偏向されるため、かなりの電場が存在することができ、プラズマは磁場に垂直であるこの方向での伝導が非常に乏しい。
(d)環状のリボン状イオンビームがスロットから外へ加速される。環状の引き出し電極(先行技術
図1に示される電位の配置を有する)を加えることにより、環状のビームはより高いエネルギーへ加速され得る。
【0064】
Φ従ってALPA源において、捕捉される電子の通路は原則として、このチャネル内で巻き付けられている無限に長いサイクロイドであり得る。これらの電子はチャネル内に供給される気体をイオン化し、非常に大電流(何アンペアも)の正イオンを作り出し、これは電場によりチャネルから押し出される。このALPA源は1又は2メートルの長さに容易に伸長されることができ、三極管引き出し電極の追加及び丸い形の端部を無視すると、各々本発明者らの要件を満たす2つの平行なリボン状イオンビームの源として見られ得る。
【0065】
しかしながら測定によると、この源のプラズマ内の電位勾配は100Vを超えて広がり、イオンに非常に大きいエネルギーの広がりを与え、大電流ビームの質量分析をするという目標を極めて困難にすることが分かる。それにも関わらず、この源のプラズマの特定の機能は、本発明の設計における案内として使用されている。
【0066】
当該技術分野における年代順の主な進歩
大電流のリボン状ビームの生成のための信頼性のあるイオン源は、最初にマンハッタン計画の一部としてカルトロン同位元素分離装置において開発された(1940〜1945年)。これらの源は、移動するリボン状ビームの主要な横寸法の方向に延びる強い磁場内に浸され、生成された磁場はまたビーム内のイオン種を個別に分析し分離するのに使用される。
【0067】
フリーマン及びバーナスイオン源:
§より小さく個々に生成される磁場を使用するフリーマン及びバーナスイオン源のその後の開発により、より効率的なイオン源が、単独でかつ下流に位置づけされた分析磁石から独立して、使用されることが可能となった。
【0068】
フリーマンタイプのイオン源はNucl. Instr. and Meth 22:306(1963)に完全に開示されており、これはフリーマン構造的配置を、カソードフィラメントを通じて、印加された磁場に平行にアークチャンバの中央に流れる加熱電流を提供するための大電流電源として明らかにする。個別のアーク電源は、最大で約120ボルト電圧をカソードフィラメントとアークチャンバとの間に印加する−ここでアークチャンバ壁がアノードとして機能する。高温カソードフィラメントは次いで、電子であって、磁場により捕捉され、正に帯電したイオン種のプラズマをアークチャンバの閉じ込めの中に作り出すためにアークチャンバキャビティ容積内で気体を通じて加速される電子を放出する。
【0069】
§バーナスイオン源は、Nucl. Instr. and Meth. 51, 77(1967)において詳細に開示され、先行技術
図1に示される。米国特許第5,262,652号及び同第5,497,006号に記載のとおり修正されると、バーナスイオン源は、カソードフィラメントを通じて加熱電流を提供するのに十分な別個の電源を有する直熱又は傍熱カソードのいずれかを有することができるが、常にカソードフィラメントとアノード又はアークチャンバ壁との間に望ましいアーク電位を提供するために個別のアーク電源を含有する。
【0070】
傍熱カソード(IHC:Indirectly Heated Cathode)イオン源:
Δ主に、傍熱カソード(IHC)イオン源はイオン注入器におけるイオン源の寿命を向上させるために開発されかつ洗練されてきた。このような改良されたIHCイオン源の構造の種類及び操作上の特徴の詳細な説明は、それぞれお米国特許第7,138,768号、6,777,686、同第6,348,764号、同第6,259,210号、同第5,763,890号、同第5,703,372号、同第5,497,006号、同第4,714,834号、同第3,924,134号、及び同第3,238,414号(その個々のテキストは本明細書において参照により明確に組み込まれる)により提供される。
【0071】
Δ傍熱カソードは、近傍の直熱熱電子フィラメントからの電子衝撃により加熱される比較的大規模なカソード構造を含み、従って電子を熱電子放出する。電子衝撃に使用されるフィラメントはアークチャンバキャビティ容積内で生成されたプラズマから物理的に絶縁され、従って使用の比較的長い寿命を有する。傍熱カソードはアークチャンバの腐食性環境に曝露されるが、その大規模な構造が長期間にわたる有用な動作を保証する。
【0072】
いくつかの属性が当業者にとって特に注目に値する:傍熱カソード(IHC)イオン源内のフィラメントはその周囲から電気的に絶縁されなければならず、それは600Vの可変の負バイアス電源へ電気的に接続されなければならない。このフィラメントを取り囲む傍熱カソードはフィラメントを離れる加速された電子により及び放射熱により加熱される。これは、(カソードが電子を放出するのを止め得る)冷却を阻止するために、その環境周囲から熱的に絶縁されなければならない。
【0073】
従って、傍熱カソード設計はディスクのように見えることの多いカソードフォーマットを用い、その外周でカソード厚さとほぼ同じ直径の薄い壁の管により支持される。支持管はその断面積を減少させるために薄い壁を有し、それにより高温カソードから離れる熱の伝導を減少させる。薄い壁の管は絶縁の破れとして機能するために典型的にはその長さに沿って切欠きを有し、高温カソードから離れる熱の伝導をさらに減少させる。
【0074】
カソードを支持するために使用される薄い壁の管はいずれの電子も放出すべきではないが、それは大きい表面積を有し、その多くが高温に保たれる。管のこの大きい表面積は放射により熱を失い、これはまた高温カソードが熱を失う主な方法である。管の大きい直径及び表面積は従ってカソードをクランプしカソードに接続するのに使用される構造の寸法及び複雑さを増大させる。ある従来より公知のカソード支持体は、3つの部品を含み、組み立てるためのねじが必要である。
【0075】
Δ傍熱カソード(IHC)イオン源の開発により、カソードの有用寿命がタングステンフィラメントの有用寿命よりも長くなり、その理由は単純に、腐食により作動上の問題が起こるまでの時間を長くするために、カソードが大規模に作られ得るからである。長い間使用するために、カソード電極設計は、過大な電力の必要性を回避するために曝露された電極表面を最初化しつつ、厚さを最大化する。
【0076】
加えて、多くの異なるイオン種が傍熱カソード(IHC)イオン源によりハロゲン化物気体及び蒸気を使用して作られ、プラズマにおける高温でのハロゲン反応によるカソード/アノード電極間の荷電イオン材料の輸送は、特定のイオン種の効率的な生産に付随する不可避な事象であり、必要悪である。このような事象及び材料の輸送は作動的上の使用可能期間の真の決定要因であることが多い。
【0077】
Δ全てのこれらの従来から今日まで知られかつ使用されている大電流イオン源(及びALPA源を除く、その特定の他の比較的重要でない変形形態)は、構造的に画定されたアーク放電チャンバの線形長さ寸法に沿って磁場を印加し、印加された磁場はアークチャンバの中心軸の周りの渦巻き通路に移動する電子を閉じ込める。電子は、そのときシステムのアノード電極正表面を構成しかつそれを物理的に形成するアークチャンバの側壁に対して典型的には約−40V〜−120Vの負電圧でバイアスされた加熱された熱電子カソード電極表面から、通常は、アークチャンバ構造の1つの別個の端部で(しかしながらとりわけ例外が存在する)この中央軸上の磁場へ導入される。
【0078】
リボン形イオンビーム源の従来の使用及び応用
イオン注入器のためのイオン注入システムは、平面パネル型ディスプレイの製造においてと共に集積回路製造において半導体を不純物でドープするために幅広く使用される。このようなシステムにおいて、イオン源は望ましいドーパント要素をイオン化し、これは望ましいエネルギーのイオンビームの形で源から引き出される。イオンビームは次いで分解スリットを通じて望ましいイオンのみに焦点を合わせる大きい偏向磁石にそれ通すことにより純化され、次いで半導体ウェーハなどの工作物の表面で工作物にドーパント要素を注入するよう向きを付けられる。
【0079】
ビームのイオンは工作物の表面を貫通して、結晶ダメージを回復するための熱アニールの後で、例えばウェーハにおけるトランジスタデバイスの作製におけるように、望ましい伝導性を有する領域を形成する。多くの追加的な新たなかつ関連するイオン注入の使用が開発されてきた。注入プロセスは典型的には、残りの気体分子との衝突によるイオンビームの散乱を防止し、工作物の浮遊粒子による汚染のリスクを最小化する高真空プロセスチャンバにおいて実施される。
【0080】
典型的なイオン注入器は、イオンビームを生成するためのイオン源と、イオンビームを質量分解するための質量分析磁石を含むことの多いビーム経路と、移動するビームによりイオンが注入される標的の半導体ウェーハ(又は他の基体)を包含する真空チャンバとを含む。そのようなアセンブリ及びシステムのいくつかの代表的な先行技術例は、それぞれ米国特許第4,862,032号、同第5,497,006号、同第5,558,718号、同第6,664,547号、同第6,686,595号、同第6,744,214号、同第6,815,666号、同第6,958,481号、同第7,838,850号、同第7,863,582号、同第8,071,958号、同第8,330,118号、及び同第8,368,309号により説明されるものであり−これらの説明文は各々本明細書において参照により明確に組み込まれる。
【0081】
一般的な代替的先行技術配置は、平面パネル型ディスプレイ注入器により例示され、例えば米国特許第6,160,262号、同第8,455,837号を参照されたい。加えて、高エネルギー注入システムのために、加速装置が、イオンを高エネルギーへ加速するために、質量分析磁石と標的のチャンバとの間に設けられてもよい。
【0082】
加速システムの無いイオン源のさらなる使用は、高電圧の発生、帯電損傷、及び大電流イオンビームが輸送され、絶縁又は部分的絶縁ターゲットに衝突する際の関連する問題を抑えるための低温プラズマ源としてである。これは商業用イオン注入器で起こる。
【0083】
今日の当業者の観点
£関連する技術分野における前述の展開形態の全てにも関わらず、従来から知られるイオン源は、それらが依存する軸方向磁場の寸法制限のために、及びその直接の結果として、線寸法の長さで約150mmより有意に大きい(ビームの初期軸方向長さはその後間接的に拡張され得るが)大電流密度のリボン状イオンビームを直接作るのには明らかに不適切である。
【0084】
£本技術分野において十分に確立され長い間認識されているとおり:アークチャンバの線形長さ寸法が長いほど、長軸方向磁場を励起に必要となるアンペア回数の数は増加する。さらに、このような長い軸方向磁場は、多くの他の深刻な欠点を有する。すなわち、その長さ寸法が増大するにつれて、その他の(幅及び深さ)寸法の各々においても磁場をより大きく伸長させること無しに、磁場の均一に保つのがより次第により難しくなる。この種の3次元に拡張される磁場寸法は、引き出されたイオンビーム全体の寄生的偏向の増大を招くため、最も望ましくなく、移動するイオンビームの長さ寸法に沿った偏向を均一に保つのが次第にこれまで以上に困難になる。
【0085】
£従って、今日まで通常に存在する全ての技術革新及び設計の向上にも関わらず、改良されたイオン源に対するかなりのかつ差し迫った必要性が残っていることが認識され理解される。特に、450mmシリコンウェーハ注入、平面パネル型ディスプレイ注入、及び太陽電池注入−並びに他の材料改質用途−の分野は、幅450mm以上の幅の大電流均一リボン状イオンビームを作るために長さが伸長され得かつ1m、2m以上程度に大きくなるようさらに長さが伸長され得るイオン源から大きな恩恵を受ける。革新のこの質及び種類は、主に、引き出しスロットの長さ方向に平行な磁場の従来的な使用から離れるということと併せて、概念における根本的な変化を求める。
【0086】
£同時に、従来のWhite及びIHCイオン源の特定の他の特徴及び機能と同様に、傍熱カソードの利益を保持することが望ましい。これらは、BF
3気体からB
+イオンの大電流を生成するために、20mA/sq.cm超の大電流密度で作動するために、及び他の種をハロゲン化物気体及び気体状蒸気から得るために高い効率で作動するために、高温度に耐える能力を含む。さらに高温カソードイオン源は、RF励起イオン源より低いプラズマ温度を生じさせる傾向があり、この事象は低エミッタンスのイオンビームを作るのに有益である−すなわち所与のアパーチャ寸法について最小限の横の運動量。ビームのイオンが可能な限り低い磁場において生成されること、及び磁場がイオンビームの幅寸法にかなりの成分は有しないことがさらに望ましい。
【0087】
£結果として、移動するリボン状イオンビームであってその厚さ寸法の少なくとも50倍の幅寸法を有する移動するリボン状イオンビームを作るための改良されたイオン源アセンブリを開発することができた場合、この達成は先行技術のアセンブリの驚くべきかつ予期せぬ改良として見られる。従って、引き出されたリボン状イオンビームがその厚さ寸法より数百倍大きい幅寸法を有する場合−幅及び厚さ寸法はイオンビーム移動方向に垂直に測定される−リボン状ビーム幅のこの顕著な増加は、当該技術分野において主要な改良及び予測不可能な進歩として認識されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0093】
I.本発明の範囲
本発明全体
¶本発明はイオン源アセンブリの主要かつ実質的な改良形態であり、リボン状イオンビームであってその厚さ寸法より少なくとも10倍大きい[しばしば30倍を超える]任意に選ばれる幅寸法を有するリボン状イオンビームを作ることができ、ビームの幅及び厚さ寸法はイオンビームの移動方向に垂直(直角)である。
【0094】
¶改良されたイオン源は2つ以上の別個のコンポーネント部分を含む:
(1)限られた幅及び奥行寸法を有し、サイズが、80ミリメートルほどに小さくなり得、及び代替的に、3,000ミリメートルを超え得る任意に選ばれる所定の長さ寸法を同時に有する閉鎖、固体壁、角柱形アーク放電チャンバと、
(2)アーク放電チャンバ壁の測定可能な寸法内に存在する閉じ込められたキャビティ容積内に認識可能な四重極磁場を内部的に提供することができる、少なくとも1つの近接して位置する磁場生成ヨークサブアセンブリを含む一次電子捕捉アセンブリ。
【0095】
¶改良されたイオン源は任意選択的に追加的な構造的機能を含む:
(3)磁場生成ヨークサブアセンブリを、アーク放電チャンバ周りの周囲の近接する位置から固定距離で及びその位置において、方向づける、整列させる、及び分離する機能を果たし、磁気コンポーネントを冷却してそれらを熱及び高温から保護する、介在する冷却された仕切り用バリア、及び
(4)三極管又は四極管ビーム引き出し電極システムであって、各電極が2つの個別の部片を含み、ビームの各側部に1つずつあり、適切な電源へ電気的に接続され、熱放射及び偶然の電極へのビーム衝突により引き起こされる熱膨張の影響にもかかわらずビームの全幅に沿って、異なる電極のY軸及びZ軸方向における互いからの間隔の取り方の厳密な制御を維持するために、磁気ヨークサブアセンブリへ又は冷却された仕切り用バリアへ絶縁体を使用して取り付けられる、三極又は四極ビーム引き出し電極システム。
【0096】
¶閉鎖アーク放電チャンバは、従来より耐火性材料製の長尺状、角柱形の、固体壁ハウジングであり、決まった構成かつ決定可能な寸法の閉じ込められたキャビティ容積を有し、チャンバの閉じ込められたキャビティ空間内の壁に個々に置かれた少なくとも1つの別個のロッド形アノード電極と少なくとも1つの別個のカソード電極とを含み、1つ又は複数の制御された搬送ポートであってそれを通じて気体状物質がチャンバの閉じ込められたキャビティ空間へ導入され得る1つ又は複数の制御された搬送ポートを提供し、少なくとも1つの開放出口アパーチャをアークチャンバの前部に提供し、それを通じてイオンが引き出されて移動するリボン状ビームを形成し得る。
【0097】
¶角柱形のアーク放電チャンバの内部キャビティ空間内には以下のものがある:
(a)一端壁表面上又はその近くに配置され、アーク放電チャンバの電位に又はそれに対して僅かに正にセットされた少なくとも1つの熱電子カソード(典型的には直径10mmのタングステンワイヤのループ又はタングステンの板で、20000℃超に加熱されている)、及び
(b)横に位置づけられた隣接する側壁の内部面表面の近くに個々に配置され、アークチャンバの任意に選ばれる長さ寸法全体にわたって延在する少なくとも1つのロッド形アノード、及びより望ましくは2つの長尺状アノードロッド。ロッド形アノードは、40V〜120Vの認識された電源の正端子へ接続され、カソードは同じ電源の負端子へ接続され、アークチャンバはカソードに対して約0〜5Vだけ正となるよう抵抗接続により接続され得る。
【0098】
¶一次電子捕捉アセンブリの近接して位置する磁場生成ヨークサブアセンブリがしばしば周囲の空気環境に位置する一方で、角柱形アーク放電チャンバは真空環境内に存在しなければならないため、2つのコンポーネントは作動的に方向付けられ、正しく整列され、別々の近接する位置内に適切に保持されなければならない。
【0099】
この目的を達成するため、非磁性仕切り用バリアが2つのコンポーネント間に介在仕切りとして明白に置かれる。この仕切り用バリアは、介在保護手段(intervening rampart)及び防護隔壁(dividing bulwark)であってそれにより磁場生成ヨークサブアセンブリに近接して決まった空間的距離で適切に方向づけかつ整列させる介在保護手段及び防護隔壁として用いられ、−付随して真空環境の周囲の空気環境からの物理的分離が維持される。
【0100】
このような環境分離例において、介在仕切り用バリアはまた、アーク放電チャンバからのかなりの輻射熱にもかかわらず室温又は室温付近にそれを維持するために内部冷却剤通路を提供することが最も望ましく、仕切り用バリアが、アークチャンバ構造の外部面を、その後壁及びその反対側に位置する隣接する側壁のうちの少なくとも2つを覆って、囲むように対応して成形されるのが好ましい。
【0101】
¶一次電子捕捉アセンブリの別個の磁場生成ヨークサブアセンブリは、従って様々な異なる構成フォーマットで現れ得る別個の作動可能品及び有形の構造である:
・第1作動的フォーマットは多重極配列であって、開放U字型のヨークフレームワーク上に個々に直列に配置された、極性が交互の少なくとも3つの別個の強磁性極構成体を含む多重極配列である。多重極配列内の3つの強磁性極は全て物理的に分離され、互いから離れて存在し、各々ヨークフレームの内部面の1つにある。
【0102】
この多重極配列及びヨークフレームワークはヨークサブアセンブリを構成し、ヨークサブアセンブリは次いで、アーク放電チャンバの隣接する側壁及び後壁の外部面から設定された距離だけ離れて位置づけられ、かつそれらの周りにそれらの上に近接して置かれるようになり、次いでその磁化方向がアーク放電チャンバの長さ寸法に直交した(又は直角、又は垂直の)状態で置かれる。磁場生成ヨークサブアセンブリのこのフォーマットにおける3つの強磁性極のうち、これらの極の1つは単に強磁性物質から形成される長尺状シャフト又は棒であり、一方でこれらの磁極構成体のうちの2つは強磁性物質から形成されその周りに長尺状巻線コイルが置かれる長尺状シャフト又は棒である。
【0103】
・著しい相違において、磁場生成ヨークサブアセンブリの第2フォーマットは、U字型の強磁性ヨークフレームワークの配置構成であって、その2つの反対側の側部の各々に、同じ極性を有する2つの対向する強磁性極を磁化するために永久磁石の線形配列でヨークに接続された長尺状強磁性極が取り付けられている、U字型の強磁性ヨークフレームワークの配置構成である。第3強磁性極はU字型のベースに対応する内面部に取り付けられ、それにより側部極に対して逆の極性の極を内部へ提供する。ここでも、このヨークフレームワークにより表される磁化の方向はどこでもアーク放電チャンバの長さ寸法に実質的に直交する(又は直角、垂直である)。
【0104】
このフォーマットにおいて、少なくとも3つの別個の強磁性極はU字型ヨークフレームワーク上に連続的に直列に配置され、3つのうちの少なくとも2つは永久磁石を組み込む。開放ヨークサブアセンブリ全体は従ってアーク放電チャンバにおける3つの結合された壁の外部面及び外周部から公知距離だけ離れるがそれに近接して置かれ、各極の磁化の方向はアークチャンバのX軸及び長さ寸法に直交する(すなわち直角又は垂直である)。
【0105】
・代替的に、ここでも、連続的に直列に個々に配置された接続された商業的に入手可能な永久磁石により磁化された4つ以上強磁性ロッドの間隔を空けて配された多重極配列が、磁場生成ヨークサブアセンブリの第3の望ましい構造的フォーマットとして使用され得る。
【0106】
この特定の第3フォーマット及び配置構成は、個々の永久磁石の総数が生成された四重極磁場の異なる強度の生産のために必要に応じて増加され得るという追加的な利点を有する。この第3の複数の永久磁石構成モデルは支持ヨークフレームワーク上で横方向に一体化されてサブアセンブリを形成し、このヨークサブアセンブリは次いでアーク放電チャンバの選ばれた長さ寸法及びX軸に対して横方向に位置づけられる。
【0107】
意図された使用及び予期される用途
Φ本発明は範囲が著しく広く、複数の、代替的な、著しく異なる使用環境において用いられることを意図される。本発明の真の規模及び範囲が適切に理解され、認められることが必要かつ不可欠であると考えられる。
【0108】
□第1の予期される使用状況において、本発明は、イオン注入システム、IBAD(イオンビーム支援蒸着法: Ion Beam Assisted Deposition)システム、及び様々な種類の材料処理システムにおいて現在使用されているこれらのアーク放電チャンバ構成体により例示されるとおり、既存のイオンビーム源への後付けによるアップグレードとして用いられる。本発明は容易に短いリボン状ビーム(0〜100mmの幅)を生じさせるイオン源の代わりとなり得、基本的利点は、小さい内部永久磁石システムの大きい外部磁石への置き換えである。他の利点又は欠点は特定の種、エネルギー、又は他の問題に関して知られるようになり得る。
【0109】
□第2の代替的使用状況において、イオンビーム源アセンブリのサイズ寸法及び構造的アライメントは、イオンビームに、ビーム幅、電流密度及び全電流、サービスの容易さ、イオンビームの均一性、制御のし易さ、作業のし易さを含む属性のこれまで達成され得ない組合せを提供するために、著しく変更される。本明細書において定義され図面に示される座標を使用して、X軸方向のビーム幅を約200mmから少なくとも2.5mまで増大させることができ、同時にy方向において、これは最初は未満5mmでありほとんどの環境下で+/−2°以下だけ発散する。
【0110】
ビームは一連のビームレットではなく1つの連続的なリボン状として引き出されるため、ビームは非常に低いエミッタンスを有することができ、結果として、用途に応じて、フォーカスのし易さ、質量分析系における高い解像力、及びターゲットへの正確な送達などの利点をもたらす。イオンビームを引き出す方法は、均一性及び低発散を維持することの公知の難しさを克服し、幅広い種類の用途、すなわち注入、スパッタリング、IBAD及び材料改質に適切な非常に低エネルギーのビームの形成を含む。
【0111】
□第3の代替的使用状況において、本発明は真空壁の一部を形成するフランジ又はプレートの構造内へ緊密に一体化され得る。イオン源は、典型的には及び通常は、閉じ込められた容積及び限られた寸法、すなわち、約10
−2Pa〜約10
−4Paの範囲の周囲真空を提供できる閉鎖真空環境の中に配置されて存在し、一方イオン源のアークチャンバ内では圧力がおよそ1Paであり、これらの値はイオン源への気体の必要な供給量により決められており、豊富な真空ポンピングの提供が想定されている。
【0112】
アークチャンバは真空壁へ一体化された構造へ取り付けられその中に包含され得る。さらに磁石アセンブリは真空壁の反対の(雰囲気)側に入れ子にされてもよく、アークチャンバの3つの側部を包含する。適用可能な場合、これは多くの既存のイオン源設計より単純でよりコンパクトである。
【0113】
□唯一の望ましい処理ガスが気体要素、すなわち希ガス、酸素、及び窒素である場合有用である第4の代替的使用状況において、アークチャンバ自体は水で冷却されてもよい。
【0114】
□代わりの第5の状況において、望ましい種は室温で表面で凝縮することができる要素を含み、高温が好ましい又は不可欠である。場合により、高い壁の温度は化学的性質を気体/蒸気又は気体分子の混合物由来の特定のイオンに好都合になるよう変える。これらの条件下では、アークチャンバは耐火性材料製の冷却された金属製熱シールド構造内に位置する。
【0115】
□第6の予期される使用状況においては、引き出し電極も電圧も使用されず、プラズマがイオン源を出て拡散することが可能にされ、別のイオン源から引き出されるイオンビーム内又は曝露された材料の表面上での電位を制御するために使用される。
【0116】
Φ従って、本発明のための用途の適当な範囲及び適切な範囲が極めて広くかつ包括的であること、本発明が全体として、完全に固有かつ著しく異なるイオン源アセンブリを提供するだけでなく先行技術のイオンビーム源を受け入れることができこと、及び本発明の各々のオリジナルかつ他とは全く異なる態様は先行技術の従来のイオンビームにおいては決して利用可能ではなかった構造的部位、特定の機能、及び機能的能力を呈するかつ提供することが認識され認められる。
【0117】
II.関連する情報の要点
適切な言及、並びに本質的なアライメント、異なる平面及び軸、及び個々の発明コンポーネントの正確な理解のため、以下の幾何学的配置(orientation)、命名法及び用語法が適切な言語及び専門用語として提示され、その適当かつ適切な用法のために正確に特定され、厳密に説明され、かつ以降では首尾一貫してかつ均一に用いられている。
【0118】
アーク放電チャンバ命名法
・定義によると、直角柱は一連の側面により互いに結合された2つの多角形の表面により形成され境界を定められる3次元構成であり、この構成の断面図はその2つの同一端部の正確な形状をもたらす。数学的な角柱形状用語においては、各多角形は慣例上「底面」と呼ばれ、各横に配置された直線ユニットは「側面」と呼ばれる。
【0119】
・直角柱形のアーク放電チャンバが規則的かつ対称的な幾何学的形状である場合、チャンバは代替形態において三角柱、四角柱、正四角柱、五角柱、六角柱、八角柱などとして現れ得る。三角形は理想的ではなく、長方形が議論のベースであるが辺の数は増され得る。従って、多角形の底面の形状が変化すると、並置される側面の数も変化する。さらに、2つの側面が最小限の数である一方、任意の単一の角柱フォーマットにおける側面の実際に存在する数は、しばしば8又は10個の横に並置される側面まで大きくなり得る。
【0120】
・結果として、これらの代替的チャンバ角柱形の各々について、常に以下のものがある:
(a)四角柱のアークチャンバにおいて5つ以上の外部面、及び6つの別個の面、
(b)角柱状チャンバにおいて2つ以上の横に位置づけられた隣接する側壁、
(c)四角柱のチャンバにおいて2つの連続する端部壁、これらは底部である、
(d)角柱状チャンバについての識別可能、測定可能かつ決まった深さ、幅、及び長さ寸法。
【0121】
アーク放電チャンバに係る幾何学的配置、寸法及びデカルト座標
・当業者が常にアークチャンバ構造の前壁と後壁とを特定かつ区別することができること、及び各横に位置づけられた隣接する側壁を、アークチャンバ構成体における各連続しかつ当接する端部壁とは異なりそれと区別されるものとして分けかつ正しく特定することができることが重要かつ必須である。
【0122】
・適切に方向づける目的上、開口チャネル、非閉塞のスリット、又はアパーチャであってそれを通じてビームが出ていくことを意図される開口チャネル、非閉塞のスリット、又はアパーチャを提供する、長方形アーク放電チャンバのための角柱状形状のその特定の外部面及び認識可能な固体壁は、本明細書において「前」すなわち前方壁として正しく特定され、そのように呼ばれ、チャンバ構成体における正反対側の閉鎖された壁及び外部面は、適切には「後」又は後方壁と呼ばれる。角柱状チャンバの形状の残りは、そのように認識可能な複数の反対側に位置し横に並置される固体の隣接する側壁、並びに2つの認識可能な固体の連続する端部壁を提供する。
【0123】
・デカルト座標軸もまたしばしばアーク放電チャンバの作動的な角柱状形状及び機能的向きを特定し説明するのに本明細書で使用される。従って本発明について、角柱状アークチャンバの後壁から前壁へ延在する方向はZ軸であり、引き出されたイオンビームの移動経路である。第1の横に置かれた隣接する側壁と反対側に位置する第2の横に位置づけられた隣接する側壁との間に存在する小さい方の距離寸法及び方向はY軸でありアーク放電チャンバの幅寸法を呈し、平らで、大きい方の距離寸法及び少なくとも1つの連続する端部壁から延在する方向(及びしばしば別の方へ他方の反対側に置かれた連続する端部壁側の壁へ)は、X軸及びアーク放電チャンバの任意に選ばれる長さ寸法(引き出されたビームの幅寸法に対応する)である。
【0124】
・アーク放電チャンバにおける角柱状形状の大きい方の距離寸法は長さの測定であり−これはサイズが任意に選ばれ、常にX軸上をそれに沿って延在し、引き出されたリボン状イオンビームの測定可能な幅態様の一次関数でありそれに対応する。この長さ寸法は任意に選ばれることができ、意図された用途により望まれるように又は必要に応じてほぼ任意の有意味な寸法へ随意に大きさを増大され得、サイズは約80mm〜3,000mm超の範囲にわたることができ、典型的には約500mm〜約2,000mmである。
【0125】
・アーク放電チャンバにおける角柱状形状の小さい方の距離寸法は、幅の測定であり−これは寸法が固定され、常にY軸上にそれに沿って存在し、引き出されたリボン状イオンビームの厚さ態様と方向において対応する。
【0126】
定義、表現法及び用語法
・「二重極磁場」は、逆の極性の極の対により作り出される場であり、極が準無限大平面である場合、場は均一である。
【0127】
・「四重極磁場」は、軸の周りに対称に配置された4つの極により作り出される場である。極は極性が交互であり、最も純粋な形態において、原点を通って平面の対に漸近する直双曲面の形状を有すると仮定される。この形において、原点を中心とする円の周りの場の大きさ及び方向をプロットすると、その大きさは一定であることが分かるが、方向は、円の周りを通ると一度回転する。磁場の大きさは円の半径に比例する。
【0128】
・「六重極磁場」は同様の方法で構成されるが、6つの交互の磁極を備え、双曲線は互いに90°の代わりに60°傾斜した平面に漸近する。磁場の大きさはこの場合も円の周りで一定であるが、磁場方向は円の周りを通ると2度変わる。磁場の大きさは中心からの距離の2乗に比例する。
【0129】
・アーク放電チャンバ幾何学形状における内部キャビティ容積の「内部面」、「頂点コーナ」及び「周縁エッジ」という用語は、個々に区別可能な内部キャビティ容積位置として首尾一貫して特定かつ認識され、それらは、第1の横に位置づけられた隣接する側壁と後壁との間に存在する空間的領域、反対側に位置する第2の横に位置づけられた隣接する側壁と後壁との間に同時に存在する第2の個別の内部空間的面積である。コーナはフィレット半径を有しても有していなくてもよい。
【0130】
これらの用語−「内部面」、「頂点コーナ」及び「周縁エッジ」−は、それぞれ前壁及び後壁と2つの横に位置づけられた隣接する側壁のそれぞれの間に存在する空間的関係に関連し、アークチャンバの端部壁それ自体は内部キャビティ容積のこれらの部分が何であるかの特定に関与しないこともまた明らかである。
【0131】
III.作動上改良されたイオン源
全ての意図された用途及び使用の代替的環境において、本発明は改良されたイオン源であって、少なくとも1つの気体状物質がアーク放電チャンバ内でイオン化されてプラズマ状態になり、結果としてのリボン状荷電イオンビームが引き出され、ビームが次いでZ軸方向に移動する改良されたイオン源である。しかしながら、その目的を達成するために、改良されたイオンビーム源は、少なくとも2つ以上の別個の構造的部位−角柱形のアーク放電チャンバ及び一次電極捕捉アセンブリを構成要素として含む(comprise)及び含む(include)。
【0132】
先行技術の実施において、イオンビームは従来の三極管又は四極管ビーム形成システムを使用することにより得られてもよい。しかしながらこれらの従来のシステムにおいては、−ビーム衝突、放射及び他の加熱メカニズムによるかなりの加熱の存在下での任意に大きいサイズのビーム(bream)幅の生産と併せて−非常に小さいレベルの電極間隔の変動を維持する必要があるため、直面し直接的に対処されなければならない複数の実質的な課題がある。これらの十分に認識された複数の実質的な課題は、本明細書において詳細に説明される異なる実施形態により例示され示されるとおり、以下に開示される本発明により取り組まれ解決される。
【0133】
A.角柱形のアーク放電チャンバ
チャンバの角柱形状
¶アーク放電チャンバは好ましくは、耐火性材料などの導電性材料で作られた予備成形された四角柱の、固体壁の閉鎖箱であり、そうでなければ内部水路による冷却など、積極的に冷却される構造である。
【0134】
アークチャンバ形状は望ましくは四角柱の形状を有し、その内側には閉じ込められたキャビティ空間が存在し、そこからイオンビームが現れる。四角柱として、その構成された箱形状は、少なくとも1つの出口アパーチャを有する前壁と、後壁と、2つの反対側に位置し横に置かれた隣接する側壁と、2つの別個の反対側に位置する連続する端部壁とを含む。この幾何学的構成の中に境界を定められるのは、体積において閉じ込められ、その構成された寸法において限定された内部キャビティ空間である。
【0135】
¶長方形の角柱アークチャンバの箱形状全体は、X軸方向に長尺状であり、内部キャビティ容積であって、その中への原位置でイオン化されてプラズマ状態になる予め選ばれた気体状物質の随意の導入に適切な内部キャビティ容積を有する。気体状イオン化の目的のために、内部キャビティ容積構成は、典型的には断面が長方形又は丸い形のいずれかであるが、必要とされる又は望ましいときはいつでもほとんどいずれの形状のフォーマットにも構成され得る。
【0136】
典型的には、チャンバの箱状形状は、内部サイズ寸法であって、チャンバの2つの反対側に位置し横に位置づけられた隣接する側壁が、幅がY軸方向に沿って約20〜50mm離れ、深さが約20〜50mm前壁から後壁へZ軸方向において延在する、内部サイズ寸法を有し、2つの連続するかつ当接する端部壁の間の内部間隔は、X軸方向に沿った測定可能な長さにおいて、約80ミリメートル〜3メートル以上である。
【0137】
慣例上、出口アパーチャを包含するアーク放電チャンバのその壁は、「前」と呼ばれる。チャンバの前壁は、X軸方向に延びる少なくとも1つの長尺状出口アパーチャを包含し、プラズマからのイオンが出るのを可能にし、出ることは、加速され得かつリボン状ビームとして現れるよう形成され得る。
【0138】
¶アークチャンバ箱は様々な異なる方法で構成され得るが、好ましい技術は2つの同一又はほぼ同一の別個の半部又は分割されたセクションを作製することであり、分割部分は出口アパーチャを通る。開放スロット又はチャネルの列を連続的な出口アパーチャで代替することが可能である。アークチャンバの長さが約1mを超え、連続的な開放スロットが使用されると、平行なスロット開口の壁部分を共に良好な整列に均一に維持するのは困難であり、この理由のため、以下に記載の特定の実施形態はこの課題に直接取り組むものである。内部コーナは形状は丸くてもよい。
【0139】
加熱されたカソード
一次電子を放出可能な加熱されたカソードが提供され、アーク放電チャンバのキャビティ容積内の一方の識別可能内部端壁面に明白に配置されて存在する。
【0140】
以下でより完全に説明されるとおり、四重極磁場形状は4列のカスプを含み、そのうち3つが外側に位置する磁極の近くにある。イオン捕捉が正しく機能するために、これらの4つのカスプの磁力線が、カソード電位であるかそれに対して負である画定された電位表面を横切ることが必要であり、簡潔さのために、この電位値はアークチャンバ壁により定義され提供され得る。この要件を満たすため、加熱されたカソードは、0〜約5Vの間の、アークチャンバ測定可能な電位に対して正の電位値を有する。
【0141】
カソードの動作及び機能
典型的には、アークチャンバの一方の端部に配置されたカソードは、それがアークチャンバのキャビティ容積に入る移動する電子の流れを放出するまで電気的に加熱され、最初に放出された電子はしばしば「一次電子」と呼ばれる。原子との非弾性衝突においてかなりのエネルギーを失った一次電子、このような衝突において脱離された電子、イオン衝撃により壁から脱離された電子を含む、他の種類の電子もまた存在し、これらは典型的には「二次電子」と呼ばれる。
【0142】
非常に長いアークチャンバのために、追加的なカソードが反対側端部に置かれてもよく、必要に応じて1つ又は複数の中間カソードが使用され得る。カソードはタングステン又はタングステン合金の電気的に加熱されたフィラメントであってもよく、又はそれは傍熱カソードであってもよく、又は例えば、
図7b示される、直接電気的に加熱され得る互いに組み合わされた形状を形成するよう切断された厚さ6mmのタングステンのブロックである−より大規模なカソードであってもよい。カソードは、ヌル場軸がその中心でそれを通過する(一次電子がこの軸を包含し正しく捕捉されることを確実にする状況)ように置かれる。アーク電流はカソードへ伝送される電力を調節することにより調整され得る。
【0143】
好ましくは、総イオン電流が測定され、この信号は基準信号と比較され、差が、カソード温度、従ってアーク電流、従ってイオンビーム電流を調節するのに使用される。カソードは、
図11に示されるとおり、電子が捕捉され得る面積を実質的に覆うような大きい面積を呈しなければならない。
【0144】
ロッド形アノード
アノードは典型的には、X軸に沿って延在し、アークチャンバの長さ寸法全体にわたって延びる1つ又は複数のロッド、バー又はシャフトの形態をとる。アノード構造は、例えば、孔を貫通してアークチャンバ構造の外部にある取り付け位置の対へ延在し得る。ロッド形アノードは、アーク電源の正端子へ個々に接続され、その負端子は次いでカソードへ及びアークチャンバへ接続される。この電源は、40〜約120Vで何アンペアも供給するために調節され得る。
【0145】
キャビティ容積内のアノードの配置
£カソードから放出される一次電子が、そのときキャビティ容積内に配置されたアノードへ直接到達できないことは必須である−その結果、一次電子が、キャビティ容積の中央の空間的ゾーン内で空間的に捕捉されるようになり得、次いで、電子が気体原子又は分子と非弾性衝突し、エネルギーを失い、原位置で荷電イオンを作り出すまで、キャビティ容積の中央の空間的ゾーン内を前後に反復して通過する。
【0146】
アノードロッドは、従ってチャンバのキャビティ容積内の1つ又は複数の横に位置づけられた隣接する側壁の内側面表面の近くに明白に位置しなければならず、四重極磁力線は、キャビティ容積の中央の空間的ゾーン−すなわち、空間的領域であって、その中で一次電子が最初にカソードにより放出された空間的領域−からそれ(又はそれら)を絶縁及び分離する。この状況はアノードロッドと中央の空間的ゾーンとの間を通過するいくつかの磁束線を示す
図10により示される。
【0147】
£ロッド形アノード及びそのときアークチャンバのキャビティ容積内に存在する認識可能な四重極磁場とのその領域的相互作用の特定の配置は、磁気による電子捕捉状況を形成し、−移動する一次電子を4つの丸い突起のある中央の空間的ゾーン(
図12に示されるとおり)に閉じ込めることにより−一次電子捕捉事象を開始する。
【0148】
設置された四重極磁場は、移動する一次電子が、アークチャンバの横に位置づけられた隣接する側壁の内側壁面上にそのとき位置づけられているロッド形アノードに到達するのを防止することにより、基幹的な作動上の役割を果たし、電子をロッド形アノードから離れるように方向転換させ、全ての移動する電子(一次電子及び二次電子の両方)をキャビティ容積の4つの丸い突起のある中央の空間的ゾーンに効果的に閉じ込めることにより、磁気捕捉効果を提供する。
【0149】
£配置されたロッド形アノードのために作り出された磁場保護は、非常に有効である。すなわち、捕捉された電子がいくらかのエネルギーを失ったあと、他の電子からの角度の大きい反発性の弾性のある散乱の可能性が、それらの速度に逆比例して増加し、捕捉された電子はより速やかにそれらのエネルギーを共有し、空間的磁気捕捉の閉じ込めの中で熱平衡に達する。非弾性衝突プロセスはまた、磁気捕捉の認識可能な制約の中で電子が移動するのに実質的な役割を果たす。
【0150】
加えて、散乱の速度の増加は、移動する電子のうちのいくつかが磁力線をわたって拡散し、実際にロッド形アノードへ到達することを可能にする。従って、アノードへ供給される電子流は、イオン種のイオン化に成功した電子、及び拡散する効果的に拡散するのに十分にエネルギーを失ったイオンから脱離した電子から極めて大部分が構成される。観察される電流は作り出されたイオンの数より多いが、それに比例する。
【0151】
イオン化可能気体の導入
予め選ばれた気体が、イオン化目的のために、アークチャンバの固体壁における複数の小さい穴又は制御されたオリフィスを通じて内部キャビティ容積内に導入される。この導入された気体から生成されたイオンの電流密度は、局所的チャンバ圧力に依存し、出口スリットを備える非常に長く狭いアークチャンバ前壁において、各制御されたオリフィスを通る気体の流速を変更することによりチャンバのキャビティ容積内の圧力を変化させることが極めて可能である。
【0152】
従って、アークチャンバから引き出された幅広のイオンビームにおける電流密度の均一性は、各穴通路を通る気体の流速を調節することにより調節され得る。しかしながら、気体の総流速は、必要な総イオン電流と多かれ少なかれ一定の関係にある必要がある。
【0153】
アーク放電チャンバ構造内で生成された熱の除去
アーク放電チャンバへ伝送された電力は、長さ100mm当たり100V×3Aに到達するかそれを超えることができ、これは、アークチャンバ長さ300mm当たりおよそ1KWプラス追加的な600Wである。従って通常の作業において、アークチャンバは、チャンバが積極的に冷却されない限りセ氏数百度の熱に到達し得る。
【0154】
当業者は、アークチャンバを高温で作動させるか、チャンバを冷水通路で積極的に冷却するかを選ぶことができる。しかしながら本発明においては常に、この熱が磁石に到達するのを防止することが必須である−その理由は、温度がアークチャンバの温度の何分の一かまで上昇すると、永久磁石がそれらの磁化を失い、電気コイルがそれらの電気絶縁体を失うためである。
【0155】
この目的のために、冷却金属エンベロープがアーク放電チャンバ構造と任意の近接して囲む磁場生成ヨークサブアセンブリとの間に置かれなければならない。この目的を達成するためのいくつかの可能な方法があり、3つの具体的な例が本明細書に含まれる。
【0156】
引き出し電極
¥イオンビーム引き出しのための従来の三極管の引き出しシステムが
図4(及び図面の他の図)に示される。特定の用途、例えば、作業要件のエネルギー及び電流範囲が非常に大きいイオン注入について、四極管引き出しシステムの使用には特定の利点がある:
・電極のX軸方向の長さは、ビーム幅寸法を超えなければならない。
・熱膨張は一定のビーム形状を維持するのを難しくするが、厳密な寸法の制御(以下で検討される)に対する感度のため、電極形状における小さい偏向がビーム発散に大きい変化を生じさせる。寸法の安定性を維持するため、電極のスタックが精度の高い陶磁器絶縁体上のイオン源の前部へ取り付けられ得る。
・絶縁体は、それらの表面の導電性フィルム(例えば、不完全なビーム伝達を通じて電極からビームによりスパッタされたものなどの)での高速コーティングを防止するために、金属製カップにより十分遮蔽される。
・各引き出し電極は2つの個々の半部として作られ、各々それ自体の絶縁体の列へ取り付けられる。電極は、ピン・イン・スロット整列を使用して隔離碍子に整列され、その結果、イオン源スロットに平行な電極の熱膨張が可能となり、大きな電極応力又は座屈を引き起こさない。
【0157】
¥チャイルド・ラングミュアの法則は、平らなイオン放出表面について、電流密度は以下のとおり他のパラメータに関連することを述べている:
J=(4ε
0/9)(2q/M)
1/2V
13/2/g
2
ここでJは電流密度であり、ε
0は自由空間の誘電率であり、qは各イオンの電荷であり、Mはその質量であり、Vは第1加速間隙を通る電圧、gはイオン放出表面と第1引き出し電極との間の間隙である。
【0158】
この方程式はプラズマ引き出しシステムに適用するのは難しいが、それは放出表面が平らでも1つの固定した位置に位置するのでもないためである−プラズマ境界であってそこからイオンが放出されるプラズマ境界は、方程式が局所的に正確になることを確実にするように放出表面がフィッティングパラメータであるように、様々なパラメータに依存してシフトする。電流密度もまたプラズマにおけるイオン生産速度と合致しなければならない。
【0159】
結果として、イオンビームの発散は方程式におけるパラメータに敏感に応じるものである。プラズマから利用可能な電流密度が増加すると、プラズマ境界は前方に動き、最終的に引き出しアパーチャ又はスロットから突き出る。イオン軌道は、この効果によりそれらの当初の方向に強く影響される。
【0160】
¥しかしながら、発散が最も少ないイオンビームは僅かに凹形のプラズマ表面により形成され、これは、電流密度が方程式が平面に求めるものよりも僅かに低い電流密度であるときに形成することが常におよそ真実である。プラズマイオン源からの発散が最小の実効電流密度は、平面プラズマ境界を仮定するとチャイルド・ラングミュアの法則が与えるものより僅かに少ない。一旦作動ポイントが十分に確立されると、他のものは計算され得る。方程式は以下の形を有する:
I
max=lw/g
2V
13/2(4ε
0/9)(2q/M)
1/2
ここでwはスロット幅であり、Iはスロット長さであり、gは、実際は約1.5未満にはなり得ない電極間隙であり、数因子は常に幾何学的形状の問題により修正される。
【0161】
¥ビーム電流が増加すると、この方程式のスケーリングを満たすために第1引き出し間隙を通る電圧は増加されなければならない。電極間隔は、方程式が作動条件の範囲を通じて満たされ得るように選択されなければならない。この範囲が広い場合、図示の三極管のシステムの代わりに4つの電極システム(四極管システム)を使用することが可能になる。
【0162】
¥非常に低いビームエネルギーのために、
図1の2つの電源の電圧の合計である引き出し電圧(第1間隙を通じた電圧)は、1〜5KVとなり得るが、ビームはそのとき50eVと低い最終エネルギーへ第2間隙において減速される。これらの条件下で、電極間の厳密な間隙は十分に制御され、特定の条件に適合されなければならず、例えばOPERA/SCALAなどのコンピュータコードを使用した電極の形状の最適化が賢明である。
【0163】
B.一次電子捕捉アセンブリ
磁場生成ヨークサブアセンブリ
X軸方向に均一断面を有する別個の四重極磁場が、近接して配置された磁場生成ヨークサブアセンブリを介してプラズマチャンバの長さ寸法及びX軸に沿って構成されたキャビティ容積内に内部的に提供され設置される。
【0164】
開放ヨークサブアセンブリは、少なくとも3つの、場合により4つ以上の、極性が交互の別個の磁極構成体の多重極配列を使用する。これらの磁極構成体は交互の極性を示し、開放支持ヨークフレームワーク上にそれに沿って個々に直列に配置される。結果としてのヨークサブアセンブリは、認識可能な四重極磁場を要求に応じて生成し得−ビーム引き出しのZ軸方向により弱くなるように、かなりの六重極成分の存在により場合により僅かに歪められる磁場を提供する。
【0165】
認識可能な四重極磁場を要求に応じて生成するよう完全に作動的である好適なヨークサブアセンブリが、実質的にU字型のヨークフレーム上に互いに離れて配置された直列の3つのみの別個の磁極を使用して作られ得ることにここでは特に留意されたい。さらに、3つ又は4つ又はさらにより多くの数の極性が交互の直列の別個の磁極構成体を用いる様々な他の異なるヨーク付構造的配置、配列、及び多重極ディスプレイが随意に用いられてもよい。
【0166】
従って、これらの代替的フォーマット及び設計のいずれのものにとっても唯一の必須の要件は、開放ヨークサブアセンブリが要求に応じてアーク放電チャンバの内部キャビティ容積内に認識可能な四重極磁場を機能的に生成及び設置することができることである。
【0167】
引き出されたイオンビームのための障害物の無い非閉塞の通路のための要件は、いずれの磁極もアークチャンバの前壁面の近くに配置されることもその前方に置かれることもないよう命じることもまた留意されたい。従って、かなりの四重極場成分及び弱い六重極場成分を生成し得るいずれの3面から構成されるヨークサブアセンブリも、要件に合いかつそれを満たす。
【0168】
異なる分類の移動する電子
イオン化には、気体原子と
図2に与えられる少なくとも閾値エネルギーを有するエネルギー電子との間の衝突が必要とされる。イオン化のための衝突断面積値は、特定の所与の条件下のイオン化の可能性の尺度である。このようなデータの1つのソースは、NISAによる刊行物である。
【0169】
様々な気体のイオン化のための衝突断面積は、およそ60〜100eVの電子エネルギーについて最大となる傾向がある−すなわち、イオン化のための閾値の4又は5倍となる。この理由のため、一次電子は気体をイオン化するのに有効であるが、二次電子はそうではない。背景プラズマは典型的には1〜2eVの電子温度を有し、このような電子は、原位置で気体分子をイオン化するために機能することができず、イオン化しない。
【0170】
一次電子の捕捉
アークチャンバの内部キャビティ容積内で起こる一次電子捕捉の態様及び方法を完全に理解することが重要である。アノードロッドの存在のため、及び一旦プラズマ状態が元の場所で確立されると−チャンバ体積が内側壁面から1mm未満の距離以内までプラズマでいっぱいに満たされるため、キャビティ空間内の電位は値が概して僅かに正であり、周知のとおり、プラズマはアノードに対していくらか正である平衡電位に到達する傾向がある。
【0171】
Φ四重極磁場がここでこの静電気場配置へ与えられる。すなわち四重極場はY−Zレーンに平行に置かれるがキャビティ容積の全長寸法にわたってX軸方向に沿って均一に延在し、磁場はチャンバの測定可能な長さ全体に延びるキャビティ構成のほぼ中心又は正中線に沿ってヌル値を有し(
図11において数字ゼロすなわち「0」により示される位置において)、本明細書においてヌル場軸として言及される。
【0172】
Φキャビティ容積の長さ寸法にわたって延在する非常に不均一な四重極場は−周知のとおり−移動する荷電粒子を磁場の2つの反対側の四分円におけるヌル線に向かって集中させる効果を有し、同時に反対側の2つの四分円において移動する荷電粒子の集中を乱す効果を有する。
【0173】
Φプラズマの外側エッジに向かって、プラズマの中心から離れるように概ね向けられる弱い電場があり、これは電子を内側に加速する傾向がある。特定の位置において、この電場は磁力線に直交(又はほぼ直交)し、結果として、電子のサイクロイド運動は、アークチャンバの一端に向かって、数学的にV=E/Bとして計算される、測定可能なドリフト速度で、付勢される。
【0174】
磁場の交互の四分円において、ドリフト速度方向は逆になる。この逆になるドリフト速度は一次電子の分布の混合及び均一さを高める傾向がある。電子が閉鎖軌道内で無期限にドリフトすることができるALPA源とは異なり−アークチャンバ壁で、ドリフトする電子はいくらかランダムに内側壁面から反射される。モデルリングにより、それらの動きはいくらか無秩序であることと、ドリフトする電子が、それらが反対方向にドリフトできる、捕捉された分布の別の領域へ高い可能性で移動することとが分かる。
【0175】
Φこのヌル線へ導入された移動する一次電子は、プラズマが確立されると、本質的にゼロの電場又は磁場に遭遇し、そのためアークチャンバの全長を偏向されずに自由に移動するが、連続する端部壁の内側面へ接近する際、それは静電気により反射され、方向を変えられ、内部キャビティ容積の中心に向かって戻される。従って、カソードは常にヌル場軸を包含するよう置かれる。しかしながらキャビティ容積のこの中央ヌル線から移される移動する電子は、四重極磁場に遭遇し四重極磁場により偏向させられるようになる。
【0176】
Φ結果として、カソードから放出され、アークチャンバの閉じ込められたキャビティカラム内の四重極磁場と遭遇する全ての一次電子は、以下の特徴を呈する:
(α)一次電子はアノードロッドに向かって、及び/又はアークチャンバ内の電子衝撃イオン化により形成されたプラズマの中心に向かって加速される、
(β)一次電子は、アノードロッド以外、アークチャンバ壁のいずれの部分に到達するにも不十分な運動エネルギーを有する、
(γ)一次電子は四重極磁場により偏向される。それらの場内での位置に依存して、それらはヌル場軸に向かって又はそこから離れるように偏向され得る。ヌル場軸から離れるように偏向されるものは、アノードロッドのゼロ強度力線からの距離の何倍も小さい旋回半径(gyro-radius)を有して次第に速やかに偏向され、アノードロッドを横切ることができないサイクロイド及び振動通路に向けられる、
(δ)一次電子は、交差した電場及び磁場の領域における正の又は負のX軸方向の動き[大きさE/Bのドリフト速度と呼ばれる]を与えられる、
(ε)壁の静電位はカソードの電位に対して負の値であるため、一次電子は固体チャンバ壁に到達することを妨げられる、及び
(φ)一次電子は中央の十字型ゾーン内に捕捉されるようになり、静電気及び磁気閉じ込めと軸方向に向けられたExBドリフトとの組合せによりキャビティ空間の長さ寸法に沿って均一に分配される。
【0177】
Φ従ってこの例において、場の強度は、集中を乱された電子はサイクロイド通路内を移動するよう偏向され、中央の空間的ゾーンを避けることができないよう大きさが十分である。場はより重いイオンに大きな影響を与えるには強度が不十分であり、これは従って自由に壁に衝突するか孔を通ってアークチャンバから出る。また、四分円は力線と同一平面でありヌル線を通過する表面により分離される。
【0178】
Φさらに、
図12に示されるとおり、一次電子捕捉の状況及び現象は目に見えて非対称の形状を呈する。この非対称形状は、そのときダイアグラムの平面内へ移動する移動電子、及びそのときその平面から出て鏡像非対称を有するキャビティ空間的ゾーン内に捕捉されるように移動する移動電子に当てはまる。
【0179】
Φ電子はチャンバの連続する端部壁の両方の内側面から繰り返し、多くの場合複数回、反射されるため、捕捉体積の全体構成は対称であり、及び中央X−Z対称面におけるそれ自体の反射に重ね合される非対称な形の空間的ゾーン(
図12により示される)を含む。
【0180】
これらの電子の移動路は極めて回旋状でありしばしば輪になっていることと、電子はX軸方向にわたるアークチャンバ内での正味の進行1cmごとに約3cmの距離を移動することとについてさらに検討する。この移動距離は、アークチャンバの長さ寸法にわたる各通路におけるイオン化衝突の可能性を増加させる。
【0181】
磁気カスプ磁場プラズマ閉じ込めの不要
§磁気カスプ磁場プラズマ閉じ込めは長年の間当該技術分野において使用されてきたが、本発明の例において、高磁場の必要性を減らすことができ、同時に、電子反射のための多重極磁場の磁気カスプに依存しないことを選ぶことにより捕捉効率を向上させることも本明細書において認識される。本発明の改良されたイオン源は、従って従来から知られる構成体とは根本的に異なる[例えばK. N. Leung Multicusp Ion Sources, Proc. 5th. Int. Conf. Ion Sources, Beijin, 1983, ReV. Sci. Inst., 65:1165(1984)により例示されるもの]。
【0182】
従って、カスプ閉じ込めに依存する代わりに、本発明は、磁場の弱磁気カスプの各々もアークチャンバのキャビティ容積内の最も負の電位で固体金属壁と一致するように配置される。このようにして、カソードにより放出され、カソードから流れる一次電子は、静電気により捕捉され、四重極磁場要件の大きさは著しく減少するようになる。
【0183】
設置された四重極磁場
¶一次電子捕捉アセンブリの設置された四重極磁場は、いくらか歪められているとしても、アークチャンバの線形の長さ寸法全体にわたってX軸方向にチャンバの内部キャビティ容積内に均一に延在する。認識可能な四重極磁場の真の範囲は従って、アークチャンバの線形の長さ寸法に伴って直接変化し、アークチャンバの予め選ばれた長さ寸法は、約80mmから3,000mm超へ任意に増加され、アークチャンバの内部キャビティ容積内に収められた四重極磁場の線形の長さは、対応して寸法を増加させる。磁場配向のため、この状況は、巻線コイルのためのアンペア回数の増加を必要とせず、又は永久磁石が使用される場合、使用される永久磁石のサイズは増加しないが、線形配列の永久磁石の数が増加するだけである。
【0184】
¶アークチャンバにおけるキャビティ容積の限られた閉じ込め内に設置されかつ延在する認識可能な四重極磁場は、(長さの長いアノードロッドとして明白に出現する)アノード電位の上を多いかつそれを包含する磁束線の体積シールドとして効果的に機能する。これは磁気カスプゾーンで電子を捕捉するのにあまり有効ではないが、これらのゾーンにおいて、負の静電気電位を提供するという選択が行われる。
【0185】
この配置を経て及びこの方法により、設置された磁力線の体積シールドは選択された静電気壁電位との組合せで作用し、一次電子捕捉として共に効果的に機能し、アークチャンバのキャビティ容積の限られた閉じ込めの中の画定された体積に一次電子を閉じ込める。
【0186】
¶一次電子捕捉アセンブリにより生成され、アーク放電チャンバの内部キャビティ容積内に設置された認識可能な四重極磁場は、以下の特徴及び特性を示す及び提供する:
(i)設置される四重極磁場は、X軸方向(すなわちアークチャンバの長さ寸法にわたり)に沿って均一に延在する、
(ii)収められる四重極磁場は、Y軸及びZ軸に向けられる磁場成分を有するが、有意なX軸成分は提供しない、
(iii)Y−Z断面図において、設けられた四重極磁場は、ゼロ強度並びにアーク放電チャンバの長さ寸法全体にわたって及びそれを超えて延在しヌル場軸と呼ばれるX軸に平行な中央ヌル軸を有する、
(iv)与えられる四重極磁場の場の強度は、連続的に増加し、それと共に中央ヌル軸からアーク放電チャンバの横に位置づけられた隣接する側壁壁への距離が増加する、
(v)確立された四重極磁場は、個々の高強度磁場を、アーク放電チャンバにおけるキャビティ容積の内部コーナ及び周縁エッジにある少なくとも2つの周辺空間的領域上でそれに沿って通過させる、
(vi)内蔵される四重極磁場は、任意に選ばれる長さ寸法及びアーク放電チャンバのX軸に垂直(すなわち、直角又は90度に置かれる)である任意の平面と同一平面上にあり、それにわたって延在する、並びに
(vii)据え付けられる四重極磁場は、いずれの磁場も場成分も作り出さず、又はいずれの磁場も場成分も、アーク放電チャンバ箱の任意に選ばれる長さ寸法及びX軸に沿って及びそれに平行に置かれるようにさせない。
【0187】
C.引き出されたイオンビーム
§上述の著しく改良されたイオン源を経て、ユーザには幅広のイオンビームが提供され、幅広のイオンビームは次いで幾つかの異なる用途において用いられ得る。各例において、流動リボン状イオンビームが作り出され、流動リボン状イオンビームはその幅寸法より少なくとも10倍大きい、好ましくはその幅寸法より30倍以上大きい測定可能な幅寸法を有し、−引き出された幅広のビームの幅及び幅寸法はビームのZ軸移動方向に垂直である。
【0188】
§その幅広の範囲に加えて、引き出されたイオンビームは望まれるとおり又は必要に応じて予め選ばれ得る幾つかの特徴及び特性を呈する。従って、本発明のイオン源からビームとして引き出され得るイオンの流れの一般的な特徴は、下記の表1に挙げられるこれらの因子及び変数の全てを含む。
【0190】
これらの一般的な範囲内で、イオン注入目的上非常に好ましい値の組が、下記の表2に提供される。
【0192】
IV.本発明の第1機能実施形態
この第1実施形態において、改良されたイオン源は、200〜2500mmの幅寸法及び引き出し電極を出る際の厚さ約5mmを有し、+/−2度で発散するリボン状イオンビームを作り出すことができ、ビームの幅及び厚さ寸法は、イオンビームのZ軸経路及び移動方向に垂直に測定される。
【0193】
しかしながら、真空及び周囲の空気環境内に同時にあるその典型的な作動的フォーマットのため、改良されたイオン源の最小限のコンポーネントはまた、環境分離、介在仕切り用バリアを、アーク放電チャンバと一次電子捕捉アセンブリの磁場生成ヨークサブアセンブリと併せて含む。
【0194】
従って、改良されたイオン源のこの第1実施形態において、環境分離仕切り用バリアはそのとき高真空環境内に保持されるアーク放電チャンバを分割、隔離及び分離するのに使用され、及びそのとき典型的には周囲の空気環境内に保持される近接して位置し包囲する磁場生成ヨークサブアセンブリを物理的に分離するのに使用される。
【0195】
A.構造的実体
£
図4、5、及び6にそれぞれ示されるこの第1実施形態において、慎重に整列され互いに結合された2つの本質的な構造的実体がある。これらは:(a)アーク放電チャンバと、(b)介在仕切り用バリアと磁場生成ヨークサブアセンブリとからなる一次電極捕捉アセンブリである。
【0196】
アーク放電チャンバ構造:
長尺状アーク放電チャンバ1は自立的かつ個々の製品である。外側に、アークチャンバは四角柱の形状を有し、その内側には長い均一なキャビティ容積が提供される。キャビティ容積構成は丸形の外形を有してもよいが、均一な押出形状を有する。
【0197】
Δ
図4及び6に見られるとおり、実質的に長方形の角柱構成であり長尺形状の囲まれた内部キャビティ容積10を有するアーク放電チャンバ1が示される。アークチャンバ1は、6つの別個の固体壁:前壁3、後壁8、2つの別個の横に位置づけられかつ反対側に位置する隣接する側壁6a及び6b、並びに2つの別個の反対側に位置する連続しかつ当接する端部壁12a及び12b(しかしながら
図4及び6の断面図には図示せず)により境界を定められる閉鎖箱構造である。
【0198】
単一の開放スロットすなわち出口アパーチャ5(これは代替的に開放スロット又はチャネルの列として現れ得る)が、前壁3に現れ、個々に前壁3の外部面から短い距離だけ離れるように置かれる引き出し電極4a及び40a並びに4b及び40bの対と整列する。前壁は任意選択的に2つの個別の半部を含んでもよく、及びそれらから構成されてもよい。
【0199】
Δ加えて、アークチャンバの後壁8は、
図4に示されるとおり穿孔された通路9を含む。このような通路は、イオン化可能気体又は蒸気のキャビティ容積内部への随意の導入を可能にする制御されたオリフィス又はポータルとして機能する。制御されたオリフィス9はアークチャンバのキャビティ容積内での導入された気体又は蒸気の均一分布を提供する。
【0200】
Δこの第1実施形態において、アークチャンバは真空壁の一部であるベースフランジ又はプレート内に機械加工された凹部内にぴたりと嵌合するようにされる。チャンバの箱形状は耐火性材料(例えばグラファイト、モリブデンなど)のプレートから造られ得、これらは
図5a及び6に示されるとおり相互連結し、バネクリップにより適所に保持され得る。チャンバの連続しかつ当接する端部壁は、穴であってアノードロッドがそれを通って外部の固定クランプへ至ることを可能にする穴を有する閉鎖プレートである。
【0201】
実際の使用中かなりの電力を受けるアークチャンバは、表面接触を最小化するために外側が成形され、作動中セ氏数百度に達する。真空壁は低温でなければならず、以下に説明される熱を取り除くための手段を提供することが重要である。
【0202】
Δアークチャンバキャビティは典型的には前壁と後壁との間が32mm、側壁と側壁との間が32mmあり、X軸方向において約80mm〜2,000mm以上の範囲の任意の長さ−引き出されたイオンビームの幅寸法に直接対応するようサイズが合わせられた寸法−であり得る。
【0203】
アーク放電チャンバ1の限られたキャビティ容積10内には2つの個別のロッド形アノード2a及び2bがある。各ロッド形アノード2a及び2bは個々に、アークチャンバ1の1つの横に位置づけられた隣接する側壁6a又は6bに近接して配置されて存在し、アークチャンバ1の長さ寸法全体にわたってX軸に沿って直線的に延在し、隣接する側壁6a及び6bの一方と後壁8との間に存在するキャビティ容積10の周辺空間的領域周縁空間的エッジ内に明白に位置する。
【0204】
Δアーク放電チャンバ1の限られたキャビティ容積10内に同様に配置されているのは、単一の熱電子カソード7である。このカソード7は端部壁12aの内側面表面上に配置される。カソードはこの第1実施形態例においては小さいループに巻かれた直径0.090インチのタングステンロッド製であってもよく、アークチャンバの端部を通じて設置され得る。
【0205】
****************
一次電子捕捉アセンブリ:
本発明の第2の主な必須のコンポーネントは、一次電子捕捉アセンブリである。この第1実施形態において、捕捉アセンブリは、2つの別個の構造的実体:介在仕切り用バリアと磁場生成ヨークサブアセンブリとを含む。
【0206】
介在仕切り用バリア構造
£磁場生成ヨークサブアセンブリが常に周囲の空気環境内に保持され使用される一方で、アーク放電チャンバは真空環境内(約1Pa〜約10
4Paの範囲の負圧で維持される)に操作上含まれなければならないため−介在仕切り用バリア60が2つの構造的実体を方向づけかつ整列させるための構造的コンポーネントとして好ましくは使用される。
【0207】
しかしながら、その最も幅広い用途において、介在仕切り用バリアは最大で3つの異なる機能及び目的を果たす。それらは:
(i)真空環境を周囲の空気環境から効果的に分離する構造的仕切りとして、
(ii)磁場生成ヨークサブアセンブリを、予め選ばれた固定距離に、アーク放電チャンバの周りを囲むように近接する配置において、方向づけかつ整列させるための構造的手段として、
(iii)アーク放電チャンバの作動により発する熱を吸収することができる流動冷却用流体、例えば水のための通路を組み込み、前記熱が磁気ヨーク及び他の繊細なコンポーネントへ到達するのを防止する構造的実体として、である。
【0208】
£環境分離バリアプレート60の好ましい形態が
図4及び6により断面図でそれぞれ示され、アーク放電チャンバ1と、近接して位置する成形されたヨークサブアセンブリ100との両方に対するその関係がこれらの図示により最もよく示される。
【0209】
そこで分かるとおり、予備成形バリアプレート60は構造的仕切りとして働き、有形の環境分離仕切りとして機能し、予備成形バリアプレートは、
(a)その表面62を真空環境において維持するのに物質的に十分であり、一方で同時にその裏面66を周囲の空気環境において維持する固体物質からなり、
(b)そのとき真空環境にあるアーク放電チャンバ1の、2つの横に位置づけられかつ反対側に位置する隣接する側壁6a及び6bの外部面並びに後壁8を受けかつ保持するよう外形を形成された単一の空間的凹部64を有する表面62を呈し、
(c)同時に、磁場生成ヨークサブアセンブリを真空環境内で適切に整列した位置及び向きで受けかつ保持するよう集合的に外形を形成された、2つの予めサイズが合された空間的凹部68a及び68bを有する裏面66を呈する。
【0210】
£介在仕切り用バリア60は典型的には、アルミニウム又は別の高熱伝導性の金属製の厚いプレート又は防護物として作られ、そこへ、空気雰囲気側に現れる2つの整列された空間的凹部68a及び68b(
図6において最も良く見える)、及び真空側に現れる1つの整列された空間的凹部64が各々機械加工される。
【0211】
この構造を経て、仕切り用バリアは成形されたヨークサブアセンブリを方向づける、整列させる及び保持するよう機能し、そのとき空気環境内に見出される別個のヨークサブアセンブリを、固定した予め選ばれた距離で、そのとき真空環境内に維持されるアークチャンバから物理的に分離するよう機能し、及び同時にまたアーク放電チャンバの内部から発する大量の熱を効果的に偏向させる熱シールドとして機能する。
【0212】
£前述の全てに加えて、本発明のこの第1実施形態において、介在仕切り用バリアはまた、熱がシール及び磁気電子捕捉ヨークを含むコンポーネントに損害を与えることを防止するために、近接して位置づけられるアーク放電チャンバにより放出された熱を吸収及び除去するための構造的手段を提供する。本明細書における特定の目的は吸熱であり、アークチャンバを冷却することではない。従って、アークチャンバ1と仕切り用バリア60との間の接触面積は、限られた接触領域を設けることにより最小化される。
【0213】
とりわけこの特定の目標及び目的を達成するために、複数の別個の導水管及び通路61が仕切り用バリア60の材料物質内に設けられる。導水管、冷却通路及び流体相互接続部の詳細は
図4及び6に図示されないが、それ自体従来から知られ、かつ本技術分野の当業者により一般的に使用される。
【0214】
£従って、介在仕切り用バリア60のこの第1実施形態における配置は、以下の3つの異なる機能及び重要な目的を果たすことが認識され理解される。
(i)構造的仕切り用バリア60は、角柱形アーク放電チャンバを、近接して配置された磁場生成ヨークサブアセンブリからの固定した予め選ばれた距離で、方向づけ、整列させ、及び適切に近接して位置づける、
(ii)構造的仕切り用バリア60は、角柱形アーク放電チャンバを真空環境に保持かつ維持し、一方で同時に磁場生成ヨークサブアセンブリを周囲の空気環境中に分離しかつ保つよう機能する、及び
(iii)構造的仕切り用バリア60は、(そのときその裏面及び複数の凹部上に配置されている)磁場生成ヨークサブアセンブリを超高温への曝露により弱くなる効果から守る及び保護する有形の熱シールドとして機能する。
【0215】
磁場生成ヨークサブアセンブリ構造
§一次電子捕捉アセンブリの磁場生成ヨークサブアセンブリ100は、
図5bに最も良く示されている。ヨークサブアセンブリ100は典型的には真空環境の外部の空気雰囲気に位置し、仕切り用バリア60の裏側の空間的凹部68a及び68b内に収容される。この向き及び整列は、ヨークサブアセンブリのフレームワークが、近接して予め設定された距離で、そのとき真空環境に含まれるアーク放電チャンバ1の外部面及び外周部を部分的に囲むことを可能にする。
【0216】
§
図4、5b及び6にそれぞれ見られるとおり、ヨークサブアセンブリ100は、閉鎖アークチャンバの3つの別個の外部面及び別個の固体壁を、予めセットした固定距離で、近接して囲み、同時にアークチャンバの長さ寸法全体に沿って延在しかつアークチャンバの長さ寸法全体上に延びる。アークチャンバの横に位置づけられた隣接する側壁6a及び6bに近接して置かれる2つの別個の極115a及び115bは、実際、この例においては、真空の囲み壁の一部であるバリアプレート60の逆側の凹んだハウジング68a及び68b内に挿入される。同様に、第3長尺状極116はバリアプレート60の裏面の空間的凹部69内へ挿入される。
【0217】
概して、磁場生成ヨークサブアセンブリのフォーマット及び構成は、巻かれたワイヤコイルを含むことも永久磁石を磁極構成体として用いることもできる。しかしながら、
図5bにより示されるこの第1機能実施形態において、ヨークサブアセンブリ100は強磁性材料から形成される実質的にU字型の支持フレームワーク110を含む−U字型の支持フレームワーク110上には、連続的に直列に極性が交互の3つの長尺状強磁性極102、115a及び115bが配置される。
【0218】
§単一の予備成形された強磁性極116の構造が
図5bに示される。これは、本質的に、強磁性材料又は金属合金から形成された長尺状の固体シャフト、合わせくぎ、又は棒であり、いずれの巻線もコイル自体も含まず又は呈しない予備成形された長尺状品であり、測定可能な距離においてアーク放電チャンバの線形長さ寸法と少なくとも同一の広がりを有するようなサイズにされる。
【0219】
単一の強磁性極116のみがU字型ヨーク付サブアセンブリ100内に現れ、この例において、極116は常に、ヨークサブアセンブリl00のフレームワークの中央セグメント111上に配置されて存在することに留意されたい。結果として、U字型のヨーク付サブアセンブリ100が環境を分離するバリアプレート60の裏面に嵌合すると、極構成体116は空間的凹部64内に存在するようになり、アークチャンバ1内の後壁8の外部面に近接して位置づけられるようになる。
【0220】
§比較すると、2つの予備成形された強磁性極115a及び115bの各々は強磁性材料製であり、単一の連続的な巻線又は別個の横長コイル105a及び105bは、極115a及びbそれぞれの軸方向長さのまわりに渦巻ループとして横方向に巻かれて、極及びそれによりアセンブリ100の磁化を可能にする。
【0221】
各横長コイル105a、105bは、典型的には連続的なワイヤ長さの電気的に導電性材料から作られ、実質的にレーストラック形の渦巻きとして形成された横方向に配置された巻線であり、2つの平行な直線部及び2つの湾曲端部であって各々180度屈曲する2つの湾曲端部とを含む閉鎖渦巻ループ又は横長コイルとして現れる。共に、支持棚及び横方向に置かれた巻線コイルが、全体として作動的な強磁性極構成体を形成する。
【0222】
また、各横長コイル105a、105bは各々エナメル銅ワイヤを使用して巻かれてもよく、励起されると典型的には約300〜800アンペア回数を提供する。各コイルは一定電流のプログラム可能な電源により通電される。従って、各横長コイルが約50の巻きを含むと、それは0〜20アンペアで作動し得る。
【0223】
§各別個の極構成体115a及び115bは、U字型のヨークフレームワーク110の1つの直立したアームセクション103上に個々に取り付けられ、共に、3面から構成されるヨークフレームワーク110の構造的アーム上に配置された離間した強磁性極の逆に方向付けられた対として現れる。2つの別個の強磁性極構成体115a及び115bは、従って組み合わせて縦に並んだ対として用いられており、対の各強磁性極構成体115は、ヨークフレームワーク110がアークチャンバ1の外部面及び壁の周りに近接して嵌合されると、アーク放電チャンバ1の長さ寸法及びX軸に向かって方向づけられかつそれらと平行に置かれるようになる。
【0224】
§操作上、極115a及び115b上に取り付けられた2つの横長コイル105a及び105bは、ヨークフレームワーク110の両側に個々の「北」極性を生成し、ヨークフレームワーク110のベース上に取り付けられた単一の磁極102は後方に「南」極性を生じ、又は逆もまた同様である。特定の磁場方向は2つの極115a及び115bが同じ極性を呈する限り問題ではない。
【0225】
B.第1実施形態の動作機能
プラズマの生成:
高真空環境が、
図13aに示されるとおり、ポンプによりアーク放電チャンバのために確立される。
【0226】
カソードフィラメント7は、7.5V200Aの電源からそれを通って最大で200アンペアの通電を行うことによりカソードフィラメント7が電子を放出するまで、加熱される。カソードフィラメントの負の側はアーク電源の負の側へ接続され、及びまたアークチャンバの固体壁へ接続され、40〜120Vの電圧がアノードフィラメントとカソードフィラメントとの間に印加される。
【0227】
四重極磁場がヨークサブアセンブリにより生成され、U字型のヨークサブアセンブリの側部極上に取り付けられた2つの横長強磁性コイル105a及び105bに約12Aの通電を行うことによりアークチャンバのキャビティ容積内に作動的に設置される。
【0228】
気体が次いでアーク放電チャンバのキャビティ容積内に導入されて内部キャビティ圧力を約1Paへ増加させ、カソードフィラメントにより放出される一次電子が、気体をイオン化し、原位置でプラズマを作り出す。
【0229】
引き出し電極:
電位
イオン源全体(すなわちアーク放電チャンバ及び一次電子捕捉アセンブリ)は、ビームエネルギーを定める電位[通常は1〜100kVの範囲]により、アースに対して正の値で電気的にバイアスされる。
【0230】
従って、この第1実施形態において、引き出し電極40a及び40bは、アースに接続される。電極4a及び4bであって、初期電場を、それらに印加される電位及びそれらのイオン源からの間隔により制御する電極4a及び4bは、−1〜−5kVの加速/減速電圧によりアースに対して負にバイアスされる。
図4に示されるとおり、間隔は約5keVの最終ビームエネルギーにとって最適である。プラズマから流れる正イオンが引き出され、出口アパーチャ5及び電極間の間隙を通過し、これらは約+/−2度の発散を有する流動イオンビームを形成する。
【0231】
調節(質量、エネルギー、電流)
チャイルド・ラングミュア則が、所与の電流を生成するのに必要な電極間隔を推定するのに使用される。電極間隙gは、電極アパーチャ幅より著しく大きくなければならず、そうでなければ幾何学的影響は、アパーチャの中心の電場が方程式が暗に仮定するより大幅に弱いことを意味する。丸い穴ではなく狭いスロットによる引き出しを使用する強い理由の1つは、長いスロットが大きい放出面積を可能にする一方で電極間隙を小さくすることができるからである。
【0232】
望ましい電流密度にとって好適な間隙に設定された電極間隔により、プラズマが確立され、望ましい引き出し電圧が印加されるとビームが引き出される。ビームの発散はいくつかの方法により推定され得る−例えば、ビームより狭いスロットを通じて伝送されるイオン電流は最小のビーム発散を与える条件又はその付近で最大化される。減速電圧は適度にこの電流を最大化するよう調節され得る。
【0233】
広い範囲の作動条件が予期される場合、三極管の引き出し配置は四極管(4つの電極)配置と交換され得る。第1間隙を通した電圧はここでビーム発散を最小化するよう自由に調節され得るが、総電圧が依然としてエネルギーを定める。第3電極へ印加される加速/減速電圧はまた、出口アパーチャを通じたビームの最良の伝送を与えるために、加速電圧と共に調節され得る。
【0234】
設置された四重極磁場
アークチャンバのキャビティ容積内に設置された四重極磁場がどのように現れるかの態様及び方法、及び本発明の第1実施形態の機能を適切に理解することが重要である。この目的のため、
図10、11及び12がそれぞれ提供される。
【0235】
そこで分かるとおり、
図10は、磁束線Bであって、磁束線が生成され、次いでアーク放電チャンバの内部キャビティ容積内へ及びそこを通って流れると設置された四重極磁場を構成する磁束線Bを示す第1実施形態の断面図である。力線は、NからS極へ通過するとみなされ得、出口スリットに向かう間、力線は反対方向へ曲がる。磁場ヌルは力線が通過しないゾーンで起こる。カソード7はヌル力線を包含する又は横切るように取り付けられる。
【0236】
図11は、ガウス単位で測定される場の強度の値を添えた磁場等高線を示す第1実施形態の断面図である。磁場ヌルポイントは「0」と表示され、カソードが
図11に示された場合、このポイントを通って軸を一周する又は横切るように見えるだろう。磁場は3つの方向かなり均一に上昇するように見え、一方で、出口アパーチャの方向において、磁場は水平になるまえに20〜40ガウスに上昇するだけである。
【0237】
図12は、アーク放電チャンバの内部キャビティ容積内で捕捉アセンブリにより作り出された一次電子閉じ込めの空間的ゾーンを示す第1実施形態の断面図である。この空間的ゾーンの形状を
図10の力線と比較することにより、電子閉じ込めが、力線を大きくは横切ることができないことにより引き起こされることが分かり得る。また、このゾーンが壁に到達するように見える4つの限られた領域を
図12に見ることができる。静電位がこれらのポイントで−しかしながら図において認識可能でない極めて小さなポイントにおいてだけ−電子が壁に到達するのをブロックする。
【0238】
V.第2の好ましい実施形態
この第2の好ましい実施形態において、この第2実施形態を上述の第1実施形態から著しく分離及び区別する幾つかの主要な変化が存在及び付随する。
【0239】
・第1に、本発明の必須のコンポーネント及び作動的部品の全て−すなわち、角柱形アーク放電チャンバ及び一次電子捕捉アセンブリのほとんどの両方−が、負圧領域内に位置し、高真空環境内に完全に含まれた状態で存在する。この状況は、真空壁が磁石ヨークの一部を含む点で上述の第1実施形態と著しく異なり、一次電子捕捉の磁石ヨークの全ての活性面が真空にある。
【0240】
・第2に、一次電子捕捉アセンブリの磁場生成ヨークサブアセンブリは、フレームワークの直立したアームセクション上に配置された2つの永久磁石極構成体を使用して構成される。しかしながら、ここでも極性が交互のアークチャンバに向かって呈される3つの極(
図7aにおいてそれぞれ215a、215b、及び216)があり、これらは、開放した、実質的に四角形の支持フレームワーク上に連続的に直列に離間して横たわる。
【0241】
・第3に、アークチャンバと磁石ヨークとの間に存在する水で冷却された仕切り用バリアは、
図7aに示されるとおりの水路224を組み込む簡潔で、より小さい、U字型の桶(trough)223である。アークチャンバは、桶内に保持される耐火性材料製の2つの同一半部227を含む。
【0242】
・第4に、
図8bは、変形形態であって、その中でアークチャンバ自体が冷却され、そのとき結合されている2つの半部250a及び250bにおいて作られ得る、変形形態を示す。
【0243】
・第5に、ヨークサブアセンブリの磁気側壁221はまた、冷却された桶223又は冷却されたアークチャンバ250a及び250bを適所にクランプする構造的コンポーネントとして機能し、さらに、
図8a及び8bに示されるとおり、分割された引き出し電極4a及び4bを適所に保持する絶縁体290のための固定ポイントを提供する。
【0244】
従って、本発明は根本的に同じ必須の構造的コンポーネント−アーク放電チャンバ及び一次電子捕捉アセンブリ−から依然としてなるが、上述の第1実施形態と比較されたときこの第2の好ましい実施形態には、幾つかの有意味な代替形態及び他とは全く異なる修正形態がある。
【0245】
全体がそのとき真空環境内に置かれている一次電子捕捉アセンブリにおける顕著な違い
1.介在仕切り用バリアにおける違い
図7aにより示される第2実施形態において、介在仕切り用バリアはアルミニウム(又は別の非磁性金属もしくは合金)製の一部片のハウジング223であるように見える。仕切り用バリアハウジング223は、複数の閉鎖通路と導管224であってそこを冷水が通過する導管224とを包含し、その表面にわたって、アーク放電チャンバ1の別個の隣接する側壁及び後壁へ近接して及びその周りに位置づけるために成形され、厳密な方向づけ、3つの極215a、215b及び216とその開放フレームワーク上の3つの内部面上に配置された永久磁石222の2つの線形配列とを含む開放した、実質的に四角形のヨークサブアセンブリ200との整列及び嵌合のためにその裏面に外形が形成される。
【0246】
この第2の好ましい実施形態において、介在バリアプレートハウジングは、2つの異なる機能を果たす:(a)それはアーク放電チャンバの3つの別個の固体壁を近接して包含し囲み、(b)それは永久磁場生成ヨークサブアセンブリをアークチャンバにより放出された超高温から守る及び保護する熱バリア及び熱シールドとして作用する。
【0247】
2.開放ヨークサブアセンブリにおける違い
ヨークサブアセンブリ200の構造は、
図7a及び7bにより図示されるとおり、この第2の好ましい実施形態において著しく異なる。3つの長尺状極がここでも設けられ、内部面に取り付けられて、アークチャンバの長さをX方向に延在する。永久磁石225a、225bの2つの線形配列が、連続的に直列に配置されて存在し、実質的に四角形の、開放フレームワーク200の2つの直立したアームセクション210a、210bに個々に配置される。
【0248】
○最もとりわけこの第2実施形態において、成形されたヨークサブアセンブリ200は、耐久性がある真空壁及び四角形の開放ヨークフレームの底部の役割を同時に組み合わせる強磁性ベースプレート211を呈する。この強磁性ベースプレート211のための好適な材料は、磁性があり、耐腐食性であり、真空環境での使用に適切であるタイプ430ステンレス鋼である。
【0249】
ヨークフレームワーク200の2つの直立したアームセクション210a、210bは、タイプ430ステンレス鋼製であってもよく、又はより経済的にはメッキ軟鋼から作られる。これらの直立したアームセクションは、平面ベースプレート211に対して90度の角度でねじで構造的に結合され、共に集合的に開放四角形のヨークフレームを形成する。これらの直立したアームセクションは、冷却されたバリア桶を適所に保持するよう保持クランプとしてさらに機能する。
【0250】
○各直立したアームセクション210a、210bの上には−第1実施形態に示される巻線横長コイルの代わりに−線形配列の強磁性極225及び複数の永久磁石222であって、各アーム区域の反対側に位置し、縦に並んで整列した強磁性極として作用する、線形配列の強磁性極225及び複数の永久磁石222を含む別個の永久磁石構成体がある。第3強磁性極216は典型的には強磁性ベースプレート220に取り付けられ、そうでなければベースに機械加工により組み込まれる。追加的な永久磁石もその構造内に組み込まれ得るが、それは、磁石222a、222bが適切にサイズ決めされている場合は追加的な磁石無しに十分作動され得る。
【0251】
(交互の極性を有する)3つの磁化された極のこの組は開放ヨークフレームワークの3つの内部面上で互いから間隔を空けて配され、共に開放ヨークサブアセンブリ200を構成し、結果としてのヨークサブアセンブリは、アークチャンバ内の内部キャビティ容積の限られた閉じ込め内に認識可能な四重極磁場を必要に応じて生成及び設置し得る。設置された四重極磁場は上で第1実施形態について述べられたのと同じ歪んだ四重極場形状を有するが、その磁気強度は実時間において調節され得ない。それにも関わらず、生成された磁気強度は、(等しい数の)永久磁石222a及び222bを追加する又はそれらを線形配列から減じることにより原位置で調節され得る。
【0252】
アーク放電チャンバの第2実施形態のための構造的修正形態
高温アークチャンバ
この第2の好ましい実施形態について
図7bに示されるとおり、(耐火性材料、例えばグラファイトから形成される)アークチャンバは、望ましくは2つの対称的半部227の連結により作られ、熱シールドの中央凹部におけるバリア桶ハウジングの表面と嵌合するように慎重に寸法決めされる。アークチャンバは、各アークチャンバ半部227をバリアプレートハウジングにより構造的に表され及び提供される熱シールドの安定的な面表面に対して適所に保持する2つの螺合されたリテーナ226により固定及び保持される。アークチャンバの前壁における出口アパーチャ5は従って耐火性導電性材料の2つの個別の部片により境界を定められ、アークチャンバ構成体のこの方法は、2つの半部をそれらの端部でのみ連結するはるかにより弱い構造に依存せずにアークチャンバの大幅に大きな長さ寸法にわたって出口アパーチャの安定性を確保する。
【0253】
冷アークチャンバオプション
図8bは冷アークチャンバの代替的フォーマットを示す。この代替的フォーマットは、上記の耐火性アークチャンバの熱シールド/バリアプレートハウジングを同じ(又は実質的に同様の)構成を外部的と内部的の両方で有するより単純な2部片の水で冷却されたアークチャンバに置き換えるが、数kWの電力で作動しているときでさえも、低温チャンバ壁で原位置で作られるプラズマを呈する。
【0254】
この代替的フォーマットにおいて、角柱形のアークチャンバの出口アパーチャ5はここでも、上述のとおり、アークチャンバ250a及び250bの2つの個別の半部の連結により形成される。個別の別個の端部プレート12a及び12bがアークチャンバの端部を閉鎖するために取り付けられ、かつ先のとおり、これらの2つのチャンバ半部セクションは各々アノードのための、及び場合により外側に固定されるカソードのための穴を包含する。
【0255】
構造的単純化及び有効な冷却
これらの修正形態の部分分解図が
図7bにより(高温アークチャンバ)及び8b(冷アークチャンバ)において示される。そこで分かるとおり、水冷導管及び通路は開放ヨークサブアセンブリの磁性ベースプレートへ作用し、仕切り用バリアハウジングにより提供される熱シールド効果を著しく増大させる。磁性ベース部分211及び熱シールド/バリアプレートハウジング223(又は冷却されたアークチャンバ250)は、直接接触している面積が大きく−この共有領域において、Oリングシールが置かれ、両方の部品における凹部が、水の通路がこの領域における両方の部品と密接に接触することを可能にする(
図8bに見られるとおり)。
【0256】
従って、最小の数のコンポーネントを使用するこれらの手段により、当業者は強力かつ耐久性がある真空壁、アークチャンバのための冷却されたバリアハウジング、電気配線、及び水冷器具、及びガス器具のための貫通接続具を介した全ての他の望ましい機能のための構造的取り付け具、アークチャンバのキャビティ容積内で四重極磁場を生成することができるヨークアセンブリのための整列した土台、並びに引き出し電極をアークチャンバの出口アパーチャ上に存在するように適切に取り付けるための安定した構造的支持体(
図8a及び8bにより詳細に示されるとおり)を提供することができる。
【0257】
VI.第3代替的実施形態
この第3代替的実施形態において、このフォーマットを上述の第1及び第2実施形態の両方から実質的に区別するいくつかの固有の構造的違いが現れる。従って、本発明は本質的に同じ2つの構造的コンポーネント−アーク放電チャンバ及び一次電子捕捉アセンブリ−から依然としてなるが、それにも関わらず、いくつかの有意味な変更及び他とは全く異なる構造的修正がこの第3代替的実施形態にはある。
【0258】
特に、第3代替的実施形態は以下の変更を呈する:
◇改良されたイオン源の全体−アーク放電チャンバ及び一次電子捕捉アセンブリの両方を含む−は、真空環境内にのみ位置する。
◇介在仕切り用バリアは、2つの個別の、分離された磁気ヨークの位置のための凹部を包含する。従って、磁場生成ヨークサブアセンブリはアークチャンバの近くに位置するが、同様に冷却用流体のための通路を包含するアルミニウムなどの高導電性金属の壁によりそれから分離される。
【0259】
分割されたヨークフレームワーク
§多くの予期される使用環境において、認識可能な四重極磁場であって、その設置される位置及びアークチャンバのキャビティ容積内の境界が、本明細書において上述の第1及び第2実施形態により説明されたそれらの磁場向き及び整列から45度回転され得る認識可能な四重極磁場を生成することが非常に望ましい。注意を再び本発明の第1実施形態のための設置された四重極磁場の磁束線を示す
図10、11及び12それぞれへ直接向ける。
【0260】
§従って、アークチャンバのキャビティ容積内に内部的に設置された四重極磁場の望ましい45度回転変更を達成するために、2つの同様に構成された分割されたヨークフレームセクションが共に組み合わせて磁場生成ヨークサブアセンブリとして使用される−各ヨークフレームセクションは、
図9に示されるとおり、外部面及びアークチャンバの固体(sold)壁に直接近接して個々に位置づけられる。
【0261】
用語「逆対称」は、用語「対称」が両方のヨークセクションが同じ極性を有して設置されたことを暗示するため、本明細書において適切に使用され、一方で、サブアセンブリにおける一方のヨークフレームセクションの極性を逆にする(交替する)ことが必要である。
【0262】
従って、
図9において見られるとおり、仕切り用バリア構造360はアルミニウム合金又は他の高導電性金属からできており、雰囲気を真空から分離する。これは冷却剤通路361並びに3つの別個のキャビティ空間368a、368b及び364を真空側に含む。
【0263】
§仕切り用バリア360へ嵌入するのは、2つの別個の分割されたヨークフレームセクション304a及び304bである。これらの2つのフレームセクションは別々に作られており、(非磁性)仕切り用バリア360内に設置されると、完全な開放ヨークサブアセンブリ300を集合的に構成しかつそれをもたらす。各分割されたヨークセクション304a及び304bは、永久磁石の線形配列により互いに接続される伸長された強磁性極325N及び325Sの対を含む。
【0264】
§
図9により示されるとおり、一方の磁極構成体304aにおける磁化された極325Nの1つは、故意に凹部368aの内部面に置かれ、アークチャンバ301の前壁に近接して整列され、その近くで嵌合するよう個々に置かれ、一方極325Sはアークチャンバ301の後壁と近接して整列され、その近くで嵌合するように個々に置かれる。他の反対側に置かれた磁極構成体304bは逆であり、極325Nはアークチャンバ1の後壁と整列しその近くで嵌合する。極性は
図9に示されるとおり適切に逆にされる。
【0265】
従って、分割用仕切り360内に適切に置かれると、磁極構成体304a及び304bは、アークチャンバ301が最終的に位置づけられる準備された空間である凹部364を囲み、アークチャンバ301を包囲する一連の配列された4つの別個の極の列が、交互の極性で「N−S−N−S」と延び、認識可能な四重極磁場が生成され、アークチャンバ301の内部キャビティ容積310内に設置され、四重極磁場の向きはそのとき、第1及び第2実施形態により提供される磁場配向と比較して、約45度回転される。
【0266】
アーク放電チャンバの構造的代替形態
§この第3代替的実施形態において、アノードロッド(又は複数のアノードロッド)の配置の位置を変更することもまた必要であるが、その理由はこれらのアノードはそれらと設置された四重極磁場内の中央ヌル位置との間を通過する磁束線を有しなければならないためである。
【0267】
従って、
図9に示されるとおり、中央に置かれたアノードロッド302(ここではアークチャンバの固体後壁のより近くに置かれている)は、構造上十分な配置転換として機能する。必要に応じて、追加的なアノードロッドも、アークチャンバの反対側に位置する隣接する側壁の各々への距離のおよそ半分のところに置かれ得る。多くの任意の同様のアノードロッド再配置が評価され考案されており、これらは適切に作動し使用上機能的である。
【0268】
§
図9においては四角柱構成として示されるが、アークチャンバの全体的な内部構成は円筒形であることも十分あり得る。このような円筒形のアークチャンバは、チャンバの壁のそれらの部分が中央により近く、これは、ひいては、イオン化が生じるキャビティ容積を減少させる。
【0269】
§しかしながら、
図9により示される四角柱状は、第3代替的実施形態のためのより単純なモデルを可能にし、かつ実際は助長する。従って、この例において、2つの分割されたヨークセクション304a及び304bのための支持フランジ360(ベース360と共に完全なヨークサブアセンブリ300を構成するベース)が望ましくは存在する。支持フランジ360は弾性材料から形成されるプレート又は平らなカラー構造であり、複数の水冷導管及び通路311を含む。
【0270】
第3代替的実施形態のための特定の用途
この第3代替的実施形態において、アークチャンバの開放アパーチャを出るイオンは、四重極磁力線に垂直に方向性を有して移動し、設置された磁場は高速電子がアークチャンバから出るのをブロックするのに有効である。従って、この理由のため、この代替的実施形態には、加速されていない低温プラズマの予備の源として−例えばイオンビームの別の源での加工の間の環境における表面帯電及び電位の制御のためのプラズマブリッジとして−大きな価値がある。
【0271】
VII.本発明全体のための作動可能な変形形態、パラメータ及び他の検討
温度変化の検討
カソードへの熱プラスプラズマへの熱によるアークチャンバへの電力伝送は数キロワットであってもよい。アーク電流は、40V〜120Vでアークチャンバ長さ1メートル当たり50Aであってもよく、そのためアークチャンバ箱の寸法サイズに依存して、かなりの量の電力が堆積される。
【0272】
特定のイオン種が生成されているとき、アークチャンバの後壁及び2つの隣接する側壁が高温で作動することが望ましい。例えば、400℃を超える温度が、ヒ素又はリン蒸気の安全な使用のために、それらの凝縮を防止するために、望ましい。アークチャンバ壁はグラファイト、タングステン、もしくはモリブデンもしくは他の耐火性金属製であってもよく、1000℃に達し得る。この熱は、開放ヨークサブアセンブリの巻線コイル又は永久磁石を加熱しすぎることなく除去されなければならず、そのため、再入可能な構造的ベース又は内部水路を含有するアルミニウムの挿入された桶形の熱シールドのいずれかが熱を除去し、アークチャンバ箱をヨーク付磁極配置から分離するのに使用される。
【0273】
他の種(例えば酸素及びアルゴン)について、冷アークチャンバ壁を有することが望ましい場合がある。アークチャンバをアルミニウム又は他の金属から作り、アークチャンバを低温に保つためにチャンバ内に水路を組み込むことも可能である。各例において、水冷された金属壁がアーク放電と磁気ヨークとの間に挿入され、磁気ヨークを低温に保つ。
【0274】
アーク放電チャンバの内部構成
アークチャンバ箱の内部構成は長方形、又は円筒形、又は部分的に円筒形であるハイブリッド形状であることが多いが、アノードロッドを囲む凹部を有する。例えば、
図4により示される構成は、図の上半分に半円筒、及び下半分に半四角を含む内部形状を有し、アノードロッドは図のこの下半分における2つのコーナの近くの空間を占める。
【0275】
この形状に影響を与える因子は:断面積を最小化し、アノードロッドがほぼゼロ場の領域からの磁束線により遮蔽されることを可能にし、磁束線は、それらの曲率がそれを可能とする場合、これは上で検討されたとおり電子のExBドリフト速度を高め均一なイオン化を促すため、壁にほぼ平行になることを可能にする。利便性、強化、寸法の安定性、製造の容易さのための他の比較的重要ではない形状のバリエーションが想定される。
【0276】
イオンビーム出力の制御
最大で120eVの電子エネルギーがいくつかの種のイオンを効率的に作り出すために必要となり得、他の場合においてはより低いエネルギーが好ましい。アノード電圧がこのエネルギーを制御する。
【0277】
引き出しに成功した生成されたイオンの一部は、出口スロットの幅のアークチャンバの円周に対する比率により大部分決められ、これは約3%である。イオンがアークチャンバの壁に当たると、それらは中和される可能性が高く、多くの種が気化しイオン化ゾーンへ戻る。従って、各イオンはこのサイクルを30回以上通過していることもあるが、供給される総気体の高い割合が最終的にはイオン化されたビームになることが多い。
【0278】
特定のイオン種、例えば、BF
3由来のホウ素イオンについて、原料気体はフッ化物分子であり、これらの場合にはフッ化物気体の使用が、壁から堆積した使われていないイオンをエッチングすること及びそれらを放電へ戻すことにより出力を増加させ得る。気体流れの調節は異なるイオン種の割合を変える。
【0279】
イオンの生成速度は一次電子の電流、アークチャンバ内へ導入される気体の流速、アーク電圧(これは一次電子エネルギーを決定する)、並びに場合により他の因子、例えば最大磁場強度及び壁温度により決められる。イオン源出力は、閉鎖制御ループにおける熱電子カソードへの電力を調節するのに使用される誤差信号を生成するために、望ましいパラメータを基準信号と比較することにより調整される。
【0280】
最初に、この制御ループはカソード出力を特定の電子流を伝送するよう調節することができるが、一旦ビームが総イオンビーム電流を調整するために伝送されることが望ましい。一旦制御ループが一定のイオンビーム電流を維持すると、電極への電圧はビーム発散を最小化するよう容易に調節することができ、気体流れは、例えば、安定したビーム生産を維持しつつ真空システムにおける圧力を最小化するために、又はイオンビームにおける特定のイオン種の産出を最適化するために調節され得る。
【0281】
イオンビーム形態
ビームを形成するためのイオン源からのイオン種の引き出しは慣習的であり、典型的には電子の還流を防止するために加速/減速電極構造を使用する。イオン源は例えば20,000Vだけアースから正にバイアスされ、20keVのイオンビームを生じる。
【0282】
改良されたイオン源アセンブリは、アースに対してアークチャンバに印加された電位により決められたエネルギーで、何百ミリアンペアものイオンのビームを生成できる。イオンビームは、かなり均一なリボン状流れであって、その幅寸法(及びチャンバのY軸寸法)がアーク放電チャンバの任意に選ばれる長さ寸法によってのみ決められかつ限られているかなり均一なリボン状流れであり、しばしばサイズが1〜2メートル以上となり得る。ビーム幅(及び出口スロットのX軸寸法)はるかにより狭く、典型的には2〜3ミリメートルしかなく、引き出し電極の工学が良好に設計されたと仮定すると、+/−2度程度発散する。
【0283】
気体状物質の導入
予め選ばれた気体状物質は、いくつかの均一に分配された穿孔された入口オリフィスの使用を通じてアーク放電チャンバの内部キャビティ容積内へ望ましくは導入される。これらの入口穿孔は、空間的キャビティの中央イオン化部分における大きい圧力変動を回避するために設計され置かれた開口である。
【0284】
気体流れは、入口オリフィス長さの20〜100mm当たり1sccmの範囲において典型的には存在する流速で、商業的に利用可能な熱式質量流量コントローラにより望ましくは測定され制御される。気体流れの分布の微調整がビーム電流プロファイルにおける不均一性を修正するために使用され得る。
【0285】
カソード材料の多様性
カソード材料は、最も好ましくはタングステン又はタングステン合金である。アークチャンバの内部空間的体積内で使用される気体のために、他の化学成分及び材料は比較的短い使用寿命を有する。当該技術分野において今日周知のとおり、直接又は傍熱カソードが使用され得る。
【0286】
好ましい電位
イオン源全体は、正イオンがチャンバ内のスロットからアース電位に向かって加速されるように、最終イオンエネルギーを定める正電位で好ましくはバイアスされる。
【0287】
ほとんどの使用のために、当該技術分野において周知であり
図2に示されるとおり、逆流電子を抑制するのに必要な負にバイアスされた電極を含む、アークチャンバ出口スロットに加えて2つの追加的な電極(各々2つの接続された半部を含む)を含む三極管の電極配置が使用される。アークチャンバと負にバイアスされた電極との間に追加的な電極を追加することにより、動的に可動な電極を使用せずにより広い範囲の制御が可能となる。移動する電極の使用は一般的であるが、求められる高精度及び熱膨張問題が本発明者らが関心を寄せるような大きいシステムには厄介なものとなり得る。
【0288】
VIII.第1、第2及び第3実施形態により集合的に呈される特有の機能及び特徴の概要
最も強調すると、改良されたイオン源は、全ての例及び実施形態において以下の特徴及び特性を提供する:
1.アーク放電チャンバの主要な線形長さ寸法の方向又は軸に沿った磁場成分は存在し得ない。代わりに、生成された磁場又は電場はいずれも、アーク放電チャンバの主要な線形長さ寸法(及びX軸)に垂直な(すなわち直角に又は90度で存在する)平面又は軸と同一平面上になければならないことは必須である。小さい偶然の変化及び端部における終端の詳細を超えて、この重要な要件に対して例外はあり得ず、これは、他のいずれの機能も考慮せずに、改良されたイオン源の全ての実施形態について犯されることのないルールであり、絶対条件である。
2.設置された磁場断面は多重極プロファイルを有しなければならず、ゼロ場の線はアークチャンバの出口アパーチャから短い距離を空けて位置する。場の強度はこのヌル場軸からの距離と共に多かれ少なかれ直線的に増加すべきであるが、引き出されたビームの方向において比較的弱いままであると望ましい。この要件を満たす最良の磁場プロファイルは、3つの極のみで生成され得る、六重極プロファイルを僅かに混合した四重極場である。四重極場は、対向する極が同じタイプである(例えば北と北が反対側にある)ことを要求する。
3.複数の面を有する、開放成形されたヨークサブアセンブリが一次電子捕捉アセンブリの重要な要件を満たすために用いられる。構造上この目的のため、少なくとも3つの別個の強磁性極が開放ヨークフレームワーク−アーク放電チャンバの固体後壁及び反対側に位置する隣接する側壁の外部面の表面及び測定可能な外辺部に嵌合する及びそれらを近接して囲む構成された構造的配置−上に個々に位置づけられ、及びその中で間隔を空けて配される。開放成形されたヨークサブアセンブリは、ビームが引き出されるアークチャンバの前側の空間に押し入ることはない。磁極はX軸及びアークチャンバの長さ寸法と平行に存在する。
4.1つ又は複数のアノードは、X軸と整列し、アークチャンバの長さ寸法全体に延在するロッドである。アノードは、磁束線がそれらの周りでカーブし、それらを磁場の強度が実際上ヌルである領域から分離するところに位置する。
5.比較的小さく従って安価な磁場強度を使用しながらカソードからの一次電子の捕捉を向上させるために、電子捕捉アセンブリ及びアノードは、4つの磁気カスプが、熱電子カソードに対して負又は僅かに負であるアークチャンバ表面を横切るように方向付けられる。
【0289】
IX.代表的かつ例示的なイオン注入器システム
本発明の改良されたイオン源を使用し、第8世代平面パネル型ディスプレイを加工するのに適切な新たな分析用磁石と密接に結合される代表的かつ例示的なイオン注入器システムは、以下に詳細に記載される。
【0290】
¶いくつもの異なる用途のための平面パネル型ディスプレイは、各画素内の光の放出又は伝達を制御するためにガラス基体上に堆積された低温ポリシリコンのフィルムの中にトランジスタを組み込む。基体は非常に大きくなり得る。いわゆる第8世代ディスプレイは、サイズが約2.2m×2.5mである別個のパネル内へのイオン注入を必要とする。このようなパネルにおけるこれらのトランジスタをドープするために、高電流及び低電流で15〜80keVの範囲のイオンエネルギーを有するリン及びホウ素粒子のイオンビームが必要とされる。ビーム電流についての予想はビーム長さ1cm当たり1〜4mAであり、及び電流値が高いほど生産性が増加する。また、イオンビームは、望ましくない汚染物質、例えば、ホスフィンから水素、ホウ素からフッ素/フッ化物を取り除くために質量分析されなければならない。
【0291】
¶とりわけ、幅広のリボン状ビームの質量分析をすることは非常に難しい−その理由は、教科書で教えられる従来のセクター磁石アプローチは、磁極間の間隙空間距離は他の寸法より測定可能なサイズではるかに小さいと暗に仮定するためである。しかしながら、ビーム幅寸法がここでサイズにおいて>2.2メートルである場合、極間隙距離は少なくとも同程度大きくなければならず、他の磁石寸法はサイズが途方もなく大きくなる。
【0292】
Aoki、White、及びGlavishによるものを含む多くの改良形態が作られてきたことが従来認識されている。しかしながら、これらの改良形態の全てがかなりの幅のビームの分析を可能にしてきたが、それらは全て依然として以下の全てを仮定する基本的なスケーリング則に適合し従う:
(a)所与の磁場を生成するアンペア回数の数は極間隙に比例する、
(b)磁石の重量は極間隙の2乗に概ね比例する、並びに
(c)極間隙が大きくなるにつれて、望ましくないフリンジ場及び収差の程度が大きくなる。
【0293】
しかしながら、従来の二重極磁石による任意に長い寸法決め、大きい幅のビームのこのような追加的な磁気分析は、非常に難しく、必要とされる装置が大規模であり手に入れるのに費用がかかる。代わりに、イオン純化の作動的かつ実用的システムは、生成された磁場が全体としてY−Z平面だけに閉じ込められ限定された固有の構造を持つ磁気分析用デバイスを用いなければならない。
【0294】
¶本発明の改良されたイオン源アセンブリと、Y−Z平面に限定された磁場のみを生成することができ、全ての磁場及び電場が(イオンビームの移動の入力及び出力方向を含む)単一平面において実質的に同一平面上にある近接して位置する磁気分析用装置とを組み合わせる新規かつ予期せぬシステムは、本発明全体をすぐに延長したものでありかつ直接精緻化したものである。従って、イオンビーム純化のこのようなシステム及び方法は、本明細書で規定される発明の不可分の一部でありかつその真の範囲内に適切に入るものであると考えられる。
【0295】
このような固有に構成された磁気分析用装置が同時係属中の特許出願において詳細に説明され、
図13aによりシステムコンポーネントの1つとして示される。
【0296】
¶図示のとおり、
図13aは、このような完全なかつ作動的なイオンビーム純化システムと、イオンビーム純化の方法を示す。示される図は、真空チャンバ壁のスケッチを含む。改良されたイオン源のためのヨーク付サブアセンブリの磁極配置の構造と磁気分析用装置のワイヤコイルとは両方とも空気雰囲気内に取り付けられ得ることに留意されたい。このような空気環境配置能力により、製造の大幅な単純化及びより長い有効なサービス期間が可能となる。
【0297】
¶
図13bは、本システムを通過する軌道の直交方向における投射を示し、イオンが経験する複雑な3次元軌道を示す。さらなる情報については、同時提出出願を参照されたい。
【0298】
¶示されるイオン注入システムは、より従来のシステムの、1/3の線形占有寸法、及び1/20の重量であり、はるかに大きな処理能力を送達する能力を有する。
【0299】
****************
本発明は形態において制限されるものではなく、本明細書に添付される特許請求の範囲による以外は範囲が限定されるものでもない。