【文献】
ZENG et al.,Fiber Endoscopes Utilizing Liquid Tunable-Focus Microlenses Actuated Through Infrared Light,Journal of Microelectromechanical Systems,米国,IEEE,2011年 4月 7日,Vol.20, No.3,pp.583-593
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各々に少なくとも1つの光吸収粒子が提供された少なくとも1つのセルと、前記セルと熱的に接触したサーマルオプティカル材料と、前記光吸収粒子を照明するための少なくとも1つの制御可能な光ソースとを備えた可変フォトサーマルレンズであって、前記光ソースは、前記光吸収粒子によって吸収されうる少なくとも1つのスペクトル成分を有し、波長および/またはパワーおよび/または偏波を制御可能であり、各セルは、1つのまたは複数の前記光吸収粒子と1つのまたは複数の前記光ソースとの間の光学的相互作用エリアによって規定され、前記可変フォトサーマルレンズは、屈折率の局所的な変化を誘起することにより制御される、可変フォトサーマルレンズ。
前記光吸収粒子はプラズモン粒子であり、前記光ソースはそれらのプラズモン共鳴のところで射出するように適合されている請求項1又は2に記載の可変フォトサーマルレンズ。
前記プラズモン粒子は、ナノアンテナ、ナロロッド、ナノホール、ナノ粒子、ナノスター、ナノオリゴマー、および/または多分岐ナノ粒子のいずれか又は組み合わせである請求項3に記載の可変フォトサーマルレンズ。
【背景技術】
【0002】
微細化へ向けた現在の一般的な傾向において、集積型微小光学素子は、データストレージ、光学式ディスプレイ、および撮像システムにおいて中心的な役割を演じている。これらシステムにおける細かなアライメントおよび焦点の調整は、通常、しばしば高価である機械部品の手段によってなされる。
【0003】
機械的な調節が導入する制限を克服するべく、電気に関連した様々な発明が提案されている。
【0004】
第一の戦略は、材料の熱光学的特性を変更することなしに、電気的信号を用いて液体の表面に新たな形をとらせることに依拠している。例えば、米国特許出願公開第2013
/0194323
号に記載されたエレクトロウェッティングレンズは、液滴の形状は電圧を印加することにより変更されうることを示している。表面に印加される局所的な電圧は、液滴と表面との接触角を変化させ、それゆえ、液滴の形状を変更させ、これは、液体系マイクロレンズの焦点の変化をもたらす。それにもかかわらず、そのようなアプローチには、例えば(制限されるわけではないが)、集積化の難しさ、遅い時間応答(いくつかの応用では、系の加速は、液滴の形状を変更させ、レンズに狂いを導入しうる)、および、単一のレンズを用いて複数の平面に同時に結像できない、などの欠点がある。
【0005】
第二の戦略では、電気的励振を用いて、2つの電極間に設置されたレンズ形成材料を変質させるエネルギーを送出し、その特性をチューニングする。この戦略に従い、米国特許出願公開第2005/0117195号において開示されている電気励振フォトサーマルレンズが発明された。この特許では、サーモオプティカルポリマーが、一方が湾曲した2つの光学的に透明な表面の間に封入され、温度コントローラがサーモオプティカルポリマーに結合される。この発明は、そのように形成されたレンズの焦点に関する特性を、温度を変化させることによって変化させることを可能とする。単一のレンズの焦点面全体を変
化させることはできるが、この発明は、焦点の局所的な調節などのさらなる微調整をして、単一の素子によって異なる焦点面を生じさせることを可能とするものではない。さらに、マトリックス状の構成においてこの発明を考えた場合、各レンズへ電気的にアドレスすることが必要であり、これは、レンズ系の複雑なエンジニアリングをもたらし、いくつかの応用においてそれを使用不可能とする。
【0006】
一般に、電気的励振は、いくつかの応用にとって制限を与えうるものである。機械および電気誘導レンズ形成がもたらす障害を克服するには、光学制御レンズの発明が適切であるとみなされるようになってきた。実際、光学的制御は、各レンズ素子を電気的に結線する必要性を排除し、レンズの特性を遠隔制御することを可能とする。さらに、電気的結線や機械的素子の排除は、光学素子の透明性を改良するのに役立ちうる。これに沿うと、第一の戦略は、材料の熱光学的特性を変更することなしに、光学的信号を用いて液体の表面に新たな形をとらせることであって、ここで、光エネルギーは液滴の表面エネルギーを変更するのに使用され、これは、それらの形状を制御することを可能とすることに依拠するものである。例えば、液滴が、支持体層と液滴との間に設置される光応答層上に配置される。欧州特許出願公開第1304591号に記載されているように、この液滴は選択的に光ソース
で照射され、これは、表面エネルギーを、それゆえ、液滴と上記層との接触角を変更させ、マイクロレンズの焦点距離およびフォーカルスポットの水平方向の位置を変化させうる。このレンズは、エレクトロウェッティングレンズに付随する欠点のほとんど、例えば、前述したもの(集積化の難しさ、遅い時間応答、および、単一のレンズを用いて複数の平面を同時に結像できない)をいまだに示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、1つの光吸収粒子または複数の光吸収粒子のアレイと、光吸収粒子と熱的に接触したサーモオプティカル材料と、それらを照明するための少なくとも1つの光ソースとを備え、この光ソースは、光吸収粒子によって吸収されうる少なくとも1つのスペクトル成分を有し、パワーおよび/または偏波および/または波長を調節可能である。熱的な接触により、物理的な接触は必要ではないことが含意される。本発明は、照明されたときに光吸収粒子が温度を変化させる限り、吸収体とサーモオプティカル材料との間にあらゆる材料を組み入れることができる。このテキストにおいて、用語
「セル
」は、1つの光吸収粒子または複数の光吸収粒子のアレイと加熱用の光ソースとが重なり合っている光学的相互作用エリアとして定義される(例えば、
図4−1の4aの上方左側に示すミクロンサイズの金ディスク、または、
図4−1の4aの右側上方および
図5の5bの下方における金ナノアンテナのような、より小さな粒子もしくはナノ構造のアレイ)。
【0010】
本発明の像焦点面は、光ソースからの光学的信号を制御することにより、動的に形作られうる。このアプローチは、ある材料の屈折率の温度依存性と、光吸収材料が、光で照明したときに熱を発生して所定の温度分布を生じる能力とに依拠している。温度の局所的な上昇は、光の伝搬へ影響を及ぼす屈折率の変化を誘起する。
図1に描いているように、パターン化した吸収材料は、光ソースの少なくとも一部を吸収する。このエネルギー吸収は、光吸収粒子の少なくとも一部と熱的に接触しているサーモオプティカル材料の温度上昇をもたらす。したがって、サーモオプティカル材料の光学指数は、光吸収に依存して空間および時間変調される。この光学指数変調は、第2光ソースを、後者がサーモオプティカル材料を横切る際に、逸らすかまたは屈折させる。光学指数変調によってレンズされた(lensed)第2光ソースは、吸収材料を通ってサーモオプティカル材料へ(左側)、または、直接にサーモオプティカル材料へ(左側)と到達しうる。また、系の反射性/透過性に依存して、本発明は、透過および/または反射で使用されうる(左および右側の図の双方において、第2光ソースは透過および/または反射されている)。
【0011】
粒子は、所望の温度分布が達成されるようにパターン化されている。加熱用光ソースと吸収粒子との相互作用エリアは、それらのサーモオプティカル材料との相互作用の結果としてレンズ形成効果を引き起こすセルのサイズおよび位置を規定する。相互作用エリアにより、セルのサイズおよび/または位置は、吸収材料と加熱用光ソースとの物理的な重なりと必ずしも正確に等しくはなく、むしろ、光学的な相互作用エリアと等しいことが含意される。本発明は、
図2−1、
図2−2に描いているように、吸収材料と加熱用光ソースとの間の相互作用エリアにあらゆる構成を組み入れうる。
図2−1の2aには、電子ビームリソグラフィによって堆積させた金光吸収体の大きくかつ連続したアレイの走査電子顕微鏡(SEM)像が見られる。
図2−1の2bは、孤立した光吸収体エリアのSEM像を示しており、各エリア内には、多数の単独光吸収粒子が存在している。
図2−1の2cは、吸収エリアのサイズよりも小さな光ソースで照明した単一の光吸収エリアのスケッチである。この場合、セルのサイズおよび位置は光ソースによって規定され、一方、
図2−1の2dは、分離した光吸収エリアを示している。後者では、光ソースは、孤立した1つのエリアよりも大きく、4つのエリアをカバーしており、それゆえ、4つのセルがあり、それらの位置は、照明されている光吸収エリアによって規定されている。
図2−2の2eは、光吸収体の連続した1つのエリアと、分離した4つの光ソースとを示しており、ここで、セルのサイズおよび位置は、それらビームによって規定されている。
図2−2の2fでは、分離した光吸収エリアを見ることができ、そこでは、4つのエリアが4つの光ソースによって部分的に照明されている。セルのサイズおよび位置は、光ビームと光吸収体とが重なり合った領域(または相互作用エリア)によって規定される。
【0012】
いくつかの実施形態では、セルは、基材の内側または上にある。基材は、とりわけ、ガラス、石英、シリカ、プラスチック、またはポリマーでつくられうる。これは、レンズを透過型の構成において使用することを可能とする。あるいは、基材は、シリコンなどの不透明な材料からつくられることができ、これは、本発明を反射モードで使用することを可能とする。また、基材は、光透過の依存性(例えば、スペクトル、角度、または偏波依存性)を有することができ、これは、透過および反射モードで同時に動作することを可能とする。この種の基材は、異なる手段、例えば、積層媒体または二色性素子によって作成されうる。
【0013】
図3は、ディスク形状によって範囲を定められ、複数のナノ粒子(
図4−1の4aにおける金ナノアンテナ)からなる、パターン化された光吸収体の半分を、加熱用光ソース(例えば、波長800nmの赤外レーザ)で照らし出すことによって形成されたセルを描いている。
【0014】
それら粒子は、基材の上部に位置し、その上でパターン化されうる。光吸収粒子は、様々な材料、例えば、金属(例えば、金、銀または銅)、合金(例えば、窒化チタンまたは炭化珪素)、および半導体材料(例えば、珪素またはゲルマニウム)でつくられうる。パターン化は、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、レーザ描画、蒸着、スパッタリング、反応性イオンエッチング(RIE)および/または化学気相堆積(CVD)によってなされうる。
【0015】
特に有利な実施形態は、電子ビームリソグラフィおよび蒸着技術を使用して、金マイクロおよびナノ構造を製造する(
図2a〜b(基材上での吸収体のパターン化)および
図4−1の4a(2つの異なる吸収構造のサイズおよび形状)における走査電子顕微鏡像を参照のこと)。
【0016】
光吸収粒子は、どのようなスケールで
も、即ち、マクロ、メソ、マイクロおよびナノスケールでも構造化されうる。この構造化は、レンズのサイズを減少させること、および/または、光吸収材料の光から熱エネルギーへの変換の効率を高めることに使用されうる。そのような向上の一例は、とりわけ、ナノアンテナ、ナノロッド、ナノホール、ナノ粒子、ナノスター、ナノオリゴマー、多分岐ナノ粒子などのプラズモンナノ粒子を使用することによって与えられる。
図4−1、
図4−2および
図5は、プラズモン構造の使用が、これらナノ粒子によって支援される共鳴を利用することにより、レンズ形成効果を高めること(
図4−1、
図4−2)と、セルのサイズおよび形状を制御すること(
図5)とを可能にすることを示している。それゆえ、プラズモンナノ粒子が、より良好な結果を与えるため好ましいが、本発明はそのような粒子に限定されるものではない。
【0017】
図4−1、
図4−2は、サーマルレンズに対して効果的なプラズモン加熱とレンズ伝達関数特性表示(lens transfer function characterization)とを示している。
図4−1の4aは、半径5μmの金フルディスク(左側)およびナノロッド(NR)からなる半径5μmのディスク(右側)のSEM像である。120×80×50nmのナノロッドのより高い倍率の像が存在している。対応する吸収スペクトルは、800nmでの表面プラズモン共鳴(SPR)を表示している。
図4−2の4bは、平行偏波を用いてSPRで励振させた(aからの)NRディスク(黒色の十字、+)、直交偏波構成を用いてオフSPRで励振させたNRディスク(黒色の十字、×)、金フルディスク(黒色のドット)、および、あらゆる構造なし(黒色の四角)に対して照射した800nmのレーザパワーに対する焦点シフトおよび光学指数変動を示している。
図4−2の4cは、SPRで励振させた、ナノロッドからなるディスク(bにおける+に類似した)についての、30mWのパワーまでの800nm加熱用レーザパワーの関数としての、焦点シフトの線形従属を示している。
図4−2の4dでは、わずかに異なるサイズ(100×80nmおよび120×80nm)を有する金ナノロッドからなる2つの異なるアレイについて記録された吸収スペクトルを見ることができる。モフォロジー変化は、SPRスペクトル位置のシフトをもたらしている。これら2つのモフォロジーが異なっている光吸収粒子の吸収は、考慮される加熱用光ソースについて異なっている。
図4−2の4eには、2つの異なるエリアへ照射した800nmレーザパワーに応じた焦点シフトおよび光学指数変動が記載されている。
【0018】
図5の5aは、サーマルレンズによる(位置Xの関数としての)2.5μmグレーティングのコントラストの改善を示している。コントラストの改善から、我々は、サーモオプティカル材料の屈折率が変更された領域の、面内での水平方向のサイズを測定した。これは、パターン化された光吸収体エリアに作用する加熱用光ソース(
図2−1の2cのように、1つのレーザビームについて、そのビームの半径は5μmである)の不存在下および存在下でグレーティングをイメージングすること(この場合、波長800nmの赤外レーザビームであり、像は
図5の5aの差し込みに示されている)によりなされた。
【0019】
図5の5b〜5dは、パターン化された吸収材料を同一のままとしつつ、単一素子の範囲内で、加熱用光ソースの特性を変更させることにより、焦点を局所的および動的に変化させる可能性を示している。加熱用光ソースは、
図5の5bに示される、考慮されている光吸収粒子アレイよりも大きなエリアにフォーカスされる。この場合、加熱用光ソースと考慮されている光吸収粒子アレイとの相互作用エリアは、誘起されるサーマルレンズのサイズおよび形状を規定する(
図2−1の2dにスケッチするように)。より正確には、
図5の5bは、電子ビームリソグラフィによる、ナノロッド(NR)からなる十字型構造のSEM像である。NRは、
図4−1の4a(上部および下部右側)に表示されているものと類似しており、800nmの近赤外において共鳴を示す。2つの差し込み図は、十字の各アームの拡大図に対応しており、各アームにおいてナノロッドは垂直に配向している。
図5の5cは、十字の垂直軸のナノロッドが励振と共鳴し、したがって、光を効率的に吸収するように垂直方向に沿って配向した偏光についての局所的な焦点のシフトを示している。
図5の5dは、
図5の5cと同じであるが、入射する偏光が水平方向に沿って配向している。
【0020】
これら実施形態のすべてが、均一なサーモオプティカル材料、または、
図6に示すようにサーマルバリアでパターン化されたサーモオプティカル材料について考慮されうる。
【0021】
図7では、相互作用エリアのサイズに依存したサーマルレンズの時間応答が示されている。
図7の7a〜7cは、それぞれ、10、5および2μm径ディスクからなるサーマルレンズの立ち上がり時間を、a、bおよびcに示している。これらディスクは、金ナノロッドからなる(
図4−1の4aの上部右側のように)。立ち上がり時間の実験結果は、
図7の7dにおいて、ディスク径の関数としてプロットされている。
【0022】
特定の例:
我々は、金ナノロッド(120×80×50n
m)からなり、300nmのピッチで位置したアレイ(
図4−1の4aの右側上部および下部)であって、それらの長さ方向でのプラズモンモードで、すなわち、ナノロッドの長軸に沿って直線偏波した入射場について、800nmで吸収の最大へと導く(
図4−1の4aの下部左側)アレイを製造した。金ナノロッドは、5マイクロメートルの半径を有するディスクのエリアにパターン化される(
図4−1の4aの上部右側)。我々は、半径5ミクロンの金フルディスクも製造した(
図4−1の4aの上部左側)。これら構造を加熱するべく、我々は、ナノロッドの主軸に沿って直線偏波した波長800nmのレーザ光ソースを使用した。
【0023】
我々は、まず、入射する加熱用レーザパワーと、結果として生じる、入射光ソース(波長473nmの青色レーザダイオード)の焦点シフトとの関係(伝達関数)を測定した。加熱用ビームは、5μmの半径に設定した。
【0024】
我々は、ナノロッドからなる金ディスクについて、0〜30mWの範囲についてのレーザパワーの関数としての焦点シフトの一次従属性を得た。
【0025】
その結果、我々は、平行および垂直偏波の双方について0〜14mWのパワーレンジで、同じ800nmレーザで照明したときの、NRディスク(先と同様)の焦点シフトを測定した。結果として得られた一次従属性は、
図4−2の4bに示されている。この結果は、再度、473nmダイオードレーザの焦点シフトについて与えられている。また、入射する加熱用レーザ(800nm)パワーの関数としての焦点シフトが、0〜15mWの範囲のパワーにわたり、半径5μmの金フルディスク(単一粒子)について記録された(
図4−2の4b)。最後に、吸収構造がない場合の焦点シフトが、様々な加熱パワーについて測定された(
図4−2の4b)。これらすべての実験について、結果としての温度が測定され(蛍光偏光異方性と呼ばれる方法を用いて)、それから、各々の場合について屈折率の変化が抽出された(
図4−2の4b)。
【0026】
さらに他の実験において、我々は、わずかに異なるサイズを有している金ナノロッドからなる異なる2つのアレイ(100×80nmおよび120×80nm、双方においてNRのピッチは300nm)に対して、吸収スペクトルを測定した(
図4−2の4d)。モフォロジー変化は、SPRスペクトル位置のシフトを生じさせている。したがって、これら2つの吸収構造の吸収は、考慮している加熱用光ソースについて異なっている。
【0027】
その結果、金NRからなり、同じディスク形状(半径5μm)によって範囲を定められた、これら2つの異なるエリアを照らし出す800nmレーザパワー(0〜10mW)に依存した焦点シフトおよび光学指数変動は、
図4−2の4eに示すように異なっている。
【0028】
セルのサイズおよび形状を調べるべく、2.5μmグレーティングのコントラストが、サーマルレンズ化をサーマルレンズなしのコントラストによって正規化して、位置Xの関数として計算された(
図5の5a)。この目的を達成するために、グレーティングが、上述した
図4−1の4aの光吸収粒子のアレイ、サーモオプティカル材料としての水、および5μmの半径へフォーカスされた800nmの加熱用レーザビームからつくられたサーマルレンズの上方に設置される。我々は、サーモオプティカル材料の屈折率が変更された領域の面内水平サイズが6.5μmであることを測定した(コントラスト比グラフのFWHMを測定することによって)。
【0029】
図5の5b〜5dは、加熱用光ソースの特性を変更することにより、セルのサイズおよび形状を動的に変化させる可能性を示しており、特にここでは(
図5の5c〜5d)、我々は、パターン化された吸収材料を同一としたまま、偏波を変化させた。
図5の5bは、電子ビームリソグラフィおよびそれに続く金蒸着による、ナノロッド(NR)からなる十字型構造のSEM像を示している。NRは、
図4−1の4aの下方右側に表示されているものと類似しており、800nmの近赤外において共鳴を示す。
図5の5bの2つの差し込み図は、十字の各アームの拡大に対応しており、各アームにおいて、ナノロッドは垂直に配向していることを示している。
図5の5cは、偏波が
図5の5bの垂直方向に沿って配向した800nmの加熱用レーザ光ソースについての局所的焦点シフトを示しており、十字の垂直軸のナノロッドは励振と共鳴し、したがって、光を効果的に吸収している。
図5の5dにおいて、入射した加熱用偏光は、水平方向に沿って配向している。
図5の5cおよび5dの双方において、サーマルレンズの非対称な性質が、パターン化された吸収材料と加熱用光ソースのサイズおよびパワーとを同じにしたまま、入射させる偏波を変化させることによる、焦点シフトの局所的な制御とともに、証明されうる。
【0030】
可変フォトサーマルレンズが、一つの光ソースと、この光ソースのスポットの異なる位置を提供するためのガルバノミラーを備えていてもよい。また、可変フォトサーマルレンズが、複数の光ソースを備えていてもよい。また、上述した可変フォトサーマルレンズを複数備えたマイクロレンズアレイを構成することも可能である。
【0031】
このテキストにおいて、用語「備える」およびその派生語(例えば「備えた」など)は、排他的意味で理解されるべきではない。すなわち、これら用語は、記載および定義されているものがさらなる要素、工程などを含んでいてもよいという可能性を排除するように解釈されるべきではない。
【0032】
他方、本発明は、明らかに、ここに記載した特定の実施形態に制限されるものではなく、特許請求の範囲において規定される発明の全般的範囲内で、いずれかの当業者によって考慮されうるあらゆる変形(例えば、材料の選択、寸法、構成要素、配置などに関して)を包含している。