(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469719
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】バッテリの内部抵抗を求めるための方法及び電気的なバッテリセンサ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/36 20190101AFI20190204BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20190204BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
G01R31/36 A
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-558742(P2016-558742)
(86)(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公表番号】特表2017-516080(P2017-516080A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015053567
(87)【国際公開番号】WO2015144367
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】102014205495.8
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム キツラー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン モッツ
(72)【発明者】
【氏名】エーバーハート ショッホ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ホルガー ケーニヒスマン
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−246088(JP,A)
【文献】
特開2012−026771(JP,A)
【文献】
特開2011−047820(JP,A)
【文献】
特開2011−128010(JP,A)
【文献】
特開2006−250905(JP,A)
【文献】
特開平09−033622(JP,A)
【文献】
特開2011−257372(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/099990(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0303301(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定値(50)を検出する少なくとも一つの第1の検出手段(40)と、バッテリ(20)の内部抵抗(Ri)を求めるためのバッテリモデル(30)とを備える、電気的なバッテリセンサ(10)であって、
各測定値(50)は、少なくとも二つの対応する測定量の、同一時点での情報を含み、
連続する二つの測定値(50)は、それぞれ一つの測定対(60)を成す、電気的なバッテリセンサ(10)において、
前記バッテリセンサ(10)は、少なくとも一つの選択手段(70)を含み、当該選択手段(70)は、所定の数の前記測定対(60)から、少なくとも一つの測定対(60)を選択対(80)として選択して、前記内部抵抗(Ri)を求めるバッテリモデル(30)に供給するように構成されており、
前記測定対(60)の前記所定の数は、前記選択対(80)の数よりも多く、
前記バッテリセンサ(10)は、整合手段(100)を含み、当該整合手段(100)は、前記対応する測定量の位相を相互に整合させるように構成されており、
前記選択手段(70)は、前記測定対(60)の勾配に依存して、前記所定の数の測定対(60)のうちの、絶対値が最大の電流勾配を有する測定対(60)を前記選択対(80)として選択するように構成されている、
ことを特徴とする、電気的なバッテリセンサ(10)。
【請求項2】
前記検出手段(40)及び/又は前記選択手段(70)の動作周波数(fx)と、前記バッテリモデル(30)の処理周波数(fy)との比は、前記測定対(60)の前記所定の数と前記選択対(80)の数との比に相当する、請求項1に記載の電気的なバッテリセンサ(10)。
【請求項3】
前記バッテリセンサ(10)は、バンドパスフィルタ(90)を含み、
前記バンドパスフィルタ(90)は、入力量として、前記測定値(50)を有しており、かつ、出力量を前記選択手段(70)に供給するように構成されている、請求項1又は2に記載の電気的なバッテリセンサ(10)。
【請求項4】
前記少なくとも二つの対応する測定量は、バッテリ電流(IBatt)及びバッテリ電圧(UBatt)である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気的なバッテリセンサ(10)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気的なバッテリセンサ(10)を用いてバッテリ(20)の内部抵抗(Ri)を求めるための方法であって、
測定値(50)を検出する(110)ステップであって、各測定値(50)は、少なくとも二つの対応する測定量の、同一時点での情報を含み、連続する二つの測定値(50)はそれぞれ一つの測定対(60)を成す、ステップを備える、方法において、
前記対応する測定量の位相を整合させる(160)ステップと、
少なくとも一つの測定対(60)を選択対(80)として、所定の数の測定対(60)から選択する(120)ステップであって、前記測定対(60)の前記所定の数は、前記選択対の数よりも多い、ステップと、
前記内部抵抗(Ri)を求めるために、前記少なくとも一つの選択対(80)を供給する(130)ステップと、
前記少なくとも一つの選択対(80)の勾配に基づいて、前記内部抵抗(Ri)を計算する(140)ステップと、
を備え、
前記選択(120)において、複数の前記測定対(60)の勾配を相互に比較し、当該比較に依存して、絶対値が最大の電流勾配を有する測定対(60)を前記選択対(80)として選択する、
ことを特徴とする、電気的なバッテリセンサ(10)を用いてバッテリ(20)の内部抵抗(Ri)を求めるための方法。
【請求項6】
前記検出(110)のための及び/又は前記測定対(60)の選択(120)のための動作周波数(fx)と、前記内部抵抗(Ri)の計算(140)のための処理周波数(fy)との比は、前記測定対(60)の前記所定の数と前記選択対(80)の数との比に相当する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検出(110)と前記選択(120)との間に、前記検出された測定値(50)をバンドパスフィルタにかける(150)、さらなるステップを備える、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも二つの対応する測定量は、バッテリ電流(IBatt)及びバッテリ電圧(UBatt)である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、独立請求項の上位概念に記載された、バッテリの内部抵抗を求めるための方法及び電気的なバッテリセンサに基づく。国際公開第2006/037694号(WO2006/037694)から、電気的な信号を再構築するための方法が公知である。この方法では、アナログ測定信号が、アナログデジタル変換器によって、高いサンプリングレートでサンプリングされる。測定信号として、ここでは、例えば、バッテリの電圧及び電流強度が用いられ、ここから、次に、内部抵抗が計算される。この内部抵抗は、ここでは、電圧差を電流強度差で除算することによって計算される。通常はさらに、サンプリング前に、測定信号がローパスフィルタにかけられ、サンプリング定理が得られる。これによって、エイリアシングの発生が回避される。内部抵抗の計算に必要な電流信号及び電圧信号は、図示された方法では、電流センサ又は電圧センサによって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際公開第2006/037694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、高いサンプリングレートを可能にし、それと同時に、内部抵抗計算のための高い計算コストを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の利点
本発明は、測定値を検出する少なくとも一つの第1の検出手段と、バッテリの内部抵抗を求めるためのバッテリモデルとを備える電気的なバッテリセンサに基づく。各測定値は、少なくとも二つの対応する測定量の、同一時点での情報を含む。これらの測定量は、特に、バッテリ電流及びバッテリ電圧である。また、連続する二つの測定値は、それぞれ一つの測定対を成す。本発明の核心部分は、このバッテリセンサが少なくとも一つの選択手段を含む、ということである。当該選択手段は、所定の数の測定対から、少なくとも一つの測定対を選択対として選択し、内部抵抗を求めるためのバッテリモデルにこれを提供するように構成されている。当該測定対の数は、選択対の数よりも大きい。これによってさらに、高いサンプリングレートでサンプリングが行われるが、サンプリングされたこれらの測定値の一部だけがバッテリモデルに転送されるのは有利である。これによって、バッテリモデルの計算コストは低く保たれるが、それにもかかわらず、高いサンプリングレートによって、高い測定精度が保証される。即ち、これによって、高い周波数でサンプリングすること、及び、サンプリングされたこれらの測定対の一部のみをバッテリモデルに転送することが可能になる。これによって、バッテリモデル内の抵抗の計算を低い周波数で行うことができる。さらに、高いサンプリング周波数によって、小さい電流変動及び電圧変動がバッテリで識別されるようになる。これらの変動は、サンプリング周波数が低い場合には、識別可能ではなかったであろう。このことは、次のような利点を有している。即ち、大きい電流変動又は電圧変動を生じさせる、エンジンの始動に基づくバッテリでの励振だけが識別されるのではなく、小さい励振も識別される、という利点を有する。従って、特に、従来のエンジン始動を伴わないハイブリッド車両及び電動車両の場合に、本発明は、特に有利である。
【0005】
本発明の有利な構成では、検出手段及び/又は選択手段の動作周波数とバッテリモデルの処理周波数との比は、測定対の数と選択対の数との比に相当する。ここで、有利には、所定の数の測定対を選択することによって、動作周波数と処理周波数との比を調整することができる。次に、この所定の数の測定対から所定の数の選択対が選択される。
【0006】
本発明の別の有利な構成では、選択された複数の測定対のn番目ごとの測定対が選択対として選択されるように、選択手段が構成されている。有利にはこれは、選択対を選択するための極めて簡単なアルゴリズムである。即ち、これによって、選択手段における計算コストを極めて低く保つことができる。
【0007】
本発明の別の有利な構成では、測定対の勾配に依存して、少なくとも一つの測定対、特に、絶対値が最大の電流勾配を有している測定対を選択対として選択するように選択手段が構成されている。有利には、これによって、極めて良好に適した測定対が選択され、これによって、バッテリモデルによる内部抵抗の後続の計算において極めて良好な結果が得られる。
【0008】
本発明の別の有利な構成では、所定の数の測定対の総ての測定対の平均値を形成し、この平均値を選択対として選択するように、選択手段が構成されている。この場合には有利には、個々の測定誤差が、測定値の平均値を形成することによって補償される。
【0009】
本発明の別の有利な構成では、バッテリセンサは、バンドパスフィルタを含み、当該バンドパスフィルタは、入力量として測定値を有しており、かつ、出力量を選択手段に供給するように構成されている。ここでは有利には、内部抵抗の計算には用いられるべきではない低周波数のノイズ信号もフィルタリングされる。
【0010】
本発明の別の有利な構成では、バッテリセンサは整合手段を含み、当該整合手段は、対応する測定量の位相を相互に整合させるように構成されている。この際に有利には、誤りを有する測定値が、位相シフトによって回避可能である。これによって、次に行われる内部抵抗計算の結果の質が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】バッテリに接続されている、本発明に係るバッテリセンサの第1の実施例。
【
図2】特に、
図1に示されたバッテリセンサを用いて行われる、内部抵抗を求めるための本発明に係る方法のフローチャート。
【
図3】時間を横軸にして、検出されたバッテリ電流が示されている線図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係るバッテリセンサの第1の実施例を示している。バッテリ20が示されている。端子25では、バッテリ電圧U
Battとバッテリ電流I
Battとが測定可能である。さらに、バッテリセンサ10が示されている。このバッテリセンサ10は、二つの検出手段40を含んでおり、これらの検出手段は、バッテリ電圧U
Battとバッテリ電流I
Battとを検出する。検出手段40は、選択手段70と接続されている。これによって、測定値50又は測定対60が、検出手段40から選択手段70に伝達可能である。任意選択的に、検出手段40と選択手段70との間にバンドパスフィルタ90が配置される。同じく任意選択的に、検出手段40と選択手段70との間に、整合手段100が配置される。さらに、この選択手段70は、バッテリモデル30と接続されている。これによって、選択対80をバッテリモデル30に供給することが可能になる。選択対80に基づいて、バッテリモデル30は、内部抵抗R
iを計算し、処理のために出力することができる。
【0013】
図1に示されたバッテリ20は、例えば、自動車用のバッテリであり得るが、しかし、他のあらゆるエネルギ蓄積器であってもよい。さらに、バッテリモデル30を、例えば、拡張されたカルマンフィルタとして形成することが可能である。
【0014】
図2は、バッテリの内部抵抗を求めるための、本発明に係る動作方法のフローチャートを示している。これは特に、
図1に示されたバッテリセンサによって行われる。当該方法は、開始Sにおいて開始する。次に、第1のステップ110において、測定値50が検出される。各測定値50は、少なくとも二つの対応する測定量の同一時点での情報を有している。これらは例えば、バッテリ電流I
Batt及びバッテリ電圧U
Battである。連続する二つの測定値50は、それぞれ一つの測定対60を成す。次に、任意選択的なステップ150において、検出された測定値50又は測定対60がバンドパスフィルタにかけられる。バンドパスフィルタ90は、ハイパスフィルタとローパスフィルタとの組合せである。ローパスフィルタは、サンプリング定理を得るために、高周波成分をフィルタリングするのに用いられる。これに対し、ハイパスフィルタは、低い周波数のノイズ信号をフィルタリングするために用いられる。これは例えば、LEDを駆動制御するためのパルス幅変調信号である。さらなる任意選択的なステップ160では、対応する測定量の位相が相互に整合される。次に、ステップ120において、少なくとも一つの測定対60が選択対80として、所定の数の測定対60から選択される。選択対80を選択するために、複数の選択肢が用意されている。第1の選択肢では、複数の測定対60からn番目ごとの測定対60が選択対80として選択される。別の選択肢では、最大の電流勾配を有する測定対60が選択対80として選択される。さらに別の選択肢では、特定の測定対60の平均値が形成され、この平均値が、選択対80として選択される。次に、後続のステップ130では、選択対80が、内部抵抗R
iを求めるためのバッテリモデル30に供給される。その後、供給された選択対80に基づいて、ステップ140において、内部抵抗R
iが、バッテリモデル30によって計算される。最終的に、当該方法は、終了Eにおいて終了する。
【0015】
通常時には、
図2に示されたこのような方法が複数回、時間をずらして実行される。従って、例えば、複数の特定の測定対60が検出され、これらが、図示のようにさらに処理される。ここで、これらの測定対60の処理中に、既に、新たな測定対が検出され、同様に、さらに処理される。さらに、測定対60の特定の数と、ここから選択された選択対80の数との比によって、圧縮率を設定することができる。従って、検出された多数の測定対60を、測定対60を選択対80として所期のように選択することによって、低減することができる。これによって、測定値50又は測定対60の検出110、選択対80の選択120、並びに、場合によっては、帯域濾波140及び位相整合150が、高い動作周波数f
xのもとで行われる。これに対して、データ量が選択120によって低減されているので、内部抵抗R
iの特定は、バッテリモデル30によって、低い処理周波数fyで行われる。
【0016】
図3は、時間を横軸にして、検出されたバッテリ電流が示されている線図である。ここに図示されているのでは、検出された測定値50である。これらはそれぞれ、連続した間隔を有する時間間隔t
mごとに検出されたものである。時間間隔t
mの逆数は、ここでは、検出手段40及び/又は選択手段70の動作周波数f
xである。同様に、任意選択的なバンドパスフィルタ90と任意選択的な整合手段100とが、この動作周波数f
xを有している。測定値50はそれぞれ、同一時点でのバッテリ電流I
Battと、これに属するバッテリ電圧U
Battの値とから成る。ここでは、バッテリ電圧U
Battは図示されていない。連続する二つの測定値50はここでそれぞれ、一つの測定対60を成す。さらに、一つの測定対60の二つの測定値50の間の差は、勾配と称される。従って、各測定対60は、電流勾配ΔI
Battと、電圧勾配ΔU
Battとを有している。
複数の測定対60の勾配を相互に比較し、当該比較に依存して、少なくとも一つの測定対60を選択対80として選択し、特に、絶対値が最大の電流勾配を有する測定対60を選択対80として選択する。ここで、存在している複数の測定対60のうちの、絶対値が最大の電流勾配ΔI
Battが最大電流勾配ΔI
Batt,maxと称される。同様のことが、電圧勾配ΔU
Battに当てはまる。選択条件が最大電流勾配ΔI
Batt,maxに基づく場合、
図3において、選択対80が選択された測定対60である。
図3に示されているように、一つの測定対60のみが選択対80として、所定の数の測定対60から選択される場合には、所定の数の測定対60が検出される時間周期T
nの逆数は、バッテリモデル30の処理周波数f
yに相当する。これとは異なり、複数の選択対が所定の数の測定対から選択される場合には、処理周波数f
yを求めるために、時間周期T
nの逆数が、さらに、選択対の数だけ、乗算されなければならない。