【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の開示
本発明では、ガルバニ素子の製造方法が提案されており、この方法は、以下のステップ、すなわち、
a)アノードに割り当てられた電流導体と、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータと、リチウムを含有したカソード材料を含むカソードと、該カソードに割り当てられた電流導体とをこの順に含む積層体を形成するステップと、
b)ガルバニ素子を充電するステップと、
を含み、
前記ガルバニ素子の充電の際に、前記アノードに割り当てられた電流導体と前記セパレータとの間に、金属系リチウムを含むアノードが形成される。
【0010】
前記積層体は、例えば第1のステップi)において、アノードに割り当てられた電流導体を設け、第2のステップii)において、アノードに割り当てられた電流導体上に、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータを被着し、次いで第3のステップにおいて、リチウムを含有したカソード材料を含むカソードを、前記セパレータ上に被着し、次いで最終ステップiv)において、カソードに割り当てられた電流導体を、当該カソード上に配置するように、形成されてもよい。
【0011】
積層体を製造する第1のステップi)では、アノードに割り当てられた電流導体が設けられる。この電流導体は、典型的には金属箔として実施され、この場合アノードに割り当てられた電流導体に対して、典型的には6μm乃至12μmの厚さを有する銅箔が使用される。また、銅層が被着される支持体として他の材料の使用も考えられるであろう。典型的には、金属系リチウムとの反応を阻止するために、電流導体のアノードに面する側に、表面処理が施される。
【0012】
積層体を製造する第2のステップii)では、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータが、アノードに割り当てられた電流導体上に層の形態で被着される。この層は、好ましくは遮蔽されて実施される。セパレータの材料は、好ましくはセラミック材料であり、これは、当該方法の一実施形態においてはセラミック粉末の形態でエアロゾルコーティングを用いて被着される。好適な方法として例えば独国特許出願公開第102012205931号明細書(DE102012205931A1)が参照される。また、当業者に公知の他のコーティング方法、例えばPLD(Pulsed Laser Depositioning,パルスレーザ蒸着法)または類似の気相コーティング法などを使用することも考えられる。このようにして製造されたセパレータは、5%未満の残留多孔性を有する。このセパレータは、連続的な多孔性は有さず、それ故完全に密である。好ましくはこの密なセパレータ層は、5乃至25μmの厚さで実施され、特に好ましくは厚さは8乃至15μmの範囲にある。
【0013】
セパレータの材料は、好ましくはリチウム伝導性セラミックである。特にセパレータのための材料として、リチウムガーネットが適している。代替的に、セパレータの材料は、ペロブスカイト型(LLTO)Li3xLa2/3−xTiO
3、リン酸塩系(LATP)Li1+xTi2−xMx(PO4)3(但しM=Al,Ga,InまたはSc)、Li
2SおよびP
2S
5並びにGeおよびSnなどのドーピング要素を含有した硫化物ガラス、およびアルジロダイト型Li
6PS
5X(但しX=I,ClまたはBr)から選択されてもよい。
【0014】
積層体を製造する第3のステップiii)では、セパレータ上に、リチウムを含有したカソード材料からなる層の形態のカソードが被着される。カソード材料は、例えばセパレータ上に被着されるペーストまたはスラリーに処理されてもよい。また当業者に公知の他のコーティング方法が使用されてもよい。
【0015】
カソード材料は、好ましくは、場合によりプレリチウム化された正極活物質と、導電性材料と、イオン伝導性
カソライトの混合物である。正極活物質は、好ましい実施形態では、導電性を高めるために炭素との複合材料として存在していてもよい。
【0016】
この複合材料は、当該方法の一実施形態では、活物質としての硫黄粒子、導電性を高めるためのグラファイトおよび導電性カーボンブラック、並びに場合によっては例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)のような結着材からなる混合物を含む。当該方法のさらなる実施形態では、正極活物質は、SPAN(硫黄ポリアクリロニトリル)、グラファイトおよび/または導電性カーボンブラックおよびリチウムイオン伝導性ポリマーからなる混合物を含む。さらなる実施形態では、複合材料は、場合によっては炭素並びにLiFや例えばFe,Cu,Niなどの金属のナノ粒子からなる混合物を含む。さらなる実施形態では、複合材料は、場合によっては炭素並びにLi
2Sや例えばFe,Cu,Niなどの金属のナノ粒子からなる混合物を含む。別の実施形態では、金属のプレリチウム化が既に行われ、複合材料は、炭素とリチウム含有金属水素化物、硫化物、フッ化物または窒化物からなる。
【0017】
フッ素の移動と共に
カソライトとの反応、電流導体との反応または他のバッテリ成分との反応を阻止するために、複合材料は、好ましい実施形態では、例えば炭素または酸化物(例えばAl
2O
3)またはフッ化物(例えばAlF
3)または酸化フッ化物からなるコーティングが施されている。コーティングはまた、含硫実施形態における多硫化物の拡散も阻止し得る。
【0018】
当該方法のさらなる実施形態では、正極活物質は、リチウム化された遷移金属酸化物、例えばLi(NiCoMn)O
2、LiMn
2O
4(またはより高いLi含有量)、Li
2MO
3−LiMO
2(但しMは、例えばNi,Co,Mn,Mo,Cr,Fe,RuまたはV)、LiMPO
4(但しMは、例えばFe,Ni,CoまたはMn)、Li(Ni
0,5Mn
1,5)O
4(またはより高いLi含有量)、Li
xV
2O
5、LixV
3O
8または当業者に公知の、ホウ酸塩、リン酸塩、フルオロリン、ケイ酸塩のようなさらなる正極活物質から選択される。
【0019】
当該方法のさらなる実施形態では、正極活物質は、例えばリチウム化された硫黄、例えばLi
2Sから選択されており、ここでのこの材料は、溶解または
カソライトとの副反応を阻止するために、好ましくは炭素複合マトリックスに、例えば小球形態にカプセル化されている。
【0020】
当該方法の一実施形態では、
カソライトは、ポリエチレンオキシド(PEO)ベースまたは大豆ベースの電解
質である。
【0021】
代替的にまたは付加的に、イオン伝導性のセパレータのために使用する材料を
カソライトとして用いることも考えられる。なぜならこれらの材料も、良好なイオン伝導性を有しているからである。付加的に、
カソライトは、さらに導電性を有していてもよいが、しかしながらこのことは、必ずしもそうである必要はない。
【0022】
当該方法の一実施形態では、導電性材料は、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、グラフェン、グラファイトまたはこれらの材料の少なくとも2つの組合せから選択される。
【0023】
積層体を製造する第4のステップiv)では、カソードに割り当てられた電流導体がカソード上に被着される。カソードに割り当てられた電流導体も金属箔として実施されてもよい。その場合にはカソードのために通常は13μm乃至15μmの間の厚さを有するアルミ箔が用いられる。また代替的に、アルミニウムでコーティングされた支持材料を、カソードに割り当てられた電流導体として用いることも考えられる。さらなる代替例では、カソードに割り当てられた電流導体のための材料を、当業者に公知のコーティング法、例えば蒸着法を用いて塗布することも考えられるであろう。
【0024】
さらに、ガルバニ素子に含まれる材料と、電流導体の材料、例えばアルミニウムとの間の反応を阻止するために、カソードに割り当てられた電流導体に表面処理を施すことも可能である。
【0025】
当該方法の実施形態に応じて、ステップi)乃至iv)は、別の順序で実施されてもよい。そのため例えば、ステップi)およびii)を別個に実施し、それと並行して、カソードに割り当てられた電流導体を設け、その上にカソードを被着し、続いて2つのコンポーネントをつなぎ合わせることも考えられる。
【0026】
それに続いて、ステップb)による充電が、最後のステップとして実行され得る。
【0027】
当該方法の第2のそして最後のステップb)では、当該方法のステップa)において生成されたガルバニ素子が、最初に電気的に充電される。ここではリチウムイオンが、正極活物質からカソード内へイオン伝導性のセパレータを貫通して移動し、金属系リチウムからなる層の形態で、アノードに割り当てられた電流導体の、セパレータに面する側に堆積される。これにより、金属系リチウムを含んだアノードが、アノードに割り当てられた電流導体とセパレータの間に形成される。
【0028】
さらに、セルパッケージと前述した方法によって製造されたガルバニ素子を含んだバッテリセルが提案されている。ここでのセルパッケージは、ソフトパックタイプのパッケージデザインであってもよいし、あるいはハードタイプのハウジングであってもよい。
【0029】
さらに、1つ以上のそのようなバッテリセルを含んだバッテリが提案される。
【0030】
当該明細書の枠内では、バッテリ若しくはバッテリセルとの概念は、日常語において一般的に使用されているものである。すなわちバッテリとの概念には、一次電池のみならず二次電池(蓄電池)も含まれるものである。同様に、バッテリセルの概念にも、一次セルのみならず二次セルも含まれる。