特許第6469725号(P6469725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469725
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ガルバニ素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20190204BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20190204BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20190204BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190204BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20190204BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20190204BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20190204BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20190204BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20190204BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M10/0562
   H01M10/052
   H01M4/62 Z
   H01M4/485
   H01M4/58
   H01M4/13
   H01M4/131
   H01M4/136
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-565242(P2016-565242)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公表番号】特表2017-517842(P2017-517842A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】EP2015057624
(87)【国際公開番号】WO2015165701
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】102014208228.5
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ケアカム
【審査官】 菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−107812(JP,A)
【文献】 特開2006−261008(JP,A)
【文献】 特開2011−198692(JP,A)
【文献】 特開2012−224520(JP,A)
【文献】 特開2013−032259(JP,A)
【文献】 特開2013−232284(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/066518(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012205931(DE,A1)
【文献】 特開2002−203593(JP,A)
【文献】 特開2005−116273(JP,A)
【文献】 米国特許第06168884(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0162094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルバニ素子(10)の製造方法であって、
a)アノードに割り当てられた電流導体(12)と、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータ(16)と、リチウムを含有したカソード材料を含むカソード(18)と、前記カソードに割り当てられた電流導体(22)とをこの順に含む積層体を形成するステップと、
b)前記ガルバニ素子(10)を充電するステップと、
を含み、
前記ガルバニ素子(10)の充電のもとで、前記アノードに割り当てられた前記電流導体(12)と前記セパレータ(16)との間に、金属系リチウムを含んだアノード(14)が形成され、
前記セパレータ(16)の材料は、リチウム伝導性ガーネットであ
前記カソード(18)のカソード材料は、正極活物質(20)と導電性材料とカソライトとを含む混合物である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セパレータ(16)は、エアロゾルコーティングまたはパルスレーザ蒸着法を用いて被着される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セパレータ(16)の材料は、リチウムガーネットである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記正極活物質(20)は、LiFおよび金属、リチウム化された遷移金属酸化物またはリチウム化された硫黄を含有する複合材料から選択される、請求項1乃至3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記カソライトは、ポリエチレンオキシド(PEO)ベース電解質である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性材料は、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、または、これらの材料の少なくとも2つの組合せから選択される、請求項乃至いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
セルハウジングおよび請求項1乃至いずれか1項に記載の方法により製造されたガルバニ素子(10)を備えるバッテリセル。
【請求項8】
請求項に記載の1つ以上のバッテリセルを備えるバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバニ素子およびそのようなガルバニ素子の製造方法に関しており、この場合のガルバニ素子は、アノードに割り当てられた電流導体と、アノードと、セパレータと、カソードと、該カソードに割り当てられた電流導体とを含んでいる。さらに本発明は、そのようなガルバニ素子を含んだバッテリセル並びに複数のそのようなバッテリセルを含んだバッテリに関している。
【背景技術】
【0002】
従来技術
リチウムイオン電池は、特に非常に高い比エネルギと極端に少ない自己放電とによって優れている。リチウムイオン電池は、少なくとも1つの正極と少なくとも1つの負極(カソード乃至アノード)を有する。この場合バッテリの充放電の間、リチウムイオンは、一方の電極から他方の電極に移動する。リチウムイオンの移送のために、いわゆるリチウムイオン伝導体は必要である。例えば民生分野(携帯電話、MP3プレーヤなど)において、あるいは電気自動車若しくはハイブリッド自動車のエネルギ蓄積器として用いられる、現在使用されているリチウムイオン電池では、リチウムイオン伝導体は、液状電解質であり、これは多くの場合、有機溶媒中に溶解されたリチウム支持塩(支持電解質)、リチウムヘキサフルオロリン酸塩(LiPF)を含んでいる。リチウムイオン電池は、電極、リチウムイオン伝導体、並びに電気的接続を形成する電流導体を含んでいる。
【0003】
リチウムイオン電池は、パッケージに含まれていてもよい。パッケージとして例えばアルミラミネートフィルムが使用される。そのようなパッケージ形の電池は、その軟装パッケージのためにポーチ若しくはソフトパックとも称される。このソフトパック形のパッケージデザインの外にもパッケージとして、例えば深絞り加工若しくは押出し加工されたハウジング部品の形態でハードな金属製ハウジングが用いられている。この場合ではハードハウジング若しくはハードケースが挙げられる。
【0004】
液状電解質を含むリチウムイオン電池の短所は、機械的および熱的ストレスのもとで、液状電解質成分が分解する可能性があり、セル内に過圧が生じることである。相応の安全対策なしでは、このことは、セルの破裂あるいは発火さえも引き起こす可能性がある。
【0005】
液状電解質の代わりに、固体セラミックかまたは無機のリチウムイオン伝導体を使用することが可能である。この構想によれば、バッテリセルの破裂やパッケージが損傷した場合の物質の流出が回避される。
【0006】
独国特許出願公開第102012205931号明細書(DE102012205931A1)からは、電気化学的エネルギ蓄積器並びにその製造方法が公知である。この電気化学的なエネルギ蓄積器は、コーティングされた表面にイオン伝導性で電気絶縁性のセパレータ層が形成された少なくとも1つの電極アセンブリを含んでいる。イオン伝導層は、電解質として使用されるため、液状電解質を使用する必要はない。この電極アセンブリのための活物質として、リチウムイオン電池としての実施に対しては、リチウム金属酸化物、例えばリチウムコバルト酸化物がカソードに対して提案され、グラファイトがアノードに対して提案される。イオン伝導体のための起点材料としては、例えば0.3乃至3μmの粒径を有するセラミック粉末、例えばリチウムガーネットが提案される。セラミック粉末は、例えばエアロゾルの形態でコーティングすべき表面へ被着させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012205931号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
グラファイトアノードを使用する場合の欠点は、リチウム金属をベースとしたアノードに比べて、それらの比較的僅かなエネルギ密度にある。リチウム金属をベースとしたアノードも、ガルバニ素子の製造において取り扱いが困難である。なぜならリチウムは、高い反応性を有し、完全に乾燥している環境でしか安定しないからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の開示
本発明では、ガルバニ素子の製造方法が提案されており、この方法は、以下のステップ、すなわち、
a)アノードに割り当てられた電流導体と、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータと、リチウムを含有したカソード材料を含むカソードと、該カソードに割り当てられた電流導体とをこの順に含む積層体を形成するステップと、
b)ガルバニ素子を充電するステップと、
を含み、
前記ガルバニ素子の充電の際に、前記アノードに割り当てられた電流導体と前記セパレータとの間に、金属系リチウムを含むアノードが形成される。
【0010】
前記積層体は、例えば第1のステップi)において、アノードに割り当てられた電流導体を設け、第2のステップii)において、アノードに割り当てられた電流導体上に、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータを被着し、次いで第3のステップにおいて、リチウムを含有したカソード材料を含むカソードを、前記セパレータ上に被着し、次いで最終ステップiv)において、カソードに割り当てられた電流導体を、当該カソード上に配置するように、形成されてもよい。
【0011】
積層体を製造する第1のステップi)では、アノードに割り当てられた電流導体が設けられる。この電流導体は、典型的には金属箔として実施され、この場合アノードに割り当てられた電流導体に対して、典型的には6μm乃至12μmの厚さを有する銅箔が使用される。また、銅層が被着される支持体として他の材料の使用も考えられるであろう。典型的には、金属系リチウムとの反応を阻止するために、電流導体のアノードに面する側に、表面処理が施される。
【0012】
積層体を製造する第2のステップii)では、イオン伝導性でかつ電気絶縁性のセパレータが、アノードに割り当てられた電流導体上に層の形態で被着される。この層は、好ましくは遮蔽されて実施される。セパレータの材料は、好ましくはセラミック材料であり、これは、当該方法の一実施形態においてはセラミック粉末の形態でエアロゾルコーティングを用いて被着される。好適な方法として例えば独国特許出願公開第102012205931号明細書(DE102012205931A1)が参照される。また、当業者に公知の他のコーティング方法、例えばPLD(Pulsed Laser Depositioning,パルスレーザ蒸着法)または類似の気相コーティング法などを使用することも考えられる。このようにして製造されたセパレータは、5%未満の残留多孔性を有する。このセパレータは、連続的な多孔性は有さず、それ故完全に密である。好ましくはこの密なセパレータ層は、5乃至25μmの厚さで実施され、特に好ましくは厚さは8乃至15μmの範囲にある。
【0013】
セパレータの材料は、好ましくはリチウム伝導性セラミックである。特にセパレータのための材料として、リチウムガーネットが適している。代替的に、セパレータの材料は、ペロブスカイト型(LLTO)Li3xLa2/3−xTiO、リン酸塩系(LATP)Li1+xTi2−xMx(PO4)3(但しM=Al,Ga,InまたはSc)、LiSおよびP並びにGeおよびSnなどのドーピング要素を含有した硫化物ガラス、およびアルジロダイト型LiPSX(但しX=I,ClまたはBr)から選択されてもよい。
【0014】
積層体を製造する第3のステップiii)では、セパレータ上に、リチウムを含有したカソード材料からなる層の形態のカソードが被着される。カソード材料は、例えばセパレータ上に被着されるペーストまたはスラリーに処理されてもよい。また当業者に公知の他のコーティング方法が使用されてもよい。
【0015】
カソード材料は、好ましくは、場合によりプレリチウム化された正極活物質と、導電性材料と、イオン伝導性カソライトの混合物である。正極活物質は、好ましい実施形態では、導電性を高めるために炭素との複合材料として存在していてもよい。
【0016】
この複合材料は、当該方法の一実施形態では、活物質としての硫黄粒子、導電性を高めるためのグラファイトおよび導電性カーボンブラック、並びに場合によっては例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)のような結着材からなる混合物を含む。当該方法のさらなる実施形態では、正極活物質は、SPAN(硫黄ポリアクリロニトリル)、グラファイトおよび/または導電性カーボンブラックおよびリチウムイオン伝導性ポリマーからなる混合物を含む。さらなる実施形態では、複合材料は、場合によっては炭素並びにLiFや例えばFe,Cu,Niなどの金属のナノ粒子からなる混合物を含む。さらなる実施形態では、複合材料は、場合によっては炭素並びにLiSや例えばFe,Cu,Niなどの金属のナノ粒子からなる混合物を含む。別の実施形態では、金属のプレリチウム化が既に行われ、複合材料は、炭素とリチウム含有金属水素化物、硫化物、フッ化物または窒化物からなる。
【0017】
フッ素の移動と共にカソライトとの反応、電流導体との反応または他のバッテリ成分との反応を阻止するために、複合材料は、好ましい実施形態では、例えば炭素または酸化物(例えばAl)またはフッ化物(例えばAlF)または酸化フッ化物からなるコーティングが施されている。コーティングはまた、含硫実施形態における多硫化物の拡散も阻止し得る。
【0018】
当該方法のさらなる実施形態では、正極活物質は、リチウム化された遷移金属酸化物、例えばLi(NiCoMn)O、LiMn(またはより高いLi含有量)、LiMO−LiMO(但しMは、例えばNi,Co,Mn,Mo,Cr,Fe,RuまたはV)、LiMPO(但しMは、例えばFe,Ni,CoまたはMn)、Li(Ni0,5Mn1,5)O(またはより高いLi含有量)、Li、LixVまたは当業者に公知の、ホウ酸塩、リン酸塩、フルオロリン、ケイ酸塩のようなさらなる正極活物質から選択される。
【0019】
当該方法のさらなる実施形態では、正極活物質は、例えばリチウム化された硫黄、例えばLiSから選択されており、ここでのこの材料は、溶解またはカソライトとの副反応を阻止するために、好ましくは炭素複合マトリックスに、例えば小球形態にカプセル化されている。
【0020】
当該方法の一実施形態では、カソライトは、ポリエチレンオキシド(PEO)ベースまたは大豆ベースの電解である。
【0021】
代替的にまたは付加的に、イオン伝導性のセパレータのために使用する材料をカソライトとして用いることも考えられる。なぜならこれらの材料も、良好なイオン伝導性を有しているからである。付加的に、カソライトは、さらに導電性を有していてもよいが、しかしながらこのことは、必ずしもそうである必要はない。
【0022】
当該方法の一実施形態では、導電性材料は、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、グラフェン、グラファイトまたはこれらの材料の少なくとも2つの組合せから選択される。
【0023】
積層体を製造する第4のステップiv)では、カソードに割り当てられた電流導体がカソード上に被着される。カソードに割り当てられた電流導体も金属箔として実施されてもよい。その場合にはカソードのために通常は13μm乃至15μmの間の厚さを有するアルミ箔が用いられる。また代替的に、アルミニウムでコーティングされた支持材料を、カソードに割り当てられた電流導体として用いることも考えられる。さらなる代替例では、カソードに割り当てられた電流導体のための材料を、当業者に公知のコーティング法、例えば蒸着法を用いて塗布することも考えられるであろう。
【0024】
さらに、ガルバニ素子に含まれる材料と、電流導体の材料、例えばアルミニウムとの間の反応を阻止するために、カソードに割り当てられた電流導体に表面処理を施すことも可能である。
【0025】
当該方法の実施形態に応じて、ステップi)乃至iv)は、別の順序で実施されてもよい。そのため例えば、ステップi)およびii)を別個に実施し、それと並行して、カソードに割り当てられた電流導体を設け、その上にカソードを被着し、続いて2つのコンポーネントをつなぎ合わせることも考えられる。
【0026】
それに続いて、ステップb)による充電が、最後のステップとして実行され得る。
【0027】
当該方法の第2のそして最後のステップb)では、当該方法のステップa)において生成されたガルバニ素子が、最初に電気的に充電される。ここではリチウムイオンが、正極活物質からカソード内へイオン伝導性のセパレータを貫通して移動し、金属系リチウムからなる層の形態で、アノードに割り当てられた電流導体の、セパレータに面する側に堆積される。これにより、金属系リチウムを含んだアノードが、アノードに割り当てられた電流導体とセパレータの間に形成される。
【0028】
さらに、セルパッケージと前述した方法によって製造されたガルバニ素子を含んだバッテリセルが提案されている。ここでのセルパッケージは、ソフトパックタイプのパッケージデザインであってもよいし、あるいはハードタイプのハウジングであってもよい。
【0029】
さらに、1つ以上のそのようなバッテリセルを含んだバッテリが提案される。
【0030】
当該明細書の枠内では、バッテリ若しくはバッテリセルとの概念は、日常語において一般的に使用されているものである。すなわちバッテリとの概念には、一次電池のみならず二次電池(蓄電池)も含まれるものである。同様に、バッテリセルの概念にも、一次セルのみならず二次セルも含まれる。
【発明の効果】
【0031】
発明の利点
本発明による方法によれば、より大きな容量と高いエネルギ密度を有するガルバニ素子を製造することが可能である。大きな容量は、金属系リチウムのアノードを使用することによって達成される。このアノードの高いエネルギ密度は、好ましくはイオン伝導性のセパレータと組み合わされ、そのため液状電解質を省くことが可能になる。好ましい実施形態では、イオン伝導性のセパレータとしてリチウムガーネットの使用が提案されており、これは特に高いイオン伝導性を保証し、それによって高いエネルギ密度の他にも、ガルバニ素子の高い効率を保証する。製造されたセパレータは、5%未満の残留多孔性を有している。この場合連続的な多孔性は存在しておらず、そのためこのセパレータは完全に密である。
【0032】
好ましくは、本発明の方法によれば、金属系リチウムをベースにしたアノードを使用するにもかかわらず、製造中の金属系リチウムの取り扱いは不要である。リチウムは、ガルバニ素子の製造時には、金属系リチウムに比べて安定し、かつ取り扱いも容易なリチウム化された正極活物質の形態で取り入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ステップb)による充電前のガルバニ素子。
図2】ステップb)による充電後のガルバニ素子。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1には、ガルバニ素子10が示されている。図1に示された状況では、当該方法のステップa)が実施される。ここでは、積層体の製造のためのステップi)乃至iv)が連続的に行われる。まずステップi)において、アノードに割り当てられた電流導体(集電体)12が設けられる。これは、例えば銅箔として形成される。アノードに割り当てられた電流導体12には、第2のステップii)において、セパレータ16が被着される。ここでは、アノードに割り当てられた電流導体12とセパレータ16の間に、第1の境界層31が形成される。セパレータ16のための出発材料としては、セラミック粉末が適しており、これは、例えばエアロゾルコーティングを用いて、アノードに割り当てられた電流導体12上に被着される。セラミック粉末としては、特にリチウムガーネットが適しており、これはリチウムイオンのための良好な伝導性を有している。セパレータ16は導電性ではない。そのためこれは電気絶縁体の機能も担っている。
【0035】
第3のステップiii)においては、カソード18がセパレータ16上に被着される。この場合には第2の境界層32が形成され、これは、セパレータ16の第1の境界層31とは反対側に存在する。カソード18は、リチウムを含有したカソード材料を含んでおり、これは好ましくは、正極活物質20、導電性材料およびカソライトからなる混合物を含む。このカソード材料は、当業者に公知の方法によって塗布されてもよい。例えばカソード材料は、ペーストの形態でセパレータ16上に塗布されてもよい。
【0036】
ステップiv)においては、カソードに割り当てられた電流導体22が、カソード18に被着される。ここでは第3の境界層33が形成され、これはカソード18の第2の境界層32とは反対側に存在する。カソードに割り当てられた電流導体22は、例えばアルミ箔として形成される。このアルミ箔は、例えばカソード18上への載置とそれに続く加圧とによってカソード18のカソード材料に結合されてもよい。
【0037】
ガルバニ素子10は、図1に示されている状況においては、まだ最初の充電がなされていないので、この素子はまだアノードを有していない。当該方法のステップb)による充電のために、2つの電流導体12、22は、電気的に接触接続されてそれらに電圧が印加される。これにより充電電流の通流が可能となる。充電電流に起因してリチウムイオンは、正極活物質20から溶出され、セパレータ16を通って、アノードに割り当てられた電流導体12の方向に移動し、そこでそれらは第1の境界層31の領域に堆積される。
【0038】
図2には、当該方法のステップb)による、ガルバニ素子10の最初の充電後の状態のガルバニ素子10が示されている。このガルバニ素子10は、ここにおいて、アノードに割り当てられた電流導体12と、アノードに割り当てられた電流導体12上にリチウムイオンの堆積によって形成されたアノード14と、セパレータ16と、正極活物質20を含むカソード18と、このカソードに割り当てられた電流導体22とを含む。
【0039】
当該方法のステップb)による、ガルバニ素子10の充電により、正極活物質20の一部は、非リチウム化され、正極活物質20から流出したリチウムイオンは、セパレータ16を通って、アノードに割り当てられた電流導体12の方向に移動する。そこでは、これらのリチウムイオンは、アノード14として金属系リチウムからなる層の形態で堆積されている。その結果、アノードに割り当てられた電流導体12と、セパレータ16との間の第1の境界層31が溶解され、新たに第4の境界層34と第5の境界層35が形成される。この第4の境界層34は、アノードに割り当てられた電流導体12と、アノード14との間に形成されており、相応に第5の境界層35は、アノード14とセパレータ16との間に形成されている。
【0040】
バッテリの放電時には、このプロセスが再び部分的に反転される。その際リチウムイオンは、負極活物質から流出し、セパレータ16を通って移動し、正極活物質20が再びリチウム化する。
【0041】
本発明はここで説明した実施形態やそこから派生する態様に限定されるものではない。それどころか特許請求の範囲によって示される範囲内では、当業者の範囲にある多くの変形形態が可能である。
図1
図2