特許第6469747号(P6469747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469747
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】連続熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/24 20060101AFI20190204BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20190204BHJP
   F27B 9/38 20060101ALI20190204BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20190204BHJP
   F27B 9/39 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   F27B9/24 E
   F27B9/04
   F27B9/38
   F27D7/06 A
   !F27B9/39
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-59047(P2017-59047)
(22)【出願日】2017年3月24日
(62)【分割の表示】特願2013-105208(P2013-105208)の分割
【原出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-129359(P2017-129359A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直仁
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−146448(JP,A)
【文献】 特公昭51−022888(JP,B2)
【文献】 特開2010−002056(JP,A)
【文献】 特開2010−210184(JP,A)
【文献】 特開昭58−052974(JP,A)
【文献】 特開昭51−082898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00−9/40
F27D 7/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が搬入される搬入室、前記搬入室より搬入された被処理物を熱処理する処理室、及び前記処理室で熱処理された被処理物が搬入される搬出室がこの順に形成された真空容器と、
前記真空容器内に配置され、被処理物を前記搬入室から前記処理室を通過して前記搬出室に搬送する搬送手段と、
前記真空容器の搬入室に連結された第1ロードロック室を有し、前記第1ロードロック室を不活性ガス雰囲気に置換した状態で当該第1ロードロック室と前記搬入室との間で被処理物を受け渡しする第1ロードロック装置と、
前記真空容器の搬出室に連結された第2ロードロック室を有し、前記第2ロードロック室を不活性ガス雰囲気に置換した状態で当該第2ロードロック室と前記搬出室との間で被処理物を受け渡しする第2ロードロック装置と、を備
前記搬送手段は無端の搬送ベルトを備えると共に、その全てが前記真空容器内に配置され、
前記搬送手段の少なくとも一部を覆う筒状のマッフルも前記真空容器内に配置され
前記搬送手段により搬送される被処理物を前記マッフルの外側から加熱するヒータが、前記真空容器内に配置されていることを特徴とする連続熱処理装置。
【請求項2】
前記真空容器には、前記搬送手段の搬送方向に沿って第1真空部、第2真空部および第3真空部がこの順に設けられ、
前記ヒータが、前記処理室の長手方向全体に亘って延びて配置され、
前記搬送方向に沿って延びるマッフルが、前記第2真空部を構成する容器の前記一方の端部および前記他方の端部から外側に延出するように配置され、
前記第1真空部を構成する容器および前記第3真空部を構成する容器は、各々前記マッフルの一方の端部と他方の端部、および前記搬送ベルトの一方の端部と他方の端部を各々囲むように、前記第2真空部を構成する容器の一方側と他方側に配置されている請求項1に記載の連続熱処理装置。
【請求項3】
前記真空容器は、内部に前記処理室が形成された断面円筒状の真空部を有し、
前記マッフルの軸線が前記真空部の軸線に対して偏心している請求項1もしくは2に記載の連続熱処理装置。
【請求項4】
前記ヒータの外側に備えられる断熱材が、前記真空容器内に配置されている請求項1ないし3のいずれか一項に記載の連続熱処理装置。
【請求項5】
前記マッフル、前記ヒータ及び搬送ベルトを冷却するベルト冷却部が一つのユニットとして一体化されている請求項1ないし4のいずれかに記載の連続熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物を連続的に搬送して熱処理を行う連続熱処理装置として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。特許文献1に記載された連続熱処理装置では、コンベアにより搬送される被処理物が、処理室内に設置されたヒータ及び冷却炉を順次通過することで、熱処理が行われるようになっている。前記処理室の入口及び出口には、処理室内を大気と遮断して不活性雰囲気に維持するために、パージガスをシャワー状に噴射することによってガスカーテンが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−219316号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の連続熱処理装置では、エアカーテンを形成するために噴射されるパージガスの使用量は、被処理物が通過する処理室の入口及び出口の開口面積にほぼ比例する。このため、前記入口及び出口の開口面積を大きくし、アルゴンガスなどの高価なガスをパージガスとして使用した場合、熱処理コストが嵩むという問題があった。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、ガスの使用量を抑制しながら不活性雰囲気下で被処理物の熱処理を行うことができる連続熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の連続熱処理装置は、被処理物が搬入される搬入室、前記搬入室より搬入された被処理物を熱処理する処理室、及び前記処理室で熱処理された被処理物が搬入される搬出室がこの順に形成された真空容器と、前記真空容器内に配置され、被処理物を前記搬入室から前記処理室を通過して前記搬出室に搬送する搬送手段と、前記真空容器の搬入室に連結された第1ロードロック室を有し、前記第1ロードロック室を不活性ガス雰囲気に置換した状態で当該第1ロードロック室と前記搬入室との間で被処理物を受け渡しする第1ロードロック装置と、前記真空容器の搬出室に連結された第2ロードロック室を有し、前記第2ロードロック室を不活性ガス雰囲気に置換した状態で当該第2ロードロック室と前記搬出室との間で被処理物を受け渡しする第2ロードロック装置と、を備、前記搬送手段は無端の搬送ベルトを備えると共に、その全てが前記真空容器内に配置され、前記搬送手段の少なくとも一部を覆う筒状のマッフルも前記真空容器内に配置され、前記搬送手段により搬送される被処理物を前記マッフルの外側から加熱するヒータが、前記真空容器内に配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、不活性ガス雰囲気に置換した状態の第1ロードロック室から真空容器の搬入室に被処理物を搬入し、真空容器の処理室で被処理物を熱処理した後、真空容器の搬出室から、不活性ガス雰囲気に置換した状態の第2ロードロック室に被処理物を搬出することができる。これにより、従来のように処理室の出入口にガスカーテンを形成することなく、処理室内を不活性雰囲気に維持することができる。これにより、ガスの使用量を抑制しながら不活性雰囲気下で被処理物を熱処理することができる。
【0007】
前記第1ロードロック装置は、前記第1ロードロック室と前記搬入室との間で被処理物を受け渡しする方向が、前記搬入室から前記処理室に被処理物を搬送する方向と交差して配置されていることが好ましい。この場合、処理室内の輻射熱が搬入室を介して第1ロードロック装置に熱影響を与えるのを抑制することができる。
【0008】
前記第2ロードロック装置は、前記第2ロードロック室と前記搬出室との間で被処理物を受け渡しする方向が、前記処理室から前記搬出室に被処理物を搬送する方向と交差して配置されていることが好ましい。この場合、処理室内の輻射熱が搬出室を介して第2ロードロック装置に熱影響を与えるのを抑制することができる。
【0009】
前記処理室には、前記搬送手段の少なくとも一部を覆う筒状のマッフルと、前記搬送手段により搬送される被処理物を前記マッフルの外側から加熱するヒータとが配置されていることが好ましい。この場合、被処理物がマッフル内を通過することで、被処理物をヒータにより連続的に熱処理することができる。
【0010】
前記搬送手段は、無端の搬送ベルトを備え、前記マッフル及び前記ヒータは、前記搬送ベルトの前記搬入室から前記搬出室に向かう往路部分に配置され、前記処理室には、前記搬送ベルトの前記搬出室から前記搬入室に戻る復路部分に、当該搬送ベルトを冷却するベルト冷却部が配置されていることが好ましい。
この場合、搬送ベルトの往路部分にマッフル及びヒータを配置するとともに、搬送ベルトの復路部分にベルト冷却部を配置したので、ヒータ及びベルト冷却部を搬送ベルトの往路部分に沿って直列に配置する場合に比べて、処理室を搬送ベルトの搬送方向に対してコンパクトに形成することができる。
【0011】
前記真空容器は、内部に前記処理室が形成された断面円筒状の真空部を有し、前記マッフルの軸線が前記真空部の軸線に対して偏心していることが好ましい。この場合、マッフルの軸線が真空部の軸線に対して偏心しているため、この偏心により広くなった処理室内のスペースに、ヒータの配線スペースを確保することができる。また、搬送ベルトの復路部分にベルト冷却部が配置されている場合は、搬送ベルトの復路部分やベルト冷却部等を設置するスペースを確保することができる。したがって、マッフルの軸線が真空部の軸線上にある場合に比べて、真空部を小型化することができる。
【0012】
前記連続熱処理装置は、前記マッフル、前記ヒータ及び前記ベルト冷却部が一つのユニットとして一体化されていることが好ましい。この場合、マッフル、ヒータ及びベルト冷却部を処理室内に容易に組み込むことができる。
【0013】
前記ベルト冷却部は、前記搬送ベルトに近接して配置され且つ冷却液が流れる流路が内部に形成された冷却本体部と、前記搬送ベルトが摺接するベルトスライダとを有することが好ましい。この場合、冷却本体部と搬送ベルトとの間にベルトスライダが配置されているため、搬送ベルトが冷却本体部に摺接することに起因して冷却本体部が摩耗するのを防止することができる。これにより、真空容器内において冷却本体部から冷却液が漏れるのを防止することができる。
【0014】
前記搬送手段は、前記搬送ベルトを案内支持するとともに、当該搬送ベルトがその幅方向に移動するのを規制する鍔部を軸方向両端部に有するガイドローラを備えることが好ましい。この場合、ガイドローラの鍔部によって搬送ベルトが蛇行するのを抑制することができるため、前記蛇行を抑制するために搬送ベルトの駆動機構を調整する作業が不要となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の連続熱処理装置によれば、ガスの使用量を抑制しながら不活性雰囲気下で被処理物の熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る連続熱処理装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1のA−A矢視断面図である。
図3】第1ロードロック装置及び第2ロードロック装置を示す平面図である。
図4】真空容器の処理室を示す図1のB−B矢視断面図である。
図5】ベルト冷却部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る連続熱処理装置の概略構成を示す平面図である。図1において、連続熱処理装置1は、例えば、被処理物である焼結金属をプレス加工する前に熱処理するものであり、この焼結金属は、磁石等の酸化し易い材料からなるため、材料の酸化を防止するためにアルゴンガス等の不活性ガスによる不活性雰囲気で熱処理が行われる。連続熱処理装置1は、真空容器2と、搬送手段3と、第1ロードロック装置4と、第2ロードロック装置5とを備えている。
【0018】
真空容器2は、図1の左側から順に、第1ロードロック装置4から被処理物が搬入される搬入室2Aが内部に形成された第1真空部21と、搬入室2Aより搬入された被処理物を熱処理する処理室2Bが内部に形成された第2真空部22と、処理室2Bで熱処理された被処理物が搬入される搬出室2Cが内部に形成された第3真空部23とを備えている。
すなわち、被処理物は、処理室2Bで熱処理された後に、処理室2Bから搬出され、搬出室2Cに搬入される。さらに被処理物は、搬出室2Cから搬出されると、第2ロードロック装置5へ搬入される。
第1真空部21には搬入口21aが形成され、第3真空部23には搬出口23aが形成されている。第2真空部22の長手方向両端部には、第1フランジ部22b及び第2フランジ部22cがそれぞれ形成されている。第1フランジ部22bには、第1真空部21に形成されたフランジ部21bが連結されている。また、第2フランジ部22cには、第3真空部23に形成されたフランジ部23bが連結されている。
【0019】
図2は、図1のA−A矢視断面図である。図1及び図2に示すように、搬送手段3は、真空容器2内に配置され、被処理物を搬入室2Aから処理室2Bを通過して搬出室2Cに搬送するものである。搬送手段3は、例えばメッシュベルトからなる無端の搬送ベルト31と、駆動ローラ32と、ガイドローラ33と、第1〜第5ローラ34〜38とを備えている。
【0020】
図2において、搬送ベルト31は、搬入室2Aに配置された第1ローラ34と、搬出室2Cに配置された第2ローラ35とに巻回されている。そして、搬送ベルト31は、搬入室2Aから搬出室2Cに向かって略水平に延びる往路部分31Aと、この往路部分31Aの下方において搬出室2Cから搬入室2Aに戻る復路部分31Bとを構成している。搬送ベルト31の復路部分31Bにおける第2ローラ35の近傍には、搬送ベルト31の搬送方向を斜め下向きから水平方向に転向する第3ローラ36が配置されている。これにより、処理室2Bにおいて、搬送ベルト31の往路部分31Aは、処理室2Bの上部位置を略水平に延びるとともに、搬送ベルト31の復路部分31Bは、処理室2Bの下部位置を略水平に延びるように配置されている。
【0021】
搬入室2Aにおいて、搬送ベルト31の復路部分31Bには、搬送ベルト31に駆動力を与える駆動ローラ32が配置されている。この駆動ローラ32の上方には一対の第4ローラ37及び第5ローラ38が回転自在に配置されている。駆動ローラ32は、搬入室2A内に配置されたモータ等の駆動源(図示省略)により回転駆動される。駆動ローラ32は、搬送ベルト31がベルト冷却部13(後述)で冷却される位置を通過したところに配置されている。これにより、搬送ベルト31が冷却された後に、駆動ローラ32等のベルト駆動機構と搬送ベルト31とを係合させることができるので、ベルト駆動機構に対する温度負荷を低減することができる。
また、搬入室2Aにおいて、第1ローラ34と第4ローラ37との間には、搬送ベルト31を案内支持するガイドローラ33が配置されている。ガイドローラ33の軸方向両端部には、搬送ベルト31がその幅方向(図2の紙面垂直方向)に移動するのを規制する環状の鍔部33aが設けられている。
【0022】
図3は、第1ロードロック装置4及び第2ロードロック装置5を示す平面図である。図3において、第1ロードロック装置4は、真空容器2の搬入室2Aとの間で被処理物を受け渡しするものであり、第1真空部21に取り付けられている。この第1ロードロック装置4は、搬入室2Aに連結された第1ロードロック室41aが内部に形成されたロードロック本体41と、ロードロック本体41と搬入室2Aとの間に配置されたゲート弁42と、ロードロック本体41に挿通されたシャフト43と、シャフト43の先端部に取り付けられたチャック44とを備えている。
【0023】
ロードロック本体41は、第1ロードロック室41aを大気状態から真空引きし、アルゴンガス等の不活性ガスで復圧することにより、不活性ガス雰囲気に置換することができるようになっている。第1ロードロック室41aの上側(図3の紙面垂直方向上側)には、図示しないゲートバルブが設けられており、このゲートバルブを開閉することで、第1ロードロック室41aに被処理物が搬入されるようになっている。
【0024】
ゲート弁42は、搬入室2Aの搬入口21aを開閉するものであり、第1ロードロック室41aが大気状態のときは、搬入口21aを閉鎖し、第1ロードロック室41aと搬入室2Aとの連通を遮断している。また、ゲート弁42は、第1ロードロック室41aが不活性ガス雰囲気に置換された状態のときは、搬入口21aを開放し、第1ロードロック室41aと搬入室2Aとを連通させるようになっている。
【0025】
シャフト43は、図示しない電動シリンダを伸縮作動させることにより、ロードロック本体41に対して軸方向に往復動可能に支持されている。チャック44は、シャフト43の先端部に固定されたチャック本体44aと、このチャック本体44aに取り付けられた一対の爪部材44bとを有し、この一対の爪部材44bにより被処理物を把持するようになっている。チャック44の作動流体は、マッフル6に充填される不活性ガスと同一の不活性ガスが用いられている。これにより、チャック44から作動流体が洩れても、マッフル6内を不活性ガス雰囲気に維持することができる。
【0026】
したがって、被処理物を搬入室2Aに搬入する際は、まず、被処理物を第1ロードロック室41a内に搬入する。具体的には、前記ゲートバルブを開けて第1ロードロック室41a内に被処理物を搬入し、チャック44により被処理物を把持するとともに前記ゲートバルブを閉じた状態とする。そして、第1ロードロック室41a内を大気状態から真空引きし、アルゴンガス等の不活性ガスで復圧することにより、不活性ガス雰囲気に置換した状態でゲート弁42を開放し、シャフト43を図中矢印a方向に移動させることによって、被処理物を第1ロードロック室41aから搬入室2Aの搬送ベルト31上に搬入することができる。
【0027】
図3に示すように、第1ロードロック装置4は、第1ロードロック室41aと搬入室2Aとの間で被処理物を受け渡しする方向(図中の矢印a方向)が、搬入室2Aから処理室2Bに被処理物を搬送する方向(図中の矢印b方向)と直交して配置されている。
【0028】
第2ロードロック装置5は、真空容器2の搬出室2Cとの間で被処理物を受け渡しするものであり、第3真空部23に取り付けられている。この第2ロードロック装置5は、搬出室2Cに連結された第2ロードロック室51aが内部に形成されたロードロック本体51と、ロードロック本体51と搬出室2Cとの間に配置されたゲート弁52と、ロードロック本体51に挿通されたシャフト53と、シャフト53の先端部に取り付けられたチャック54とを備えている。
【0029】
ロードロック本体51は、第2ロードロック室51aを大気状態から真空引きし、アルゴンガス等の不活性ガスで復圧することにより、不活性ガス雰囲気に置換することができるようになっている。第2ロードロック室51aの上側(図3の紙面垂直方向上側)には、図示しないゲートバルブが設けられており、このゲートバルブを開閉することで、第2ロードロック室51aから被処理物が搬出されるようになっている。
【0030】
ゲート弁52は、搬出室2Cの搬出口23aを開閉するものであり、第2ロードロック室51aが大気状態のときは、搬出口23aを閉鎖し、第2ロードロック室51aと搬出室2Cとの連通を遮断している。また、ゲート弁52は、第2ロードロック室51aが不活性ガス雰囲気に置換された状態のときは、搬出口23aを開放し、第2ロードロック室51aと搬出室2Cとを連通させるようになっている。
【0031】
シャフト53は、図示しない電動シリンダを伸縮作動させることにより、ロードロック本体51に対して軸方向に往復動可能に支持されている。チャック54は、シャフト53の先端部に固定されたチャック本体54aと、このチャック本体54aに取り付けられた一対の爪部材54bとを有し、この一対の爪部材54bにより被処理物を把持するようになっている。チャック54の作動流体は、マッフル6に充填される不活性ガスと同一の不活性ガスが用いられている。これにより、チャック54から作動流体が洩れても、マッフル6内を不活性ガス雰囲気に維持することができる。
【0032】
したがって、第2ロードロック室51a内を大気状態から、真空引きして不活性ガスで復圧することにより不活性ガス雰囲気に置換した状態でゲート弁52を開放し、シャフト53を図中上側に移動させることで、チャック54により搬送ベルト31上の被処理物を把持することができる。そして、この状態からシャフト53を図中下側(矢印d方向)に移動させることにより、搬送ベルト31上の被処理物を搬出室2Cから第2ロードロック室51aに搬出することができる。そして、この状態で、第2ロードロック室51aの上側にある前記ゲートバルブを開けることによって、第2ロードロック室51a内の被処理物を外部に排出することができる。
【0033】
第2ロードロック装置5は、第2ロードロック室51aと搬出室2Cとの間で被処理物を受け渡しする方向(図中の矢印d方向)が、処理室2Bから搬出室2Cに被処理物を搬送する方向(図中の矢印c方向)と直交して配置されている。なお、本実施形態では、矢印b方向と矢印c方向とは同一方向である。
【0034】
図2において、真空容器2の搬入室2A及び処理室2Bには、搬送ベルト31の往路部分31Aのほぼ全体を覆う筒状のマッフル6が配置されている。処理室2Bには、前記往路部分31Aにより搬送される被処理物をマッフル6の外側から所定温度(例えば800度)に加熱するヒータ7が、処理室2Bの長手方向(図の左右方向)全体に亘って延びて配置されている。マッフル6内には不活性ガスが充填され、搬送ベルト31で搬送される被処理物は、マッフル6内の不活性ガス雰囲気中で熱処理が行われる。
【0035】
図4は、真空容器2の処理室2Bを示す図1のB−B矢視断面図である。図4に示すように、真空容器2の第2真空部22は断面円筒状に形成されている。マッフル6は、断面四角筒状に形成されており、その軸線6aが第2真空部22の軸線22aに対して偏心した状態で配置されている。マッフル6の外周は前記ヒータ7により覆われている。ヒータ7は、断面円筒状に形成されており、マッフル6の軸線6aを中心として断面円筒形に形成されたヒータケース8内に断熱材9を介して配置されている。
【0036】
ヒータケース8の外周には、前記マッフル6を偏心させることで広くなった処理室2B内のスペース(図4の右下側のスペース)に、ヒータ7に電力供給する電源ケーブル等を接続するための一対の接続端子10が突設されている。また、ヒータケース8は、一対のブラケット11を介して処理室2Bの下部に配置された断面L字状の取付部材12の水平部12aに固定されている。
【0037】
一対の接続端子10は、電気絶縁の観点から、周方向に所定間隔をあけて配置されている。また、ヒータ7の設置数が増加すると、それに応じて接続端子10や前記電源ケーブルの個数も増えることになる。したがって、処理室2B内には、複数の接続端子10を所定間隔毎に配置するためのスペース、及び複数の電源ケーブルの配線スペースが予め形成されている。
【0038】
図2及び図4に示すように、真空容器2の処理室2Bには、搬送ベルト31の復路部分31Bの下方に、搬送ベルト31を水等の冷却液によって冷却するベルト冷却部13が、処理室2Bの長手方向全体に亘って延びて配置されている。
図5は、ベルト冷却部13を示す拡大断面図である。図5に示すように、ベルト冷却部13は、搬送ベルト31に近接して配置された冷却本体部14と、冷却本体部14に取り付けられたベルトスライダ15とを有する。冷却本体部14は、搬送ベルト31の幅方向に沿って並列に配置された複数(ここでは4個)の断面四角筒状の配管14a〜14dを一体化したものである。これら複数の配管14a〜14dは、内部に冷却液が流れる流路として構成されている。
【0039】
前記複数の配管14a〜14dは、冷却液を排出する排出口14a1,14d1が形成された第1配管14a及び第4配管14dと、冷却液を供給する供給口14b1,14c1が形成された第2配管14b及び第3配管14cとからなる。第1配管14a及び第2配管14bは、長手方向(搬送ベルト31の搬送方向)の所定箇所において互いの流路を連通する連通口(図示省略)が形成されている。また、第3配管14c及び第4配管14dは、長手方向の所定箇所において互いの流路を連通する連通口(図示省略)が形成されている。前記排出口14a1,14d1には、冷却液を排出する排出ノズル16がそれぞれ接続され、前記供給口14b1,14c1には、冷却液を供給する供給ノズル17がそれぞれ接続されている。
【0040】
ベルトスライダ15は、ステンレス鋼等の耐熱性の高い材質により形成されており、冷却本体部14の上面に固定された平板状の摺接部15aを有している。この摺接部15aの上面には、搬送ベルト31の復路部分31Bの下面(搬送面)が摺接するようになっている。これにより、前記復路部分31Bは、各ベルトスライダ15の摺接部15aを介して、各配管14a〜14d内を流れる冷却液によって冷却される。また、連続熱処理装置1の使用を繰り返しても、冷却本体部14が摩耗するのを、ベルトスライダ15によって防止することができる。すなわち、ベルトスライダ15が搬送ベルト31と摺接して摩耗した場合、ベルトスライダ15のみを交換すればよく、メンテナンス等が煩雑になり易い冷却本体部14の摩耗を防ぐことができる。
【0041】
ベルト冷却部13は、冷却本体部14の下面に固定された平板状の支持部材18を介して前記取付部材12の垂直部12bに取り付けられている。これにより、図4に示すように、処理室2Bに配置されるマッフル6、ヒータ7、ヒータケース8、断熱材9、及びベルト冷却部13は、共用の取付部材12に取り付けられることで、一つのユニットとして一体化されている。
【0042】
連続熱処理装置1を組み付ける際には、まず、前記一体化したユニットを、真空容器2の第2真空部22に挿入する。そして、このユニットに、ベルト31を装填するとともに、搬送手段3の駆動ローラ32等の各構成部材を取り付ける。その後、図2に示すように、第2真空部22の第1フランジ部22bに第1真空部21のフランジ部21bを連結するとともに、第2真空部22の第2フランジ部22cに第3真空部23のフランジ部23bを連結し、第1〜第3真空部21〜23を一体化する。そして最後に、第1及び第2ロードロック装置4,5を、第1真空部21及び第3真空部23にそれぞれ取り付ける。
以上のように、マッフル6、ヒータ7及びベルト冷却部13等を予め一体化したユニットを真空容器2内に装着することによって連続熱処理装置1を組み立てることができるので、装置の組み立て作業が煩雑になるのを防止することができる。
【0043】
本実施形態の連続熱処理装置1によれば、不活性ガス雰囲気に置換した状態の第1ロードロック室41aから真空容器2の搬入室2Aに被処理物を搬入し、真空容器2の処理室2Bで被処理物を熱処理した後、真空容器2の搬出室2Cから不活性ガス雰囲気に置換した状態の第2ロードロック室51aに被処理物を搬出することができる。これにより、従来のように処理室の出入口にガスカーテンを形成することなく、処理室2B内を不活性雰囲気に維持することができる。これにより、ガスの使用量を抑制しながら不活性雰囲気下で被処理物を熱処理することができる。
【0044】
また、第1ロードロック装置4は、第1ロードロック室41aと搬入室2Aとの間で被処理物を受け渡しする方向が、搬入室2Aから処理室2Bに被処理物を搬送する方向と交差して配置されているため、処理室2B内のヒータ7による輻射熱が搬入室2Aを介して第1ロードロック装置4に熱影響を与えるのを抑制することができる。
【0045】
また、第2ロードロック装置5は、第2ロードロック室51aと搬出室2Cとの間で被処理物を受け渡しする方向が、処理室2Bから搬出室2Cに被処理物を搬送する方向と交差して配置されているため、処理室2B内のヒータ7による輻射熱が搬出室2Cを介して第2ロードロック装置5に熱影響を与えるのを抑制することができる。
【0046】
また、処理室2Bには、搬送ベルト31の往路部分31Aを覆う筒状のマッフル6と、搬送ベルト31により搬送される被処理物をマッフル6の外側から加熱するヒータ7とが配置されているため、被処理物がマッフル6内を通過することで、被処理物をヒータ7により連続的に熱処理することができる。
また、マッフル6の軸線6aが第2真空部22の軸線22aに対して偏心しているため、この偏心により広くなった処理室2B内のスペースに、ヒータ7に電力供給する電源ケーブル等の配線スペースを確保することができる。また、搬送ベルト31の復路部分31A、ベルト冷却部13等を設置するスペースを確保することができる。したがって、マッフル6の軸線6aが第2真空部22の軸線22a上にある場合に比べて、第2真空部22を小型化することができる。
【0047】
また、搬送ベルト31の往路部分31Aにマッフル6及びヒータ7を配置するとともに、搬送ベルト31の復路部分31Bにベルト冷却部13を配置したので、ヒータ7及びベルト冷却部13を搬送ベルト31の往路部分に沿って直列に配置する場合に比べて、処理室2Bを搬送ベルト31の搬送方向に対してコンパクトに形成することができる。
また、マッフル6、ヒータ7及びベルト冷却部13が一つのユニットとして一体化されているため、マッフル6、ヒータ7及びベルト冷却部13を処理室2B内に容易に組み込むことができる。
【0048】
また、ベルト冷却部13は、冷却本体部14と搬送ベルト31との間に、当該搬送ベルト31が摺接するベルトスライダ15が配置されているため、搬送ベルト31が冷却本体部14に摺接することに起因して冷却本体部14が摩耗するのを防止することができる。これにより、真空容器2内において冷却本体部14から冷却液が漏れるのを防止することができる。
また、搬送手段3は、ガイドローラ33の鍔部33aによって搬送ベルト31が蛇行するのを抑制することができるため、前記蛇行を抑制するために搬送ベルト31の駆動機構を調整する作業が不要となる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における第1ロードロック装置4(第2ロードロック装置5)は、第1ロードロック室41a(第2ロードロック室51a)と搬入室2A(搬出室2C)との間で被処理物を受け渡しする方向が、搬入室2A(搬出室2C)から処理室2Bに被処理物を搬送する方向と直交して配置されているが、処理室2B内の輻射熱による熱影響を抑制することができれば、90度以外の所定角度で交差するように配置されていてもよい。また、上記実施形態におけるマッフル6は、搬送ベルト31の一部である往路部分31Aを覆っているが、往路部分31Aと復路部分31Bとを覆うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 連続熱処理装置
2 真空容器
2A 搬入室
2B 処理室
2C 搬出室
3 搬送手段
4 第1ロードロック装置
5 第2ロードロック装置
6 マッフル
7 ヒータ
13 ベルト冷却部
14 冷却本体部
15 ベルトスライダ
22 第2真空部(真空部)
31 搬送ベルト
31A 往路部分
31B 復路部分
33 ガイドローラ
33a 鍔部
41a 第1ロードロック室
51a 第2ロードロック室
図1
図2
図3
図4
図5