【実施例】
【0108】
実施例1:バイオマーカー解析のための材料
本発明の実施の際に使用する試薬の具体例としては、炭酸水素ナトリウム(Sigma カタログ番号:C−3041)、ブロッキング緩衝液(Startingblock T20−TBS)(Pierce カタログ番号:37543)、Tween20を含むトリス緩衝生理食塩水 (TBST;Sigma カタログ番号:T−9039)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Sigma カタログ番号:P−3813);Tween20(Sigma カタログ番号:P5927);Ultra TMB ELISA(Pierce カタログ番号:34028);およびNunc maxisorp ELISAプレート(Fisher)が挙げられる。モノクローナルおよびポリクローナルのGFAPおよびUCHL1抗体は、自社製またはSanta Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CAから入手したものである。αIIスペクトリン、GFAPおよび分解産物、ならびにMAP2、MBP、ニューロファシン、IgGおよびIgMに対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CAから入手可能である。
【0109】
完全長タウに対する抗タウ抗体はSanta Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CAから購入する。タウ−BDPに特異的な抗体を作製するために、カスパーゼ−3生成C末端タウ分解産物(タウBDP−45K)の配列である合成ペプチド(Cys−C
6−SIDMVD−
COOH)(配列番号1)(Chungら,2001)、およびカルパイン仲介性タウBDP−35KのN末端を表す第二のペプチド(
NH2−KDRTGN−C
6−Cys)(配列番号2)をペプチド合成による特別注文品である(California Peptide、Napa、CA)。後のスルホ連結架橋試薬(Pierce)を用いたペプチドとキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質とのカップリングのために、C
6リンカーおよびN末端システインを導入する。カップリング効率の決定後に、ペプチドを透析して濃縮する。注射により2mgのコンジュゲートタンパク質でウサギを免疫化する。3ヵ月後に血清試料を採取し、スルホ連結樹脂(Pierce)とカップリングした、試料に抗体産生させた合成ペプチドを用いてアフィニティー精製する。次いで、アフィニティー精製抗体をTBS(20mMトリスHCl、pH7.4、150mM NaCl)に対して透析し、−20℃、50%グリセロール中での保存のために濃縮する。
【0110】
数多くの抗体サブタイプに対する標識がInvitrogen社、Carlsbad、CAから入手可能である。生物試料中のタンパク質濃度を、アルブミン標準品によるビシンコニン酸微小タンパク質アッセイ(Pierce Inc.、Rockford、IL、USA)を用いて決定する。その他のすべての必要な試薬および材料は当業者に公知であり、容易に確認できる。
【0111】
実施例2:バイオマーカーアッセイの開発
抗バイオマーカー特異的ウサギポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびに抗原を研究室で作製するか、または市販のものを購入する。標的バイオマーカーを検出するための抗体の反応特異性を判定するために、既知量の単離されたまたは部分的に単離されたバイオマーカーを解析するか、または組織パネルをウエスタンブロットによりプローブする。ELISAプレートに結合させた組換えバイオマーカータンパク質による間接ELISAを用いて、アッセイで使用する抗体の最適濃度を決定する。マイクロプレートをウサギポリクローナル抗ヒトバイオマーカー抗体でコーティングする。最大シグナルのウサギ抗ヒトバイオマーカー抗体濃度を決定した後、間接ELISAの検出下限を各抗体に関して決定する。適当な希釈試料を、ウサギポリクローナル抗ヒトバイオマーカー抗体と2時間インキュベートし、次いで洗浄する。次いで、ビオチン標識モノクローナル抗ヒトバイオマーカー抗体を加え、捕捉されたバイオマーカーとインキュベートする。十分に洗浄した後、ストレプトアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを加える。1時間のインキュベーションおよび最後の洗浄段階の後、残ったコンジュゲートを過酸化水素テトラメチルベンザジンの基質と反応させる。酸性溶液の添加により反応を停止させ、得られた黄色反応産物の吸光度を450メートルで測定する。吸光度はバイオマーカーの濃度に比例する。較正物質試料を用いて、吸光度値をバイオマーカー濃度の関数としてプロットすることにより標準曲線を作成し、この標準曲線を用いて未知試料の濃度を決定する。
【0112】
実施例3:TBIのインビボモデル:
制御式皮質衝撃(CCI)装置を用いて、既に記載されている通りにラットでTBIモデルを作製する(Pikeら,1998)。成体雄(280〜300g)Sprague−Dawleyラット(Harlan:Indianapolis、IN)を、1:1O
2/N
2Oのキャリヤガス中4%のイソフルランで麻酔し(4分)、同じキャリヤガス中2.5%のイソフルランで維持する。中核体温を直腸内サーミスタプローブにより継続的にモニターし、ラットの下に調節可能な温度制御式加温パッドを敷いて37±1℃に維持する。ラットを腹臥位で定位フレームに載せ、耳棒および切歯棒で固定する。正中頭蓋切開および軟組織反転を行った後、ブレグマとラムダの中間部分、中央縫合のすぐ横で片側(衝撃部位と同側)開頭(直径7mm)を行う。皮質を覆う硬膜はそのままにしておく。直径5mmのアルミニウム製インパクタ先端部(空気圧シリンダー内に収納されている)を用いて、圧縮1.6mmおよび休止時間150ms、3.5m/秒の速度で右側(同側)皮質に衝撃を与えて脳外傷を生じさせる。偽損傷コントロール個体には同じ外科処置を行うが、衝撃損傷は与えない。適切な損傷前および損傷後を行って、Florida大学の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)記載のガイドラインおよび実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)で詳述されている米国国立衛生研究所ガイドラインを確実に遵守する。さらに、動物および動物実験に関連した動物福祉法(Animal Welfare Act)ならびにその他の連邦の制定法および規制に従って、また「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals,NRC Publication,1996年版」に記載されている原則に忠実に従って研究を行う。
【0113】
実施例4:中大脳動脈閉塞(MCAO)損傷モデル:
イソフルラン麻酔(導入チャンバを介した5%イソフルラン、次いでノーズコーンを介した2%イソフルラン)の下で温置し、正中頸部切開によりラットの右側総頸動脈(CCA)を外頸動脈および内頸動脈(ECAおよびICA)分岐レベルで露出させる。ICAを吻側に翼口蓋部の分岐までたどり、ECAを結紮して、その舌部および上顎部の分岐を切る。次いで、ECA断端の切開部分から3−0ナイロン縫合糸をICAに挿入し(血管壁を通して縫合糸の進路を視覚的に監視する)、前大脳動脈の狭窄部で詰まり中大脳動脈の起点を塞ぐまで、頸動脈管内を頸動脈分岐から約20mm進める。次いで皮膚の切開を閉じ、血管内の縫合糸を所定の位置で30分または2時間放置する。ラットを短時間、再び麻酔した後、縫合糸を引き抜いて再灌流させる。偽MCAO手術では、同じ手順に従うが、糸は内外頸動脈分岐から10mmだけ進め、ラットを屠殺するまで所定の位置に放置する。すべての外科的処置の間、保温毛布(Harvard Apparatus、Holliston、MA、U.S.A.)でマウスを37±1℃に維持した。各実験の終わりに、ラット脳が剖検時に、くも膜下出血の病理学的証拠を示した場合、それを実験から除外することに留意することが重要である。適切な損傷前および損傷後の管理を行って、動物の管理と使用のガイドラインをすべて確実に遵守する。
【0114】
実施例5:組織および試料の調製:
損傷後の適当な時点(2、6、24時間および2、3、5日)でマウスを麻酔し、断頭により直ちに屠殺する。脳を素早く取り出し、氷冷PBSで洗浄して二等分する。右半球(衝撃部位周辺の大脳皮質および海馬)を素早く解剖し、氷冷PBSで洗浄し、液体窒素で急速凍結させ、使用するまで−80℃で保管する。免疫組織化学用に、脳を乾燥氷スラリーで急速に凍結させ、SUPERFROST PLUS GOLD(登録商標)(Fisher Scientific)スライド上にクリオスタットで切片(20μm)を作製し、次いで使用するまで−80℃で保管する。左半球では、右側と同じ組織を採取した。ウエスタンブロット解析用に、脳試料を乾燥氷上で小型の乳鉢と乳棒のセットを用いて微粉末に粉砕する。次いで、粉砕した脳組織粉末を、50mMトリス(pH7.4)、5mM EDTA、1%(v/v)TritonX−100、1mM DTT、1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Biochemicals)の緩衝剤中、4℃で90分間、溶解させた。次いで、脳ライセートを4℃で5分間、15,000×gで遠心分離して清澄化し、不溶性の残骸を除去して、急速凍結させ、使用するまで−80℃で保管する。
【0115】
ゲル電気泳動およびエレクトロブロットでは、蒸留H
2O中0.25Mトリス(pH6.8)、0.2M DTT、8%SDS、0.02%ブロモフェノールブルーおよび20%グリセロールを含有する2×ローディング緩衝液によるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)用に、清澄化したCSF試料(7μl)を調製する。1レーン当たり20マイクログラム(20μg)のタンパク質を、10〜20%トリス/グリシンゲル(Invitrogen、カタログ番号EC61352)上で、130Vで2時間、SDS−PAGEにより通常通りに分離する。電気泳動後、分離されたタンパク質を、セミドライ転写ユニット(Bio−Rad)で、39mMグリシン、48mMトリス−HCl(pH8.3)および5%メタノールを含有する転写緩衝液中、外界温度下、20Vの一定電圧で2時間、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に横方向に転写する。電気転写後、TBS中5%の脱脂乳および0.05%Tween−2(TBST)中、外界温度で膜を1時間ブロッキングし、次いで、製造者の推奨通りに、4℃で一晩、5%脱脂乳を含むTBST中1:2000の希釈の一次モノクローナルGFAP抗体とインキュベートする。この後、TBSTで3回洗浄し、外界温度でビオチン化連結二次抗体(Amersham、カタログ番号RPN1177v1)と2時間インキュベートし、ストレプトアビジンコンジュゲートアルカリホスファターゼ(BCIP/NBT試薬:KPL、カタログ番号50−81−08)と30分間インキュベートする。多色の分子量標準品(Amersham、カタログ番号RPN800V)を用いて、インタクトのバイオマーカータンパク質の分子量を評価する。コンピュータ支援によるデンシトメトリースキャン(Epson XL3500スキャナ)およびImageJソフトウェア(NIH)による画像解析により、インタクトのGFAP、UCHL1またはSBDPタンパク質レベルの半定量的評価を行う。
【0116】
実施例6:ニューロン損傷のバイオマーカーとしての分解産物
実施例3に記載のラットでのCCIの後、実施例5の通りにCSFを調製する。抗GFAP抗体を用いたウエスタンブロット法により、CCI損傷後に経時的なGFAPの増加が明らかになっている(
図1A、1B)。同様に、GFAPのレベルがCCI後に経時的に増加し、損傷後14日目に統計的に有意な最大レベルとなる(
図1C)。ラット同側皮質におけるGFAPおよびGBDPのレベルも測定し、偽(1つまたは複数)処置個体に比べて増加したレベルが示される(
図2)。これらのデータは、重度TBIと同様の、CCI後のCSFおよび神経組織におけるGFAPおよびGBDPの増加を示している。
【0117】
ニューロンにおけるGFAPの分解は損傷に特異的である。実施例3の偽処置個体のラット脳組織ライセートおよび非TBIの死体由来のヒト脳試料を、2つのレベルのカルパイン−2およびカスパーゼ−3で処置し、次いで、GFAPおよびGBDPまたはSBDPに対する一次抗体を用いてウエスタンブロットを行う。
図3は、カルパイン−2によるラット脳ライセートのインビトロ消化が、消化ヒト脳ライセートと重なり合うGBDPを示すことを示している。ラット脳のカスパーゼ−3切断により、CCI処置ラットと同様のGBDPが明らかになった(
図3)。
【0118】
同様に、CCI後のラットCSFにおいて、損傷後24時間および7日後の両方でSBDP150/145のレベルが増加する(
図3B)。
【0119】
混合したグリア/ニューロン培養物のライセートを、各種処置後にGBDPの存在に関して調べる。培養物を得るために、1日齢のSprague−Dawleyラット脳から大脳皮質細胞を採取し、Nathら,J.Neurochem.,1998;71:186−195の方法に従って、ポリ−L−リジンでコートした6ウェル培養プレート(Erie Scientific、Portsmouth、NH、USA)上に4.36×105細胞/mLの密度で播く。培養物を、加湿恒温器内で、37℃、10%CO
2の雰囲気中、10%ウシ胎仔血清を含むDulbeccoの改変Eagle培地(DMEM)で維持する。培養の5日後、培地を5%ウマ血清を含むDMEMに交換する。それ以降の培地交換は週3回行う。アストログリアが形態学的に成熟したニューロンの下にコンフルエントな単層を形成した10〜11日目に、インビトロの実験を行う。
【0120】
未処置コントロールに加えて、以下の条件を調べた:メトトレキサート(MTX)(1μM);カルパインおよびカスパーゼ−3を24時間活性化するアポトーシス誘導剤スタウロスポリン(STS)(0.5μM;Sigma,St.Louis,MO)(Zhangら,2009);カスパーゼ主体の攻撃としてのCa
2+キレート剤エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(5mM;Sigma)で最大24時間(Waterhouseら,1996;Chiesaら,1998;Mizunoら,1998;McGinnisら,1999;Zhangら,2009)。薬理学的介入では、STS、EDTAまたはMTX攻撃の1時間前にカルパイン阻害剤SNJ1945(Senju Pharmaceuticals、Kobe、Japan)または汎カスパーゼ阻害剤Z−VAD(OMe)−FMK(R&D、Minneapolis、MN)で培養物を前処置した(Shirasakiら,2005;3Okaら2006;Koumuraら,2008)。
【0121】
MTX処置した培養細胞は、SJA処置を用いたGBDPの減少およびVAD処置による阻害の欠如により示されるように、GFAPのカルパイン特異的切断を示した(
図4)。これに対しEDTA処置では、SJA処置による効果がないこと、およびVAD処置によるGBDPがないことで示されるように、カスパーゼ仲介によるGDBP形成が生じる。アポトーシス誘導剤STSでの処置では、カルパインおよびカスパーゼの両方による均衡のとれたGFAP切断が示された。
【0122】
神経細胞においてカルパインおよびカスパーゼにより仲介されるGFAPの切断部位を特定するために、異なるレベルのカルパインまたはカスパーゼによる切断を組換えGFAPに対して行う。
図5は、クーマシーブルー染色、組換えGFAPに関連したC末端タグの検出により検出されたGFAP消化を示し、また抗GFAP抗体でのウエスタンブロット法により、カルパインおよびカスパーゼの両方による良好な切断を示している。クーマシーブルー染色したゲルからGBDPバンドを切り出し、N末端配列決定を行うことにより、カルパイン2によるAsn59(GALN
*59AGFKETRASERAE)(配列番号3)での切断により、新たなC−末端VDFSLAGALN−COOH(配列番号139)を有するGBDPおよび新たなN−末端NH
2−AGFKETRASE(配列番号140)を有するGBDP、ならびにThr383(TIPVQT
*383FSNLQIRET)(配列番号4)での切断により、新たなC−末端ENRITIPVQT−COOH(配列番号141)を有するGBDPおよび新たなN−末端NH
2−FSNLQIRETS(配列番号142)を有するGBDPが生成され、組換えヒトGFAPでは全体として49〜38kDaの間の複数のGBDPが生成されることが明らかになっている。
【0123】
CCIの48時間後のラット海馬におけるタウの分解産物が、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,456,027号で同定されている。CCI損傷による実験的TBI後に、そのラットタウが切断されて分子量40〜55kDa、36kDa、26kDa、18kDaおよび13kDaのTBDPが生成されることが示された。切断部位とニューロン損傷の特定タイプとの関連性は不明であった。タウにおける切断部位は、カルパイン2またはカルパイン1を用いた組換えラットタウのインビトロ消化により同定される。消化後、SDS−PAGEにより切断フラグメントを分離し、クーマシーブルーで染色し、バンドを切り出して、N末端配列決定を行う。配列の結果を既知のラットタウの配列と比較する。完全長ラットタウをカルパインおよびカスパーゼによる切断部位と共に
図6に示す。
【0124】
【表6】
【0125】
カルパインは、ラットタウをLys43(LK
*43ESPPQPPADD(配列番号6))で切断して、新たなC−末端QEGDMDHGLK−COOH(配列番号115)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−QEGDMDHGLK(配列番号116)を有するTBDPを生成し;Ser120(AGHVTQARMVS
*120KDRTGNDEK(配列番号7)で切断して、新たなC−末端VTQARVAGVS−COOH(配列番号117)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−KDRTGNDEKK(配列番号118)を有するTBDP、Val220(PTREPKKVAVV
*220RTPPKSPSAS(配列番号8))で切断して、新たなC−末端TREPKKVAVV−COOH(配列番号119)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−RTPPKSPSAS(配列番号120)を有するTBDPを生成し;Arg370(KIETHKLTFR
*370ENAKAKTDHGAEI(配列番号9))(
図5)で切断して、新たなC−末端KIETHKLTFR−COOH(配列番号121)を有するBDPおよび新たなN−末端NH
2−ENAKAKTDHG(配列番号122)を有するBDPを生成する。カスパーゼ−3は、ラットタウをAsp412(SSTGSIDMVD
*412SPQLATLA(配列番号10))で切断して、新たなC−末端SSTGSIDMVD−COOH(配列番号123)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−SPQLATLADE(配列番号124)を有するTBDPを生成する。
【0126】
ヒトタウは、同様の位置でカルパインおよびカスパーゼにより切断される。表7はヒトタウにおける切断位置を示す。
【0127】
【表7】
【0128】
ヒトTBDPはカルパイン切断によりヒトタウから生成され、Ser129(AGHVTQARMVS
129KSKDGTGSDD(配列番号12))での切断で、新たなC−末端GHVTQARMVS−COOH(配列番号125)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−KSKDGTGSDD(配列番号126)を有するTBDPが生成され、Val229(PTREPKKVAVV
*229RTPPKSPSSA(配列番号13))での切断で、新たなC−末端TREPKKVAVV−COOH(配列番号127)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−RTPPKSPSSA(配列番号128)を有するTBDPが生成され、Gly157(GKTKIATPRG
*157AAPPGQKGQANATRITA(配列番号14))での切断で、新たなC−末端GKTKIATPRG−COOH(配列番号129)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−AAPPGQKGQA(配列番号130)を有するTBDPが生成され、Lys44((LK
*44ESPLQTPTED(配列番号15))での切断で、新たなC−末端QEGDTDAGLK−COOH(配列番号131)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−ESPLQTPTED(配列番号132)を有するTBDPが生成され、Arg379(KIETHKLTFR
*379ENAKAKTDHGAEI(配列番号16))での切断で、新たなC−末端KIETHKLTFR−COOH(配列番号133)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−ENAKAKTDHG(配列番号134)を有するTBDPが生成される。ヒトタウにおけるカスパーゼ切断部位は、新たなC−末端GTYGLGDRKD−COOH(配列番号135)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−QGGYTMHQDQ(配列番号136)を有するTBDPを生成するAsp25(GDRKD
*25QGGYTMHQD(配列番号17))、ならびに新たなC−末端SSTGSIDMVD−COOH(配列番号137)を有するTBDPおよび新たなN−末端NH
2−SPQLATLADE(配列番号138)を有するTBDPを生成するAsp421(SSTGSIDMVD
*421SPQLATLA(配列番号18))である。ヒトタウの全体的なニューロン損傷切断経路を
図6に示す。
【0129】
タウBDP−45K(カスパーゼ)およびタウBDP−35K(カルパイン)に対して抗体を産生させる。カスパーゼ−3により生成されたタウBDP−45KのタウC末端に基づくペプチド(Cys−C
6−SIDMVD)(配列番号1)(Chungら,2001)およびカルパイン仲介性タウBDP−35Kの新たなN末端に基づく別のペプチド(KDRTGNDEK−C
6−Cys)(配列番号19)は、特別注文品である(California Peptide、Napa、CA)。TBDPに特異的な抗体に対するその他の典型的なエピトープを表8に示す。
【0130】
【表8】
【0131】
後のスルホ連結架橋試薬(Pierce)を用いたペプチドとキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質とのカップリングのために、C
6リンカーおよびN末端システインを導入する。カップリング効率の決定後に、ペプチドを透析して濃縮し、2mgのコンジュゲートタンパク質を2匹のウサギへの複数回の抗原注射に使用する。3ヵ月後にウサギから血清試料を採取し、スルホ連結樹脂(Pierce)とカップリングした同じ合成ペプチドを用いてアフィニティー精製する。アフィニティー精製抗体をTBS(20mMトリスHCl、pH7.4、150mM NaCl)に対して透析した後、濃縮し、50%グリセロール中、−20℃で保存する。
【0132】
特定の切断産物に対するさらなる抗体も作製する。使用される抗原には以下のものが含まれる:ヒトおよびラットにおけるTBDP−45K(カスパーゼ)に特異的な抗体を作製するためのCys−eAhx−SSTGSIDMVD−OH(配列番号40);ヒトおよびラットTBDP−14K−20K(カルパイン)に特異的な抗体を作製するためのCys−C6−PTREPKKVAVV(配列番号41);ヒトTBDP−35K(カルパイン)に対するNH2−KSKDGTGSDD−C6−Cys(配列番号42);ヒトTBDP−14kに対するESPLQTPTED−C6(配列番号43);およびヒトTBDP−10kC末端に対するCys−C6−HVTQARMVS(配列番号44)。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2005/0260697号に示されるその他の抗体も作製する。
【0133】
ラットタウタンパク質(100ng)をカルパイン−2またはカスパーゼ−3で消化する。得られたフラグメントをSDS−PAGEにより分離し、産生された抗体でのウエスタンブロットによりプローブする。カルパイン−1および−2が共にタウを消化して、いくつかの免疫反応性のフラグメント(42kDa、35kDaおよび15kDa)を生じるのに対し、カスパーゼ−3消化は48kDa/45kDaの限られた一対のフラグメントのみを生じる(
図7)。タウBDP−35K(カルパイン)およびタウBDP−45K(カスパーゼ)抗体によるプロービングにより、抗体のフラグメント特異性およびインタクトタンパク質またはその他のフラグメントとの交差反応性がないことが確認される。
【0134】
TBDP抗体をヒトタウBDPとの交差反応に関して解析する。精製ヒトタウを未処置、カルパイン−2処置またはカスパーゼ−3処置に供してTBDPを生成させる。これらを、上記のMTXまたはEDTA処置したラット大脳皮質培養細胞(CTX)、ならびに未処置またはTBIの同側海馬(IH)または同側皮質(IC)モデルと比較する。
図8に示すように、得られたフラグメントをSDS−PAGEにより分離し、抗全タウモノクローナル抗体でプローブする。ヒトタウのカルパインまたはカスパーゼでの処置により、数多くの分解産物が生じる。MTX処置したCTX細胞ではタウのカルパイン特異的切断が明らかとなり、EDTA処置したCTX細胞ではタウのカスパーゼ特異的切断が示される。TBI後のタウのプロテアーゼ仲介性切断をIHおよびICのTBIモデルにおいて示す(
図8A)。抗TBDP−35K特異的抗体はヒトタウに対して交差反応性を示さない(
図8B)。
【0135】
TBDP特異的抗体を用いて、未処置のまたは以下のものによる処置を行ったラット大脳皮質培養物をプローブする:興奮毒性攻撃NMDA―(Nathら,1998);カルパインおよびカスパーゼ−3を24時間活性化するアポトーシス誘導剤スタウロスポリン(STS)(0.5μM)(Zhangら,2009);またはカスパーゼ主体の攻撃としてのCa2+キレート剤およびアポトーシス誘導剤エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(Waterhouseら,1996;Chiesaら,1998;Mizunoら,1998;McGinnisら,1999;Zhangら,2009)。NMDA、EDTAおよびSTS処置は、それぞれインビトロで広範な神経変性を生じさせる。NMDAが壊死/アポトーシスの混合した形質を誘導するのに対し、STSおよびEDTAは共に強いアポトーシス形質を生じさせる(
図9)。
【0136】
ラット大脳皮質培養物ライセートを、全タウ抗体またはフラグメント特異的抗体でプローブする。NMDA処置では、タウが著しく分解されて、カルパイン仲介性タウBDP−35Kの優勢なシグナルおよび最小のカスパーゼ仲介性タウ−BDP45Kを含めた複数のフラグメント(42K、35Kおよび15K)を生じる(
図10)。カスパーゼ阻害剤(Z−VAD;20μM)は、タウ分解パターンの有意な変化を生じさせない。阻害剤(SNJ−1945;20μM)は、いくつかの高分子量フラグメント(425〜48K)は残るが、低分子量のフラグメントを有意に減少させ、そのうちカルパイン仲介性タウBDP−35Kは完全にブロックされる。抗カスパーゼ仲介性タウ−BDP45K抗体でブロットをプローブすると、タウBDP−45/48Kがカルパイン阻害剤−NMDA共処置のレーンで検出されることは興味深い。NMDA処置により、カスパーゼ−3仲介性SBDP120の微量のバンドと共に、顕著なカルパイン仲介性SBDP150/SBDP145が得られる。これらのフラグメントは、それぞれのプロテアーゼ阻害剤(SNJ、Z−VAD)により強く阻害される。まとめると、上記データは、NMDA系列では、カルパインがタウ断片化の優位な経路であり、カスパーゼの寄与は少ないということ示している。
【0137】
アポトーシス阻害剤EDTAを用いた場合、全タウのブロットおよびカスパーゼ仲介性抗タウ−BDP45Kのブロットにより確認されるように、タウはタウ−BDP48K/45Kへのみ切断される(
図10)。両フラグメントは、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD)感受性であるが、カルパイン阻害剤(SNJ−1945)に対しては非感受性である。したがって、EDTA攻撃では、端的なカスパーゼ優位のタウ断片化条件が生じる。EDTA攻撃によるαII−スペクトリン分解パターンにより、カスパーゼ仲介性SBDP120の存在が確認されるが、カルパイン生成フラグメントSBDP145は確認されない。
【0138】
スタウロスポリン処置では、高分子量(45〜48K)と低分子量(35K、15K)のタウ−BDPのバランスが示される(
図10)。48/45Kフラグメントはカスパーゼ仲介性であり、これはタウ−45Kフラグメント特異的抗体のブロットおよびそのカスパーゼ阻害剤(Z−VAD)に対する感受性により確認される。同様に、タウBDP−35K特異的抗体およびそのカルパイン阻害剤SNJ−1945に対する感受性によりカルパインの関与が確認される。カルパインとカスパーゼ両方の二重関与を示す全タウのブロットおよび抗タウ−48/45Kのブロットから、カルパイン阻害剤の存在がタウ−DBP−48k/45Kを強力に上昇させたということは重要である。このことは、αII−スペクトリンの分解パターンとも一致する。STS処置により、タウ断片化においてカルパインとカスパーゼの両方の二重でありかつバランスのとれた寄与が存在する神経変性系列が生じる。
【0139】
ラットにおけるCCI損傷によりTBDPが生じる。実施例3のようにCCI損傷後に採取した皮質および海馬組織試料を溶解させ、SDS−PAGEによりタンパク質を分離した後、ウエスタンブロット法を行って特定のTBDPの存在を確認する。ラット皮質では、CCI後に、早くも2時間で急速に増加し、6時間後までに最大レベルに達する(
図11A、11B)。続いて、損傷後48時間にレベルが低下する。TBDP−25Kはより緩やかな増加を示し、48時間後に最大レベルに達する(
図11A、11B)。他のタウ−BDPも観察される。偽処置およびCCI後の両方において観察される数多くのバンドは、タウタンパク質のリン酸化状態およびアイソフォームを数多く示している。反対側の皮質では、タウの免疫ブロットを意図的に過剰に展開させても全3群でタウタンパク質分解は観察されない(データ不掲載)。ラット海馬では、損傷後2時間でTBDP−15Kが現れ、24時間で最大レベルが観察される(
図11C、11D)。同様の結果がTBDP−35Kで観察される(
図11C、11D)。全体的には、インビトロでのカルパイン仲介性タウタンパク質断片化のパターン(タウBDP−35K、25Kおよび15K)(
図7)は、TBI後のインビボでのタウタンパク質分解(
図11)とよく一致する。制御式皮質衝撃装置は皮質を標的とするため、打撲性の力により間接的に衝撃を与えた海馬組織よりも、同側皮質組織における方が大きな局所的損傷を生じる。その結果、皮質では海馬よりも広範なタウタンパク質分解が存在する。
【0140】
同じ試料をTBDP特異的を用いてプローブする。
図12Aは、ラットにおいてTBDP−35Kを生成する特異的カルパイン活性があること、およびCCI後のラット皮質におけるカスパーゼ仲介性切断がないことを示している。同様の結果がラット海馬において観察される(
図12B)。したがって、損傷皮質において、CCI誘導性神経変性はカルパイン仲介性TBDPの形成および蓄積を伴い、カスパーゼ生成タウフラグメントに対してわずかに寄与するのみである。
【0141】
抗活性化カルパイン−1新規N末端(抗LGRHENA)(配列番号39および149)抗体またはプロカルパイン−2N末端(抗SHERAIK)(配列番号38および148)抗体を用いて、タウBDP−35Kのカルパイン−1およびカルパイン−2の一時的な活性化プロファイルを調べる。
図13は、損傷皮質におけるカルパイン−1(A)およびカルパイン−2(B)両方の活性化を示している。カルパイン−1は2日目および3日目に初期ピークがあり、その後低下したのに対し(
図13A)、カルパイン−2は同様に2日目にピークに達するが、3〜5日持続した(
図13B)。カルパイン−1活性化は、カルパイン特異的TBDP−35Kの出現と非常によく一致する。
【0142】
タウのカルパイン仲介性切断は、CCI直後に投与する(100mg/kg、ボーラス静注)カルパイン阻害剤SNJ−1945を用いたその阻害によりさらに示される。皮質組織のプローブをTBDP−35K特異的抗体によるイムノブロッティングに供する。SNJ−1945によりTBDP−35K増加が抑制される(
図14)。したがって、カルパイン−1は、TBI後の主要なタウ切断プロテアーゼとして働く。
【0143】
実施例7:重度ヒト外傷性脳損傷調査
調査には、重度外傷性脳損傷を有する46例のヒト対象が含まれていた。各対象は、年齢が19歳以上、GCSが8以下であり、かつ日常的な治療の一部として脳室フィステル形成術および神経モニタリングが必要であることを特徴とする。詳細にはCSFコントロールと同義であるコントロール群Aには、同様に19歳以上でかつ損傷を有さない10人が含まれていた。水頭症または髄膜炎の治療に関連した日常的な外科的処置またはCSF入手のための脊椎麻酔の際に試料を採取する。正常コントロールと同義として表されるコントロール群Bは、それぞれ18歳以上でかつ脳損傷を伴わない複数の損傷を経験している合計64人であった。調査の人口動態に関するさらなる詳細を表9に記載する。
【0144】
【表9】
【0145】
第一および第二の患者で最初に入手したCSF試料に見られるバイオマーカーのレベル(
図15Aおよび15B)は、最初の患者の緊急治療室入院時のGFAPおよびGBDPが高いことを示している(
図15A)。同様に、TBI後6時間以内にCSFを抜き取った第二の患者は、この時点で高レベルのGFAPおよびGBDPの存在が明らかとなった(
図15B)。また第二の患者は、損傷の18時間後に、検出可能ではあるが低レベルのGFAPおよびGBDPを示した。第一の患者のCSFでは、SBDP150/145およびSBDP120のレベルも緊急治療室入院時に上昇しているが、後の時点では比較的低レベルである(
図15A)。
【0146】
実施例8:TBIのバイオマーカーとしての自己抗体の同定
重度TBI後、対象の血液中でニューロンタンパク質に対する自己抗体が産生され、で検出可能となる。ヒトTBI対象から死後に脳ライセートを入手し、20mMトリス−HCl、pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、5mM EGTA、1%TritonX−100、1mM NaF、1mM Na
3VO
4およびプロテアーゼインヒビターカクテルタブレット(Roche、Indianapolis、IN)を含有する溶解緩衝液で可溶化する。SDS−PAGEによりライセートを分離し、次いで全タンパク質に関して染色し(
図16A)、プロービングのためにポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Bio−Rad Laboratories)上に転写する。ヒトコントロールドナーから採取(B)またはTBI10日後にヒトから採取(C)した血清を用いてブロットをプローブし、抗IgG/IgMを用いて自己抗体を検出する。TBI後の対象由来の血清では、血清自己抗体の存在を示す強いバンドが観察される。
【0147】
ヒト血清は、TBI後に増加したレベルで観察される自己抗体を含有する。5人のヒトコントロールおよびTBI対象由来の血清を、自己抗体の有無に関してプローブする。上記の可溶化したヒトTBI後脳ライセートの試料をSDS−PAGEにより分離し、iblot法によりPVDF膜に転写する。正常コントロールヒト対象由来またはTBIの72時間後またはTBIの30日後に試料を採取する5人のTBI対象由来の血清によりブロットをプローブする。TBSTで数回洗浄した後、PVDF膜をマルチスクリーン装置から取り出してさらに3回洗浄した、次いで最後に、1:10,000に希釈したAPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG+IgMまたはAPコンジュゲートロバ抗ヒトIgGと1時間インキュベートし、次いでTBSTで洗浄する。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)ホスファターゼ基質(Kirkegaard & Perry Laboratories、Gaithersburg、MD、USA)を用いて陽性シグナルを視覚化する。
図17は、TBI後に存在するいくつかのヒト脳タンパク質に対する自己抗体の存在を示している。遅い時点でのシグナル増強により示されるように、自己抗体の量は72日目〜30日目まで増加する。
【0148】
自己抗体のレベルは、TBI後に時間と共に増加する。入院時およびTBIの30日後までに採取した1人のヒト対象由来の血清を用いて、ゲルの各レーンに等濃度で負荷したヒト脳ライセートをプローブし、PVDFに転写する。自己抗原は、抗IgG二次抗体を用いた検出により示されるIgGである(
図18A)。自己抗体が産生される速度は驚くほど速く、5日目に検出可能なレベルで出現し、30日目まで増加する(
図18A)。自己抗体がIgG特異的であることの確証は、ブロットが特定の免疫グロブリン種に対する二次抗体でプローブされている
図18Bで示される。
【0149】
自己抗体は脳特異的抗原に対するものである。ヒトの脳、心臓、腎臓、肺、脾臓、腸、皮膚、筋肉および精巣由来のライセート(30μgのタンパク質)をSDS−PAGEにより分離し、PVDFに転写し、1:100の希釈でヒトTBI対象の血清をプローブすることによるウエスタンブロット法を用いて検出する。1:10,000希釈のAPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG/IgMにより、任意の結合した自己抗体を検出する。
図19は、TBI対象由来の自己抗体が、38〜52kDaの間に移動する脳由来の自己抗原だけ認識することを示している。
【0150】
カルパイン消化の結果として、自己抗体が分解産物に対して産生される。ナイーブラット脳ライセートをゲルに負荷し、ヒトTBI対象の血清でプローブする。カルパイン切断産物の非存在下では、抗原認識が観察されない(データ不掲載)。しかし、同一の濃度で負荷したカルパイン消化ラット脳ライセートは、TBI後の5日目(レーン12)に現れ10日目(レーン17)まで増加する検出可能なヒトTBI患者の自己抗体により認識される(
図20)。
【0151】
TBI後のヒト血清中の自己抗体により認識される抗原を特定するために、精製GFAP、ニューロファシンおよびMBPをゲルに負荷して、SDS−PAGEにより分離し、PVDFに転写して、損傷の10日後に採取したTBIヒト対象の血清でプローブした後、抗IgG抗体を用いて検出した。GFAP、ニューロファシンおよびMBPはそれぞれ、TBI後のヒト血清中で産生された自己抗体により認識される自己抗原として検出される(
図21)。
【0152】
GFAPは、TBIの10日後に採取したヒト対象の血清中の自己抗体により認識されることが確認される。死後ヒト脳ライセートをイオン交換クロマトグラフィーに供し、溶出画分をゲルに負荷して分離する。各画分中の全タンパク質をクーマシーブルーで染色する(
図22A)。ヒトTBI対象の血清でのプロービングによる自己抗原検出のために、同じ画分を分離してPVDFに転写する(
図22B)。染色ゲル上のオーバーラップしているバンドを切り出し、配列解析を行う。配列解析により、TBI後のヒト血清中に存在する自己抗体がGFAPを認識することが明らかとなる。
【0153】
抗原競合実験により、TBI後のヒト血清中に存在する自己抗体がGFAPおよびタウを認識することが確認される。ヒト脳ライセート(300μg)を、単独のまたは各種濃度のGFAP(2.6μg;10μg(Banyan Biomarkers))もしくはタウ(2.6μgもしくは10μg(Cytoskeleton Co.))とプレインキュベートした3人のヒトTBI対象由来の血清でプローブする。2.5μgのGFAPの存在により、GFAP特異的自己抗体が脳ライセート中に存在するGFAPを認識する能力が低下する(
図23)。10μgのGFAPにより、シグナルがさらに減少する。同様に、血清と10μgのタウタンパク質とのプレインキュベーションは2.6μgのタウよりも低い抗原認識を示し、このことはヒトTBI後血清中のタウ特異的自己抗体の存在を示している(
図23)。
【0154】
GFAPに対する自己抗体はGBDPを優先的に認識する。ヒト脳ライセートおよびインタクトの精製組換えGFAPをゲルに負荷し、抗GFAP(
図24A)抗体、GFAPに対する自己抗体を含有するヒトTBI後血清(
図24B)のいずれかでプローブし、かつ/またはゲルをクーマシーブルーで染色する(
図23C)。自己抗体は、インタクトの組換えGFAPよりも脳ライセートに生来的に由来するGBDPに対してはるかに高い認識を示す。
【0155】
実施例9:ヒトTBI調査における自己抗体の検出
TBI後の様々な時点でヒト対象から血清試料を採取する。表10は、3つの異なるTBI相:急性+亜急性相(損傷〜10日目);重度TBI亜急性相(1日目〜30日目);および重度TBI慢性相(TBI後1ヶ月超)で試料を得た患者数を示す。
【0156】
【表10】
【0157】
信頼区間は修正Wald法により定める。全体的に、血清中に自己抗体を示すTBI患者数は、正常コントロールよりもはるかに多い。
【0158】
実施例8に記載の手順を用いたウエスタンブロット法により、自己抗体の強度を測定する。最高レベルの自己抗体は強度レベル5と採点され、強度レベルゼロはウエスタンブロット法により検出可能な自己抗体が存在しないことを表す。健常コントロールを、Banyan Biomarkers、UPおよびイタリアの調査主催者により採取された調査試料と比較する。大部分のTBI患者で血清中の自己抗体レベルが検出可能であった(
図25)。
【0159】
実施例10:
自己抗体の存在と生存率との相関を解析するために、TBIと診断されたヒト対象の調査をさらに行う。重度(GCIスコアが3〜5)または軽度(GCIスコアが6〜15)TBIを有する20例のヒト対象から血清試料を採取する。表11は、調査対象の特徴を示す。
【0160】
【表11】
【0161】
全体的に、6例(30パーセント)の対象が血清中の自己抗体に関して陰性である。表12に示すように、70パーセントが陽性の自己抗体発生を示し、10パーセントが高陽性の自己抗体レベルを示している。
【0162】
【表12】
【0163】
【表13】
【0164】
全体的に、自己抗体を示す男女対象が示さない対象を上回っている(
図26A)。56歳未満では、自己抗体を示す対象が示さない対象を上回っている。57〜71歳と72〜84歳の対象では、2例の対象が自己抗体を示し、2例の対象が示さない(
図26B)。
【0165】
自己抗体の存在はGCSスコアが6〜15の対象で相対的に高いが、GCSスコアが3〜5の対象でも自己抗体陽性の方が多い(
図27)。転帰不良(6ヶ月未満で死亡)の対象は、転帰良好な対象よりも血清中の自己抗体発生が高い傾向を示している(
図28)。このことは、自己抗体の存在が生存率と相関することを示している。
【0166】
5ポイントの強度段階での自己抗体レベルは、TBIの24時間以内に採取した血清中のGFAPおよびUCHL1レベルと相関する。TBIの24時間後以内に採取したヒト対象の血清も、UCHL1、GFAPおよびSBDP145の存在およびレベルに関して、基本的に実施例2に記載の通りのELISAにより解析する。次いで、これらのレベルを自己抗体の強度に対してプロットする。
図29に図示されるように、GFAPおよびUCHL1レベルの増加は自己抗体の強度増加と相関する。GFAPは、Pearson相関係数0.72およびP値0.0009で相関する。UCHL1は、Pearson相関係数0.56およびP値0.02で相関する。
【0167】
TBI後24時間以内にヒト対象から採取したCSFで同様の相関が見られる。GFAPレベルは後の自己抗体発生と、Pearson相関係数0.47およびP値0.07で相関する。UCHL1レベルと自己抗体強度は、Pearson相関係数が0.56およびP値が0.02で相関する。またSBDP145レベルも自己抗体強度と相関し、統計的に有意なPearson相関係数0.62およびP値0.01を示す(
図30)。したがって、自己抗体のレベルは、ヒト対象の血清中およびCSF中両方の可溶性バイオマーカータンパク質のレベルと相関する。
【0168】
対象の血清中の自己抗体の相対存在量を、最大強度レベル5の実施例9に記載のものと同様の手法でウエスタンブロット法により測定する。全体的に、女性対象の方が男性対象よりも高い自己抗体強度を示す(
図31A)。転帰良好(6ヶ月を超える生存)な対象では、男性対象の方が女性対象よりも自己抗体強度が高い(
図31B)。全体的に、女性対象が低い死亡率を示し、かつ高い自己抗体強度を示すのに対し、男性対象は高い死亡率を示し、自己抗体強度は低い(
図31C)。これらのデータは、自己抗体強度と転帰の間には性別により逆相関関係があることを示している。
【0169】
平均強度を性別と無関係に生存率と相関させると、自己抗体強度と6ヶ月超の生存との間の相関は見られない(
図32A)。したがって、強度は、性別依存的なレベルに関してのみ転帰の予測因子として機能する。また自己抗体の強度に無関係な自己抗体の存在も性別依存的なレベルに関して転帰を予測するために機能する。女性対象では、平均の強度は低いが、自己抗体の存在が生存率の増加と相関する(
図32B)。女性の非生存者は、自己抗体の存在をあまり示さないが、強度は高い(
図32B)。したがって、女性の調査対象では、低レベルの自己抗体の存在が、高レベルの自己抗体の存在よりも転帰を改善することを示している。男性の調査対象では、自己抗体の存在を示す転帰良好な調査対象は少ないが、強度の高い対象ほど生存する可能性が高い(
図32C)。非生存男性は自己抗体を有する傾向が強いが、その強度は低い(
図32C)。全体的に、自己抗体の頻度および強度は、性別依存的に転帰と相関する。
【0170】
自己抗体の強度は、GCSスコアにより測定されるTBIの重症度と共に高くなる傾向を示す(
図33)。GCS値が3の対象は、高いGCSスコア7の対象よりもはるかに高い自己抗体強度を示す。GCSスコアの増加に伴う傾向線の低下は、自己抗体強度の高い対象ほどGCSスコアが低く、TBI重症度が高い傾向にあることを示している。
【0171】
実施例11:ニューロン損傷の尺度としての核酸バイオマーカーの血清またはCSFレベル
臓器または脳損傷後にタンパク質がCSFおよび血漿区画に侵入するのと同様に、RNAおよびDNAも侵入する。アポトーシスまたは壊死を起こしている細胞は、血液またはCSF中に核酸バイオマーカーを放出する(
図34)。損傷の重症度および部位は、細胞タイプに特異的なRNA量を定量化する適当なリアルタイムPCRアッセイにより特定できる。神経特異的RNAの例としては、βIIIチューブリン、UCHL1、GFAPおよびシナプトフィジンが挙げられる。
【0172】
実施例7の調査のヒト対象から採取した全血試料を用いて、その中のGFAPまたはUCHL1をコードする核酸のレベルを決定する。
図35は、重度TBIの対象における血清GFAPおよびUCHL1タンパク質レベル増加の存在を示している。血清中にGFAPまたはUCHL1をコードするRNAが存在するか否かを決定するために、Rainer,THら,Clin Chem,2003;49:562−560により記載されているものと同様の技術による血清の解析を用いる。簡潔には、入院時に各対象の肘前静脈から10mLの対象血液を採血して、EDTAの入ったチューブに集め、3000×gで15分間、二重遠心分離する。あるいはまたは加えて、0.2マイクロメートルのフィルターを用いた遠心分離により、血漿をろ過して細胞物質を除去する。上清無細胞血漿を、血液/骨髄用のRNA/DNAスタビライゼーション試薬(Roche Diagnostics)を入れた普通のポリプロピレンチューブ内に移し、さらなる処理まで−80で保管する。
【0173】
血液/骨髄用のmRNAアイソレーションキット(Roche Diagnostics)を製造者のプロトコールに従い使用して、ポリ(A)
+mRNAを抽出する。cDNAを合成し、Qiagen One Step RT−PCR試薬セット(Qiagen)を用いた50μLのPCR反応で増幅する。簡潔には、One Step RT−PCR酵素混合物(Qiagen)を用いて、血漿6μL中のmRNAをGFAPまたはUCHL1に特異的なプライマーで逆転写する。得られたcDNAをPattyn,Fら,Nucleic Acids Research,2003;31(1):122−123のプロトコールの通りに60℃のアニーリング温度を用いた、GFAPに対するプライマーおよびプローブ:順方向プライマー―ACATCGAGATCGCCACCTACA(配列番号45);逆方向プライマー―GTCTGCACGGGAATGGTGAT(配列番号46);および標識プローブ―AGCTGCTAGAGGGCGAGGAGAACCG(配列番号47)を用いたTaqmanアッセイにより測定する。UCHL1検出では、プライマーおよびプローブは:順方向プライマー―ACTGGGATTTGAGGATGGATCAG(配列番号48);逆方向プライマー―GCCTTCCTGTGCCACGG(配列番号49);標識プローブ―AATGAGGCCATACAGGCAGCCCATG(配列番号50)であり、60℃のアニーリング温度を用いる。全体的に、TBI後の対象の無細胞血漿において、GFAPおよびUCHL1の両方のmRNAの存在が示される。
【0174】
実施例12:
TBIの1日後のヒト血清において、ヒトのTBIに関連したmiRNAの存在を検出する。血清を採取し、3000×gで15分間遠心分離し0.2マイクロメートルフィルターを通過させて無細胞とし、全RNAの調製に使用する。全RNA(5μg)を、YM−100 Microcon遠視分離フィルター(Millipore)を用いてサイズ分画する(b300ヌクレオチド)。回収した低分子RNA(b300nt)を、ポリ(A)ポリメラーゼを用いてポリ(A)テールで3’延長する。後の蛍光色素染色のために、オリゴヌクレオチタグをポリ(A)テールに連結する。低分子RNAを一晩、マイクロ循環ポンプを用いてμParafloマイクロ流体チップ上でハイブリダイズさせる(Atactic Technologies)。チップ上の各検出プローブは、標的ヒトmiRNA配列に相補的な化学修飾したヌクレオチドコードセグメントからなる。
【0175】
TBI対象の血清対ヒトコントロール対象の血清で少なくとも2倍の増加または減少を示すmiRNA配列を表14および15に示す。
【0176】
【表14】
【0177】
【表15】
【0178】
図36に図示するように、同定された配列のクラスター解析を行う。
【0179】
関連する局在を有するさらなるmiRNAを表16および17に記載する。
【0180】
【表16】
【0181】
【表17】
【0182】
GFAPの調節に関連するmiRNAの存在も上記無細胞血漿試料において測定する。神経変性状態を有する対象ではmiRNA−125bが増加する(Pogue,AIら,Neurosci.Lett.,2010;476:18−22)。miRNA−125b検出したものと同じプライマーおよびプローブを用いて、TBI後の対象の無細胞血漿におけるこのmiRNAのレベル増加が検出される。簡潔には、製造者の説明書に従い、miRNeasy Miniキット(Qiagen、Valencia、CA)で無細胞血漿の全RNAを抽出する。260/280nmおよび260/230nmでの分光測定によりRNAの純度を決定する。1.8よりも大きい260/280nm吸光度比は通常、RNA純度の許容される指標と見なされる。次いで、各試料由来の全RNA10ngを、TaqMan(登録商標)MicroRNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems、Foster City、CA)およびmiRNA特異的プライマー(Applied Biosystems)を用いてcDNAへ逆転写する。Dharap,AおよびVemuganti,R,J.Neurochem.,2010;113:1685?1691により同定されたmiRNAの存在を、TBI対象の無細胞血漿および虚血性脳卒中後の無関係な一組の対象において検出する。また、Lei,Pら,Brain Research,2009;1284:191−201により同定されたmiRNAのレベルも無細胞血漿中の存在について調べる。
【0183】
実施例13:
【表18】
【0184】
本明細書で言及される特許文献および刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルの指標となるものである。これらの文献および刊行物は、各文献または刊行物が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれた場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0185】
上記記載は本発明の特定の実施形態の具体例であるが、その実施を制限することを意図するものではない。以下の特許請求の範囲は、そのあらゆる均等物を含めて、本発明の範囲を定めることを意図するものである。
【0186】
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