特許第6469857号(P6469857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469857電磁アクチュエータをアンロックする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469857
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】電磁アクチュエータをアンロックする方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/06 20060101AFI20190204BHJP
   H01F 13/00 20060101ALI20190204BHJP
   F16D 27/118 20060101ALN20190204BHJP
   F16D 27/14 20060101ALN20190204BHJP
   H01F 7/18 20060101ALN20190204BHJP
   H02K 33/02 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   F16D48/06 101A
   H01F13/00 620
   !F16D27/118
   !F16D27/14 Z
   !H01F7/18 V
   !H02K33/02 A
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-520941(P2017-520941)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2017-538072(P2017-538072A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015061617
(87)【国際公開番号】WO2016081741
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】62/081,962
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508151105
【氏名又は名称】デーナ、オータモウティヴ、システィムズ、グループ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴーセンス、スティン
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−025524(JP,A)
【文献】 特公昭50−023089(JP,B1)
【文献】 特開昭50−109496(JP,A)
【文献】 特開昭52−004958(JP,A)
【文献】 特公昭50−023087(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0228076(US,A1)
【文献】 特開平08−065693(JP,A)
【文献】 特開平08−079779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 48/06
F16D 27/00
H02P 15/00
H02F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸接続解除システムを係合解除する方法であって、
複数の銅巻線を有するコイル、
前記コイルを少なくとも部分的に囲むハウジング、
前記ハウジング及び前記コイル内に摺動可能に設置される電機子、並びに、
前記ハウジング及び前記電機子のうち少なくとも1つを有する磁気回路、を有するアクチュエータを提供する段階であって、
前記アクチュエータは、前記電機子の第1の軸方向位置を含み、
前記電機子は前記電機子の第2の軸方向位置を含む、段階と、
前記コイルに電流を印加する段階と、
前記第1の軸方向位置から前記第2の軸方向位置へと前記電機子を作動させる段階と、
前記磁気回路を通る磁束を発展させる段階と、
前記コイルへの前記電流の流れを停止する段階と、
前記磁気回路を通る前記磁束が残留することを許可する段階と、
前記第2の軸方向位置に前記電機子を保持する段階と、
前記磁気回路を通る前記磁束が実質的に消されるように、経時的に低減する振幅を有する交流を前記コイルに印加する段階と、を備える方法。
【請求項2】
アクチュエータを提供する段階は、
残存磁気を有することが可能な鉄材料を有する前記ハウジング及び前記電機子のうち少なくとも1つを提供する段階を含む、請求項1に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項3】
前記コイルに前記電流を印加する段階は、
パワーエレクトロニクスのトポロジを含むデジタル制御回路と電気的に連通する前記コイルを配置する段階と、
前記デジタル制御回路から前記コイルに前記電流を印加する段階と、を含む、請求項1又は2に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項4】
アクチュエータを提供する段階は、
電源、
キャパシタ、
前記キャパシタ及び前記電源と電気的に連通する抵抗器、
ダイオード、
前記コイルと電気的に連通する前記電源を選択的に配置する第1のスイッチ、並びに、
前記キャパシタと電気的に連通する前記コイルを選択的に配置し、且つ、前記ダイオードと電気的に連通する前記コイルを選択的に配置する第2のスイッチを有する電気回路を提供する段階と、
前記コイルと電気的に連通する前記電気回路を配置する段階と、を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項5】
前記コイルに前記電流を印加する段階は、
前記コイルと電気的に連通する前記電源を配置する前記第1のスイッチを閉じる段階を含む、請求項4に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項6】
前記コイルへの前記電流の流れを停止する段階は、
前記ダイオードと電気的に連通する前記コイルを配置する前記第2のスイッチを閉じる段階と、
前記第1のスイッチを開く段階と、を含む、請求項4又は5に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項7】
経時的に低減する振幅を有する前記交流を前記コイルに印加する段階は、
前記コイルと電気的に連通する前記キャパシタを配置する前記第2のスイッチを閉じる段階を含む、請求項4から6の何れか一項に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項8】
アクチュエータを提供する段階は、
前記電機子と動作可能に係合する第1のクラッチモジュールを提供する段階と、
前記第1のクラッチモジュールと選択的に動作可能に係合する目的で、前記第1のクラッチモジュールに軸方向に隣接して設置される第2のクラッチモジュールを提供する段階と、を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項9】
前記第1の軸方向位置から前記第2の軸方向位置へと前記電機子を作動させる段階は、
前記第1のクラッチモジュールを前記第2のクラッチモジュールと動作可能に係合するように駆動する段階を含む、請求項8に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項10】
アクチュエータを提供する段階は、
前記第1のクラッチモジュール及び前記第2のクラッチモジュールと動作可能に結合される付勢部材を提供する段階を含む、請求項8又は9に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項11】
前記第1のクラッチモジュールを前記第2のクラッチモジュールと動作可能に係合するように駆動する段階は、
前記付勢部材が、前記第1のクラッチモジュールと前記第2のクラッチモジュールとの間に動作可能に圧縮されることによって、前記付勢部材に負荷を与える段階を含む、請求項10に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項12】
経時的に低減する振幅を有する交流を前記コイルに印加する段階は、
前記付勢部材が伸長することを許可する段階であって、それにより、前記第1のクラッチモジュール及び前記第2のクラッチモジュールを動作可能に係合解除する、段階を含む、請求項11に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項13】
電気回路を提供する段階は、
前記抵抗器と直列の第3のスイッチを提供する段階を含む、請求項4に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項14】
前記コイルへの前記電流の流れを停止する段階は、
前記ダイオードと電気的に連通する前記コイルを配置する前記第2のスイッチを閉じる段階と、
前記キャパシタと電気的に連通する前記電源を配置する前記第3のスイッチを閉じる段階と、
前記第1のスイッチを開く段階であって、前記電源は前記キャパシタを充電する、段階を含む、請求項13に記載の車軸接続解除システムを係合解除する方法。
【請求項15】
車軸接続解除システムを係合解除する方法であって、
複数の銅巻線を有するコイル、
前記コイルを少なくとも部分的に囲むハウジング、
前記ハウジング及び前記コイル内に摺動可能に設置される電機子、
前記コイルと電気的に連通する制御ユニット、
前記制御ユニットと電気的に連通し、
電源、
キャパシタ、
前記キャパシタ及び前記電源と電気的に連通する抵抗器、
ダイオード、
前記コイルと電気的に連通する前記電源を選択的に配置する第1のスイッチ、並びに、
前記キャパシタと電気的に連通する前記コイルを選択的に配置し、且つ、前記ダイオードと電気的に連通する前記コイルを選択的に配置する第2のスイッチを有する電気回路、
前記ハウジング及び前記電機子のうち少なくとも1つを有する磁気回路、
前記電機子と動作可能に係合する第1のクラッチモジュール、
前記第1のクラッチモジュールと選択的に動作可能に係合する目的で、前記第1のクラッチモジュールに軸方向に隣接して設置される第2のクラッチモジュール、
前記第1のクラッチモジュール及び前記第2のクラッチモジュールと動作可能に結合する付勢部材、を有するアクチュエータを提供する段階であって、
前記アクチュエータは前記電機子の第1の軸方向位置を含み、
前記電機子は、前記電機子の第2の軸方向位置を含む、段階と、
前記コイルと電気的に連通する前記電源を配置する前記第1のスイッチを閉じることにより、前記コイルに電流を印加する段階と、
前記第1の軸方向位置から前記第2の軸方向位置へと前記電機子を作動させる段階であって、それにより、前記第1のクラッチモジュールを動作可能に駆動して前記第2のクラッチモジュールと動作可能に係合し、前記第1のクラッチモジュールと前記第2のクラッチモジュールとの間に、動作可能に圧縮された状態の前記付勢部材に負荷を与える、段階と、
前記磁気回路を通る磁束を発展させる段階と、
前記ダイオードと電気的に連通する前記コイルを配置するべく、前記第2のスイッチを閉じ、且つ前記第1のスイッチを開くことにより、前記電流の前記コイルへの流れを停止する段階と、
前記磁気回路を通る前記磁束が残留することを許可する段階と、
前記第2の軸方向位置に前記電機子を保持する段階と、
前記コイルと電気的に連通する前記キャパシタを配置する前記第2のスイッチを閉じる段階であって、それにより、前記磁気回路を通る前記磁束が実質的に消されるように、経時的に低減する振幅を有する交流を前記コイルに印加し、前記付勢部材が伸長して前記第1のクラッチモジュール及び前記第2のクラッチモジュールを動作可能に係合解除することを許可する、段階と、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
全輪駆動可能車両は、1つの車軸のみに接続される駆動系を有する車両より多くの利点を有する。具体的には、全輪駆動可能車両は、1つの車軸のみを使用して駆動される同様の車両より向上したトラクション及び強化されたドライバビリティを有する。
【0002】
しかしながら、従来の全輪駆動車両は、全輪駆動の機能が有益でない場合でさえ、第2の駆動車軸及び駆動系の他の部分の走行速度での連続回転を必要とすることにより、不利となる。従って、従来の全輪駆動車両は、1つの駆動車軸のみを有する車両と比較される場合、減少した燃費及び総合効率を有する傾向がある。
【0003】
二次的な駆動系の接続解除機構を組み込む全輪駆動車両が、開発されている。そのような車両において、制御システムが、全輪駆動の機能が必要ないと検知した場合、制御システムは、第2の駆動車軸(及び他の関連する駆動系部品)を接続解除し、1つの車軸での駆動モードに駆動系を配置する。第2の駆動車軸が接続解除されると、第2の駆動車軸にトルクの伝達はされない。結果的に、第2の駆動車軸(及び他の関連する駆動系部品)に関連する、速度に依存する損失は、第2の駆動車軸(及び他の関連する駆動系部品)をアイドリング状態のままにさせることにより、排除される。
【0004】
二次的な駆動系の接続解除システムは、二次的な駆動系の係合及び係合解除を実施するべく、電磁アクチュエータを利用し得る。残留磁化は、電流をそこに印加することなく、電磁アクチュエータを安定した状態に配置するべく利用され得る。しかしながら、従来の方法を使用して、一貫した且つ予測可能な態様で残留磁化を取り除くことは、限定されるものではないが、気温、製造公差、及び部品種類などの多くの動作上の変数により影響を受け得る。
【0005】
本明細書における本開示は、電磁アクチュエータを一貫して且つ効率的に接続、及び接続解除する方法並びにシステムを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書の一部として本明細書に組み込まれる添付図面は、ここで開示される主題を図示し、記述と共に、開示される主題の原理を説明し、且つ、当業者が開示される主題を作り、使用することを可能にする役目を果たす。
【0007】
図1】ここで開示される主題の実施形態に係る、一次的及び二次的な車輪のセットを有する自動車の駆動系の一部の概略図である。
【0008】
図2】ここで開示される主題の実施形態に係る、電磁急速接続解除装置の一部の断面図である。
【0009】
図3】ここで開示される主題の実施形態に係る、指数関数的に低減する振幅を有する減衰する正弦波のグラフである。
【0010】
図4】ここで開示される主題の実施形態に係る、消磁過程を図示する一連のヒステリシス曲線のグラフである。
【0011】
図5】ここで開示される主題の実施形態に係る、回路の概略図である。
【0012】
図6】ここで開示される主題の実施形態に係る、電磁急速接続解除装置の一部の斜視断面図である。
【0013】
図7図6に係る、電磁急速接続解除装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで開示される主題は、明確にそうでないと指定される場合を除き、様々な代替的な適応及び段階のシーケンスを想定してよいと理解されるべきである。添付図面において図示され、以下の明細書において説明される特定のデバイス、アセンブリ、システム、及び工程は、本明細書に定義される発明概念の単なる例示的な実施形態であることも、理解されるべきである。従って、開示される実施形態に関する特定の寸法、方向、又は他の物理的な特性は、明確にそうでないと述べられていない限り、限定的なものと見なされるべきではない。また、そうでない場合もあるが、本明細書に記載される様々な実施形態における同様の要素は、本願のこのセクション内における同様の参照番号で一般に称され得る。
【0015】
駆動系接続解除システム200の特定の実施形態は、全輪駆動(AWD)の駆動系アセンブリで利用される。しかしながら、駆動系接続解除システム200は、本明細書に記載される駆動系アセンブリでの使用に限定されない。駆動系接続解除システム200は、限定されるものではないが、自動車及び製造装置において、他の形、サイズ、適応、及び設計の駆動系アセンブリに利用され得る。
【0016】
図1は、ここで開示される主題の実施形態を図示し、車両100は、全輪駆動の機能を有する駆動系102を含む。駆動系102は、電源104、最終駆動ユニット106、及び後部駆動ユニット108を有する。駆動系102は、駆動系接続解除システム200をさらに含む。
【0017】
図2に図示されるように、実施形態において、駆動系接続解除システム200は、制御ユニット202、電磁アクチュエータ204、クラッチフォーク206、及び噛合いクラッチ208を有する。制御ユニット202は、電磁アクチュエータ204と連通する。電磁アクチュエータ204は、噛合いクラッチ208と駆動接続するクラッチフォーク206に、駆動可能に接続する。
【0018】
制御ユニット202は、車両運転者によるコマンド、車両制御装置(図示せず)から受信したデータ、若しくは、少なくとも1つのセンサから受信したデータ、又はそれらの組み合わせに応答して、一連の命令を実行し得る。制御ユニット202により実行される一連の命令は、制御ユニット202の一部、又は制御ユニット202と連通するデバイス(図示せず)上に格納され得ることが理解される。制御ユニット202は、電磁アクチュエータ204を係合位置まで配置し、且つ電磁アクチュエータ204の消磁を実施するべく、電磁アクチュエータ204と連通する。
【0019】
電磁アクチュエータ204は、ハウジング220、コイル214、電機子216、及び付勢部材218を有する。制御ユニット202からコイル214に供給される電流に応答して、コイル214は、励磁され、磁場を生成する。磁場は、電機子216を作動させ、付勢部材218を圧縮させる。クラッチフォーク206も、電機子216の動きによって駆動され、クラッチフォーク206は、噛合いクラッチ208を作動させる。噛合いクラッチ208は、次に、駆動部210及び被駆動部212と駆動係合する。制御ユニット202からコイル214への電流が中断される場合、電機子216の残存磁気に起因して、噛合いクラッチ208は、駆動係合されたままとなる。
【0020】
上述の作動シーケンスに加えて、電磁アクチュエータ204は、電磁アクチュエータ204の係合位置を保持するべく、残留磁場を使用する。残留磁場は、制御ユニット202によって電流を印加することなく、電磁アクチュエータ204を係合位置に保持することを容易にする。残留磁場は、コイル214又は電磁アクチュエータ204の任意の鉄部分において発生し得る。電磁アクチュエータ204の係合位置を保持するべく残留磁場を使用することに加えて、電磁アクチュエータ204は、電磁アクチュエータ204の係合位置を保持するべく、永久磁石の使用も組み込み得る。そのような原理は、本主題の変更形態にも適用され得、残留磁場は、電流を印加することなく、電磁アクチュエータを係合解除位置に保持することを容易にすると理解されるべきである。
【0021】
実施形態において、噛合いクラッチ208を係合解除、又は、噛合いクラッチ208の係合解除を補助するべく、残留磁場は消される。残留磁場が消失すると、電機子216は、軸方向の動きが可能となり、付勢部材218は、電機子216を係合解除位置に駆動する。電機子216の作動に応答して、噛合いクラッチ208は、駆動部210及び被駆動部212から駆動係合解除される。
【0022】
制御ユニット202は、残留磁場が存在するコイル214、又は電磁アクチュエータ204の鉄部分に消磁過程を実施することにより、残留磁場を消す。消磁過程は、低減する振幅を有する交流をコイル214に印加することにより、電磁アクチュエータ204から残留磁場を少なくとも部分的に消す。図3において、消磁過程で利用される交流の例が示される。図3において図示される交流は、指数関数的に減衰する正弦波である。低減する振幅を有する交流をコイル214に印加することは、電磁アクチュエータ204の残留磁場が、引き続いてより小さいヒステリシス曲線を経ることを生じさせる。図4において、残留磁場の消失の特性を示すヒステリシス曲線群の例が図示される。図4において、表記「B」は、磁束密度を表し、表記「H」は、保磁力を表し、表記「T」は、測定単位テスラを意味する。消磁過程の間、少なくとも付勢部材218が電磁アクチュエータ204の磁場の力に打ち勝ち、電機子216を係合解除位置に駆動するまで、残留磁場は消される。電磁アクチュエータ204に適用される消磁過程は、噛合いクラッチ208を係合解除する強固で効率的な手順を提供する。
【0023】
制御ユニット202は、複数の方法のうちの1つで消磁過程を実施できる。非限定的な例として、制御ユニット202は、デジタル制御、又はアナログ回路を使用して消磁過程を実施し得る。デジタル制御は、限定されるものではないが、555タイマICを有し得る。制御ユニット202は、デジタルの電流形インバータを有する回路を有し得る。
【0024】
図5において、上記本明細書に記載される消磁過程を実施するべく制御ユニット202により利用され得る、回路500が図示される。実施形態において、回路500は、制御ユニット202の一部を形成し得、又は、電磁アクチュエータ204の一部に統合され得る。他の実施形態において、回路500は、消磁過程を実施し得る他の構成で構築され得る。実施形態において、回路500は、キャパシタ502、電力供給504、抵抗器506、第1のスイッチ510、第2のスイッチ512、ダイオード514、及びコイル214を有する。回路500は、第2のスイッチ512が第1のポイント520の方へ閉じられ、且つ、第1のスイッチ510が閉じられている場合、電磁アクチュエータ204に電流を供給する。電磁アクチュエータ204は、回路500の第1のスイッチ510が開かれ、且つ、電流がコイル214に供給されない場合、係合されたままになる。回路500は、電磁アクチュエータ204の残留磁場を消磁過程を介して消す。それは、第1のスイッチ510が開かれる間、第2のスイッチ512を第2のポイント522の方へ閉じ、キャパシタ502は、電力供給504の電圧で開始して、次に減衰交流をコイル214に印加する。
【0025】
別の実施形態において、コイル214を通る電流を制御することを介して電磁アクチュエータ204を係合し、コイル214に電流を印加することなく電磁アクチュエータ204を係合した状態に保ち、消磁過程を生じさせる電流をコイル214に印加する能力を有する任意の回路が、制御ユニット202によって利用され得る。加えて、別の実施形態において共に、又は別個の実施形態において、回路500は、キャパシタ502を充電する異なるメカニズムを使用し、キャパシタ502を充電するために抵抗器506と直列のスイッチを加え、パワーエレクトロニクスのトポロジを含むデジタル制御された充電回路を使用するべく変更され得る。さらに、第1のスイッチ510は、高周波スイッチを有し得る。
【0026】
図6及び図7に図示されるように、実施形態において、電磁アクチュエータ304は、実質的に環状のハウジング320及び環状のハウジングプレート321を含む、ハウジングアセンブリ319を有する。環状ハウジング320は、限定されるものではないが、U字型又はJ字型の断面を有する単一モジュールで有り得る。ハウジング320は、円盤状の基部326を介して接続される環状外壁322及び環状内壁324を含み、基部326は、内壁324によって画定され、そこを貫通する穴を有する。コイルアセンブリ314は、ハウジング320の内部に設置され、ハウジング320の内部は、外壁322、内壁324、及び基部326によって画定される。ハウジング320の外壁322は、コイルアセンブリ314と制御ユニット(図示せず)との間の電気的結合380を許可する開口328も画定する。
【0027】
コイルアセンブリ314は、複数のワイヤ巻線及びポッティング材料を有し、合わせると実質的に環状の形状を有する。半径方向の突出部318は、コイルアセンブリ314の内面315上に設置される。突出部318は、第1の面318A及び第2の面318Bを有する。電磁アクチュエータ304がアセンブルされる場合、第2の面318Bは、ハウジング320の内壁324の端面324Aと実質的に接在、又は接触する。突出部318は、突出部318の第3の面318Cが、ハウジング320の内壁324の内面324Bの平面と実質的に同じ高さになるように、コイルアセンブリ314の内面315から内向きに突き出る。
【0028】
環状スリーブ330は、コイルアセンブリ314の内面315上に設置され、コイルアセンブリ314の内面315と同心円をなす。スリーブ330の第1の面330Aは、コイルアセンブリ突出部318の第1の面318Aと実質的に接線方向に設置される。加えて、環状スリーブ330は、自体の外径と内径との間の厚み、つまり突出部318が、コイルアセンブリ314の内面315から半径方向内向きに突き出る距離より短い厚みを有する。
【0029】
さらに、概ね環状及び円筒状の電機子340が、ハウジング320の内面324B上、及び、コイルアセンブリ314の突起318の第3の面318C上に摺動可能に設置される。電機子340は、第1の面342A、第2の面342B、及び第3の面342Cを有する半径方向外向きの突起342を有する。電機子の突起342の第3の面342Cは、スリーブ330の内径に対して摺動可能に設置される。電機子340は、第1の面344Aを有する半径方向内向きの突起344も有する。第1の面344Aに軸方向に隣接して置かれるのは、電機子340の内部に同心で設置される環状ブッシュ346である。磁気回路は、コイルアセンブリ314に電流が印加される場合、ハウジングアセンブリ319、ハウジング320、及び電機子340のうち少なくとも1つで形成され得る。
【0030】
第1のクラッチモジュール350も、電機子340内に同心で位置決めされる。図6において図示される第1のクラッチモジュール350は、実質的に円筒形状を有する。しかしながら、クラッチモジュール350は、限定されるものではないが、矩形、円盤状、及び円錐状の形状を含む他の形を有し得る。第1のクラッチモジュール350の面352は、ブッシュ346に軸方向に隣接して位置付けられる。第1のクラッチモジュール350は、回転可能であり、軸方向の作動が可能である。第1のクラッチモジュール350は、第1の部分354及び第2の部分356をさらに有する。第1の部分354は、ディファレンシャルハーフシャフト(図示せず)上のスプラインと駆動係合する、内向きに延在する半径方向スプライン358を有する。第1のクラッチモジュール350の第2の部分356は、クラッチ歯366のセットを有する。第1のクラッチモジュール350の第2の部分356は、付勢部材362が位置付けられる環状溝360も有する。付勢部材362は、限定されるものではないが、波形ばねを有し得る。付勢部材362の第1の端362Aは、スナップリング364に当接し、スナップリング364に軸方向に隣接する。スナップリング364は、軸方向に固定され、第2のクラッチモジュール368に動作可能に接続される。
【0031】
電磁アクチュエータ304が係合される場合、第1のクラッチモジュール350のクラッチ歯366は、第2のクラッチモジュール368のクラッチ歯370のセットと噛み合う。加えて、第1のクラッチモジュール350が第2のクラッチモジュール368に係合する場合、付勢部材362は、第1のクラッチモジュール350とスナップリング364との間で圧縮される。第2のクラッチモジュール368は、軸方向に固定され、第1の部分368A及び第2の部分368Bを有する。第2の部分368Bは、クラッチ歯370を有する。第1の部分368Aは、車輪(図示せず)に駆動可能に接続されるハーフシャフト(図示せず)上のスプライン(図示せず)と駆動係合される、外向きに延在する半径方向スプライン372を有する。第2のクラッチモジュール368は、第2のクラッチモジュール368の第2の部分368Bの外面上に同心で設置される環状ブッシュ374を介して、例えば、前部駆動ユニット(図示せず)、又は電力伝達ユニットのハウジングに対して実質的に軸方向に固定される。図6に図示される第2のクラッチモジュール368は、実質的に円筒形状を有する。しかしながら、クラッチモジュール368は、限定されるものではないが、矩形、円盤状、及び円錐状の形状を含む他の形を有し得る。
【0032】
第1のクラッチモジュール350は、限定されるものではないが、ディファレンシャルハーフシャフトと駆動係合するための手段を有する分離可能な部品を有する第1の部分354、及び、第2のクラッチモジュール368と駆動係合するための手段を有する分離可能な部品を有する第2の部分356を含む、単一モジュール又は装置を有し得る。第2のクラッチモジュール368は、限定されるものではないが、ハーフシャフトと駆動係合するための手段を有する分離可能な部品を有する第1の部分368A、及び、第1のクラッチモジュール350と駆動係合するための手段を有する分離可能な部品を有する第2の部分368Bを含む、単一モジュール又は装置も有し得る。
【0033】
制御ユニットからの電流がコイル314に向けられる場合、それにより電磁アクチュエータ304を係合する。電機子340は、第1のクラッチモジュール350を作動及び軸方向に駆動させ、電機子340の突起342の第1の面342Aが、ハウジングプレート321の内面に当接し、且つ、第1のクラッチモジュール350のクラッチ歯366が、第2のクラッチモジュール368上のクラッチ歯370と噛み合うまで、付勢部材362を圧縮する。クラッチ歯366及び370が係合される場合、コイル314への電流の流れは停止する。電機子340は、磁気空隙がその間に無い又は最小限のみ有るように、ハウジングプレート321の内面に軸方向に隣接して設置される突起342の第1の面342Aと係合位置にあるままとなり、電磁アクチュエータ304の残留磁場は、クラッチの係合を保持する。
【0034】
制御ユニットは、残留磁場が存在する電磁アクチュエータ304に消磁過程を実施することにより、残留磁場を消す。消磁過程は、経時的に低減する振幅を有する交流をコイル314に印加することにより、電磁アクチュエータ304から残留磁場を少なくとも部分的に消す。消磁過程においてそれにより生じる交流及びヒステリシス曲線の例は、上述され、並びに図3及び4に図示される。消磁過程は、少なくとも付勢部材362が残留磁場の力に打ち勝ち、電機子340を係合解除位置に駆動するまで、残留磁場を消す。それにより、クラッチ歯366及び370を係合解除する。
【0035】
モジュールは、別段の指示がない限り、他の要素との定義されたインターフェースを有する分離可能な要素としてここで定義される。残存磁気、残留磁場、残留分極、及び中断されない磁束は、本明細書において一般に置き換えられ得、別段の指示がない限り、同一の特性又は発生を定義する。
【0036】
ここで開示される主題の様々な実施形態が上述された一方で、それらは、例示を目的として提示されており、限定するものではないことが理解されるべきである。当業者には、開示される主題が、その趣旨又は本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形式で具現化され得ることが、明らかであろう。上述の実施形態は、従って、あらゆる点で例示的なものとして考慮されるべきであり、限定的なものとして考慮されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7