特許第6469862号(P6469862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469862
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】改変された異相ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20190204BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20190204BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20190204BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C08L23/14
   C08K5/315
   C08L23/08
   C08K5/14
   C08J3/24 ZCES
【請求項の数】19
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2017-525506(P2017-525506)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公表番号】特表2017-522445(P2017-522445A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】US2015019427
(87)【国際公開番号】WO2016014122
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】62/028,905
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、ジョセフ・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ダイク
(72)【発明者】
【氏名】スプリンクル、ジェイソン・ディー.
(72)【発明者】
【氏名】トレナー、スコット・アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ、スチトラ
(72)【発明者】
【氏名】デイ、サンジーブ
(72)【発明者】
【氏名】トーレス、エドゥアルド
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−045966(JP,A)
【文献】 特開昭61−085462(JP,A)
【文献】 特開2002−332362(JP,A)
【文献】 特表2007−517074(JP,A)
【文献】 特開2002−241375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08F6−246、251−289、293−297
C08J3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相;
(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相;ならびに
(c)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む、相溶化剤であって、
式(I)
【化1】
(式中、Rは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)
【化2】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはRおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;xは、0、1、および2からなる群から選択される整数であり;
は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;
およびRは、独立に、シアノ基および式(VI)
【化3】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、Rは、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される)の構造に一致する化合物からなる群から選択される、相溶化剤
を含む異相ポリマー組成物。
【請求項2】
前記エチレンポリマーが、エチレン−プロピレンエラストマー、エチレン−ブテンエラストマー、エチレン−ヘキセンエラストマー、エチレン−オクテンエラストマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項3】
前記エチレンポリマーが、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの全重量に基づいて、異相ポリオレフィンポリマー組成物の5〜80重量%を占める、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項4】
前記エチレンポリマーが、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの全重量に基づいて、前記異相ポリオレフィンポリマー組成物の約5〜60重量%を占める、請求項3に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項5】
前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が、80重量%以上である、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項6】
前記エチレンポリマー相が、異相ポリオレフィンポリマー組成物中の不連続相である、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項7】
前記相溶化剤が、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の全重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項8】
ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと80重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含む連続相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択される連続相、ならびにエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレン含有量が8〜90重量%のエラストマーエチレンコポリマーを含む不連続相を含み、ただし、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、エチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも高く、組成物は、相溶化剤によってエチレンコポリマーと結合しているプロピレンポリマーをさらに含み、前記相溶化剤は、(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含み、
前記相溶化剤は、
式(I)
【化4】
(式中、Rは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)
【化5】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはRおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;xは、0、1、および2からなる群から選択される整数であり;
は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;
およびRは、独立に、シアノ基および式(VI)
【化6】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、Rは、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される)
の構造に一致する化合物からなる群から選択される、異相ポリマー組成物。
【請求項9】
前記不連続相が、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンコポリマーの重量に基づいて、異相ポリオレフィンポリマー組成物の5〜35重量%を占める、請求項8に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項10】
前記不連続相を構成する前記エチレンコポリマーのエチレン含有量が、8〜80重量%である、請求項8に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項11】
異相ポリオレフィンポリマー組成物が、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンコポリマーの全重量に基づいて、5〜30重量%のエチレンを含む、請求項8に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項12】
異相ポリオレフィンポリマー組成物が、少なくとも2つの重合段階で作用させることによって得られる、請求項8に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項13】
前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が80重量%以上である、請求項8に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項14】
前記相溶化剤が、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の全重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在する、請求項8に記載の異相ポリマー組成物。
【請求項15】
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし、前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は、少なくとも8重量%である、工程、
(b)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む相溶化剤であって、
式(I)
【化7】
(式中、Rは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)
【化8】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはRおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;xは、0、1、および2からなる群から選択される整数であり;
は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;
およびRは、独立に、シアノ基および式(VI)
【化9】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、Rは、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される)の構造に一致する化合物からなる群から選択される相溶化剤を用意する工程;ならびに
(c)遊離炭素ラジカルの存在下で、前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤を混合する工程であって、それによって前記相溶化剤はプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと反応し、それによってプロピレンポリマーはエチレンポリマーと結合し、前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相は異相組成物を形成する、工程
を含む、異相ポリオレフィンポリマー組成物を作製する方法。
【請求項16】
前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤が、遊離炭素ラジカルの存在下で溶融コンパウンディングによって混合され、前記組成物が25℃で異相である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プロピレンポリマー相が連続相であり、前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が80重量%以上であり、前記エチレンポリマー相が不連続相であり、前記エチレンポリマーは、エチレン含有量が8〜80重量%であり、エチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相が、少なくとも2つの重合段階で作用させることによって得られた異相耐衝撃性コポリマーとして混合物に供給される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記相溶化剤が、前記異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の全重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在し、前記相溶化剤の不飽和結合と前記エチレンポリマーとの反応が、1個以上の過酸化物結合を組み込んだ有機過酸化物からなる群から選択されるフリーラジカル発生剤の存在下で実施され、前記相溶化剤および前記有機過酸化物が、1:10〜10:1の相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量の比で存在する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は、増大したメルトフローレート、ならびに高い衝撃強さおよび改善された清澄性を有する異相ポリオレフィン組成物を対象とする。特に興味深いのは、改変されたポリプロピレン耐衝撃性コポリマーである。
【背景】
【0002】
ポリマー樹脂のメルトフローレート(MFR)は、その分子量の関数である。一般に、メルトフローレートを増大させると、樹脂をより低温で処理することおよび樹脂が複雑な部品形状を埋めることが可能になる。メルトフローレートを増大させる種々の先行技術の方法は、押出機中で樹脂とフリーラジカル、例えば過酸化物を生成可能な化合物とを溶融ブレンディングすることを含む。ポリマーの重量平均分子量が減少し、MFRが増大する。ポリオレフィンポリマーの分子量を減少させることによってメルトフローレートを増大させることは、しかしながら、改変されたポリマーの強度に有害な影響を及ぼすことが多くの場合に判明している。例えば、ポリマーの分子量を減少させると、ポリマーの耐衝撃性が著しく低下し得る。そしてこの低下した耐衝撃性は、ポリマーを特定の用途または最終用途で使用するのに適さないようにする可能性がある。したがって、現存する技術を利用する場合、ポリマーのメルトフローレートを増大させることと耐衝撃性を望ましくなく低下させることとの間で妥協点に達しなければならない。この妥協は、メルトフローレートが所望のレベルまで増大していないことをしばしば表し、これはより高い加工温度を必要とし、および/またはより低いスループットをもたらす。
【0003】
したがって、ポリマーの耐衝撃性を維持し、またはさらには向上させながら増大した高いメルトフローを有するポリマー組成物を生成することができる添加剤および方法が依然として必要とされている。
【発明の簡単な概要】
【0004】
本発明は一般に、プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相を含む異相(heterophasic)ポリマー組成物を提供する。相溶化剤も、組成物に加えられる。ポリマー組成物のメルトフローレートがフリーラジカル発生剤の使用によって増大する場合、組成物への相溶化剤の添加は、ポリマー組成物の耐衝撃性を維持し、またはさらには向上させることが観察されている。
【0005】
したがって、第1の態様では、本発明は:
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相;
(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相;ならびに
(c)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)非環式炭素−炭素二重結合中の第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)第2の炭素原子によって非環式炭素−炭素二重結合と連結している、非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む、相溶化剤
を含む異相ポリマー組成物を提供する。
【0006】
第2の態様では、本発明は、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと80重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択される連続相、ならびにエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレン含有量が8〜90重量%のエラストマーエチレンコポリマーを含む不連続相、を含む異相ポリマー組成物を提供しており、ただし、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、エチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも高く、ここで、組成物は、相溶化剤によってエチレンコポリマーと結合しているプロピレンポリマーをさらに含み、ここで、相溶化剤は、(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)非環式炭素−炭素二重結合中の第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)第2の炭素原子によって非環式炭素−炭素二重結合と連結している、非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む。
【0007】
第3の態様では、本発明は:
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし、エチレンポリマー相のエチレン含有量は、少なくとも8重量%である、工程、
(b)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)非環式炭素−炭素二重結合中の第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)第2の炭素原子によって非環式炭素−炭素二重結合と連結している、非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む相溶化剤を用意する工程;ならびに
(c)遊離炭素ラジカルの存在下で、プロピレンポリマー相、エチレンポリマー相および相溶化剤を混合する工程であって、それによってプロピレンポリマーは相溶化剤によってエチレンポリマーと結合し、プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相は異相組成物を形成する、工程
を含む方法によって得られる、異相ポリオレフィンポリマー組成物を提供する。
【0008】
第4の態様では、本発明は:
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC4〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし、エチレンポリマー相のエチレン含有量は、少なくとも8重量%である、工程、
(b)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)非環式炭素−炭素二重結合中の第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)第2の炭素原子によって非環式炭素−炭素二重結合と連結している、非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む相溶化剤を用意する工程;ならびに
(c)遊離炭素ラジカルの存在下で、プロピレンポリマー相、エチレンポリマー相および相溶化剤を混合する工程であって、それによって相溶化剤はプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと反応し、それによってプロピレンポリマーはエチレンポリマーと結合し、プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相は異相組成物を形成する、工程
を含む、異相ポリオレフィンポリマー組成物を作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、例1からの試料1Aおよび1BおよびC.S.1AおよびC.S.1Bのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)曲線を示す。
図2図2は、例2からのC.S.2A〜2DのGPC曲線を示す。
【発明の詳細な説明】
【0010】
以下の定義は、本出願を通して使用されるいくつかの用語を定義するために提供されている。
【0011】
ここで使用される場合、用語「置換アルキル基」は、アルカンの炭素原子から水素原子を除去することにより置換アルカンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換アルカン」は、非環式非分枝および分枝状炭化水素から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、および/または(2)炭化水素の炭素−炭素鎖は、酸素原子(エーテルのように)、窒素原子(アミンのように)、もしくは硫黄原子(硫化物のように)によって分断されている。
【0012】
ここで使用される場合、用語「置換シクロアルキル基」は、シクロアルカンの炭素原子から水素原子を除去することにより置換シクロアルカンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換シクロアルカン」は、飽和単環式および多環式炭化水素(側鎖を含むまたは含まない)から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、および/または(2)炭化水素の炭素−炭素鎖は、酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子によって分断されている。
【0013】
ここで使用される場合、用語「置換アリール基」は、環炭素原子から水素原子を除去することにより置換アレーンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換アレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基)で置きかえられている。
【0014】
ここで使用される場合、用語「置換ヘテロアリール基」は、環原子から水素原子を除去することにより置換ヘテロアレーンから誘導された一価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換ヘテロアレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その(1)炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)もしくは非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基)で置きかえられており、および(2)炭化水素の少なくとも1種のメチン基(−C=)は、3価のヘテロ原子と置きかえられており、ならびに/または炭化水素の少なくとも1種のビニリデン基(−CH=CH−)は、2価のヘテロ原子と置きかえられている。
【0015】
ここで使用される場合、用語「アルカンジイル基」は、アルカンから2個の水素原子を除去することによりアルカンから誘導された2価の官能基を意味する。これらの水素原子は、アルカン上の同じ炭素原子(エタン−1,1−ジイルのように)または異なる炭素原子(エタン−1,2−ジイルのように)から除去することができる。
【0016】
ここで使用される場合、用語「置換アルカンジイル基」は、アルカンから2個の水素原子を除去することにより置換アルカンから誘導された2価の官能基を意味する。これらの水素原子は、置換アルカン上の同じ炭素原子(2−フルオロエタン−1,1−ジイルのように)または異なる炭素原子(1−フルオロエタン−1,2−ジイルのように)から除去することができる。この定義では、用語「置換アルカン」は、置換アルキル基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0017】
ここで使用される場合、用語「シクロアルカンジイル基」は、シクロアルカンから2個の水素原子を除去することによりシクロアルカンから誘導された2価の官能基を意味する。これらの水素原子は、シクロアルカン上の同じ炭素原子または異なる炭素原子から除去することができる。
【0018】
ここで使用される場合、用語「置換シクロアルカンジイル基」は、アルカンから2個の水素原子を除去することにより置換シクロアルカンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換シクロアルカン」は、置換シクロアルキル基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0019】
ここで使用される場合、用語「アレーンジイル基」は、環炭素原子から2個の水素原子を除去することによりアレーン(単環式および多環芳香族炭化水素)から誘導された2価の官能基を意味する。
【0020】
ここで使用される場合、用語「置換アレーンジイル基」は、環炭素原子から2個の水素原子を除去することにより置換アレーンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換アレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その炭化水素の1種以上の水素原子は、非水素原子(例えば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(例えば、ヒドロキシ基)で置きかえられている。
【0021】
ここで使用される場合、用語「ヘテロアレーンジイル基」は、環原子から2個の水素原子を除去することによりヘテロアレーンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「ヘテロアレーン」は、単環式および多環芳香族炭化水素から誘導された化合物を意味し、その炭化水素の少なくとも1種のメチン基(−C=)は、3価のヘテロ原子と置きかえられており、ならびに/または炭化水素の少なくとも1種のビニリデン基(−CH=CH−)は、2価のヘテロ原子と置きかえられている。
【0022】
ここで使用される場合、用語「置換ヘテロアレーンジイル基」は、環原子から2個の水素原子を除去することにより置換ヘテロアレーンから誘導された2価の官能基を意味する。この定義では、用語「置換ヘテロアレーン」は、置換ヘテロアリール基の定義において上述されているものと同じ意味を有する。
【0023】
特に指示がない限り、条件は25℃、1気圧および50%相対湿度であり、濃度は重量により、分子量は重量平均分子量に基づいている。本出願で使用されている用語「ポリマー」は、重量平均分子量(Mw)が少なくとも5,000である材料を示す。用語「コポリマー」は、2個以上の異なるモノマー単位を含有するポリマー、例えばターポリマーを含むようにその広い意味で使用され、特に指示がない限り、ランダム、ブロック、および統計コポリマーを含む。特定の相中または異相組成物中のエチレンまたはプロピレンの濃度は、任意の充填剤または他の非ポリオレフィン添加剤を除く、それぞれ相または異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に対する、反応したエチレン単位またはプロピレン単位の重量に基づいている。全体的に不均一なポリマー組成物中の各相の濃度は、任意の充填剤または他の非ポリオレフィン添加剤またはポリマーを除く、異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に基づいている。
【0024】
本発明によって有利には改変されていてもよい対象の異相ポリオレフィンポリマーは、少なくとも2つの異なる相−ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーから選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーから選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を特徴とする。エチレンポリマー相のエチレン含有量は、少なくとも8重量%である。エチレン相がエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーである場合、エチレン相のエチレン含有量は、8〜90重量%の範囲であってもよい。本発明の一態様では、エチレン相のエチレン含有量は、少なくとも50重量%である。プロピレンポリマー相またはエチレンポリマー相のいずれかは、連続相を形成していてもよく、もう一方は、離散または分散相を形成することになる。例えば、エチレンポリマー相は、不連続相であってもよく、ポリプロピレンポリマー相は、連続相であってもよい。本発明の一態様では、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、エチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも多い。
【0025】
プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相の相対濃度は、広範囲にわたって変化していてもよい。一例として、エチレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの総量の5〜80重量%を占めていてもよく、プロピレンポリマー相は、組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの総量の20〜95重量%を占めていてもよい。
【0026】
本発明の種々の態様では、(i)エチレン含有量は、異相組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー含有量に基づいて、5〜75重量%、またはさらには5〜60重量%の範囲であってもよく、(ii)エチレンポリマー相は、エチレン−プロピレンまたはエチレン−オクテンエラストマーであってもよく、かつ/または(iii)プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、80重量%以上であってもよい。
【0027】
本発明は、ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを改変するのに特に有用である。耐衝撃性コポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーから選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相、ならびにエチレン/C3〜C10α−オレフィンモノマーから選択されるエラストマーエチレンポリマーを含む不連続相を特徴としていてもよく、エチレンポリマーは、エチレン含有量が8〜90重量%である。
【0028】
プロピレン耐衝撃性コポリマーを対象とした本発明の種々の態様では、(i)不連続相のエチレン含有量は、8〜80重量%であってもよく、(ii)異相組成物のエチレン含有量は、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーに基づいて、5〜30重量%であってもよく;(iii)連続相のプロピレン含有量は、80重量%以上であってもよく、かつ/または(iv)不連続相は、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの5〜35重量%であってもよい。
【0029】
改変されていてもよい異相ポリオレフィンポリマーの例は、比較的硬質なポリプロピレンホモポリマーマトリックス(連続相)およびエチレン−プロピレンゴム(EPR)粒子の微細分散相を特徴とする耐衝撃性コポリマーである。ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーは、二段プロセスで作製されていてもよく、その場合、ポリプロピレンホモポリマーが第一段で重合され、エチレン−プロピレンゴムが第二段で重合される。あるいは、当技術分野で周知のように、耐衝撃性コポリマーは、三段以上で作製されていてもよい。適当なプロセスは、以下の参考文献:米国特許第5,639,822号および米国特許第7,649,052 B2号で見つけてもよい。ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーを作製するための適当なプロセスの例は、Spheripol(登録商標)、Unipol(登録商標)、Mitsui法、Novolen法、Spherizone(登録商標)、Catalloy(登録商標)、Chisso法、Innovene(登録商標)、Borstar(登録商標)、およびSinopec法である。これらのプロセスは、重合を達成するために、不均一または均一チーグラー・ナッタまたはメタロセン触媒を使用することができる。
【0030】
異相ポリオレフィンポリマー組成物は、2つ以上のポリマー組成物を溶融混合することによって形成されてもよく、これは固体状態で少なくとも2つの異なる相を形成する。一例として、異相ポリオレフィン組成物は、3つの異なる相を含んでいてもよい。異相ポリオレフィンポリマー組成物は、2種以上のリサイクルポリオレフィン組成物の溶融混合の結果として生じ得る。したがって、本明細書では、表現「異相ポリオレフィンポリマー組成物を提供すること」には、既に異相であるプロセスでポリオレフィンポリマー組成物を使用すること、ならびにプロセス中に2つ以上のポリオレフィンポリマー組成物を溶融混合することが含まれ、ここで、2つ以上のポリオレフィンポリマー組成物は、異相系を形成する。例えば、異相ポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーとエチレン/α−オレフィンコポリマー、例えばエチレン/ブテンエラストマーを溶融混合することによって作製してもよい。適当なコポリマーの例は、Engage(商標)、Exact(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)、Versify(商標)、INFUSE(商標)、Nordel(商標)、Vistalon(登録商標)、Exxelor(商標)、およびAffinity(商標)となる。さらに、異相系を形成するポリオレフィンポリマー成分の混和性は、系中の連続相の融点以上に加熱されると異なることがあるが、それにもかかわらず系は、冷却および固化すると2つ以上の相を形成することになることが理解されよう。異相ポリオレフィンポリマー組成物の例は、米国特許第8,207,272 B2号および欧州特許第1 391 482 B1号に見出すことができる。
【0031】
本発明の一態様では、改変されるべき異相ポリオレフィンポリマーは、不飽和結合を有する任意のポリオレフィン構成成分を有しておらず、特に、プロピレン相中のプロピレンポリマーとエチレン相中のエチレンポリマーの両方は、不飽和結合を含んでいない。
【0032】
本発明の別の態様では、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー成分に加えて、異相系は、エラストマー、例えばエラストマーエチレンコポリマー、エラストマープロピレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)およびスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、プラストマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、LLDPE、LDPE、VLDPE、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、および非晶質ポリオレフィンを含んでいてもよい。ゴムは、未使用であっても、またはリサイクルであってもよい。
【0033】
異相ポリオレフィンポリマー組成物は、組成物中に生成したフリーラジカルの存在下でポリマー組成物と相溶化剤を混合することによって改変される。
【0034】
本発明の一態様では、異相ポリオレフィンポリマー組成物は、組成物中に生成したフリーラジカルの存在下でポリマー組成物と相溶化剤を溶融混合することによって改変される。溶融混合工程は、組成物が、組成物の主要なポリオレフィン成分の溶融温度以上に加熱され、溶融状態にある間に混合されるような条件下で実施される。適当な溶融混合プロセスの例には、溶融コンパウンディング、例えば押出機中、射出成形、およびバンバリーミキサーまたはニーダー中での混合が含まれる。一例として、混合物は、160℃〜300℃の温度で溶融混合されていてもよい。特に、プロピレン耐衝撃性コポリマーは、180℃〜290℃の温度で溶融混合されていてもよい。ポリマー組成物(プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相)、相溶化剤および有機過酸化物は、組成物中の全てのポリオレフィンポリマーの溶融温度以上の温度において押出機中で溶融コンパウンドされていてもよい。
【0035】
本発明の別の態様では、ポリマーは、溶媒中で溶解されていてもよく、相溶化剤は、ポリマー溶液に加えられていてもよく、ラジカルは、溶液中で生成していてもよい。Macromolecules、「Ester Functionalization of Polypropylene via Controlled Decomposition of Benzoyl Perioxide during Solid−State Shear Pulverization」−vol.46、pp.7834〜7844(2013)に記載されているように、本発明の別の態様では、相溶化剤は、固体状態のポリマーと合わせてもよく、フリーラジカルは、固相剪断粉砕中に生成され得る。
【0036】
従来の処理装置は、例えば有機過酸化物など、混合物に加えられる、または例えば剪断力、紫外線などによって、in−situで生成される、いずれかのフリーラジカルの存在下で、単一工程でプロピレンポリマー、エチレンポリマーおよび相溶化剤を一緒に混合するために使用していてもよい。それにもかかわらず、本明細書に記載されているように、複数の工程および種々の配列中の成分の種々の組合せを混合し、続いて混合物を相溶化剤がポリオレフィンポリマーと反応する条件にさらすことも可能である。
【0037】
例えば、相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤(化合物を使用した場合)は、一またはマスターバッチ組成物の形態でポリマーに加えることができる。適当なマスターバッチ組成物は、担体樹脂中に相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤を含むことができる。相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤は、マスターバッチ組成物中に、組成物の全重量に基づいて約1重量%〜約80重量%の量で存在し得る。任意の適当な担体樹脂、例えば任意の適当な熱可塑性ポリマーは、マスターバッチ組成物中で使用することができる。例えば、マスターバッチ組成物のための担体樹脂は、ポリオレフィンポリマー、例えばポリプロピレン耐衝撃性コポリマー、ポリエチレンホモポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンポリマー、ポリオレフィンワックス、またはこのようなポリマーの混合物であってよい。担体樹脂は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマーもしくはエチレンポリマーと同じまたは類似しているプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーであってもよい。このようなマスターバッチ組成物は、最終消費者が異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマー(複数可)対エチレンポリマー(複数可)の比を操作することを可能にするはずである。これは、所望のセットの特性(例えば、耐衝撃性と剛性のバランス)を達成するために、最終消費者が商用の樹脂グレードのプロピレン対エチレン比を改変する必要がある場合に好ましい可能性がある。
【0038】
相溶化剤は、(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)非環式炭素−炭素二重結合中の第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)第2の炭素原子によって非環式炭素−炭素二重結合と連結している、非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む。相溶化剤を説明するのに利用されるように、用語「非環式炭素−炭素二重結合」は、芳香族環などの環式系内に含有されていない炭素−炭素二重結合を意味する。したがって、例えば、フェニル環内に含有されているビニリデン基(−CH=CH−)中の炭素−炭素二重結合は、非環式炭素−炭素二重結合ではない。しかしながら、化合物スチレン(すなわち、フェニルエテン)のビニル基内に含有されている炭素−炭素二重結合は、非環式炭素−炭素二重結合である。さらに、環式系に懸垂(pendant)している炭素−炭素二重結合(例えば、炭素−炭素結合は、環式系の一部である第1の炭素原子と環式系の一部ではない第2の炭素原子との間で形成される)も非環式炭素−炭素二重結合である。
【0039】
相溶化剤は、非環式炭素−炭素二重結合中の炭素原子の1つと直接結合した電子求引性基をさらに含む。用語「電子求引性基」は、ここでその通常の意味で使用され、非環式炭素−炭素二重結合から電子密度を引き離す官能基を意味する。適当な電子求引性基の例には、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基(例えば、エステルおよびアミドに含有されているものなど)、過フッ化アルキル基、第四級アンモニウム基、およびホスホリル基(例えば、ホスフィンオキシド、ホスホネート、およびホスフィネートに含有されているものなど)があるが、それだけには限定されない。好ましい態様では、電子求引性基は、シアノ基、ニトロ基、およびカルボニル基からなる群から選択される。
【0040】
相溶化剤は、第2の炭素−炭素多重結合(すなわち、非環式炭素−炭素二重結合に加えて別の炭素−炭素多重結合)をさらに含む。この第2の炭素−炭素多重結合は、非環式炭素−炭素二重結合と共役しており、かつ非環式二重結合の第2の炭素原子(すなわち、電子求引性基が結合していない炭素原子)によって非環式炭素−炭素二重結合と連結している。第2の炭素−炭素多重結合は、非環式または環式系に含有されていてよい。好ましい態様では、第2の炭素−炭素は、芳香族/ヘテロ芳香族環内または芳香族/ヘテロ芳香族環に結合した置換基(例えば、ビニル基)中など、芳香族またはヘテロ芳香族系中に含有されている二重結合である。好ましい態様では、第2の炭素−炭素多重結合は、第2の炭素−炭素多重結合と結合または共役した2つ以上の電子供与性基を有していない。用語「電子供与性基」は、ここでその通常の意味で使用され、第2の炭素−炭素多重結合に電子密度を移す官能基を意味する。
【0041】
好ましい一態様では、相溶化剤は、式(I)
【0042】
【化1】
【0043】
の構造に一致する化合物からなる群から選択される。式(I)の構造では、R1は、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)
【0044】
【化2】
【0045】
の構造に一致する基からなる群から選択される。式(V)の構造では、R5およびR6は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはR5およびR6は、組み合わせて環状構造を形成することができる。変数xは、0、1、および2からなる群から選択される整数である。好ましい態様では、変数xは、0であり、R5は、水素であり、R6は、アリール基(例えば、C6〜C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6〜C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4〜C12ヘテロアリール基)、および置換ヘテロアリール基(例えば、C4〜C12置換ヘテロアリール基)からなる群から選択される。
【0046】
式(I)の構造では、R2は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。R1およびR2が両方とも芳香族基である場合、(i)R1およびR2は、直接結合、アルカンジイル基(例えばメタンジイル基)、酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子(例えば、−N(H)−基)によって架橋され、または(ii)R1およびR2の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0047】
式(I)の構造の好ましい態様では、R1およびR2の少なくとも1つは、式(C)、(CX)、または(CXV)
【0048】
【化3】
【0049】
の構造に一致する基である。式(C)の構造では、R100は、C(H)、C(R101)、および窒素原子からなる群から選択される。変数aは、0〜4の整数である。各R101は、独立に、アルキル基(例えば、C1〜C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1〜C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6〜C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6〜C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4〜C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えば、C4〜C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1〜C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、C6〜C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えば、C2〜C10アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2〜C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えば、C1〜C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えば、C6〜C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR101基は、連結して、多環式アリール基などの縮合環構造を形成することができる。式(CX)の構造では、R110は、酸素原子、硫黄原子、およびN(R115)からなる群から選択される。R115は、水素、アルキル基(例えば、C1〜C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1〜C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6〜C12アリール基)、および置換アリール基(例えば、C6〜C12置換アリール基)からなる群から選択される。R111は、C(H)、C(R112)、および窒素原子からなる群から選択される。R112は、アルキル基(例えば、C1〜C10アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1〜C10置換アルキル基)、アリール基(例えば、C6〜C12アリール基)、置換アリール基(例えば、C6〜C12置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4〜C12ヘテロアリール基)、置換ヘテロアリール基(例えば、C4〜C12置換ヘテロアリール基)、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1〜C10アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、C6〜C12アリールオキシ基)、アルケニル基(例えば、C1〜C10アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C2〜C10アルキニル基)、アルキルエステル基(例えば、C2〜C10アルキルエステル基)、およびアリールエステル基(例えば、C6〜C12アリールエステル基)からなる群から選択される。さらに、2つの隣接するR112基は、連結して、多環式アリール基などの縮合環構造を形成することができる。変数bは、0〜2の整数である。式(CXV)の構造では、R110およびR112は、式(CX)について上述したものと同じ基から選択され、変数cは、0〜3の整数である。
【0050】
式(I)の構造では、R3およびR4は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)
【0051】
【化4】
【0052】
の構造に一致する基からなる群から選択される。式(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)の構造では、R7およびR9は、独立に、アルキル基(例えば、C1〜C22アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1〜C22置換アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C3〜C22シクロアルキル基)、置換シクロアルキル基(例えば、C3〜C22置換シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6〜C22アリール基)、置換アリール基(例えば、C6〜C22置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4〜C22ヘテロアリール基)、および置換ヘテロアリール基(例えば、C4〜C22置換ヘテロアリール基)からなる群から選択される。R8は、水素、アルキル基(例えば、C1〜C22アルキル基)、置換アルキル基(例えば、C1〜C22置換アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C3〜C22シクロアルキル基)、置換シクロアルキル基(例えば、C3〜C22置換シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6〜C22アリール基)、置換アリール基(例えば、C6〜C22置換アリール基)、ヘテロアリール基(例えば、C4〜C22ヘテロアリール基)、および置換ヘテロアリール基(例えば、C4〜C22置換ヘテロアリール基)からなる群から選択される。式(VIII)の構造に一致する基では、R7およびR9は、組み合わせて環状構造を形成することができる。最後に、式(I)の構造では、R3およびR4の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される。好ましい態様では、R3およびR4は、独立に、水素、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)の構造に一致する基からなる群から選択され、式中、R7は、アルキル基(例えば、C1〜C22アルキル基)である。
【0053】
別の好ましい態様では、相溶化剤は、式(X)
【0054】
【化5】
【0055】
の構造に一致する化合物からなる群から選択される。式(X)の構造では、R10は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および式(XV)
【0056】
【化6】
【0057】
の構造に一致する基からなる群から選択される。式(XV)の構造では、R15は、R16とR17の間の直接結合、酸素原子、アルカンジイル基、および置換アルカンジイル基からなる群から選択される。R16およびR17は、独立に、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される。好ましい態様では、R10は、式(CXX)(CXXV)、(CXXX)、および(CXXXV)
【0058】
【化7】
【0059】
からなる群から選択される構造に一致する基である。式(CXXX)および(CXXXV)の構造では、R140は、酸素原子、硫黄原子、−N(H)−、および−N(R145)−からなる群から選択され、式中、R145は、C1〜C10アルキル基およびC6〜C12アリール基からなる群から選択される。式(CXX)、(CXXV)、(CXXX)、および(CXXXV)の構造では、各R141は、ハロゲン原子からなる群から選択される。変数dは、0〜2の整数であり、変数eは、0〜4の整数である。別の好ましい態様では、R10は、R15が直接結合および酸素原子から選択され、R16およびR17が式(CXX)の構造に一致する基である、式(XV)の構造に一致する基である。
【0060】
式(X)の構造では、R11、R12、R13、およびR14は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および上述した式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される。式(X)の構造では、R11およびR12の少なくとも1つ、ならびにR13およびR14の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される。
【0061】
別の好ましい態様では、相溶化剤は、式(XX)
【0062】
【化8】
【0063】
の構造に一致する化合物からなる群から選択される。(XX)の構造では、R20は、2価の連結基である。2価の連結基は、任意の適当な2価の連結基であってよい。適当な2価の連結基には、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基があるが、それだけには限定されない。好ましい一態様では、R20は、式(XXV)
【0064】
【化9】
【0065】
の構造に一致する基である。式(XXV)の構造では、R27は、酸素原子、−N(H)−、および−N(R29)−からなる群から選択され、式中、R29は、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、および置換シクロアルキル基からなる群から選択される。R28は、アルカンジイル基およびシクロアルカンジイル基からなる群から選択される。好ましい態様では、R27は、酸素原子であり、R28は、アルカンジイル基(例えば、C1〜C8アルカンジイル基)である。別の好ましい態様では、R20は、式(XXX)
【0066】
【化10】
【0067】
の構造に一致する基である。式(XXX)の構造では、R30は、アルカンジイル基およびシクロアルカンジイル基からなる群から選択される。R31は、酸素原子、−N(H)−、および−N(R29)−からなる群から選択され、式中、R29は、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、および置換シクロアルキル基からなる群から選択される。R32は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および−R3536−からなる群から選択され、式中、R35は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、R36は、アルカンジイル基(例えば、C1〜C4アルカンジイル基)からなる群から選択される。好ましい態様では、R30は、アルカンジイル基(例えば、C1〜C8アルカンジイル基)であり、R31は、酸素原子であり、R32は、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および−R3536−から選択される。より具体的には、このような好ましい態様では、R32は、好ましくは式(XL)
【0068】
【化11】
【0069】
の構造に一致する。
【0070】
式(XX)の構造では、R21およびR22は、シアノ基、ニトロ基、および上述した式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される。R23、R24、R25、およびR26は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および上述した式(V)の構造に一致する基からなる群から選択される。式(XX)の構造では、R23およびR24の少なくとも1つ、ならびにR25およびR26の少なくとも1つは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)の構造に一致する基からなる群から選択される。さらに、R23およびR24が両方とも芳香族基である場合、(i)R23およびR24は、直接結合またはアルキル基によって架橋され、または(ii)R23およびR24の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。そして、R25およびR26が両方とも芳香族基である場合、(i)R25およびR26は、直接結合またはアルキル基によって架橋され、または(ii)R25およびR26の少なくとも1つは、電子求引性基で置換された置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0071】
組成物中の相溶化剤の濃度は、最終消費者の目的を満たすように変えることができる。例えば、濃度は、ポリマーの強度、特に衝撃強さの最小限の低下(または潜在的には増大)で、ポリマー組成物のMFRの所望の増大を達成するために変えることができる。好ましい態様では、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約10ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、または約200ppm以上の量で存在し得る。別の好ましい態様では、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約5重量%(50,000ppm)以下、約4重量%(40,000ppm)以下、約3重量%(30,000ppm)以下、約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、または約0.5重量%(5,000ppm)以下の量で存在し得る。したがって、いくつかの好ましい態様では、相溶化剤は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約10〜約50,000ppm、約100〜約10,000ppm、または約200〜約5,000ppmの量で存在し得る。
【0072】
化学的フリーラジカル発生剤を使用した場合(以下に説明するように)、ポリマー組成物中の相溶化剤の濃度は、相溶化剤の量と化学的フリーラジカル発生剤の量との比によって付加的または代替的に表すことができる。相溶化剤の分子量および化学的フリーラジカル発生剤中の過酸化物結合の数の違いに関してこの比を標準化するために、比は、組成物中に存在する相溶化剤のモル数対化学的フリーラジカル発生剤の添加から存在する過酸化物結合(O−O結合)のモル当量の比として通常表される。好ましくは、比(すなわち、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量の比)は、約1:10以上、約1:5以上、約3:10以上、約2:5以上、約1:2以上、約3:5以上、約7:10以上、約4:5以上、約9:10以上、または約1:1以上である。別の好ましい態様では、比は、約10:1以下、約5:1以下、約10:3以下、約5:2以下、約2:1以下、約5:3以下、約10:7以下、約5:4以下、約10:9以下、または約1:1以下である。したがって、一連の好ましい態様では、相溶化剤は、組成物中に、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量との比が約1:10〜約10:1、約1:5〜約5:1、約1:4〜約4:1、約3:10〜約10:3、約2:5〜約5:2、または約1:2〜約2:1で存在し得る。
【0073】
フリーラジカル発生剤は、組成物中のポリオレフィンポリマーとの相溶化剤の反応を促進するのに十分なフリーラジカルを発生させながら、ポリマー鎖の切断を引き起こし、それによって異相ポリオレフィンポリマー組成物のMFRに積極的に影響を与えるために本発明で使用されている。フリーラジカル発生剤は、化合物、例えば有機過酸化物またはビス−アゾ化合物であってもよく、あるいはフリーラジカルは、反応系に、超音波、剪断力、電子線(例えばβ線)、光(例えば紫外線)、熱および放射線(例えばγ線およびX線)、または前述の組合せを適用することによって発生させてもよい。
【0074】
1個以上のO−O官能基を有する有機過酸化物は、本発明で特に有用である。このような有機過酸化物の例には、:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−(エチルアセテート)−1,2,4,5−テトラオキシシクロノナン、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド;t−ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシドおよび2,5−ジメチルへキセン−2,5−ジペルイソノナノエート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert−アミルパーネオデカノエート、tert−ブチル−パーネオデカノエート、tert−ブチルパーピバレート、tert−アミルパーピバレート、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペルマレエート、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロ−ヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルイソノナノエート、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジベンゾエート、tert−ブチルペルアセテート、tert−アミルペルベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、3−tert−ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、ジ−tert−アミルペルオキシド、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドまたはtert−ブチルヒドロペルオキシドが含まれる。
【0075】
有機過酸化物は、任意の適当な量でポリマー組成物中に存在し得る。有機過酸化物の適当な量は、いくつかの要因、例えば組成物中で使用されている特定のポリマー、ポリマーの初期MFR、およびポリマーのMFRの所望の変化によって決まることになる。好ましい態様では、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて約10ppm以上、約50ppm以上、または約100ppm以上の量で存在し得る。別の好ましい態様では、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて約2重量%(20,000ppm)以下、約1重量%(10,000ppm)以下、約0.5重量%(5,000ppm)以下、約0.4重量%(4,000ppm)以下、約0.3重量%(3,000ppm)以下、約0.2重量%(2,000ppm)以下、または約0.1重量%(1,000ppm)以下の量で存在し得る。したがって、一連の好ましい態様では、有機過酸化物は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて約10〜約20,000ppm、約50〜約5,000ppm、約100〜約2,000ppm、または約100〜約1,000ppmの量で存在し得る。上述したように、有機過酸化物の量は、相溶化剤と過酸化物結合のモル比の点から表すこともできる。
【0076】
適当なビスアゾ化合物も、フリーラジカルの供給源として使用していてもよい。このようなアゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハイドレート、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル 2,2’−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)を、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}または2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}である。
【0077】
フリーラジカル開始剤として有用な他の化合物には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび立体障害ヒドロキシルアミンエステルが含まれる。
【0078】
種々のラジカル発生剤は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0079】
本発明の異相ポリオレフィン組成物は、安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸化防止剤、難燃剤、酸中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、スクラッチ防止剤、加工助剤、発泡剤、着色剤、乳白剤、透明剤、および/または成核剤を含む、熱可塑性組成物に従来使用されている各種添加剤と相溶性がある。さらなる例として、組成物は、充填剤、例えば炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ガラス球、無機ウィスカー例えばMilliken Chemical、USAから入手可能なHyperform(登録商標)HPR−803i、マグネシウムオキシサルフェートウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、雲母、珪灰石、粘土、例えばモンモリロナイト、およびバイオ源または天然充填剤を含んでいてもよい。添加剤は、改変された異相ポリオレフィン組成物中の全成分の最大75重量%までを占めていてもよい。
【0080】
本発明の異相ポリオレフィン組成物は、射出成形、薄肉射出成形、一軸配合、二軸配合、バンバリー混合、共ニーダー混合、二本ロール練り、シート押出、繊維押出、フィルム押出、パイプ押出、異形押出、押出コーティング、押出吹込み成形、射出吹込み成形、射出延伸吹込み成形、圧縮成形、押出圧縮成形、圧縮吹込二次成形、圧縮延伸吹込二次成形、熱成形、および回転成形を含むが、それだけには限定されない従来のポリマー加工用途で使用してもよい。本発明の熱可塑性ポリマー組成物を使用して作製した熱可塑性ポリマー製品は、本発明の熱可塑性ポリマー組成物を含有する1つまたは任意の適当な数の複数の層を含んでいる、複数の層からなっていてもよい。一例として、典型的な最終用途製品には、容器、包装、自動車部品、ボトル、発泡または起泡製品、家庭電気器具部品、ふた、カップ、家具、家庭用品、バッテリーケース、枠箱、パレット、フィルム、シート、繊維、パイプ、および回転成形部品が含まれる。
【0081】
以下の例は、上述の主題をさらに例示しているが、当然ながら、いかなる形でもその範囲を限定するものとしてみなすべきではない。以下の方法は、言及されていない限り、以下の例に記載された特性を決定するために使用された。
【0082】
それぞれの組成物は、約1分間密閉容器中で成分をブレンドすることによって配合した。次いで組成物を、スクリュー直径16mmおよび長さ/直径比が25:1のPrism TSE−16−TC同時回転式、完全噛合型、並行、二軸押出機上で溶融コンパウンドした。押出機のバレル温度は、約195℃から約215℃まで増大させ、スクリュー速度は、約500rpmに設定した。各ポリプロピレンコポリマー組成物の押出物(ストランドの形態)は、水浴で冷却し、続いてペレット化した。
【0083】
次いでペレット化した組成物を使用して、直径14mmのスクリューを有するNissei HM7 7トン射出成形機上で組成物を射出成形することによって試験片(bar)を形成した。射出成形機のバレル温度は、約215〜230℃であり、金型温度は、約25℃であった。得られた試験片は、寸法が長さ約80mm、幅約10mm、および厚さ約4.0mmであった。
【0084】
メルトフローレート(MFR)は、(ASTM D1238)に基づいてポリプロピレンでは2.16kgの荷重で230℃でペレット化した組成物について決定した。
【0085】
試験片のノッチ付アイゾッド衝撃強さをISO法180/Aに基づいて測定した。ノッチ付アイゾッド衝撃強さは、+23℃または−30°のいずれかに調節された試験片について+23℃で測定した。
【0086】
分子量分布(MWD)ならびに前記分布の重量平均、Mwは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)とも呼ばれるゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて決定した。全ての測定は、移動相として125ppmブチルヒドロキシトルエンで阻害されたトリクロロベンゼン、160℃のカラム温度および約1mg/mlの試料濃度を用いて、(3)300×7.5mm PLgel 10μmMixed−B LS、屈折率検出器、粘度計ならびに15°および90℃光散乱検出器(160℃で)を含有するAgilent PL−GPC 220 GPC/SECシステムの使用によって実施された。下記の例では、15°光散乱検出器は、濃度を測定するために選択されている。ゲル透過クロマトグラフィーは、分子が流体力学的分子体積またはサイズに基づいて分離されている分離技術である。適切なカラム較正または分子量感受性の検出器(molecular-weight-sensitive detector)、例えば光散乱もしくはビスコメトリーの使用によって、分子量分布および統計的分子量平均を得ることができる。ゲル透過クロマトグラフィーでは、分子は、ビーズの中に移されてカラム中のビーズの間に沿って通り抜ける組合せを介してカラムを通過する。カラムの中を分子が通過するために必要な時間は、分子量の増加と共に減少する。任意の与えられた時間でカラムから出るポリマーの量は、種々の検出器で測定される。計測器および検出器のより詳細な説明は、Ron Clavier(2008)による、章題「Composition、Molar Mass and Molar Mass Distribution」、Characterization and Analysis of Polymersに見出すことができる。
【0087】
キシレン可溶分は、修正されたASTM D5492−10によって決定され、異相ポリプロピレンコポリマー中に存在するゴムの量の尺度である。ポリマーを約0.6g量り分け、撹拌子と一緒に丸底フラスコに入れた。キシレン50mLをフラスコ中のポリマーに加えた。ポリマーキシレン混合物を強烈に撹拌しながら還流温度まで加熱した。還流温度に達した後、溶液をさらに30分撹拌し、次いで室温まで冷却した。得られたポリマー/キシレン混合物は、穏やかに撹拌して任意の沈殿したポリマーゲルをばらばらにし、次いで4号ろ紙に注ぎ込み、可溶性画分を含有するろ液と不溶性画分の両方を回収した。ろ液のアリコート10mLをクラスAピペットで取り出し、秤量皿に移した。次いでろ液を含有する皿を、キシレンを蒸発させるために155℃の温度を保持している温度制御されたホットプレート上に置いた。ほとんどのキシレンを蒸発させた後、80±10℃の温度に設定した真空乾燥器に皿を移した。圧力を13.3kPa未満に下げ、約2時間または恒量が得られるまで試料を乾燥させた。次いで皿の質量を引き、残留可溶性ポリマーの質量を得た。元試料中の可溶性ポリマーのパーセント値を以下のように計算した:
s=((Vbo/vb1*(W2−W1))/W0*100
ここで:Ss=試料の可溶性画分、%;Vbo=溶媒の元の体積、mL;Vb1=可溶分決定に使用したアリコートの体積、mL;W2=皿と可溶分の質量、g;W1=皿の質量、g;およびW0=元の試料の質量、gである。
【0088】
例1
以下の例は、本発明の方法に基づいて、異相ポリオレフィン組成物の改変および達成された性能強化を示す。
【0089】
4種の異相ポリマー組成物を生成した。比較試料1A(C.S.1A)は、改変されていないポリプロピレンコポリマーであった。比較試料1B(C.S.1B)は、過酸化物を用いてビスブレーキングされた同じポリプロピレンコポリマーで作製した。試料1Aおよび1Bは、相溶化剤として2−(フラン−2−イルメチレン)マロノニトリル(以下の表7の化合物ID 1)と配合した同じビスブレーキングされたポリプロピレンコポリマーで作製した。これらの試料の一般的な配合を、表1に記載している。
表1.異相ポリプロピレンコポリマー配合物
【0090】
【表1】
【0091】
Irganox(登録商標)1010は、BASFから入手可能である
Irgafos(登録商標)168は、BASFから入手可能である
Varox DBPHは、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能な有機過酸化物である
表2に記載したそれぞれの組成物は、上記の手順によって混合し、押出し、かつ射出成形した。次いで試験片を上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけ、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による試験中に15°光散乱検出器シグナルを用いて評価した。
表2.中衝撃性、異相ポリプロピレンコポリマーの性能
【0092】
【表2】
【0093】
*部分破損および未破壊も示した
それぞれの組成物のポリマー分子量で得られた変化を図1に示す。過酸化物がポリプロピレンに添加されている場合、分子量は、より長い保持時間へのピークシフトによって示されたように減少し、約1000秒未満の保持時間でシグナルの相対的な減少が起こる。本発明の組成物(試料1Aおよび1B)は、改変されていないまたは過酸化物で改変された異相樹脂では観察されていない、より短い保持時間(より高い分子量)に戻ったシフトおよび約950秒の保持時間ではっきりした肩を示す。この肩は、改変されていないまたは過酸化物で改変された異相樹脂のいずれかのものよりもより高い分子量を有する改変されたポリマーの形成を示している。
【0094】
例2
以下の例は、非異相ポリオレフィン組成物中で相溶化剤を用いる効果を調べている。
【0095】
4種の非異相ポリマー組成物を生成した。比較試料2A(C.S.2A)は、改変されていないポリプロピレンポリマーであった。比較試料2B(C.S.2B)は、過酸化物を用いてビスブレーキングされた同じポリプロピレンポリマーで作製した。比較試料2Cおよび2Dは、相溶化剤として2−(フラン−2−イルメチレン)マロノニトリルと配合した同じビスブレーキングされたポリプロピレンポリマーで作製した。これらの試料の一般的な配合を、表3に記載している。
表3.非異相ポリプロピレンホモポリマー配合物
【0096】
【表3】
【0097】
Irganox(登録商標)1010は、BASFから入手可能である
Irgafos(登録商標)168は、BASFから入手可能である
Varox DBPHは、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能な有機過酸化物である
表4.非異相ポリプロピレンホモポリマー配合物の性能
【0098】
【表4】
【0099】
表4に記載したそれぞれの組成物は、上記の手順によって混合し、押出し、かつ射出成形した。次いで試験片を上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけ、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による試験中に15°光散乱検出器シグナルを用いて評価した。
【0100】
比較試料2A〜2DのGPCデータを図2に示す。過酸化物がホモポリマーポリプロピレンに添加されている場合、分子量は、より長い保持時間へのシフトによって示されたように減少する。2−(フラン−2−イルメチレン)マロノニトリルを含有する比較試料2Cおよび2Dは、添加剤が過酸化物を相殺するように、より短い保持時間(より高い分子量)に戻ったシフトを示す。しかしながら、試料は、図1の試料1Aおよび1Bで見られるような肩を示さない。
【0101】
例3
以下の例は、上記のいくつかの異相ポリオレフィン組成物の生成を示し、上記の相溶化剤の組込みによって達成された性能強化を調べている。
【0102】
異相ポリマー組成物の物理的性質に対する種々の相溶化剤およびそれらの効果の比較を可能にするため、市販されているポリプロピレンコポリマー(LyondellBasell Pro−Fax SD375S)のメルトフローレートとアイゾッド衝撃との間の関係を、いくつかの異なる添加量の市販されている過酸化物(Varox BDPH)を用いてポリマーをビスブレーキングすることによって調べた。本発明による相溶化剤は、これらの組成物に使用しなかった。次いで、これらの測定から得られた生のMFRおよびアイゾッド衝撃値を、未使用の改変されていないポリマー(ビスブレーキングされていない)のMFRおよびアイゾッド衝撃値に連動させて(indexed to)、相対値を得た。相対MFRおよびアイゾッド衝撃値を以下の表5に報告する。
表5.市販されているポリプロピレンコポリマーの相対MFRおよびアイゾッド衝撃値
【0103】
【表5】
【0104】
次いで、これらの相対値をプロットし、傾向線をプロットに適合させて、ポリマーの相対MFRと相対アイゾッド衝撃との間に観察された関係を表す数学的方程式を得た。傾向線の適合により、次の数学的方程式が得られた:
R=0.9866×MR-0.369
方程式では、IRは、相対アイゾッド衝撃値であり、MRは、相対MFRである。傾向線のR2値は、0.996であり、傾向線がデータに非常によく適合していることを示した。適合度(quality of fit)は、MFRを測定し、相対MFRを計算した後、方程式を使用して予想されるアイゾッド衝撃値を計算できることも示している。この意味では、「予想されるアイゾッド衝撃値」は、ビスブレーキングされたポリマーが相溶化剤の不在下において所与の相対MFRで示すことが予想される値である。相溶化剤を使用する場合、この予想されるアイゾッド衝撃値は、次いで測定したアイゾッド衝撃値と比較して、ポリマーの強度に対する相溶化剤の効果を確認し、定量化することができる。予想されるアイゾッド衝撃値と測定したアイゾッド衝撃値との間のこの差は、以下の表8および9にいくつかの化合物について報告している。
【0105】
本発明による相溶化剤および比較化合物は、表6に記載した一般的な配合に基づいて、異相ポリプロピレンコポリマー組成物の異なるバッチ中にそれぞれ溶融混合した。表7〜9は、各組成物に使用される相溶化剤または比較化合物の構造を記載している。
表6.ポリプロピレンコポリマー配合物
【0106】
【表6】
【0107】
Irganox(登録商標)1010は、BASFから入手可能である
Irgafos(登録商標)168は、BASFから入手可能である
Varox DBPHは、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能である
それぞれの異相ポリプロピレンコポリマー組成物は、上記の手順によって混合し、押出し、かつおよび射出成形した。上記のように、組成物のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃値(23℃における)を測定し、相対メルトフローレートおよびアイゾッド衝撃値を計算した。各組成物の相対メルトフローレートおよび予想されるアイゾッド衝撃値からのパーセント変化を、以下の表8および9に報告している。本発明による相溶化剤を含有するいくつかの試験組成物は、アイゾッド衝撃試験中に完全に破壊されたとは限らない。これらの組成物は、表8および9で「未破壊」および「一部」として報告している。これらの「未破壊」および「一部」破壊試料は、完全に破壊されたとは限らないので、試料のアイゾッド衝撃値は、この試験を用いて定量化することができなかった。言い換えれば、これらの試料の衝撃強さは、試験の限界を超えた。「未破壊」および「一部」破壊試料の衝撃強さは、改変されていないポリプロピレンコポリマー(すなわち、相溶化剤を含まないビスブレーキングされたコポリマー)と同じ試験を用いて定量化することができなかったので、相対アイゾッド衝撃値を計算することができなかった。それにもかかわらず、試験中に試料が完全に破壊されたとは限らないという事実は、ポリマーの衝撃強さが著しく増大したことを明らかする。
表7.相溶化剤識別番号(化合物ID)および化合物構造
【0108】
【表7-1】
【0109】
【表7-2】
【0110】
【表7-3】
【0111】
【表7-4】
【0112】
【表7-5】
【0113】
【表7-6】
【0114】
【表7-7】
【0115】
【表7-8】
【0116】
【表7-9】
【0117】
【表7-10】
【0118】
【表7-11】
【0119】
【表7-12】
【0120】
【表7-13】
【0121】
【表7-14】
【0122】
【表7-15】
【0123】
【表7-16】
【0124】
【表7-17】
【0125】
【表7-18】
【0126】
【表7-19】
【0127】
【表7-20】
【0128】
【表7-21】
【0129】
表8.過酸化物結合1モル当たり化合物1モルの比で添加された化合物の結果。
【0130】
【表8-1】
【0131】
【表8-2】
【0132】
【表8-3】
【0133】
【表8-4】
【0134】
【表8-5】
【0135】
表9.過酸化物結合1モル当たり化合物2モルの比で添加された化合物の結果。
【0136】
【表9-1】
【0137】
【表9-2】
【0138】
【表9-3】
【0139】
【表9-4】
【0140】
【表9-5】
【0141】
*化合物10は、試料3〜109に過酸化物結合1モル当たり化合物4モルのモル比で添加された。
【0142】
表8および9に記載されている結果は、本発明による相溶化剤を含有する組成物が、未使用のビスブレーキングされていない樹脂と比較してメルトフローレートの有意な増大を達成できることを示す。これらの結果は、本発明による相溶化剤を含有する組成物が、ポリマーのアイゾッド衝撃強さの測定可能な(そして多くの場合有意な)増大を達成できることも示す。増大の有意性は、相溶化剤の添加量によって異なるが、本発明による各相溶化剤は、試験した添加量の1つで、予想されるアイゾッド衝撃値に対して少なくとも5%の増大を達成でき、これは商業的に有意な増大であると考えられる。相溶化剤の多くは、予想されるアイゾッド衝撃値に対して15%超の増大をもたらすことができた。さらに、化合物ID 60と化合物ID 80のデータの比較は、構造的に類似した化合物(すなわち、本発明の相溶化剤と構造的に類似しているが、定義された特徴の全てを備えているとは限らない化合物)が、予想されるアイゾッド衝撃値に対して有意な増大をもたらさないことを示す。確かに、化合物ID 80は、予想されるアイゾッド衝撃値に対して測定可能な減少を実際にもたらした。
【0143】
例4
以下の例は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリオレフィンエラストマー、有機過酸化物および本発明の相溶化剤を溶融混合することによって作られた、改変された異相ポリオレフィン組成物の生成を示す。
【0144】
特に、2dg/分ポリプロピレンホモポリマー(Total Petrochemicals 3276)、20w/w%のポリオレフィンエラストマー(Dow Chemical Company製のEngage(商標)7467)、有機過酸化物(R.T.Vanderbilt Companyから入手可能なVarox DBPH)および化合物ID 1を溶融混合および試験した。結果は、過酸化物のみが存在するときならびに過酸化物と相溶化剤のどちらも存在しないときに作られた異相ポリオレフィン組成物と比較した。
【0145】
過酸化物および化合物ID 1の添加量は、表10に記載されている。それぞれのポリマーブレンド組成物は、上記の手順によって混合し、押出し、かつ射出成形した。次いで試験片を上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。
表10.溶融混合中に形成した異相ポリオレフィン組成物
【0146】
【表10】
【0147】
過酸化物または相溶化剤(C.S.4A)のいずれも含まないポリプロピレンホモポリマーとポリオレフィンエラストマーのブレンドは、23℃で一部破壊アイゾッド衝撃挙動を示すが、望ましくない低いメルトフローレートを有している。過酸化物をブレンド(C.S.4B)に添加する場合、メルトフローレートは実質的に増大するが、23℃アイゾッド衝撃強さは、一部破壊から95J/mに望ましくなく減少した。驚くべきことに、試料4Aで示されたように、化合物ID 1が1490ppm添加量で添加された場合、メルトフローレートは高いままであり、かつ23℃アイゾッド衝撃強さは一部破壊挙動を示す。本発明の試料4Aは、高メルトフローレートおよび高アイゾッド衝撃強さ性能の所望のバランスを達成する。
【0148】
例5
以下の例は、組成物の生成と、高衝撃性異相ポリプロピレンコポリマー中への本発明による相溶化剤の組込みによって達成された性能強化を示す。
【0149】
これらの試料に使用した樹脂は、約25%キシレン可溶分を有した、18MFR高衝撃性、異相ポリプロピレンコポリマー、Pro−Fax SG702(LyondellBasell Industries)であった。組成物は、表11に記載された原料で構成されていた。
表11.高衝撃性異相ポリプロピレンコポリマー
【0150】
【表11】
【0151】
Irganox(登録商標)1010は、BASFから入手可能である
Irgafos(登録商標)168は、BASFから入手可能である
Varox DBPHは、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能である
それぞれの組成物は、約1分間密閉容器中で成分をブレンドすることによって配合した。次いで組成物を、スクリュー直径16mmおよび長さ/直径比が25:1のPrism TSE−16−TC同時回転式、完全噛合型、並行、二軸押出機上で溶融コンパウンドした。押出機のバレル温度は、約195℃から約215℃まで増大させ、スクリュー速度は、約500rpmに設定した。各ポリプロピレンコポリマー組成物の押出物(ストランドの形態)は、水浴で冷却し、続いてペレット化した。
【0152】
次いでペレット化した組成物を使用して、直径25.4mmのスクリューを有するARBURG 40トン射出成形機上で組成物を射出成形することによって試験片を形成した。射出成形機のバレル温度は、約200〜220℃であり、金型温度は、約25℃であった。得られた試験片は、寸法が長さ約127mm、幅約12.7mm、および厚さ約3.2mmであった。次いで試験片は、後述の衝撃試験にかけた。
【0153】
試験片のノッチ付シャルピー衝撃強さをASTM法D6110−10に基づいて測定した。ノッチ付シャルピー衝撃強さは、+23℃または−30°のいずれかに調節された試験片について+23℃で測定した。メルトフローレート(MFR)は、(ASTM D1238)に基づいてポリプロピレンでは2.16kgの荷重で230℃で決定した。23℃および−30℃におけるメルトフローレートおよびシャルピー衝撃で得られた変化は、表12に記載されている。
表12.高衝撃性、異相ポリプロピレンコポリマーの性能
【0154】
【表12】
【0155】
250ppmの有機過酸化物のみ(C.S.5B)の添加の結果として生じる組成物は、過酸化物を高衝撃性ポリプロピレンコポリマーに添加するにつれて、メルトフローレートが著しく増大するが、23℃および−30℃におけるシャルピー衝撃が望ましくなく低減することを示す。試料5Aに示された1000ppm過酸化物と一緒の化合物ID 1の使用は、23℃におけるシャルピー耐衝撃性能が非常に望ましい未破壊挙動を示し、かつ−30℃におけるシャルピー耐衝撃性能も増加させながらメルトフローレートの所望の増大を示す。
【0156】
例6
以下の例は、本発明による異相ポリマー組成物の生成を示す。
【0157】
この例で使用した異相ポリマー組成物は、その中でポリプロピレンホモポリマーが少数成分であるブレンドであった。言い換えれば、ポリプロピレンホモポリマーは、異相ポリマー組成物中の離散相であった。本発明のポリマーブレンドは、ポリオレフィンエラストマー(Dow Chemical Company製のEngage(商標)8842)と2dg/分ポリプロピレンホモポリマー(Total Petrochemicals 3276)が3:1w/wの比で構成されていた。1,000ppmの有機過酸化物(R.T.Vanderbilt Companyから入手可能なVarox DBPH)および化合物ID 52をこのポリマーブレンドに添加した。過酸化物および化合物ID 52の添加量は、表13に記載されており、ブレンドの残部がポリオレフィンエラストマーおよびポリプロピレンホモポリマーである。結果は、過酸化物のみが存在するとき(C.S.6B)ならびに過酸化物と相溶化剤のどちらも存在しないとき(C.S.6A)に作られた異相ポリオレフィン組成物と比較した。
【0158】
それぞれの組成物は、約1分間密閉容器中で成分をブレンドすることによって配合した。次いで組成物を、スクリュー直径16mmおよび長さ/直径比が25:1のPrism TSE−16−TC同時回転式、完全噛合型、並行、二軸押出機上で溶融コンパウンドした。押出機のバレル温度は、約195℃から約215℃まで増大させ、スクリュー速度は、約500rpmに設定した。各ポリオレフィンブレンド組成物の押出物(ストランドの形態)は、水浴で冷却し、続いてペレット化した。次いでペレット化した組成物は、12トンCarver Press上で、プラテン温度230℃および保持圧力約6トンで約4分間、幅約6インチ、長さ6インチ、および厚さ0.047インチのシートに圧縮成形した。次いでASTM Type IVドッグボーン試験片を、これらの圧縮成型したシートから打抜いた。ASTM Type IVドッグボーンの引張特性は、ASTM法D638に基づいてMTS Q−Test−5を用いてクロスヘッド速度20.0in/分で測定した。
表13.ポリオレフィンブレンドの性能
【0159】
【表13】
【0160】
過酸化物のみ(相溶化剤なし)を含む組成物は、過酸化物が3:1w/w比のポリオレフィンエラストマーとポリプロピレンホモポリマーを含有するポリオレフィンブレンドに添加された場合、引張降伏強さは減少し、降伏点伸びは増大することを示す。化合物ID 52をこのブレンドに添加する場合、試料6A〜6Cに示すとおり、引張降伏強さは著しく増大する。化合物ID 52と過酸化物の組合せも改変されていない樹脂に対して降伏点伸びを増大させる。試料6Cも、1:2モル比で相溶化剤を添加すると、過酸化物のみよりも高い降伏点伸びが得られることを示す。
【0161】
例7
以下の例は、上記の改変されたマスターバッチ組成物の生成と、このような改変されたマスターバッチ組成物を異相ポリオレフィン組成物に添加することによって達成され得る物理的性質の改善を示す。
【0162】
3つの改変されたマスターバッチ組成物を生成した。比較試料7−MB(C.S.7−MB)は、ビスブレーキング剤として過酸化物を用いてポリプロピレンコポリマーを溶融コンパウンディングすることによって作製した。試料7A−MBおよび7−B MBは、ビスブレーキング剤として過酸化物、および相溶化剤として2−フリリデンマロノニトリル(化合物ID 1)を用いて、同一のポリプロピレンコポリマーを溶融コンパウンディングすることによって作製した。これらの試料の一般的な配合は、表14に記載されている。
表14.改変されたマスターバッチ配合物
【0163】
【表14】
【0164】
表14に記載したそれぞれの組成物は、上記の手順によって混合し、かつ押出した。
表15.改変されたマスターバッチ組成物
【0165】
【表15】
【0166】
3つの異相ポリマー組成物は、上記の改変されたマスターバッチ組成物をポリプロピレンコポリマーに添加することによって生成された。比較試料7A(C.S.7A)は、改変されていないポリプロピレンコポリマーであった。比較試料7B(C.S.7B)は、改変されていないポリプロピレンコポリマーと比較試料7−MB(C.S.7−MB)を配合することによって作製した。試料7Aは、同一の改変されていないポリプロピレンコポリマーと試料7A−MBを配合することによって作製し、試料7Bは、同一の改変されていないポリプロピレンコポリマーと試料7B−MBを配合することによって作製した。これらの試料の一般的な配合は、表16および17に記載されている。
表16.改変されたマスターバッチを含む異相ポリプロピレンコポリマー配合物
【0167】
【表16】
【0168】
表17に記載したそれぞれの組成物は、上記の手順によって混合し、押出し、かつ射出成形した。次いで得られた試験片を、上記のようにメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。
表18.中衝撃性、異相ポリプロピレンコポリマーの性能
【0169】
【表17】
【0170】
表18に記載したデータは、本発明による改変されたマスターバッチ(例えば、異相ポリマーをビスブレーキング剤および相溶化剤と溶融コンパウンディングすることによって作製した改変されたマスターバッチ)は、改変されていない異相ポリマー中に溶融コンパウンドでき、それによって異相ポリマーの衝撃強さが著しく改善されることを示す。例えば、C.S.7Bのデータは、改変されていない異相ポリマー中にビスブレーキングされた(vis-broken)マスターバッチC.S.7−MBを溶融コンパウンディングすることが、ポリマーの衝撃強さに評価できるほどに影響を与えることはないことを示す。事実、C.S.7Bのアイゾッド衝撃強さは、改変されていないポリマーのアイゾッド衝撃強さよりも実際に低かった。対照的に、試料7Aおよび7Bのデータは、改変されていない異相ポリマーを改変されたマスターバッチ組成物試料7A−MBおよび試料7B−MBと溶融コンパウンディングすることが、ポリマーの衝撃強さを22%ほども増大させることを示す。この衝撃強さの増大は、改良された異相ポリマー組成物が、標的の異相ポリマーにビスブレーキング剤および/または相溶化剤を直接添加しないで生成できることを示しているので、特に価値がある。こうした添加剤の直接添加は、特定の設定、例えば配合設備および射出成形設備では難しいかもしれない。しかしながら、こうした設備は、マスターバッチ組成物を日常的に利用する。したがって、こうした設備は、上記のように改変されたマスターバッチ組成物の使用によって、ここで記載されている物理的性質の改善を容易に達成することができる。
【0171】
ここで引用した刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体がここに記載された場合と同程度に参照によりここに組み込まれる。
【0172】
本出願の主題を説明する状況において(特に以下の特許請求の範囲において)用語「a」および「an」および「the」および同様の指示対象の使用は、ここで特に指示がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、特に指摘がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、限定されない」の意味)として解釈されるべきである。ここでの値の範囲の列挙は、ここで特に指示がない限り、範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に参照する簡単な方法として役立つように単に意図されており、それぞれ別の値は、ここで個々に引用されたかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載した全ての方法は、ここで特に指示がない、または明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の適当な順番で行なうことができる。ここで提供される任意および全ての例、または例示的な言い回し(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく解明するように意図されており、特に特許請求しない限り主題の範囲を限定するものではない。本明細書内の言語は、ここで記載されている主題の実施に不可欠なものとしてどんな特許請求していない要素も示しているように解釈されるべきでない。
【0173】
特許請求した主題を実施するために発明者らに知られている最良のモードを含めた、本出願の主題の好ましい態様は、ここに記載されている。それらの好ましい態様の変形形態は、前述の説明を読むことにより、当業者に明らかになり得る。発明者らは、当業者がこのような変形形態を適宜使用することを期待し、また発明者らは、ここに具体的に記載されている以外の方法でここに記載されている主題が実施されることを意図している。したがって、この開示は、準拠法によって許可されるようにここに添付された特許請求の範囲で列挙された主題の全ての変更形態および相当物を含む。さらに、その全ての可能な変形形態における前述の要素の任意の組合せは、ここで特に指示がない、または明らかに文脈と矛盾しない限り、本開示によって包含される。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1](a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相;(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相;ならびに(c)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む、相溶化剤を含む、異相ポリマー組成物。
[2]前記第2の炭素−炭素多重結合が、炭素−炭素二重結合である、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[3]前記相溶化剤が、式(I)
【化12】
(式中、Rは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)
【化13】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはRおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;xは、0、1、および2からなる群から選択される整数であり;
は、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;
およびRは、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)
【化14】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;Rは、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;ただし、式(VIII)の構造に一致する基では、RおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;ただし、RおよびRの少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される)の構造に一致する化合物からなる群から選択される、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[4]相溶化が、式(X)
【化15】
(式中、R10は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、置換ヘテロアレーンジイル基、および式(XV)
【化16】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、R15は、R16とR17の間の直接結合、酸素原子、アルカンジイル基、および置換アルカンジイル基からなる群から選択され;R16およびR17は、独立に、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され;
11、R12、R13、およびR14は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)
【化17】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;Rは、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;ただし、式(VIII)の構造に一致する基では、RおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;ただし、R11およびR12の少なくとも1つ、ならびにR13およびR14の少なくとも1つは、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の構造に一致する基からなる群から選択される)の構造に一致する化合物からなる群から選択される、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[5]相溶化が、式(XX)
【化18】
(式中、R20は、2価の連結基であり;R21およびR22は、シアノ基、ニトロ基、および式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)
【化19】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;Rは、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され;ただし、式(VIII)の構造に一致する基では、RおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;
23、R24、R25、およびR26は、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)
【化20】
の構造に一致する基からなる群から選択され、
式中、RおよびRは、独立に、水素、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、またはRおよびRは、組み合わせて環状構造を形成することができ;xは、0、1、および2からなる群から選択される整数であり;
ただし、R23およびR24の少なくとも1つ、ならびにR25およびR26の少なくとも1つは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、および式(V)の構造に一致する基からなる群から選択される)の構造に一致する化合物からなる群から選択される、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[6]R20が、式(XXV)
【化21】
(式中、R27は、酸素原子、−N(H)−、および−N(R29)−からなる群から選択され、式中、R29は、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、および置換シクロアルキル基からなる群から選択され;R28は、アルカンジイル基およびシクロアルカンジイル基からなる群から選択される)の構造に一致する基である、[5]に記載の異相ポリマー組成物。
[7]R20が、式(XXX)
【化22】
(式中、R30は、アルカンジイル基およびシクロアルカンジイル基からなる群から選択され;R31は、酸素原子、−N(H)−、および−N(R29)−からなる群から選択され、式中、R29は、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、および置換シクロアルキル基からなる群から選択され;R32は、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択される)の構造に一致する基である、[5]に記載の異相ポリマー組成物。
[8]前記エチレンポリマーが、エチレン−プロピレンエラストマー、エチレン−ブテンエラストマー、エチレン−ヘキセンエラストマー、エチレン−オクテンエラストマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[9]前記エチレンポリマーが、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの全重量に基づいて、異相ポリオレフィンポリマー組成物の5〜80重量%を占める、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[10]前記エチレンポリマーが、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの全重量に基づいて、前記異相ポリオレフィンポリマー組成物の約5〜60重量%を占める、[9]に記載の異相ポリマー組成物。
[11]前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が、80重量%以上である、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[12]前記エチレンポリマー相が、異相ポリオレフィンポリマー組成物中の不連続相である、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[13]前記相溶化剤が、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の全重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在する、[1]に記載の異相ポリマー組成物。
[14]ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと80重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含む連続相であって、コモノマーはエチレンおよびC〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択される連続相、ならびにエチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレン含有量が8〜90重量%のエラストマーエチレンコポリマーを含む不連続相を含み、ただし、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は、エチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも高く、組成物は、相溶化剤によってエチレンコポリマーと結合しているプロピレンポリマーをさらに含み、前記相溶化剤は、(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む、異相ポリマー組成物。
[15]前記不連続相が、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンコポリマーの重量に基づいて、異相ポリオレフィンポリマー組成物の5〜35重量%を占める、[14]に記載の異相ポリマー組成物。
[16]前記不連続相を構成する前記エチレンコポリマーのエチレン含有量が、8〜80重量%である、[14]に記載の異相ポリマー組成物。
[17]異相ポリオレフィンポリマー組成物が、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンコポリマーの全重量に基づいて、5〜30重量%のエチレンを含む、[14]に記載の異相ポリマー組成物。
[18]異相ポリオレフィンポリマー組成物が、少なくとも2つの重合段階で作用させることによって得られる、[14]に記載の異相ポリマー組成物。
[19]前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が80重量%以上である、[14]に記載の異相ポリマー組成物。
[20]前記相溶化剤が、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の全重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在する、[14]に記載の異相ポリマー組成物。
[21](a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし、前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は、少なくとも8重量%である、工程、(b)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む相溶化剤を用意する工程;ならびに(c)遊離炭素ラジカルの存在下で、前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤を混合する工程であって、それによってプロピレンポリマーは前記相溶化剤によってエチレンポリマーと結合し、前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相は異相組成物を形成する、工程を含む方法によって得られる、異相ポリオレフィンポリマー組成物。
[22]前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤が、遊離炭素ラジカルの存在下で溶融コンパウンディングによって混合され、前記組成物が25℃で異相である、[21]に記載の異相ポリマー組成物。
[23]前記プロピレンポリマー相が連続相であり、前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が80重量%以上であり、前記エチレンポリマー相が不連続相であり、前記エチレンポリマーは、エチレン含有量が8〜80重量%であり、エチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択される、[21]に記載の異相ポリマー組成物。
[24](a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下の1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相であって、コモノマーはエチレンおよびC〜C10α−オレフィンモノマーからなる群から選択されるプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし、前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は、少なくとも8重量%である、工程、(b)(i)第1の炭素原子および第2の炭素原子を有する非環式炭素−炭素二重結合、(ii)前記非環式炭素−炭素二重結合中の前記第1の炭素原子と直接結合した電子求引性基、および(iii)前記第2の炭素原子によって前記非環式炭素−炭素二重結合と連結している、前記非環式炭素−炭素二重結合と共役した第2の炭素−炭素多重結合を含む相溶化剤を用意する工程;ならびに(c)遊離炭素ラジカルの存在下で、前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤を混合する工程であって、それによって前記相溶化剤はプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと反応し、それによってプロピレンポリマーはエチレンポリマーと結合し、前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相は異相組成物を形成する、工程を含む、異相ポリオレフィンポリマー組成物を作製する方法。
[25]前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤が、遊離炭素ラジカルの存在下で溶融コンパウンディングによって混合され、前記組成物が25℃で異相である、[24]に記載の方法。
[26]前記プロピレンポリマー相が連続相であり、前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が80重量%以上であり、前記エチレンポリマー相が不連続相であり、前記エチレンポリマーは、エチレン含有量が8〜80重量%であり、エチレンと1種以上のC〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択される、[24]に記載の方法。
[27]前記ポリプロピレン相および前記エチレン相が、少なくとも2つの重合段階で作用させることによって得られた異相耐衝撃性コポリマーとして混合物に供給される、[24]に記載の方法。
[28]前記相溶化剤が、前記異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の全重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在し、前記相溶化剤の不飽和結合と前記エチレンポリマーとの反応が、1個以上の過酸化物結合を組み込んだ有機過酸化物からなる群から選択されるフリーラジカル発生剤の存在下で実施され、前記相溶化剤および前記有機過酸化物が、1:10〜10:1の相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量の比で存在する、[24]に記載の方法。
図1
図2