(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チタンは、軽量且つ高強度であり、また高い耐腐食性等の特性から、種々の一般用途や産業用途で利用されている。このようなチタンは生産量に限りがあり、リサイクルを行うことが重要である。
【0005】
しかしながら、例えばチタンを含有するスクラップ材のリサイクル方法の一つとして、スクラップ材を粉砕してチタン含有粒子であるチタンコブルを製造する場合、スクラップ材の粉砕時における発火を抑えるために粉砕量が限られ、均一な粒径のチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することは困難であるという問題があった。そして、特許文献1,2には、チタンを含有するスクラップ材からチタンコブルを製造する方法については、開示されていない。
【0006】
そこで本発明では、安全性を確保しつつ、チタンスクラップ材を粉砕し、均一な粒径のチタンコブルを歩留まりよく大量に製造する方法、及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、ここに開示する第1の技術に係るチタンコブルの製造方法は、チタンインゴット原料、スーパアロイ、アルミニウム合金用添加材、及び鉄鋼用添加材の少なくとも1つの用途に使用されるチタンコブルの製造方法であって、前記チタンコブルは、金属チタンを50質量%以上含有する最長径50mm以下、最長径を最短径で除して得られるアスペクト比5以下のチタン含有粒子であり、金属チタンを50質量%以上含有するスクラップ材を準備する準備工程と、前記スクラップ材を第1破砕機で粗破砕する第1破砕工程と、前記第1破砕工程で粗破砕された前記スクラップ材を第2破砕機で粉砕する第2破砕工程と、前記第2破砕工程において生じた前記スクラップ材の微粉塵を集塵する集塵工程と、前記第2破砕工程において生じた前記スクラップ材の粉砕生成物を、3mm以上50mm以下の粒径を有する中粒子と、50mm超の粒径を有する大粒子と、3mm未満の粒径を有する小粒子とに分級する第1分級工程とを備え、前記スクラップ材が、前記第1破砕機での粗破砕後、前記第2破砕機に投入されるまでの時間は、2分以上であ
り、前記スクラップ材を前記第1破砕機に投入してから、前記チタンコブルを得るまでの時間は、40分以内であることを特徴とする。
【0008】
第1の技術によれば、金属チタンを50質量%以上含有するスクラップ材を2段階に分けて粉砕することにより、金属同士の接触による過度な摩擦熱の発生を抑えて、粉砕時の発火を抑制することができる。また、引火しやすく発火の主原因となり得る微粉塵を集塵工程により集めることで、微粉塵への引火を抑制するとともに、火花が生じた場合であっても微粉塵の温度を低下させて他の粉砕生成物等に引火することを抑制することができる。そして、2段階の破砕工程により得られた粉砕生成物を第1分級工程で3種類に分級することにより、均一な粒径のチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。
【0009】
第2の技術は、第1の技術において、前記スクラップ材は、板材、チューブ材、サイドトリミング材、及び打ち抜き材の群から選ばれる少なくとも1種であり、前記スクラップ材は、厚さ3mm以下、長さ1m以下の廃材であることを特徴とする。
【0010】
第2の技術によれば、粒径の均一なチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。
【0011】
第3の技術は、第1又は第2の技術において、前記第1破砕機は二軸破砕機であり、前記第2破砕機はハンマーミルであることを特徴とする。
【0012】
第3の技術によれば、二軸破砕機とハンマーミルとの組合せによる2段階の粉砕により、粒径の均一なチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。
【0013】
第4の技術は、第1〜3の技術のいずれか1項において、前記中粒子の中から磁性を帯びたものを取り除く第1磁選工程と、前記大粒子を前記第2破砕工程にリターンするためのリターン工程とを備えたことを特徴とする。
【0014】
第4の技術によれば、第1磁選工程において磁性を帯びた粒子を取り除くことにより、高品質のチタンコブルを歩留まりよく製造することができる。また、リターン工程において、第1分級工程で得られた大粒子を再度第2破砕工程にリターンすることで、チタンコブルの十分な製造量を確保することができる。
【0015】
第5の技術は、第1〜4の技術のいずれか1項において、前記集塵工程で集塵した前記微粉塵と前記小粒子とを集める収集工程と、前記微粉塵と前記小粒子の集合物の中から磁性を帯びたものを取り除く第2磁選工程と、前記集合物を少なくとも2種以上に分級する第2分級工程とを備えたことを特徴とする。
【0016】
第5の技術によれば、微細な粒子を収集してさらに分級することで、さらに粒径の小さなチタンコブルを複製造物として得ることができ、スクラップ材を効果的にリサイクルすることができる。
【0019】
第
6の技術に係るチタンコブルの製造装置は、チタンインゴット原料、スーパアロイ、アルミニウム合金用添加材、及び鉄鋼用添加材の少なくとも1つの用途に使用されるチタンコブルの製造装置であって、前記チタンコブルは、金属チタンを50質量%以上含有する最長径50mm以下、最長径を最短径で除して得られるアスペクト比5以下のチタン含有粒子であり、金属チタンを50質量%以上含有するスクラップ材を粗破砕する第1破砕機と、前記第1破砕機で粗破砕された前記スクラップ材を粉砕する第2破砕機と、前記第2破砕機による前記スクラップ材の粉砕時に生じる微粉塵を集塵する集塵機と、前記第2破砕機による前記スクラップ材の粉砕により生じた粉砕生成物を、3mm以上50mm以下の粒径を有する中粒子と、50mm超の粒径を有する大粒子と、3mm未満の粒径を有する小粒子とに分級するふるい機とを備え、前記ふるい機は、異なる孔径の2種類の金属製のメッシュ材を上下2段に備えた振動ふるい機であり、上側のメッシュ材の孔径は50mmであり、下側のメッシュ材の孔径は3mmであり、前記粉砕生成物は前記上側のメッシュ材上に配置されるものであ
り、前記スクラップ材が、前記第1破砕機での粗破砕後、前記第2破砕機に投入されるまでの時間は、2分以上となるように構成されており、前記スクラップ材を前記第1破砕機に投入してから、前記チタンコブルを得るまでの時間は、40分以内となるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
第
6の技術によれば、金属チタンを50質量%以上含有するスクラップ材を、第1破砕機及び第2破砕機の2段階に分けて粉砕することにより、過度な摩擦熱の発生を抑えて、粉砕時の発火を抑制することができる。また、引火しやすく発火の主原因となり得る微粉塵を集塵機により集めることで、微粉塵への引火を抑制するとともに、火花が生じた場合であっても微粉塵の温度を低下させて他の粉砕生成物等に引火することを抑制することができる。さらに、2段階の粉砕により得られた粉砕生成物をふるい機で3種類に分級することにより、均一な粒径のチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。また、上下2段のメッシュ材により効果的に粒子の分級を行うことができるから、粒径の均一なチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。
【0021】
第
7の技術は、第
6の技術において、前記中粒子の中から磁性を帯びたものを取り除く第1磁選機と、前記大粒子を前記第2破砕機にリターンするためのコンベア装置とを備えたことを特徴とする。
【0022】
第
7の技術によれば、ふるい機で得られた大粒子を再度第2破砕機にリターンさせることで、チタンコブルの十分な製造量を確保することができる。そして、第1磁選機において磁性を帯びた粒子を取り除くことにより、高品質のチタンコブルを歩留まりよく製造することができる。
【0023】
第
8の技術は、第
6又は第
7の技術において、前記メッシュ材はステンレス製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明によると、金属チタンを50質量%以上含有するスクラップ材を2段階に分けて粉砕することにより、金属同士の接触による過度な摩擦熱の発生を抑えて、粉砕時の発火を抑制することができる。また、引火しやすく発火の主原因となり得る微粉塵を集塵工程により集めることで、微粉塵への引火を抑制するとともに、火花が生じた場合であっても微粉塵の温度を低下させて他の粉砕生成物等に引火することを抑制することができる。そして、2段階の破砕工程により得られた粉砕生成物を第1分級工程で3種類に分級することにより、均一な粒径のチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
(実施形態1)
<定義>
本明細書において、「チタンコブル」とは、金属チタンを50質量%以上含有する最長径50mm以下、最長径を最短径で除して得られるアスペクト比5以下のチタン含有粒子のことをいう。
【0029】
なお、本明細書において、「最長径」とは、粒子の外形における最大の幅のことをいい、「最短径」とは、粒子の外形の最小の幅のことをいう。
【0030】
また、本明細書において、チタンコブル等の粒子の「粒径」とは、粒子の最長径のことをいう。
【0031】
<チタンコブルの製造方法及び製造装置>
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るチタンコブルの製造方法は、準備工程S1と、第1破砕工程S2と、第2破砕工程S3と、集塵工程S4と、第1分級工程S5と、第1磁選工程S6と、リターン工程S7と、収集工程S8と、第2磁選工程S9と、第2分級工程S10とを備えている。
【0032】
なお、
図2は、
図1に示すチタンコブルの製造方法によりチタンコブルを製造するための製造装置1の一例を示している。
【0033】
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るチタンコブルの製造工程の概略を説明する。
【0034】
<チタンコブルの製造工程の概略>
図2中矢印A1で示すように、
図1の準備工程S1で準備されたスクラップ材11は、第1破砕機21に投入され、粗破砕される(第1破砕工程S2)。
【0035】
第1破砕機21で粗破砕されたスクラップ材11は矢印A2,A3で示すように、第1コンベア装置22で運ばれ、第2破砕機23に投入されて粉砕される(第2破砕工程S3)。
【0036】
第2破砕機23の上部には、集塵機27に接続されたダクト27aが配設されている。第2破砕機23によるスクラップ材11の粉砕時に生じる微粉塵410は、矢印A91,A92で示すように、集塵機27により吸引され、ダクト27aを通じて集塵される(集塵工程S4)。そして、微粉塵410は、矢印A93に示すように、集塵機27の下部に配置された収集部27bに送られる。
【0037】
第2破砕機23で粉砕されたスクラップ材11は、矢印A4で示すように、第1ふるい機24(ふるい機)の投入口245に投入される。そして、矢印A5で示すように、第1ふるい機24のふるい部244に送られる。ふるい部244は、第1メッシュ241(上側のメッシュ材)と、第2メッシュ242(下側のメッシュ材)と、底部243とを備えている。そして、投入口245に投入されたスクラップ材11は、
図1及び
図2中矢印A51,A52,A53で示すように、第1メッシュ241及び第2メッシュ242により、大粒子411、中粒子412、及び小粒子413の3種類に分級される(第1分級工程S5)。
【0038】
中粒子412は、矢印A62で示すように、第1ふるい機24の第2排出口24bから排出されるとともに、第1磁選機25に投入される。そうして、第1磁選機25により、中粒子412の中から磁性を帯びた磁性中粒子51が取り除かれ、矢印A7で示すように、製品としてのチタンコブル41が得られる(第1磁選工程S6)。
【0039】
大粒子411は、矢印A63で示すように、第1ふるい機24の第1排出口24aから排出されて、第2コンベア装置30(コンベア装置)により第1コンベア装置22の中腹に投入され、再度第2破砕機23に投入、すなわち第2破砕工程S3にリターンされるようになっている(リターン工程S7)。
【0040】
小粒子413は、矢印A61,A101で示すように、第1ふるい機24の第3排出口24cから排出されて、第3コンベア装置26により集塵機27の下部に設けられた収集部27bに送られ、集塵機27で集塵された微粉塵410と纏められる(収集工程S8)。
【0041】
微粉塵410及び小粒子413の集合物は、矢印A102に示すように、収集部27bから第2磁選機28に送られる。そうして、矢印A103に示すように、第2磁選機28により、上記集合物の中から磁性を帯びた磁性集合物52が取り除かれる(第2磁選工程S9)。
【0042】
磁性集合物52が除去された集合物は、矢印A104に示すように、第2ふるい機29に送られ、矢印A105,A106で示すように、粒径に応じて微小チタンコブル42と小チタンコブル43とに分級される(第2分級工程S10)。
【0043】
<各工程について>
以下、
図1〜
図3を参照して、チタンコブルの製造工程の各構成について説明する。
【0044】
≪準備工程≫
準備工程S1は、スクラップ材11を準備する工程である。
【0045】
スクラップ材11は、金属チタンを50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上含有する、使用済み屑や製造メーカの加工工場等で発生する加工屑等の廃材である。スクラップ材11の種類は特に限定されるものではないが、具体的には例えば板材、チューブ材、サイドトリミング材、打ち抜き材、穴抜き材、コイル材等が挙げられ、好ましくは板材、チューブ材、サイドトリミング材、及び打ち抜き材の群から選ばれる少なくとも1種である。具体的に、板材は、例えば、製品製造時に加工歩留まりとして残る短冊状の残部等の廃材が挙げられる。チューブ材は、例えば、熱交換器用、海水淡水化プラント用の部品製造時に発生する廃材等が挙げられる。サイドトリミング材は、例えば、チタンコイルの端部を切り落として板材等を製造する際に生じる廃材である。打ち抜き材は、例えば、原料板材等について全周閉じた製品形状を打ち抜き加工した際に生じる打ち抜かれた後の残部である。穴抜き材は、例えば、原料板材等について全周閉じた形状を打ち抜き加工した際に生じる打ち抜き部分である。コイル材は、例えば、原料板材等の冷延加工時に発生する加工不良品や傷、凹み等が存在する不良品等の廃材である。
【0046】
スクラップ材11は、安全性を確保しつつ、粒径の均一なチタンコブル41を歩留まりよく大量に製造する観点から、厚さが3mm以下、好ましくは0.4mm以上2mm以下であり、長さが1m以下、好ましくは0.8m(800mm)以下とすることができる。なお、スクラップ材11のうち、チューブ材の場合は、チューブ外径が20mm以下であることが好ましい。廃材のサイズが上記範囲を超えて大きい場合は、上記サイズの範囲に入るように、予め廃材をシャー等で裁断してスクラップ材11を準備すればよい。
【0047】
≪第1破砕工程≫
第1破砕工程S2は、スクラップ材11を第1破砕機21で粗破砕する工程である。
【0048】
第1破砕工程S2において、第1破砕機21はスクラップ材11を最長径500mm以下、好ましくは300mm以下、より好ましくは200mm以下になるように粗破砕する。
【0049】
第1破砕機21としては、スクラップ材11の粗破砕に適した破砕機であれば公知の破砕機を利用することができ、具体的には例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、四軸破砕機、アリゲーターシャー等が挙げられる。次工程の第2破砕機23によるスクラップ材11の粉砕の負担を軽減し、短時間で均一な粒径の粉砕生成物、延いてはチタンコブル41を得る観点から、特に第1破砕機21として二軸破砕機を用いることが好ましい。
【0050】
第1破砕機21として、二軸破砕機を採用する場合、特に限定されるものではないが、例えば30kW以上200kW以下のモータを備えるとともに、破砕室の水平方向の断面積(例えば、破砕室が直方体であれば、幅×奥行き)が例えば0.2m
2以上6m
2以下のものを採用することができる。これにより、スクラップ材11の効果的な破砕を行うことができる。
【0051】
≪第2破砕工程≫
第2破砕工程S3は、第1破砕機21で粗破砕されたスクラップ材11を粉砕する工程であり、第2破砕機23により行われる。
【0052】
第2破砕機23は、第1破砕機21で粗破砕されたスクラップ材11を最長径が好ましくは150mm以下、より好ましくは100mm以下、特に好ましくは80mm以下になるように粉砕する。
【0053】
第2破砕機23としては、スクラップ材11の粉砕に適した破砕機であればいずれの公知の破砕機も利用することができ、具体的には例えば、ハンマーミル、ディスクミル、ジェットミル、一軸破砕機、二軸破砕機、四軸破砕機等が挙げられる。短時間で粒径の均一なチタンコブル41を得る観点から、第2破砕機23として特にハンマーミルを用いることが好ましい。
【0054】
第2破砕機23として、ハンマーミルを採用する場合、特に限定されるものではないが、例えば50kW以上150kW以下のモータを有するとともに、破砕室の水平方向の断面積(例えば、破砕室が直方体であれば、幅×奥行き)が例えば0.2m
2以上3m
2以下のものを採用することができる。また、ハンマーミルは粉砕生成物の排出部にメッシュ状のスクリーンを備えており、当該スクリーンのメッシュサイズは、上述のごとく、粉砕生成物の所望サイズに併せてスクリーンを交換することにより適宜調整することができ、その上限値は、好ましくは150mm以下、より好ましくは100mm以下、特に好ましくは80mm以下である。スクリーンのメッシュサイズの下限値は、特に限定されるものではないが、ハンマーミルでの粉砕時間を短縮化して製造装置1の安全性を高める観点から、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、特に好ましくは30mm以上である。また、ハンマーミルへのスクラップ材11の投入速度は、ハンマーミルの刃のサイズ、状態、破砕室の容量、モータの出力等の処理能力に応じて変更され得るが、粉砕時に発生する摩擦熱の発生量を抑えて製造装置1の安全性を高める観点から、破砕室の水平方向の断面積1m
2当たり、好ましくは5kg/分以下、より好ましくは3kg/分以下、特に好ましくは2kg/分以下である。
【0055】
ここに、スクラップ材11を第1破砕工程S2及び第2破砕工程S3により、2段階に分けて粉砕することで、スクラップ材11同士や第1破砕機21及び第2破砕機23の内壁とスクラップ材11との接触に起因して生じる摩擦熱の発生量を抑えて、粉砕時の安全性を確保することができる。
【0056】
特に、第1破砕機21として二軸破砕機を用い、第2破砕機23としてハンマーミルを用いる場合、短時間で粒径の均一なチタンコブルを歩留まりよく大量に製造することができる。
【0057】
なお、第1破砕機21での粗破砕後、第2破砕機23に投入されるまでの時間は、第2破砕機23における粉砕時に発生する摩擦熱の発生量を抑えて製造装置1の安全性を高める観点から、好ましくは2分以上、より好ましくは3分以上、特に好ましくは4分以上である。
【0058】
≪集塵工程≫
集塵工程S4は、第2破砕機23によるスクラップ材11の粉砕時に生じる微粉塵を集塵する工程であり、集塵機27により行われる。
【0059】
集塵機27は、例えば旋回気流・遠心力で微粉塵を分離・捕集するサイクロン型の集塵機や、パルスジェット型、バックフィルタ型の集塵機であり、好ましくはサイクロン型の集塵機である。第2破砕機23で発生した微粉塵は、ダクト27aを通じて集塵機27に集塵される。摩擦熱により引火しやすい微粉塵を集塵することにより、微粉塵への引火を抑制するとともに、火花が生じた場合であっても微粉塵の温度を低下させて他の粉砕生成物等に引火することを抑制して、製造装置1の安全性を高めることができる。なお、集塵機27としてサイクロン型の集塵機を採用する場合、ダクト27aを通じて集塵された微粉塵410のうち、比重が大きいものは収集部27bへ送られる一方、それ以外の比重の小さい微粉塵は図外の集塵袋に貯留され得る。
【0060】
≪第1分級工程≫
第1分級工程S5は、第2破砕工程S3において生じたスクラップ材11の粉砕生成物を、所定の粒径範囲内の粒径を有する中粒子412と、該粒径範囲を超える粒径を有する大粒子411と、該粒径範囲よりも小さい粒径を有する小粒子413とに分級する工程である。
【0061】
所定の粒径範囲は、所望のチタンコブル41の粒径に対応して適宜設定することができるが、粒径の均一なチタンコブルを歩留まりよく大量に製造する観点から、その上限値は50mm以下、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下、その下限値は好ましくは3mm以上、より好ましくは3.5mm以上、特に好ましくは4mm以上とすることができる。そして、この場合、大粒子411の粒径は、50mm超、好ましくは30mm超、より好ましくは25mm超である。また、小粒子413の粒径は、好ましくは3mm未満、より好ましくは3.5mm未満、特に好ましくは4mm未満である。
【0062】
以下、所定の粒径範囲を例えば3mm以上50mm以下と設定した場合を想定して、説明する。
【0063】
この場合、大粒子411は粒径50mm超、中粒子412は粒径3mm以上50mm以下、小粒子413は粒径3mm未満である。
【0064】
第1ふるい機24は、振動ふるい機であり、
図3は、第1ふるい機24のふるい部244の一部を拡大して示す概略断面図である。
図3に示すように、ふるい部244は、第1メッシュ241と、第2メッシュ242と、底部243とを備えている。ふるい部244は、粒子の進行方向(
図2中矢印A51等の方向)に対して垂直な方向の断面が略コの字状であり且つ前記進行方向に延びる例えばステンレス製等金属製の外壁部(不図示)を有しており、底部243はその外壁部の底側を形成している。第1メッシュ241及び第2メッシュ242は、スクラップ材11の粉砕生成物を粒径に応じて分別するためのものであり、ステンレス製等の金属板に所望の孔径の穴をパンチングで形成したものである。なお、第1メッシュ241及び第2メッシュ242は、このような構成に限られるものではなく、金属製の網等であってもよい。第1メッシュ241及び第2メッシュ242は、前記外壁部の側壁に上下2段に設けられた取付部に着脱可能に取り付けられる。第1メッシュ241及び第2メッシュ242は、異なる孔径の2種類の板状のメッシュ材であり、ふるい部244は、当該第1メッシュ241及び第2メッシュ242を上下2段に備えている。第1メッシュ241の孔径は50mmであり、第2メッシュ242の孔径は3mmである。
【0065】
図2に示すように、第1ふるい機24の投入口245に投入された粉砕生成物は、第1ふるい機24の振動に伴って第1メッシュ241の上に送られる。そして、
図2及び
図3に示すように、最長径50nmを超える大粒子411は第1メッシュ241上に残されたまま第1排出口24aに向かって送り出される。最長径3mm以上50mm以下の中粒子412及び最長径3mm未満の小粒子413は、第1ふるい機24の振動に伴って、第1メッシュ241の穴を通じて下側に配置され、第2メッシュ242上に配置される。そして、中粒子412は第2メッシュ242上に残されたまま第2排出口24bに向かって送り出される。一方、小粒子413は、第1ふるい機24の振動に伴って、第2メッシュ242の穴を通じてさらに下側に配置された底部243上に配置され、第3排出口24cに向かって送り出される。
【0066】
このように、第1ふるい機24では、上下2段の第1メッシュ241及び第2メッシュ242により、効果的に粉砕生成物の分級を行うことができる。そうして、最終的に、粒径の均一なチタンコブル41を歩留まりよく大量に製造することができる。
【0067】
なお、
図2に示すように、第1メッシュ241の終端側の第1排出口24aは第2コンベア装置30に向かって延びている。第1排出口24aは第2コンベア装置30に接続されていてもよい。第2メッシュ242の終端側の第2排出口24bは第1磁選機25に向かって延びている。第2排出口24bは第1磁選機25に接続されていてもよい。
【0068】
また、所定の粒径範囲を変更する場合は、第1メッシュ241及び第2メッシュ242の孔径を所望の孔径のものに変更すればよい。具体的には、所定の粒径範囲を例えば5mm以上30mm以下とする場合は、第1メッシュ241及び第2メッシュ242を、それぞれ、孔径50mm及び3mmのものから、30mm及び5mmのものに変更すればよい。このように第1メッシュ241及び第2メッシュ242を異なる孔径のものに変更することにより、チタンコブル41の粒径を調整することができる。
【0069】
≪第1磁選工程≫
第1磁選工程S6は、中粒子412の中から磁性を帯びたものを取り除く工程であり、第1磁選機25により行われる。中粒子412は、本工程により、結果として、製品であるチタンコブル41と、副生成物として磁性を帯びた磁性中粒子51とに分けられる。第1磁選機25は、特に限定されるものではなく、例えばドラム型、対極式ドラム型等一般的な磁選機を採用することができる。
【0070】
本工程によれば、磁性中粒子51を取り除くことにより、チタンコブル41の品質を向上させることができる。
【0071】
なお、第1磁選工程S6は、チタンコブル41の品質向上の観点から、設けることが望ましいものの、任意の工程であり、例えばスクラップ材11に磁性を帯びたものが確実に含まれない場合には省略することができる。この場合、中粒子412が、製品としてのチタンコブル41として得られる。
【0072】
≪リターン工程≫
リターン工程S7は、大粒子411を第2破砕機23にリターンする工程であり、第2コンベア装置30により行われる。これにより、大粒子を再度第2破砕工程S3にリターンすることで、チタンコブル41の十分な製造量を確保することができる。
【0073】
なお、リターン工程S7は、任意の工程であり、設けなくてもよいが、スクラップ材11の十分なリサイクルを行い、チタンコブル41の十分な製造量を確保する観点から、設けることが望ましい。
【0074】
また、リターン工程S7を設ける場合は、例えば手動等の他の方法で、大粒子411を第2破砕機23に投入するようにしてもよい。また、第2コンベア装置30の終端部は、第1コンベア装置22の中腹に搬送物を投入するように配置されているが、当該配置に限定されるものではなく、直接第2破砕機23に投入されるように配置されていてもよいし、第1コンベア装置22の始端部に搬送物を投入するように配置されていてもよい。
【0075】
≪収集工程≫
収集工程S8は、集塵工程S4で集塵した微粉塵410と第1分級工程S5で得られた小粒子とを集める工程である。収集工程S8は任意の工程であり設けなくてもよい。微粉塵410及び小粒子413を第2分級工程S10により分級してリサイクル製品とする場合は、収集工程S8を行うことが望ましい。なお、収集工程S8を設ける場合は、収集部27bにおいて、微粉塵410及び小粒子413を混合し、均一化しておく構成としてもよい。
【0076】
≪第2磁選工程≫
第2磁選工程S9は、微粉塵410及び小粒子413の集合物の中から磁性を帯びたもの、すなわち磁性集合物52を取り除く工程であり、第2磁選機28により行われる。第2磁選機28は、特に限定されるものではないが、第1磁選機25と同様の磁選機を採用することができる。なお、第1磁選機25及び第2磁選機28は同一の構成のものであってもよいし、異なる構成のものであってもよい。第2磁選工程S9は、任意の工程であり、設けなくてもよいが、微粉塵410及び小粒子413を第2分級工程S10により分級してリサイクル製品とする場合は、第2磁選工程S9を行うことが望ましい。
【0077】
≪第2分級工程≫
第2分級工程S10は、集合物を少なくとも2種以上に分級する工程であり、第2ふるい機29により行われる。第2ふるい機29は、例えば第1ふるい機24と同様の構成の振動ふるい機であってもよいし、円形振動ふるい機であってもよい。また超音波振動ふるい機であってもよい。
【0078】
第2分級工程S10は、任意の工程であり、設けなくてもよいが、微粉塵410及び小粒子413を製品としてリサイクルする場合は設けることが望ましい。
【0079】
第2分級工程S10により、微細な粒子を収集してさらに分級することで、さらに粒径の小さなチタンコブルを複製造物として得ることができ、スクラップ材11を効果的にリサイクルすることができる。
【0080】
なお、第2分級工程S10では、2種類の微小チタンコブル42と小チタンコブル43とに分級する構成であるが、3種類以上に分級される構成であってもよい。
【0081】
<チタンコブルについて>
上述のごとく得られたチタンコブル41は、チタンインゴット原料、スーパアロイ、アルミニウム合金用や鉄鋼用等の添加材等の用途に使用される。
【0082】
本実施形態に係る製造方法により得られるチタンコブル41の歩留まりは、スクラップ材11の質量に対するチタンコブル41の質量の割合を百分率で表して、70%以上、好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。また、チタンコブル41並びに第2分級工程S10の生成物である微小チタンコブル42及び小チタンコブル43を合わせた歩留まりは、スクラップ材11の質量に対するチタンコブル41,微小チタンコブル42及び小チタンコブル43の合計質量の割合を百分率で表して、80%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0083】
本実施形態に係る製造方法及び製造装置1によれば、スクラップ材11を第1破砕機21に投入してから、チタンコブル41を得るまでの時間は、1時間以内、好ましくは40分以内、特に好ましくは30分以内である。
【0084】
(その他の実施形態)
以下、本発明に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
実施形態1では、第1ふるい機24は振動ふるい機であったが、第2ふるい機29と同様に、円形やドラム式の振動ふるい機、超音波振動ふるい機等であってもよい。
【0086】
また、第1ふるい機24は、上下2段の第1メッシュ241と第2メッシュ242とを備え、第2破砕機23で粉砕されたスクラップ材11を大粒子411、中粒子412、及び小粒子413に分級する構成であったが、例えばさらに1つ以上のメッシュ材を備え、4種類以上の粒子に分級する構成としてもよい。第1分級工程S5において、種々のサイズにより細かく分級することで、種々のサイズのチタンコブル製品を製造することができる。
【解決手段】チタンコブルの製造方法は、金属チタンを50質量%以上含有するスクラップ材11を準備する準備工程S1と、前記スクラップ材11を第1破砕機21で粗破砕する第1破砕工程S2と、前記第1破砕工程S2で粗破砕された前記スクラップ材11を第2破砕機23で粉砕する第2破砕工程S3と、前記第2破砕工程S3において生じた前記スクラップ材11の微粉塵410を集塵する集塵工程S4と、前記第2破砕工程S3において生じた前記スクラップ材11の粉砕生成物を、所定の粒径範囲内の粒径を有する中粒子412と、該粒径範囲を超える粒径を有する大粒子411と、該粒径範囲よりも小さい粒径を有する小粒子413とに分級する第1分級工程S5とを備えたことを特徴とする。