特許第6469918号(P6469918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6469918
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】擁壁構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20190204BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   E02D29/02 308
   E02D17/20 102A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-89009(P2018-89009)
(22)【出願日】2018年5月7日
【審査請求日】2018年5月16日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712008828
【氏名又は名称】水田 英治
(72)【発明者】
【氏名】水田 英治
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−144440(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0140598(US,A1)
【文献】 特開2008−063767(JP,A)
【文献】 特開2013−241816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
E02B 3/04−3/14
E02D 17/18
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中詰材を充填する筒状の袋体が、壁面に複数設置された擁壁構造体であって、前記袋体は少なくとも2本の連結ベルトが設けられており、隣り合う袋体から延びる前記連結ベルトを固定するための連結具が設けられており、前記連結ベルトは、前記袋体の底面に一端が固定されており、他端は隣り合う袋体の側面に設置される前記連結具に固定されていることを特徴とする擁壁構造体。
【請求項2】
前記連結具は、前記袋体を吊り下げ可能とする取手部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の擁壁構造体。
【請求項3】
前記袋体には、上側に配置される袋体と連結するために、袋体を吊り下げ可能とする取手部材に上部連結ベルトが固定されており、他端は上側袋体の側面に設置される連結具に固定されている事を特徴とする請求項2記載の擁壁構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物の擁壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、多段的に積層し構築する拘束土構造物は、壁面側を硬質の壁面材で被覆し、中詰材を壁面材の背面側に接続した補強シートの上に巻き出し、補強シートの巻き返し端を中詰材の上面にまき込み、巻き返し端部をその上の段の補強シートに接続して、中詰材を袋状に包み込むものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4054304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記先行文献の拘束土構造物には、次のような課題がある。
〈1〉各部材の組立てや設置個所での中詰材転圧が必要であり、作業員の高所での作業時間が長くなる。
〈2〉曲線半径の小さい施工箇所では、資材形状が決まっているため適用出来ない。
〈3〉各部材の資材が多く、施工手順が複雑であるため施工に時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために請求項1の発明は、内部に中詰材を充填する筒状の袋体が、壁面に複数設置された擁壁構造体であって、前記袋体は少なくとも2本の連結ベルトが設けられており、隣り合う袋体から延びる前記連結ベルトを固定するための連結具が設けられており、前記連結ベルトは、前記袋体の底面に一端が固定されており、他端は隣り合う袋体の側面に設置される前記連結具に固定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項の発明は、前記連結具が、前記袋体を吊り下げ可能とする取手部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項の発明は、前記袋体には、上側に配置される袋体と連結するために、袋体を吊り下げ可能とする取手部材に上部連結ベルトが固定されており、他端は上側袋体の側面に設置される連結具に固定されている事を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば次の効果を得ることができる。
〈1〉袋体は安全な場所で土砂等を充填,転圧し、設置個所にて連結ベルトと連結具を使用し連結するため、作業が容易であり、高所作業時間及び施工時間を極力短縮する事が出来る。
〈2〉連結ベルトは、袋体底面の取手部材が交差した箇所に一端が固定されているため、背後袋体からの連結ベルトと交差する事を防止し、他端は隣り合う袋体の下側を通し、側面に設置される連結具に固定されることで、摩擦力も加わり連結強度が高くなる。又、安全な体制で連結作業をする事が出来る。
〈3〉連結具は、袋体を吊り下げ可能とする取手部材に取り付けられているため、連結強度が高くなる。
〈4〉最背面の袋体は、上側に配置される袋体と連結するために、袋体を吊り下げ可能とする取手部材に上部連結ベルトが固定されているため、連結強度が高くなる。又、積層体を上下で連結するため一体の擁壁構造体とする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】連結ベルトを有した袋体の斜視図
図2】前後の袋体を連結した斜視図
図3】擁壁構造体の最背面で上下の袋体を連結した斜視図
図4】連結具取付けベルトに連結具を取付け、連結ベルトで連結した詳細図
図5図4の側面図
図6】盛土部の袋体連結時の断面図
図7】切土部の袋体連結時の断面図
図8】盛土部の袋体連結時の平面図
図9】袋体の中詰材転圧機の斜視図
図10】従来技術の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照し、本発明について説明する。
〈1〉擁壁構造体の概要(図1,図2,図3
積層体を構築し擁壁とする部材であり、筒状の袋体3に運搬用の吊りベルト1と連結用に連結ベルト2,上部連結ベルト6及び連結具4を備える。図2に示すように、連結ベルト2と連結具4を使用し、前後の部材を連結し積層体を構築する。最背面に配置する袋体については、図3に示すように、下段の上部連結ベルト6と上段の連結具4を使用し連結を行う。中詰材9の流出防止のために、袋体3の内側に吸出防止材8を備える。中詰材9はあらかじめ締固めを行い、圧密沈下による形状変更を極力防止する。法面前面に配置する部材については、植生による法面保護及び緑化のため種子の入った吸出防止材8を設置する。以降に主要な使用資材について説明する。
【0012】
〈2〉袋体(図1
袋体3は網状で有底筒状とし円筒形とするが、六角柱・四角柱等でも良い。縦糸と横糸を直交して編み非伸縮性の網状とする。上部に開口部を設け、網目に通し口縛りロープ7を取り付け、中詰材9を投入後、口縛りロープ7で開口部を閉じ吸出防止材8を介して中詰材9を拘束する。素材については耐劣化性の素材とし、ポリエチレン等の合成繊維とする。
【0013】
〈3〉吊りベルト(図1
吊りベルト1は、中詰材9を充填後、設置個所までの運搬用とし無端状とする。形状については、袋体3の側面に縦方向に取り付け底部で十字交差とする。上部は袋体3を開口出来る形状とし、袋体3に接触する部分については縫合する。素材については耐劣化性の素材とし、ポリエチレン等の合成繊維とする。
【0014】
〈4〉連結ベルト(図1,図2,図4,図5
連結ベルト2は、端部2aを吊りベルト1の袋体3底面で交差した箇所に縫合し、他端部2bは、斜め前方に配置した袋体の底面を通し、その袋体前面にある連結具4と結合可能な長さとする。連結具4の裏側から空洞部4cに通し、棒状部4dを巻き込み空洞部4eに通し引き出し連結する。素材については耐劣化性の素材とし、ポリエチレン等の合成繊維とする。
【0015】
〈5〉連結具(図4,図5
連結具4は、連結ベルト2又は、上部連結ベルト6と連結具取付ベルト5を繋ぐ部材であり、四角いフレームの中に2本の棒状部4b,4dで構成されており、連結ベルト2又は、上部連結ベルト6と接触するフレーム部4fについては、摩擦が生じやすいように斜めに配置する。又、連結具4より連結ベルト2又は、上部連結ベルト6を解き易いよう下部に持手用の張り出しを設けた構造とする。素材については、耐劣化性の素材とし、ステンレスや鉄等に亜鉛メッキを塗装した金具が望ましい。
【0016】
〈6〉連結具取付ベルト(図2,図3,図4,図5
連結具取付ベルト5は、連結具4の裏側から空洞部4cに通し棒状部4bを巻き込み空洞部4aに通し上部に引出し、両端部を連結具4より上部で吊りベルト1に縫合する。素材については耐劣化性の素材とし、ポリエチレン等の合成繊維とする。
【0017】
上部連結ベルト(図3,図6,図7
〈7〉上部連結ベルト6は、端部6aを吊りベルト1の連結具4のない裏面に縫合し、他端部6bを袋体上面と上側に配置する袋体底面との間に通し、上側袋体の連結具4と連結可能な長さとする。連結具4との連結については、連結ベルト2と同様とし、素材については耐劣化性の素材とし、ポリエチレン等の合成繊維とする。
【0018】
〈8〉吸出防止材(図1
吸出防止材8は、中詰材9を露出させずに包み込むことが出来る大きさとし、形状については制限はなく正方形や円筒形等であっても良い。法面前面に配置する部材については、種子を混入し植生による法面保護及び緑化を行う。素材については耐劣化性の素材とし、ポリエステル繊維等の不織布とする。
【0019】
〈9〉中詰材(図1
中詰材9は、土砂や空隙率の大きい岩石、コンクリート殻等であっても良い。
【0020】
〈10〉砕石(図6,図7
砕石10は、擁壁構造体背面の水を集め、排水により背面の水圧を軽減する。
【0021】
〈11〉袋体の中詰材転圧機(図9
袋体3に入れた中詰材9の締固めをするには、図9に示すような転圧機を用いると良い。
袋体保持部12の下部に振動部11を備え、袋体保持部12の中に袋体3を入れ中詰材9を入れる。吊りベルト固定金具13に吊りベルト1を取り付け袋体3を固定した後、口縛りロープ7で閉じ上部よりウエイト14で載荷し、下部より振動を加え中詰材9の締固めを行う。
【0022】
〈12〉施工方法(図2,図3,図8
中詰材9の転圧を完了した袋体を配置箇所の最背面に隣接して並べ、連結ベルト2を前方に延ばして配置する。最背面袋体の前方中間に別の袋体を隣接して並べ、手前の袋体連結具4と斜め後ろから延びている連結ベルト2を使用し連結を行う。同様に袋体を斜め前方に配置連結し、最下段の層を施工する。最下段の層が完了した後、上段の層を擁壁構造体の表法面勾配分背面側にずらし最背面の袋体を配置し、下段の上部連結ベルト6と上段の連結具4を使用し連結を行う。前方に配置する袋体については、最下段同様に施工を行う。同様に上段を施工し積層体を構築し、擁壁構造体とする。
【0023】
上記構成により次の効果が得られる
〈1〉袋体は吊りベルトを備えているため、クレーン吊り下げにより運搬可能であり、工事用道路を作る必要がなく施工時間の短縮及び施工費用を縮小する事が出来る。
〈2〉中詰材の転圧と設置個所での組立て作業で、作業箇所が分かれるため、同時に作業する事により施工時間を短縮する事が出来る。
〈3〉袋体を網状とする事で透水性を確保し、吸出防止材で中詰材を包むため降雨等による中詰材の流出を防止する。又、表面に配置する袋体には、種子の入った吸出防止材を配置する事で、植生による法面保護及び緑化を可能とする事が出来る。
〈4〉単体の部材が大きくなく、曲線半径の小さい施工箇所でも、現地に合わせた設置が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る擁壁構造体は、工業的に量産する事が可能であるため、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0025】
1.吊りベルト
2.連結ベルト
3.袋体
4.連結具
5.連結具取付ベルト
6.上部連結ベルト
7.口縛りロープ
8.吸出防止材
9.中詰材
10.砕石
11.振動部
12.袋体保持部
13.吊りベルト固定金具
14.ウエイト
15.ウエイト吊り金具
【要約】
【課題】従来の拘束土構造物は、資材の組立てや現地での中詰材転圧が必要であり、作業員の高所での作業時間が長くなる。
現地施工箇所が曲線半径が小さい個所では、適用できない。又、施工手順が複雑であるため、施工に時間を要する等の課題がある。
【解決手段】積層体を構築し擁壁とする部材は、円筒形の袋体を耐劣化性の素材で作成し、内側に内部に詰める中詰材の流出防止用に吸出防止材を備える。中詰材については、現地にある土砂等を利用し、あらかじめ締固めを行い擁壁の部材とする。法面を保護するために、表面に設置する部材については、種子の入った吸出防止材を設置し、植生による法面保護及び緑化を行う。各部材を連結ベルトで連結し積層体を構築し、擁壁構造体とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10