特許第6469924号(P6469924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6469924
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】パイプカッター
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/08 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   B23D21/08 A
   B23D21/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-140566(P2018-140566)
(22)【出願日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年8月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515061053
【氏名又は名称】パイプシール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 満
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269420(JP,A)
【文献】 特開2011−041476(JP,A)
【文献】 特開平11−245116(JP,A)
【文献】 特開昭64−016311(JP,A)
【文献】 米国特許第6378212(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断パイプの外周に回転可能に取り付けられ、被切断パイプの外周面と当接する切断刃によって被切断パイプをその外径側から切断するようにしたパイプカッターであって、一対の半円形状の枠体を対向配置させてなる第1、第2の円弧状枠体と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられる切断刃を有する切刃部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との一端側を枢着する枢着部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との他端側を連結解除自在に連結する連結部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられて被切断パイプの外周面と当接する当接ローラとを備え、
前記切刃部は、切断刃と、前記切断刃を回転可能に保持すると共に前記一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる切断刃保持具と、前記切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能で且つ所望の位置で固定可能とする移動固定機構とを備えると共に、
前記切断刃保持具は、対向配置される前記一対の半円形状の枠体の各内面に当接した状態で、一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる本体と、前記本体の一部分に設けた切り欠きを介して対向配置される一対の挟持用片とを備え、
前記移動固定機構は、前記切り欠き内において一対の挟持用片に挟持されるナットと、前記ナットに螺合するボルトと、前記ボルトの長手方向への移動を規制する移動規制部とを備え、且つ前記移動規制部は、前記一対の半円形状の枠体の径方向外側において、一方の枠体から他方の枠体へと掛け渡すように配置した状態で一対の半円形状の枠体に固定されると共に前記ボルトを挿通させるための貫通孔を備えるフレーム体と、前記貫通孔の上方側と下方側との前記フレーム体を挟む位置において、ボルトに螺合された状態でボルトに固定される一対のナットとで構成されていると共に、前記貫通孔の直径をボルトの軸の直径よりもやや大きい構成としてあり、
前記一対の挟持用片は、それぞれの内面に嵌合用凹所を備え、前記ナットは一対の挟持用片の内面と対向する外面に嵌合用凹所を備え、前記一対の挟持用片の嵌合用凹所と前記ナットの嵌合用凹所とに軸を嵌合させた状態で一対の挟持用片でナットを挟持させてあり、
前記ボルトを正回転若しくは負回転させることによって前記ナットをボルトの長手方向に進退自在に移動させ、これによって前記切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能とし、且つ前記ナットを本体とは独立した状態で一対の円弧状枠体の周方向に回動可能とすると共に、ナットの回動を介してナットに対するボルトの傾斜角度を調整可能としてあり、
且つ前記移動規制部によって前記切断刃保持具を所望の位置で固定可能とすると共に、前記移動固定機構によって円弧状枠体の円弧中心方向への切断刃の進出量を調整可能としてあることを特徴とするパイプカッター。
【請求項2】
当接ローラは、円弧状枠体の円弧中心方向に進退自在な機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のパイプカッター。
【請求項3】
第1、第2の円弧状枠体に、パイプカッターを回転させるための回転用治具と係合する係合部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプカッター。
【請求項4】
第1、第2の円弧状枠体に、回転駆動機の回転力を受けてパイプカッターを回転可能とする回転力受動部材を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のパイプカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断パイプの外周に回転可能に取り付けられ、被切断パイプの外周面と当接する切断刃によって被切断パイプをその外径側から切断するようにしたパイプカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体が流れる配管(以下、パイプとする)として、例えば金属製のパイプや合成樹脂製のパイプなど、各種パイプが様々な場所で用いられている。これらのパイプは、長期間の使用に伴い、スケール等が付着したり腐食したりすることから、定期的にパイプを交換する作業が必要となる。そしてパイプを交換する場合において、パイプを切断する必要がある場合には、パイプカッターを用いてパイプを切断するのが一般的である。
このようなパイプカッターを示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5212802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術はパイプカッターに関する発明で、切断対象のケーブル周囲が数センチメートル程度の超狭小空間でも周囲の機器やケーブルに予め養生作業を施すことなく、確実、迅速、且つ安全に所望の部位での管類の切断を行うことができるというメリットがある。
しかしながら上記特許文献1の技術においては、半円形の把持フレーム対の円弧中心方向へのカッタ刃の進出量を調整できるような構成がなく、被切断パイプに合わせてカッタ刃の進出量を調整することができないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、切断刃の進出量を調整することができ、作業効率が良く、操作性の良いパイプカッターの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明のパイプカッターは、被切断パイプの外周に回転可能に取り付けられ、被切断パイプの外周面と当接する切断刃によって被切断パイプをその外径側から切断するようにしたパイプカッターであって、一対の半円形状の枠体を対向配置させてなる第1、第2の円弧状枠体と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられる切断刃を有する切刃部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との一端側を枢着する枢着部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との他端側を連結解除自在に連結する連結部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられて被切断パイプの外周面と当接する当接ローラとを備え、
前記切刃部は、切断刃と、前記切断刃を回転可能に保持すると共に前記一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる切断刃保持具と、前記切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能で且つ所望の位置で固定可能とする移動固定機構とを備えると共に、
前記切断刃保持具は、対向配置される前記一対の半円形状の枠体の各内面に当接した状態で、一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる本体と、前記本体の一部分に設けた切り欠きを介して対向配置される一対の挟持用片とを備え、
前記移動固定機構は、前記切り欠き内において一対の挟持用片に挟持されるナットと、前記ナットに螺合するボルトと、前記ボルトの長手方向への移動を規制する移動規制部とを備え、且つ前記移動規制部は、前記一対の半円形状の枠体の径方向外側において、一方の枠体から他方の枠体へと掛け渡すように配置した状態で一対の半円形状の枠体に固定されると共に前記ボルトを挿通させるための貫通孔を備えるフレーム体と、前記貫通孔の上方側と下方側との前記フレーム体を挟む位置において、ボルトに螺合された状態でボルトに固定される一対のナットとで構成されていると共に、前記貫通孔の直径をボルトの軸の直径よりもやや大きい構成としてあり、
前記一対の挟持用片は、それぞれの内面に嵌合用凹所を備え、前記ナットは一対の挟持用片の内面と対向する外面に嵌合用凹所を備え、前記一対の挟持用片の嵌合用凹所と前記ナットの嵌合用凹所とに軸を嵌合させた状態で一対の挟持用片でナットを挟持させてあり、
前記ボルトを正回転若しくは負回転させることによって前記ナットをボルトの長手方向に進退自在に移動させ、これによって前記切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能とし、且つ前記ナットを本体とは独立した状態で一対の円弧状枠体の周方向に回動可能とすると共に、ナットの回動を介してナットに対するボルトの傾斜角度を調整可能としてあり、
且つ前記移動規制部によって前記切断刃保持具を所望の位置で固定可能とすると共に、前記移動固定機構によって円弧状枠体の円弧中心方向への切断刃の進出量を調整可能としてあることを第1の特徴としている。
また本発明のパイプカッターは、上記第1の特徴に加えて、当接ローラは、円弧状枠体の円弧中心方向に進退自在な機構を備えることを第2の特徴としている。
また本発明のパイプカッターは、上記第1又は第2の特徴に加えて、第1、第2の円弧状枠体に、パイプカッターを回転させるための回転用治具と係合する係合部を備えることを第3の特徴としている。
また本発明のパイプカッターは、上記第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、第1、第2の円弧状枠体に、回転駆動機の回転力を受けてパイプカッターを回転可能とする回転力受動部材を備えることを第4の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記第1の特徴によるパイプカッターによれば、被切断パイプの外周に回転可能に取り付けられ、被切断パイプの外周面と当接する切断刃によって被切断パイプをその外径側から切断するようにしたパイプカッターであって、一対の半円形状の枠体を対向配置させてなる第1、第2の円弧状枠体と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられる切断刃を有する切刃部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との一端側を枢着する枢着部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との他端側を連結解除自在に連結する連結部と、前記第1の円弧状枠体と前記第2の円弧状枠体との少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられて被切断パイプの外周面と当接する当接ローラとを備え、
前記切刃部は、切断刃と、前記切断刃を回転可能に保持すると共に前記一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる切断刃保持具と、前記切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能で且つ所望の位置で固定可能とする移動固定機構とを備えると共に、
前記切断刃保持具は、対向配置される前記一対の半円形状の枠体の各内面に当接した状態で、一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる本体と、前記本体の一部分に設けた切り欠きを介して対向配置される一対の挟持用片とを備え、
前記移動固定機構は、前記切り欠き内において一対の挟持用片に挟持されるナットと、前記ナットに螺合するボルトと、前記ボルトの長手方向への移動を規制する移動規制部とを備え、且つ前記移動規制部は、前記一対の半円形状の枠体の径方向外側において、一方の枠体から他方の枠体へと掛け渡すように配置した状態で一対の半円形状の枠体に固定されると共に前記ボルトを挿通させるための貫通孔を備えるフレーム体と、前記貫通孔の上方側と下方側との前記フレーム体を挟む位置において、ボルトに螺合された状態でボルトに固定される一対のナットとで構成されていると共に、前記貫通孔の直径をボルトの軸の直径よりもやや大きい構成としてあり、
前記一対の挟持用片は、それぞれの内面に嵌合用凹所を備え、前記ナットは一対の挟持用片の内面と対向する外面に嵌合用凹所を備え、前記一対の挟持用片の嵌合用凹所と前記ナットの嵌合用凹所とに軸を嵌合させた状態で一対の挟持用片でナットを挟持させてあり、
前記ボルトを正回転若しくは負回転させることによって前記ナットをボルトの長手方向に進退自在に移動させ、これによって前記切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能とし、且つ前記ナットを本体とは独立した状態で一対の円弧状枠体の周方向に回動可能とすると共に、ナットの回動を介してナットに対するボルトの傾斜角度を調整可能としてあり、
且つ前記移動規制部によって前記切断刃保持具を所望の位置で固定可能とすると共に、前記移動固定機構によって円弧状枠体の円弧中心方向への切断刃の進出量を調整可能としてあることから、
移動固定機構を備えることで、切断刃の進出量を所望の量に適宜調整することができるパイプカッターとすることができる。また連結部を介して被切断パイプの外周に容易に取り付け、また取り外すことができる。従って作業効率良く、操作性の良いパイプカッターとすることができる。
【0008】
た移動固定機構は、切断刃保持具に挟持されるナットと、前記ナットに螺合するボルトと、ボルトの長手方向への移動を規制する移動規制部とからなり、前記ボルトを正回転若しくは負回転させることによって、前記ナットをボルトの長手方向に進退自在に移動させ、これによって切断刃保持具を円弧状枠体の円弧中心方向へと進退自在に移動可能とすると共に、前記移動規制部によって、切断刃保持具を所望の位置で固定可能とするものであることから、
ボルトの回転動作だけで円弧状枠体の円弧中心方向への切断刃の進出量を適宜調整することができ、一段と作業効率が良く、操作性の良いパイプカッターとすることができる。
【0009】
たナットは、円弧状枠体の周方向に回動可能な状態で切断刃保持具に挟持されていることから、
切断刃保持具が円弧状枠体の円弧中心方向へと回動する際に、ナットの姿勢角度を切断刃保持具の姿勢角度に効果的に追従させることができる。これに伴い、ナットに対するボルトの傾斜角度も適正な角度に調整することができ、ボルトの長手方向におけるナットの移動範囲を効果的に広げることができる。よって切断刃の進出量を効果的に増加させることができ、切断刃の進出量を一段と所望の量に調整可能なパイプカッターとすることができる。従って一段と作業効率が良く、操作性の良いパイプカッターとすることができる。
【0010】
また上記第2の特徴によるパイプカッターによれば、上記第1の特徴による作用効果に加えて、当接ローラは、円弧状枠体の円弧中心方向に進退自在な機構を備えることから、
被切断パイプの外周面に凹凸などがあった場合でも、被切断パイプの外周面に容易に追従可能なパイプカッターとすることができる。よって一段と切断精度の良いパイプカッターとすることができる。
【0011】
また上記第3の特徴によるパイプカッターによれば、上記第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、第1、第2の円弧状枠体に、パイプカッターを回転させるための回転用治具と係合する係合部を備えることから、
パイプカッターを回転させる際に、回転用治具を利用することができ、作業効率の向上と作業負担の軽減とを同時に実現可能なパイプカッターとすることができる。
【0012】
また上記第4の特徴によるパイプカッターによれば、上記第1〜第3の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、第1、第2の円弧状枠体に、回転駆動機の回転力を受けてパイプカッターを回転可能とする回転力受動部材を備えることから、
回転駆動機を用いてパイプカッターを回転させることが可能となり、一段と作業効率が良く、作業負担を軽減できるパイプカッターとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るパイプカッターを示す図で、(a)は正面図、(b)は被切断パイプにパイプカッターを装着した状態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るパイプカッターを示す図で、(a)は連結部を開いた状態を示す正面図、(b)は連結部を開いた状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るパイプカッターを示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)の要部を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態に係るパイプカッターを示す分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るパイプカッターの要部を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係るパイプカッターにおいて、切断刃の進出量を調整する状態を模式的に示す図で、(a)は調整前の状態を示す図、(b)は調整後の状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るパイプカッターと、本発明の実施形態に係るパイプカッターの変形例を示す図で、(a)は回転用治具を用いてパイプカッターを回転させる状態を示す正面図、(b)は本発明の実施形態に係るパイプカッターの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図7を参照して、本発明の実施形態に係るパイプカッターを説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るパイプカッター1は、大型商業施設や駅舎等に設置される冷暖房機械(いわゆる吸収冷温水機等)を構成する鋼等の金属で形成されたパイプを切断するための作業で使用されるパイプカッターである。より具体的には、図1(b)に示すように、パイプ100の外周に回転可能に取り付けられて、パイプ100の外周面と当接する切断刃31によってパイプ100をその外径側から切断するようにしたパイプカッターである。
また本実施形態のパイプカッター1は、パイプ100を切断する際には、パイプカッター1を作業者が直接手で回転させる場合と、図7(a)に示すように、回転用治具70をパイプカッター1に係合させて回転させる場合との何れによってもパイプ100を切断できる。より具体的には、パイプ100の周囲に十分なスペースがある場合は、回転用治具70を用いてパイプカッター1を回転させてパイプ100の切断を行う。一方、パイプ100の周囲に十分なスペースがない場合は、パイプカッター1を作業者が直接手で回転させてパイプ100の切断を行う。
【0016】
図1図4に示すように、このパイプカッター1は、第1の円弧状枠体10と、第2の円弧状枠体20と、切刃部30と、枢着部40と、連結部50と、当接ローラ60とで構成される。
【0017】
前記第1の円弧状枠体10は、パイプカッター1の骨格を形成するものである。この第1の円弧状枠体10は、一対の枠体11、12と、一対の枠体11、12を対向配置させて連結させる連結用ピン13とで構成される。なお本実施形態においては、枠体11、12と、連結用ピン13とは鋼で形成されている。
図2(b)、図4に示すように、一対の半円形状の枠体11、12を対向配置させた状態で連結用ピン13を用いて連結させることで、第1の円弧状枠体10が形成されている。具体的には、枠体11と枠体12とを対向配置させて、枠体11の内面11cに設ける嵌合用凹所11aと、枠体12の内面12cに設ける嵌合凹所(図示しない)とに連結用ピン13を嵌合させることで、枠体11と枠体12とで所定の厚みを有する第1の円弧状枠体10を形成してある。
なお、枠体11と枠体12とを連結させる際には、切刃部30、枢着部40、連結部50も所定の位置に固定させる。
【0018】
また本実施形態においては、図2図4に示すように、枠体11の外面11dと、枠体12の外面12dとのそれぞれに、図7(a)に示す回転用治具70の係合部72と係合する係合用レール11b、12bを設けてある。この係合用レール11b、12bは、係合部72と係合する係合部となるもので、鋼で形成されている。また本実施形態においては、半円形状で構成される枠体11、12の外面11d、12dの一端から他端まで続く、所定の幅を有する半円形状の凸部で係合用レール11b、12bを形成してある。更に係合用レール11b、12bの湾曲形状を、枠体11、12のそれぞれの湾曲形状と同様の湾曲形状に構成してある。この係合用レール11b、12bは、溶接を用いて外面11d、12dに固定してある。
なお、図7(a)において詳しくは図示していないが、回転用治具70の係合部72は、その先端部分に、係合用レール11b、12bを内側と外側から挟持可能な挟持部を備えており、この挟持部で係合用レール11b、12bを挟持し、その状態で把持部71を把持してパイプカッター1を回転させることができる構成となっている。
【0019】
前記第2の円弧状枠体20は、第1の円弧状枠体10と合わさってパイプカッター1の骨格を形成するものである。この第2の円弧状枠体20は、一対の枠体21、22と、一対の枠体21、22を連結させる連結用ピン23とで構成される。なお、枠体21、22と、連結用ピン23とは鋼で形成されている。
【0020】
図2(b)、図4に示すように、一対の半円形状の鋼製の枠体21、22を対向配置させた状態で連結用ピン23を用いて連結させることで、第2の円弧状枠体20が形成されている。具体的には、枠体21と枠体22とを対向配置させて、枠体21の内面21cに設ける嵌合用凹所21aと、枠体22の内面22cに設ける嵌合凹所(図示しない)とに連結用ピン23を嵌合させることで、枠体21と枠体22とで所定の厚みを有する第2の円弧状枠体20を形成してある。
なお、枠体21と枠体22とを連結させる際には、枢着部40、連結部50、当接ローラ60も所定の位置に固定させる。
【0021】
また本実施形態においては、図2図4に示すように、枠体21の外面21dと、枠体22の外面22dとのそれぞれに、図7(a)に示す回転用治具70の係合部72と係合する係合用レール21b、22bを設けてある。この係合用レール21b、22bは、係合部72と係合する係合部となるもので、鋼で形成されている。また本実施形態においては、半円形状で構成される枠体21、22の外面21d、22dの一端から他端まで続く、所定の幅を有する半円形状の凸部で形成してある。更に係合用レール21b、22bの湾曲形状を、枠体21、22のそれぞれの湾曲形状と同様の湾曲形状に構成してある。なお、この係合用レール21b、22bは、溶接を用いて外面21d、22dに固定してある。
【0022】
また第2の円弧状枠体20は、一端側において枢着部40を介して第1の円弧状枠体10と枢支され、他端側において連結部50を介して第1の円弧状枠体10と連結自在に連結されて、閉鎖時に環状に組み付けられる。そして環状に組み付けられた状態において、パイプ100の外周に回転可能に取り付けられて、パイプ100の切断を行う。
なお、連結用ピン13、23の数や配置位置は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0023】
前記切刃部30は、パイプ100の切断を行う切断刃31を備えると共に、切断刃31を所望の位置に移動させ、その位置で固定させるためのものである。
この切刃部30は、図1図6に示すように、切断刃31と、切断刃保持具32と、移動固定機構33とで構成される。また本実施形態においては、第1の円弧状枠体10に切刃部30を取り付ける構成としてある。勿論、このような構成に限るものではなく、第2の円弧状枠体20に切刃部30を設ける構成としてもよい。また第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との両方に切刃部30を設ける構成としてもよい。
【0024】
前記切断刃31は、パイプ100を切断するための刃で、本実施形態においては薄肉な円形の鋼で形成されている。また切断刃31の中央には、貫通孔K1を設けてある。この貫通孔K1は、切断刃31を切断刃保持具32に回転自在に固定するための軸31aを挿通させるためのものである。本実施形態においては、貫通孔K1に軸31aを挿通させて、切断刃31を切断刃保持具32に回転自在に固定してある。
勿論、切断刃31の構成はこのようなものに限るものではなく、切断刃保持具32に回転自在に取り付けることができるものであれば、適宜変更可能である。
【0025】
前記切断刃保持具32は、主として切断刃31を回転可能に保持するための、いわゆる基台となるものである。また一対の半円形状の枠体11、12の間に、該枠体11、12の周方向に回動自在に取り付けられて、移動固定機構33によって、第1の円弧状枠体10の円弧中心への切断刃31の進出量を調整可能とするためのものである。
この切断刃保持具32は、図1図6に示すように、本体32aと、支持用ピン32bと、ナット挟持用片32cとで構成される。
【0026】
前記本体32aは、切断刃保持具32の骨格を構成するものである。本実施形態においては、略直方体形状の鋼製部材で本体32aを形成する構成としてある。具体的には図3図5に示すように、略直方体形状からなる鋼部材の長手方向一端側に、本体32aの短手方向に貫通する貫通孔K2を設けてある。そして、この貫通孔K2に支持用ピン32bを挿通させて、枠体11に設ける嵌合用凹所11eと枠体12に設ける嵌合用凹所(図示しない)とに嵌合させてある。これによって、支持用ピン32bを支点として本体32aを一対の枠体11、12間に回動自在に取り付けてある。
また本実施形態においては、図3に示すように、本体32aの側面S1、S2を枠体11、12の内面11c、12cに密着させた状態で、支持用ピン32bを介して本体32aを一対の枠体11、12間に回動自在に取り付けてある。つまり、内面11c、12cに沿って本体32aが回動する構成としてある。
【0027】
また図3(b)、図4図5に示すように、本体32aにおいて、貫通孔K2を設けた側とは反対側の端部から、貫通孔K2を設けた位置にかけて、連続する切り欠きL1、L2を設けてある。前記切り欠きL1は、移動固定機構33を構成するナット33aを挟持するための空間を形成すると共に、ナット33aを挟持するための一対のナット挟持用片32cを形成するためのものである。このように、本実施形態においては、本体32aを形成する略直方体形状の鋼製部材に切り欠きL1を設けることで、本体32aとナット挟持用片32cとを一体成形する構成としてある。更に本実施形態においては、一対のナット挟持用片32cの内面に、嵌合用凹所Gを設けてある。
また前記切り欠きL2は、切断刃31を回転自在に固定するための空間を形成するためのものである。なお、切り欠きL2内には、本体32aの短手方向の対向する位置に、嵌合用凹所(図示しない。)を設けてあり、この嵌合凹所に切断刃31の貫通孔K1に挿通させた軸31aを嵌合させることで、切断刃31を本体32aに回転自在に固定してある。
また図3(b)に示すように、本実施形態においては、切り欠きL1の幅Pを切り欠きL2の幅Qよりも幅広とする構成としてある。
【0028】
前記移動固定機構33は、切断刃保持具32を第1の円弧状枠体10の円弧中心へと進退自在に移動可能で、且つ所望の位置で固定可能とするためのものである。この移動固定機構33は、図3図6に示すように、ナット33aと、ボルト33bと、移動規制部33cと、軸33dとで構成される。
【0029】
前記ナット33aは、切断刃保持具32の一対のナット挟持用片32cに挟持された状態でボルト33bを螺合させるナットである。ボルト33bを正回転若しくは負回転させることによって、ボルト33bの長手方向に進退自在に移動され、これによって、切断刃保持具32を第1の円弧状枠体10の円弧中心方向へと進出自在に移動可能とするためのものである。よってボルト33bと合わさって、切断刃保持具32を移動させるための移動機構を構成するものである。本実施形態においては、六角形のナットを用いる構成としてある。
【0030】
また本実施形態においては、図4に示すように、ナット挟持用片32cと対向するナット33aの側面に嵌合用凹所Hを設けてある。そして嵌合用凹所Hと嵌合用凹所Gとに鋼で形成される軸33dを嵌合させることで、一対のナット挟持用片32cに、軸33dを介してナット33aを回動可能な状態で取り付けてある。これによりナット33aを第1の円弧状枠体10の周方向に回動可能な状態としてある。
【0031】
なお、ナット33aの形状、大きさや、ナット挟持用片32cへの取り付け方法などは本実施形態のものに限るものではなく、ボルト33bを螺合させることができると共に、第1の円弧状枠体10の周方向に回動可能な状態でナット挟持用片32cに取り付けることができるものであれば、適宜変更可能である。例えば軸33dを使用せず、切り欠きL1にナット33aを単に嵌め込むだけで、一対のナット挟持用片32cでナット33aを挟持させる構成としてもよい。但し、好適には、軸33dを用いてナット33aをナット挟持用片32cに回動可能に取り付ける構成とすることが望ましい。
【0032】
前記ボルト33bは、正回転若しくは負回転させることで、ナット33aを移動させるためのものである。
なお、ボルト33bの形状、大きさなどは本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0033】
前記移動規制部33cは、ボルト33bの長手方向への移動を規制するためのものである。本実施形態においては、この移動規制部33cは、フレーム体Fと、ナットN1と、ナットN2とで構成される。
【0034】
前記フレーム体Fは、ナットN1、N2と合わさって、ボルト33bの長手方向への移動を規制するためのものである。本実施形態においては、鋼で形成される略コノ字状の平板部材でフレーム体Fを形成してある。また図1図3に簡略化して示すように、略コの字状の平板部材で形成されるフレーム体Fを、枠体11から枠体12に掛け渡すように配置した状態で、溶接を用いて枠体11、12に固定する構成としてある。
なお本実施形態においては、図3に示すように、フレーム体Fの大きさを、第1の円弧状枠体10の幅からはみ出ない大きさとしてある。
【0035】
またフレーム体Fの略中央位置には、ボルト33bを挿通させるための円形の貫通孔K3を設けてある。なお本実施形態においては、貫通孔K3の直径をボルト33bの軸の直径よりもやや大きい構成としてある。このような構成とすることで、ボルト33bの軸が、貫通孔K3内にて円弧状枠体10の周方向に移動可能な状態としてある。つまりは、ボルト33bの軸がやや遊びをもった状態で貫通孔K3内に挿通される構成としてある。なお、ここで「やや大きい」とは、貫通孔K3の直径がボルト33bの軸の直径よりも数ミリ程度大きいことを意味するものである。
勿論、フレーム体Fの形状、大きさは本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。但し、好適には、フレーム体Fの大きさは、第1の円弧状枠体10の幅からはみ出ない大きさとすることが望ましい。
【0036】
前記ナットN1、N2は、フレーム体Fと合わさって、ボルト33bの長手方向への移動を規制するためのものである。本実施形態においては詳しくは図示していないが、略コの字状の平板部材で形成されるフレーム体Fを挟んで、下方側でナットN1をボルト33bに螺合させると共に、上方側でナットN2をボルト33bに螺合させてある。つまり、ナットN1とナットN2とでフレーム体Fを挟むような構成としてある。また本実施形態においては、ボルト33bの所定位置にナットN1、N2を螺合させた後に、溶接を用いて、ナットN1、N2をボルト33bに固定してある。
【0037】
以上のような構成とすることで、ボルト33bの正回転若しくは負回転によりナット33aをボルト33bの長手方向に進退自在に移動させることは可能であるものの、フレーム体F、ナットN1、N2によって、ボルト33b自体が長手方向に移動することを確実に防止できる。つまり、移動規制部33cによって、ボルト33bの長手方向への移動を確実に抑制することができる。これにより、ボルト33bとナット33aとで切断刃保持具32を所望の位置に移動させるだけで、切断刃保持具32をその位置でしっかりと固定することができる。
【0038】
前記枢着部40は、第1の円弧状枠体10と、第2の円弧状枠体20との一端側を枢着するためのものである。
本実施形態においては、図4に示すように、この枢着部40は、本体41と、支持用ピン42とで構成される。
【0039】
前記本体41は、枢着部40の骨格を形成するものである。
本実施形態においては、図2図4に示すように、鋼で形成される直方体部材で本体41を構成してある。また図4に示すように、本体41の長手方向の一端側には、貫通孔K4を設けてあり、この貫通孔K4に支持用ピン42を挿通させて、枠体21の内面21cに設ける嵌合用凹所21aと、枠体22の内面22cに設ける嵌合用凹所(図示しない)とに支持用ピン42を嵌合させて、支持用ピン42を支点として本体41を回動自在に枠体21、22に取り付けてある。つまり本実施形態においては、支持用ピン42の形状、大きさを連結用ピン23の形状、大きさと同じ構成としてある。
また貫通孔K4とは反対側の端部において、枠体11と枠体12とで本体41を挟んだ状態にて溶接を用いて本体41を枠体11、12に固定してある。このような構成により、枠体11と枠体12及び枠体21と枠体22とで本体41を挟んだ状態で、枢着部40によって第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との一端側を枢着してある。
なお、枢着部40の構成は本実施形態のものに限るものではなく、第1の円弧状枠体10と、第2の円弧状枠体20との一端側を枢着可能なものであれば、適宜変更可能である。
【0040】
前記連結部50は、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との他端側(枢着部40を設けた側とは反対側の端部)を連結解除自在に連結するためのものである。
本実施形態においては、この連結部50は、連結具51と、連結具受部52と、支持用ピン53とで構成される。
【0041】
前記連結具51は、第2の円弧状枠体20を構成する一対の枠体21、22の間に回動自在に取り付けられて、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との開閉を行うためのものである。
本実施形態においては、この連結具51は図4に示すように、本体51aと、ネック部51bと、把持用頭部51cとで構成される。
【0042】
前記本体51aは、連結具51の骨格を構成するものである。本実施形態においては、鋼で形成される直方体部材で本体51aを構成してある。また本体51aの長手方向の一端側には貫通孔K5を設けてある。この貫通孔K5に支持用ピン53を挿通させて、枠体21に設ける嵌合用凹所21aと、枠体22に設ける嵌合用凹所(図示しない)とに支持用ピン53を嵌合させることで、枠体21と枠体22との間に本体51aを回動自在に取り付けてある。つまり、本実施形態においては、支持用ピン53の形状、大きさを連結用ピン23の形状、大きさと同じ構成としてある。
【0043】
前記ネック部51bは、連結具受部52との嵌合部を構成するものである。本実施形態においては図2図4に示すように、ネック部51bとして、鋼で形成される円柱状部材を用いると共に、ネック部51bの表面にねじ切り加工を施してある。
【0044】
前記把持用頭部51cは、連結具51の把持部となるものである。またネック部51bの長さを調整可能とするためのものである。本実施形態においては、図2図4に示すように、把持用頭部51cとして、外形が六角形の細長いナットを用いる構成としてある。つまり把持用頭部51cは、ネック部51bに螺合可能で、把持用頭部51cを正回転若しくは負回転させることで、ネック部51bの長さを可変させることが可能である構成としてある。
【0045】
更に本実施形態においては、図1図3(a)に示すように、ネック部51bを連結具受部52に嵌合させた状態において、ネック部51bを第1の円弧状枠体10及び第2の円弧状枠体20の接線方向に締め付けることができる構成としてある。このような構成とすることで、連結具51と連結具受部52とを連結させてネック部51bを締め付けるだけで、ネック部51bの締付け力が第1の円弧状枠体10及び第2の円弧状枠体20の接線方向に働き、連結部50付近に生じる第1の円弧状枠体10の端部と第2の円弧状枠体20の端部との間にある隙間を効果的に縮めて、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20とをずれなく連結させることができる。
【0046】
前記連結具受部52は、連結具51と連結されることで、図1に示すように第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との閉環状態を形成すると共に、連結具51との連結を解くとことで、図2に示すように第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との閉環状態を解除可能とするためのものである。
なお、本実施形態においては図2(b)、図4に示すように、第1の円弧状枠体10に連結具受部52を設ける構成としてある。
【0047】
具体的には、枠体11と枠体12との間に鋼で形成される略矩形状の連結具受部52を配置し、溶接を用いて枠体11と枠体12とに連結具受部52を固定する構成としてある。またこの連結具受部52には、ネック部51bを嵌合させることで、連結具51と連結具受部52とを連結させるためのU字状の切り欠き52aを設けてある。
また本実施形態においては、図2(b)、図3に簡略化して示すように、連結具受部52の短手方向の長さ(幅)と、連結具51の本体51aの短手方向の長さ(幅)と、切断刃保持具32の本体32aの短手方向の長さ(幅)と、枢着部40の本体41の短手方向の長さ(幅)とを全て同じ長さとする構成としてある。
なお、連結部50の構成は、本実施形態のものに限るものではなく、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との他端側(枢着部40を設けた側とは反対側の端部)を連結解除自在に連結することが可能なものであれば、適宜変更可能である。
【0048】
前記当接ローラ60は、パイプ100の良好な切断を補助するためのものである。この当接ローラ60は、中央に貫通孔を有する円柱状部材で形成されるローラ61と、ローラ61を回転自在に支持する円柱状部材で形成される支持用ピン62とで構成される。
本実施形態においては図2図4に示すように、第2の円弧状枠体20の所定位置に当接ローラ60を配置する構成としてある。具体的には、1本の支持用ピン62に2つのローラ61を挿通させた状態で、枠体21の嵌合用凹所21eと、枠体22の嵌合用凹所(図示しない)とに支持用ピン62を嵌合させて、一対のローラ61を第2の円弧状枠体20に取り付ける(固定する)構成としてある。なお、本実施形態においては円弧状枠体20の二か所に一対のローラ61を配置する構成としてある。
また本実施形態においては、ローラ61と支持用ピン62とは、ともに鋼で形成してある。
なお、当接ローラ60の構成(数、大きさ、配置位置など)は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0049】
次に、このような構成からなる本発明の実施形態に係るパイプカッター1を用いてパイプ100を切断する方法を説明する。
【0050】
まず、図2に示すように、連結具51と連結具受部52との連結を解除した状態(第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20とを開いた状態)で、パイプ100の外周にパイプカッター1を配置する。
そして連結具51と連結具受部52とを連結させて、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20とを閉じる。具体的には、ネック部51bを切り欠き52aに嵌合させる。その状態において、把持用頭部51cが連結具受部52に当接して回転が止まるまで把持用頭部51cをねじ込む。これによって、連結部50付近の第1の円弧状枠体10の端部と第2の円弧状枠体20の端部との間にある隙間が縮まると共に、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20とが、ずれなく連結される。
【0051】
次に移動固定機構33を使用して、第1の円弧状枠体10の円弧中心方向への切断刃31の進出量を調整する。具体的には図6(a)を参照して、ボルト33bを負回転させる。すると図6(b)に示すように、ボルト33bに螺合されているナット33aが第1の円弧状枠体10の径方向内側へと押し込まれていく。これによってナット33aを挟持してあるナット挟持用片32cも第1の円弧状枠体10の径方向内側へと押し込まれ、本体32aに固定してある切断刃31が第1の円弧状枠体10の径方向内側へと押し込まれていく。
【0052】
より具体的には図6に示すように、ボルト33bを負回転させると、ボルト33bに螺合されているナット33aが第1の円弧状枠体10の径方向内側へと押し込まれていく。これによって、ナット33aを挟持してあるナット挟持用片32c(本体32a)が、支持用ピン32bを支点として本体32aの回動軌跡Rに沿って第1の円弧状枠体10の円弧中心方向内側へと押し込まれる。
なお、図6において、黒塗り矢印は回動軌跡Rに沿った本体32aの移動方向を示し、白抜き矢印はナット33aの移動方向を示すものである。
また図6(b)においては、説明の便宜上、ナット33a、ナットN1、ナットN2、ボルト33bを通常よりも傾いた状態で図示するものとする。
【0053】
この際、ナット33aは軸33dを介して第1の円弧状枠体10の周方向に回動可能な状態で一対のナット挟持用片32cに取り付けられているので、図6(b)に示すナット33aの姿勢角度Cを自動的に本体32aの姿勢角度Dに効果的に追従させることができる。即ち、ナット33aの上面左側端部を下方に押し下げたように傾斜させることができる。更に本実施形態においては、貫通孔K3の直径をボルト33bの軸の直径よりもやや大きい構成としてあるので、ナット33aの姿勢角度の変化に合わせて、ナット33aに対するボルト33bの傾斜角度Eも適正な傾斜角度に調整することができる。具体的には図6(b)に示すように、ボルト33bの頭部の上面左側端部を下方に押し下げたように傾斜させることができる。
このように本実施形態においては、第1の円弧状枠体10の周方向に回動可能な状態で一対のナット挟持用片32cにナット33aを取り付けると共に、ボルト33bを挿通させる貫通孔K3の直径をボルト33bの軸の直径よりもやや大きい構成とすることで、本体32aの移動に合わせて、ナット33a及びボルト33bを自動的に適正な位置に移動させることが可能となる。
【0054】
なお、ここで「ナット33aの姿勢角度C」とは、支持用ピン32bの中心を通る水平線とナット33aの上面若しくは下面の接線とでなす角度のことを意味するものである。また「本体32aの姿勢角度D」とは、支持用ピン32bの中心を通る水平線と本体32aの上面若しくは下面の接線とでなす角度のことを意味するものである。また「ナット33aに対するボルト33bの傾斜角度E」とは、ナット33aの上面若しくは下面の接線とボルト33bの軸線とでなす角度のことを意味するものである。なお、「ナット33aに対するボルト33bの傾斜角度E」は、90度に近い角度ほど、ナット33aとボルト33bの軸とを十分な状態で適正に螺合させることができる。これによってボルト33bの軸に対するナット33aをスムーズに移動させることができ、ボルト33bの軸上におけるナット33aの移動量を多くすることができる。よって「適正な傾斜角度」とは、90度に近づく角度ほど適正な角度であることを意味するものである。
【0055】
このようにして本体32aが第1の円弧状枠体10の円弧中心方向内側へと押し込まれることで、本体32aに固定してある切断刃31が第1の円弧状枠体10の径方向内側へと押し込まれていく。つまりは、第1の円弧状枠体10の円弧中心方向内側への切断刃31の進出量が増加する。以上の動作を切断刃31がパイプ100に当接するまで繰り返す。
【0056】
そして切断刃31がパイプ100に当節した後、連結用ピン13、23や、係合用レール11b、12b、21b、22bを手で把持しながら、パイプカッター1を回転させる。或いは、図7(a)に示す回転用治具70を用いてパイプカッター1を回転させる。
これによって当接ローラ60を介して、パイプカッター1がパイプ100の外周を回転すると共に、パイプ100が切断刃31によって切断される。なお、パイプ100の厚みによっては、再び移動固定機構33を使用して、第1の円弧状枠体10の円弧中心方向への切断刃31の進出量を適宜調整しながら、パイプカッター1の回転を継続させてパイプ100を切断する。
【0057】
パイプ100の切断が終了した後は、把持用頭部51cを負回転させると共に、把持用頭部51cを把持した状態でネック部51bと切り欠き52aとの嵌合を解く。
その状態で第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20とを開くことにより、パイプ100からパイプカッター1を取り外す。
以上により、パイプカッター1によるパイプ100の切断が終了する。
【0058】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るパイプカッター1は、以下の効果を奏する。
【0059】
切断刃保持具32を第1の円弧状枠体10の円弧中心へと進退自在に移動可能で、且つ所望の位置で固定可能とする移動固定機構33を備えることで、切断刃31の進出量を所望の量に適宜調整することが可能となる。よって作業効率が良く、操作性の良いパイプカッター1とすることができる。
【0060】
また移動固定機構33を、切断刃保持具32に挟持されるナット33aと、ナット33aに螺合するボルト33bと、ボルト33bの長手方向への移動を規制する移動規制部33cとからなる構成とすることで、ボルト33bを正回転若しくは負回転させることによって、ナット33aをボルト33bの長手方向に進退自在に移動させ、これによって切断刃保持具32を第1の円弧状枠体10の円弧中心方向へと進退自在に移動可能とすると共に、移動規制部33cによって、切断刃保持具32を所望の位置で固定可能とする構成とすることで、ボルト33bの回転動作だけで第1の円弧状枠体10の円弧中心方向への切断刃31の進出量を適宜調整することができ、一段と作業効率が良く、操作性の良いパイプカッター1とすることができる。
【0061】
また軸33dを介して第1の円弧状枠体10の周方向に回動可能な状態で一対のナット挟持用片32cにナット33aを取り付けると共に、フレーム体Fの貫通孔K3の直径をボルト33bの軸の直径よりもやや大きい構成とすることで、ナット33aの姿勢角度Cを自動的に本体32aの姿勢角度Dに効果的に追従させることができると共に、ナット33aの姿勢角度の変化に合わせて、ナット33aに対するボルト33bの傾斜角度Eも適正な傾斜角度に調整することができる。
このような構成により、ナット33aに対するボルト33bの傾斜角度が適正な角度でないことに伴って、ナット33aとボルト33bの螺合が不十分となり、ボルト33bの軸上でのナット33aの移動が停止してしまうことを効果的に防止することができる。よってボルト33bの軸上での(長手方向における)ナット33aの移動範囲を効果的に広げることができる。また第1の円弧状枠体10の円弧中心方向内側への切断刃31の進出量を効果的に増加させることができ、切断刃31の進出量を一段と所望の量に調整可能なパイプカッター1とすることができる。よって一段と作業効率が良く、操作性の良いパイプカッター1とすることができる。
【0062】
またパイプカッター1の回転に回転用治具70を使用可能とすることで、作業効率の向上と作業者の作業負担の軽減とを同時に実現可能なパイプカッター1とすることができる。
【0063】
また連結具受部52の短手方向の長さ(幅)と、連結具51の本体51aの短手方向の長さ(幅)と、切断刃保持具32の本体32aの短手方向の長さ(幅)と、枢着部40の本体41の短手方向の長さ(幅)とを全て同じ長さにし、且つ連結用ピン13、23、切刃部30、枢着部40、連結部50、当接ローラ60を全て第1、第2の円弧状枠体10、20を構成する一対の枠体11、12及び一対の枠体21、22の間に配置する構成とすることで、図3(a)に示すように、パイプカッター1の幅Tよりもはみ出る部材が全くない構成とすることができる。よって小型化が可能なパイプカッター1とすることができる。
【0064】
また切断刃保持具32の本体32aの側面S1、S2を枠体11、12の内面11c、12cに密着させた状態で、支持用ピン32bを介して本体32aを一対の枠体11、12間に回動自在に取り付けてある構成とすることで、枠体11、12で本体32aを挟んだ状態とすることができる。よってボルト33bの長手方向への移動を一段と効果的に規制することができる。同時に、パイプカッター1の厚み方向(幅Tの方向)への本体32aのブレを確実に防止することができ、一段と切断精度の良いパイプカッター1とすることができる。
【0065】
なお、本発明の実施形態においては、当接ローラ60を第2の円弧状枠体20の所定位置に固定する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。
例えば当接ローラ60の構成として、スプリングなどを用いて、第2の円弧状枠体20の円弧中心方向に進退自在な機構を備える構成としてもよい。このような構成とすることで、パイプ100の外周面に凹凸などがあった場合でも、パイプ100の外周面に容易に追従可能なパイプカッター1とすることができる。よって一段と切断精度の良いパイプカッター1とすることができる。
【0066】
また図7(b)に示すように、第1、第2の円弧状枠体10、20に、図示しない回転駆動機の回転力を受けてパイプカッター1を回転可能とする、回転力受動部材としての送りガイドチェン80を備える構成としてもよい。なお、送りガイドチェン80は汎用されているものを用いると共に、溶接にて第1、第2の円弧状枠体10、20の外周に固定することができる。このような構成とすることで、パイプカッター1を自動的に回転させることができる。よって、作業者の作業負担を大幅に軽減させることができ、一段と作業効率が良く、操作性の良いパイプカッター1とすることができる。
なお、送りガイドチェン80は、図7(b)に示すように第1、第2の円弧状枠体10、20の外側に取り付ける構成としてもよいし、第1、第2の円弧状枠体10、20の内側に取り付ける構成としてもよい。内側に取り付ける構成としては、例えば第1、第2の円弧状枠体10、20の厚み方向(幅Tの方向)に貫通孔を設け、送りガイドチェン80に挿通させた支持用ピンを貫通孔に挿通させ、その状態でかしめて固定するような構成とすることができる。このような構成とすれば、第1、第2の円弧状枠体10、20に送りガイドチェンを取り付けるための溶接作業が必要なく、製造工程の簡略化が可能であると共に、送りガイドチェン80の脱落を効果的に防止でき、一段と作業効率が良いパイプカッターとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、被切断パイプの切断作業を効率的に行うことができることから、パイプカッターの分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0068】
1 パイプカッター
10 第1の円弧状枠体
11 枠体
11a 嵌合用凹所
11b 係合用レール
11c 内面
11d 外面
11e 嵌合用凹所
12 枠体
12b 係合用レール
12c 内面
12d 外面
13 連結用ピン
20 第2の円弧状枠体
21 枠体
21a 嵌合用凹所
21b 係合用レール
21c 内面
21d 外面
21e 嵌合用凹所
22 枠体
22b 係合用レール
22c 内面
22d 外面
23 連結用ピン
30 切刃部
31 切断刃
31a 軸
32 切断刃保持具
32a 本体
32b 支持用ピン
32c ナット挟持用片
33 移動固定機構
33a ナット
33b ボルト
33c 移動規制部
33d 軸
40 枢着部
41 本体
42 支持用ピン
50 連結部
51 連結具
51a 本体
51b ネック部
51c 把持用頭部
52 連結具受部
52a 切り欠き
53 支持用ピン
60 当接ローラ
61 ローラ
62 支持用ピン
70 回転用治具
71 把持部
72 係合部
80 送りガイドチェン
100 パイプ
C 姿勢角度
D 姿勢角度
E 傾斜角度
F フレーム体
G 嵌合用凹所
H 嵌合用凹所
K1 貫通孔
K2 貫通孔
K3 貫通孔
K4 貫通孔
K5 貫通孔
L1 切り欠き
L2 切り欠き
N1 ナット
N2 ナット
P 幅
Q 幅
R 回動軌道
S1 側面
S2 側面
T 幅
【要約】
【課題】切断刃の進出量を調整することができ、作業効率が良く、操作性の良いパイプカッターの提供を課題とする。
【解決手段】第1、第2の円弧状枠体10、20と、切刃部30と、第1の円弧状枠体10と第2の円弧状枠体20との一端側を枢着する枢着部40と、他端側を連結解除自在に連結する連結部50と、第1、第2の円弧状枠体10、20の少なくとも何れか一方の円弧状枠体に取り付けられて被切断パイプの外周面と当接する当接ローラ60を備え、切刃部30は、切断刃31と、切断刃31を回転可能に保持すると共に一対の半円形状の枠体間に回動自在に取り付けられる切断刃保持具32と、切断刃保持具32を円弧状枠体の円弧中心へと進退自在に移動可能で、且つ所望の位置で固定可能とする移動固定機構33を備え、移動固定機構により円弧状枠体の円弧中心方向への切断刃の進出量を調整可能なパイプカッターである。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7