特許第6469925号(P6469925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6469925
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】耐火性構造部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   E04B1/94 P
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-167148(P2018-167148)
(22)【出願日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-157655(P2018-157655)
(32)【優先日】2018年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507403160
【氏名又は名称】株式会社中東
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】小坂 勇治
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−011063(JP,A)
【文献】 特開2017−172259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を受ける柱状の芯材と、該芯材の外周部を長手方向に沿って覆う鞘材を備え、該鞘材が角筒状に一体成形され且つ難燃化処理が施された木材から成ると共に、該角筒状の鞘材の内周部に上記芯材の外周部が嵌合している構成を有する一方、上記角筒状の鞘材の内周部と上記芯材の外周部を接着しない構成を有することを特徴とする耐火性構造部材。
【請求項2】
上記鞘材を構成する木材は集成材又は無垢材であることを特徴とする請求項1記載の耐火性構造部材。
【請求項3】
上記芯材は鋼材又は木材から成ることを特徴とする請求項1記載の耐火性構造部材。
【請求項4】
上記鞘材の内周部に凹部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の耐火性構造部材。
【請求項5】
木材を加工して鞘構成材を作製する鞘構成材作製工程と、該作製した鞘構成材を組み合わせて接着し角筒状の鞘材を作製する鞘構成材接着工程と、該鞘構成材接着工程により作製された角筒状の鞘材に難燃化処理を施す難燃化処理工程と、該難燃化処理工程により難燃化された角筒状の鞘材の内周部に柱状の芯材を挿入し該角筒状の鞘材の内周部に該芯材の外周部を嵌合する嵌合工程とを有する一方、上記角筒状の鞘材の内周部と上記芯材の外周部間を接着する工程を有しないことを特徴とする耐火性構造部材の製造方法。
【請求項6】
上記鞘構成材は集成材又は無垢材から成ることを特徴とする請求項5記載の耐火性構造部材の製造方法。
【請求項7】
上記芯材は鋼材又は木材から成ることを特徴とする請求項5記載の耐火性構造部材の製造方法。
【請求項8】
上記難燃化処理工程の前に上記鞘材の内周部に凹部を形成することを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載の耐火性構造部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性構造部材、すなわち建築物を支える柱や梁に用いる構造部材であって、火災時において火災終了まで建築物の倒壊や延焼を防止するために必要とされる耐火性能を発揮する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の構造部材として、荷重等を支持する角柱状の芯材と該芯材の外周部を覆う鞘材から成る構造部材が既知であり、芯材及び/又は鞘材に木材を用いる場合には、本来耐火性能に劣る木材をいかに難燃化させるかが重要となる。
【0003】
下記特許文献1の図1に示す耐火性構造部材は、芯材及び鞘材として木材を用いると共に、該芯材と鞘材間に不燃材たる石膏ボードを介在させる構成を有し、鞘材が燃え尽きたとしても石膏ボードによって芯材を直接火炎に晒さないことにより、耐火性能の向上を図っている。
【0004】
また、下記特許文献2の図17に示す耐火性構造部材は、芯材及び鞘材として木材を用いると共に、芯材と鞘材間に空気層を介在させる構成を有し、鞘材が燃え尽きるまでの間、鞘材による遮熱と空気層による断熱により芯材の温度を着火温度以下に抑えて、耐火性能を向上せんとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4359275号公報
【特許文献2】特開2013−204261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の耐火性構造部材にあっては、芯材と鞘材間に石膏ボードを介在させる構成を必須としているため、該石膏ボードを芯材の外周面に接着する工程が必要となり、更に該石膏ボードの外表面に鞘材を接着する工程が必要となり、製造工程が非常に煩雑となる問題点を有している。加えて石膏ボードを加工する際に大量のカスが出てしまう問題点も有している。
【0007】
また、芯材、石膏ボード及び鞘材が積層して接着された上記特許文献1の耐火性構造部材は、廃棄やリサイクルが困難となるのは自明の理である。
【0008】
他方、上記特許文献2の耐火性構造部材にあっては、芯材から一定間隔を置いて鞘材を配し、該鞘材は四枚の難燃化した板材をビス止め、ボルト止め等の方法で着脱可能に接合する構成となっている。よって、鞘材を容易に作製することができ、ひいては容易に構造部材を製造することができる。また、鞘材を容易に解体することができるので、廃棄やリサイクルを行い易い。
【0009】
しかしながら、上記特許文献2の耐火性構造部材においては、鞘材を構成する各板材をいくら難燃化したとしても、着脱可能に接合されている各板材間に隙間が生じ、当該隙間から火炎が入り込んでしまい、当該火炎による影響を芯材に与えてしまう問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した従来の耐火性構造部材が抱える問題点を有効に解決し、製造、廃棄及びリサイクルが容易ながらも、有効な耐火性能を発揮する耐火性構造材及びその製造方法を提供する。
【0011】
要述すると、本発明に係る耐火性構造部材は、荷重を受ける柱状の芯材と、該芯材の外周部を長手方向に沿って覆う鞘材を備え、該鞘材が角筒状に一体成形され且つ難燃化処理が施された木材から成ると共に、該角筒状の鞘材の内周部に上記芯材の外周部が嵌合している構成を有する一方、上記角筒状の鞘材の内周部と上記芯材の外周部を接着しない構成を有し、上記鞘材によって上記芯材に火炎が到達することを適切に抑止することができ、有効な耐火性能を発揮することができる。また、簡易構造であるので、廃棄やリサイクルも簡便に行うことができる。
【0012】
好ましくは、上記鞘材を構成する木材として、集成材又は無垢材を用いる。また、上記芯材を鋼材又は木材で構成する。
【0013】
さらに好ましくは、上記鞘材の内周部に凹部を形成することにより、難燃化用の薬剤を浸透し易くすることができる。また、上記凹部により上記鞘材と上記芯材間に断熱空隙を画成することができる。
【0014】
また、本発明に係る耐火性構造部材の製造方法は、木材を加工して鞘構成材を作製する鞘構成材作製工程と、該作製した鞘構成材を組み合わせて接着し角筒状の鞘材を作製する鞘構成材接着工程と、該鞘構成材接着工程により作製された角筒状の鞘材に難燃化処理を施す難燃化処理工程と、該難燃化処理工程により難燃化された角筒状の鞘材の内周部に芯材を挿入し該角筒状の鞘材の内周部に該芯材の外周部を嵌合する嵌合工程とを有する一方、上記角筒状の鞘材の内周部と上記芯材の外周部間を接着する工程を有しないことにより、上記鞘材を確実に一体化しつつ難燃化することができる。また、煩雑な工程を要さずに、容易に耐火性構造部材を製造することができる。
【0015】
好ましくは、上記鞘構成材は集成材又は無垢材で構成する。また、上記芯材は鋼材又は木材で構成する。
【0016】
また、上記難燃化処理工程の前に上記鞘材の内周部に凹部を形成することにより、難燃化用の薬剤を浸透し易くすることができる。また、上記凹部により上記鞘材と上記芯材間に断熱空隙を画成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る耐火性構造部材によれば、鞘材に芯材を嵌合した簡易構造ながらも、火災終了まで建築物の倒壊や延焼を防止するために必要とされる耐火性能を発揮することができる。
【0018】
また、本発明に係る耐火性構造部材の製造方法によれば、鞘材を有効に一体化し且つ難燃化することができる。よって、該鞘材によって芯材に対する火炎の影響を抑止することができ、必要な耐火性能を発揮する耐火性構造部材を製造することができる。また、煩雑な工程を要さずに、容易に耐火性構造部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る耐火性構造部材の斜視図である。
図2】横断面コの字状の鞘構成材の組み合わせを示す分解斜視図である。
図3図2の鞘構成材により構成した鞘材の斜視図である。
図4】鞘材の内周部に芯材の外周部を嵌合する状態を示す斜視図である。
図5】板状の鞘構成材の組み合わせを示す分解斜視図である。
図6図5の鞘構成材により構成した鞘材の斜視図である。
図7図5の鞘構成材により構成した鞘材を有する本発明に係る耐火構造部材を示す斜視図である。
図8】横断面コの字状の鞘構成材と板状の鞘構成材の組み合わせを示す分解斜視図である。
図9図8の鞘構成材により構成した鞘材の斜視図である。
図10図8の鞘構成材により構成した鞘材を有する本発明に係る耐火構造部材を示す斜視図である。
図11】芯材としてH鋼材を用いた本発明に係る耐火性構造部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図11に基づき、本発明に係る耐火性構造部材及びその製造方法の最良の実施形態について説明する。
【0021】
本発明に係る耐火性構造部材1は、建築物、特に木造の建築物の柱や梁として利用されるものであり、図1図7図10及び図11に示すように、建築物内で荷重を受ける柱状の芯材2と、該芯材2の外周部2aを長手方向に沿って覆う鞘材3を備え、芯材2の外周部2aが鞘材の内周部3bに嵌合している構成を有している。
【0022】
すなわち、本発明に係る耐火性構造部材1は、後記するように、鞘材3内に芯材2を挿入して芯材2と鞘材3とを嵌合するのみで、両者間を接着剤等により接着しない構成を有している。なお、図1図7図10及び図11中の5は楔であり、必須ではないが、必要に応じて打ち込むことにより、さらに確実に鞘材3を一体化することができる。
【0023】
本発明における芯材2は、柱状に加工され荷重を適切に受けることができる材であれば、特に材質を問わないが、好ましくは木材又は鋼材を用いることができる。木材としては、カラマツ、ベイマツ、スギ、ヒノキ、ヒバ等の構造部材として既に利用されている木材をラミナとした集成材又は上記例示した木材の無垢材を用いることができる。
【0024】
また、芯材2の横断面形状は、図1図7及び図10に示すように矩形状にすることができる。又は、例えば図11に示すH字形状のように、矩形状以外の形状とすることができる。いずれにしても、芯材2の素材や長さ、必要強度等により横断面形状を適宜選択することができる。
【0025】
鞘材3は、上述した芯材2の長手方向に延びる外周部2aを覆うものであって、当然に芯材2の全長と同等の長さを有するものであり、角筒状に一体成形され且つ難燃化処理が施された木材から成る。木材としては、芯材2と同様に、カラマツ、ベイマツ、スギ、ヒノキ、ヒバ等の構造部材として既に利用されている木材をラミナとした集成材又は上記例示した木材の無垢材を用いることができる。なお、鞘材3は化粧材としても機能する。
【0026】
好ましくは、鞘材3の内周部3bには凹部4を形成し、該凹部4により鞘材3と芯材2間に断熱空隙を画成することができる。当該凹部4は内周部3bに多数の孔を穿設する他、内周部3bの表面を削り荒らすことにより形成することができる。
【0027】
上記のとおり、本発明に係る耐火性構造部材1は、鞘材3に芯材2が嵌合した、非接着の芯鞘構造を備えている。そして、鞘材3が角筒状に一体成形され且つ難燃化処理を施された木材から成ることにより、当該鞘材3が火災発生時には燃え代層として有効に機能すると共に、芯材2側へ火炎が入り込むのを確実に防止することができる。
【0028】
したがって、簡易構造ながらも、火災終了まで芯材2の構造耐力を保持するために必要な耐火性能を発揮することができる。
【0029】
次いで、本発明に係る耐火性構造部材1の製造方法について、順を追って説明する。
【0030】
〈鞘構成材作製工程〉
本工程においては、図2に示すように、既述した鞘材3として用いることができる木材を横断面コの字状の柱状に加工して横断面コの字状鞘構成材3Aを作製する。加工は横断面コの字状となるように木材を切削する。後記する難燃化処理工程の前に切削加工を行うことにより、処分に困る難燃性の削りカスが発生することを防止する。
【0031】
なお、木材が集成材の場合には、横断面がコの字状になるようにラミナを接着して横断面コの字状鞘構成材3Aを作成することも、実施に応じ任意である。
【0032】
また、上述した横断面コの字状鞘構成材3Aではなく、図5に示すように、既述した鞘材3として用いることができる木材を長板状に加工して板状鞘構成材3Bを作製する。又は、図8に示すように、上述した横断面コの字状鞘構成材3Aに加えて板状鞘構成3Bを作製する。
【0033】
また、本工程において、横断面コの字状鞘構成材3Aの入隅を画成する入隅面部3Ab及び板状鞘構成材3Bの内面部3Bb、つまり後に鞘材3の内周部3bを構成する面に多数の孔部を穿設するか又は当該面を削り荒らして凹部4を形成する。該凹部4は製造後には、既述のように、鞘材3と芯材2間に断熱空隙を画成すると共に、後記する難燃化処理工程においては、難燃化用の薬剤を浸透し易くすることができる。
【0034】
〈鞘構成材接着工程〉
本工程においては、図3に示すように、上記鞘構成材作製工程で作製した一対の横断面コの字状鞘構成材3Aを直接組み合わせて接着剤を介して接着する。
【0035】
用いる接着剤は、レゾルシノール接着剤に代表される集成材用の接着剤であり、横断面コの字状鞘構成材3A同士を強固に接着し、角筒状に一体化する。したがって、火炎が入り込む隙間が生ずることなく一体化することができる。
【0036】
このように一体化した一対の横断面コの字状鞘構成材3Aにより、図3に示すような鞘材3が作製される。よって、鞘構成材3Aの入隅面部3Abが鞘材3の内周部3bを構成し、鞘構成材3Aの出隅を構成する出隅面部3Aaが鞘材3の外周部3aを構成する。
【0037】
また、本工程において、図6に示すように、上記鞘構成材作成工程で作成した四つの板状鞘構成材3Bを直接組み合わせて既述の集成材用接着剤を介して強固に接着し角筒状の鞘材3を作製することもできる。したがって、火炎が入り込む隙間がなく一体化した角筒状の鞘材3を作製することができる。
【0038】
このように一体化した四つの板状鞘構成材3Bにより、図6に示すような鞘材3が作製される。よって、各板状鞘構成材3Bの内面部3Bbが鞘材3の内周部3bを構成し、各板状鞘構成材3Bの外面部3Baが鞘材3の外周部3aを構成する。
【0039】
さらに、本工程において、図9に示すように、一対の横断面コの字状鞘構成材3A間に板状鞘構成材3Bを介して組み合わせて接着し角筒状の鞘材3を作製することもできる。
【0040】
このように横断面コの字状鞘構成材3Aと板状鞘構成材3Bを組み合わせて用いることにより、横断面コの字状鞘構成材3Aをコンパクトにすることができ、上記鞘構成材作製工程において切削加工して横断面コの字状鞘構成材3Aを作製する際の削りカスの量を抑制すると共に切削加工自体を簡便にすることができる。また、芯材2の横断面積が大きい場合も適切に対応することができる。
【0041】
また、横断面コの字状鞘構成材3Aと板状鞘構成材3Bを組み合わせる場合も接着剤としては集成材用接着剤により横断面コの字状鞘構成材3Aと板状鞘構成材3Bを強固に接着する。これにより、火炎が入り込む隙間がなく一体化した角筒状の鞘材3を作製することができる。
【0042】
このように一体化した一対の鞘構成材3A及び一対の板状鞘構成材3Bにより、図9に示すような鞘材3が作製される。よって、横断面コの字状鞘構成材3Aの入隅面部3Ab及び板状鞘構成材3Bの内面部3Bbが鞘材3の内周部3bを構成し、横断面コの字状鞘構成材3Aの出隅面部3Aa及び板状鞘構成材3Bの外面部3Baが鞘材3の外周部3aを構成する。
【0043】
本発明に係る耐火性構造部材1の製造方法にあっては、本工程、すなわち集成材用接着剤による接着工程を、後記する難燃化処理工程前に行うことにより難燃化用の薬剤に起因する接着不良が発生することもない。
【0044】
また、本工程において、接着箇所に楔5を打ち込んで、さらに確実に一体化させることができる。
【0045】
〈難燃化処理工程〉
本工程は、上記鞘構成材接着工程により作製された鞘材3、すなわち既に一体化した鞘材3に難燃化処理を施す工程である。
【0046】
難燃化処理は、既知の減圧・加圧法、温冷浴法又は浸漬法等により、リン酸系、ハロゲン系又はホウ酸系の薬剤又はこれらを混合した薬剤を鞘材3に浸透させることにより行う。この際に、凹部4によって鞘材3の内部に難燃化用の薬剤が浸透しやすくなり、確実に鞘材3を難燃化させることができる。
【0047】
〈嵌合工程〉
最後に、図4に示すように、本工程により、難燃化処理を施された鞘材3の内周部3bに芯材2の全長又は部分長を挿入し、該鞘材3の内周部3bに該芯材2の外周部2aを嵌合する。これにより、図1に示す本発明に係る耐火性構造部材1が完成する。また、具体的には図示しないが、図6に示す、板状鞘構成材3Bを用いた鞘材3を備えた本発明に係る耐火性構造部材1や、図9に示す、横断面コの字状鞘構成材3A及び板状鞘構成材3Bを用いた鞘材3を備えた本発明に係る耐火性構造部材1、図11に示す、芯材2としてH鋼材を用いた本発明に係る耐火性構造部材1の場合も、同様な嵌合工程を経て完成する。
【0048】
上記のとおり、本発明に係る耐火性構造部材1の製造方法によれば、鞘材3を有効に一体化し且つ難燃化することができる。そのため、当該製造方法によって製造された耐火性構造部材1は、有効に一体化され且つ難燃化された鞘材3によって芯材2が覆われるので、火災終了までに必要な耐火性能を十分に発揮することができる。
【0049】
また、本発明に係る耐火性構造部材1の製造方法は、煩雑な工程を要さずに、容易に耐火性構造部材を製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…耐火性構造部材、2…芯材、2a…芯材の外周部、3…鞘材、3a…鞘材の外周部、3b…鞘材の内周部、3A…横断面コの字状鞘構成材、3Aa…横断面コの字状鞘構成材の出隅面部、3Ab…横断面コの字状鞘構成材の入隅面部、3B…板状鞘構成材、3Ba…板状鞘構成材の外面部、3Bb…板状鞘構成材の内面部、4…凹部、5…楔。
【要約】
【課題】 製造、廃棄及びリサイクルが容易ながらも、火災終了まで建築物の倒壊や延焼を防止するために必要とされる耐火性能を発揮することができる耐火性構造部材の提供。
【解決手段】 本発明に係る耐火性構造部材1は、荷重を受ける柱状の芯材2と、該芯材2の外周部2aを長手方向に沿って覆う鞘材3を備え、該鞘材3が角筒状に一体成形され且つ難燃化処理が施された木材から成ると共に、該鞘材3の内周部3bに上記芯材2の外周部2aが嵌合している構成を有し、上記鞘材3によって上記芯材2に火炎が到達することを適切に抑止することができ、有効な耐火性能を発揮することができる。また、簡易構造であるので、廃棄やリサイクルも簡便に行うことができる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11