(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469931
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20190204BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20190204BHJP
C08K 5/156 20060101ALI20190204BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20190204BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20190204BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20190204BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20190204BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20190204BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20190204BHJP
C08L 97/02 20060101ALI20190204BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
C08L67/00ZBP
C08K3/00
C08K5/156
C08K5/07
C08K7/02
C08L3/00
C08L25/18
C08L33/14
C08L67/04
C08L97/02
C08L101/16
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-511329(P2018-511329)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公表番号】特表2018-515684(P2018-515684A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】CN2017074676
(87)【国際公開番号】WO2017152774
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2017年11月10日
(31)【優先権主張番号】201610126866.6
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517393787
【氏名又は名称】金発科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】蘆昌利
(72)【発明者】
【氏名】袁志敏
(72)【発明者】
【氏名】蔡▲トン▼旻
(72)【発明者】
【氏名】黄険波
(72)【発明者】
【氏名】曾祥斌
(72)【発明者】
【氏名】焦健
(72)【発明者】
【氏名】苑仁旭
(72)【発明者】
【氏名】鍾宇科
(72)【発明者】
【氏名】熊凱
(72)【発明者】
【氏名】楊暉
(72)【発明者】
【氏名】麦開錦
(72)【発明者】
【氏名】董学騰
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−156539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00
C08K 3/00
C08K 5/07
C08K 5/156
C08K 7/02
C08L 3/00
C08L 25/18
C08L 33/14
C08L 67/04
C08L 97/02
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル組成物であって、成分として、
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、
i)生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル60−100重量
%と、
ii)ポリ乳酸0−40重量
%と、
iii)有機フィラー及び/又は無機フィラー0−35重量
%と、
iv)エポキシ基を有し、スチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づく共重合体0−1重量
%とを含み、
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、式(I)に示す構造を有する環状エステル化物の重量含有量は100ppm−950ppmであり、
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、シクロペンタノンの重量含有量は0.5ppm−85ppmであることを特徴とする生分解性ポリエステル組成物。
【化1】
【請求項2】
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、環状エステル化物の重量含有量は160ppm−750ppm、好ましくは210ppm−540ppm、シクロペンタノンの重量含有量は5ppm−50ppm、好ましくは10ppm−35ppmであることを特徴とする請求項1に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項3】
成分として、生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、
i)生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル65−95重量%と、
ii)ポリ乳酸5−35重量%と、
iii)有機フィラー及び/又は無機フィラー5−25重量%と、
iv)エポキシ基を有し、スチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づく共重合体0.02−0.5重量%とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項4】
生分解性ポリエステル組成物1.2000gを正確に秤量して、25mlメスフラスコに投入し、クロロホルムを加えて溶解して、生分解性ポリエステル組成物が完全に溶解すると定容し、調製した溶液における環状エステル化物のピーク面積をGC−MSによってテストし、調製した溶液における環状エステル化物のピーク面積と環状エステル化物の検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物における環状エステル化物の含有量を算出し、検量線を環状エステル化物/クロロホルム溶液で較正する方法によって、前記環状エステル化物の重量含有量をテストし、
生分解性ポリエステル組成物1.2000gを正確に秤量して、スタティックヘッドスペースサンプラーに投入し、スタティックヘッドスペース方法によって生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンのピーク面積をテストして、生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンのピーク面積とシクロペンタノンの検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンの含有量を算出し、検量線をシクロペンタノン/メタノール溶液で較正する方法によって、前記シクロペンタノンの重量含有量をテストすることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT、ポリブチレンサクシネートテレフタレートPBST又はポリブチレンセバケートテレフタレートPBSeTのうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記有機フィラーは、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維又は木粉から選ばれる1種又はそれらの混合物、前記無機フィラーは、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維又は鉱物繊維から選ばれる1種又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項7】
さらに、可塑剤、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、UV吸収剤、UV安定剤又はその他プラスチック添加剤の少なくとも1種を0−4部含むことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項8】
前記生分解性ポリエステル組成物を真空化されていないアルミ箔袋に入れてシールして、アルミ箔袋を70℃の熱風オーブンに入れて熱酸化老化テストを10日間以上行うことを特徴とする請求項1−7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項9】
前記生分解性ポリエステル組成物は、95%エタノールを用いて40℃で240h煮た後のΔL値が<0.80であることを特徴とする請求項1−7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項10】
前記生分解性ポリエステル組成物は、ブロー押出速度が176kg/hであるとき、膜厚のレンジが<0.2μm、膜厚の相対偏差が<1%であることを特徴とする請求項1−7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子材料変性分野に属し、具体的には、優れた耐熱酸化老化性、表面の外観及びバブル安定性を有する生分解性ポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ポリエステルは生物資源を原料とする高分子材料である。石油化学資源を原料とする石油系ポリマーに比べて、生分解性ポリエステルは生物又は生化学的作用過程又は生物環境において分解可能であり、従来の生分解性プラスチックのうち、研究が盛んに行われているとともに、将来性が期待できる分解性材料の1種である。
【0003】
従来から、生分解性ポリエステルフィルムは生分解性ポリエステルの重要な応用分野の一つであり、主に食品用袋、ゴミ袋、ショッピングバッグやマルチシート等が含まれる。生分解性ポリエステルのブロー成形によりフィルムを製造する過程において、フィルムの潤滑性が不十分でロールに付着したり過度に潤滑して巻き取れないという現象がしばしば発生して、それによりブロー過程でのバブル安定性は悪く、膜厚のレンジは大きくなり、ブロー連続性に悪影響を与えてしまう。特許CN 101622311Aでは、生分解性ポリエステル混合物にバイオディーゼルを0.05−5重量%添加して、ポリエステル混合物の粘度を低下させることで、フィルムのロールへの付着をある程度で軽減させ、ブロー連続性を確保する。その反面、ポリエステル混合物の粘度低下から、バイオディーゼルの添加はある程度でポリエステルの性能を阻害して、ポリエステル混合物のメルトインデックス上昇、粘度低下に繋がることが分かる。
【0004】
さらに、生分解性ポリエステルを用いて製造された成形品は、微生物、日光、放射線照射、空気及び接触する物理的環境の作用により、保存や使用過程において、老化して分解しやすく、製品の使用性能に悪影響を与える。高分子材料の老化分解を解決するための従来の方法には、材料に酸化防止剤、UV吸収剤やHALS安定剤等を添加することが含まれている。たとえば、特許WO 2009/071475はポリエチレン、ヒドロキシフェニルトリアジンを安定剤として含むマルチシートを開示している。CN 103687902には、UV吸収剤とHALS安定剤、又は両方を組み合わせた光安定剤をマルチシートに用いてUV安定性を提供することが記載されている。上記安定剤は所定の安定化作用を提供できるものの、透明マルチシート、特に薄い透明マルチシートの場合は、まだ不十分である。
【0005】
さらに、生分解性ポリエステル組成物で製造された成形品は、95%エタノールで蒸煮した条件下で、膜又は製品の表面に析出物が析出されて、膜又は製品の表面の外観に悪影響を与える。
【0006】
本発明は研究した結果、驚くことに、生分解性ポリエステル組成物に、微量の環状エステル化物とシクロペンタノンを添加することによって、生分解性ポリエステル組成物の抗酸化性を大幅に向上させるとともに、生分解性ポリエステル組成物の表面の良好な外観が確保でき、また、生分解性ポリエステル組成物は、大幅に改善したブロー特性を有し、高速ブロー時に、バブル安定性に優れて、膜厚のレンジが小さいようになり、ブロー生産の連続性が確保されることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、該組成物に微量の環状エステル化物とシクロペンタノンを添加することによって、優れた耐熱酸化老化性、表面の外観及びバブル安定性を付与できる生分解性ポリエステル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の技術案により達成される。
【0009】
生分解性ポリエステル組成物であって、成分として、
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、
i)生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル60−100重量
%と、
ii)ポリ乳酸0−40重量
%と、
iii)有機フィラー及び/又は無機フィラー0−35重量
%と、
iv)エポキシ基を有し、スチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づく共重合体0−1重量
%とを含む。
【0010】
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、式(I)に示す構造を有する環状エステル化物の重量含有量は100ppm−950ppmであり、
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、シクロペンタノンの重量含有量は0.5ppm−85ppmである。
【化1】
【0011】
好ましくは、生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、環状エステル化物の重量含有量は160ppm−750ppm、好ましくは210ppm−540ppm、シクロペンタノンの重量含有量は5ppm−50ppm、好ましくは10ppm−35ppmである。
【0012】
好ましくは、前記生分解性ポリエステル組成物は、成分として、
生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、
i)生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル65−95重量
%と、
ii)ポリ乳酸5−35重量
%と、
iii)有機フィラー及び/又は無機フィラー5−25重量
%と、
iv)エポキシ基を有し、スチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づく共重合体0.02−0.5重量
%とを含む。
【0013】
前記生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT、ポリブチレンサクシネートテレフタレートPBST又はポリブチレンセバケートテレフタレートPBSeTのうちの1種又は複数種である。
【0014】
環状エステル化物の添加は、生分解性ポリエステル組成物の耐用年数の延長に寄与し、シクロペンタノンの生分解性ポリエステルへの添加は、潤滑剤のような作用を果たし、本発明は研究した結果、生分解性ポリエステル組成物における環状エステル化物の含有量を100ppm−950ppm、シクロペンタノンの含有量を0.5ppm−85ppmに制御することによって、生分解性ポリエステル組成物に良好な耐熱酸化老化性を付与するとともに、製造された膜又は製品の良好な外観が確保でき、また、生分解性ポリエステルのブロー成形過程での膜の潤滑性を改善し、ブロー速度が176kg/hであるとき、膜厚のレンジは<0.2μm、膜厚の相対偏差は<1%であり、バブルの安定性とブロー連続性が確保されることを見出した。
【0015】
生分解性ポリエステル組成物における環状エステル化物の含有量が高すぎると、環状エステル化物は95%エタノールで蒸煮した条件下で膜又は製品の表面から析出されて、膜又は製品の表面の外観に悪影響を与える。生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンの含有量が高すぎると、高速ブロー過程において、膜は過度に潤滑になり、ロールに効果的に巻き取ることができず、その結果、同様にバブルが不安定になり、従って、生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、環状エステル化物の重量含有量は好ましくは160ppm−750ppm、より好ましくは210ppm−540ppm、シクロペンタノンの重量含有量は好ましくは5ppm−50ppm、より好ましくは10ppm−35ppmである。
【0016】
前記有機フィラーは、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維又は木粉から選ばれる1種又はそれらの混合物、前記無機フィラーは、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維又は鉱物繊維から選ばれる1種又はそれらの混合物である。
【0017】
本発明に係る環状エステル化物とシクロペンタノンの入手方法としては、生分解性ポリエステル組成物の混合押出過程において環状エステル化物とシクロペンタノンを直接添加してもよい。
【0018】
用途によっては、本発明に係る生分解性ポリエステル組成物にはさらに、可塑剤、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、UV吸収剤、UV安定剤又はその他プラスチック添加剤の少なくとも1種を0−4部添加してもよい。
【0019】
前記可塑剤は、クエン酸エステル、グリセリン、エポキシダイズ油等のうちの1種又は2種以上の混合物であり、
前記離型剤は、シリコーンオイル、パラフィン、ホワイトミネラルオイル、ワセリンのうちの1種又は2種以上の混合物であり、
前記界面活性剤は、ポリソルベート、パルミテート又はラウレートのうちの1種又は2種以上の混合物であり、
前記ワックスは、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、蜜蝋又は蜜蝋エステルのうちの1種又は2種以上の混合物であり、
前記帯電防止剤は永久帯電防止剤であり、具体的には、PELESTAT−230、PELESTAT−6500、SUNNICO ASA−2500のうちの1種又は2種以上の混合物が挙げられ、
前記染料は、カーボンブラック、ブラックマスターバッチ、チタン白、硫化亜鉛、フタロシアニンブルー、蛍光オレンジのうちの1種又は2種以上の混合物である。
【0020】
前記UV吸収剤は、UV−944、UV−234、UV531、UV326のうちの1種又は複数種であり、
前記UV安定剤は、UV−123、UV−3896、UV−328のうちの1種又は複数種であり、
前記その他プラスチック添加剤は成核剤、防曇剤等であってもよい。
【0021】
本発明に係る生分解性ポリエステル組成物はショッピングバッグ、堆肥袋、マルチシート、保護用被覆膜、サイロ用膜、フィルムテープ、織物、不織物、織物製品、魚網、荷重袋、ゴミ袋等の製造に用いられ得る。
【発明の効果】
【0022】
従来技術に比べて、本発明は下記有益な効果を有する。
【0023】
本発明は、組成物に環状エステル化物とシクロペンタノンを添加して、組成物における環状エステル化物の含有量を100ppm−950ppmの範囲、シクロペンタノンの含有量を0.5ppm−85ppmの範囲に制御することによって、生分解性ポリエステル組成物の耐熱酸化老化性を大幅に向上させるとともに、ブロー成形した膜又は射出成形した製品は95%エタノールを用いて40℃で240h煮た後、表面析出物が少なく、表面の外観が良好であり、また、生分解性ポリエステル組成物のブロー成形過程での膜の潤滑性を改善し、ブロー速度が176kg/hであるとき、膜厚のレンジは<0.2μm、膜厚の相対偏差は<1%であり、バブルの安定性とブロー連続性が確保される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態をもって本発明を更に説明するが、以下の実施例は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の実施形態は下記実施例により制限されない。
【0025】
本発明の実施例では、成分i)としてPBAT、成分iv)としてADR4370、有機フィラーとして澱粉、無機フィラーとしてタルク粉、炭酸カルシウム、可塑剤としてクエン酸エステル、界面活性剤としてパルミテート、ワックスとしてステアラミドを用い、上記助剤、PBAT、ADR4370及びPLA、環状エステル化物、シクロペンタノンはすべて市販品として入手される。
【0027】
表1に示す処方に基づいて、PBAT、PLA、ADR4370、有機フィラー、無機フィラー、可塑剤、界面活性剤、ワックス等の助剤及び環状エステル化物、シクロペンタノンを均一に混合した後に単軸押出機に投入し、140℃−240℃で押し出して造粒し、組成物を得た。性能のテストデータは表1に示される。
【0029】
(1)生分解性ポリエステル組成物耐の熱酸化老化性の評定方法
生分解性ポリエステル組成物を真空化されていないアルミ箔袋に入れてシールし、アルミ箔袋を70℃の熱風オーブンに入れて、熱酸化老化テストを行い、3日間おきにサンプリングして、サンプルのメルトインデックス(190℃/2.16kg、ISO 1133に準じる)をテストした。サンプルのメルトインデックスが生分解性ポリエステル組成物の正常なメルトインデックスの範囲を超えると、生分解性ポリエステル組成物は明らかな熱酸化老化分解が発生したことを示し、生分解性ポリエステル組成物が明らかな熱酸化老化分解を発生させるテスト時点を記録し、テスト時間が短いほど、生分解性ポリエステル組成物の耐熱酸化老化性が悪いことを示す。
【0030】
(2)成形品の表面外観の評定方法
2mmのカラーシートを射出成形して、
40℃、95%エタノール溶液に入れ、240h蒸煮後、環境温度(23±2)℃、相対湿度45%−55%の標準実験室に置き、48h調整後、色差計を用いてカラーシートの処理前後のL値の変化ΔLを測定した。ΔLは大きいほど、表面析出物は多く、表面の外観は悪い。
【0031】
(3)生分解性ポリエステル組成物のバブル安定性の評定方法
生分解性ポリエステル組成物のブロー過程でのバブル安定性は、膜厚のレンジと膜厚の相対偏差の方法によって評定される。
スパイラルマイクロメータを用いた膜厚のテスト:1m*1mのフィルムから10個の測定点を均等に選択して測定する。
膜厚のレンジは10個の測定点のうち最大厚み値と最小厚み値の差である。
膜厚の相対偏差は下式により計算される。
膜厚の相対偏差%=膜厚のレンジ/平均膜厚*100%
式中、平均膜厚については、1m*1mのフィルムから10個の測定点を均等に選択して、それぞれ厚みをテストして算術平均値を取る。
【0032】
(4)環状エステル化物の測定方法
生分解性ポリエステル組成物1.2000gを正確に秤量して、25mlメスフラスコに投入し、クロロホルムを加えて溶解して、生分解性ポリエステル組成物が完全に溶解すると定容した。調製した溶液における環状エステル化物のピーク面積をGC−MSによってテストし、調製した溶液における環状エステル化物のピーク面積と環状エステル化物の検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物における環状エステル化物の含有量を算出した。検量線を環状エステル化物/クロロホルム溶液で較正した。
【0033】
GC−MS型番及びパラメータは以下のとおりである。
Agilent Technologies 7693 AutoSampler;
Agilent Technologies 5975C inert MSD with Triple−Axis Detector;
カラム:J&W 122−5532 UI:350℃:30m×250μm×0.25μm
試料注入:前SS試料注入口He
排出:真空。
【0034】
(5)シクロペンタノンの測定方法
1)シクロペンタノン検量線の作成
濃度が0.0001g/L、0.001g/L、0.01 g/L、0.1g/L、5.0g/L、10.0g/L、20.0g/Lのシクロペンタノンメタノール溶液をそれぞれ調製して、スタティックヘッドスペース方法を用いて上記各濃度のシクロペンタノンメタノール溶液におけるシクロペンタノンのピーク面積をそれぞれテストし、シクロペンタノンのピーク面積を縦座標、シクロペンタノンの濃度を横座標として、シクロペンタノンの検量線を作成した。
2)生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノン含有量の測定
1.2000g程度の生分解性ポリエステル組成物を正確に秤量して、スタティックヘッドスペースサンプラーに投入し、スタティックヘッドスペース方法によって生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンのピーク面積をテストして、生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンのピーク面積とシクロペンタノンの検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物におけるシクロペンタノンの含有量を算出した。
【0035】
スタティックヘッドスペース用装置の型番及びパラメータは以下のとおりである。
Agilent Technologies 7697 Headspace Sampler;
Agilent Technologies 7890A GC System;
カラム:J&W 122−7032:250℃:30mx250μmx0.25μm
試料注入:前SS試料注入口N2
排出:前検出器 FID。
スタティックヘッドスペーステスト条件は以下のとおりである。
温度:
オーブン:105℃
定量ループ:135℃
トランスファーライン:165℃
時間:
サンプル瓶の平衡化:120分間
試料注入の持続時間:0.09分間
GCサイクル:30分間。
【0037】
表1から明らかなように、生分解性ポリエステル組成物において環状エステル化物の含有量が100−950ppm、シクロペンタノンの含有量が0.5−85ppmであるとき、組成物はより優れた耐熱酸化老化性を有し、且つ95%エタノールを用いて40℃で240h煮た後のΔLが0.80より小さく、それは組成物の表面の外観が良好であることを示し、さらに、ブロー速度が176kg/hであるとき、膜厚のレンジは<0.2μm、膜厚の相対偏差は<1%であり、それは組成物がより優れたバブル安定性を有することを示す。比較例1のように環状エステル化物の含有量が100ppmより小さく、シクロペンタノンの含有量が0であるとき、組成物のΔL値が小さいものの、組成物の熱酸化老化時間が短く、膜厚のレンジは>0.2μm、膜厚の相対偏差は>1%であった。比較例2のように環状エステル化物の含有量が950ppm、シクロペンタノンの含有量が85ppmを超えるとき、ΔLは1.0以上に達し、膜厚のレンジは>0.2μm、膜厚の相対偏差は>1%であり、それは表面析出物が大きく、組成物の表面外観とバブル安定性が悪いことを示す。比較例3のようにブロー速度が176kg/hより低く、比較例4のようにブロー速度が176kg/hより高く、膜厚のレンジは>0.2μm、膜厚の相対偏差は>1%であり、組成物のバブルは不安定であった。