【文献】
PD-97134 IRFP4468PbF,International Rectifier,2008年 5月21日,p.1-8,URL,https://www.infineon.com/irfp4468pdf.pdf?fileid=5546d462533600a40153562c73472019
【文献】
PD-97323 IRFP4004PbF,International Rectifier,2008年 6月 5日,p.1-8,URL,https://www.infineon.com/irfp4004pdf.pdf?fileid=5546d462533600a40153562905f41ffc
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のSMUは、前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子と追加の1組の端子を介して1組のケーブルにより接続され、前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子間の電圧を測定する、請求項13に記載の装置。
前記第1のSMUは、事前に前記DUTの前記第1の端子と前記第2の端子を短絡して測定した第1の補正抵抗値と、事前に前記DUTの前記第1の端子と前記第2の端子を開放して測定した第1の補正電流値とにより、電圧及び電流の測定値を補正する、請求項13〜16のいずれかに記載の装置。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車及びハイブリッド自動車の普及、自動車等の回生エネルギーの利用技術の普及、太陽光発電等の普及に伴い、パワーMOSFET、IGBT等のパワーデバイスを使用した装置が増えており、そのようなパワーデバイスを用いた装置の設計のためにパワーデバイスの評価を行う機会が増加している。
【0003】
上記のようなパワーデバイスを使用する場合には、パワーデバイスを用いた回路設計の有効なパラメータとして、パワーMOSFET及びIGBTを例にとると、非特許文献1の「3. The Gate Charge Curve」の章、同文献の
図4に記載のようなゲート電荷のテスト回路(本明細書に
図18として掲載)、
図5のゲート電圧対ドレイン電流/電圧の特性(本明細書に
図19として掲載)、
図6のゲート電圧対ゲート電荷曲線(本明細書に
図20として掲載)に記載のように、最終的に、測定された電流値と時間(サンプリング間隔)との積を取り、横軸をゲート電荷とするゲート電荷Q
g特性あるいはゲート電荷曲線(Q
g曲線)が求められ、回路設計において、主として当該デバイスのターンオンについてのパラメータを決定するために利用される。なお、本明細書において、「曲線」とは、複数の直線または曲線の組み合わせも含み、「線」または「線分」は直線に限定されないものとする。
【0004】
ここで、本明細書の
図19に記載のように、ゲート電荷曲線は、ゲート電圧が時刻t
0においてV
DD電圧の印加が開始されてから、時刻t
1でV
G(TH)まで上昇してターンオンし、さらに引き続きドレイン電流が流れて
図18のC
DGの充電が終了する時刻t
2(
図19)までゲート電圧及びドレイン電流が上昇を続ける第1の区間Q
GS(t
0〜t
2)と、次に
図18のC
DGの充電が始まり時刻t
3で終了するまでの、一定のゲート電圧及び一定のドレイン電流と、減少するドレイン電圧を示す第2の区間Q
GD(t
2〜t
3)と、最後に、C
DGとC
GSの両方を充電し、ゲート電圧が時刻t
4で電源電圧に達するまで上昇を続け、その間一定のドレイン電流が流れる第3の区間(t
3〜t
4)で構成される。なお、
図19では、横軸は時間tであるが、一般的にはゲート電荷特性は、
図20に示されるように横軸を電荷Qに換算して表わされる。横軸が電荷であらわされる場合にも、その特性曲線上は上記の3つの区間を示すことに注意されたい。
【0005】
非特許文献2の
図12の左側の図面(本明細書に
図21として掲載)には、ゲート電荷テスト回路として、DUTに流れるドレイン電流の電流制限素子として、DUTと同じ型のデバイスを電流負荷として利用するテスト回路が記載されている。
【0006】
さらに、非特許文献3の
図23a(本明細書に
図22として掲載)には、DUTにドレイン電流を供給する際に、インダクタを利用して、定電流を得るテスト回路が記載されている。
【0007】
さらに、非特許文献4の
図4(本明細書に
図23として掲載)には、DUTにドレイン電流を供給するために、可変抵抗を電流制限素子として利用する回路が記載されている。
【0008】
ところで、上記のようなパワーデバイスのゲート電荷曲線は、デバイスの仕様書においてその測定条件が規定されているが、近年、例えば非特許文献5の第2頁及び第3頁の
図6に記載されるように、10kW前後の電力を必要とする測定条件が規定されることが珍しくなくなっている。したがって、一般ユーザにとっては、パワーデバイスのゲート電荷特性を仕様書の測定条件で評価するためには、高価かつ大きな電源設備が必要となるため、潤沢に設備を購入することができる一部のユーザを除いて、その評価は困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決し、比較的安価な装置及び回路を使って測定した特性を基に、仕様上の測定条件を満たしたゲート電荷曲線を求める方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、パワーデバイスのゲート電荷曲線のほか、ケーブルを接続し直すことなく、複数の特性の測定機能も兼ね備える試験装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるパワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める方法は、第1と第2の測定条件における2回の直接測定により、第1と第2のゲート電荷特性を取得するステップと、前記第1と第2のゲート電荷特性を合成して、前記デバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求めるステップとを備える。
【0013】
ここで、前記第1と第2のゲート電荷特性を取得するステップは、第1のドレイン電流値と第1のドレイン−ソース電圧値において、第1のゲート電荷特性を測定するステップと、第2のドレイン電流値と第2のドレイン−ソース電圧値において、第2のゲート電荷特性を測定するステップとを備える態様を含む。
【0014】
さらに、前記第1のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第1〜第3の区間を備え、前記第2のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第4〜第6の区間を備え、前記第1のドレイン電流値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流値と等しく、前記第2のドレイン−ソース電圧値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン−ソース電圧値と等しく、前記合成し、ゲート電荷特性を求めるステップは、前記第2の区間の始点と終点を求めるステップと、前記第5の区間の始点と終点を求めるステップと、前記第1のゲート電荷特性と前記第2のゲート電荷特性に基づいて、1以上の追加の特性を導き出すステップと、前記第1のゲート電荷特性の1以上の部分と、前記第2のゲート電荷特性の1以上の部分と、前記1以上の追加の特性とを合成するステップとを備える態様を含む。
【0015】
さらに、前記第2の区間の終点を延伸し、前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、前記第1の区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第1の交点から先の前記第6の区間の残りの部分とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様も含む。
【0016】
さらに、前記第2の区間の終点を延伸し、前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、前記第3の区間を、前記第1の交点を始点とするように傾きを保ったまま平行にコピーして第7の区間を生成するステップと、前記第1の区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第7の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様も含む。
【0017】
さらに、前記第4の区間を延伸して前記第2の区間につなげるステップと、前記第2の区間の終点を延伸して前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、前記第4の区間と、前記第4の区間を延伸した区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第1の交点から先の前記第6の区間の残りの部分とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様も含む。
【0018】
さらに、前記第4の区間を延伸して前記第2の区間につなげるステップと、前記第2の区間の終点を延伸して前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、前記第3の区間を、前記第1の交点を始点とするように傾きを保ったまま平行にコピーして第7の区間を生成するステップと、前記第4の区間と、前記第4の区間を延伸した区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第7の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様も含む。
【0019】
さらに、前記第4の区間の終点を延伸し、前記第2の区間の始点を延伸して、第1の交点を求めるステップと、前記第2の区間の終点を延伸して前記第6の区間との第2の交点を求めるステップと、前記第3の区間を、前記第2の交点を始点とするように傾きを保ったまま平行にコピーして第7の区間を生成するステップと、前記第4の区間と、前記第4の区間を延伸して前記第1の交点までの区間と、前記第1の交点から前記第2の区間の始点までの区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸して前記第2の交点までの区間と、前記第7の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様も含む。
【0020】
さらに、本発明によるパワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める方法は、第1の測定条件における1回のゲート電荷特性についての直接測定により、第1の特性を取得するステップと、前記デバイスの第2の特性から、第1の補正値を得るステップと、前記第1の特性に、前記第1の補正値に基づく修正を加えて、前記デバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求めるステップとを備える。
【0021】
さらに、前記第2の特性は、前記デバイスの仕様書の記載を用いる態様と、前記第2の特性は、事前に前記デバイスを測定した測定データを用いる態様とを含む。
【0022】
さらに、前記第1の特性を取得するステップは、第1のドレイン電流値と第1のドレイン−ソース電圧値において、第1のゲート電荷特性を測定するステップを備え、前記第2の特性は、前記デバイスのドレイン−ソース電圧対C
rss容量特性であり、前記第1のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第1〜第3の区間を備え、前記第1のドレイン電流値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流値と等しく、前記第1の補正値を得るステップは、前記第1のドレイン−ソース電圧値と、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン−ソース電圧値との差に基づいて、前記第2の特性からゲート電荷についての補正値である前記第1の補正値を求めるステップを備え、前記第1の補正値に基づく修正を加えて、前記ゲート電荷特性を求めるステップは、前記第3の区間を、前記補正値だけ平行にシフトさせて前記第4の区間を生成するステップと、前記第1の区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間の終点を前記補正値だけ延伸した区間と、第4の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様を含む。
【0023】
さらに、前記第1の特性を取得するステップは、第1のドレイン電流値と第1のドレイン−ソース電圧値において、第1のゲート電荷特性を測定するステップを備え、前記第2の特性は、前記デバイスのドレイン電流対ゲート−ソース電圧特性であり、前記第1のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第1〜第3の区間を備え、前記第1のゲート−ソース電圧値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のゲート−ソース電圧値と等しく、前記第1の補正値を得るステップは、前記第1のドレイン電流値と、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流値との差に基づいて、前記第2の特性から前記第1の補正値を求めるステップを備え、前記第1の補正値に基づく修正を加えて、前記ゲート電荷特性を求めるステップは、前記第2の区間を、前記補正値だけ平行にシフトさせて前記第4の区間を生成するステップと、前記第1の区間と、前記第1の区間の終点を延伸した区間と、第4の区間と、前記第3の区間の一部とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップとを備える態様を含む。
【0024】
さらに、本発明によるパワーデバイスの特性の測定装置は、3端子のパワーデバイスであるDUTと、前記DUTの第1の端子と第2の端子とに接続された第1のSMUと、前記DUTの前記第2の端子と第3の端子とに接続された第2のSMUとを備える。
【0025】
さらに、前記第2のSMUは、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流か、前記デバイスの仕様上の測定条件のゲート−ソース電圧かのいずれか一方しか、一度に供給できない態様と、前記第2のSMUは、前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子と追加の1組の端子を介して1組のケーブルにより接続され、前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子間の電圧を測定する態様とを含む。
【0026】
さらに、前記第2のSMUと前記DUTの前記第3の端子間に、電流負荷デバイスを備え、前記電流負荷デバイスには、前記電流負荷デバイスに流れる電流を制御する第3のSMUが接続される態様と、前記第1のSMUと第2のSMUは、電圧源と、電流源と、電圧測定ユニットと、電流測定ユニットとを備える態様とを含む。
【0027】
さらに、前記DUTの前記第1の端子は前記DUTのゲート端子であり、前記第2の端子はソース端子であり、前記第3の端子はドレイン端子であり、前記装置は、上記のいずれかに記載の方法を実施してパワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める態様を含む。
【0028】
さらに、前記第1のSMUは、事前に前記DUTの前記第1の端子と前記第2の端子を短絡して測定した第1の補正抵抗値と、事前に前記DUTの前記第1の端子と前記第2の端子を開放して測定した第1の補正電流値とにより、電圧及び電流の測定値を補正する態様を含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、例えば非特許文献5のデバイスの第2頁の仕様書では、Q
G特性はI
Dが180A,V
DSが50Vの測定条件が規定されており、
図6においてはさらに、V
DSが80Vの場合も規定されている。後者の場合のQ
G特性の評価をするためには、電源は14.4kWの電力を供給できなければならず、装置は高価となり、装置全体のサイズも大きなものとなってしまう。デバイスによっては、もっと大きな電力が必要となるものも存在するため、実際に仕様書に規定された測定条件でQ
G特性を測定することは困難である。
【0031】
しかしながら、本出願人であるアジレント・テクノロジー社からは、近年、3000V、4mAを供給することができる電源、あるいは、60V、1500Aを供給することができる電源が販売されており、本発明の発明者は、これらを利用することにより、上記のような高電圧、大電流を必要とするゲート電荷特性のうち、仕様条件は満たさないながらも一部の範囲では測定できることに着目して、試行錯誤を繰り返し、本発明の着想を得るに至ったものである。
【0032】
その着想は、非特許文献1の記載に加えて、ゲート電荷特性Q
gは、パワーデバイスとしてここではパワーMOSFETを例として説明すると、本明細書の
図19の区間Q
GSは、
図18のC
GSとC
DGの充電による第1の区間、
図19の区間Q
GDは、
図18のC
DGの充電による第2の区間、
図19の時刻t
3−t
4の区間は、C
GSとC
DGとを充電し、ドレイン電流が流れてゲート−ソース電圧V
Gが上昇する第3の区間、として理解できるという知見を得たことと、さらに、パワーデバイスの容量−電圧特性と、ゲート−ソース電圧対ドレイン電流特性とを組み合わせることにより得た知見による。なお、本明細書では、Q、V、I、C等の物理量に、デバイスの端子名の下付き添字を付ける場合、添字の大文字/小文字の違いは区別されないことを注意されたい。すなわち、例えば、Q
GとQ
g,V
GSとV
gsは同じものを指すものとする。
【0033】
まず、本発明による第1の実施態様によるゲート電荷特性の測定方法を、
図1、2を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明による第1の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法を説明する、測定グラフを示す図であり、
図2は、本発明による第1の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法を示す、フローチャートを示す図である。
【0035】
この実施態様では、まず、仕様上のゲート電荷の測定条件(ドレイン電流とドレイン−ソース電圧)を、相補的に満足する2組の測定条件について、ゲート電荷特性を測定し、その2回の測定結果から、仕様上の測定条件に基づくゲート電荷特性を求める。「相補的に満足する2組の測定条件」とは、片方の組では、ドレイン電流についてだけ仕様上の測定条件を満足し、他方の組では、ドレイン−ソース電圧についてだけ仕様上の測定条件を満足するような測定条件の組み合わせの2組を意味する。
【0036】
ここで、上述の「求める」という言葉は、2回の直接測定結果の大部分と、一部の推定値とを組み合わせて、目的とする条件でのゲート電荷特性を生成、あるいは、合成し、そしてその結果を求めるものとして決定することを含むことに注意されたい。
【0037】
まず、
図2のステップ210において、ドレイン電流I
D11及びドレイン−ソース電圧V
DS11の条件で、ゲート電荷曲線Q
g11を測定する。得られた曲線は
図1において点a
11から、点a
12、a
13を経由して点a
14に至る曲線であるが、ここで、点a
12、a
13は、曲線の概要を述べるために測定データ中の特徴部分の点として便宜的に使用しただけであり、この時点ではまだ厳密にはその座標を特定されていないかもしれないことに注意されたい。なお、本明細書におけるグラフは、便宜上、曲線を含む線を直線で表示している場合があることにも注意されたい。
【0038】
次に、ステップ212において、ドレイン電流I
D12及びドレイン−ソース電圧V
DS12の条件で、ゲート電荷曲線Q
g12を測定する。得られた曲線は
図1において点b
11から、点b
12、b
13を経由して点b
14に至る点線で示された曲線であるが、ここで、点b
12、b
13については、ステップ210の説明と同様である。なお、
図1において、点a
11と点b
11は重なって示されており、区間b
11−b
12の点線も区間a
11−a
12の線の一部と重なって示されている。
【0039】
なお、ステップ210、212において、測定条件となるドレイン電流の関係は、説明の便宜上、I
D11>I
D12であり、I
D11が仕様上のQ
gの測定条件のドレイン電流に等しい値であり、同様に測定条件となるドレイン−ソース電圧の関係は、V
DS11<V
DS12であり、ここで、V
DS12は仕様上のQ
gの測定条件のドレイン−ソース電圧に等しい値であるとする。
【0040】
次に、ステップ214において、Q
g曲線Q
g11の第2の区間の始点a
12と終点a
13を求める。なお、始点と終点を求めるために、第2の区間の電圧V
gsが一定である点を利用するなどして近似して求めることができる。ここで、求められた始点a
12と終点a
13は、測定データの中から、どのような特徴に合ったデータを選んで求めることができる。また、測定データを補間して、そのような特徴に合った座標を備えた始点a
12と終点a
13として求めることもできる。なお、このような求め方は、以下の説明における同様な場合の記述にも適用することができる。
【0041】
次に、ステップ216において、Q
g曲線Q
g12の第2の区間の始点b
12と終点b
13についても、同様に求める。
【0042】
次に、ステップ218において、Q
g曲線Q
g11の第2の区間の線a
12−a
13をa
13方向に水平に伸ばし、Q
g曲線Q
g12の第3の区間の線b
13−b
14との交点b
15を求める。なお、交点b
15を求める際には、例えば、線分b
13−b
14を表す近似式を求めて、そこに、点a
12またはa
13を示すV
GS=v
13を代入することを利用することができる。なお、この求め方は、以下の説明における同様な場合の記述にも適用することができる。
【0043】
最後にステップ220において、曲線a
11−a
12−a
13−b
15−b
14を、Q
gの仕様条件に基づくQ
g曲線Q
g13として、決定する。
【0044】
なお、上記の曲線Q
g13において、区間a
11−a
12−a
13は直接測定の結果を用いたものであり、区間a
13−b
15は、第2の区間としてV
gsが一定である区間における不確実性の極めて少ない測定値の推定であり、区間b
15−b
14は直接測定の結果であることに注意されたい。
【0045】
ところで、
図1において線a
13−a
14とb
13−b
14は同じ傾きを持つとして示したが、厳密にはドレイン電流I
Dが変化すると、Q
g曲線の第3の区間の傾きは異なったものになるので、ステップ218の次に、点b
15を始点として、線a
13−a
14を平行にコピーして誤差の少ない点b
14の補正点(不図示)を求めて、より補正されたQ
g曲線とすることもできる。(詳細については、
図4の点c
22についての説明を参照されたい。)
【0046】
次に、
図2のフローチャートの代替方法としてQ
gを求める方法を、第2の実施態様として
図3に示す。
【0047】
図3において、ステップ310〜316は、
図2のステップ210〜216と同様なので説明を省略する。ステップ318では、曲線Q
g12の線b
11−b
12をb
12方向に延ばし、曲線Q
g11の線a
12−a
13との交点a
15を求める。なお、交点a
15を求める際には、例えば、線分b
11−b
12を表す近似式を求めて、そこに、点a
12を示すV
GS=v
13を代入することを利用することができることは、上述したのと同様である。なお、
図1では、点a
12と交点a
15は、重なって表示されていることに注意されたい。
【0048】
ステップ320はステップ218と同様なので説明を省略する。
【0049】
次に、ステップ322において、曲線b
11−b
12−a
15−a
13−b
15−b
14を、Q
gの仕様条件に基づくQ
g曲線Q
g13として、決定する。
【0050】
ところで、
図1において線a
13−a
14とb
13−b
14は同じ傾きを持つとして示したが、厳密にはドレイン電流I
Dが変化すると、Q
g曲線の第3の区間の傾きは異なったものになるので、ステップ320の次に、点b
15を始点として、線a
13−a
14を平行にコピーして誤差の少ない点b
14の補正点(不図示)を求めて、より補正されたQ
g曲線とすることもできる。(詳細については、
図4の点c
22についての説明を参照されたい。)
【0051】
次に、本発明による第3の実施態様によるゲート電荷特性の測定方法を、
図4、5を参照して説明する。
【0052】
上述の第1の実施態様及び第2の実施態様では、ドレイン−ソース電圧が仕様上のドレイン−ソース電圧と異なると、Q
g特性の第2の区間の長さが異なるので、第2の区間にドレイン−ソース電圧が仕様上のドレイン−ソース電圧と等しい測定条件の時の測定結果が反映されるように測定結果を合成して求めることで、容易かつ誤差も少なくQ
g特性を求めることができるという知見に基づいていた。
【0053】
第3の実施態様では、上記の知見に加えて、ドレイン電流が仕様上のQ
gの測定条件とは異なる場合には、Q
g特性の第3の区間のグラフの傾きがわずかに異なることと、ドレイン−ソース電圧が仕様上のQ
gの測定条件とは異なる場合には、Q
g特性の第1の区間のグラフの傾きがわずかに異なることとに着目し、第1の区間のグラフの傾きにドレイン−ソース電圧が仕様上のQ
gの測定条件と同じ場合の測定結果を利用し、第3の区間のグラフの傾きにドレイン電流が仕様上のQ
gの測定条件と同じ場合の測定結果を利用することにより、より精度の高いQ
g特性を求めることができるという知見に基づいて、Q
g特性を求めている。
【0054】
図4は、本発明による第3の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法による測定グラフを示す図であり、
図5は、本発明による第3の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法を示す、フローチャートを示す図である。
【0055】
この実施態様では、第1の実施態様同様、仕様上のゲート電荷の測定条件(ドレイン電流とドレイン−ソース電圧)を、相補的に満足する2組の測定条件について、ゲート電荷特性を測定し、その2回の測定結果から、仕様上の測定条件に基づくゲート電荷特性を求める。
【0056】
まず、
図5のステップ510において、ドレイン電流I
D21及びドレイン−ソース電圧V
DS21の条件で、ゲート電荷曲線Q
g21を測定する。得られた曲線は
図4において点a
21から、点a
22、a
23を経由して点a
24に至る実線で示された曲線であるが、ここで、点a
22、a
23は、この時点では曲線の概要を述べるために測定データの中から特徴部分の点として便宜的に使用しただけであることは
図1と同様である。
【0057】
次に、ステップ512において、ドレイン電流I
D22及びドレイン−ソース電圧V
DS22の条件で、ゲート電荷曲線Q
g22を測定する。得られた曲線は
図4において点b
21から、点b
22、b
23を経由して点b
24に至る点線で示された曲線であるが、ここで、点b
22、b
23については、ステップ510の説明と同様である。
【0058】
なお、ステップ510、512において、測定条件となるドレイン電流の関係は、I
D21>I
D22であり、I
D21が仕様上のQ
gの測定条件のドレイン電流に等しい値であり、同様に測定条件となるドレイン−ソース電圧の関係は、V
DS21<V
DS22であり、V
DS22が仕様上のQ
gの測定条件のドレイン−ソース電圧に等しい値であるとする。
【0059】
次に、ステップ514において、Q
g曲線Q
g21の第2の区間の始点a
22と終点a
23を求める。なお、始点と終点を求めるために、第2の区間の電圧V
gsが一定である点を利用するなどして近似して求めることができる。なお、この求め方は、以下の説明における同様な場合の記述にも適用することができる。
【0060】
次に、ステップ516において、Q
g曲線Q
g22の第2の区間の始点b
22と終点b
23についても、同様に求める。
【0061】
次に、ステップ518において、Q
g曲線Q
g22の第1の区間の線b
21−b
22をb
22方向に延伸し、Q
g曲線Q
g21の第2の区間の線a
22−a
23をa
22方向に延伸した線との交点c
21を求める。なお、交点c
21を求める際には、例えば、線分b
21−b
22を表す近似式を求めて、そこに、点a
22を示すV
GS=v
23を代入することを利用することができる。なお、この求め方は、以下の説明における同様な場合の記述にも適用することができる。
【0062】
次に、ステップ520において、Q
g曲線Q
g21の第2の区間の線a
22−a
23をa
23方向に水平に伸ばし、Q
g曲線Q
g22の第3の区間の線b
23−b
24との交点b
25を求める。なお、交点b
25を求める際には、例えば、線分b
23−b
24を表す近似式を求めて、そこに、点a
22またはa
23を示すV
GS=v
23を代入することを利用することができることは、上記の説明と同様である。
【0063】
次に、ステップ522において、Q
g曲線Q
g21の第3の区間の線a
23−a
24を点b
25を始点とするように平行にコピーし、点a
24に対応する終点c
22を求める。なお、交点c
22を求める際には、例えば、線分a
23−a
24に平行な点b
25を通過する近似式を求めて、そこに、Q
gの値として点b
25を示すq
27に点a
23から点a
24のQ
gの差(q
28−q
25)を加えた値を代入することを利用することができる。
【0064】
最後にステップ524において、曲線b
21−b
22−c
21−a
22−a
23−b
25−c
22を、Q
gの仕様条件に基づくQ
g曲線Q
g23として、決定する。
【0065】
次に、
図6〜8を参照して第4の実施態様について説明する。
図6は、本発明による第4の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法による測定グラフを示す図であり、
図7は、本発明による第4の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法を示すフローチャートである。第1〜第3の実施態様では、2回のQ
g特性の測定結果から、仕様上の測定条件に基づくQ
g特性を求めた。第4の実施態様では、1回のQ
g特性の測定結果に、このデバイスのQ
g特性以外の特性に基づいた補正値を考慮して、仕様上の測定条件に基づくQ
g特性を一部推定し、求める。
【0066】
まず、
図7のステップ710において、ドレイン電流I
D31及びドレイン−ソース電圧V
DS31の条件で、ゲート電荷曲線Q
g31を測定する。得られた曲線は
図6において点a
31から、点a
32、a
33を経由して点a
34に至る実線で示された曲線であるが、ここで、点a
32、a
33は、この時点では曲線の概要を述べるために測定データ中の特徴部分の点として便宜的に使用しただけであることは
図1と同様である。
【0067】
なお、ステップ710において、測定条件となるドレイン電流の関係は、I
D31は仕様上のQ
gの測定条件のドレイン電流に等しい値であり、同様に測定条件となるドレイン−ソース電圧V
DS31については、V
DS31<V
DS32であり、このV
DS32は、仕様上のQ
gの測定条件のドレイン−ソース電圧と等しい電圧とする。
【0068】
次に、ステップ712において、Q
g曲線Q
g31の第2の区間の始点a
32と終点a
33を求める。
【0069】
次に、ステップ714においてこのデバイスのV
DS−C
rss特性(
図8参照)から、
図6のΔQ
gdを求め、それによりV
DS=V
DS32の場合の第2の区間の終点b
31のQ
g値q
35を求めることにより、Q
gの仕様上の測定条件のV
DSにおけるb
31を求める。なおここで、ΔQ
gdは、ΔQ
gd=q
35−q
33であり、下記の式(1)または式(2)により求めることができる。
【数1】
ここで、式(2)のC
rss_typは式(1)を満たすように求められた実効値であり、例えば、Abhijit D. Pathakによる、"IXAN0010 MOSFET/IGBT DRIVERS THEORY AND APPLICATIONS", IXYS Corporation, 2001のEq.1.3等の記載を参考にして求めることができる。
【0070】
次に、ステップ716において、Q
g曲線Q
g31の第3の区間の線a
33−a
34を点b
31が始点となるように平行にコピーし、点b
32を求める。
【0071】
最後にステップ718において、曲線a
31−a
32−a
33−b
31−b
32を、Q
gの仕様条件に基づくQ
g曲線Q
g32として、決定する。
【0072】
図8には、パワーデバイスの本実施態様に関する一般的な電圧V
DS−容量C特性として、V
DS−C
gs特性及びV
DS−C
rss特性を示した。ここで、容量C
rss=C
gdであり、容量C
gdは
図18で容量C
DGとして示される容量である。したがって、上述のように、上記(1)式あるいは(2)式によりΔQ
gdを求めることができる。
【0073】
なお、ステップ714で用いる電圧−容量特性は、デバイスの仕様書に記載のものを用いることができる。あるいは、この電圧−容量特性は、事前に実際のデバイスのゲート端子とドレイン端子間の容量を測定したものを用いることもできる。後者の場合、電圧−容量特性の測定は、市販のインピーダンスメータ、又は、後述のSMUを用いて測定することができる。
【0074】
以上のように、第4の実施態様では、Q
gの仕様上のドレイン電流と等しい測定条件によるQ
g特性の測定値と、デバイスの電圧−容量特性から、仕様上のドレイン電流とドレイン−ソース電圧に基づくQ
g特性を求めることができる。
【0075】
次に、
図9〜11を参照して第5の実施態様について説明する。
図9は、本発明による第5の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法による測定グラフを示す図であり、
図10は、本発明による第5の実施態様において、ゲート電荷特性を求める方法を示すフローチャートである。第5の実施態様では、1回のQ
g特性の測定結果に、このデバイスのQ
g特性以外の特性からの補正値を考慮して、仕様上の測定条件に基づくQ
g特性を一部推定し、求める。
【0076】
まず、
図10のステップ1010において、ドレイン電流I
D41及びドレイン−ソース電圧V
DS41の条件で、ゲート電荷曲線Q
g41を測定する。得られた曲線は
図9において点a
41から、点a
42、a
43を経由して点a
44に至る実線で示された曲線であるが、ここで、点a
42、a
43は、この時点では曲線の概要を述べるために特徴部分の点として便宜的に使用しただけであることは
図1と同様である。
【0077】
なお、ステップ1010において、測定条件となるドレイン電流の関係は、I
D41<I
D42であり、ここで、I
D42は、仕様上のQ
gの測定条件のドレイン電流と等しい電流である。同様に、測定条件となるドレイン−ソース電圧V
DS41は、仕様上のQ
gの測定条件のドレイン−ソース電圧と等しい電圧である。
【0078】
次に、ステップ1012において、Q
g曲線Q
g41の第2の区間の始点a
42と終点a
43を求める。
【0079】
次に、ステップ1014において、このデバイスのV
gs−I
D特性(
図11参照)から、I
D41とI
D42の時のそれぞれのV
gsを、v
42、v
43として求める。
【0080】
次にステップ1016において、Q
g曲線Q
g41の線a
41−a
42をa
42方向に伸ばし、V
gs=v
42となる点b
41を求め、線a
42−a
43について点b
41を始点とするように平行にコピーし、線a
43−a
44との交点b
42を求める。なお、v
43−v
42=ΔV
gsとして
図9に示されている。
【0081】
最後にステップ1018において、曲線a
41−a
42−b
41−b
42−a
44を、Q
gの仕様条件に基づくQ
g曲線Q
g42として、決定する。
【0082】
図11は、パワーデバイスの一般的なV
gs−I
D特性を示している。この特性より、I
D41、I
D42のそれぞれに対応するv
42、v
43を求め、ステップ1014で利用する。
【0083】
なお、ステップ1014で用いるV
gs−I
D特性は、デバイスの仕様書に記載のものを用いることができる。あるいは、このV
gs−I
D特性は、例えば後述のSMUを用いて、事前に実際のデバイスで測定したものを用いることもできる。
【0084】
以上のように、第5の実施態様では、Q
gの仕様上のドレイン−ソース電圧と等しい測定条件によるQ
g特性の測定値と、デバイスのV
gs−I
D特性から、仕様上のドレイン電流とドレイン−ソース電圧に基づくQ
g特性を求めることができる。
【0085】
以上により、従来は高電圧かつ大電流の供給能力を備えた高価かつ大型の電源装置により、仕様上の測定条件に基づくゲート電荷Q
g特性を測定していたが、本発明による第1〜第3の実施態様により、高電圧を供給し、電流供給能力はそれほどでもない電源装置と、大電流を供給し、電圧供給能力はそれほどでもない電源装置を用いて仕様上の測定条件に基づくゲート電荷Q
g特性を求めることができる。
【0086】
さらに、本願発明の第4、第5の実施態様によれば、高電圧を供給し、電流供給能力はそれほどでもない電源装置か、大電流を供給し、電圧供給能力はそれほどでもない電源装置のいずれかを用いて仕様上の測定条件に基づくゲート電荷Q
g特性を求めることができる。
【0087】
次に、上記の第1〜第5の実施態様を実施するための測定装置を、第6の実施態様として
図12に示す。
【0088】
図12に示す測定装置1200は、パワーデバイスとしてここではパワーMOSFETとして示されるDUT(Device Under Test)1202と、DUTのゲート端子Gとソース端子S間に接続されたSMU1 1210と、DUT1202のドレイン端子Dに、そのソース端子Sが接続された電流負荷デバイス1206と、電流負荷用デバイス1206のゲート端子GとS端子間に接続されたSMU2 1204と、電流負荷デバイス1206のドレイン端子Dと、DUT1202のソース端子S間に接続されたSMU3 1208と、SMU1〜SMU3を制御するコントローラ1230とを備える。
【0089】
SMU3 1208は、さらに、DUT1202のD端子とS端子に、ケーブル1220及び1222によりそれぞれ接続されて、両端子間の電圧を測定するVMH端子とVML端子をそれぞれ備える。なお、SMU1 1210のH端子はケーブル1212によりDUT1202のG端子に接続され、SMU1 1210のL端子は、ケーブル1214によりDUT1202のS端子に接続される。さらに、SMU2 1204のH端子はケーブル1211により電流負荷デバイス1206のG端子に接続され、SMU2 1204のL端子はケーブル1210により電流負荷デバイス1206のS端子に接続される。さらに、SMU3のH端子はケーブル1218により電流負荷デバイス1206のD端子に接続され、SMU3のL端子はケーブル1216によりDUT1202のS端子に接続される。
【0090】
ここで、SMU1〜SMU3は、例えば、アジレント・テクノロジー社製Agilent B1505Aで提供される複合電源または多機能電源であって、SMU(Source Monitor Unit、または、Source Measure Unit)と称される複合電源または多機能電源とすることができる。ここで、SMU1〜SMU3は、電圧源、電流源、連続電圧測定ユニット、連続電圧測定ユニットを備えることができ、高精度な電圧/電流出力または高精度な電圧/電流測定をすることができる。さらに、SMU1〜SMU3の電圧源には電流制限機能を備えることができ、SMUの電流源には電圧制限機能を備えることができる。
【0091】
コントローラ1230は、Agilent B1505A搭載のコントローラを用いることができる。また、Microsoft社製Windows(登録商標)系OS搭載のコンピュータ、他のOS搭載のコンピュータ、あるいはASIC、FPGA等の専用ICあるいは汎用ICによるコントローラとすることができる。
【0092】
コントローラ1230は、プロセッサを備え、さらに、RAM,ROM,フラッシュメモリ、EPROM,EEPROM等の各種メモリ、あるいは、ハードディスクドライブ、あるいは、CD/DVD等の光学メディアを用いた光学ドライブを備え、第1〜第5の実施態様の方法のいずれかを実行するコンピュータプログラムを上記のメモリあるいはドライブに格納し、上記プロセッサにより実行することができる。
【0093】
SMUを備えた測定装置1200を使用することにより、DUTのゲート電荷Q
g特性の測定だけでなく、下記の表1に示されるようなパワーデバイスの評価に必要とされる複数種類の測定を、ケーブルをつなぎかえることなく測定することができる。ここで、ケーブルをつなぎかえることなく測定できるのは、SMUが上述のように複数の機能を兼ね備えているからであることに注意されたい。なお、ケーブルをつなぎかえずに、複数種類の測定ができるので、測定に係る時間が短縮され、評価コストが下がるとともに、ケーブル接続に起因する測定条件が統一でき、データの比較が容易となるという効果も奏することができる。
【0095】
次に、測定装置1200でQ
g特性を測定する場合の、各SMUの機能を記載した図を
図13に示す。表1で示されるように、SMU1 1210では、電流I
Gを供給する電流源と、それに並列にゲート−ソース電圧V
gsを測定する電圧測定ユニットが端子H、Lに接続されて使用される。さらに、SMU2 1204では、電流負荷デバイス1204のゲートを駆動する電圧源が端子H、Lに接続されて、電流負荷デバイス1204に流れる電流を制御するように用いられる。さらに、SMU3 1208では、電圧源と、それに直列に接続された電流測定ユニットが端子H、Lに接続され、端子VMH、VMLには、電圧測定ユニットが接続されて使用される。
【0096】
ここで、SMU3 1208は、DUTとなるパワーデバイスのQgについての仕様上の測定条件を満足するドレイン電流か、Qgについての仕様上の測定条件を満足する
ドレイン−ソース電圧のいずれか一方しか、一度に供給できないSMUとすることができる。
【0097】
さらに、表1のDUTのI
D−V
DSについての測定の際の各SMUの機能と記載した図を
図14に示す。SMU1 1210では、階段ステップ波信号源が、端子H、Lに接続されて使用される。さらに、SMU2 1204では、電流負荷デバイス1204のゲートを駆動する電圧源が端子H、Lに接続されて、電流負荷デバイス1204に流れる電流を制御するように用いられる。さらに、SMU3 1208では、電圧源と、それに直列に接続された電流測定ユニットが端子H、Lに接続され、端子VMH、VMLには、電圧測定ユニットが接続されて使用される。
【0098】
表1のその他の測定については、上記の説明から各SMU内の構成を理解可能なので、詳しい説明は省略する。
【0099】
次に、第7の実施態様として、
図15を参照して、
図12の代替回路として、測定装置1500を示す。測定装置1500は、
図12における電流負荷デバイス1206とSMU2 1204を外し、SMU3のH端子とDUT1202のD端子をケーブル1518で接続し、コントローラ1530がSMU1とSMU3を制御するように構成した以外は、
図12と同じである。
図15においては、SMU3が、電圧源あるいは電流源のいずれかをリレーにより選択して、直列に接続した電流測定ユニットを介して端子Hに接続されるように構成されることにより、DUT1202のドレイン端子Dに必要なV
DSの供給、及び、I
Dの供給を行う。なお、SMU3 1208の電圧源と電流源の切り替えは、電圧源において電流リミットを設定して、電流制限がかかった場合には電流源として動作する特性を利用することもできる。
【0100】
次に、
図16、17を参照して、第8の実施態様として、第6の実施態様及び第7の実施態様に適用することができる、SMU1での電流及び電圧の測定値の補正方法を示す。
【0101】
図12、15の実施態様では、DUT1202とSMU1 1210はケーブル1212と1214で接続されているが、厳密には、
図16に記載されるように、寄生抵抗R
s1640がケーブル1212に相当するケーブル1612に直列に挿入されて存在し、さらに寄生容量C
p1642がケーブル1612と1214の間に存在する。このため、ケーブル1612に流れる電流I
measにより、抵抗R
sで電圧降下が生じるために、SMU1が測定した電圧V
measは抵抗R
s1640の電圧降下分を含んでしまう。さらに、ケーブル1612に流れる電流I
measは、一部が容量C
p1642を流れるI
pとなるために、SMU1が測定したDUTのゲート電流I
measは、DUTのゲート端子に流れない電流I
pも含んでしまう。このような誤差を補償するために、
図17に示す方法により、寄生抵抗R
sと寄生容量C
pの影響を事前に測定し、以降の測定値V
meas、I
measを補正して、誤差を低減したDUTのゲート電流I
Gとゲート−ソース電圧V
gsを求めるようにする。
【0102】
図17のステップ1710において、測定装置において、DUTの端子GとSをケーブルなどで短絡し、SMU1で端子H、L間の抵抗値R
sを測定する。なお、この時、DUTを取り外した状態で測定を行うこともできる。
【0103】
次に、ステップ1712において、DUTを測定装置から取り外し、端子GとSが開放された状態で、SMU1で端子H、L間の容量値C
pを測定する。
【0104】
次に、ステップ1714において、測定装置1200または1500におけるSMU1の電圧測定値V
maes、電流測定値I
measについて、
V
gs = V
meas−(I
meas*R
s)、
I
G = I
meas−I
p、
但し、I
p = C
p*dV
gs/dt、
により補正し、V
gs及びI
Gを得る。
【0105】
なお、以上の説明では、パワーデバイスであるDUTにパワーMOSFETを例にとって記載したが、本発明をIGBT等の他のパワーデバイスについて適用することができる。その場合、端子名は、対応する端子名に読み替えて解釈することができる。また、各種の特性についても、対応する特性に読み替えて解釈することができる。
【0106】
さらに、第6の実施態様と第7の実施態様を、
図22あるいは
図23の測定回路に適用することもできる。
【0107】
以上のように、本発明の実施態様に沿って、本発明による方法及び測定装置に関して説明したが、当業者には、上述の説明は例示を目的としたものであり、その思想を逸脱することなく、さまざまな変更あるいは置き変えをすることができ、そのような範囲も本発明に含まれることを理解されよう。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める方法であって、
第1と第2の測定条件における2回の直接測定により、第1と第2のゲート電荷特性を取得するステップと、
前記第1と第2のゲート電荷特性を合成して、前記デバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求めるステップと
を備えるパワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める方法。
請求項2:
前記第1と第2のゲート電荷特性を取得するステップは、
第1のドレイン電流値と第1のドレイン−ソース電圧値において、第1のゲート電荷特性を測定するステップと、
第2のドレイン電流値と第2のドレイン−ソース電圧値において、第2のゲート電荷特性を測定するステップと
を備える、請求項1に記載の方法。
請求項3:
前記第1のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第1〜第3の区間を備え、
前記第2のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第4〜第6の区間を備え、
前記第1のドレイン電流値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流値と等しく、前記第2のドレイン−ソース電圧値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン−ソース電圧値と等しく、
前記合成し、ゲート電荷特性を求めるステップは、
前記第2の区間の始点と終点を求めるステップと、
前記第5の区間の始点と終点を求めるステップと、
前記第1のゲート電荷特性と前記第2のゲート電荷特性に基づいて、1以上の追加の特性を導き出すステップと、
前記第1のゲート電荷特性の1以上の部分と、前記第2のゲート電荷特性の1以上の部分と、前記1以上の追加の特性とを合成するステップと
を備える、請求項2に記載の方法。
請求項4:
前記第2の区間の終点を延伸し、前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、
前記第1の区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第1の交点から先の前記第6の区間の残りの部分とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える請求項3に記載の方法。
請求項5:
前記第2の区間の終点を延伸し、前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、
前記第3の区間を、前記第1の交点を始点とするように傾きを保ったまま平行にコピーして第7の区間を生成するステップと、
前記第1の区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第7の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える請求項3に記載の方法。
請求項6:
前記第4の区間を延伸して前記第2の区間につなげるステップと、
前記第2の区間の終点を延伸して前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、
前記第4の区間と、前記第4の区間を延伸した区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第1の交点から先の前記第6の区間の残りの部分とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える請求項3に記載の方法。
請求項7:
前記第4の区間を延伸して前記第2の区間につなげるステップと、
前記第2の区間の終点を延伸して前記第6の区間との第1の交点を求めるステップと、
前記第3の区間を、前記第1の交点を始点とするように傾きを保ったまま平行にコピーして第7の区間を生成するステップと、
前記第4の区間と、前記第4の区間を延伸した区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸した区間と、前記第7の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える請求項3に記載の方法。
請求項8:
前記第4の区間の終点を延伸し、前記第2の区間の始点を延伸して、第1の交点を求めるステップと、
前記第2の区間の終点を延伸して前記第6の区間との第2の交点を求めるステップと、
前記第3の区間を、前記第2の交点を始点とするように傾きを保ったまま平行にコピーして第7の区間を生成するステップと、
前記第4の区間と、前記第4の区間を延伸して前記第1の交点までの区間と、前記第1の交点から前記第2の区間の始点までの区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間を延伸して前記第2の交点までの区間と、前記第7の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える請求項3に記載の方法。
請求項9:
パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める方法であって、
第1の測定条件における1回のゲート電荷特性についての直接測定により、第1の特性を取得するステップと、
前記デバイスの第2の特性から、第1の補正値を得るステップと、
前記第1の特性に、前記第1の補正値に基づく修正を加えて、前記デバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求めるステップと
を備えるパワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める方法。
請求項10:
前記第2の特性は、前記デバイスの仕様書の記載を用いる、請求項9に記載の方法。
請求項11:
前記第2の特性は、事前に前記デバイスを測定した測定データを用いる、請求項9に記載の方法。
請求項12:
前記第1の特性を取得するステップは、第1のドレイン電流値と第1のドレイン−ソース電圧値において、第1のゲート電荷特性を測定するステップを備え、
前記第2の特性は、前記デバイスのドレイン−ソース電圧対Crss容量特性であり、
前記第1のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第1〜第3の区間を備え、
前記第1のドレイン電流値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流値と等しく、
前記第1の補正値を得るステップは、前記第1のドレイン−ソース電圧値と、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン−ソース電圧値との差に基づいて、前記第2の特性からゲート電荷についての補正値である前記第1の補正値を求めるステップを備え、
前記第1の補正値に基づく修正を加えて、前記ゲート電荷特性を求めるステップは、
前記第3の区間を、前記補正値だけ平行にシフトさせて前記第4の区間を生成するステップと、
前記第1の区間と、前記第2の区間と、前記第2の区間の終点を前記補正値だけ延伸した区間と、第4の区間とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
請求項13:
前記第1の特性を取得するステップは、第1のドレイン電流値と第1のドレイン−ソース電圧値において、第1のゲート電荷特性を測定するステップを備え、
前記第2の特性は、前記デバイスのドレイン電流対ゲート−ソース電圧特性であり、
前記第1のゲート電荷特性は、ゲート電荷の増加に対するゲート−ソース電圧の増加の割合から第1〜第3の区間を備え、
前記第1のゲート−ソース電圧値は、前記デバイスの仕様上の測定条件のゲート−ソース電圧値と等しく、
前記第1の補正値を得るステップは、前記第1のドレイン電流値と、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流値との差に基づいて、前記第2の特性から前記第1の補正値を求めるステップを備え、
前記第1の補正値に基づく修正を加えて、前記ゲート電荷特性を求めるステップは、
前記第2の区間を、前記補正値だけ平行にシフトさせて前記第4の区間を生成するステップと、
前記第1の区間と、前記第1の区間の終点を延伸した区間と、第4の区間と、前記第3の区間の一部とを合成して、パワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性とするステップと
を備える、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
請求項14:
3端子のパワーデバイスであるDUTと、
前記DUTの第1の端子と第2の端子とに接続された第1のSMUと、
前記DUTの前記第2の端子と第3の端子とに接続された第2のSMUと
を備える、パワーデバイスの特性の測定装置。
請求項15:
前記第2のSMUは、前記デバイスの仕様上の測定条件のドレイン電流か、前記デバイスの仕様上の測定条件のゲート−ソース電圧かのいずれか一方しか、一度に供給できない請求項14に記載の装置。
請求項16:
前記第2のSMUは、前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子と追加の1組の端子を介して1組のケーブルにより接続され、前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子間の電圧を測定する、請求項14又は15に記載の装置。
請求項17:
前記第2のSMUと前記DUTの前記第3の端子間に、電流負荷デバイスを備え、
前記電流負荷デバイスには、前記電流負荷デバイスに流れる電流を制御する第3のSMUが接続される、請求項14〜16のいずれかに記載の装置。
請求項18:
前記第1のSMUと第2のSMUは、電圧源と、電流源と、電圧測定ユニットと、電流測定ユニットとを備える、請求項14〜16のいずれかに記載の装置。
請求項19:
前記DUTの前記第1の端子は前記DUTのゲート端子であり、前記第2の端子はソース端子であり、前記第3の端子はドレイン端子であり、前記装置は、請求項1〜13のいずれかに記載の方法を実施してパワーデバイスの仕様上の測定条件に基づいたゲート電荷特性を求める、請求項14〜18のいずれかに記載の装置。
請求項20:
前記第1のSMUは、事前に前記DUTの前記第1の端子と前記第2の端子を短絡して測定した第1の補正抵抗値と、事前に前記DUTの前記第1の端子と前記第2の端子を開放して測定した第1の補正電流値とにより、電圧及び電流の測定値を補正する、請求項14〜19のいずれかに記載の装置。